JP2012002545A - 天候検知装置及び天候情報収集システム - Google Patents

天候検知装置及び天候情報収集システム Download PDF

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Abstract

【課題】観測地点が高密度の観測網を安価に形成する天候検知装置及び天候情報収集システムを提供する。
【解決手段】傘取り付け部2003を介して傘に無線IDタグ2004が取り付けられる。携帯情報端末2005の無線タグ読取装置2007は、傘利用時に無線IDタグ2004を読み取り可能な距離が設定されており、無線IDタグ2004の読み取りを行う。傘利用判定部2008は、読み取ったIDとメモリ2009に予め登録されたIDとが一致する場合に、傘を利用していると判定し、IDを読みとれなかった場合及びメモリ2009に登録されたIDと一致しない場合、傘を利用していないと判定する。すなわち、降雨の有無を判定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ある地点における現在の天候を検知する天候検知装置と、様々な場所に配置された多数の天候検知装置によって観測された天候情報を収集して解析する天候情報収集システムに関する。
近年、東京等の都会地域においては、夏季に突然現われる集中豪雨、いわゆるゲリラ雷雨の被害が問題となっており、早急な観測体制が望まれている。しかし、従来の、例えば気象庁の地域気象観測システム(通称、アメダス)における観測装置は、17km四方に一台程度の密度で、10分に1度程度の頻度で観測データを収集することしかできない。これに対して、ゲリラ雷雨はごく狭い地域に短時間で集中して雨が降る局地現象であり、現在の気象観測網では網が粗すぎ、正確な観測が難しい。
そこで、ゲリラ雷雨等局地気象の現況情報収集には、現在の観測網よりさらにきめ細かい多地点での降雨観測が必要だが、従来の気象観測装置は高価かつ大型であり、都会では設置する場所にも制約がある。このため、極めて安価な降雨観測装置を多地点に配することができる降雨観測の仕組み、及び、それに供する降雨検知装置やその情報を収集するシステムの開発が望まれている。
このようなシステムの一例として、株式会社ウェザーニューズ社(以下、WNI)の「ゲリラ雷雨メールサービス」がある。これは、WNIの天気予報サービス会員が、目視や空の写真撮影により天候を観測し、それを携帯電話メール経由でWNIに送付し、WNIが集計し、ゲリラ雷雨を予測するというものである(非特許文献1参照)。
また、他のシステムとして、自動車のワイパーの動作を降雨の有無に関連付け、各自動車の走行地点における降雨の有無を収集するシステムが特許文献1及び非特許文献2等に開示されている。
特開2005−115854号公報
http://weathernews.jp/observation/ http://www.internetits.org/ja/projects/pdf/nagoya-press020124.pdf
しかしながら、非特許文献1に開示の技術では、天気予報サービス会員が、天候を観測し、情報を提供するという手間をかけなければならず、観測地点及び観測頻度が高密度の観測網による安定したサービスを長期にわたって維持するのは困難である。
また、特許文献1及び非特許文献2に開示の技術では、このような装置の設置費用を負担する自動車ユーザがそれに見合う利益を享受するものではなく、このようなシステムを普及させるのは困難である。
本発明の目的は、観測地点が高密度の観測網を安価に形成する天候検知装置及び天候情報収集システムを提供することである。
本発明の天候検知装置は、傘に取り付けられる無線IDタグと、傘利用時の前記無線IDタグとの距離が読み取り可能な距離に設定され、前記無線IDタグを読み取る読み取り手段と、前記無線IDタグが読み取れた場合、傘が利用されていると判定し、前記無線IDタグが読み取れない場合、傘が利用されていないと判定する判定手段と、を具備する構成を採る。
本発明の天候情報収集システムは、傘に取り付けられる無線IDタグと、傘利用時の前記無線IDタグとの距離が読み取り可能な距離に設定され、前記無線IDタグを読み取る読み取り手段と、前記無線IDタグが読み取れた場合、傘が利用されていると判定し、前記無線IDタグが読み取れない場合、傘が利用されていないと判定する判定手段と、現在地を示す位置情報を取得する位置情報取得手段と、前記位置情報及び傘の利用状態を示す傘利用情報を含む天候情報を送信する送信手段と、を有する天候検知装置と、前記天候検知装置から送信された天候情報に基づいて、前記天候検知装置の信頼度を算出する信頼度算出手段と、前記信頼度に基づいて、前記天候情報をフィルタリングするフィルタリング手段と、フィルタリングされた前記天候情報を用いて現時点における気象現況を示す統合天候情報を作成する作成手段と、を有する天候情報サーバと、を具備する構成を採る。
本発明によれば、観測地点が高密度の観測網を安価に形成することができる。
実施の形態1に係る天候検知装置の構成を示すブロック図 天候検知装置を実際に用いる場合の模式図 傘利用検知装置を傘に取り付けた様子を示す模式図 傘利用検知装置を傘に取り付けた他の様子を示す模式図 転倒検出センサを加えた構成を示すブロック図 実施の形態2に係る天候検知装置の利用形態を示す図 実施の形態3に係る天候情報収集システムの構成を示すブロック図 タイマーイベント(傘利用判定)のイベント処理の手順を示すフロー図 パラメータテーブルを示す図 気象観測データ取得部の従うアルゴリズムを示すフロー図 統合天候情報作成公開部の従うアルゴリズムを示すフロー図 天候情報サーバ制御部の従うアルゴリズムを示すフロー図 降雨判定の説明に供する図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
実施の形態1では、図1〜3を用いて本発明の天候検知装置の最小の構成について説明する。図1は、実施の形態1の天候検知装置2001の構成図であり、図1(a)と図1(b)とでは、物理的な形態が異なるが基本的には同じ内部構成を持つ。
2002は、傘利用検知装置であり、傘取り付け部2003と無線IDタグ2004から構成される。2005は、携帯情報端末であり、この端末は、天候アプリ制御部2006と、無線タグ読取装置2007と傘利用判定部2008とメモリ2009から構成される。なお、携帯情報端末2005は、スマートフォンや携帯電話として実装されることを想定しており、これらモジュールの他に、通常のスマートフォンや携帯電話が備えているようなモジュールを備えているとする。
天候アプリ制御部2006は、ユーザの明示的な指示等で起動され、その後、他モジュールを制御して、初期設定及び天候検知動作を行わせる。具体的なアルゴリズムについては、後述する。
無線IDタグ2004は、RFID(Radio Frequency IDentification)タグ、無線タグとも呼称され、無線タグ読取装置2007から無線電波による問い合わせを受けると、内部の保持しているIDを返す。
本実施の形態では、電源を要しないパッシブ型の無線IDタグを想定しているが、これはタグが安価だからであり、アクティブ型の無線IDタグでも利用することができる。なお、無線IDタグと無線タグ読取装置間には、読み取り可能な距離(読取距離)があるが、本実施の形態では、読取距離がある一定の範囲内にあることが必要である。すなわち、読取距離は、天候検知装置の想定ユーザのうち典型的ユーザが、雨天時に傘をさした時の傘中央(傘を張った場合の下ろくろの位置)とユーザの頭の距離よりも大きく、ユーザの腰部とユーザの頭の距離程度よりも小さいものであることが必要である。この理由は後述する。
図1(a)は、1つの筐体内に全てのモジュールが内蔵されている場合で、図1(b)は、無線タグ読取装置を携帯情報端末2005の筐体内から取り出し、その間をケーブル2011で結んだ構成である。物理的形態が2通りある理由は後述する。
図2は、天候検知装置を実際に用いる場合の模式図である。3001は、傘利用検知装置であり、3002は、携帯情報端末である。3003は傘であり、傘利用検知装置3001は、傘3003の受け骨に取り付けられている。3004は、ユーザである。
図2(a)は、ユーザ3004が、傘3003を利用している(つまり、「傘をさしている」)場合で、図2(b)は、傘を利用していないし、携帯もしていない場合で、図2(c)は、傘を携帯している(この場合は手で持って運んでいる)場合である。
3005は、無線タグ読取装置2007の読取範囲を模式的に表したものである。
図3は、傘利用検知装置を傘に取り付けた場合の模式図である。図3(a)は、傘全体を見渡した図であり、図3(b)は、図3(a)の破線で丸く囲んだ部分を拡大したものである。
6001は、無線IDタグであり、傘取り付け部6002を介して、傘の受け骨の一本の6003に取り付けられている。傘取り付け部6002は、図7の1011、図1の2003と同じもので、紐やカラビナ、針金、フック等、受け骨にぶらさげられるものであれば、どのようなものでもよい。さらには、このように物理的な形状を用いて引っ掛けるものではなくて、例えば接着剤、両面テープなどの粘着性を利用して傘の任意の部分に接着させるものであったり、磁石などの磁力で接着させるものであったり、そもそも最初から傘内部の任意の場所に組み込んであってもよい。例えば、図4の(a)のように、中棒の上の方(7001)や、図4(b)の手元部分(7002)に貼付してもよい。なお、傘の構成は、図3(a)に示す通り、石突6006、親骨6007、はじき6008、玉留6009及び手元6010を備えている。
次に、以上のように構成された天候検知装置について、その動作を説明する。まず、この天候検知装置2001の初期設定を行う。天候アプリ制御部2006には、初期設定モードが備わっているとする。初期設定モード中では、無線タグ読取装置2007は無線IDタグの読取動作に入り、無線IDタグ2004が内部に保持しているIDを読み取ると、天候アプリ制御部2006は、それをメモリ2009内に記憶する。記憶させたところで、初期設定モードが終了する。
初期設定モードの起動は、ユーザ等の指示によって開始され、その後、ユーザは無線IDタグ2004と無線タグ読取装置2007を読み取り可能距離以下に接近させる。その後、自動的に初期設定モードは終了する。
初期設定により、無線IDタグ2004のIDが取得できたが、これは、他の用途に利用されている無線IDタグと本発明の用途に利用される無線IDタグを区別するために利用される。よって、無線タグ読取装置2007が読み取れるタグは、傘利用検知にしか利用されないのであれば、この初期設定は省略することが可能である。
次に、天候検知装置2001を利用するには、傘利用検知装置2002と携帯情報端末2005が、所定の位置に取り付けてある必要がある。まず、傘利用検知装置2002は、ユーザ3004が利用している傘に取りつけられている必要がある。この取り付け方法に関しては、前述した通りである。
一方、携帯情報端末2005は、ユーザ3004の頭部3002に装着されているか、または、少なくとも無線タグ読取装置2007が頭部3002に装着される必要がある。前者の場合の携帯情報端末の構成を表した模式図が、図1(a)であり、後者が図1(b)である。
携帯電話のような手持ちが前提のモバイル端末を頭部に装着するのではなく、これは、ヘッドマウントディスプレーやヘッドセットを入出力装置として持つ携帯情報端末(またはウェアラブルコンピュータ)を前提として考えたものである。例えば、ヘッドマウントディスプレーとスマートフォン上に、本携帯情報端末2005が実装されている場合に、ヘッドマウントディスプレー内に本携帯情報端末2005全てを格納することも可能であるし(図1(a)の場合)、無線タグ読取装置2007のみヘッドマウントディスプレー内に実装し、残りのモジュールは、スマートフォン内に実装し、その間をケーブルで繋ぐことも可能である(図1(b)の場合、ここでケーブルは、2011を指す)。
いずれにしろ、無線タグ読取装置2007は、ユーザ3004の頭部3002に装着されることとなる。
さて、天候検知装置2001を所定位置に装着した後、ユーザの指示等により天候アプリ制御部2006が起動される。当然ながら、ユーザが起動せずとも、携帯情報端末2005が起動すれば自動で起動されるようにしてもよい。
起動後、天候アプリ制御部2006は、以下の(1)から(4)を、繰り返す。
(1) 無線タグ読取装置2007を起動し、無線IDタグの読取を行う。
(2) 読取に失敗したら、IDは不定値のまま(3)に進む。成功したら、傘利用判定部2008に読みとったIDを渡す。
(3) 傘利用判定部2008は、読み取ったIDをメモリ2009内に格納されているIDと比較し、同一であれば、傘が利用されていると判定する。すなわち降雨があると判断できる。そうでなければ、傘は不利用と判定する。IDが不定値の場合も傘は不利用と判定する。傘の不利用は降雨なしとの判定となる。
この判定をメモリ2009の所定部分に記録する。
なお、前述したように、初期設定が不要な場合は、傘利用判定部は、常に傘利用すなわち降雨の判定を下す。
(4) 一定時間休止する。
ここで、ステップ(3)の判断ができる理由について図2を使って説明する。図2の3005は、無線タグ読取装置3002の読取可能範囲を表わしたものである。読取可能範囲3005は、典型ユーザが傘をさしている場合の頭部から傘中央(下ろくろ)までの距離より大きく、頭部から腰部の距離より小さいよう調整してある。よって、典型ユーザとほぼ同じ体格のユーザであれば(ユーザ3004は、そうだとする)、傘利用の場合(図2(a))は、読取可能となる。
一方、不利用の場合(図2(b)、傘を傘立などに放置し、ユーザの身近にない場合)や、傘を持ち運んでいる場合(図2(c))などは、傘中心に取りつけられた無線IDタグ2004は、読取可能範囲3005の圏外に出るために、読み取れないこととなる。よって、読み取りの可否から、傘を利用しているかどうかが推測でき、さらに、ユーザの周囲の降雨は現時点であるのかないのかも推測できることとなる。
ここで、読取可能範囲3005の大きさの決め方について補足しておく。まず読取可能範囲3005の大きさについては固定でも可変でもよい。固定の場合は、天候検知装置2001の想定ユーザのうち、典型的ユーザの体格や傘のさし方に合わせて、予め読取可能範囲3005の大きさを設定しておく。これに対して、読取可能範囲3005が可変の場合は、個々のユーザに合わせて読取可能範囲3005を設定することで、天候検知装置2001の精度を向上させることができる。
これには、例えば、あるユーザが天候検出装置2001を初めて使う場合に、携帯情報端末2005からユーザに傘を挿すように指示し、その状態で読取可能範囲3005を小さな値から大きな値まで変化させ、無線IDタグ2004が読取可能な読取可能範囲3005の大きさを調べる(この半径をR1とする。R1は1つの値ではなく数値の集合である)、次にユーザに傘挿しをやめて移動中のように傘を保持するように指示したところで、同様に読取可能範囲3005を変化させ読取可能な読取可能範囲3005の大きさを検出する(この半径をR2とする。R2も数値の集合である)。その上で、読取可能範囲3005の半径を、R1の最小値より大きく、R2の最小値より小さいように設定すれば、適切な読取可能範囲3005の設定ができる。
また、自動計測するのではなく、ユーザに利用状況を入力させ、その値に従い読取可能範囲3005の設定をすることもできる。つまり、ユーザの身体的特徴(身長や性別、利き手)、情報携帯端末2005の使い方(普段どこに入れて持ち歩くのか)、傘の使い方や種類(持ち歩くときはどうやっているのか、折り畳み傘か、大きさ、傘はどちらの手で持つか)、傘利用検知装置2002はどこに取り付けたかなどを、ユーザに情報携帯端末2005を通じて入力させる。すると、ユーザの傘利用時と非利用時における情報携帯端末2005と傘利用検知装置2002との距離がそれぞれ、R1、R2と推定できるから、読取可能範囲3005の大きさは、R1とR2の間(中間)の値に設定してやればよい。
なお、読取可能範囲3005を可変とするための方法については、無線タグ読取装置2007や無線IDタグ2004の電波強度や感度を可変とする方法も他に、ソフトウエア的に擬似的に読取範囲を可変とする方法がある。後者については実施の形態3で述べる。
このように実施の形態1によれば、傘に無線IDタグを取り付け、傘利用時に無線IDタグを読み取り可能な距離が設定された携帯情報端末が無線IDタグの読み取りを行い、無線IDタグの読み取りの可否に応じて、傘の利用又は不利用、すなわち、降雨の有無を判定することにより、安価な無線IDタグを傘に取り付けるという簡易な手順で天候情報を取得することができるので、観測地点が高密度の観測網を容易に形成することができる。
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1の無線IDタグに簡単なセンサを組み合わせることで、降雨の推測をより確からしいものにできることを示す。
本実施の形態の天候検知装置も、図1のような構成をしている。ただし、無線IDタグ2004に転倒検出センサ(または転倒検出スイッチ、転倒スイッチとも呼ばれる)を付け加える。
図5に転倒検出センサを加えた一例を示す。図5(a)は、転倒検出センサを加える前の典型的な無線IDタグの構成図であり、図5(b)は、その外観の模式図である。
無線IDタグは、IDが記憶されているメモリ5005と、外部からの電波を受信したり、また送信したりするループアンテナ部5002と、外部からのIDの読み出し要求を解釈し、それに対してIDをメモリ5005から読み出し、データ送受信部5003を使ってIDを返す制御部5004からなる。データ送受信部5003、制御部5004、メモリ5005は、1つのICチップ(IC部5006)としてまとめられており、それに比べて、ループアンテナ部5002は、巨大で、例えば図5(b)に示したような外観を呈している。
このような無線IDタグ5001に、転倒検出センサを加えて、無線IDタグに鉛直方向を定義し、その鉛直方向から無線IDタグがある角度以上傾いた場合は、無線IDタグが機能しないようにすることができる。ここで、無線IDタグが機能しない(機能オフ)とは、外部から無線IDタグの読み出し命令があった場合でも、それに対して応答しないことをいう。
図5(c)は、その構成図で、図5(d)は、その外観の模式図である。鉛直方向(上方向)は、図5(d)の矢印に示した通りの向きである。
ここでは、転倒検出センサとして、水銀スイッチを利用するとする。この場合、構成は単純で、図5(c)のように、5012部分の配線を切断し、その間に転倒検出センサ(水銀スイッチ)5011を挿入する。あとは、図5(d)のように、水銀スイッチ5011の方向を調節して、鉛直方向に無線IDタグがある場合に、スイッチが入り、鉛直方向からある程度(例えば45°程度)以上傾いた場合にはスイッチが切れるようにすればよい。
なお、水銀スイッチは、構造が簡単で非常に廉価であるが、水銀の毒性も心配されるため、その代替品として、加速度センサや金属球によるスイッチを利用することもできる。金属球による転倒検出スイッチの場合は、水銀スイッチと構成の方法は同様である。
加速度センサを使う場合は、無線IDタグの内部に加速度センサの加速度値から、無線IDタグ全体の傾きを演算して、傾きがある程度以上の場合は、無線IDタグが機能しないようにすることとしてもよい。または、そのような傾き計算や機能をオフにすることは、携帯情報端末2005の傘利用判定部2008が行い、無線IDタグは、傾きに関係なくオン状態のまま、IDとともに、加速度値を返すようにしてもよい。具体的には、無線IDタグからID及び加速度値を取得した傘利用判定部2008は、傾斜角が一定の範囲内の場合、傘が利用されていると判定し、傾斜角が一定以上となった場合、傘が利用されていないと判定する。
このように構成した転倒検出センサつき無線IDタグを傘のとりつけた様子を図3に示す。図3の(a)は、全体図で、図3(b)が、その取り付け部分(図3(a)の破線で囲んだところ)を拡大したものである。
転倒検出センサ付き無線IDタグ6001には、傘取り付け部6002をつけ、傘にとりつけられるようにする。傘取り付け部6002は、紐や針金等で結んで使うものでもよいしフックやカラビナなどの取りつけ具でもよい。つまり、簡単に傘の骨(受骨)にとりつけ、そのままぶら下げることができるものならばよい。あるいは、粘着テープのようなもので、傘の中棒6004に貼って固定するものでもよい。この固定タイプの場合は、無線IDタグの上方向と、傘の上方向が一致させて貼ることが必要である。
図3(a)は、受骨6003に無線IDタグを吊した例である。本実施の形態では、受骨に吊したが、親骨6007に吊しても問題はない。図3の例では、受骨6003に無線IDタグ6001は吊されていることで、無線IDタグ6001の上方向が、重力の鉛直上方の方向と一致するために、無線IDタグの機能はオンになっている。
図6(a)〜(c)には、実施の形態1に係る天候検知装置の利用形態を示す。いずれの場合にもユーザ4000は、携帯情報端末4001を胸のポケット等に入れているとする。また、本実施の形態では、無線タグ読取装置2007が、無線IDタグ2004を読みとれる距離は、1メートル以上(平均的なユーザの身長の5〜6割程度以上)とする。
このような利用形態において、図6(a)の「傘を利用している場合」は携帯情報端末4001と、傘利用検知装置4002との距離は1メートル以下で、かつ、傘利用検知装置4002は、傘が開いている状態では吊り下っている状態であるから、転倒検出センサの働きにより機能がオンになっている。つまり、この場合、携帯情報端末4001は、傘利用検知装置4002から、そのIDを読み取ることができる。
図6(b)の「傘不利用の場合」であるが、通常傘を利用していない場合は、傘立に入っていたりしているはずで、ユーザから離れているところにおかれるし、また、傘も石突方向を下に向けて畳んでおくので、転倒検出センサの働きて機能がオフになることが多いと考えられる。よって、この場合は、携帯情報端末4001は、傘利用検知装置4002から、そのIDを読み取ることができない。
図6(c)の「傘携帯の場合」であるが、携帯の場合は、図のように手で傘の手元6010を持ったり、あるいは、折り畳み傘であれば、畳んでカバンの中等に寝せていれておいたりする。この図6(c)の場合は、携帯情報端末4001と傘利用検知装置4002の距離的には、読取可能範囲に入っていることが多いと考えられるが、転倒検出センサの働きで機能はオフになることが多いと考えらえる。よって、この場合は、携帯情報端末4001は、傘利用検知装置4002から、そのIDを読み取ることができない。
これに対して、実施の形態1の仕組みでは、情報端末4001と、傘利用検知装置4002の距離だけで、IDの読取の成否が決まってしまうから、例えば、図6(c)のような場合は、IDは読取可能で、すなわち傘利用判定部2008は、傘を利用しているとの誤った判定を下すことであろう。
ここで、転倒検出センサとして加速度センサを利用する場合について補足する。転倒検出センサとして加速度センサを利用する場合は、傘が何度傾いているかの角度が分かるが、この傾きをある閾値(パラメータ)と比較して転倒の判断をすることとなる。つまり、加速度センサによって得られた傾きが、メモリ2009に保持されている当該パラメータを超えている場合は、転倒とみなすような計算が行われる(これについては、実施の形態3にてより詳しく述べる)。メモリ2009に保持されたそのパラメータは、初期値として当該天候検知装置2001が想定する典型ユーザに合わせたデフォルト値が設定されていることになるが、これを、各個別のユーザに合わせて設定しなおすことも可能であり、そうすれば天候検出の精度に寄与することになる。
パラメータの設定の方法については、実施の形態1に示したと同じように、例えば利用初回時に、実際にユーザに傘を挿させて、その傾きを測定し(Vとする)、そのVの値に多少余裕を持たせて、傾き閾値のパラメータとして設定してやればよい。例えば、V値の1割増しをパラメータとして設定するなどである。または、Vは何度も測定し、その中の最大値をパラメータとして設定すれば、より天候検出の精度が上がることが期待できる。
また、実施の形態1の場合と同様に、自動計測するのではなく、ユーザに利用状況を入力させ、その値に従いパラメータの設定をすることもできる。
このように実施の形態2によれば、転倒検出センサを傘利用検知装置に組み込むことにより、より正確に傘利用を推測することができる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、実施の形態1または実施の形態2で説明したような傘側の装置単独による判断に加えて、傘の降雨推定データを収集サーバに収集し、データ全体に確率的な判断を加えることで、より推定を精密にできることを示す。同時に、収集サーバから、傘側にその傘が出した降雨判定の確からしさについてフィードバックをかけることで、傘単独での降雨推定の精度をあげることができることを示す。
図7を用いて、本発明の実施の形態3に係る天候情報収集システムの構成を説明する。まず、1000は天候検知装置である。天候検知装置1000は、傘利用検知装置1010と携帯情報端末1020から構成される。
傘利用検知装置1010は、傘取り付け部1011と無線センサタグ1012から構成され、これは、第2の実施の形態で示した転倒検出センサつき無線IDタグ5010と同様のものである。ただし、本実施の形態では、転倒検出スイッチとして加速度センサを用いるとする。つまり、無線センサタグ1012は、外部からの読取要求に応じて、無線センサタグ1012が保持するIDと、加速度値を渡すことができる。加速度値としては、傘利用検知装置の鉛直方向(図3(b)の矢印方向)を算出できるだけの加速度値が渡されるとする。
ここでは説明の便宜上、無線センサタグ1012には、1軸の加速度センサが内蔵されており、それは、傘利用検知装置の鉛直方向の下方向向きの加速度を計測しているとする。これは、3軸の加速度センサを搭載して、傘利用検知装置の鉛直方向の下方向向きの加速度成分を計算しても同等である。
携帯情報端末1020は、無線センサタグ1012から読みとった、ID値と加速度値等から傘利用判定を行い、それをあらかじめ定められた天候情報サーバ1040に渡すとともに、天候情報サーバ1040からは、各種天気現況あるいは予報を受けとり、それをユーザに提示することができる。さらには、天候情報サーバ1040から受けとった情報をもとに、より傘利用判定を正確にするための学習を行うこともできる。
本実施の形態では、説明のため、これらの機能はアプリケーションとして1つにまとめられているとし、そのアプリケーションが天候アプリ制御部1021である。天候アプリ制御部1021は、ユーザインタフェース1028と介して、ユーザに情報を提示したり、ユーザから命令を受けとる。またユーザからの命令などの外部からの入力やイベントに従い、各種サブモジュールやメモリを参照書き込みしながら、処理を進めていくことができる。
1022〜1028は、サブモジュールである。
無線タグ読取装置1022は、読取命令を受けると、無線センサタグ1012から、ID、加速度値及び、無線センサタグが応答してきた電波強度を読み出すことができる。
傘利用判定部1023は、無線タグ読取装置1022が読んだ、ID、加速度値及び、無線センサタグが応答してきた電波強度及び、メモリ1029に記録されているパラメータ、信頼度から、傘利用判定を行うことができる。
1024は、広域位置情報取得部であり、現在地を示す位置情報を取得する。いわゆるGPS(Global Positioning System)である。
1025は、気象情報閲覧アプリで、ネットワーク1060を通して、各気象サーバ(1061や1040)の気象データを閲覧することができる。
1026は、パラメータ学習部であり、より精度が高い傘利用判定、つまり降雨判定をするための学習を行う。
1027は、データ命令送受信部であり、ネットワーク1060を介してデータや命令の送受信を行うためのネットワークインタフェースである。1028は、ユーザインタフェースであり、さらにディスプレーやスピーカー、キーボード、マイク等の入出力デバイスやGUI(Graphical User Interface)システムからなる。
一方、天候情報サーバ1040は、多数の天候検知装置から情報を収集し、天気現況の解析を行うとともに、各天候検知装置があげてきた観測データの信頼度を計算することができる。そして、得られた天気現況や予報について、各天候検知装置に教えるとともに、信頼度をフィードバックすることができる。
1041〜1046は、天候情報サーバ1040のサブモジュールである。
1041の天候情報サーバ制御部は、各サブモジュールの動作制御を行う。
1042は、天候データ集計部であり、各天候検知装置からのデータを集計する。
1043は、信頼度算出手段としての端末信頼度学習更新部であり、過去の各天候検知装置からのデータと実際の天候情報に基づいて、各天候検知装置の信頼度を計算し直す。1044は、統合天候情報作成公開部であり、各天候検知装置に対して天候に関する現況、予報を公開するとともに、各天候検知装置にその信頼度をフィードバックする。1045は、天候情報サーバ1040外から、気象観測データを取得するものである。1046は、データ命令送受信部であり、ネットワーク1060を介してデータや命令の送受信を行うためのネットワークインタフェースである。
1047はメモリであり、データを記録し、書き変え、削除することができる。
1001は、気象データサーバであり、公設の天気情報組織や民間の天気予報会社等のデータサーバであって、そこには、信頼度が非常に高い気象観測装置で観測された(例えばアメダスの観測値)データ(1062)が記録されており、ネットワーク1060を通して、天候情報サーバ1040は、データを参照することができるものとする。なお、アメダス(AMeDAS: Automated Meteorological Data Acquisition System)とは、気象庁の「地域気象観測システム」の愛称であり、日本全国の約1300箇所に設置された観測機器から構成される。
1060は、ネットワークである。
以上のように構成された天候情報収集システムの動作を以下で説明する。
まず、天候検知装置1000の概要と動作詳細を説明する。本システムでは、1つの天候情報サーバ1040に対して、複数の天候検知装置が対応している。天候検知装置のうち携帯情報端末部分は、それ専用の機器というよりは、携帯電話やスマートフォン、あるいは小型のノートPCに無線タグ読取機能を付加した構成を想定している。無線タグ読取機能は、携帯電話等に内蔵されていてもよいし、また、外付けされてもよい。さらに、傘利用検知装置に関しては、天候情報サーバを運営する会社や団体が、販売や配布することを仮定している。つまり、天候情報サーバ運営団体は、傘利用検知装置を多数のユーザに無料配布し、そのかわりに、傘利用判定部1023が出力する傘利用(つまり、降雨の有無)のデータを収集し、その運営団体自らの天候情報の精度向上に資する。
そのため、傘利用判定部の価格は、十分安価で大量に生産可能で、かつ、取り付けが容易なものでなければならない。また、ユーザが傘に取り付けるインセンティブとして、例えば、傘利用検知装置1010の外観をマスコット人形(例えば、てるてる坊主)、いわゆるフィギュア(アニメのキャラクターなどの立体造形物)、またはトレーディングカード風にしたりすることが有効である。同様に、ユーザが傘利用判定データを天候情報サーバ1040にアップロードする対価として、天候情報サーバ1040が集計し、見易いように加工したデータ(例えば、ユーザの詳細周辺地図に降雨地域を重ねて表示したもの)や、短時間局所の天気予報等を得られるようにする必要がある。
ユーザは、傘利用検知装置1010を手に入れ、自分の傘の所定部分(図3参照)に取りつけたとする。また、同時に自分の携帯情報端末(携帯電話やスマートフォン、通信機能つきノートPC等)に、必要なソフトウエアをインストールする。必要なソフトウエアとは、天候アプリ制御部1021、傘利用判定部1023、パラメータ学習部1026等である。これらのアプリケーションのインストール方法は、ユーザの持つ携帯情報端末それぞれの方法で行う。
傘利用検知装置1010がユーザの傘に取り付けられ、携帯情報端末1020にも必要なソフトウエア等がインストールされると、天候アプリ制御部1021は、まず初期化動作を行う。いつの時点でどのように初期化を行うかは、ソフトウエアを使い易くするための工夫の範疇であり、例えば、ダウンロード直後に自動で始まる、最初に作動した時に自動で始まる、等が考えられる。具体的な初期化の内容であるが、天候アプリ制御部1021の動作に必要なパラメータ、信頼度、タグIDのデフォルト値への設定と、過去のセンサ測定値の無効化である。
天候アプリ制御部1021は、作動すると、必要な初期化処理を行ったのちに、イベント待ちとなる。天候アプリ制御部1021が待つイベントは、以下の2種類である。
(1) タイマーイベント(傘利用判定)
(2) パラメータ学習命令
以下では、図8のフローチャートを参照しながら、タイマーイベント(傘利用判定)のイベント処理について述べる。
傘利用判定のためのタイマーイベントは、パラメータテーブル1030に1つのパラメータとして格納されている「無線タグ読み取り間隔(図9のパラメータテーブル)」の間隔に従い発生するイベントであり、ここでは2分間隔でイベントが発生しているとする。
天候アプリ制御部1021は、そのタイマーイベントを受けとると、図8のフローチャートに従い、まず無線タグ読取装置1022を作動させ、無線センサタグ1012から読取を行う(9001)。読取結果は、次の4つ組で表わされるとする。(result level id acc)
ここで、resultは、無線センサタグ1012の読み取りができた場合には1、できなかった場合には0で示す。levelは、無線センサタグ1012が返した応答の電界強度レベルで0〜10の値を取る。idは、無線センサタグのIDで、適当なユニークな自然数である。accは、鉛直方向の加速度である。傘が石突を上に直立していれば(傘をさしている場合)、980である(地球の重力加速度。単位はGal)。
なお、本実施の形態では4つ組であるが、4つに限ることが必要なわけではない。他に有用なセンサを搭載可能であれば、例えば、センサのタイプ等が入ってもよいし、電子コンパスの値(方角)、気温、湿度など、各種センシングの値が考えられる。
次に、ステップ9001で取得したセンサ値の補正が必要であればこれを行う。例えば、本実施の形態では、説明を簡単にするために、加速度値(acc)は、鉛直方向の値を直接とれるようにしているが、実際の生データは3軸の加速度(x、y、z方向の加速度)値で、鉛直方向の値は計算が必要であったり、また、加速度値は細かく変動することが多いため、短時間に何回も計測して平均をとったりする必要がある。
補正が終了すると、GPSから現在地情報を取得し、また、パラメータテーブル(1030、8000)を読みこみ、また、過去のセンサ値も必要な分だけ読みこむ(9002)。
次に、傘利用判定のステップ9003に進む。
この判定式は、「傘を利用しているかどうか」を意味するもので、判定式が真(はい)の場合は、利用している、偽(いいえ)の場合は、利用していないことを意味する。なお、“=”は等号を、“>=”は「以上」の判定を、“>”は「より大きい」の判定を表し、“and”は論理的積のオペレータで、表記はS式で記載した。
((result=1)and
(id=(タグID1032に保持された値))and
((level>=(パラメータテーブル8000の電界強度閾値の値))and
(acc>(パラメータテーブル8000の傘傾き閾値の値)))
判定式の1行目は、「無線タグが読みとれたか」を示す。読みとれなかった場合(値=0)、少なくとも傘がユーザの近くにはないということを意味し、ユーザは傘を利用していないことが推測できる。
次に、2行目であるが、タグID1032には、初期化時に記録されたタグのIDが記録されている。この記録されたIDと、今読みこんだIDが異なる(つまり2行目が偽)ということは、その無線タグが傘についているものではない(たまたま読取可能な同種の無線IDが近くにあった)ことが推測でき、これもユーザが傘を利用していないことの根拠となる。
3行目に関しては、後の学習過程で説明する。この時点では、パラメータテーブル8000記載の電界強度閾値としては、0が入っているから、ここは常に真となる。
4行目は、傘の傾きである。パラメータテーブル8000の傘傾き閾値は849で、これは、980×cos(30°)(Gal)に相当する。つまり、30°傘が傾いている時に観測されるべき鉛直下向きの加速度の大きさで、これ以下ということ(つまり4行目が偽)は、傘が30°以上傾いているということで、これも傘を利用していないことが推測される。
全体として真になれば、ユーザ傘を利用していると推測される。偽の場合は、利用していないと推測される。
判定が出ると、次にステップ9004に進む。ここでは、その判定結果に、id値、GPSによる現在地情報を組みにして、データ・命令送受信部1027を利用して、天候情報サーバ1040に送付する。
次に、データを受けとった天候情報サーバ1040の動作について説明する。
サーバでは、天候情報サーバ制御部1041と統合天候情報作成公開部1044と気象観測データ取得部1045が同時並列に動作している。
気象観測データ取得部1045は、図10に示すアルゴリズムで動作する。つまり、周期的に外部の気象データサーバ1061が保持する気象観測データ1002から、必要な気象観測データを取得してメモリ1047内に気象観測データ1050として記録する(10022)。
取得する気象観測データとしては、各観測地点の気象観測値や雨のレーダーデータである。取得間隔は、取得対象の気象観測データの更新周期にあわせる。
統合天候情報作成公開部1044は、図11のアルゴリズムで動作する。これも、周期的に統合天候情報を作成し、メモリ1047に統合天候情報として記録する(10012)。統合天候情報は、気象観測データ取得部1045が取得した気象観測データ1050と、天候情報サーバ制御部1041が作成した天候データ1048をつきあわせて、信頼度が高いと思われる気象の現況及び予報を統合天候情報1051として作成する。
天候情報サーバ制御部1041は、図12のアルゴリズムで動作する。まず、天候情報サーバ制御部1041が、データ命令送受信部1046が、各天候検知装置から天候情報がアップロードされてくるのを監視している(図12の10001)。
ここで、天候情報が受信されると(10002)、そのデータを気象観測データ取得部1045が取得した気象観測データ1050と、各天候検知装置が送ってきたものに信頼度の修正を加えた天候データ1048と比較して、受信した天候情報の確度を計算し、それに基づきその天候情報を送った天候検知装置(以下、単に「端末」という場合は天候検知装置を指す)の信頼度を計算する(10003)。
ここで、信頼度とは、端末がアップロードした天候データがそれを信頼すべきデータとして用いることができるかどうかの値である。
信頼度の具体化には各種のものが考えられる。精密な計算を行う必要があれば、端末があげる天候データには確率的な揺らぎが存在すると考えて、そのゆらぎになんらかの確率分布を仮定して条件付確率としてとらえてもよい。また、確率ではなく、尤度の一種と考えてもよい。
例えば、条件つき確率P(X|Y)を、Xは傘を用いたと検知される確率で、Yは、降雨の確率とすれば、ベイズ推定等を用いて、P(Y|X)、つまり、Xとの天候情報があげられた場合の、Y(降雨)があった確率を推定することができる。
ただし、P(X)のような、「傘を用いたと検知される確率」を表現するようなモデルは、ある程度複雑になり端末の数が膨大になると計算量も膨大になる一方、降雨の推定という点では、各々の端末の信頼度の不正確さは、端末の数でカバーできると考えられる。そこで、本実施の形態の場合は、確率モデルベースの信頼度は使わない。本実施の形態の場合、信頼度とは、端末がアップロードした天候データが「傘利用(すなわち降雨あり)」の場合、それを信頼すべきデータとして用いることができるかどうかの値であるが、これは確率や定義された尤度ではなく、直感的なものである。
本実施の形態における信頼度は、0.0以上、1.0以下の値をとるとする。0の場合は、アップロードされた天候データは全く信用できない(正しい値かどうか不明)として、データから棄却される。1の場合は、信頼できる(つまり、その地点では必ず雨が降っている)という意味となる。
さて、ここで信頼度の計算と更新が行われるが、その説明上で使われる記号の意味を先に述べておく。
天候データ1048は、全端末からアップロードされたデータが蓄積されたテーブルで、各々の要素 w(n)は、次のように表現される。
w(n)=(id time pos result acc)、nは1〜現在格納された全要素の数
ここで、idは、端末ID、timeは登録日時、posは、位置情報(経度、緯度、光度)、resultは、降雨の有無、accは、傘鉛直方向の加速度である。天候データの要素は、idとtimeの値でユニークに識別される。w(n)は、変数wのインデックスnを表現するとする。信頼度は、端末データ1049中に、idに紐づけられて格納されているとする。また、今端末があげてきた天候情報を、w(n+1)とする。
信頼度の計算及び更新は、以下の(1)〜(4)のように行われる。
(1) 信頼度は、端末データ1049内に、端末毎に1つ設定されている。
(2) 初めて天候情報をアップロードしてきた端末に対しては、信頼度の初期値として、0.5が割りあてられ、(3)に進む。
(3) 以下の順番で当該端末に対する信頼度を計算する。
(3−1) 既に天候データ1048に格納されたデータからの信頼度の計算を行う。
(3−1−1) w(n+1)を基準に、time値の差が2分以内であるもの、及び、posの値のずれが100m以内であるものを検索する。これをw(n+1)の近傍と呼ぶ。w(k)の近傍を、S(k)で表わす。
この結果を模式的に示したものが、図13(a)である。これは、S(n+1)と、その周辺の天候データを地図風にプロットしたものである。黒丸はw(i)のresult値が1(降雨)のもの、白丸は0(降雨ではない)ものを示している。また×印(11001)は、w(n+1)、つまり当該端末の場所を示す。このうち、半径R(=100メートル)以内(11002の破線円内)のものが、前述の近傍S(n+1)である。この例では、図13(a)のA、B、C、D、E、Fの集合が近傍である。
(3−1−2) w(n+1)近傍内での降雨判定を行う。これには、まず信頼度が低い天候データを排除(フィルタリング)し、次に降雨あり、降雨なしの天候データの数、信頼度を勘案して、降雨判定を行う。
まず、近傍S(n+1)から、信頼度が一定の閾値未満の天候データを排除する。閾値としては、0.3を利用する。今回の場合は、S(n+1)={A、B、C、D、E、F}の信頼度は全て0.3を上回っているとして、排除されたものはないとする。
次に降雨判定を行う。ここでは、単純に信頼度でフィルタリングされた後の近傍S(n+1)のデータでの多数決で行う。今回の場合では、降雨ありとしているのは、{A、B、C、D}の4つ、降雨なしは、{E、F}の2つであるから、4対2で、この近傍での降雨判定は「あり」となる。
なお、近傍に天候データがなかった場合は、判定はできない。また、同数であった場合は、降雨ありとする。
信頼度を重みとした重みつき多数決(例えば1票に信頼度を掛けたものを合計する)をすれば、多少の精度の向上は得られると思われる(ただし、その分処理は遅くなる)。
さらには、信頼度を尤度と捉え直して、ベイズ学習、ベイズ推定を利用すれば、信頼度の値自身が精度の高いものとなろう。ただし、このためには、学習過程(ここでは、天候データの実際の真偽をなんらかの形で取得しなければならない)と、もう少しの処理能力が必要となる。
また、降雨判定に、アメダス等の信頼度が非常に高いデータを利用することも考えられようが、そもそも、この降雨判定は、アメダス等の信頼度が高いが、観測密度が場所的にも時間的にも疎である観測網のすきまを埋め(アメダスは、2009年現在、観測地点間は10キロメートル以上、時間的には10分に一度程度の情報しかえられない)、また、降雨レーダー等のエラーや誤差を補うものであるため、この方法はあまり得策ではない。
(3−1−3) 降雨判定と、w(n+1)のresult値に従い、w(n+1)をアップロードした端末の信頼度(以下、ll(n+1)と表記)を更新する。
以下のアルゴリズムで降雨判定を更新する。ここでは、w(k)はwとし、wの要素はw=(id time pos result acc)と表す。また、llはwをアップロードした端末の信頼度とし、RESは(3−1−2)で行われた降雨判定の値とし、降雨ありを1、降雨なしを0、不明を−1とする。
(数1)
if(RES==result)then
ll=(1−α)ll+α …(1)
elseif(not(RES==−1))then
ll=(ll−α)/(1−α) …(2)
else(3−1−4)の更新手法を用いる
end
数1の式(1)及び式(2)中のαは、0より大きく1未満の数であり、本実施の形態では、0.3とする。このα及び式(1)、式(2)の更新のための式自体も、他の値や関数で置きかえ可能である。つまり、式(1)の場合は、連続適用した場合に漸近的に1の値に近づいていくような関数で、式(2)の場合は、逆に0に漸近的に近づく関数であればよい。
数1の式(1)及び式(2)で、信頼度の更新が済んだ場合は、これで終了である。なお、数1の式(1)及び式(2)では、信頼度の変数への代入となっているが、実際には、端末データ1049内の信頼度が更新される。(3)に進んだ場合は、次の(3−1−4)で信頼度を更新する。
(3−1−4) 近傍がなく、判定ができなかった場合の信頼度の更新は、アメダス等の気象観測データを利用して行う。
図13(b)は、気象レーダーのデータを地図風に模式的に表わしたもので、11011が、w(n+1)の地点で、11012が気象レーダーにより雨が降っているとされる地点である。この図から、11011の地点では、気象レーダーの観測時点では降雨ありと観測されたと見ることができる。
ただし、気象レーダーの値は、10分あるいは5分間隔でしか更新されないため、このデータは過去のものであり、とくに変化が激しい雷雨のような場合には、問題が大きい。また、気象レーダーのデータには誤差(誤観測)もあるために、完全ではない。
ここで、気象観測データによる降雨判定による信頼度の変更は、(3−1−3)で行った信頼度の変更の幅よりも小さくしたい。
具体的には、以下の数2に従って更新を行う。ここでは、w(k)はwとし、wの要素はw=(id time pos result acc)と表す。また、llはwをアップロードした端末の信頼度とし、RESは気象観測データから得られた降雨判定の値とし、降雨ありを1、降雨なしを0とする。
(数2)
if(RES==result)then
ll=(1−β)ll+β …(3)
elseif(not(RES==−1))then
ll=(ll−β)/(1−β) …(4)
end
ここで、数2の式(3)、式(4)に出るパラメータβは、数1の式(1)、式(2)のパラメータαの値より小さなものとする。ここでは、0.1としておく。
これで、信頼度の更新は終了する。
(4) これで信頼度の計算と更新は終了である(図12のステップ10005まで終了)。
その端末の信頼度の計算が終わると、端末に新しい信頼度を告げる。これは、通常天候情報のアップロードと同一のコネクション内で行われる。例えばアップロードにHTTPを利用した場合、HTTPの応答内で、天候情報サーバ1040から端末(天候検知装置1000)側に伝えられる。
以上のように、信頼度が更新される。これにより、継続的に間違いと思われるデータをアップロードし続ける端末の信頼度は徐々に下っていき、0に近づく。逆に、正しい情報をアップロードしていると思われる端末の信頼度は、徐々に高くなり1に近づく。
今後天候情報サーバ制御部1041は、システム停止命令がない限り(ステップ10006)、新たな天候情報がアップロードされてくるのを待つ状態(ステップ10001)に戻る。
次に、作成手段としての統合天候情報作成公開部1044が、これらの天候データ1048、端末データ1049から統合天候情報1051を作成する過程の説明を行う。図11のアルゴリズムがこれに相当する。
このアルゴリズムでは、周期動作を行うとしているが(ステップ10011)、周期動作ではなく、端末からある一定数(最小1でシステム全体の負荷で決定)アップロードがあった場合に動作を開始することと組みあわせてもよい。
ステップ10012では、統合天候情報を作成または更新する。統合天候情報とは、気象観測データ1050と、天候データ1048、端末データ1049を統合して、現時点(または直前)での気象現況及び、短時間先の未来の予測データからなる。
前者の気象観測現況は、天候データ1048から、最近の2分のデータを取得し信頼度でフィルタリングをかけたものと補助的に気象観測データ1050を用いて作成する。例えば、気象観測現況の対象地域に対して、どの地点で降雨があるのかを、天候データ1048と信頼度を用いて判断し、データがない地点に対しては、気象観測データ1050で補完する。さらに、できあがった気象現況情報から、気象予報技術を利用して短時間予報を作成したりする。
最終的には、これら作成したデータは、統合天候情報として記録し、また外部に向けて公開できる形に整え(例えば、XML化やHTML化)、適当なプロトコル(例えば、HTTP)で公開する。
以上のように、天候情報サーバ1040は動作する。
最後に、天候情報サーバ1040へ天候情報をアップロードした後の端末(天候検知装置1000)の動作を説明する。
端末1000は、天候情報サーバ1040にアップロードすると、その返答内で、端末自身に対する新しい信頼度を受けとる。
端末1000は、メモリ1029中に過去の信頼度を時系列で複数個記録しており(1031)、それを新しい信頼度と比較して下っている場合は、信頼度を回復すべく、パラメータ学習部1026はパラメータの調整を行う。パラメータは、図9に示したように4つあるが、このうち調整可能なのは、電界強度閾値と、傘傾き閾値の2つの閾値である。
まず、電界強度閾値である。これは、傘利用探知装置1010から携帯情報端末1020への返しの電波が弱い場合を、傘が比較的遠くにある、すなわち、傘を利用していないとして切り捨てるための閾値である。この調節は、以下のように行う。
今、直前にアップロードした気象情報の降雨判定をresultとして、resultが降雨ありの場合は、電界強度閾値を一定数(Pとする)上げる。resultが降雨なしの場合は、一定数下げることにより調節する。Pの値は、最大電界強度が100として0〜20程度をとる。
次に傘傾き閾値であるが、resultが降雨ありの場合は、傘傾き閾値を上げる。resultが降雨なしの場合は、下げることにより調節する。なお、傘傾き閾値は、980×cos(θ)であり、初期状態ではθ=30°(0≦θ≦90)である。上げ下げの調節は、θをTずつ調節することで行い、Tは0〜5°程度とする。
調節の幅P、Tは、一定値ではなく、信頼度が上った場合は、P、Tの値ともに小さくしていく。こうすることでパラメータが振動してしまうことを防ぐ。
また、信頼度の値が、一定回数(例えば、120回=4時間)連続して下りつづける、または、ある一定以下に下ったままである場合は、天候検知装置全体1000のどこかに重大な問題があるとして、ユーザに警告を与えた上で、パラメータテーブル1030、信頼度1031、タグID1032を初期状態に戻す。これは、おそらくは、傘利用検知装置1011が間違った位置に取りつけられている、あるいは、使われていない傘に取りつけられた等している可能性が高いためである。
なお、傘利用検知装置1010はユーザが自分の傘に取りつけるが、これは、なんらかのインセンティブがないとユーザはこの行動を起しにくい。ユーザが自ら装置の初期設定を行い、ユーザが天候情報をアップロードするには、天候情報サーバ側からユーザに対して、例えば、統合天候情報を配信する等のサービスが有効である。例えば、気象情報閲覧アプリ1025で、天候情報サーバ1040の天気予報を閲覧する場合に、もしその端末が天候情報をアップロードしている端末であれば、通常は課金されないと見られない情報を見られるようにするなどの工夫が考えられる。
このように実施の形態3によれば、天候情報サーバは、多地点に位置する天候検知装置から天候情報を収集し、収集した天候情報に天候検知装置の信頼度に応じてフィルタリングを行い、フィルタリングした天候情報を用いて、現時点における気象現況を示す統合天候情を作成して公開することにより、高密度の観測地点から得られた天候情報を精度良く統合し、正確な気象データを提供することができる。
本発明にかかる天候検知装置及び天候情報収集システムは、気象観測システム等に適用できる。
1000、2001、2010 天候検知装置
1001 気象データサーバ
1010、2002、3001、4002、7001、7002 傘利用検知装置
1011、2003、6002 傘取り付け部
1012 無線センサタグ
1020 携帯情報端末
1021、2006 天候アプリ制御部
1022、2007 無線タグ読取装置
1023、2008 傘利用判定部
1024 広域位置情報取得部
1025 気象情報閲覧アプリ
1026 パラメータ学習部
1027、1046 データ・命令送受信部
1028 ユーザインタフェース
1029、1047、2009、5005 メモリ
1040 天候情報サーバ
1041 天候情報サーバ制御部
1042 天候データ集計部
1043 端末信頼度学習更新部
1044 統合天候情報作成公開部
1045 気象観測データ取得部
1060 ネットワーク
2004、5001、5010、6001 無線IDタグ
2005、3002、4001 携帯情報端末
2011 ケーブル
2012 読取部筐体
2013 携帯情報端末本体
3003 傘
3004、4000 ユーザ
5002 ループアンテナ部
5003 データ送受信部
5004 制御部
5006 IC部
5011 転倒センサ
6003 受骨
6004 中棒
6005 下ろくろ
8000 パラメータテーブル

Claims (8)

  1. 傘に取り付けられる無線IDタグと、
    傘利用時の前記無線IDタグとの距離が読み取り可能な距離に設定され、前記無線IDタグを読み取る読み取り手段と、
    前記無線IDタグが読み取れた場合、傘が利用されていると判定し、前記無線IDタグが読み取れない場合、傘が利用されていないと判定する判定手段と、
    を具備する天候検知装置。
  2. 鉛直方向に対する傾斜角を検出し、前記傾斜角が一定以上となった場合、前記無線IDタグの機能をオフにする転倒検出手段を具備する請求項1に記載の天候検知装置。
  3. 鉛直方向に対する傾斜角を検出する転倒検出手段を具備し、
    前記判定手段は、前記無線IDタグが読み取れ、かつ、前記傾斜角が一定の範囲内の場合、傘が利用されていると判定し、前記無線IDタグが読み取れない場合、または、前記傾斜角が一定以上となった場合、傘が利用されていないと判定する請求項1に記載の天候検知装置。
  4. 前記転倒検出手段は、加速度センサである請求項2又は請求項3に記載の天候検知装置。
  5. 前記読み取り手段は、前記無線IDタグからの電波の強度を測定し、
    前記判定手段は、前記無線IDタグが読み取れ、かつ、前記電波の強度が所定の閾値を超えた場合、傘が利用されていると判定し、前記無線IDタグが読み取れない場合、または、前記電波の強度が所定の閾値以下の場合、傘が利用されていないと判定する請求項1に記載の天候検知装置。
  6. 傘に取り付けられる無線IDタグと、
    傘利用時の前記無線IDタグとの距離が読み取り可能な距離に設定され、前記無線IDタグを読み取る読み取り手段と、
    前記無線IDタグが読み取れた場合、傘が利用されていると判定し、前記無線IDタグが読み取れない場合、傘が利用されていないと判定する判定手段と、
    現在地を示す位置情報を取得する位置情報取得手段と、
    前記位置情報及び傘の利用状態を示す傘利用情報を含む天候情報を送信する送信手段と、
    を有する天候検知装置と、
    前記天候検知装置から送信された天候情報に基づいて、前記天候検知装置の信頼度を算出する信頼度算出手段と、
    前記信頼度に基づいて、前記天候情報をフィルタリングするフィルタリング手段と、
    フィルタリングされた前記天候情報を用いて現時点における気象現況を示す統合天候情報を作成する作成手段と、
    を有する天候情報サーバと、
    を具備する天候情報収集システム。
  7. 前記信頼度算出手段は、第1天候検知装置から送信された第1天候情報と、実際の気象観測データ及び第2天候検知装置から送信された第2天候情報とを比較し、比較結果に基づいて、算出した前記第1天候検知装置の信頼度を更新する請求項6に記載の天候情報収集システム。
  8. 前記天候検知装置は、前記更新された信頼度を取得し、更新された信頼度が過去の信頼度より低下した場合、前記判定手段における判定の基準となるパラメータを調整するパラメータ学習手段を具備する請求項7に記載の天候情報収集システム。
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