JP2011524185A - 放射線療法における畳み込み/重ね合わせ線量計算法のグラフィックス・プロセッシング・ユニット加速を用いたリアルタイム線量計算 - Google Patents
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- A61N2005/1034—Monte Carlo type methods; particle tracking
Abstract
【課題】
【解決手段】放射線計画システムを含む放射線療法のシステムであって、放射線計画システムが、放射線治療の対象部位を有する身体に関する入力情報を受け取り、身体の放射線治療の対象部位に放射線治療を施すための情報を出力するように適合された並列プロセッサを含み、並列プロセッサが、放射線治療を施すための出力情報の決定において身体に関する入力情報に基づいて複数の逆方向レイ・トレーシング計算を行うように適合され、複数の逆方向レイ・トレーシング計算のそれぞれが、線源位置と放射線治療の対象部位との間をトレースする線が交差する身体の放射線治療の対象部位の第1の下位部位に対応する第1の物理特性を計算することと、第1の計算に続いて、第1の下位部位より線源位置に近い位置で線が交差する放射線治療の対象部位の第2の下位部位に対応する第2の物理特性を計算すること、を含む放射線療法のシステム。
【解決手段】放射線計画システムを含む放射線療法のシステムであって、放射線計画システムが、放射線治療の対象部位を有する身体に関する入力情報を受け取り、身体の放射線治療の対象部位に放射線治療を施すための情報を出力するように適合された並列プロセッサを含み、並列プロセッサが、放射線治療を施すための出力情報の決定において身体に関する入力情報に基づいて複数の逆方向レイ・トレーシング計算を行うように適合され、複数の逆方向レイ・トレーシング計算のそれぞれが、線源位置と放射線治療の対象部位との間をトレースする線が交差する身体の放射線治療の対象部位の第1の下位部位に対応する第1の物理特性を計算することと、第1の計算に続いて、第1の下位部位より線源位置に近い位置で線が交差する放射線治療の対象部位の第2の下位部位に対応する第2の物理特性を計算すること、を含む放射線療法のシステム。
Description
本発明は、放射線療法システム、特に、体外照射療法システムに関する。
(関連出願の相互参照)
本発明は、2008年5月8日出願の米国特許仮出願第61/126,936号の優先権を主張するものであり、その全体の内容を参照により本願明細書に援用するものとする。
本発明は、2008年5月8日出願の米国特許仮出願第61/126,936号の優先権を主張するものであり、その全体の内容を参照により本願明細書に援用するものとする。
放射線療法は、ガン細胞などの悪性細胞を治療する放射線の医学的利用である。この放射線は、高エネルギ光子などの電磁型、または電子、陽子、中性子、あるいはアルファ粒子などの微粒子型がある。
今日、実際に使用されている最も一般的な放射線は高エネルギ光子である。ヒト組織への光子の吸収作用は、問題の組織の原子構造とともに、放射線のエネルギで決定される。放射線腫瘍学で使われるエネルギの基本単位は、電子ボルト(eV)であり、103eV=1keV、106eV=1MeVである。組織への光子の吸収作用には、光電効果、コンプトン効果、および電子の対生成の3つの相互作用が関わっている。
光電効果においては、到来する光子が強固に結合した電子にエネルギを伝達する。光子は、実質的にそのすべてのエネルギを電子に伝達し、消滅する。電子は、光子からのほとんどのエネルギを持って離れ、周囲分子のイオン化(電離)を開始する。この相互作用は、組織の原子番号とともに、到来する光子のエネルギに依存する。エネルギが低く、原子番号が高いほど光電効果が起こりやすい。組織中で光電効果が支配的であるエネルギ範囲は、およそ10〜25keVである。
コンプトン効果は、ガン治療における光子と組織間の最も重要な相互作用である。この場合、光子が「自由電子」、つまり原子に強固に結合していない電子に衝突する。光電効果と違い、コンプトン相互作用では、光子と電子の両者が分散される。光子は、より低いエネルギではあるが、さらなる相互作用を継続することができる。電子は、光子によって与えられたエネルギでイオン化を開始する。コンプトン相互作用発生の可能性は、到来する光子のエネルギに反比例し、物質の原子番号とは無関係である。コンプトン効果は、約25keV〜25MeVの範囲で支配的であり、放射線治療の多くは約6〜20MeVのエネルギで行われるので、臨床的に最も一般的に発生している相互作用である。
対生成では、光子が原子の核と相互作用する。光子は、エネルギを核に与え、その過程で、電子‐陽電子対の粒子を作り出す。陽電子は、電子‐陽電子の対消滅の自由電子と結合するまでイオン化する。この電子‐陽電子の対消滅は、逆方向に移動する2個の光子を発生させる。対生成の発生の可能性は、到来する光子のエネルギの対数に比例し、物質の原子番号とは無関係である。対生成が支配的なエネルギ範囲は、≧25MeVである。この相互作用は、高エネルギ光子ビームを使った通常の放射線治療において、ある程度発生する。
高エネルギの線形加速装置の出現により、電子が、約5cmまでの深さの表在性腫瘍の治療における実行可能な選択肢となった。電子の深部線量特性はユニークで、高い皮膚線量を提示するものの、わずか数センチで減衰を示している。
電子のヒト組織への吸収作用は、空気腔および骨の存在に大きく影響される。電子ビームの最も一般的な臨床的使用には、基底細胞ガンなどのような皮膚病変の治療、ならびに頭部および首部における選ばれた節部と同様に、乳ガン患者の腫瘍摘出手術または乳腺切除後の傷跡などのような光子照射を以前受けた部位の助長がある。
高速で正確な線量計算アルゴリズムは、特定の患者に対し所望の放射線量が供給されることを保証する唯一の方法であるので、放射線療法計画にとって重要である。線量計算は、線源モデルと輸送モデルの2つの部分を含む。線源モデルは、入射フルエンス(fluence)を提供する。輸送モデルは、入射フルエンスによる結果である線量を計算し、これが現在のパフォーマンスのボトルネックとなっている。3つの主な輸送アルゴリズムには、精度向上/パフォーマンス低下の順に、ペンシルビーム(pencil beam)法、重ね合わせ/畳み込み(superposition/convolution)法、モンテカルロ(Monte Carlo)法がある。重ね合わせ/畳み込み法が、体外照射療法での放射線量計算の現在の臨床標準方法である。
近年、強度変調の使用により、治療の品質が向上した。この技術は、単一方向ビームから多数の開口を定義するのにマルチリーフ・コリメータを使用し、ビーム全体にわたり放射線の強度を可変する能力を提供する。この技術により、ビーム・パラメータの数を激増させ、放射線治療を目標の形に適合させて危険構造物を回避することができる。マルチリーフ・コリメータの最適な設定を決定するには、治療計画システムは、線量計算を多数回繰り返して、激増されたビーム・パラメータを有する目的関数を最適化しなければならない。実際には、治療計画者は、患者に対する可能な限り最善な結果を得るために、最適化を複数回繰り返している。したがって、5本のビームの組の1回の最適化に5分掛かるとすると、臨床的に許容される計画を作り上げるのに処理全体で数時間掛かることになる。これにより、臨床作業フローにおける強度変調計画の量と質の両者が制限されてしまうことになる。
この臨床作業フローの制限は、体積変調回転療法(volumetric modulated arc therapy)(K. Otto、Med. Phys. 35、P310-317、2008年)、強度変調回転療法(intensity modulated arc therapy)(C. X. Yu、Phys. Med. Biol. 40、P1435-1449、1995年)、および適応放射線療法(adaptive radiation therapy)(D. Yan、F. Vicini、J. Wong、A. Martinez、Phys. Med. Biol. 42、P123-132、1997年)のような、より複雑な技術にまで及んでいる。さらに、この臨床作業フローの制限は、日毎の各患者の走査、再計画、および治療をする能力である、リアルタイムの放射線療法を妨げる。放射線療法における線量計算についての詳細な解説には、Ahnesjo共著(A. Ahnesjo、M. Aspradakis、Phys. Med. Biol. 44、R99-R155、1999年)がある。
よって、線量計算の計算能力は、放射線療法治療計画の品質における制限要因である。従来、治療品質の改善はより高速なハードウェアにより実現されてきた。しかし、ムーアの法則は変わってしまった。18カ月ごとに速度が倍になるのではなく、コンピュータのプロセッシングコアの数が倍になっている。そして、プロセッサがマルチコアになることにより、多数コアアーキテクチャのグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)が汎用アルゴリズムを運用する柔軟性を増している。コンピュータハードウェアの最近の傾向から約束される能力の向上を実現するために、線量計算に使われる従来の直列アルゴリズムを並列アルゴリズムに置き換えるべきである。詳しい内容を得てはいないが、最近、Nucletron社(Nucletron corporation)が治療計画システムにおけるGPU加速についての発表を行った。しかし、既存の直列アルゴリズムを単純に分割してマルチプロセッシングコア用のマルチスレッドを生成するようにしても上手く機能しない。これは、スレッドが、同じ入力データに基づき同じ放射線量を計算するように作られており、簡単にリード/ライト競合(read/write conflict)が起こってしまうためである。ライト/ライト(write-on-write、WOW))競合が起こると、例えば、最後のライト(書き込み)のみが保存されることが起こり、不正確な線量計算となりうる。よって、マルチプロセッシングコアでの並列演算を利用して線量計算を改善する技術が必要である。また、リアルタイムでの線量計算の必要性も残っている。
本発明の実施の形態は、放射線計画システムを含む放射線療法のシステムであって、放射線計画システムが、放射線治療の対象部位を有する身体に関する入力情報を受け取り、身体の放射線治療の対象部位に放射線治療を施すための情報を出力するように適合された並列プロセッサを含み、並列プロセッサが、放射線治療を施すための出力情報の決定において身体に関する入力情報に基づいて複数の逆方向レイ・トレーシング計算を行うように適合され、複数の逆方向レイ・トレーシング計算のそれぞれが、線源位置と放射線治療の対象部位との間をトレースする線が交差する身体の放射線治療の対象部位の第1の下位部位に対応する第1の物理特性を計算することと、第1の計算に続いて、第1の下位部位より線源位置に近い位置で線が交差する放射線治療の対象部位の第2の下位部位に対応する第2の物理特性を計算すること、を含む放射線療法のシステムである。
本発明の実施の形態は、放射線療法パラメータの決定方法であって、身体の放射線治療の対象部位に関する情報を得るステップと、その情報に基づき、身体から線源位置への方向で、線源位置と身体との間をトレースし身体を放射線治療の対象部位で交差する線に沿って第2の下位部位が第1の下位部位よりも線源位置に近い第1の下位部位および第2の下位部位の物理特性を計算するステップと、その計算に基づき、放射線治療の対象部位への放射線治療を施すための放射線療法パラメータを決定するステップと、を含む方法である。
本発明の実施の形態は、コンピュータで実行すると、そのコンピュータに上述の方法を実装するコンピュータ可読媒体である。
本明細書の記述、図面、および実施例を考慮することにより、本発明のさらなる目的や利点が明らかとなる。
図5Bは、本発明の実施の形態を使って計算された離散化アーチファクトを含まないTERMAの同一半影部スライスを示す図である。
本発明における実施の形態について、以下に詳しく述べる。実施の形態の記述においては、明確さの目的で特定の専門用語が採用されている。しかしながら、本発明は、選択された専門用語に限定されることを目的とするものではない。当業者においては、本発明の広い範囲から逸脱することなく、他の同等の構成要素が採用できること、そして他の方法が開発できることを認識するであろう。本書における参考文献のすべては、参照により、個別に組み入れるのと同様に援用される。
図1は、本発明の実施の形態における放射線療法システム100の概略ブロック図である。放射線療法システム100は、放射線計画システム101を含み、放射線計画システム101は、さらに並列プロセッサ102を含んでいる。並列プロセッサ102は、放射線治療の対象部位を有する身体105に関わる入力情報を受け取るようになっている。また、並列プロセッサ102は、身体105の放射線治療の対象部位への放射線治療を施すための出力情報を生成するようになっている。並列プロセッサ102は、受け取った入力情報に基づいて、放射線治療を施すための出力情報を決定する複数の逆方向レイ・トレーシングの計算を行うようになっている。それぞれの逆方向レイ・トレーシングは、線源位置から放射線治療の対象部位までをトレースする線が交差する身体の放射線治療の対象部位の第1の下位部位に対応する第1の物理的特性を計算すること、および第1の計算に続いて、第1の下位部位より線源位置に近い位置で線が交差する身体の放射線治療の対象部位の第2の下位部位に対応する第2の物理的特性を計算することを含んでいる。放射線計画システム101は、さらに、記憶装置107、表示装置108、およびI/O装置109を含んでもよい。記憶装置107には、例えば、ハードディスクドライブ、CD−ROMドライブ、DVDドライブ、フラッシュドライブなどがある。表示装置108には、例えば、液晶表示装置(LCD)、ブラウン管(CRT)モニタ、プラズマディスプレイなどがある。I/O装置109には、例えば、マウス、キーボード、およびネットワークやデータバス上でのデータ転送用インタフェースなどがある。
放射線療法システム100は、さらに、放射線計画システム101と通信する放射線治療システム103を含んでもよい。放射線治療システム103は、さらに、放射線源106を含んでいる。放射線源106は、治療のために身体105に方向付けされる放射線ビームを放射する線源である。放射線源の例としては、X線源、ガンマ線源、電子ビーム源などがある。放射線源106は、さらに、ビームを平行にするためのマルチリーフ・コリメータ(MLC)を含んでもよい。MLCのリーフの位置を調節することにより、線量測定士が放射野を身体105の治療部位の形状に一致させることができる。一部の実施の形態においては、他のビーム形成および/または成形を含んでもよい。放射線源106は、対応する線源モデルを有することができる。放射線治療システム103は、放射線計画システム101によって制御されてもよく、例えば、身体105の放射線治療の対象部位の形状に放射線治療を適合するように強度変調された放射線エネルギを供給するようにしてもよい。
放射線療法システム100は、さらに、放射線計画システム101と通信し、身体105の経験的データを生成する診断システム104を含んでもよい。経験的データは、放射線計画システム101および並列プロセッサ102への入力情報として使用されてもよく、逆方向レイ・トレーシング計算に使用されてもよい。診断システム104は、身体105の経験的データを得るためのセンサからなっている。診断システムの例としては、コンピュータ断層撮影(CT)スキャナ、電磁共鳴映像(MRI)スキャナ、陽電子放出断層撮影(PET)スキャナなどがある。
身体105は、例えば、人間または動物とすることができる。
重ね合わせ/畳み込みアルゴリズムが、線量分布の正確な計算を行うことが明らかになっている(T.R. Mackie、J. W. Scrimger、J.J. Battista、Med. Phys. 12、P188-196、1985年、T.R. Mackie、A. Ahnesjo、P. Dickof、A. Snider、Use of Comp. In Rad. Ther.、P107-110 1987年、T.R. Mackie、P.J. Reckwerdt、T.R. McNutt、M. Gehring、C. Sanders、Proceedings of the 1996 AAPM Summer School、1996年)。これには2つの段階が含まれる。まず、入射フルエンスは、各位置における単位質量当たりの総エネルギ放出(TERMA)を算出するために、患者の密度表現を介して移送される。次式(1)に示すように、点r'における特定のエネルギEのTERMA、TE(r')は、水との相対密度ρ(r')および点r'における線減衰μE(r')で重み付けされたエネルギEのフルエンスΨE(r')として定義される。
線減衰係数μE(r')も、原子物質に依存する。コンプトン散乱は、放射線療法に関連するメガボルトのエネルギ範囲で支配的であり、また、物質ではなく電子密度に依存するので、臨床的には、標準的なCTの回数と正常なヒト組織の密度との間に区分的に線形な関係がある。一般に、このエネルギ範囲においては、非コンプトン相互作用は無視できると考えられる。点r'におけるエネルギEのフルエンスΨE(r')は、次式(2)により、線源の焦点距離sとr'方向におけるエネルギEの入射フルエンスΨE,0(r')とで求められる。
その後、重ね合わせ/畳み込みアルゴリズムが、各位置における最終線量を決定するため、線量投与カーネル(dose deposition kernel)によりこのエネルギを拡散する。線量投与カーネルが組織の不均質性に現実的に対応することができるように、次式(3)に基づいた2点間の放射線距離dρ(r,r')が使われ、それが重ね合わせと畳み込みとを区別する。
点rにおける線量D(r)は、次式(4)により、エネルギ依存線量投与カーネルKEにより重み付けされ、TERMAボリュームにわたる統合から算出される。標準的な崩壊円錐カーネル(collapsed cone kernel)は、点とカーネル軸との間の放射線距離と相対角度ωにより指数化され、幾何学的距離の二乗効果を欠くことになる。
一般に、式(4)のように、各ボクセルの単一エネルギ的寄与は計算されない。その代り、式(5)および式(6)に基づく式(7)のように、1つの多エネルギカーネルを使い、線角度ωと方向νの離散集合が選ばれ積分される。これは、距離の二乗効果によるカーネルの略指数関数的な減衰、および1つの遠位のボクセルの寄与の劇的な抑制により正当化される。距離の二乗効果は、線が表す立体角のボリュームの増加により無効とされる。線方向は、幾何学的およびカーネルエネルギ要因がバランスするように選ばれる。
従来、TERMAは、入射フルエンスを投与する1組の線をボリュームに投射することで、式(1)および式(2)により計算される。数値的な正確さのため、各TERMAボクセルをおよそ4本の線が通過し、減衰が患者の表面から始まり、各ボクセルへのフルエンスはそのボクセルに寄与した線の全長で正規化されるべきである。この正規化は、線源の分岐による通常の逆二乗フルエンスの減少を除去する。したがって、通常、TERMAグリッドに、正規化を再適用しなければならない。臨床的に許容される速度強化では、各ボクセルにおいて、線軸に合わせて線量投与カーネルを傾斜させないことになっている。この場合、分岐補正を線量グリッドに適用するとより正確になる(N. Papanikolaou、T. R. Mackie、C. Meger-Wells、M. Gehring、P. Reckwerdt、Med. Phys. 20、P1327-1336、1993年)。
TERMAは、ビームスペクトルに強く依存している。スペクトルは、ビーム軸について回転対称で、物質の深さにより強固となる。強固になったスペクトルとは、スペクトルが、低エネルギ成分がビーム外により好ましく分散および吸収されて、高エネルギ成分がより支配的となることを意味する。従来、減衰は、参照テーブルを使ってモデル化され、参照テーブルは、線形減衰参照テーブルと組み合わすと、深さ、密度、軸外角の軸を有する。また、このテーブルは、固定ステップ・レイ・キャスティング(ray-casting、線投射)アルゴリズムの使用を必要とし、それにより、各ステップでの従来のコスト的に指数関数的な評価を回避している。パフォーマンス的な理由から臨床的に許容されてはいるものの、この参照テーブルは、均質な媒体を想定している。不均一な組織は特異的に異なるスペクトルを減衰させるので、これは正しくない。さらに、固定ステップサイズと離散化された線は、数値的なアーチファクト(artifact)をもたらす。
線量投与カーネルもまた、各ボクセルにおいて、エネルギスペクトルへの依存性を持っている。しかし、この効果は無視でき、1つの多エネルギカーネルが臨床使用において十分に正確であることが明らかになっており、現在の標準治療となっている。多エネルギカーネルは、単一エネルギカーネルのスペクトルを組み合わせることにより生成され、それは、単一エネルギ光子が水球体の中心において相互作用し、その球体全域に投与された線量を集計するように強いるモンテカルロ・シミュレーションを使って生成される(A. Ahnesjo、P. Andreo、A. Brahme、Acta. Oncol. 26、P49-56、1987年、T. R. Mackie、A. F. Bielajew、D.W.O. Rogers、J. J. Battista、Phys. Med. Biol. 33、P1-20、1988年)。
画像処理のアルゴリズムは、明らかに並列化またはグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)に適合されている。例えば、従来のグラフィックスシステムに適合されたさまざまなレイ・キャスティング、レイ・トレーシング、およびボリューム視覚化アルゴリズムがある。しかし、放射線療法の線量計算は、根本的に線とボリュームとの相互作用に関係するものであり、視覚化アルゴリズムは、その全体や最大値などの線の特性に関心があるものである。この特徴が、視覚化用に開発された多くの並列レイ・トレーシングアルゴリズムを放射線療法に適用できないようにしている。従来のTERMAアルゴリズムの一部は、表面的にはボリューム・レイ・キャスティングに類似しており、以前(J. Kruger、R. Westermann、2003年)のGPU実装を愚直に適合させてはいるものの、実用的ではなく、正確な結果を得ることができない。これは、線量投与が主に電子の相互作用に関係しているので、視覚化アルゴリズムとは根本的に異なるためである。
本発明の実施の形態によれば、NVIDA社のCompute Unified Device Architecture(CUDA)ソフトウェア開発環境とDigital Mars社のDプログラム言語の組み合わせを使って、重ね合わせ/畳み込みアルゴリズムをGPUに適合させ、それを実現することができる。以下に、その適合の詳細を述べる。
上述のように、重ね合わせ/畳み込みアルゴリズムは2段階のアルゴリズムで、最初にTERMAを計算し、それから線量投与カーネルを重ね合わせる。
TERMAの計算においては、標準的な順方向TERMAアルゴリズムを実装することができる。この方法は、それを並列稼働させた場合にリード/ライト競合となる重複分散累積(overlapping scattered accumulation)を必要とする。リード/ライト競合は、複数のスレッドが同時に読み出し、処理し、そして同じメモリに書き込みをしようとするときに起こり、最後の更新のみが記録されることになる。これは、各ボクセルに寄与する線の有効な数を激減させ、数値的精度に必要な限度を下回ってしまう。しかし、線源の散乱の性質を利用して、常に1ボクセル分離れたことを保証する線の組を作ることができる。個別の組はGPUで効率よく稼働するのに十分大きいものの、このシリアライゼーションは過剰なGPUのコール・オーバーヘッドを引き起こす。従来の3Dスペクトル減衰参照テーブルは、テクスチャ・キャッシュの大きさを超えてしまい、パフォーマンスが低下する。共有メモリを使って個別のスペクトル・ビンを個別に減衰させることにより、レジスタの使用を低減し、パフォーマンスの改善ができる。これにより、参照を、エネルギと密度でパラメータ化された線形減衰係数の小さな2Dテクスチャに減少させた。これは、GPUにおいて、ハードウェア加速された指数関数で可能にできる。不均一な媒体においてスペクトルが正確に減衰されるので、精度も改善される。しかしながら、後述するように、離散化効果は確かであるが、数値的精度に必要とされる線の数の解像度との関係が不明確であり、演算は線量計算総時間のかなりの割合を占める。
これらの課題は、本発明の実施の形態による逆方向TERMAアルゴリズムにより回避することができる。式(1)、式(2)、式(5)を再整理して、入射フルエンスΨE,0(r')をスペクトル重み(spectral weight)wEと正味のフルエンスファクタΨ0(r')とに分離し、減衰ファクタを定義することにより、次式(8)が得られる。
図2は、従来の順方向レイ・トレーシングを示している。図3は本発明の実施の形態に係る逆方向レイ・トレーシングを示している。各TERMAボクセルから線を線源側に投射し、正味の減衰を収集することにより、患者との境界に達したときの早期線停止(early ray termination)を達成でき、パフォーマンスと精度の両者を増強することができる。上記で定義された減衰ファクタの計算においては、μE/ρに、事前に編集した参照テーブルが使われてもよい。例えば、この量を、放射線治療部位のハウンズフィールド単位(Houndsfield unit)でのCT画像に基づいて、この参照テーブルから検索してもよい。スペクトル重みwEは、例えば、放射線治療の放射線源のモデルに含まれてもよく、各スペクトル・ビンは、その線に対し個別に減衰されてもよい。
そして、次式(9)により、各ボクセルの正味の減衰に、線源からそのボクセルへの正味の入射フルエンスを掛けることにより、TERMAが計算される。
図4は、業務用Pinnacleシステム(Philips Radiation Oncology Systems社、米国ウィスコンシン州マディスン市)と本発明の実施の形態とを使い、中心軸に沿って解析的に計算されたTERMAエネルギを示しており、それぞれ深さ10cmで正規化してある。
式(9)は、標準の順方向法のO(n〜3)アルゴリズムではなく、O(n4)アルゴリズムであるが、各スレッドはそれぞれ独自のボクセルにのみ書き込みし、それにより、リード/ライト競合を回避している。このアルゴリズムは、テクスチャメモリに対し合体したリードアクセスを許容し、これによりメモリのパフォーマンスが劇的に強化される。標準の順方向および逆方向レイ・トレーシングアルゴリズムの両者は、さまざまな臨床解像度にわたって使用されてもよく、入射フルエンスの照射野のみが変更された場合は、計算コストの高い減衰ボリュームを相互作用的な使用中、または強度変調最適化中に一度、計算してもよい。本発明の実施の形態によれば、この事前計算は、多次数の大きさの能力改善を提供することができる。
表1:標準の順方向、新規の逆方向、近似TERMA計算方法でのパフォーマンス。強度変調中に有用な入射フルエンスの照射野の更新のみの実績も含む。
表1において、従来のレイ・キャスティングアルゴリズムに対する減衰ボリュームベースのTERMAアルゴリズムの相対的なパフォーマンスを、様々な解像度で比較した。両者の方法は、物理的に正確なマルチスペクトルな減衰を組み入れており、GPUに最適化されている。順方向レイ・トレーシングに使われたレイ・キャスティングは、リード/ライト競合が起こり得る。レイ・キャスティングの拡張性には、スイートスポット(sweet spot)があり、前提条件である各ボクセルを横切る線の数を維持するためのパラメータの微調整を必要とする。微調整は面倒であり、非常に分かりにくい。逆方向レイ・トレーシング計算による減衰ボリュームベースのTERMA演算は、理論的なO(n4)アルゴリズムより多少改善されたO(n3.76)の実験的なパフォーマンスを示している。本発明の実施の形態によれば、逆方向レイ・トレーシングの計算では、リード/ライト競合が起こらない。標準の均質物質の近似をする高速な近似放射線深度ベースの減衰アルゴリズムは、約8倍のスピードアップをもたらした。治療計画における強度変調に一般に使用される入射フルエンスの更新のみのパフォーマンスは、強度変調の欄に表されている。
逆方向レイ・トレーシング計算の長所の1つは、線の離散化によるアーチファクトの排除である。これは、ラスタデータ化の方法(J. Amanatides、A. Woo、Eurographics'87、Conference Proceedings、1987年)と同様に、逆方向レイ・トレーシング方法においては正確な放射線経路を使うことができるからで、それにより、線当たりのボクセル当たりのメモリアクセスを1つに削減し、関係する離散化アーチファクトを排除している。図5Aおよび5Bは、それぞれ固定ステップサイズと本発明の実施の形態に係る正確な放射線距離とを使って計算されたTERMAのスライスを示している。
さらに、物理的に正確なマルチスペクトルな減衰(H. H. Liu、T. R. Mackie、E. C. McCullough、Med. Phys. 24、P1729-1741、1997年)を、逆方向レイ・トレーシングの計算に適用することができる。相互作用的なビーム角の変化には、物理的に正確なマルチスペクトルな減衰ではない単純な変数を実装することができ、これは現行の臨床システムで一般に使用され、顕著なパフォーマンスの改善をもたらすことができる。TERMA計算においては、物理的に正確なマルチスペクトルな減衰(H. H. Liu、T. R. Mackie、E. C. McCullough、Med. Phys. 24、P1729-1741、1997年)を、逆方向レイの計算に適用することができる。現行の臨床標準は、物理的に正確なマルチスペクトルな減衰のない固定ステップ、高速、近似の順方向方法である。キャッシュした減衰ボリュームの使用は、本発明の一部の実施の形態で特定されるように、TERMA計算の加速に用いることができる。図6Aは、マルチスペクトル減衰なしの標準的な順方向レイ・トレーシングを使って計算した離散化アーチファクトを含むTERMAの半影部スライスを示している。図6Bは、マルチスペクトル減衰を伴う本発明の実施の形態で計算した離散化アーチファクトを含まないTERMAの同一の半影部スライスを示している。
TERMAが計算されると、吸収放射線エネルギ量を算出するために線量投与カーネルの重ね合わせを適用することができる。重ね合わせには2つの標準的な式がある。順方向式は、TERMAボクセルからの線量を周辺線量ボクセルに拡散する。この順方向式は、複数のTERMAボクセルが各線量ボクセルに寄与するので、それぞれの患者ボクセルへの線量を計算する必要があり、リード/ライト競合が起こってしまう。逆カーネル式は、周辺TERMAボクセルから線量ボクセルへの寄与量を収集する。これは、関心ボリュームへの線量のみを計算するので演算効率が良い。これは線量投与カーネルが可逆なためである。
図7Aおよび7Bは、重ね合わせ動作における傾斜カーネルおよび非傾斜カーネルを示している。厳密には、標準的な重ね合わせにおけるカーネル傾斜の使用は、カーネルが可逆的であるという前提を崩すことになる。しかしながら、線源が離れていることとカーネルの急速な減少を考慮すると、可逆性は、まだ妥当な仮定であり、臨床的に使われる。とはいえ、カーネルの急速な減少は、一般的な臨床解像度での数値的なサンプリングの課題も引き起こしている。2つの標準的な選択肢がある。累積カーネル(cumulative kernel、CK)(A. Ahnesjo、Med. Phys. 16、P577-592、1989年)は、次式(10)により、線切片(ray segment)から点への線量投与を表している。
累積・累積カーネル(cumulative-cumulative kernel、CCK)(W. Lu、G. H. Olivera、M. Chen、P. J. Reckwerdt、T. R. Mackie、Phys. Med. Biol. 50、P655-680、2005年)は、線切片から線切片への線量投与を表している。
両者は、放射線深度をdr、角度をωとして、標準的な点から点へのカーネルK(dr,ω)の積分から導かれる。
より正確ではあるが、特に粗い解像度では、従来、CCK式がCK式より50パーセント遅い。しかし、メモリアクセスをキャッシュして専用の線形補間ハードウェアを提供するGPUのテクスチャユニットは、無視できるほどのパフォーマンスの低下で、CCK式を使用することが可能になる。したがって、累積・累積カーネルにより、重ね合わせ演算を強化することができる(W. Lu、G. H. Olivera、M. Chen、P. J. Reckwerdt、T. R. Mackie、Phys. Med. Biol. 50、P655-680、2005年)。
直列CPU実装は、すべての指数を1ボクセルずらすことで、レイ・キャスティング指数計算を再使用することを可能にする。しかし、これにより、カーネルの傾斜ができなくなり、表2で説明するように、軸外角が大きいところでエラーとなる。それに対し、本発明の一部の実施の形態を実行したGPUでは、傾斜カーネルおよび非傾斜カーネルの両者を計算することが可能である。カーネルの傾斜は、従来、300パーセントのパフォーマンス・ロスとなったが(H. H. Liu、T. R. Mackie、E. C. McCullough、Med. Phys. 24、P1729-1741、1997年)、本発明の実施の形態を実行したGPUでは、19パーセントのみのパフォーマンス・ロスとなっている。
重ね合わせ動作が粗い解像度での精度を維持し、カーネルが端部で急速な減少を示すので、本発明の実施の形態によれば、各線を真の立体角として近似する多解像度(multi-resolution)の重ね合わせアルゴリズムを採用することができる。線と違って、立体角の幅は幾何学的な距離によって増大する。離散化ボリュームでは、線の幅はボクセルの幅に比例する。したがって、幾何学的距離でボクセル幅を増大することにより、線は立体角を近似することができる。また、この近似は、対数的にステップサイズを増大し、計算上の複雑さをO(ωDT1/3)からO(ωDlog(T1/3))に縮小することにより、パフォーマンスを向上させる。ここで、ωは角数、Dは線量ボクセル数、TはTERMAボクセル数である。
標準的な方法に比べ、本発明の実施の形態に係る多解像度重ね合わせでは、興味深い精度のトレードオフを示している。表2は、標準的方法に対して本発明の実施の形態に係る多解像度重ね合わせアルゴリズムを、多数の照射野サイズとカーネル線サンプリングで比較している。本発明の実施の形態に係る多解像度重ね合わせアルゴリズムでは、一般に、狭野サイズにおける半影部および低線量部位においては、幾何学的に線が当たらないTERMAがより少ないので、良い性能を発揮している。しかし、高線量部位における精度は、より大きいステップではビームの境界がぼやけてしまうので、多少低下している。本発明の実施の形態の変形として、同一ステップサイズを使うけれども多解像度のデータ構造を使わない多解像度重ね合わせの変形では、キャッシュパフォーマンスの低下を示し、平均誤差が平均して60パーセント増大する。
表2:照射野サイズ1cmから23cmでの最大投与線量Dmaxに対する平均投与線量エラーの平均。エラーは、半影部位を線量勾配が0.3Dmax以上の部位として定義し、0.2Dmax以下を低線量部位とする部位によって分類した。照射野は矩形で、サイズは深さ10cmで定義した。基準線量投与は、傾斜カーネルを使って4608本の線でサンプリングして計算した。ペンシルビームの精度は、重ね合わせカーネルを半径3cmで切り捨てて近似とした。絶対値2〜5%の線量エラーは、臨床的に許容される(A. Ahnesjo、M. Aspradakis、Phys. Med. Biol. 44、R99-R155、1999年)。
まばらな線サンプリングにより全ビームが全く当たらない場合に起こる狭野のアーチファクトは、本発明の実施の形態によれば、多解像度グリッドを使って低減することができる。図8Aおよび8Bは、それぞれ従来の均一サンプリングによるメモリアクセスのパターンおよび計算された狭野(5mm)線量投与スライスを示している。図9Aおよび9Bは、それぞれ本発明の実施の形態による多解像度グリッドを使ったメモリアクセスのパターンおよび計算された狭野(5mm)線量投与スライスを示している。
しかしながら、より大きいステップサイズは、線量投与カーネル精度を低下させる。隣接ボクセルが粗い解像度の異なるボクセルを横切っている場合、アーチファクトがもたらされる。本実装は、本質的に等方性であり、非均一角サンプリングの恩恵を低下する傾向があることが分かっている。
多解像度アルゴリズムは、計算の効率が良く、キャッシュパフォーマンスが良いことから、ボリューム最大強度投影(MIP)マップ(L. Williams、SIGGRAPH Comput. Graph. 17、3、P1-11、1983年)を使って実装することができる。解像度の変更は、ステップ当たり最大1回に制限され、より粗い解像度のボクセルの境界での発生のみが許容される。これにより、TERMAボクセルが、複数回同じボクセルに寄与することを回避することができる。カーネルの傾斜は、傾斜の追加により必要とされるレジスタの数がパフォーマンスの閾値を超えて増加し、GPUの占有率を25パーセントから17パーセントに低下させるので、組み入れられない。
CUDA(Compute Unified Device Architecture)のパフォーマンスを最適化するために、いくつかの戦略を使うことができる。CUDAの実行モデルは、ファンクションを実行するスレッド(カーネルと呼ぶ)の3次元ブロックの2次元グリッドである。各ブロックは、1つの並列ワーク単位を表し、したがって、大きさが制限されている。ブロックスレッド数は、NVIDIA社のCUDAオキュパンシ・カルキュレータ(CUDA occupancy calculator)を使って最適化されている。ボリューム処理については、xおよびy方向のボクセルに対するスレッドの1:1のマッピングが使われる。z方向は、z指数を増やしたボクセル当たりのファンクションにルーピングを掛けることで取り扱える。ストライドはzブロックの大きさでよく、それはスレッドの空間結束性(spatial cohesion)を維持するものである。ブロックの立方体状の大きさによって強化されるスレッドの空間結束性の増大は、キャッシュミス(cache miss)を低減し、パフォーマンスを改善する。すべての入力アレイデータはキャッシュされ、一般的にはテクスチャでキャッシュされ、重ね合わせの場合には、およそ2倍のパフォーマンスの改善をもたらす。共有メモリは、多解像度ボリューム構造アレイ(array multi-resolution volume structures)のキャッシュに使われる。また、共有メモリは、マルチスペクトルTERMA計算用のレジスタのパフォーマンスの改善をもたらす。高エネルギビームに十分であり、バンク競合(bank conflict)を起こさないことを満足する最大21個のエネルギ・ビンが選ばれる。
本発明の実施の形態に係るTERMA演算と重ね合わせの両段階では、標準の固定ステップサイズのレイ・キャスティングアルゴリズムは、線のラスタ化(J. Amanatides、A. Woo、Eurographics'87、Conference Proceedings、1987年)と同様に、正確な放射線経路方法に置き換えてもよい。
図10は、業務用のPinnacleシステム(Philips Radiation Oncology Systems社、米国ウィスコンシン州マディスン市)と本発明の実施の形態とで計算された中心軸に沿った吸収線量パターンを示すグラフで、それぞれ深さ10cmで正規化してある。図11は、業務用のPinnacleシステムと本発明の実施の形態とで計算された深さ10cmにおける吸収線量のプロファイルを示すグラフで、それぞれ中間点で正規化してある。
重ね合わせ/畳み込みのような輸送アルゴリズムの定量分析は、放射線治療用の線源モデルからの入射フルエンスへの強い依存性により複雑になる(R. Mohan、C. Chui、L. Lidofsky、Med. Phys. 12、592-597、1985年、T. R. McNutt、Dose Calculations、Philips白書)。線源モデルは、同様に、測定線量と計算した線量との誤差を最小にするために最適化される必要がある。よって、線源モデルは、しばしば輸送アルゴリズムにおけるエラーをマスクすることがある。さらに、業務用システムは、別個に電子汚染モデルを備えていることがある。本発明の実施の形態を使って行った予備実験では、単純な線源モデルのみで検討した。予備実験は、業務用の治療計画システムのモデリングパラメータを使ったものと同様の結果となり、表3に示すように、1桁分の速度改善がもたらされた。
表3:線量エンジンの立方体水ファントムでのパフォーマンスの比較。比率VPSはボリューム/秒で表す。32線の傾斜カーネルは80線の非傾斜カーネルよりもより正確である(表2参照)。適応型マルチグリッド法(非実装)は、臨床データでおよそ2倍のスピードアップを呈する。
実験では、Varian 6EX線形加速装置からの線量投与、TERMA、送信アレイ、スペクトル、質量減衰テーブル、および単一エネルギ線量投与カーネルの臨床データに、Pinnacle(Philips社、ウィスコンシン州マディスン市)治療計画システムを使って臨床参照を生成した。すべての実験は、AMD Opteron 254(2コア、2.8GHz)上で実行された。タイミング実験は、標準の重ね合わせ/畳み込みエンジンを使い、他のプログラムがアクティブになっていない状態で、少なくとも10回繰り返した。
本発明の実施の形態に係るタイミングの結果は、CPUのハイパフォーマンスハードウェアカウンタを使い、複数回繰り返した。実験は、NVIDIA社のGeForce GTX 280を1個搭載した3GHzのPentium 4上で実行した。80線カーネルは、10頂点×8方位の方向角を使った。32線カーネルは、4頂点×8方位の方向角を使った。72線カーネルは、6頂点×12方位の方向角を使い、より高い精度が得られた(表3参照)。線量エンジンの総合パフォーマンスは、フィルタテクスチャの平坦化(flattening filter texture)やTERMA減衰ボリュームのような再使用可能な計算を除き、線源モデル、TERMA、および重ね合わせパフォーマンスの合計から求めた。
すべての検証は、1辺の長さが25.6cmの立方体水ファントム上で行われた。検証は、標準的な臨床作業負荷を表す643ボクセルのボリュームと、1283ボクセルの高解像度ボリュームとで行われた。本発明の実施の形態としての多解像度重ね合わせ手法は、ボリュームMIPマップを利用し、従来の重ね合わせに比べて2〜3倍速く行うことができ、パフォーマンスは、高解像度への拡張でより良く示された。
図12は、本発明の別の実施の形態に係る方法を示している。この方法には、放射線治療の対象部位を有する身体に関する入力情報1201を求め、ボックス1202において、入力情報1201に基づき、身体から線源位置への方向で、線源位置から身体を通って身体の放射線治療の対象部位を交差してトレースする線に沿って第2の下位部位が第1の下位部位より線源位置に近い第1と第2の下位部位における物理特性を計算し、ボックス1203において、放射線治療の対象部位への放射線治療を施すための出力情報1204を決定することが含まれる。
ボックス1202において、第2の下位部位の物理特性が、計算された第1の下位部位の物理特性に基づいて計算される。物理特性は、入射放射線ビームから抽出されるエネルギの相対量を表す減衰ファクタのためのものである。その一例は、上述の減衰ファクタである。また、入力情報1201は、身体からの経験的データが含まれてもよい。測定データは、身体の治療対象部位のコンピュータ断層撮影(CT)画像の少なくとも1つが含まれてもよい。さらに、ボックス1202において、少なくとも1つの事前に編集された参照テーブルが使用されてもよい。
ボックス1203では、さらに、放射線治療の対象部位の吸収放射線エネルギの量を計算するステップ1205が含まれる。吸収放射線エネルギは、放射線治療の対象部位に及ぶ均一サンプリング、可変サンプリング、多解像度グリッド、またはそれらの変形の少なくとも1つを使って計算されてもよい。さらに、多解像度グリッドは、線源位置から身体を通ってトレースする線が立体角に近似するように割り当てられる。
本発明のさらに別の実施の形態は、コンピュータで実行すると、そのコンピュータに上記の方法を実装するソフトウェアを含むコンピュータ可読媒体であってもよい。
本発明の実施の形態の記述において、特定の専門用語が明確さの目的で使われている。しかしながら、本発明は、選択された特定の専門用語に限定されることを意図するものではない。当業者においては上記の教示を踏まえて認識されるように、上述の本発明の実施の形態は、本発明から逸脱することなく修正または変更することが可能である。よって、本発明が、請求項およびその等価物の範囲において、具体的に記述された以外でも実現されることが理解される。
Claims (27)
- 放射線計画システムを含む放射線療法のシステムであって、
該放射線計画システムが、放射線治療の対象部位を有する身体に関する入力情報を受け取り、該身体の該放射線治療の対象部位に放射線治療を施すための情報を出力するように適合された並列プロセッサを含み、
該並列プロセッサが、放射線治療を施すための該出力情報の決定において該身体に関する該入力情報に基づいて複数の逆方向レイ・トレーシング計算を行うように適合され、該複数の逆方向レイ・トレーシング計算のそれぞれが、
線源位置と該放射線治療の対象部位との間をトレースする線が交差する該身体の該放射線治療の対象部位の第1の下位部位に対応する第1の物理特性を計算することと、
第1の計算に続いて、該第1の下位部位より該線源位置に近い位置で該線が交差する該放射線治療の対象部位の第2の下位部位に対応する第2の物理特性を計算すること、を含む放射線療法のシステム。 - 前記第2の下位部位の物理特性の計算が、前記第1の下位部位の物理特性の計算の結果に依存する請求項1に記載のシステム。
- 前記複数のレイ・トレーシング計算が、前記並列プロセッサにより実質的に同時に行われる少なくとも2つの逆方向レイ・トレーシング計算である請求項1に記載のシステム。
- 前記第1および第2の物理特性が、入射放射線から抽出されたエネルギの相対量を表す減衰ファクタに対応する請求項1に記載のシステム。
- 前記放射線治療の対象部位を有する前記身体に関する前記入力情報が、前記身体からの経験的データを含む請求項1に記載のシステム。
- 前記経験的データが、前記放射線治療の対象部位のコンピュータ断層撮影(CT)画像データを含む請求項5に記載のシステム。
- 前記放射線治療の対象部位を有する前記身体に関する前記入力情報が、事前に編集された参照テーブルを含む請求項1に記載のシステム。
- 前記並列プロセッサが、さらに、前記入力情報に基づく前記放射線治療の対象部位に吸収される放射線エネルギ量を計算するように適合されている請求項1に記載のシステム。
- 前記第1および第2の下位部位が、実質的に同じ数のボクセルに対応した大きさおよび形状と実質的に同一である請求項1に記載のシステム。
- 前記第1の下位部位が、前記第2の下位部位より大きい請求項1に記載のシステム。
- さらに、前記放射線計画システムと通信する放射線治療システムを含み、該放射線治療システムが放射線源を含む請求項1に記載のシステム。
- 前記放射線源が、前記放射線治療が前記身体の前記放射線治療の対象部位の形状と一致する強度変調放射線療法に適合されている請求項1に記載のシステム。
- 前記放射線源が、少なくとも1MeVの平均光子エネルギを有する高エネルギ光子の線源である請求項1に記載のシステム。
- さらに、前記放射線計画システムと通信する診断システムを含み、該診断システムが前記放射線計画システムに入力される経験的データを得るセンサを含む請求項1に記載のシステム。
- 前記診断システムが、CTスキャナである請求項14に記載のシステム。
- 前記並列プロセッサが、汎用のグラフィックス・プロセッシング・ユニットである請求項1に記載のシステム。
- 前記身体が、人体または動物の少なくとも1つである請求項1に記載のシステム。
- 放射線療法パラメータの決定方法であって、
身体の放射線治療の対象部位に関する情報を得るステップと、
該情報に基づき、該身体から線源位置への方向で、該線源位置と該身体との間をトレースし該身体を該放射線治療の対象部位で交差する線に沿って第2の下位部位が第1の下位部位よりも該線源位置に近い第1の下位部位および第2の下位部位の物理特性を計算するステップと、
該計算に基づき、該放射線治療の対象部位への放射線治療を施すための該放射線療法パラメータを決定するステップと、を含む方法。 - 前記放射線療法パラメータを決定する前記ステップが、さらに、前記放射線治療の対象部位に吸収される放射線エネルギ量を計算するステップを含む請求項18に記載の方法。
- 前記第1および第2の下位部位が、実質的に同じ数のボクセルに対応した大きさおよび形状と実質的に同一である請求項19に記載の方法。
- 前記第1の下位部位が、前記第2の下位部位より大きい請求項20に記載の方法。
- 前記第2の下位部位の前記物理特性が、前記第1の下位部位の物理特性に基づいて計算される請求項18の方法。
- 前記物理特性が、入射放射線から抽出されたエネルギの相対量を表す減衰ファクタに対応する請求項18の方法。
- 前記情報が、前記放射線治療の対象部位を有する前記身体からの経験的データを含む請求項18の方法。
- 前記経験的データが、前記放射線治療の対象部位のコンピュータ断層撮影(CT)画像データを含む請求項24に記載のシステム。
- 前記情報が、事前に編集された参照テーブルを含む請求項18に記載のシステム。
- コンピュータで実行すると、そのコンピュータに請求項18から26のいずれかに記載の方法を実装するソフトウェアを収納するコンピュータ可読媒体。
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