JP2012002288A - 自動変速機制御装置及びクラッチの断接状態の検出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】新たにセンサを追加することなく、また、複雑な演算処理を必要としないでクラッチの断接状態を正確に検出することができる自動変速機制御装置及びクラッチの断接状態の検出方法を提供する。
【解決手段】電磁液圧制御弁の電磁ソレノイドへの通電量の制御によって自動変速機のクラッチシリンダに供給する作動液圧を調節する自動変速機制御装置において、クラッチシリンダに供給される作動液圧の値を検出するための圧力センサと、検出される作動液圧が指示圧力となるように電磁ソレノイドの通電制御を行う液圧制御弁制御手段と、電磁ソレノイドの通電制御に用いられるパラメータの急激な変化に基づいてクラッチの断接状態を判定するクラッチ断接判定手段と、を備える。
【選択図】図4
【解決手段】電磁液圧制御弁の電磁ソレノイドへの通電量の制御によって自動変速機のクラッチシリンダに供給する作動液圧を調節する自動変速機制御装置において、クラッチシリンダに供給される作動液圧の値を検出するための圧力センサと、検出される作動液圧が指示圧力となるように電磁ソレノイドの通電制御を行う液圧制御弁制御手段と、電磁ソレノイドの通電制御に用いられるパラメータの急激な変化に基づいてクラッチの断接状態を判定するクラッチ断接判定手段と、を備える。
【選択図】図4
Description
本発明は、自動変速機のクラッチの断接状態を検出可能に構成された自動変速機制御装置及びクラッチの断接状態の検出方法に関する。特に、圧力センサのセンサ値に応じて電磁液圧制御弁への通電制御を行いクラッチシリンダに供給する作動液圧を調節可能な自動変速機制御装置及びそのような自動変速機制御装置におけるクラッチの断接状態の検出方法に関する。
従来、車両に搭載される自動変速機制御装置において、クラッチシリンダに供給する作動油圧を電磁スプール弁構造の電磁液圧制御弁によって調節するように構成されたものがある。また、このような電磁液圧制御弁を用いた自動変速機制御装置の中には、クラッチシリンダに供給される作動油圧を圧力センサによって検出するとともに、検出される作動油圧が指示圧力となるように電磁液圧制御弁の電磁ソレノイドへの通電量をフィードバック制御するように構成されたものがある。
このような自動変速機制御装置において、変速動作の質や効率の向上を図るためにはクラッチに伝達するトルクの制御を精度よく実行することが必要になる。このトルク制御は、クラッチを接続しようとしている状態か、クラッチが接続されている状態か、クラッチを開放しようとしている状態か、クラッチが開放されている状態かによって異なってくる。現在のクラッチの状態を正確に把握できれば変速動作の質や効率を向上させることができる。そのため、自動変速機制御装置において現在のクラッチの断接状態を検出するための種々の方法が提案されている。
例えば、クラッチシリンダ内のクラッチピストンのストローク位置を検出するためのストロークセンサを設けて半クラッチ状態を検出するように構成された自動変速機制御装置がある(特許文献1を参照)。ただし、ストロークセンサ等の追加のセンサを新たに設けることはコストの増加につながることを鑑みて、新たにセンサを追加することなくクラッチの断接状態を検出する方法が種々提案されている。
例えば、新たにセンサを追加することなくクラッチの断接状態を検出する方法として、ギヤ比を変更するためのクラッチを有する自動変速機と、自動変速機の出力軸の回転数を検出する検出手段と、その検出された回転数から回転数変化率を求める手段と、その求められた変化率に基づいてクラッチの締結したことを推定する手段とを有する自動変速機の制御装置が開示されている(特許文献2を参照)。
また、新たにセンサを追加することなくクラッチの断接状態を検出する方法として、クラッチの断接に伴い、電磁液圧制御弁の電磁ソレノイドのコイルに発生するインダクタンスの変化に応じて発生する通電量の変化を利用するものも開示されている(例えば、特許文献3〜5を参照)。
特許文献2に記載の方法を概念的に表すと図16のように示される。すなわち、この方法によれば、従動側回転体が駆動側回転体に押し付けられる状態となるA点から、従動側回転体にトルクが伝達され従動側回転体が回転し始めるB点までの過程にある程度の時間を要し、応答性に代表される制御性を向上させることが困難であるという問題がある。
また、特許文献3に記載の方法は、クラッチの断接に伴って発生する逆起電力を打ち消すようにフィードバックコントローラ出力値が作用することに着目し、ソフトウェアによるローパスフィルタ処理により所定周波数領域のフィードバックコントローラ出力値のみを抽出して閾値と比較するものである。
さらに、特許文献4に記載の方法は、クラッチの断接に伴って発生する逆起電力を打ち消すようにフィードバックコントローラ出力値が作用することに着目し、フィードバックコントローラ出力値の計測値と基準パターンの値との一致度を検出するものであり、計測値と基準パターンの値との平均残差を求める必要がある。また、特許文献5に記載の方法は、インダクタンスに応じて発生する通電量の交流成分のピーク幅の変化を検出するものである。
これらの特許文献3〜5に記載の方法は、複雑な演算処理を実行する必要があるだけでなくコストの増大をも伴うために、実用性に乏しい。
そこで、本発明の発明者は鋭意努力し、検出される作動液圧と指示圧力との差分に応じて電磁液圧制御弁の電磁ソレノイドへの通電量を制御しながらクラッチシリンダに供給される作動液圧を調節する自動変速機制御装置において、フィードバック制御のパラメータの波形に現れる急激な変化に基づいてクラッチの断接状態を判定するように構成することによりこのような問題を解決できることを見出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明は、新たにセンサを追加することなく、また、複雑な演算処理を必要としないでクラッチの断接状態を正確に検出することができる自動変速機制御装置及びクラッチの断接状態の検出方法を提供することを目的とする。
本発明によれば、電磁液圧制御弁の電磁ソレノイドへの通電量の制御によって自動変速機のクラッチシリンダに供給する作動液圧を調節する自動変速機制御装置において、クラッチシリンダに供給される作動液圧の値を検出するための圧力センサと、検出される作動液圧が指示圧力となるように電磁ソレノイドの通電制御を行う液圧制御弁制御手段と、電磁ソレノイドの通電制御に用いられるパラメータの急激な変化に基づいてクラッチの断接状態を判定するクラッチ断接判定手段と、を備えることを特徴とする自動変速機制御装置が提供され、上述した問題を解決することができる。
また、本発明の自動変速機制御装置を構成するにあたり、パラメータが、作動液圧と指示圧力との差分、通電制御におけるフィードバック補正量、又は電磁ソレノイドへの通電量のいずれかであることが好ましい。
また、本発明の自動変速機制御装置を構成するにあたり、クラッチ断接判定手段は、パラメータを二回微分した値を用いて判定を行うことが好ましい。
また、本発明の自動変速機制御装置を構成するにあたり、クラッチ断接判定手段によってクラッチの接続開始を判定する場合には、クラッチ接続の指示信号が入力されてから所定時間経過後のパラメータの値を用いて判定を行うことが好ましい。
また、本発明の自動変速機制御装置を構成するにあたり、電磁液圧制御弁が電磁ソレノイドによる電磁力とスプリングと作動液圧とのバランスによってピストンの位置が決定される構成を有しており、クラッチ断接判定手段によってクラッチの接続解除を判定する場合には、指示圧力、通電制御におけるフィードバック補正量、又は電磁ソレノイドへの通電量を所定量増大又は減少させることが好ましい。
また、本発明の自動変速機制御装置を構成するにあたり、クラッチ断接判定手段によってクラッチの接続解除を判定する場合には、急激な変化を検出した後、緩やかな変化に戻ったときにクラッチの接続が解除されたと判定することが好ましい。
また、本発明の自動変速機制御装置を構成するにあたり、クラッチ断接判定手段が、パラメータの急激な変化に基づいてクラッチの接続解除を判定した後、二回目の急激な変化を検出したときにクラッチシリンダからの作動液の排出完了と判定することが好ましい。
また、本発明の自動変速機制御装置を構成するにあたり、液圧制御弁制御手段及びクラッチ断接判定手段が変速機本体側に備えられた電気回路によって構成され、クラッチ断接判定手段の判定結果がコントロールユニットに送信されるように構成されることが好ましい。
また、本発明の自動変速機制御装置を構成するにあたり、液圧制御弁制御手段が変速機本体側に備えられた電気回路によって構成されるとともにクラッチ断接判定手段がコントロールユニットに備えられ、パラメータの値がコントロールユニットに送信されるように構成されることが好ましい。
また、本発明の別の態様は、電磁液圧制御弁の電磁ソレノイドへの通電制御によって自動変速機のクラッチシリンダに供給する作動液圧を調節する自動変速機制御装置におけるクラッチの断接状態を検出するためのクラッチの断接状態の検出方法において、クラッチシリンダに供給される作動液圧の値を検出し、検出される作動液圧が指示圧力となるように電磁ソレノイドへの通電制御を行うとともに、クラッチの断接の指示が入力された後、電磁ソレノイドへの通電制御に用いられるパラメータの急激な変化に基づいてクラッチの断接状態を判定することを特徴とするクラッチの断接状態の検出方法である。
本発明の自動変速機制御装置によれば、圧力センサによって検出される作動液圧と指示圧力との差分に基づく電磁ソレノイドへの通電量のフィードバック制御に用いられているパラメータを利用してクラッチの断接状態の判定が行われるようになる。したがって、新たにセンサを追加することなく、また、クラッチの断接状態の判定のために複雑な演算処理を実行することなく、クラッチの断接状態を精度よく判定することができる。その結果、クラッチに伝達するトルクの制御を精度よく実行することができるようになる。
以下、図面を参照して、本発明の自動変速機制御装置及びクラッチの断接状態の検出方法に関する実施の形態について具体的に説明する。ただし、以下の実施の形態は本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更することが可能である。なお、それぞれの図中、同じ符号を付してあるものは同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている場合がある。
[第1の実施の形態]
1.自動変速機制御装置の全体構成
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる自動変速機制御装置10の全体構成を示している。この自動変速機制御装置10は、主として車両に搭載されるものであり、エンジンの出力によって駆動する機械式ポンプ11から吐出される作動油によって生じる油圧を自動変速機1のクラッチシリンダ3に供給することでクラッチピストン4を移動させ、自動変速機1の制御を行う自動変速機制御装置である。
1.自動変速機制御装置の全体構成
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる自動変速機制御装置10の全体構成を示している。この自動変速機制御装置10は、主として車両に搭載されるものであり、エンジンの出力によって駆動する機械式ポンプ11から吐出される作動油によって生じる油圧を自動変速機1のクラッチシリンダ3に供給することでクラッチピストン4を移動させ、自動変速機1の制御を行う自動変速機制御装置である。
自動変速機1は、代表的にはオートマチックトランスミッション(AT)であり、出力軸あるいは被駆動軸を介して車両の複数の駆動輪に接続されている。自動変速機1はクラッチシリンダ3を備えている。このクラッチシリンダ3に対して自動変速機制御装置10から作動油が供給されると、クラッチシリンダ3内のクラッチピストン4がその作動油圧によって移動し、クラッチピストン4に連動する従動側回転体7が駆動側回転体9に当接することによって、クラッチの接続動作が実現される。
自動変速機制御装置10は、機械式ポンプ11と、電磁液圧制御弁30と、圧力センサ40と、コントロールユニット60とを備えている。
このうち、機械式ポンプ11はオイルタンク5内のオイルを汲み上げて吐出するものであり、機械式ポンプ11の吐出ポートは第1油路23に接続されている。この機械式ポンプ11の駆動軸はエンジンの出力軸に対して機械的に接続されており、機械式ポンプ11はエンジンの出力によって回転駆動されて作動油を第1油路23へと吐出する。
電磁液圧制御弁30は、クラッチシリンダ3へ供給する作動油圧を調節するためのものである。この電磁液圧制御弁30はピストン弁部材33を備えたスプール弁構造を有しており、ピストン弁部材33はスリーブ部材31の内部を進退動自在に配置されている。このピストン弁部材33の一端側にはスプリング35が備えられており、ピストン弁部材33を他端側の方向へ付勢している。
また、ピストン弁部材33は、電磁ソレノイド37の電磁力によって、スプリング35による付勢力の作用方向とは反対方向に付勢されるようになっている。本実施形態の電磁液圧制御弁30のピストン弁部材33は、電磁ソレノイド37の電磁力による付勢力とスプリング35の付勢力とのバランスで位置決めされるようになっている。電磁ソレノイド37は、通電量が大きくなるにしたがってピストン弁部材33を付勢する付勢力が大きくなるように構成されていてもよいし、付勢力が小さくなるように構成されていてもよい。
また、電磁液圧制御弁30のスリーブ部材31の左右中央部には、作動油導入ポート43、作動油排出ポート45及び油圧供給ポート47が設けられている。作動油導入ポート43には第1油路23が接続され、機械式ポンプ11によって吐出される作動油を導入可能に構成されている。作動油排出ポート45は第2油路25に接続され、作動油をオイルタンク5に排出可能に構成されている。油圧供給ポート47は第3油路27に接続され、クラッチシリンダ3に対して作動油を供給し、あるいは、クラッチシリンダ3から作動油を排出できるように構成されている。
第1油路23と第3油路27、あるいは、第2油路25と第3油路27は、ピストン弁部材33の位置によって、それぞれ連通又は遮断が切換えられる。第1油路23と第3油路27とが連通する状態においては、機械式ポンプ11側とクラッチシリンダ3側とが連通状態になるため、エンジンが運転状態にあって機械式ポンプ11が駆動している間、作動油がクラッチシリンダ3に供給され、クラッチシリンダ3に供給される作動油圧が上昇する。作動油圧が上昇すると、クラッチピストン4が移動して従動側回転体7と駆動側回転体9とが当接し、クラッチは接続状態となる。
また、第2油路25と第3油路27とが連通する状態においては、クラッチシリンダ3側とオイルタンク5側とが連通状態になり、クラッチシリンダ3から作動油が排出され、クラッチシリンダ3に供給される作動油圧が低下する。クラッチの接続状態から作動油圧が低下すると、クラッチピストン4が移動して従動側回転体7が駆動側回転体9から離れ、クラッチは開放状態となる。
一方、第1油路23と第3油路27、第2油路25と第3油路27が遮断された状態においては、クラッチシリンダ3への作動油の供給又はクラッチシリンダ3からの作動油の排出が無い状態となり、基本的にクラッチシリンダ3内の作動油圧は維持される。このときの電磁ソレノイド37への通電量は、スプリング35のバネ定数に応じて設定される。
また、第3油路27にはクラッチシリンダ3に供給される作動油圧の値を検出するための圧力センサ40が設けられている。圧力センサ40のセンサ信号はコントロールユニット60に送信され、コントロールユニット60ではセンサ信号に基づいて作動油圧の値が求められる。また、コントロールユニット60では、求められる作動油圧の値が指示圧力となるように電磁ソレノイド37への通電制御が行われる。圧力センサ40の取付位置は、クラッチシリンダ3と圧力的に連通している領域であればどこであっても構わない。
2.コントロールユニット
図2は、本実施形態の自動変速機制御装置10に備えられたコントロールユニット60の構成のうち、電磁液圧制御弁30の制御及びクラッチの断接状態の検出に関連する部分を機能的なブロックで表した構成例を示している。
図2は、本実施形態の自動変速機制御装置10に備えられたコントロールユニット60の構成のうち、電磁液圧制御弁30の制御及びクラッチの断接状態の検出に関連する部分を機能的なブロックで表した構成例を示している。
このコントロールユニット60は、圧力検出手段65と、通電制御手段67と、クラッチ断接判定手段63とを備えている。これらの各手段は、具体的にはマイクロコンピュータによるプログラムの実行によって実現されるものである。また、コントロールユニット60には、RAM(Random Access Memory)等の記憶手段が備えられており、あらかじめ設定されるデータ情報や、各手段での演算結果等が記憶される。
(1)圧力検出手段
圧力検出手段65は、圧力センサ40のセンサ信号を読み込みクラッチシリンダ3に供給されている作動油圧Pactの値を検出するように構成されている。
圧力検出手段65は、圧力センサ40のセンサ信号を読み込みクラッチシリンダ3に供給されている作動油圧Pactの値を検出するように構成されている。
(2)通電制御手段
通電制御手段67は、電磁液圧制御弁30の電磁ソレノイド37に対する通電制御を行いクラッチシリンダ3に供給される作動油圧Pactを調節する部分である。通電制御手段67は、クラッチの接続時あるいは開放時において、基本的にそれぞれあらかじめ決められた変動パターンにそって指示圧力Pcommandを設定し、圧力センサ40で検出される作動油圧Pactと指示圧力Pcommandとの差分ΔPに応じて、電磁ソレノイド37への通電量Aのフィードバック制御を実行するようになっている。指示圧力Pcommandの変動パターンは、クラッチの断接の際の伝達トルク要求値に応じて設定されるようになっている。
通電制御手段67は、電磁液圧制御弁30の電磁ソレノイド37に対する通電制御を行いクラッチシリンダ3に供給される作動油圧Pactを調節する部分である。通電制御手段67は、クラッチの接続時あるいは開放時において、基本的にそれぞれあらかじめ決められた変動パターンにそって指示圧力Pcommandを設定し、圧力センサ40で検出される作動油圧Pactと指示圧力Pcommandとの差分ΔPに応じて、電磁ソレノイド37への通電量Aのフィードバック制御を実行するようになっている。指示圧力Pcommandの変動パターンは、クラッチの断接の際の伝達トルク要求値に応じて設定されるようになっている。
図3は、通電制御手段67によって電磁ソレノイド37への通電量Aのフィードバック制御を実行しながらクラッチを断接する方法について説明するための図である。
通電制御手段67は、まず、エンジン出力や車速等に基づいて変速動作の要否を判断し、クラッチへの伝達トルク要求値を求める。伝達トルク要求値が求められると、通電制御手段67は、伝達トルクと作動油圧との関係を示すクラッチ特性に基づいて伝達トルク要求値に応じた指示圧力Pcommandの変動パターンを求める。
通電制御手段67は、まず、エンジン出力や車速等に基づいて変速動作の要否を判断し、クラッチへの伝達トルク要求値を求める。伝達トルク要求値が求められると、通電制御手段67は、伝達トルクと作動油圧との関係を示すクラッチ特性に基づいて伝達トルク要求値に応じた指示圧力Pcommandの変動パターンを求める。
指示圧力Pcomandの変動パターンが求められると、通電制御手段67は、作動油圧と通電量との関係を示す電磁ソレノイド特性に基づいて指示圧力Pcommandに応じた指示通電量Aを求める。このとき、圧力センサ40で検出される作動油圧Pactと指示圧力Pcommandとの差分ΔPに応じたフィードバック補正量Vcommand分だけ、通電量Aの補正が行われる。
具体的に、作動油圧Pactが指示圧力Pcommandよりも低い場合においては、作動油圧Pactを速やかに指示圧力Pcommandとするために、その差分ΔPに応じて作動油の供給流量Fを増加させる方向に通電量Aが補正され、第1油路23と第3油路27とが連通される。一方、作動油圧Pactが指示圧力Pcommnadよりも高い場合においては、作動油圧Pactを速やかに指示圧力Pcommandとするために、その差分ΔPに応じて作動油の排出流量(マイナスの供給流量)Fを増加させる方向に通電量Aが補正され、第2油路25と第3油路27とが連通される。
このようにして得られる指示通電量Aに基づいて電磁ソレノイド37への通電が行われると、クラッチシリンダ3に供給される作動油圧Pactが変化する。クラッチの接続時においては、所定時間が経過し、作動油圧Pactの変化に伴ってクラッチピストン4の移動が完了して従動側回転体7が駆動側回転体9に押し付けられる状態となると、従動側回転体7へのトルクの伝達が始まり従動側回転体7が回転し始める。一方、クラッチの開放時においては、作動油圧Pactの変化に伴いクラッチピストン4が移動し始めると従動側回転体7が駆動側回転体9から離れ、従動側回転体9へのトルクの伝達が遮断される。
クラッチの接続時及び開放時における指示圧力Pcommand、検出圧力Pact、クラッチシリンダ3への作動油の供給流量F、差圧ΔP、フィードバック補正量Vcommand、通電量Aの各値の推移について具体的に説明する。
図4はクラッチの接続時における各値の推移を表すタイムチャート図を示し、図5はクラッチの開放時における各値の推移を表すタイムチャート図を示している。それぞれの図中の測定圧力Pact等についてはフィルタ処理された値が示されている。なお、図4及び図5のタイムチャート図の例に用いられている電磁液圧制御弁は、クラッチシリンダ3への作動油圧を増大させるためには電磁ソレノイド37への通電量Aが大きくされ、クラッチシリンダ3への作動油圧を低下させるためには電磁ソレノイド37への通電量Aが小さくされる構成のものである。
図4はクラッチの接続時における各値の推移を表すタイムチャート図を示し、図5はクラッチの開放時における各値の推移を表すタイムチャート図を示している。それぞれの図中の測定圧力Pact等についてはフィルタ処理された値が示されている。なお、図4及び図5のタイムチャート図の例に用いられている電磁液圧制御弁は、クラッチシリンダ3への作動油圧を増大させるためには電磁ソレノイド37への通電量Aが大きくされ、クラッチシリンダ3への作動油圧を低下させるためには電磁ソレノイド37への通電量Aが小さくされる構成のものである。
まず、クラッチを接続する場合には、クラッチシリンダ3への作動油圧を一時的に大きく上昇させてクラッチピストン4を所定位置まで移動させた後、クラッチの接続をスムーズなものとするために作動油圧を一旦減少させてクラッチピストン4の移動を緩やかにし、クラッチが接続されるまで作動油圧がそのまま維持されるように制御される。また、クラッチの接続が完了した後には、クラッチに伝達されるトルクを大きくするために、再びクラッチシリンダ3への作動油圧を勾配を持って徐々に増大するように制御される。
すなわち、図4において、t0の時点でクラッチ接続の指示が入力されると、指示圧力Pcommandは、t1の時点でPc1に設定された後、t2の時点でPc2まで減少させられる。その後、従動側回転体7と駆動側回転体9が当接するTeの時点を経過した後のt4の時点から、勾配を持って徐々に増大させられる。
指示圧力PcommandがPc1に大きく上昇されたt1の時点では、指示圧力Pcommandと検出される作動圧力Pactとの差圧ΔP(Pcommand−Pact)がプラス側に大きくなっている。これに伴い、t1の時点の直後には、フィードバック補正量Vcommand及び電磁ソレノイド37への通電量Aが大きく変化している。その結果、作動油の供給流量Fが増大し、検出される作動油圧Pactが増大している。図4中の差圧ΔPやフィードバック補正量Vcommand、通電量A、供給流量F及び検出される作動圧力Pactにはオーバーシュートが見られる。増大した各値は、指示圧力Pcommandが減少させられるt2の時点まで維持されている。
t2の時点で指示圧力Pcommandが減少させられてPc2になると、その瞬間には差圧ΔPの値がマイナスの値となるものの、その後の差圧ΔPはほぼゼロに近いマイナスの値で推移している。これに伴って、フィードバック補正量Vcommandは、t2の時点の直後にマイナスの値となった後、ほぼゼロに近いプラスの値で推移している。また、通電量Aは、t2の時点の直後に一旦大きく減少させられた後、クラッチシリンダ3に所定の流量の作動油が供給される値まで上昇させられて維持される。その結果、作動油の供給流量Fは、t2の時点の直後に一旦大きく減少した後、さらに徐々に減少している。これにより、検出される作動油圧Pactは、t2の時点の直後に一旦減少した後、ほぼ一定の値で推移している。
t1の時点以降、クラッチシリンダ3内に作動油が供給される状態では、クラッチピストン4はクラッチの接続方向に移動している状態となっており、Teの時点で従動側回転体7が駆動側回転体9に当接する。このときにクラッチピストン4の移動がほぼ完了し、クラッチシリンダ3への作動油の流入が停止する一方で、電磁液圧制御弁30がクラッチシリンダ3に作動油を供給する状態となっていることと、作動油自体の慣性力とが相俟って、検出される作動油圧Pactにはサージ圧力が発生している。
検出される作動油圧Pactにサージ圧力が発生すると、差圧ΔPは急激に低下するため、これまでクラッチシリンダ3への作動油の供給状態にあった電磁液圧制御弁30を、クラッチシリンダ3からの作動油の排出状態に変更するように、フィードバック制御が作用する。このとき、差圧ΔPの急激な変化に伴って、Teの時点では、フィードバック補正量Vcommandや通電量A、供給流量Fにも急激な変化が現れている。
その後、クラッチの接続が完了したTeの時点から、クラッチへの伝達トルク量を大きくするために指示圧力Pcommandが徐々に増大されはじめるt4の時点までの間、差圧ΔPはほぼゼロとなり、フィードバック補正量Vcommand、通電量A、供給流量Fはほぼ一定の値で推移している。そして、t4の時点において、指示圧力Pcommandが徐々に増大されはじめると、指示圧力Pcommandの上昇速度に応じた供給流量Fの作動油がクラッチシリンダ3に供給される。これによって、検出される作動油圧Pactが徐々に増大し、クラッチの接続が強固なものとされる。この間、差圧ΔPやフィードバック補正量Vcommandには大きな変化が見られない。
また、クラッチを開放する場合には、クラッチシリンダ3への作動油圧を一度に大きく低下させて、クラッチピストン4を速やかに後退させるようになっている。すなわち、図5において、t0の時点でクラッチ開放の指示が入力されると、指示圧力Pcommandは、t11の時点でPc11まで低下させられている。
指示圧力PcommandがPc11に大きく減少させられたt11の時点では、指示圧力Pcommandと検出される作動油圧Pactとの差圧ΔP(Pcommand−Pact)が急激に変化してマイナス側に大きくなっている。これに伴い、t11の時点の直後には、フィードバック補正量Vcommand及び電磁ソレノイド37への通電量Aが急激に変化している。その結果、従動側回転体7が駆動側回転体9から離れる状態になるまでは、クラッチシリンダ3に作動油を導く経路の圧力・体積変化分の作動油が排出される。そのため、検出される作動油圧Pactが急激に低下してサージ圧力が発生している。
その後、Trの時点において、クラッチシリンダ3内の圧力が、従動側回転体7が駆動側回転体9から離れる値にまで低下すると、クラッチピストン4が移動してクラッチが開放される。このとき、差圧ΔP、フィードバック補正量Vcommand、通電量Aは急激な変化から緩やかな変化に変化している。
その後、クラッチピストン4の移動が完了し、クラッチシリンダ3からの作動油の排出が完了するToまでの間は、圧力センサ40の配置位置から作動油の排出部分までの圧力損失によって、検出される作動油圧Pactには低圧の圧力が発生する。この間、検出される作動油圧Pactが徐々に低下し続けるため、差圧ΔP及びフィードバック補正量Vcommandは徐々に小さくなり、通電量Aは緩やかに増加している。そして、Toの時点でクラッチピストン4の移動が完了すると、検出される作動油圧Pactは一気に低下し、これに伴って、差圧ΔP及びフィードバック補正量Vcommandがゼロになる。その後は、クラッチシリンダ3への作動油の供給及び排出が遮断されるように通電量Aが維持されている。
(3)クラッチ断接判定手段
クラッチ断接判定手段63は、通電制御手段67で実施される電磁ソレノイド37への通電量Aのフィードバック制御における制御パラメータを利用してクラッチの断接状態を判定する部分である。特に、クラッチ断接判定手段63は、制御パラメータの波形に現れる急激な変化に基づいてクラッチの断接状態を判定するように構成されている。
クラッチ断接判定手段63は、通電制御手段67で実施される電磁ソレノイド37への通電量Aのフィードバック制御における制御パラメータを利用してクラッチの断接状態を判定する部分である。特に、クラッチ断接判定手段63は、制御パラメータの波形に現れる急激な変化に基づいてクラッチの断接状態を判定するように構成されている。
本実施形態において、クラッチ断接判定手段63は、クラッチの接続完了、クラッチの開放完了、クラッチシリンダ3からの作動油の排出完了を検出し、現在のクラッチの断接状態を把握するように構成されている。本実施形態では、クラッチの断接状態は、フィードバック制御のパラメータのうちの差圧ΔP、フィードバック補正量Vcommand、又は通電量Aのいずれかの値に現れる急激な変化を捉えて判定されるように構成されている。
例えば、クラッチの接続時には、図4中の各パラメータ値の推移において、単位時間当たりのパラメータ値の低下量が所定の閾値以上となったときに従動側回転体7と駆動側回転体9とが当接したと判定するように構成される。
また、クラッチの開放時には、図5中の各パラメータ値の推移において、各パラメータ値が急激に低下した後に上昇して、緩やかな変化に変わったときに、従動側回転体7と駆動側回転体9とが離れたと判定するように構成される。
また、本実施形態においては、クラッチの開放が検出された後に、クラッチシリンダ3からの作動油の排出が完了するToの時点においても、各パラメータ値が急激に上昇する変化が現れるために、この変化点を捉えて作動油の排出完了を判定するように構成されている。
ここで、クラッチを接続する際に、図4に示すように指示圧力Pcommandを変化させる場合には、従動側回転体7と駆動側回転体9とが当接するTeの時点までの期間において、電磁液圧制御弁30の特性等によって検出される作動油圧Pactが複雑に変動するため、本実施形態においては、クラッチの接続指示が入力されてから所定時間Tpの間は、上記判定を行わない待機時間とされている。この所定時間Tpは、指示圧力Pcommandの変動パターンや作動油の温度を考慮して設定することができる。
また、判定をより正確に行うためには、各パラメータ値を2回微分した値を用いて、閾値と比較するようにしてもよい。例えば、各パラメータ値の単位時間当たりの変化量を2回微分した値がゼロになったときに、従動側回転体7と駆動側回転体9とが離れたと判定するように構成することができる。
クラッチの接続完了時期あるいは開放完了時期、作動油排出完了時期が正確に判定できれば、クラッチ接続完了、クラッチ接続状態、クラッチ開放完了、クラッチ開放状態が正確に把握できるようになる。クラッチ断接判定手段63で検出されるクラッチの断接状態の結果は、通電制御手段67に送信されて指示圧力Pcommandや通電量A等の切替え時期を決定する際に用いられる。
以上のように、本実施形態の自動変速機制御装置は、新たにセンサを追加することなく、また、クラッチの断接状態の判定のために複雑な演算処理を実行することなく、クラッチの断接状態を正確に把握できるようになる。したがって、クラッチの状態に応じて、クラッチシリンダ3への作動油圧を精度よく制御することができるようになる。
なお、上述の実施の形態で使用している電磁液圧制御弁30は、クラッチシリンダ3への作動液圧を増大させるためには電磁ソレノイド37への通電量Aが大きくされ、クラッチシリンダ3への作動液圧を低下させるためには電磁ソレノイド37への通電量Aが小さくされる構成のものである。作動油圧を増大又は低下させる際の通電量Aの大小が逆となる構成の電磁液圧制御弁を使用する場合であっても、通電量Aの大小以外は各パラメータとも同様の推移となるために、各パラメータ値に基づいてクラッチの断接状態を正確に把握することができる。
3.自動変速機制御装置のシステム構成
図6は、自動変速機制御装置10のシステム構成を表すブロック図を示している。
圧力センサ40や電磁液圧制御弁30を含む変速機本体は、コントロールユニットから離れた場所に備えられ、互いに電気的な配線で接続されている。図6のような構成では、コントロールユニットのCPU(中央演算処理装置)において、圧力センサ40の信号の処理や電磁液圧制御弁30への通電量Aの制御が行われる。
図6は、自動変速機制御装置10のシステム構成を表すブロック図を示している。
圧力センサ40や電磁液圧制御弁30を含む変速機本体は、コントロールユニットから離れた場所に備えられ、互いに電気的な配線で接続されている。図6のような構成では、コントロールユニットのCPU(中央演算処理装置)において、圧力センサ40の信号の処理や電磁液圧制御弁30への通電量Aの制御が行われる。
この場合、CPUのタクトタイムが極めて短くされる必要があり(例えば1msec.)、圧力センサ40を用いたフィードバック制御を実行しない場合のタクトタイム(例えば10msec.)に比べてCPUの負担が多大になるおそれがある。また、圧力センサ40とCPUとの間を圧力信号電圧伝送ライン、電力供給ライン、グランドラインで接続する必要があるとともに、電磁液圧制御弁30とCPUとの間を電流供給ライン及びグランドラインで接続する必要がある。そのため、変速機本体とコントロールユニットとの間を接続する配線が多くなり、変速機本体のハウジングに設ける配線取り出し用の開口の大きさが大きくなるため、ハウジングの強度の低下や音漏れの増大につながるおそれがある。
図7〜図9は、コントロールユニットの機能の一部を変速機本体側に設けたシステム構成の例を示している。
図7のシステム構成においては、圧力センサ40を用いたフィードバック制御を実行するための電気回路とクラッチの断接状態の判定を実行するための電気回路とが変速機本体内に設けられ、クラッチの断接状態の判定結果をコントロールユニット側に送信するようになっている。このシステム構成によれば、フィードバック制御とクラッチの断接状態の判定のためにCPUのタクトタイムを短くする必要がなくなる。
図7のシステム構成においては、圧力センサ40を用いたフィードバック制御を実行するための電気回路とクラッチの断接状態の判定を実行するための電気回路とが変速機本体内に設けられ、クラッチの断接状態の判定結果をコントロールユニット側に送信するようになっている。このシステム構成によれば、フィードバック制御とクラッチの断接状態の判定のためにCPUのタクトタイムを短くする必要がなくなる。
また、変速機本体側の電気回路とCPUとの間を接続するラインが、電源供給ライン、グランドライン、断接信号電圧伝送ライン、指示圧力信号伝送ラインのみとなる。例えば、図7のシステム構成においてグランドラインを1本のみにできるのは、変速機本体側に電気回路が存在することで、センサ用グランドと液圧制御弁用グランドとの間の干渉をなくすことができるからである。その結果、図6のシステム構成と比較して、変速機本体とコントロールユニットとの間を接続する配線本数が少なくなり、変速機本体のハウジングの強度の低下や音漏れの増大を低減することができる。
図8のシステム構成においては、圧力センサ40を用いたフィードバック制御を実行するための電気回路が変速機本体内に設けられ、変速機本体内の電気回路からコントロールユニット側に電磁ソレノイド37への通電量A又はフィードバック補正量Vcommandを送信して、コントロールユニットにおいてクラッチの断接状態を判定するようになっている。このシステム構成によれば、変速機本体側の電気回路とCPUとの間を接続するラインが、電源供給ライン、グランドライン、パラメータ信号伝送ライン、指示圧力信号伝送ラインのみとなる。その結果、図6のシステム構成と比較して、変速機本体とコントロールユニットとの間を接続する配線本数が少なくなり、変速機本体のハウジングの強度の低下や、音漏れの増大を低減することができる。
図9のシステム構成においては、圧力センサ40を用いたフィードバック制御を実行するための電気回路が変速機本体内に設けられ、この電気回路に供給される通電量A’をコントロールユニット側で検出し、クラッチの断接状態を判定するようになっている。このシステム構成において、変速器本体側の電気回路に供給される通電量A’の変化は、電磁液圧制御弁30の電磁ソレノイド37への通電量Aの変化に支配されるものであるために、この通電量A’に基づいてクラッチの断接状態を判定することができる。このシステム構成によれば、変速機本体側の電気回路とCPUとの間を接続するラインが、電源供給ライン、グランドライン、指示圧力信号伝送ラインのみとなる。その結果、変速機本体とコントロールユニットとの間を接続する配線本数がさらに少なくなり、変速機本体のハウジングの強度の低下や、音漏れの増大を低減することができる。
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態にかかる自動変速機制御装置は、第1の実施の形態の自動変速機制御装置の構成と異なる電磁液圧制御弁を備えている。以下、本実施形態の自動変速機制御装置について、第1の実施の形態の自動変速機制御装置の構成と異なる点である電磁液圧制御弁の構成を中心に詳細に説明する。
本発明の第2の実施の形態にかかる自動変速機制御装置は、第1の実施の形態の自動変速機制御装置の構成と異なる電磁液圧制御弁を備えている。以下、本実施形態の自動変速機制御装置について、第1の実施の形態の自動変速機制御装置の構成と異なる点である電磁液圧制御弁の構成を中心に詳細に説明する。
1.全体構成
図10は、本実施形態の自動変速機制御装置80の全体構成を示している。この自動変速機制御装置80において、電磁液圧制御弁85は、ピストン弁部材33を備えたスプール弁構造を有しており、ピストン弁部材33の一端側にはスプリング35が備えられ、ピストン弁部材33を他端側の方向へ付勢している。
図10は、本実施形態の自動変速機制御装置80の全体構成を示している。この自動変速機制御装置80において、電磁液圧制御弁85は、ピストン弁部材33を備えたスプール弁構造を有しており、ピストン弁部材33の一端側にはスプリング35が備えられ、ピストン弁部材33を他端側の方向へ付勢している。
また、ピストン弁部材33は、電磁ソレノイド37の電磁力によって、スプリング35による付勢力の作用方向とは反対方向に付勢されるようになっている。電磁ソレノイド37は、通電量が大きくなるにしたがってピストン弁部材33を付勢する付勢力が大きくなるように構成されていてもよいし、付勢力が小さくなるように構成されていてもよい。
電磁液圧制御弁85のスリーブ部材31の左右中央部には、作動油導入ポート43、作動油排出ポート45及び油圧供給ポート47が設けられている。作動油導入ポート43には第1油路23が接続され、機械式ポンプ11によって吐出される作動油を導入可能に構成されている。作動油排出ポート45は第2油路25に接続され、作動油をオイルタンク5に排出可能に構成されている。油圧供給ポート47は第3油路27に接続され、クラッチシリンダ3に対して作動油を供給し、あるいは、クラッチシリンダ3から作動油を排出できるように構成されている。
また、本実施形態において、電磁液圧制御弁85は、クラッチシリンダ3に供給される作動油圧による付勢力によってもピストン弁部材33が移動する圧力フィードバック構造を有する構成となっている(以下、この構造を「自己圧力フィードバック構造」という。)。図10においては、スプリング35の付勢力の作用方向に沿ってピストン弁部材33を押圧可能な領域に作動油圧を導く第4油路29としてその構成が示されている。すなわち、本実施形態における電磁液圧制御弁85のピストン弁部材33は、スプリング35の付勢力と、クラッチシリンダ3に供給される作動油圧による付勢力と、電磁ソレノイド37の電磁力による付勢力とのバランスで位置決めされるようになっている。そのため、第1の実施の形態の電磁液圧制御弁30とは異なり、電磁ソレノイド37への通電量が一定の場合であっても、作動油圧の変化によってピストン弁部材33の位置が移動するようになっている。
2.コントロールユニット
本実施形態の自動変速機制御装置80を構成するコントロールユニット90は、第1の実施の形態にかかるコントロールユニット60と同様に、圧力検出手段65、通電制御手段67及びクラッチ断接判定手段63によって構成されている。ただし、本実施形態の電磁液圧制御弁85は、自己圧力フィードバック構造を有していることから、クラッチを接続又は開放する際の通電パターンが第1の実施の形態とは異なっている。
本実施形態の自動変速機制御装置80を構成するコントロールユニット90は、第1の実施の形態にかかるコントロールユニット60と同様に、圧力検出手段65、通電制御手段67及びクラッチ断接判定手段63によって構成されている。ただし、本実施形態の電磁液圧制御弁85は、自己圧力フィードバック構造を有していることから、クラッチを接続又は開放する際の通電パターンが第1の実施の形態とは異なっている。
以下、クラッチ接続時及びクラッチ開放時それぞれの場合における指示圧力Pcommand、検出される作動油圧Pact、クラッチシリンダ3への作動油の供給流量F、差圧ΔP、フィードバック補正量Vcommand、通電量Aの各値の推移について具体的に説明する。
図11はクラッチの接続時における各値の推移を表すタイムチャート図を示し、図12はクラッチの開放時における各値の推移を表すタイムチャート図を示している。それぞれ図4及び図5に対応する図となっている。
本実施形態の自動変速機制御装置80では、クラッチを接続する場合あるいは開放する場合において、通電量Aの推移以外は図4や図5と同様に変化する。一方、図11に示すように、クラッチを接続する際には、クラッチの接続が完了したTeの時点の後、作動油圧Pactを徐々に増大してクラッチへの伝達トルクを上昇させるために、指示圧力Pcommandの上昇速度に応じて通電量Aも勾配を持って徐々に上昇している。
また、自己圧力フィードバック構造を有する電磁液圧制御弁を使用する場合、クラッチを開放する際に指示圧力Pcommandを低下させすぎると、図13に示すように、フィードバック制御の結果として通電量Aが下限値A0に張り付いてしまい、通電量Aの変化に基づく断接状態の判定が不可能になってしまう。このことは、フィードバック補正量の上下限を狭く設定した場合にも生じ得る。
そのため、本実施形態においては、クラッチ開放時に通電量Aの変化に基づいて断接状態の判定を行えるようにするために、通電量Aがその下限値A0に対して一定の開きを保てるように通電量Aが設定されるようになっている。例えば、クラッチの開放指示が入力された後、クラッチシリンダ3内の作動油の排出が完了したと判定されるToまでの間は、通電量Aを所定量増大方向にオフセットさせるか、フィードバック補正量Vcommandを所定量減少方向にオフセットさせるか、あるいは、指示圧力Pcommandを低下させる際の指示圧力Pc12をゼロよりも大きい値にして制御を実行するように構成される。
図12においては、低下させる指示圧力Pc12をゼロよりも大きい値にした例が示されている。ただし、この場合に設定する指示圧力Pc12は、クラッチシリンダ3からの作動油の排出が完了したときのクラッチシリンダ3内の圧力よりも低い値に設定される必要がある。この値は、図14に示されるクラッチピストン4のストローク量とクラッチシリンダ3内の作動油圧の値との関係から、クラッチピストン4のストローク量がゼロになるときの作動油圧P0よりも低い値として設定することができる。
本実施形態においても、クラッチ断接判定手段63は、フィードバック制御のパラメータである差圧ΔP、フィードバック補正量Vcommand、又は通電量Aのうちのいずれかの値に現れる急激な変化を捉えてクラッチの接続完了、開放完了、作動油の排出完了を判定するように構成されている。具体的な判定方法は第1の実施の形態にかかるクラッチ断接判定手段63の判定方法と同様にすることができる。
以上のように、本発明によれば、電磁液圧制御弁85が自己圧力フィードバック構造を有するものであっても、新たにセンサを追加することなく、また、クラッチの断接状態の判定のために複雑な演算処理を実行することなく、クラッチの断接状態が正確に把握されるようになる。したがって、クラッチの状態に応じて、クラッチシリンダ3への作動油圧を精度よく制御することができるようになる。
なお、本実施形態においても、作動油圧を増大又は低下させるための通電量Aの大小が逆となる構成の電磁液圧制御弁を使用する場合であっても、通電量Aの大小が逆になる以外は各パラメータとも同様の推移となるために、各パラメータ値に基づいてクラッチの断接状態を正確に把握することができる。また、本実施形態の自動変速機制御装置80のシステム構成についても、第1の実施の形態と同様に、コントロールユニットの機能の一部を変速機本体側に設けることができる。
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態にかかる自動変速機制御装置は、クラッチシリンダに供給する作動油圧を増幅させるためのブースターバルブを備えて構成されたものである。
本発明の第3の実施の形態にかかる自動変速機制御装置は、クラッチシリンダに供給する作動油圧を増幅させるためのブースターバルブを備えて構成されたものである。
図15は、本実施形態の自動変速機制御装置100の構成を示している。この自動変速機制御装置100は、第1の実施の形態又は第2の実施の形態の自動変速機制御装置を構成する電磁液圧制御弁30(85)とクラッチシリンダ3との間にブースターバルブ110を備えて構成されている。ブースターバルブ110の構成は特に限定されるものではない。かかる構成の場合、電磁液圧制御弁30(85)は、ブースターバルブ110へ供給する制御圧を調節するためのものであり、圧力センサ40によって検出される作動油圧の値とその指示圧力との差分に基づいて通電量Aがフィードバック制御されるようになっている。
このように自動変速機制御装置100がブースターバルブ110を備えて構成されている場合であっても、クラッチを接続する際又は開放する際に、フィードバック制御のパラメータの推移に急激な変化が現れることから、この変化に基づいてクラッチの接続完了、開放完了、クラッチシリンダ3からの作動油の排出完了を判定することができる。したがって、クラッチの状態に応じて、クラッチシリンダ3への作動油圧を精度よく制御することができるようになる。
1:自動変速機、3:クラッチシリンダ、4:クラッチピストン、5:オイルタンク、7:従動側回転体、9:駆動側回転体、10:自動変速機制御装置、11:機械式ポンプ、23:第1油路、25:第2油路、27:第3油路、29:第4油路、30:液圧制御弁、31:スリーブ部材、33:ピストン弁部材、35:スプリング、37:電磁ソレノイド、40:圧力センサ、43:作動油導入ポート、45:作動油排出ポート、47:作動油供給ポート、60:コントロールユニット、63:クラッチ断接判定手段、65:圧力検出手段、67:通電制御手段、80:自動変速機制御装置、85:液圧制御弁、90:コントロールユニット、100:自動変速機制御装置、110:ブースターバルブ
Claims (10)
- 電磁液圧制御弁の電磁ソレノイドへの通電量の制御によって自動変速機のクラッチシリンダに供給する作動液圧を調節する自動変速機制御装置において、
前記クラッチシリンダに供給される作動液圧の値を検出するための圧力センサと、
検出される前記作動液圧が指示圧力となるように前記電磁ソレノイドの通電制御を行う液圧制御弁制御手段と、
前記電磁ソレノイドの通電制御に用いられるパラメータの急激な変化に基づいてクラッチの断接状態を判定するクラッチ断接判定手段と、
を備えることを特徴とする自動変速機制御装置。 - 前記パラメータが、前記作動液圧と前記指示圧力との差分、前記通電制御におけるフィードバック補正量、又は前記電磁ソレノイドへの通電量のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の自動変速機制御装置。
- 前記クラッチ断接判定手段は、前記パラメータを二回微分した値を用いて前記判定を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動変速機制御装置。
- 前記クラッチ断接判定手段によって前記クラッチの接続開始を判定する場合には、クラッチ接続の指示信号が入力されてから所定時間経過後の前記パラメータの値を用いて前記判定を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動変速機制御装置。
- 前記電磁液圧制御弁が前記電磁ソレノイドによる電磁力とスプリングと前記作動液圧とのバランスによってピストンの位置が決定される構成を有しており、
前記クラッチ断接判定手段によって前記クラッチの接続解除を判定する場合には、前記指示圧力、前記通電制御におけるフィードバック補正量、又は前記電磁ソレノイドへの通電量を所定量増大又は減少させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動変速機制御装置。 - 前記クラッチ断接判定手段によって前記クラッチの接続解除を判定する場合には、前記急激な変化を検出した後、緩やかな変化に戻ったときに前記クラッチの接続が解除されたと判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動変速機制御装置。
- 前記クラッチ断接判定手段が、前記パラメータの急激な変化に基づいて前記クラッチの接続解除を判定した後、二回目の急激な変化を検出したときに前記クラッチシリンダからの作動液の排出完了と判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動変速機制御装置。
- 前記液圧制御弁制御手段及び前記クラッチ断接判定手段が変速機本体側に備えられた電気回路によって構成され、前記クラッチ断接判定手段の判定結果がコントロールユニットに送信されるように構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動変速機制御装置。
- 前記液圧制御弁制御手段が変速機本体側に備えられた電気回路によって構成されるとともに前記クラッチ断接判定手段がコントロールユニットに備えられ、前記パラメータの値がコントロールユニットに送信されるように構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の自動変速機制御装置。
- 電磁液圧制御弁の電磁ソレノイドへの通電制御によって自動変速機のクラッチシリンダに供給する作動液圧を調節する自動変速機制御装置におけるクラッチの断接状態を検出するためのクラッチの断接状態の検出方法において、
前記クラッチシリンダに供給される作動液圧の値を検出し、検出される前記作動液圧が指示圧力となるように前記電磁ソレノイドへの通電制御を行うとともに、
前記クラッチの断接の指示が入力された後、前記電磁ソレノイドへの通電制御に用いられるパラメータの急激な変化に基づいて前記クラッチの断接状態を判定することを特徴とするクラッチの断接状態の検出方法。
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