JP2012017301A - シクロヘキセノン類及びその製造方法 - Google Patents

シクロヘキセノン類及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 各種機能性化学品として有用なシクロヘキセノン類(2−シクロヘキセン−1−オン類)を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】 芳香族化合物と4−アセチル酪酸を固体酸触媒の存在下で反応させ、3位の炭素原子上に芳香族置換基を有するシクロヘキセノン類を製造する。触媒としては、ゼオライト等の固体酸触媒を使用できる。ゼオライトを触媒とする場合には、シリカ/アルミナ比が2〜400のものを使用することが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明は、シクロヘキセノン類(2−シクロヘキセン−1−オン類)及びその効率的な製造方法に関する。
シクロヘキセノン類は、医・農薬製造等に関わる原料や合成中間体として広く利用されている機能性化学品である。その中で3位の炭素原子上に芳香族置換基を有するシクロヘキセノン類は、共役エノン化合物としてアルキル化剤を反応させ光学活性化合物へ変換するなど、さまざまな応用例が知られている他、最近、炭疽病浮腫因子の小分子阻害剤としての生理活性作用等も報告されるなど、有用性が極めて高い化合物である(たとえば非特許文献1、2)。
それら芳香族置換基を有するシクロヘキセノン類の主要な製法としては、たとえば3−アルコキシシクロヘキセノンにアリールグリニャール試薬又はアリールリチウム試薬を反応させる方法(非特許文献1など)が知られていた。しかしその製法では、(1)水や酸素と反応しやすく取り扱いが容易でないアリールリチウム試薬やアリールグリニャール試薬等の有機金属試薬を使用する、(2)それらの有機金属試薬が高価である、(3)反応後に、リチウム、マグネシウム等を含んだ廃棄物が大量に生成する、などの問題点があり、工業的に有利な方法とは言えなかった。
一方、4−アセチル酪酸を原料として、強酸であるメタンスルホン酸/五酸化二リン混合触媒系(又はメタンスルホン酸単一触媒系)の存在下でアニソールを反応させ、3−アニシルシクロヘキセノンを製造した例が報告されている(非特許文献3)。この方法は、原料の4−アセチル酪酸が1,3−ヘキサンジオン等から容易に合成できる点と、反応の共生成物が水のみのクリーンな反応系である点などにおいてすぐれた方法である。しかしながらその製法では、触媒のメタンスルホン酸/五酸化二リン混合触媒系が液体であるため反応後の分離・回収・再利用等が容易でなく、また、触媒を溶媒量使用するため大量の酸性廃棄物が生じ環境負荷が大きい、などの問題点があり、工業的によりすぐれた方法が求められていた。
Chem.Eur.J.,13,9647(2007) Bioorg.Med.Chem.Lett.,18,4215(2008) Synth.Commun.,32,3169(2002)
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、芳香族置換基を3位の炭素原子上に有するシクロヘキセノン類をより効率的に製造することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(1)特定の固体酸触媒存在下での芳香族化合物と4−アセチル酪酸類との反応が効率よく進行し、3位の炭素原子上に芳香族置換基を有するシクロヘキセノン類が収率よく得られる、および、(2)その反応がマイクロ波照射により加速され、より効率よくシクロヘキセノン類を製造できる、という二つの新規な事実を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
〈1〉下記一般式(I)
RH (I)
(式中、Rは1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基を示し、前記炭化水素環又は複素環の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される芳香族化合物と、下記一般式(II)
CH3COCHCHCHCOH (II)
(式中、メチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される4−アセチル酪酸類を、固体酸触媒の存在下で反応させることを特徴とする下記一般式(III)
(式中、Rは前記と同じ意味であり、メチレン基の水素原子の一部が式(II)に由来する反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表されるシクロヘキセノン類の製造方法。
〈2〉固体酸触媒として、ゼオライト、モンモリロナイト又はヘテロポリ酸を用いることを特徴とする〈1〉に記載の製造方法。
〈3〉ゼオライトとして、Y型、ベータ型、モルデナイト型又はZSM−5型の基本骨格を有するゼオライトを用いることを特徴とする〈2〉に記載の製造方法。
〈4〉ゼオライトとして、シリカ/アルミナ比が2〜600のゼオライトを用いることを特徴とする〈2〉又は〈3〉に記載の製造方法。
〈5〉反応をマイクロ波照射下で行うことを特徴とする〈1〉、〈2〉、〈3〉又は〈4〉に記載の製造方法。
〈6〉下記一般式(IV)で表されるシクロヘキセノン類。
(式中、Rは、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル基又は1,4−ベンゾジオキサン−6−イル基である。)
本発明の製法方法では、固体酸触媒の分離・回収等が容易で、大量の有害廃棄物を排出せずに3位の炭素原子上に芳香族置換基を有するシクロヘキセノン類を製造できるため、従来の方法に比べ環境負荷が非常に小さいという効果を有する。また、本発明の製造方法でマイクロ波照射を用いた場合には、目的とするシクロセキセン類を短時間でより収率よく製造できるという効果を有する。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法は、芳香族化合物と4−アセチル酪酸類を、固体酸触媒の存在下で反応させることを一つの大きな特徴とする。
本発明において、原料として使用する芳香族化合物は、下記一般式(I)
RH (I)
(式中、Rは1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基を示し、前記炭化水素環又は複素環の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される炭化水素環系化合物又は複素環系化合物である。
一般式(I)において、Rは1価の炭化水素環系または複素環系の芳香族有機基である。
Rが炭化水素環系の芳香族有機基の場合には、環内炭素数が好ましくは6〜22、より好ましくは6〜14であり、それら炭素環系の芳香族有機基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基等が挙げられ、それらの基を有する炭化水素環系芳香族化合物の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ペリレン、ペンタセン等が挙げられる。
また、Rが複素環系の芳香族有機基の場合には、ヘテロ原子は硫黄、酸素原子等であり、環内炭素数が好ましくは4〜12、より好ましくは4〜8である。それら複素環系の芳香族有機基の具体例としては、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等が挙げられ、それらの基を有する複素環系芳香族化合物の具体例としては、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン等が挙げられる。
一般式(I)においてRはその環上の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよく、それらの基の具体例としては、メチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、デシル基等のような炭素数が1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基のような炭素数が1〜10のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子のようなハロゲン原子の他に、環上の2つの炭素原子を結合させる2価の基であるオキシエチレン基やオキシエチレンオキシ基等を挙げることができる。
したがって、それらの基を有する芳香族化合物の具体例としては、トルエン、アニソール、エトキシベンゼン、ブトキシベンゼン、メチルアニソール、フルオロアニソール、クロロアニソール、ブロモアニソール、ジヒドロベンゾフラン、1,4−ベンゾジオキサン等が挙げられる。
また、上記芳香族化合物と反応させる4−アセチル酪酸類は、下記一般式(II)
CH3COCHCHCHCOH (II)
(式中、メチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表される化合物である。
一般式(II)で表される4−アセチル酪酸類は、メチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよく、それらの基の具体例としては、メチル基、イソプロピル基、ヘキシル基等のような炭素数が1〜10のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ヘキシルオキシ基のような炭素数が1〜10のアルコキシ基の他に、2つのメチレン基炭素原子を結合させる2価の基であるオキシエチレン基やオキシエチレンオキシ基等を挙げることができる。
したがって、それら4−アセチル酪酸類の具体例としては、4−アセチル酪酸、4−アセチル−2−メチル酪酸、4−アセチル−2,3−ジメチル酪酸、4−アセチル−3,3−ジメチル酪酸等が挙げられる。
4−アセチル酪酸類に対する芳香族化合物のモル比は任意に選ぶことができるが、4−アセチル酪酸類に対するシクロヘキセノン類の収率を考慮すれば、通常0.4以上300以下であり、より好ましくは0.5以上200以下であり、さらに好ましくは0.5以上150以下である。
本発明によれば、上記一般式(I)の芳香族化合物と上記一般式(II)のアセチル酪酸類との反応により、下記一般式(III)
(式中、Rは前記と同じ意味であり、メチレン基炭素上の水素原子の一部が式(II)に由来する反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
で表されるシクロヘキセノン類を製造できる。
一般式(III)中のRは前記と同じ意味であり、それらの具体例としては上記一般式(I)で例示したもの等を挙げることができる。
一般式(III)のシクロヘキセノンは、下記のような反応機構で生成すると考えられる。
したがって、本反応では目的物である(III)以外に生成する化合物(共生成物)は基本的には水だけであり、本製法は環境負荷が非常に小さいクリーンな反応系であると考えられる。
また本発明では、下記一般式(IV)で表される新規なシクロヘキセノン類を提供できる。
(式中、Rは、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル基又は1,4−ベンゾジオキサン−6−イル基である。)
なお、上記新規なシクロヘキセノン類は、2,3−ジヒドロベンゾフラン又は1,4−ベンゾジオキサンと4−アセチル酪酸とを反応させて調製することができる。一般式(IV)のアルコキシ芳香族置換基を有するシクロヘキセノン類は、炭疽病浮腫因子の小分子阻害剤としての生理活性作用等が知られている化合物と類似の構造を有しており、医・農薬製造等に関わる原料や合成中間体として有用である。
上記一般式(I)において、その芳香環が反応性の異なる複数の反応点を有する場合には、4−アセチル酪酸類は、最も電子密度が高く立体障害が少ない環内炭素原子と優先的に反応する。
たとえば、アルコキシ置換基を有するベンゼン環では、4−アセチル酪酸のカルボキシル基はアルコキシ基に対してパラ位の炭素と優先的に反応して、p−置換体を主生成物として与える。さらに、2,3−ジヒドロベンゾフランのような芳香族化合物では、アルコキシ基に対してパラ位の炭素とアルキル基に対してパラ位の炭素が存在するが、電子供与性がより高いと考えられるアルコキシ基に対してパラ位の炭素が優先的に反応する。
以上のように、本発明の反応は、求電子置換反応で一般的に見られる位置選択性を示すが、触媒の構造も位置選択性に大きく影響する。たとえば、ゼオライト触媒のような規則的細孔を有する触媒は、細孔の形状や孔径等に基づく立体選択性を示すために、そのような位置選択的反応に対してとくに有利であり、一置換ベンゼンであるアニソールを原料に用いた場合には、立体障害が最も小さいp−置換生成物を他の位置異性体生成物に対して、通常98%以上の選択率で製造することができる。
本発明では、フリーデル・クラフツ型の求電子置換反応等で使われる従来公知の各種の固体酸触媒を用いることができる。
それらの具体例としては、金属塩、金属酸化物等の固体無機物、酸性官能基を有する固体有機物等が挙げられる。
その中の固体無機物をより具体的に示せば、プロトン性水素原子あるいは金属カチオン(アルミニウム、チタン、ガリウム、鉄、セリウム、スカンジウム等)を有する、ゼオライト、モンモリロナイト、シリカ、ヘテロポリ酸やカーボン系素材を担体とする無機系固体酸が挙げられる。金属カチオンを有する固体無機物は、たとえば、市販のナトリウム型の固体無機物を、金属カチオンの水溶液で処理するなど、通常の方法により調製することができる。
また、固体有機物をより具体的に示せば、スルホ基を有するナフィオン(Nafion、登録商標、デュポン社より入手可能)、ダウエックス(Dowex、登録商標、ダウ・ケミカル社より入手可能)、アンバーライト(Amberlite、登録商標、ローム&ハス社より入手可能)等の酸性ポリマーや他の有機系固体酸が挙げられる。さらに、シリカ等にナフィオン等の有機系酸性化合物を担持した触媒(たとえば、Nafion SAC−13等)を用いることもでき、無機系固体酸と有機系固体酸を複数組み合わせて使用することもできる。
触媒としてゼオライトを使用する場合、その種類としては、Y型、ベータ型、ZSM−5型、モルデナイト型、SAPO型等の基本骨格を有する各種のゼオライトが使用可能で、この中では、Y型、ベータ型が好ましく、Y型がより好ましい。
これらゼオライトにおいては、プロトン性水素原子を有するブレンステッド酸型のものや金属カチオンを有するルイス酸型のものなど、各種のゼオライトを使用できる。この中で、プロトン性水素原子を有するプロトン型のものは、H−Y型、H−SDUSY型、H−SUSY型、H−ベータ型、H−モルデナイト型、H−ZSM−5型等で表される。また、アンモニウム型のものである、NH−Y型、NH−VUSY型、NH−ベータ型、NH−モルデナイト型、NH−ZSM−5型等のゼオライトを焼成して、プロトン型に変換したものも使用することができる。なお、上記プロトン型及びアンモニウム型のゼオライトで、H−SDUSY型、H−SUSY型、NH−VUSY型で表したものは、いずれもY型の基本骨格を有するものである。
さらに、ゼオライトのシリカ/アルミナ比(モル比)については、反応条件に応じて各種の比を選択できるが、好ましくは2〜600であり、より好ましくは3〜500、さらに好ましくは3〜400である。とくに、Y型の基本骨格を有する触媒の場合には、そのシリカ/アルミナ比が5〜400、さらには30〜400である触媒が好ましい。シリカ/アルミナ比の測定法は公知の方法を用いればよい。
それらゼオライトとしては、市販品を含む各種のものを使用できる。市販品の具体例を示すと、Y型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CBV760、CBV780、CBV720、CBV712及びCBV600等、東ソー社より市販されているHSZ−360HOA及びHSZ−320HOA等が挙げられる。また、ベータ型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CP811C、CP814N、CP7119、CP814E、CP7105、CP814C、CP811TL、CP814T、CP814Q、CP811Q、CP811E−75、CP811E及びCP811C−300等、東ソー社より市販されているHSZ−930HOA及びHSZ−940HOA等、UOP社より市販されているUOP−Beta等が挙げられる。さらに、モルデナイト型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されているCBV21A及びCBV90A等、東ソー社より市販されている、HSZ−660HOA、HSZ−620HOA及びHSZ−690HOA等が挙げられ、ZSM−5型ゼオライトとしては、ゼオリスト社より市販されている、CBV5524G、CBV8020及びCBV8014等が挙げられる。
原料に対する触媒量は任意に決めることができるが、重量比では、通常は0.0001〜100程度で、好ましくは0.001〜70程度、さらに好ましくは0.001〜50程度である。
本発明の反応は、反応温度や反応圧力に応じて、液相または気相状態で行うことができる。また、反応装置の形態としては、バッチ型、フロー型等、従来知られている各種形態で行うことができる。反応温度は、20℃以上、好ましくは20〜400℃、より好ましくは、20〜350℃である。さらに、反応圧力は、通常0.1〜100気圧で、好ましくは0.1〜80気圧、より好ましくは0.1〜60気圧である。反応時間は、反応温度、触媒量、反応装置の形態等に依存するが、通常、1〜400分、好ましくは1〜300分、より好ましくは1〜240分程度である。
また、反応を液相系で行う場合、溶媒の有無にかかわらず実施できるが、溶媒を用いる場合には、デカリン(デカヒドロナフタレン)、デカン等の炭化水素、クロロベンゼン、1,2−又は1,3−ジクロロベンゼン、1,2,3−又は1,2,4−トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジブチルエーテル等のエーテル等、原料と反応するものを除いた各種の溶媒が使用可能で、2種以上混合して用いることもできる。また、反応を気相で行う場合には、窒素等の不活性ガスを混合して反応を行うこともできる。
本発明の反応は、マイクロ波照射下で行うこともできる。本反応系では、共生成物である水や固体酸触媒の誘電損失係数が大きく、それらがマイクロ波を効率よく吸収するため、マイクロ波照射下では触媒表面からの水の脱着や固体酸触媒の活性化が促進され、反応をより効率的に進行させることが可能である。
反応をマイクロ波照射下で行う場合には、反応系をより効率よく加熱するために、マイクロ波を吸収して発熱する加熱材(サセプター)を反応系に添加することができる。加熱材の種類としては、活性炭、黒鉛、炭化ケイ素、炭化チタン等、従来公知の各種のものを使用できる。また、先に記載した触媒と加熱材の粉末を混合して、セピオライト、ホルマイト等の適当なバインダーを利用して焼成加工した成形触媒を用いることもできる。
マイクロ波照射反応では、接触式または非接触式の温度センサーを備えた各種の市販装置等を使用できる。また、マイクロ波照射の出力、キャビティの種類(例えば、マルチモード、シングルモード)、照射の形態(例えば、連続的照射、断続的照射)等は、反応のスケールや種類等に応じて任意に決めることができる。マイクロ波の周波数としては、通常、0.3〜30GHzである。具体的な周波数帯としては、ISM周波数帯(産業、科学、医療の分野で使用できる電波法での周波数帯)として知られる、2.45GHz帯、5.8GHz帯等を利用できる。
本発明の反応では、触媒として固体酸を使用しているため、反応後の触媒の分離・回収は、濾過、遠心分離等の方法により容易に行うことができる。また、生成したシクロヘキセノン類の精製も、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の有機化学上通常用いられる手段により容易に達せられる。
次に、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、各実施例における生成物の分析等で使用した装置は、ガスクロマトグラフ分析(GC)では島津製作所製 GC−2014、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)では島津製作所製 GCMS−QP2000plus、融点測定ではアズワン社製 ATM−02、元素分析ではCE INSTRUMENTS社製 EA1110、核磁気共鳴分析(NMR)では日本電子社製 JNM−LA600、赤外分光分析(IR)では日本分光社製 FT/IR−660plusである。
(実施例1)
アニソール(Ia) 9.0mmol、4−アセチル酪酸(IIa) 0.10mmol、H−Y型ゼオライト CBV760(ゼオリスト社製) 50mg、1,2−ジクロロベンゼン 1mLの混合物を反応管に入れ、放射温度計を備えたマイクロ波照射装置(Biotage社製、Initiator、シングルモード型、2.45GHz、マイクロ波最大出力 400W)を用いて、攪拌しながら200℃で30分反応させた。生成物をガスクロマトグラフおよびガスクロマトグラフ質量分析計で分析した結果、3−(4−メトキシフェニル)−2−シクロヘキセン−1−オン(IIIa)が57.2%の収率で生成したことがわかった(表1参照)。
(実施例2〜34)
反応条件(触媒、原料、温度、時間等)を変えて、実施例1と同様に反応及び分析を行い、生成物の収率を測定した結果を表1に示す。
1)Ia:アニソール、Ib:2,3-ジヒドロベンゾフラン、Ic:1,4-ベンゾジオキサン、Id:チオフェン。
2)IIa:4-アセチル酪酸。
3)ゼオライトはすべて500℃で焼成後のものを使用。
CBV760:H-SDUSY型ゼオライトCBV760(ゼオリスト社製)、CBV780:H-SDUSY型ゼオライトCBV780(ゼオリスト社製)、CBV720:H-SDUSY型ゼオライトCBV720(ゼオリスト社製)、CBV712:NH4-VUSY型ゼオライトCBV712(ゼオリスト社製)、CBV600:H-SUSY型ゼオライトCBV600(ゼオリスト社製)、UOP-Beta: H-ベータ型ゼオライト(UOP社製)、930HOA:H-べータ型オライト HSZ-930HOA(東ソー社製) 、940HOA:H-べータ型ゼオライト HSZ-940HOA(東ソー社製)、CP7105:H-ベータ型ゼオライトCP7105(ゼオリスト社製)、CP811E:H-ベータ型ゼオライトCP811E(ゼオリスト社製)、CP811C:H-ベータ型ゼオライトCP811C(ゼオリスト社製)、CBV21A:H-モルデナイト型ゼオライトCBV21A(ゼオリスト社製)、660HOA:H-モルデナイト型ゼオライトHSZ-660HOA(東ソー社製)、CBV8014:NH4-ZSM-5型ゼオライトCBV8014(ゼオリスト社製)、Sn-Mont:Sn4+含有モンモリロナイト、SAC-13:ナフィオンSAC13(デュポン社製)。
4)Na+型モンモリロナイト(クニミネ工業製、クニピアF)をSn4+水溶液で処理して調製。
5)1,2-DCB:1,2-ジクロロベンゼン。
6)MW:マイクロ波反応装置(Biotage社製、Initiator)を使用、OB:オイルバス加熱装置(理工科学産業社製、MH-5D)を使用。
7)IIIa:3-(4-メトキシフェニル)-2-シクロヘキセン-1-オン、IIIb:3-(2,3-ジヒドロベンゾフラン-5-イル)-2-シクロヘキセン-1-オン、IIIc:3-(1,4-ベンゾジオキサン-6-イル)-2-シクロヘキセン-1-オン、IIId:3-(2-チエニル)-2-シクロヘキセン-1-オン。
8)ガスクロマトグラフ分析による原料のIIに対する収率。
(実施例35)
アニソール(Ia) 10mL、4−アセチル酪酸(IIa) 1.05mmol、H−SDUSY型ゼオライト CBV760(ゼオリスト社製) 500mg、1,2−ジクロロベンゼン 5mLの混合物を反応管に入れ、放射温度計を備えたマイクロ波照射装置(Biotage社製 Initiator、シングルモード型、2.45GHz、マイクロ波最大出力 400W)を用いて、攪拌しながら200℃で3時間反応させた。遠心分離器で固体を上澄み液と分離し、トルエン(10mLで1回)及びアセトン(10mLで2回)で固体を洗浄した。同じ条件でさらに1回反応と後処理を行い、2回分の上澄み液と洗浄液を合わせて減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で生成物を精製した結果、IIIaを0.84mmol(収率40%、淡黄色粉末)得ることができた。
(実施例36)
2,3−ジヒドロベンゾフラン(Ib) 1.1g、4−アセチル酪酸(IIa) 1.0mmol、H−SDUSY型ゼオライト CBV760(ゼオリスト社製) 500mg、1,2−ジクロロベンゼン 10mLの混合物を反応管に入れ、放射温度計を備えたマイクロ波照射装置(Biotage社製 Initiator、シングルモード型、2.45GHz、マイクロ波最大出力 400W)を用いて、攪拌しながら220℃で1時間反応させた。遠心分離器で固体を上澄み液と分離し、トルエン(6mLで1回)及びアセトン(8mLで3回)で固体を洗浄した。同じ条件でさらに1回反応と後処理を行い、2回分の上澄み液と洗浄液を合わせて減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で生成物を精製した結果、3−(2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル)−2−シクロヘキセン−1−オン(IIIb)を0.96mmol(収率49%、黄色粘性液体)得ることができた。
IIIbは文献未載の化合物であり、そのスペクトルデータ等は下記の通りであった。
元素分析: C 78.30, H
6.63 (測定値); C 78.48, H 6.59 (計算値).
1H-NMR (CDCl3): δ 2.13 (quint, J =
6.2 Hz, 2H, CH 2CH2CO), 2.46 (t, J = 6.2 Hz, 2H, CH 2CO),
2.74 (td, J = 6.2, 1.5 Hz, 2H, CH 2CH2CH2CO),
3.25 (t, J = 8.8 Hz, 2H, CH 2CH2O), 4.63 (t, J =
8.8 Hz, 2H, CH2O), 6.37 (t, J = 1.5Hz, 1H, HC=), 6.81 (d, J = 8.4
Hz, 1H, 芳香環H), 7.36 (dd, J = 8.4, 1.8 Hz, 1H, 芳香環H), 7.43 (d, J = 1.8 Hz, 1H, 芳香環H).
13C-NMR (CDCl3): δ 22.8, 28.1, 29.4,
37.2, 71.8, 109.4, 122.9, 123.5, 126.8, 127.9, 131.1, 159.6, 162.0, 199.9.
IR (液膜): ν 1656, 1597, 1583, 1494, 1440, 1371, 1349, 1328, 1282, 1236, 1190,
1136, 1108, 981, 960, 941, 883, 817 cm-1.
GC-MS (EI, 70eV): m/z (相対強度) 214 (M+, 100), 186 (87), 85(13),158(71),157(20),147(14),129(35),
128 (30), 127 (14), 115 (55), 91 (11), 77 (12), 65 (13), 64 (16), 63 (17), 51
(16), 39 (20).
(実施例37)
1,4−ベンゾジオキサン(Ic) 9.5mL、4−アセチル酪酸(IIa) 1.05mmol、H−SDUSY型ゼオライト CBV760(ゼオリスト社製) 500mg、1,2−ジクロロベンゼン 9.5mLの混合物を反応管に入れ、放射温度計を備えたマイクロ波照射装置(Biotage社製 Initiator、シングルモード型、2.45GHz、マイクロ波最大出力 400W)を用いて、攪拌しながら250℃で45分間反応させた。遠心分離器で固体を上澄み液と分離し、トルエン(6mLで1回)及びアセトン(8mLで3回)で固体を洗浄した。同じ条件でさらに2回反応と後処理を行い、3回分の上澄み液と洗浄液を合わせて減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=3/1)で生成物を精製した結果、3−(1,4−ベンゾジオキサン−6−イル)−2−シクロヘキセン−1−オン(IIIc)を1.42mmol(収率45%、淡黄色粉末)得ることができた。
IIIcは文献未載の化合物であり、そのスペクトルデータ等は下記の通りであった。
融点: 101-102℃.
元素分析: C 73.02, H 6.10
(測定値);
C 73.03, H 6.13 (計算値).
1H-NMR (CDCl3): δ 2.13 (quint, J = 6.2
Hz, 2H, CH 2CH2CO), 2.46 (t, J = 6.2 Hz, 2H, CH 2CO),
2.71 (td, J = 6.2, 1.5 Hz, 2H, CH 2CH2CH2CO),
4.27-4.32 (m, 4H, CH2O), 6.36 (t, J = 1.5Hz, 1H, HC=), 6.87-6.91 (m,1H,
芳香環H),
7.07-7.10 (m, 2H, 芳香環H).
13C-NMR (CDCl3): δ 22.7, 27.9, 37.2,
64.3, 64.6, 115.2, 117.5, 119.6, 124.1, 131.9, 143.6, 145.4, 158.9, 199.8.
IR (KBr): ν 1658, 1573, 1508, 1355, 1323, 1298, 1260, 1243, 1198, 1133, 1065,
883, 808 cm-1.
GC-MS (EI, 70eV): m/z (相対強度) 230 (M+, 100), 202 (87), 188 (11), 174 (73), 163 (18),146
(12), 118 (65), 115 (19), 91 (17), 90 (44), 89 (37), 77 (12), 76 (14), 63 (16),
51 (17), 39 (15).
実施例1及び実施例18においてマイクロ波照射装置の代わりにオイルバス加熱装置(理工科学産業社製、MH−5D)を用いて反応及び分析を行った実施例20及び実施例21では、IIIaの収率は、それぞれ28.6%及び20.8%であり、それらの値をマイクロ波照射装置の反応で得られた57.2%及び51.2%と比較すると、実施例1及び実施例18の方が2〜2.5倍高いことがわかった。
このことは、マイクロ波照射を用いた本発明の方法が、同じ反応温度・時間でのオイルバスによる通常加熱の方法に比べ、IIIaをより高い収率で効率的に製造できる傾向があることを示している。
一方、通常加熱でも反応条件を変えた実施例22ではIIIaが39.5%の収率で得られたことから、通常加熱による方法でも反応条件を調整することによりシクロヘキセノン類の効率的製造が可能である。
本発明の方法により、各種機能性化学品の中間体等として有用なシクロヘキセノン類を、より効率的かつ安全に製造できるため、本発明の利用価値は高く、その工業的意義は多大である。

Claims (6)

  1. 下記一般式(I)
    RH (I)
    (式中、Rは1価の炭化水素環系又は複素環系の芳香族有機基を示し、前記炭化水素環又は複素環の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
    で表される芳香族化合物と、下記一般式(II)
    CH3COCHCHCHCOH (II)
    (式中、メチレン基の水素原子の一部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
    で表される4−アセチル酪酸類を、固体酸触媒の存在下で反応させることを特徴とする下記一般式(III)
    (式中、Rは前記と同じ意味であり、メチレン基の水素原子の一部が式(II)に由来する反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
    で表されるシクロヘキセノン類の製造方法。
  2. 固体酸触媒として、ゼオライト、モンモリロナイト又はヘテロポリ酸を用いることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. ゼオライトとして、Y型、ベータ型、モルデナイト型又はZSM−5型の基本骨格を有するゼオライトを用いることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
  4. ゼオライトとして、シリカ/アルミナ比が2〜600のゼオライトを用いることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の製造方法。
  5. 反応をマイクロ波照射下で行うことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の製造方法。
  6. 下記一般式(IV)で表されるシクロヘキセノン類。
    (式中、Rは、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−イル基又は1,4−ベンゾジオキサン−6−イル基である。)
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