JP2012021846A - セルロース繊維の劣化程度を推定する方法 - Google Patents

セルロース繊維の劣化程度を推定する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】セルロース繊維の屈折率データを用いてセルロース繊維の劣化度合の推定する際に、精度が高く、効率よく推定できる方法を提供することにある。
【解決手段】分散染色法によりセルロース繊維の屈折率データを求め、この屈折率データに基づいてセルロース繊維の劣化度を推定する方法であって、マハラノビス・タグチシステム法を用い、あらかじめ作成しておいた、劣化したセルロース繊維の劣化度合いと屈折率データのマハラノビス距離との関係を用い、マハラノビス距離を劣化度の程度を表わす指標とすることを特徴とするセルロース繊維の劣化程度を推定する方法である。
【選択図】図8

Description

この発明は、セルロース繊維の屈折率データを分散染色法によって求め、これに基づいてセルロース繊維の劣化程度を推定する方法に関する。
油入変圧器、油入リアクトルなどの油入電気機器の寿命は、巻線に巻かれたクラフト紙などの絶縁紙の劣化度に左右されると言われている。絶縁紙は、セルロース繊維から構成されており、絶縁紙の劣化はセルロース繊維の劣化でもある。
セルロース繊維の劣化は、セルロースの分子鎖の切断によるものであり、この分子鎖の切断によりセルロースの平均重合度が低下し、同時にアルコール、アルデヒド、有機酸、二酸化炭素および一酸化炭素などの劣化生成物が生成する。
このような現象を利用して、稼働中の油入電気機器の絶縁紙の劣化度を推定することが提案され実施されている。この方法は、絶縁油中に溶解している上記劣化生成物の含有量を定量し、この含有量から絶縁紙の劣化を推定するものである。
しかしながら、この方法にあっては、測定に手間を要し、精度が十分でない欠点があった。
また、特開2003−207440号公報には、絶縁紙から剥落し、絶縁油中を浮遊しているセルロース繊維を採取し、このセルロース繊維について、X線回折、熱分析、質量分析、赤外分光分析、走査型電子顕微鏡観察などよってセルロース繊維の物理的化学的性状を計測し、この結果から絶縁紙の劣化度合を推定する方法が開示されている。
しかし、この方法では、計測に必要なセルロース繊維量が多く、少量のセルロース繊維量では測定精度が劣り、このため多量の絶縁油を油入電気機器から採取する必要がある。
さらに、セルロース繊維の劣化度を知ることは、上述の油入電気機器の絶縁紙の劣化の推定のみならず、各種紙、各種紙製品、食物繊維としてセルロース繊維を含む食品などにおいても、その生産管理上必要となる。
このような課題に対し、特開2008−83035号公報には、セルロース繊維の屈折率をベッケ線法または波長掃引型ベッケ線法で求め、この屈折率から直接劣化度合を判定するかまたは屈折率から平均重合度を求め、この平均重合度から劣化度合を判定する方法、分散染色法によってセルロース繊維の分散色を観測し、この分散色を数値化して解析し平均合致波長を算出して、この合致波長から劣化度合を求めるかあるいは平均合致波長から平均重合度を求め、これから劣化度合を判定する方法が開示されている。
この先行発明によるセルロース繊維の劣化度合いの推定方法では、少量のセルロース繊維であっても十分な精度でその劣化度合を知ることができる効果があるとされている。
しかし、セルロース繊維の劣化度合をさらに高い精度で効率よく推定する方法が求められている。
特開2001−210538号公報 特開2003−207440号公報(特許第3908540号) 特開2008−83035号公報
よって、本発明における課題は、上記先行発明におけるセルロース繊維の劣化度合の推定方法に比較して、より精度が高く、効率よく推定できる方法を提供することにある。
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、分散染色法によりセルロース繊維の屈折率データを求め、この屈折率データに基づいてセルロース繊維の劣化度を推定する方法であって、
マハラノビス・タグチシステム法を用い、あらかじめ作成しておいた、劣化したセルロース繊維の劣化度合いと屈折率データのマハラノビス距離との関係を用い、マハラノビス距離を劣化度の程度を表わす指標とすることを特徴とするセルロース繊維の劣化程度を推定する方法である。
請求項2にかかる発明は、測定対象となるセルロース繊維が、油入電気機器内の絶縁油に浮遊しているセルロース繊維を採取したものであり、マハラノビス・タグチシステム法を用い、あらかじめ作成しておいた、経年油入電気機器内の絶縁油に浮遊しているセルロース繊維の劣化度合いと屈折率データのマハラノビス距離との関係を用いることを特徴とする請求項1記載のセルロース繊維の劣化程度を推定する方法である。
請求項3にかかる発明は、測定対象となるセルロース繊維として、油入電気機器内の絶縁紙表面から採取したもので、マハラノビス・タグチシステム法を用い、あらかじめ作成しておいた、劣化したセルロース繊維の劣化度合いと屈折率データのマハラノビス距離との関係を用いることを特徴とする請求項1記載のセルロース繊維の劣化程度を推定する方法である。
請求項4にかかる発明は、劣化度の推定の際、補助手段として単色分析法を併用することを特徴とする請求項1記載のセルロース繊維の劣化程度を推定する方法である。
本発明によれば、セルロース繊維の屈折率データに基づいてセルロース繊維の劣化度を推定する方法において、セルロース繊維の劣化度合をさらに高い精度で効率よく推定することができる。
分散色測定手順を説明するフロー図である。 分散染色測定装置の例を示す構成図である。 新品紙および気中加熱劣化紙のr−b図で表したグラフである。 気中加熱劣化紙の平均重合度とマハラノビス距離の関係を表したグラフである。 セルロース繊維のマハラノビス距離と平均重合度の関係を表したグラフである。 評価する劣化繊維の平均重合度推定例を示すグラフである。 平均重合度最低値とマハラノビス距離平均値の関係を表したグラフである。 マハラノビス距離平均値に基づく劣化診断図である。 絶縁紙表面繊維のサンプルとする測定手順フロー図である。 表面繊維のマハラノビス距離と平均重合度との関係を表したグラフである。 b5g5診断補助図である。
本発明者の検討によれば、セルロース繊維が劣化すると劣化の程度に応じて屈折率が変化することが判明している。よって、あるセルロース繊維群がどの程度劣化しているかを評価するには、未劣化のセルロース群との屈折率差を測定すればよいことになる。
セルロース繊維の屈折率の測定方法の1つに、分散染色法を用いるものがある。
分散染色法は、直接的にセルロース繊維の屈折率値を求めるものではなく、屈折率に対応する分散色を測定し、これを数値化して屈折率に対応する屈折率データを得るものである。
この方法は、位相差分散顕微鏡を用い、光源光に白色光を使用し、1種の適切な屈折率を有する浸液に試料となるセルロース繊維を浸して検鏡する。
浸液の屈折率とセルロース繊維の屈折率が一致した波長(以下、合致波長と言う。)では、測定光である白色光からこの波長の光が取り除かれ(消失し)、これ以外の波長の光が合波されて観測される。この観測光は、合致波長の光が取り除かれているので、合致波長に対応した色調を有している。この着色光を分散光と言い、その色調を分散色と言う。
したがって、この分散色は、合致波長に対応し、さらにはセルロース繊維の屈折率に間接的に対応するものとなるので、これを測色することでセルロース繊維の劣化度合を知ることができる。
なお、分散染色法は、アスベスト繊維の同定に広く各国で採用されており、その原理、操作方法等に関しては、「ASBESTOS IDENTIFICATION」、著者:W.C.McCRONE、発行所:McCRONE RESAECH INSTITUTE、米国、イリノイ州、シカゴ、発行日:1987年 や「繊維状物質測定マニュアル」作業環境測定シリーズ No.3 第22〜25頁、発行所:(社)日本作業環境測定協会、発行日:平成16年7月28日 などに詳しく解説されている。
また、測定装置としては、例えば株式会社ニコンから、アスベスト測定用位相差分散顕微鏡「80iTP−DPH」などとして市販されているものを使用できる。
たとえば、測定対象とするセルロース繊維が油入変圧器等で使用されるコイル絶縁紙(2種)(JIS C2304に規定される)である場合、通例、セルロース繊維の劣化の程度を評価する方法は平均重合度測定である。平均重合度測定方法は日本電機工業会規格JEM1455で規定されている。評価には約1gの試料が必要とされ、紙1g中にはおよそ百万本のセルロース繊維が含まれる。すなわち、平均重合度による劣化度評価は、繊維百万本の平均値による評価になる。
それに対し、屈折率を測定する劣化度評価の場合、百本程度のセルロース繊維を測定し、1本ごとに屈折率データをプロットする。たとえ未劣化のセルロース繊維であっても、セルロース繊維は天然物であり、1本ごとに多少の差異があるため、測定された屈折率データはある分布を持つようになるので、劣化度評価は屈折率データの分布を評価することになる。
分散染色法では屈折率値に対応する屈折率データとして分散色が得られる。分光器を用い分散色のRGB成分(R:赤色成分、G:緑色成分、B:青色成分)強度をデータとすることができる。RGB強度の総和を1と規格化したときのRGB強度をそれぞれrgbと表わすことにする。すると、あるセルロース繊維群についてrgb分布をその劣化度の評価とすることができる。すなわち、あるセルロース繊維群のrgb分布が基準となるセルロース繊維群とどの程度変化しているかを計算してそのセルロース繊維群の劣化の程度を評価することになる。
以下、その具体な分散色測定手順例を説明する。この例ではコイル絶縁紙(2種)(JIS C2304に規定される)の新品紙を構成するセルロース繊維を未劣化セルロース繊維として用いた。この新品紙を空気中150℃で加熱劣化させた気中加熱劣化紙を3種作成し、劣化したセルロース繊維群の試料とした。測定フローを図1に示す。
まず、絶縁紙をヘキサンなどの有機溶剤で洗浄し、付着している油脂分を除去する。有機溶剤を乾燥させた後に湿度30%程度の清浄な部屋にて実体顕微鏡を用いてピンセットで絶縁紙を1本1本のセルロース繊維にほぐす。1本ごとに分かれたセルロース繊維をプレパラートに乗せ、一定の屈折率を有する液体(浸液)を滴下してカバーガラスを乗せる。
プレパラートを位相差分散顕微鏡にて観察する。測定装置例の詳細は特開2008−83035号公報に記載されているが、ここでは簡単に説明する。
図2は、この測定装置の一例を示すものである。この例の装置は、光源を備えた位相差分散顕微鏡1と、分光器と測色部が複合された3CCD方式のカラービデオカメラ2と、演算部をなすパーソナルコンピュータ3と、演算結果およびカラービデオカメラ2からの映像を映し出すディスプレイ4とから構成されている。
セルロース繊維の画像は位相差分散顕微鏡1に取り付けられたカラービデオカメラ2で撮影する。撮影時には、顕微鏡1で観察される画像をディスプレイ4の画面上で確認しながらセルロース繊維の位置と角度を調整して、入射光(=顕微鏡付属のハロゲンランプ光)に偏光板を挿入し偏光方向とセルロース繊維の長さ方向を合わせる。
新品絶縁紙より採取したセルロース繊維110本について上記手順で測定した分散色データ例を図3(a)に示す。
分散色の分布を見やすく表現するために、上記規格化したrgb強度の内、r成分とb成分を用いて、横軸にr成分、縦軸にb成分を取りグラフ中に点としてプロットする(図3(a))。このプロットされた点は、分散色を表すものとなる。この図をr−b図と呼ぶ。なお、r+g+b=1のように規格化されているのでg成分は独立ではなく、r−b図はg成分を含まなくても分散色を一意的に表わしていることになる。
同様に、新品の絶縁紙とそれを空気中150℃で加熱劣化させた気中加熱劣化紙3種類(加熱時間を変えて平均重合度がそれぞれ633、338、218であるものを作成した)を分散染色法で分散色を測定しr−b図を作成した結果を図3(b)〜図3(d)に示す。セルロース繊維の劣化度合いを平均重合度で表わし、屈折率データをr−b図にプロットされたデータと考える。すると、劣化して平均重合度が低下すると、r−b図のプロット点分布がどのような変化をしているかが、何らかの指標で表現できれば、それを劣化の評価に用いることができると考えられる。
そこで、本発明では、マハラノビス・タグチ法の考え方にならい、マハラノビス距離を劣化程度を表わす指標とする。すなわち、新品紙のデータを基準とし、そこから劣化したセルロース繊維の分散色の各点がどの程度離れているかマハラノビス距離を計算し、その平均値を求め、平均重合度との関係を表わす検量線を作成する。その検量線を用いて劣化度未知のセルロース繊維の劣化度評価基準とする。
マハラノビス・タグチ法は、基準となるデータの分布に対する、ある測定値の逸脱性を
数値化する手法である。参考文献には、Taguchi G. and Jugulu
m R., The Mahalanobis−Taguchi strategy:A
pattern technology system, John Wiley
& Sons., (2002)、田口玄一,「技術開発のための品質工学」日本規
格協会 (1994)、鴨下隆志,「おはなしMT(マハラノビス・タグチ)システ
ム」日本規格協会 (2004)などが挙げられる。
あるデータXが群Aに近いのか群Bに近いのか判別する目的のために多変量判別分析手法が用いられている。この手法では、群Aの重心と群Bの重心に対してデータXはどちらの方に距離が近いかを計算して判別する方法が一般的であるが、その一つの手法としてマハラノビス法が提案されている。あるデータXと群の重心との距離をマハラノビスの距離(Dm 2)とよび、群Aまでの距離は次のように計算される。
Figure 2012021846
マハラノビスの距離の考え方を応用して、基準となる群の重心からのマハラノビスの距離を計算することにより、あるデータポイントがその基準群からどの程度離れているかを評価する方法をマハラノビスタグチ(MT)法という。
分散色のr-bデータを解析する場合は、説明変量はrとbの2つである。説明のためにrを項目y1、bを項目y2として、基準となるn本の分散色データに対しrとbの平均値をそれぞれm1,m2,標準偏差σ1,σ2として次のような表1にまとめることとする。
Figure 2012021846
Figure 2012021846
Figure 2012021846
Figure 2012021846
基準となる群に対して比較対照する繊維の分散色データをuと表わすことにする。uには説明変量がrとbの2個あり、それらをu1,u2と表わす。uに対して標準化したUを次のように計算する。
Figure 2012021846
基準となる群においてそれを構成するn個のデータについて個々にマハラノビス距離Dm 2を計算すると、その平均値は1になる。この値の平方根が、計測のものさしの「単位量(1という目盛り)」となる。
具体的な計算例を示す。
基準となるrbのデータが表3のように与えられたとする。
Figure 2012021846
次に標準化されたデータを計算し、表4を得る。標準化されたデータを用いて項目間の相関係数rを求めると小数点第3位まで求めると−0.939と計算される。
Figure 2012021846
これに対し、表5に示す分散色データがあったとする。
Figure 2012021846
評価するデータを標準化した結果を表6に示す。
Figure 2012021846
これからマハラノビス距離は表7のように計算される。
Figure 2012021846
マハラノビス距離の平均値は小数点第2位まで求めると2.20となる。
新品の絶縁紙とそれを空気中150℃で加熱劣化させた気中加熱劣化紙3種類についてマハラノビス距離の平均値を計算した結果を表8に示す。
図4は、気中加熱劣化紙の平均重合度とマハラノビス距離の関係を示すグラフである。
Figure 2012021846
図4における横軸と縦軸を逆に考え、横軸にマハラノビス距離平均値、縦軸に平均重合度とした図を図5に示す。ある劣化した繊維群を分散染色で評価し、r-b図におけるデータのばらつきからマハラノビス距離平均値を求めると、図5を用いいくらの平均重合度相当の繊維群と見なせるか判定でき、そのセルロース繊維の劣化程度を診断することができる。
具体的な計算例を示す。基準となるデータは図3(a)に示された新品紙のデータである。新たに劣化度未知の評価すべきセルロース繊維群に対して分散染色測定を行い、例として表9のような値が得られたとする。
Figure 2012021846
評価するデータを標準化した結果を表10に示す。
Figure 2012021846
これからマハラノビス距離は表11のように計算される。
Figure 2012021846
マハラノビス距離平均値は小数点第2位まで求めると5.41となる。
このセルロース繊維の劣化程度を図5の診断図で評価すると、図6に示すように、マハラノビス距離平均値で5.41はおよそ平均重合度300相当の劣化であると推測することができる。
次に、測定対象となるセルロース繊維が、油入電気機器内の絶縁油に浮遊しているセルロース繊維を採取したものについてマハラノビス・タグチシステム法を用い、油入電気機器のセルロース繊維の劣化程度を推定する方法を述べる。
この場合、経年油入電気機器のセルロース繊維の劣化度合いとセルロース繊維の屈折率データのマハラノビス距離との関係は次のように求める。
図7に撤去変圧器8台の絶縁紙の平均重合度最低値と、当該変圧器の絶縁油から採取されたセルロース繊維の新品紙(DP1185)を基準としたマハラノビス距離平均値の関係を示す。
実線は新品紙および気中加熱劣化紙の平均重合度とマハラノビス距離平均値の関係を表わす。変圧器が劣化してコイル絶縁紙の平均重合度が低下すると、マハラノビス距離平均値が大きくなる傾向が得られる。
プロットは1本の曲線上にはのらず、ある程度の分布を有するためマハラノビス距離平均値からその変圧器のコイル絶縁紙のセルロース繊維の平均重合度最低値を直読することは難しい。
そこで、コイル絶縁紙の平均重合度最低値に応じて、変圧器の劣化の度合いを「劣化度I:正常」、「劣化度II:要注意」、「劣化度III:危険」の3区分で表示することとした。コイル絶縁紙の平均重合度最低値を基準に「劣化度I:650以上」、「劣化度II:450〜650」、「劣化度III:450以下」とすると、図8のようにマハラノビス距離を基準とした劣化診断図が作成される。
劣化度が未知の油入電気機器について油中繊維分散染色測定を行い、マハラノビス距離を計算し、図8の診断図を用いると、使用されている絶縁紙の劣化具合を推定することができる。
変圧器の絶縁油中に浮遊するセルロース繊維は変圧器内部に存在する紙の表面(最表層)から剥離した繊維であると考えられる。紙の表面は絶縁油中の酸素や水分の影響を最も強く受けると考えられるため、紙の内部と比較すると劣化が進行している可能性がある。この場合、紙から採取したセルロース繊維の分散色の平均重合度依存性と絶縁油中に浮遊するセルロース繊維の分散色の平均重合度依存性が異る可能性がある。
そこで、紙の表面繊維を測定対象となるセルロース繊維として、油入電気機器内の紙表面から直接採取し、マハラノビス・タグチシステム法を用いセルロース繊維の劣化程度を推定する方法を説明する。
検量線の作製方法を説明する。撤去変圧器5台から紙6種類を採取した。測定手順を図9に示す。
最表面のセルロース繊維を紙から剥離させるために、三角フラスコに紙と有機溶媒を入れ、振とう器にかける。振とう後の有機溶媒をろ過して、剥離したセルロース繊維を採取し、紙表面のセルロース繊維のサンプルとする。
新品紙(DP1185)を基準としたマハラノビス距離の計算結果を図10に示す。
マハラノビス距離平均値で診断する場合、“平均値”で判定するために、分散色rgbのデータが十分に反映されているわけではない。そこで、分散色rgb分布のうち下から5%目のデータのみ取り出した値(b5g5値)をマハラノビス距離平均値の補助的な指標として利用することもできる。ただし、ここではrgbのうちbとgのデータを利用する。
b5g5値を指標とする診断補助図は次のように作成される。
たとえば、新品の絶縁紙とそれを空気中150℃で加熱劣化させた気中加熱劣化紙3種類のr、g、bデータの、b5g5値を示すと、表12のようになる。
Figure 2012021846
表12の値から横軸にb5、縦軸にg5とした診断補助図を図11に示す。数多くの試料を検討した結果、診断補助図を劣化の少ない劣化度I、劣化が中等の劣化度II、劣化が進んだ劣化度IIIと領域分けすることができ、図11を領域分けして示す。
このような補助的手法では、b5値とg5値とを表12に示すように別々に求めている。このため、本発明ではこの手法を単色分析法と呼称する。
b5g5値を求める具体的方法を示す。
例として表9に示したデータを用いる。評価すべきセルロース繊維群に対して分散染色測定を行い、例として表13のような値が得られたとする。
Figure 2012021846
このデータの繊維本数は106本である。下から5%のデータはデータ数に0.05を掛けて四捨五入して整数にすると5であるので、小さい方から数えて5番目のデータを書き出すと、b5は0.417、g5は0.282となり、図11のb5g5診断補助図のうち劣化度IIIとなる。
一方、マハラノビス距離平均値は先に示したように5.41であり、図8によれば劣化度IIIに相当する。補助診断指標も劣化度IIIである。このように、診断結果がマハラノビス距離を用いた劣化度と、補助指標を用いた劣化度が一致すると、その診断のたしからさが増す。よって、このセルロース繊維群はかなり劣化の進んでいることが推定される。
1・・・位相差分散顕微鏡、2・・・カラービデオカメラ、3・・・パーソナルコンピュータ、4・・・ディスプレイ

Claims (4)

  1. 分散染色法によりセルロース繊維の屈折率データを求め、この屈折率データに基づいてセルロース繊維の劣化度を推定する方法であって、
    マハラノビス・タグチシステム法を用い、あらかじめ作成しておいた、劣化したセルロース繊維の劣化度合いと屈折率データのマハラノビス距離との相関関係を用い、マハラノビス距離を劣化度の程度を表わす指標とすることを特徴とするセルロース繊維の劣化程度を推定する方法。
  2. 測定対象となるセルロース繊維が、油入電気機器内の絶縁油に浮遊しているセルロース繊維を採取したものであり、マハラノビス・タグチシステム法を用い、あらかじめ作成しておいた、経年油入電気機器内の絶縁油に浮遊しているセルロース繊維の劣化度合いと屈折率データのマハラノビス距離との相関関係を用いることを特徴とする請求項1記載のセルロース繊維の劣化程度を推定する方法。
  3. 測定対象となるセルロース繊維が、油入電気機器内の紙表面から採取したものであり、マハラノビス・タグチシステム法を用い、あらかじめ作成しておいた、劣化したセルロース繊維の劣化度合いと屈折率データのマハラノビス距離との相関関係を用いることを特徴とする請求項1記載のセルロース繊維の劣化程度を推定する方法。
  4. 劣化度の推定の際、補助手段として単色分析法を併用することを特徴とする請求項1記載のセルロース繊維の劣化程度を推定する方法。
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