JP2011520454A - 結腸直腸癌を評価する方法及びかかる方法に使用するための組成物 - Google Patents

結腸直腸癌を評価する方法及びかかる方法に使用するための組成物 Download PDF

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Abstract

本明細書において開示されるのは、選択されたmiRNA配列における制御変化を観察することにより、結腸直腸癌のステージを診断する方法である。これらの配列には、hsa−miR−143、hsa−miR−145、これらのそれぞれの前駆体及びこれらの配列の組み合わせが含まれ得る。

Description

(関連出願の相互参照)
本出願は、2008年5月16日に出願された同時係属の米国仮特許出願第61/053,760号の優先権及び利益を主張し、本出願の全内容は本明細書に参照により組み込まれている。
本発明は、1つの実施形態において、選択されたマイクロRNA(miRNA)配列の生成における制御変化を観察することによる、結腸直腸癌(CRC)の検出及び/又は監視をするための方法に関連する。特定の配列の上方制御又は下方制御を観察することにより、癌細胞の存在並びに癌のステージの両方を診断することができる。
(配列表、表、又はプログラム表の参照)
本出願は後述の「配列表」を参照するが、これは「Sequence3035191.txt」(9kb、2008年10月29日作成)と題される電子文書として提供されており、全体が参考として本明細書に組み込まれる。
結腸直腸癌(CRC)は最も頻繁に生じる癌の1つであり、先進諸国における癌関連死の一般的な原因である。CRCの全体的な発生率は、全人口の5%であり、5年生存率は40〜60%である。予後診断は、腫瘍に関する形態学及び組織病理学を用いた、記述的な病期分類システムに主に依存する。しかしながら、形態学的に類似の腫瘍であっても、潜在する分子変化及び腫瘍形成能は異なる場合がある。CRCが正常な上皮細胞から悪性の癌へと進行するには、遺伝子学的及び後成的な変化の両方の蓄積を伴う複数段階のプロセスが関与しており、これにより一時的な腫瘍形成遺伝子の活性化、並びにこれらの変化を含む細胞に対し選択的な利点を付与する腫瘍抑制遺伝子の不活性化がもたらされる。
タンパク質コード遺伝子については、潜在する分子経路を更に明らかにし、CRCの様々なステージを更に詳細に分析するために、数多くのCRC発現プロファイリング研究が実施されてきた。最近新たに発見された、22の短鎖ヌクレオチド(nt)非コーディングRNA種からなるクラス(マイクロRNA(miRNA)と呼ばれる)が同定され、これらが癌の発生と進行に関係していることが示された。これら低分子RNAの生合成は、RNAポリメラーゼIIによる転写と、エンドヌクレアーゼDroshaによる一次転写のプロセスとが関与し、これにより不完全なヘアピン構造を有する60〜70ntのmiRNA前駆体(pre−miRNA)が生成される。pre−miRNAはエキスポーチン5によって細胞質に輸送され、そこでRNAアーゼIII酵素ダイサー(Dicer)によるプロセシングを経て成熟miRNAが生成され、これが多タンパク質複合体に組み込まれる。このmiRNAを含む複合体は、常在性のmiRNA鎖と標的配列との間の相補性により、並びに相同性の度合に基づき、直接的な翻訳阻害又はmRNA分解により、複数のmRNAの3’非翻訳領域(UTR)に結合することが示された。これまでに、コンピュータ化モデルにより678のヒトmiRNA(miRBase配列データベース−リリース第11)が同定されており、ヒトゲノムにおいて現在既知である遺伝子の約3%を含む、1000を超えるmiRNA遺伝子があり得ることが示唆された。更に、バイオインフォマティクス解析によりmiRNAはヒトタンパク質コード遺伝子の最高30%を制御し得ると見積もられることから、これらの低分子量RNAが複雑なシグナル伝達経路間の相互作用を協調させる働きをする可能性が示唆されている。
正常組織及び腫瘍組織又は癌細胞株間で異なった発現をするとして、いくつかのmiRNAが同定されてきた。(Calin,G.A.and Croce,C.M.MicroRNA signatures in human cancers.Nat Rev Cancer,6:857〜866,2006;Bandres,E.,Cubedo,E.,Agirre,X.,Malumbres,R.,Zarate,R.,Ramirez,N.,Abajo,A.,Navarro,A.,Moreno,I.,Monzo,M.,and Garcia−Foncillas,J.Identification by Real−time PCR of 13 mature microRNAs differentially expressed in colorectal cancer and non−tumoral tissues.Mol Cancer,5:29,2006;Cummins,J.M.,He,Y.,Leary,R.J.,Pagliarini,R.,Diaz,L.A.,Jr.,Sjoblom,T.,Barad,O.,Bentwich,Z.,Szafranska,A.E.,Labourier,E.,Raymond,C.K.,Roberts,B.S.,Juhl,H.,Kinzler,K.W.,Vogelstein,B.,and Velculescu,V.E.The colorectal microRNAome.Proc Natl Acad Sci USA,103:3687〜3692,2006;Michael,M.Z.,SM,O.C.,van Holst Pellekaan,N.G.,Young,G.P.,and James,R.J.Reduced accumulation of specific microRNAs in colorectal neoplasia.Mol Cancer Res,1:882〜891,2003;Lanza,G.,Ferracin,M.,Gafa,R.,Veronese,A.,Spizzo,R.,Pichiorri,F.,Liu,C.G.,Calin,G.A.,Croce,C.M.,and Negrini,M.mRNA/microRNA gene expression profile in microsatellite unstable colorectal cancer.Mol Cancer,6:54,2007.)。
CRCでは、miRNAの発現パターンを調査した研究は限られている。miRNAの調節解除を示した最初の研究は、CRCの初期におけるこれらのmiRNAの潜在的な役割を示唆する、プレ腺腫様ポリープ段階のような初期でのmiR−143及びmiR−145の下方制御を報告した。続いて、CRC腫瘍において異なった発現を示す13グループのmiRNAが、CRC腫瘍のステージに相関がある、miR−31の発現レベルに関して同定された。
本発明は、1つの形態において、細胞検体中の結腸直腸癌の存在を検出するための方法を含む。別の形態において、本発明は細胞検体中の結腸直腸癌のステージを診断するための方法である。出願者らは、野生型細胞と比較して、結腸直腸癌において異なる制御が行われる特定のmiRNAを発見した。このようなmiRNAにおける制御変化の度合を診断することにより、組織検体に結腸直腸癌細胞が含まれているかどうかを診断することができる。出願者らは、初期(ステージI及びII)の結腸直腸癌と比較して、後期(ステージIII及びIV)において異なる制御が行われる、特定の他のmiRNAを発見した。これらのmiRNAを監視することにより、細胞形態学など信頼性の低い識別子に依存する必要なしに、初期の腫瘍検体と、後期の腫瘍検体とを区別することができる。
異なった発現を示す41のmiRNAを用いる、CRCと、正常な結腸直腸組織との2元配置された階層型クラスタ解析。完全連結法によるユークリッド距離計量法を用いて、全ての検体にわたって、Log2変換されたシグナル強度の幾何平均を算出した。赤色と青色はそれぞれ、相対的に高いレベルで、又は相対的に低いレベルでmiRNAが発現していることを示す。miR−143−145及びmiR−17−92のクラスタはそれぞれ、垂直の青色のバー及び垂直の赤色のバーで示す。検体は3つのメインクラスタにグループ分けされており、クラスタIは主に正常な結腸直腸組織を表し、クラスタII及びIIIはCRC検体を表す。複製検体は接尾語「2」により示される。 mirVana(商標)バイオアレイとABI TaqMan(登録商標)プラットフォームを比較する、miRNA発現の相関性。19のmrRNAsで線形回帰を実施し、両方のプラットフォームで測定した。4つの異なるCRC検体を試験した。相関係数の範囲は0.85〜0.92。 新鮮凍結CRC検体のmiRNA発現対ホルマリン固定パラフィン包埋CRC検体のmiRNA発現。(A)TaqMan(登録商標)miRNA発現アッセイを、4つの対応する新鮮凍結検体及びFFPE検体由来の、26のmiRNAで実施した。(B)mirVana(商標)バイオアレイアッセイを用いての、2つの対応する新鮮凍結検体及びFFPE検体由来の、18のmiRNAの発現の比較。 疾病のステージに特異的なmiRNAの発現レベル。(A)正常な結腸直腸組織から、CRCの初期(I及びII)及び後期(III及びIV)へと進むにつれて発現の減少を示す、miR−1、miR−133a、miR−143、及びmiR−145の、ドットプロット。(B)正常な結腸直腸組織から初期(I及びII)及び後期(III及びIV)CRCへと進むにつれて発現の上昇を示す、miR−31、miR−21、miR−20a、及びmiR−106aのドットブロット。 8つのCRC細胞株及び正常結腸の全RNAにおける、22のmiRNAの発現。U6 snRNAを内在性コントロールとして用いて、ノーザンブロットを実施した。 SW620細胞株において、miR−145の過剰発現は、細胞の形態及び増殖に影響を与える。(A)miR−145遺伝子周辺のゲノム領域をPCR増幅し、CMVプロモータの制御下で、pSilencer(商標)4.1中にクローン化した。後にトランスフェクションを行うSW620細胞のプールした集団で、ノーザン解析により、成熟したmiR−145を検出した。U6 snRNAをローディングコントロールとして用いた。(B)miR−145過剰発現細胞集団の主要な際立った特徴は、SW620の、丸い単細胞から、線維芽様細胞に典型的な進展した突起を備える細長い細胞への細胞形態の変化である。(C)miR−145を発現しているSW620細胞集団は、血清の存在下で増殖させた場合には足場非依存性増殖において2倍の増加を示し、及び血清の存在下(黒の棒線)又は不在下(白の棒線)で増殖させた場合に、細胞増殖/代謝活性において50%を超える増加を示した(p<0.001)。(D)SW620/miR−145細胞及び対照細胞のウエスタン解析は、成熟したmiR−145を発現するSW620細胞において、E−カドヘリンの定常状態のレベルが50%低いことを示した。 アンチセンス介在性のmiR−145の変換が増殖を誘導したことを示す図。(A)処理検体からの全RNAは、miR−145が、miR−145特異的な2’OmeアンチセンスRNAを細胞内で欠乏している一方で、モック処理対照又はmiR−145センス鎖処理対象は欠乏していないことを示した。(B)予想されたように、SW620/miR−145を発現するプールは、血清の存在下(黒の棒線)又は不在下(白の棒線)でのベクター対照と比較して、増殖の増加を示した。miR−145アンチセンスRNAで処理した場合、SW620/ベクター及びSW620miR−145プールの両方で増殖の減少が見られた。3つの別個の試験を実施した(p<0.05;p<0.01;p<0.001)。 SW620細胞株において、miR−143の過剰発現は、細胞の形態及び増殖に影響を与えることを示す図。(A)miR−143ゲノムDNAを、U6プロモータ(pSilencer(商標)2.1中)の制御下でクローン化し、SW620細胞へと遺伝子導入した。7つの安定なSW620クローンが、miR−143を発現していると同定された(A4、B3、B5、B6、C1、C5及びD2)。U6 snRNAを、ローディングコントロールとして用いた。(B)7つのSW620/miR−143クローンを、細胞形態についてベクター対照と比較して評価した。(C)SW620/miR−143クローン及び対照細胞のウエスタン解析は、定常状態のレベルのE−カドヘリンを示した。E−カドヘリンの比はβ−アクチンを正規化コントロールとして用いて算出した。(D)7つのSW620/miR−143クローンを、ベクター対照と比較して、血清の存在下(黒の棒線)又は不在下(白の棒線)で増殖させた場合の増殖/代謝活性についてアッセイした。(E)同一のクローンを、血清の存在下での急速軟寒天アッセイで、足場非依存性細胞増殖について評価した。2つの独立した試験を実施した(p<0.01,p<0.001)。 miR−143及びmiR−145発現間の相関。miR−143及びmiR−145遺伝子について、正規化された発現強度(log2)を比較する線形回帰分析を実施した。miRNA間の相関係数は0.95。 miR−17−92のための相互作用地図を示す図。 SW620細胞株において、miR−17−92クラスタ及びmiR−20a単独の過剰発現は、細胞の形態及び増殖に影響を与える。13番染色体由来のmiR−17−92クラスタを含有しているゲノム領域及びmiR−20a pre−miRNAを含有しているゲノム領域を、PCR増幅し、レトロウイルスベクター(retrofviral vector)pQCXIN中にCMVプロモータの制御下でクローン化し、HCT116結腸癌細胞株に送達した。(A)ノーザンブロット解析を用いて、miR−20a、miR−92、miR−18a及びmiR−19aの過剰発現について、HCT116/miR−17−92クラスタクローン(4−1及び4−17)をスクリーニングした。miR−20aのみを過剰発現しているクローン(9−3、9−9、9−12及び9−13)もまた、これらのクラスタ構成要素の発現についてスクリーニングした。(B)ノーザンブロットから算出した、miR−17−92構成要素のmiRNA発現レベルのヒストグラム。発現レベルはU6 snRNAで正規化した。(C)miR−20aを過剰発現しているいくつかのHCT116クローン(9−3、9−9、9−12、9−13)又はmiR−17−92クラスタ(4−1、4−7)を、血清の存在下(黒の棒線)又は不在下(白の棒線)で細胞の増殖/代謝活性について評価した。(D)同一のクローンを、足場非依存性細胞増殖について、急速軟寒天アッセイ(血清の存在下で)で評価した(p<0.05,p<0.01,P<0.001)。
マイクロRNA(MircroRNAs)(miRNA)は、様々な機構を介してタンパク質の発現を制御する、短鎖非コードRNAsである。マイクロRNAの異常発現は、様々な癌と関連があることが示されてきた。CRCにおいてmiRNA発現をプロファイルし、CRC細胞に特異的なmrRNAsの機能を解析する方法が、本明細書に記載される。8つのCRC細胞株モデル、異なるステージの45のヒトCRC検体及び4つの正常な結腸組織検体におけるmiRNA発現プロファイルを診断するために、mirVana(商標)miRNAバイオアレイを使用した。細胞株モデル及び臨床検体の両方で、正常結腸及びCRC間で異なった発現をする、11の共通のmiRNAを同定した。CRCにおいて非常に減少するmiR−145を含む、これらのmiRNAの多くが、CRC腫瘍進行の異なるステージに関連付けられることが現在までに示されている。インビトロのデータは、miR−143及びmiR−145が、細胞のおかれた状況に基づいた細胞増殖の阻害又は増強のいずれかと逆に機能することを示した。miR−31及びmiR−17−92クラスタを含むいくつかのmiRNAがまた、CRCにおいて過剰発現していた。SW620 CRC細胞におけるmiR−17−92の増強は、細胞増殖を抑制したが、足場非依存性増殖は増加させた。このmiRNAクラスタの詳細な分析は、miR−20Aが活性化因子であることを示した。したがって、miRNAは、CRC治療、並びに診断及び予後診断検体用の標的となり得る。
45の臨床CRC検体、4つの対応する正常な結腸直腸組織及び8つの細胞株モデルにおけるmiRNAの発現をプロファイルした。正常結腸と臨床検体及び細胞株の両方との間で発現レベルが共通して変化した、11のmiRNAが同定された。CRCの異なるステージについて、いくつかのmiRNAの発現パターンを限定することで、この癌のための潜在的な予後診断又は診断マーカーを提供することができる。CRCモデル細胞株におけるmiR−143又はmiR−145の再発現は、反対の様式で、細胞の分化及び増殖の両方に影響を与える。加えて、miR−17−92クラスタの発現の増加は細胞増殖を抑制したが、足場非依存性増殖は増加させた。このクラスタの詳細な分析は、miR−20aが、これらの細胞のおかれた状況に依存して作用する活性化因子であることを示す。
バイオマーカーは示されたマーカー遺伝子の発現レベルの任意のしるしである。しるしは、直接的又は間接的なものであり、生理的パラメーターを付与された遺伝子の過剰発現又は過少発現を、内部対照群、正常な組織、又は別の癌と比較して測定することができる。バイオマーカーとしては、核酸(過剰発現及び過少発現、並びに直接的なもの及び間接的なもの、の両方)が挙げられるが、これらに限定されない。核酸をバイオマーカーとして使用することには、限定するものではないが、DNA増幅産物、RNA、マイクロRNA、ヘテロ接合性欠失(LOH)、一塩基多型(SNPs)、マイクロサテライトDNA、DNAの低又は高メチル化、を測定することが挙げられる、当該技術分野において既知の任意の方法を含むことができる。タンパク質をバイオマーカーとして使用することには、限定するものではないが、量、活性、グリコシル化、リン酸化反応、ADPリボシル化、ユビキチン化等の修飾、又は免疫組織化学(IHC)を測定することが挙げられる、当該技術分野において既知の任意の方法を含むことができる。他のバイオマーカーとしては、イメージング、細胞計数及びアポトーシスマーカーが挙げられる。
本明細書で提供される示された遺伝子又はmiRNAは、特定の腫瘍型又は組織型と関連付けられる。1つ以上の癌と関連付けられる数多くの遺伝子が当該技術分野において既知である。本発明は、好ましいマーカー遺伝子、及び更により好ましくはマーカー遺伝子の組み合わせを提供する。これらは本明細書中で詳しく記載される。
マーカー遺伝子は、配列番号によって指定される配列に対応する(遺伝子がこの配列又はこの相補体を含む場合)。遺伝子セグメント又は遺伝子断片は、基準配列、又はその相補体の一部を、これが遺伝子の配列であるものとして見分けるために十分に含む場合、このような遺伝子配列に対応する。遺伝子発現産物は、そのRNA、mRNA、miRNA又はcDNAがかかる配列を有する組成物(例えば、プローブ)とハイブリダイズする場合にはかかる配列に対応し、すなわち、遺伝子発現産物がペプチド又はタンパク質である場合には、これらはかかるmRNAによってコードされている。遺伝子発現産物のセグメント又は断片は、これらを遺伝子又は遺伝子発現産物の配列であるとして区別するのに十分な程度に、基準とされる遺伝子発現産物の一部又はその相補体の一部を含有している場合、かかる遺伝子又は遺伝子発現産物の配列と対応する。本明細書で記載され請求される本発明の方法、組成物、物品及びキットは1つ以上のマーカー遺伝子を含む。「マーカー」又は「マーカー遺伝子」は、過剰発現又は過少発現が腫瘍型又は組織型に関連付けられる任意の遺伝子に対応する、遺伝子及び遺伝子発現産物を指すために、本明細書を通して使用される。好ましいマーカー遺伝子が本明細書においてより詳細に記載される。本明細書において議論される全ての配列が本明細書中に記載され、配列表で提供される。本発明は更に本明細書で提供される方法に従うアッセイを行うためのキットを提供し、更にバイオマーカー検出試薬を含む。本発明は更に、本明細書に記載の方法を実施するためのマイクロアレイ又は遺伝子チップを提供する。本発明は更に、分離された核酸配列、それらの相補体、又は本明細書に記載されるような遺伝子の組み合わせの一部を含有する診断/予後診断ポートフォリオを提供し、ここでこの組み合わせは、異なる癌又は正常組織からの細胞に関連する転移性の細胞を有する生体検体中の遺伝子発現を、測定又は特徴づけることができる。
本発明に記載されるいずれかの方法が、検体中で恒常的に発現されている少なくとも1つの遺伝子の発現を測定することを更に含み得る。
本発明は、本明細書に記載の方法に従ってCRCの状態を診断し、CRCのための適切な治療を同定することによる、治療の方向性を提供するための方法を更に提供する。
本発明は、本明細書に記載の方法に従ってCRCの状態を診断し、CRCのための対応する予後診断を同定することによる、予後診断を提供するための方法を更に提供する。
本発明は、配列番号1〜34から選択された少なくとも1つの分離された配列を含む組成物を更に提供する。
本発明は、本明細書に記載のアッセイを行うためのキット、物品、マイクロアレイ又は遺伝子チップ、診断/予後診断ポートフォリオ、並びに本方法によって得られた結果を報告するための患者報告書(patient reports)を更に提供する。
組織検体中の特定の核酸配列の単なる存在又は不在が、診断又は予後診断的な価値を有するものとして見出されることは稀である。それに対して様々なタンパク質、ペプチド、miRNA又はmRNAの発現についての情報は、ますます重要視されている。タンパク質、ペプチド、miRNA又はmRNAを発現する可能性を有する核酸配列(「遺伝子」と称される配列)の単なる存在は、ゲノム内で単独に存在するだけでは、タンパク質、ペプチド、又はmRNAが所与の細胞内で発現されるか否かを決定する要因にはならない。かかる産物を発現することのできる所与の遺伝子が発現するかどうか、及び仮に発現したとして、このような発現がどの程度生じるかは、様々な複雑な要因によって決定される。これらの要因の理解及び評価の難しさとは関係なく、遺伝子発現の解析は、腫瘍形成、転移、アポトーシス、及び他の臨床的に関連する現象などの、重要な事象の発生に関する有用な情報を提供し得る。遺伝子の活性又は不活性の程度の相対的な目安は、遺伝子発現プロファイルに見出すことができる。本発明の遺伝子発現プロファイルは、CRCについての患者の診断及び治療を提供するために使用される。
検体調製には、患者検体の収集を必要とする。本発明の方法で使用される患者検体は、例えば組織の穿刺吸引細胞診(FNA)で小結節から採取された細胞などの、異常細胞を含有している疑いのあるようなものである。生検標本又は外科標本、及びレーザーキャプチャー法(LCM)から得られる腫瘤組織(Bulk tissue)の調製もまた、使用に好適である。LCM技術は、研究する細胞を選択する1つの方法であり、細胞型の不均一性によって生じるばらつきを最小化する。その結果として、正常又は良性及び悪性細胞間での、マーカー遺伝子の発現における中程度の又は少しの変化を容易に検出することができる。検体はまた、末梢血から抽出される循環上皮細胞を含む場合もある。これらは、多くの方法に従って得ることができるが、最も好ましい方法は、米国特許第6136182号に記載される磁気分離技術である。一度対象とする細胞を含有している検体が得られると、適切なポートフォリオの遺伝子のためのバイオマーカーを用いることで、遺伝子発現プロファイルが得られる。
遺伝子発現プロファイルを確立するための好ましい方法は、遺伝子によって産生されるRNA(mRNA又はmiRNAのいずれか)の量を診断することを含む。これは、逆転写PCR(RT−PCR)、競合RT−PCR、リアルタイムRT−PCR、示差表示RT−PCR、ノーザンブロット解析、及び他の関係する試験によって達成することができる。個別のPCR反応を使用するこれらの技術を実行することが可能であるが、mRNA又はmiRNAから生成される相補的なDNA(cDNA)又は相補的なRNA(cRNA)を増幅し、マイクロアレイ又は他の好適な方法によってこれを解析することが最善である。多くの異なるアレイ配列、及びこれらの生成のための方法が、当業者には既知であり、例えば、米国特許第5445934号、同第5532128号、同第5556752号、同第5242974号、同第5384261号、同第5405783号、同第5412087号、同第5424186号、同第5429807号、同第5436327号、同第5472672号、同第5527681号、同第5529756号、同第5545531号、同第5554501号、同第5561071号、同第5571639号、同第5593839号、同第5599695号、同第5624711号、同第5658734号、及び同第5700637号に記載されている。
マイクロアレイ技術は、何千もの遺伝子の安定した状態のmRNAレベルの同時測定を可能にし、無制御の細胞増殖の発生、停止、又は調節等の効果を同定するための強力なツールを提供する。現在ではいくつかのマイクロアレイ技術が普及している(mirVana(商標)バイオアレイ、cDNAアレイ及びオリゴヌクレオチドアレイ)。これらのチップの構成には違いが存在するものの、実質的に全ての下流のデータ解析及び出力は同じである。これらの解析の結果は、典型的には、マイクロアレイの既知の位置で核酸配列にハイブリダイズする、検体からのcDNA配列を検出するために使用される標識されたプローブから受信される、シグナルの強度の測定値である。典型的には、シグナルの強度は、試料細胞内に発現したcDNA、ひいてはmRNA又はmiRNAの量に比例している。多くのこのような技術が利用可能であり有用である。遺伝子の発現を診断するための好ましい方法は、米国特許第6271002号、同第6218122号、同第6218114号、及び同第6004755号に見出すことができる。
発現レベルの解析は、かかるシグナル強度を比較することによって行われる。これは、試験検体の遺伝子の発現強度と対照検体のそれとの比率マトリックスを生成することによって最良に行われる。例えば、異常組織からの遺伝子発現強度が、同型の良性又は正常な組織から生成される発現強度と比較され得る。これらの発現強度の比率は、試験検体と対称検体との間の遺伝子発現における倍数変化を示す。
選択は、腫瘍形成に関連する因子間の各遺伝子の異なった発現に対する有意な証拠に関連したランク付けリストを生成する、統計的な検定に基づくことができる。このような試験の例としては、ANOVA及びKruskal−Wallisが挙げられる。ランク付けは、カットオフ値までの、このような重さの合計を、あるクラスが別のクラスよりも優位であることを肯定する証拠として解釈するように設計されたモデルにおける重み付けとして使用され得る。本文献において記載される先の証拠もまた、重み付けを調整するために使用され得る。
遺伝子発現プロファイルは、様々な方法で表され得る。最も一般的には、未調整の蛍光強度、又は比率マトリックスをグラフィカルデンドログラム(dendogram)に配置し、列が試験検体を示し、行が遺伝子を示す。同様の発現プロファイルを有する遺伝子が、互いに近位にあるように配列される。各遺伝子の発現比率が色で可視化される。例えば、1未満の比率(下方制御)が、スペクトルの青色部分で表示される一方で、1を超える比率(上方制御)は、スペクトルの赤色部分で表示される。「GeneSpring」(Silicon Genetics,Inc.)、「Discovery」及び「Infer(商標)」(Partek,Inc.)を含む、市販のコンピューターソフトウェアプログラムが、このようなデータを表示するために利用できる。
特有のRNA種の豊富さについての測定値が、生体検体からの原発腫瘍又は転移性腫瘍から収集される。臨床的な記録に沿うこれらの指数には、限定するものではないが、患者の年齢、性別、原発腫瘍の起源及び転移部位(該当する場合)が挙げられ、関係データベースを生成するために使用される。データベースは、CRCの存在、予後又は状態を診断するためのマーカーの変数として使用することができる、miRNA転写物及び臨床的な因子を選択するために使用される。
遺伝子発現を診断するためにタンパク質レベルを測定する場合、十分な特異性及び感度を生じるのであれば、当技術分野で公知の任意の方法が好適である。例えば、タンパク質レベルは、タンパク質に特異的な抗体又は抗体断片を結合させ、抗体結合タンパク質の量を測定することにより測定することができる。抗体を放射性、蛍光又は他の検出可能な試薬により標識して、検出を容易にすることができる。検出する方法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び免疫ブロット法が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の方法で使用された調節された遺伝子が、実施例で記載される。異なった発現をする遺伝子は、CRCに罹患していない者あるいは異なったCRCの状態又は進行の患者と比較して、CRC患者で上方又は下方制御のいずれかがなされている。上方制御及び下方制御は、一定の基準に対する遺伝子の発現の程度において、検出可能な差異(これを測定するために使用されるシステムのノイズの寄与以外)が見出されることを意味する、相対的な用語である。異常細胞中の対象とする遺伝子は次に、同じ測定方法を使用して、基準濃度に対して上方制御又は下方制御される。この関連において、疾病を有する、とは制御されない細胞の増殖を生じ、身体機能の適切な性能を中断若しくは阻害するか、又は阻害する可能性を有する身体の状態変化を指す。ある人の遺伝子型又は表現型のある態様が、疾病の存在と合致する場合、その人は疾病を有するものとして診断される。
診断又は予後診断を行う行為は、疾病/状態の問題の診断、例えば、再発の可能性、治療の種類、及び治療の監視などの診断を含み得る。治療監視では、経時的な遺伝子の発現を比較して、遺伝子発現プロファイルが、正常な組織とより一致するパターンに変化したか、又は変化しつつあるかを診断することによって所与の治療経過の効果に関連して、臨床的な判断が行われる。
遺伝子が分類され、その結果その分類の中の一連の遺伝子に関して得られる情報が、臨床的に関連する判断、例えば、診断、予後診断、又は治療選択などを行うための確固とした基盤を提供し得る。これらの一連の遺伝子は、本発明のポートフォリオを作成する。ほとんどの診療マーカーがそうであるように、多くの場合、正しい医療判断を行うために十分な、最小限の数のマーカーを使用することが、好ましい。これは、更なる解析を待つ間の治療の遅延、並びに時間及び資源の非生産的使用を回避する。
ポートフォリオの選択のプロセスはまた、ヒューリスティックルールの用途を含み得る。好ましくはこのようなルールは、生物学、及び臨床結果を生成するために使用される技術の理解に基づいて生成される。より好ましくは、これらは、最適化された方法からの出力に適用される。例えば、ポートフォリオ選択の平均分散方法は、癌患者において異なる様式で発現された多くの遺伝子の、マイクロアレイデータに適用され得る。この方法からの出力は、末梢血、加えて異常組織中に発現されたいくつかの遺伝子を含み得る遺伝子の最適化されたセットであり得る。試験方法で使用される検体が末梢血から得られ、癌の事例において異なる様式で発現された一定の遺伝子がまた、末梢血中で異なる様式で発現され得る場合、ポートフォリオが、末梢血中で異なる様式で発現されたものを除く、効果的境界から選択される、ヒューリスティックルールが適用され得る。当然、例えば、データ予備選択の間にルールを適用することにより、効果的な境界の形成の前にルールを適用することができる。
遺伝子発現ポートフォリオの設定の一方法は、資源ポートフォリオの設定において広範に使用される、平均分散アルゴリズムなどの、最適化アルゴリズムの使用による。この方法は、米国特許第20030194734号において詳細に記載される。本質的に、この方法は、それを使用するために受信されるリターン(例えば、生成されるシグナル)を最適化する一方で、リターンのばらつきを最小化する、一連の入力の設定を必要とする(財政適用における株式、本明細書における強度により測定される発現)。かかる操作を実行するために、多くの業務用ソフトウェアが利用できる。本明細書を通して「Wagner Software」として参照される「Wagner Associates Mean−Variance Optimization Application」が好ましい。このソフトウェアは、効果的境界及び最適なポートフォリオを決定するために、「Wagner Associates Mean−Variance Optimization Library」からの機能を使用し、そしてMarkowitzセンスにおける最適ポートフォリオが好ましい。Markowitz(1952)。このタイプのソフトウェアの使用は、ソフトウェアがその意図された財政分析目的のために使用される場合、株式リターンの方法で入力として処理され、リスク測定値が使用されるように、マイクロアレイデータが変換され得ることを必要とする。
ポートフォリオの選択のプロセスはまた、ヒューリスティックルールの用途を含み得る。好ましくはこのようなルールは、生物学、及び臨床結果を生成するために使用される技術の理解に基づいて生成される。より好ましくは、これらは、最適化方法からの出力に適用される。例えば、ポートフォリオ選択の平均分散方法は、癌患者において異なる様式で発現された多くの遺伝子の、マイクロアレイデータに適用され得る。方法からの出力は、末梢血、加えて異常組織中に発現されたいくつかの遺伝子を含み得る遺伝子の最適化されたセットである。試験方法で使用される検体が末梢血から得られ、癌の事例において異なる様式で発現された一定の遺伝子がまた、末梢血中で異なる様式で発現され得る場合、ポートフォリオが、末梢血中で異なる様式で発現されたものを除く、効果的境界から選択される、ヒューリスティックルールが適用され得る。当然、例えば、データ予備選択の間にルールを適用することにより、効果的な境界の形成の前にルールを適用することができる。
必ずしも問題となっている生物学とは関係しない、他のヒューリスティックルールを適用することができる。例えば、記載されたポートフォリオの比率のみが特定の遺伝子又は遺伝子群によって表され得るようなルールを適用することができる。Wagner Softwareなどの市販のソフトウェアは、このような種類のヒューリスティックを容易に適合させる。これは、正確性及び精密性以外の要因(例えば、予測されるライセンス料)が、1つ以上の遺伝子を含めることの望ましさに影響する場合に有用であり得る。
本発明の遺伝子発現プロファイルはまた、癌診断、予後診断、又は治療監視において有用な、他の非遺伝子診断的な方法と共に使用することができる。例えば、一定の状況では、上記の遺伝子発現に基づく方法の診断能力と、従来的なマーカー、例えば、血清タンパク質マーカー(e.g.,Cancer Antigen 27.29(「CA 27.29」))からのデータを組み合わせることが有益である。CA 27.29などの検体を含む、様々なマーカーが存在する。1つのこのような方法では、治療される患者から定期的に血液が採取され、上記の血清マーカーの1つについて酵素イムノアッセイに供される。マーカーの濃度が、腫瘍の再発、又は治療の失敗を示唆する場合、遺伝子発現解析を受ける検体源が採取される。疑わしい腫瘤が存在する場合、穿刺吸引細胞診(FNA)がとられ、腫瘤から取られる細胞の遺伝子発現プロファイルが、上記のように解析される。あるいは、組織検体が、腫瘍が以前取り除かれた組織に隣接する領域からとられ得る。この手法は、他の試験手順が曖昧な結果を生じる場合に特に有用であり得る。
本発明に従って作製されたキットは、遺伝子発現プロファイルを決定するための、形式を合わせたアッセイを含む。これらは、アッセイを行うために必要な材料、例えば、試薬、並びにバイオマーカーを解析するための命令及び媒体の全て、又はいくつかを含み得る。
本発明の物品には、治療、診断、予後診断、及び他の方法で疾病を評価するために有用な遺伝子発現プロファイルの表示を含む。これらの特性表示は、コンピューター読み取り可能な媒体(磁気、光学など)などの機械によって自動的に読み取ることができる媒体に変換される。物品はまた、このような媒体における、遺伝子発現プロファイルを評価するための命令も含み得る。例えば、物品は、上記の遺伝子のポートフォリオの遺伝子発現特性を比較するためのコンピューター命令を有するCD−ROMを含んでもよい。物品はまた、その中にデジタル処理で記録される遺伝子発現プロファイルを有してもよく、それによってこれらは、患者検体からの遺伝子発現データと比較され得る。あるいは、特性は、異なる表現形式で記録されてもよい。図形的な記録が1つのそのような形式である。クラスタ化アルゴリズム、例えば、上記のPartek社からの「DISCOVERY」及び「INFER」ソフトウェアに組み込まれるものは、このようなデータの可視化を最も良好に補助することができる。
本発明に従って作製されたキットは、遺伝子発現プロファイルを決定するための、形式を合わせたアッセイを含む。これらは、アッセイを行うために必要な材料、例えば、試薬、並びにバイオマーカーを分析するための命令及び媒体の全て、又はいくつかを含み得る。
本発明の物品としては、治療、診断、予後診断、及び他の方法で疾病を評価するために有用な遺伝子発現プロファイルの表示を含む。これらの特性表示は、コンピューター読み取り可能な媒体(磁気、光学など)などの機械によって自動的に読み取ることができる媒体に変換される。物品はまた、このような媒体における、遺伝子発現プロファイルを評価するための命令も含み得る。例えば、物品は、上記の遺伝子のポートフォリオの遺伝子発現特性を比較するためのコンピューター命令を有するCD−ROMを含んでもよい。物品はまた、その中にデジタル処理で記録される遺伝子発現プロファイルを有してもよく、それによってこれらは、患者検体からの遺伝子発現データと比較され得る。あるいは、特性は、異なる表現形式で記録されてもよい。図形的な記録が1つのそのような形式である。クラスタ化アルゴリズム、例えば、上記のPartek社からの「DISCOVERY」及び「INFER」ソフトウェアに組み込まれるものは、このようなデータの可視化を最も良好に補助することができる。
本発明による製品の異なる種類の物品は、遺伝子発現特性を表すために使用される媒体、又は形式を合わせたアッセイである。これらは、例えば、マイクロアレイを含む場合があり、この中で配列相補体、又はプローブがマトリックスに取り付けられ、これに対象とする遺伝子の指標となる配列が結合し、それらの存在の読み取り可能な行列式を生成する。あるいは、本発明に従った物品は、対象とする遺伝子の発現レベルを示すハイブリダイゼーション、増幅、シグナル生成を実施するための試薬キットにすることができる。
以下の実施例は、本発明を説明するためのものであって、限定するためのものではない。本明細書で引用する全ての参考文献は、参照により組み込まれる。
(実施例1)
方法
細胞株
SW620、SW480、HCT116及びHT29細胞株は、ATCCから入手された。KM20L2及びKM12Cは、Frederick Cancer DCT Tumor Repositoryから供給され、細胞株KM20及びKM12SMは、Dr Isaiah J.Fidler(The University of Texas MD Anderson Cancer Center)から供給された。SW620及びSW480細胞は、ダルベッコ変法イーグル培地(D−MEM)(Gibco)で培養された。HCT116細胞は、マッコイ5A培地(Gibco)で培養され、KM20、KM20L2、KM12C、KM12SM及びHT29細胞は、RPMI培地1640(Gibco)で培養された。全ての培地に、10%ウシ胎仔血清(JRH Biosciences社)、2mM L−グルタミン(Gibco)及びペニシリン−ストレプトマイシン溶液(ペニシリン0.1U/mL及びストレプトマイシン0.1μg/mL)(Gibco)が加えられたが、ただし例外としてHT29細胞は0.72mM L−グルタミン中で培養された。
臨床検体
合計で49の急速冷凍CRC検体が、Genomics Collaborative Inc.(GCI,Cambridge MA)又はClinomics Bioscience,Inc.(Pittsfield,MA)から入手され、これには正常結腸4検体、ステージIが4検体、ステージIIが19検体、ステージIIIが20検体、ステージIVが2検体含まれていた(表1)。更に、一致する8検体の、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体(ステージIIが3検体、ステージIIIが4検体、ステージIVが1検体)が入手された。全CRC検体の腫瘍含有率の中央値は70%であり、初期(I及びII)と後期(III及びIV)の疾病との間に腫瘍含有率の有意差はなかった。
Figure 2011520454
MAC=修正アストラーカラー分類、NA=miRNAプロファイルが入手不能
287のヒトmiRNAプローブを含むmirVana(商標)バイオアレイ(Ambion、バージョン1)を、CRC miRNAシグネチャーを同定するために使用した。Shingara et al.(2005)。miRNAは、急速冷凍検体についてはmirVana分離キット(Ambion)、及びFFPE検体用RecoverAll(商標)総核酸分離キット(Ambion)を使用して結腸直腸検体から得た全RNA5μgから分離した。全検体は、次にポリアクリルアミドゲル電気泳動(flashPAGE(商標)、Ambion)によって分画され、直鎖アクリルアミドと共にエタノール沈殿により低分子量RNA(<40nt)が回収された。miR−16の定量的RT−PCR(QPCR)が、miRNAアレイ解析前のmiRNA濃縮を確認するために使用された。
全検体から得られた低分子量RNAには、ポリ(A)ポリメラーゼ反応を行い、アミン修飾されたウリジンを組み込んだ(Ambion)。テール付加された検体を、次に、アミン反応性Cy3又はCy5(Invitrogen)を使用して蛍光標識した。臨床CRC又は細胞株の、プロファイリング実験のために、一色又は二色ハイブリダイゼーションをそれぞれ実施した。二色実験については、細胞株miRNAが正常結腸RNA(Ambion)と直接比較された。蛍光標識されたRNAは、ガラス繊維フィルタを使って精製し、溶出した(Ambion)。各検体は次に、42℃で14時間にわたってバイオアレイスライドにハイブリダイゼーションさせた(Ambion)。このアレイを次に洗浄し、Agilent 2505B共焦点レーザーマイクロアレイスキャナー(Agilent社)を用いてスキャンし、発現解析ソフトウェア(Codelink、バージョン4.2)を使用してデータを得た。
実施例2に概略されるように、特異的なmiRNAのノーザンブロット解析を実施した。
統計分析
データはRソフトウェアパッケージを使用して解析した。データはクオンタイル正規化を行ってから、遺伝子発現の差を診断した。複製検体及びプローブ値を平均し、スチューデントのt検定を実施して、検体群間で有意に異なる遺伝子を調べた。少なくとも1つの群について正規化されたシグナル強度の中央値が100(中央値シグナルの75パーセンタイル)を超え、平均変化が>1.5倍かつp値<0.05である場合、その遺伝子を選択した。miRNA発現レベルを評価するために一元配置ANOVAを使用した。miRNA発現プロファイルを確認するために、ABI miRNA TaqMan(登録商標)試薬を使用してQPCRを実施した。Chen et al.(2005)。メーカー(Ambion)の取扱説明書に従って、10ngの全RNAを、高能力DNAアーカイブキット及び3μlの5x RTプライマーを使ってcDNAに変換した。15μLの反応物を、サーマルサイクラー中で、16℃で30分間、42℃で30分間、85℃で5分間インキュベートし、次いで4℃に保持した。全ての逆転写酵素(RT)反応に、テンプレート制御は含まれなかった。QPCRが、標準Taqman(登録商標)PCRキットプロトコルを使って、Applied Biosystems 7900HT配列検出システム上で行われた。10μlのPCR反応液には、0.66μlのRT製品、1μlのTaqman(登録商標)miRNAアッセイプライマー及びプローブミックス、5μlのTaqman(登録商標)2x Universal PCRマスターミックス(Amperase UNGは用いない)並びに3.34μlの水を含んだ。反応液は、384ウェルプレート内にて95℃で10分、その後95℃で15秒、及び60℃で2分の40サイクルでインキュベートした。全てのQPCR反応はcDNAコントロールを一切含まず、全ての反応は3つ組(triplicate)で行われた。
プラスミド作成
特有の制限部位とRNAポリメラーゼIIIの転写終結領域(TTTTTT)とを導入するために、plasmid pSilencer(商標)2.1(Ambion)をマルチクローニングサイト内で改変した。以下のオリゴヌクレオチドを合成し(Sigma)、BamHI及びHindIIIで前消化したpSilencer(商標)2.1にアニーリングさせて連結させ、pSilencer(商標)2.1末端を作成した:pSilU6upper 5’GATCCCTCGAGTCTAGATTTTTTGGAAA(配列番号:1)及びpSilU6lower 5’AGCTTTTCCAAAAAATCTAGACTCGAGG(配列番号:2)。pre−miR−143又はpre−miR−145をコードしているDNAを、プライマー143F(5’CGGGATCCCGGAGAGGTGGAGCCCAGGTC(配列番号:3))及び143R(5’GCTCTAGACAGCATCACAAGTGGCTGA(配列番号:4))を用いてヒトゲノムDNAからPCR増幅し、BamHI及びXbaIで消化し、次いで、miR−143発現プラスミドを作成するためにpSilencer(商標)2.1末端に連結させた。miR−145のため、ゲノムDNAを、プライマー145F(5’CGGGATCCCAGAGCAATAAGCCACATCC(配列番号:5))及び145R(5’GCTCTAGACTCTTACCTCCAGGGACAGC(配列番号:6))を用いてPCR増幅産物として回収し、BamHI及びXbaIで消化し、CMVプロモータの制御下でpSilencer(商標)4.1中に連結させた。miR−20aか又はmiR−17−92クラスタをコードしているレトロウイルス性の発現ベクターを作成するために、ゲノムDNA領域をヒトゲノムDNAからPCR増幅し、BamHI及びEcoRIで消化し、pQCXIN(BD Biosciences)中にクローン化した。miR−20a用に用いたPCRプライマーはmiR−20F(5’CGGGATCCCGATGGTGGCCTGCTATTTCC(配列番号:7))及びmiR−20aR(5’CGGAATTCTCACACAGCTGGATGCAAA(配列番号:8))であり、miR−17−92クラスタを増幅するために用いたプライマーはmiRcF(5’CGGGATCCCGTCCCCATTAGGGATTATGC(配列番号:9))及びmiRcR(5’CGGAATTCCCAAATCTGACACGCAACC(配列番号:10))である。安定発現株の生成 pSilencer(商標)2.1(miR−143)及びpSilencer(商標)4.1(miR145)プラスミドを用いて安定なクローンを生成するために、1〜5×10個の細胞(HCT116、SW480、SW620)を6ウェルプレートの単一のウェルに播種した。80〜90%コンフルエンスに達したら、メーカーの取扱説明書に従って、Lipofectamine(商標)2000(Invitrogen)を用いて、細胞に4μgのプラスミドDNAをトランスフェクトした。細胞を、500μg/mlハイグロマイシンを含有している新鮮な培地に希釈し、蒔いた。選択から14日後、別個のクローンを採集し、増大させ、トランスフェクトしたプラスミド(実施例2)によってコードされている特異的なmiRNAの発現についてスクリーニングした。
レトロウイルス性の形質導入を用いてHCT116細胞の安定なクローンを作成するために、レトロウイルスパッケージング細胞株Amphopack(商標)HEK 293(BD Biosciences)及びPG13を10:1の比で混合し、次いでリン酸カルシウムを用いて10μgのpQCXINベクターでトランスフェクトした。24時間の形質導入後、ウイルスを含有している培地を回収し、HCT116細胞を形質導入するのに用いた。細胞を希釈し、回収して、400μg/mlのG418を培地に添加して、2週間にわたってクローンを選択した。別個のクローンの特徴付けは、プラスミドトランスフェクションについて上記されている通りである。
アンチセンス実験
ビオチン化2’−O−メチルアンチセンスmiR−145 RNA又は対照を、実施例2に記載のように、Lipofectamine(商標)2000(Invitrogen)を用いてSW620に送達した。トランスフェクション効率は、全ての実験において少なくとも80%であった。全ての実験を三組で実施した。CellTiter−Blue(商標)増殖アッセイSW620細胞(3×10cells/well)及びHCT116細胞(2×10cells/well)を、血清含有培地の入った96ウェルプレートに播種した。細胞生存率解析を、0日(播種した当日)と5日で行った。全20μLのCellTiter−Blue(商標)試薬(Promega)を各ウェルに添加し、プレートを37℃で2時間にわたってインキュベートした。FLUOstar OPTIMAマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)を用いて蛍光を測定した。無血清解析を行うために、培地を1日後無血清培地に変えた。急速軟寒天アッセイ2Xイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)(Gibco)に、0.6%重炭酸ナトリウム、20%ウシ胎仔血清(JRH Biosciences)、4mM L−グルタミン(Gibco)、2X非必須アミノ酸溶液(Gibco)、2%ピルビン酸ナトリウム(Gibco)及びペニシリン−ストレプトマイシン溶液(0.1U/mLペニシリン及び0.1μg/mLストレプトマイシン)(Gibco)を添加した。2X IMDMを1.2%Bacto Agar(55℃)と1:1の比で混合し、96ウェルプレートに1ウェルあたり50μL添加してアッセイのための基層を作成した。SW620細胞(3×10個)又はHCT116細胞(2×10個)を含有している細胞懸濁液10μL、2X IMDM 20μL及び0.8%Bacto agar(55℃)30μLを混合し、各ウェル中の固化した基層に移した。2X IMDM25μL及び1.2%Bacto agar(55℃)25μLを混合して、半固体の支持細胞層を調製し、固化した細胞層上に積層した。細胞を、増殖させるために37℃のCO2インキュベーター中に7日間にわたって放置した。増殖性及び細胞生存率を、CellTiter−Blue(商標)試薬(Promega)を用いてスコア化した。生細胞イメージング
Nikon Diaphot biological microscope及びNikon E995デジタルカメラを、細胞形態の画像を捕捉するために使用した。結果臨床CRC検体におけるmiRNAプロファイリング
我々はまず49のヒト結腸直腸検体(4つの正常結腸、4つのステージIのCRC、19のステージIIのCRC、20のステージIIIのCRC及び2つのステージIVのCRC)を、正常組織及び腫瘍組織間、並びに初期及び後期疾病間で異なるmiRNA発現についてプロファイルした(表1)。CRC及び正常結腸組織間で異なる発現をしたmiRNAを、全部で37同定した(表2)。
Figure 2011520454
a.正規化した中央値シグナル強度(log2)
b.癌:正常
c.mirVana(商標)バイオアレイがpre−miRNA前駆体間の識別をすることができなかったため、一部のmiRNAの染色体位置は多義的である。CRCにおいて頻発する染色体の増加及び減少はStaub et al.(2006)に要約されている通りである。
これらのmiRNAのほとんどが、CRCにおいて頻繁に増加及び減少することが既知である染色体領域に関連付けられる。Staub et al.(2006)。階層的なクラスタリングは、miR−143−145及びmiR−17−92クラスタ(それぞれCRCにおいて一貫して減少又は増加制御されている)が挙げられる、これらのmiRNAの多くが協調して発現することを示した(図1)。興味深いことに、miR−1−133aクラスタとmiR−143−145クラスタは、これら2つのクラスタが異なる染色体上に存在するものであるにも関わらず、転写的に密接な協調を示した。我々は次いで、4つの臨床CRC検体中で異なった発現をした37のmiRNAのうち19を、QPCR解析を用いて検証した(図2)。プラットフォーム間のmiRNA発現の相関は0.85〜0.92の範囲である。階層的クラスタリングはまた複製検体がお互いに近位であることを示したが、加えて高い割合で再現可能な結果であることを示している。miRNAはまた、それぞれ0.92及び0.85の平均相関値でAmbion mirVana(商標)アレイ又はABI QPCRプラットフォームのいずれかを用いることで、対応するFFPE CRC検体においても再現可能に検出され得る(図3)。FFPE検体中のmiRNAが再現可能に検出されたことは、これらの検体が診断試験に幅広く利用可能であることから、重要な観察結果であった。特異的なmiRNA発現がCRCステージに関連付けられる。我々は、正常及び初期(ステージI及びII)CRC間で異なる発現をした22のmiRNA(表3)と、初期及び後期(ステージIII及びIV)疾病間で有意に異なる発現を示した6つのmiRNA(表4)を同定した。後期にmiR−31の発現が増加した一方で、miR−133aは有意に減少した(図4A及びB)。したがって、これらのmiRNAはCRCの進行と関連付けられ、CRCのステージ分類のための潜在的なバイオマーカーとして機能し得る。
Figure 2011520454
発現比(Fold change)=癌:正常
Figure 2011520454
発現比=ステージIII/IV:ステージI/II
CRC細胞株中のmiRNAのプロファイリング
異なった発現をするmiRNAの機能解析用にCRC細胞株を同定するために、並びに臨床検体及び細胞株でのmiRNA発現間の関係性を検討するために、我々は正常な結腸上皮細胞及び4つのCRC細胞株モデル(SW480、SW620、KM12C、KM12SM)間のmiRNA発現を、本解析からのmirVana(商標)バイオアレイを用いて比較し、4つのCRC細胞株の少なくとも1つにおいて2倍上昇又は2倍減少のいずれかの状態にあるとして、43のmiRNAを同定した(表5)。
Figure 2011520454
マイクロアレイデータを検証するために、及びスクリーニングされるCRC株(line)の数を増大させるために、我々は8つのCRC細胞株中のこれらの22のmiRNAについてノーザンブロット解析を実施した(図5)。臨床検体中に同定されたこれらのmiRNAのうち、11つは、miR−31、miR−17−92クラスタのpメンバー、miR−1、miR−143及びmiR145を含む、細胞株モデルにおいて調節解除された43と共通であった(表6)。したがって、我々は、これらのmiRNAの発現上昇がCRC細胞表現型に影響するかどうかを判断するために、これらのmiRNAのサブセットの機能研究を実施した。表6 CRC臨床検体及びCRC細胞株において共通して調節解除されたmiRNA。
Figure 2011520454
Tsafrir et al.(2006);Paredes−Zaglul et al.(1998);及びRooney et al.(2001)からの要約。CRC細胞中のmiR−145の増大は、細胞の形態及び増殖を変化させる。
CRCにおける、miR−145の機能的な役割を調査するために、我々はSW620細胞中に成熟miR−145を異所性発現させた。SW620細胞のトランスフェクションに続いて、安定なプールされた集団及びクローンを選択して、miR−145発現についてスクリーニングした。プールされた集団は非常に安定したレベルの成熟miR−145(SW620/miR−145と命名)を発現した(図6A)が、12の単離されたクローンのいずれもが検出可能なレベルのこのmiRNAを発現しなかった。別個のクローンを単離するためのいくつかの試行が、成熟miR−145を任意に発現させることに失敗した。
SW620/miR−145細胞集団の主に際立った特徴は、SW620の、丸い単細胞から、線維芽様細胞に典型的な進展した突起を備える細長い細胞への変化であった(図6B)。SW620/miR−145細胞はまた、細胞増殖/代謝活性において、それぞれ血清の存在下又は不在下で増殖させた場合に50%〜95%の増加を示した(図6C)。血清の存在下で増殖させた場合には、足場非依存性増殖の2倍の増加も観察された(図6C)。上皮細胞マーカーE−カドヘリンも同様に、対照と比較してSW620/miR−145細胞で50%減少し(図6D)、これは間葉系細胞の細胞形態と一致し、SW620/miR−145細胞について増殖の増加が観察された。しかしながら、インビトロで観察された増殖増大と対比して、SW620細胞におけるmiR−145の過剰発現は、インビボマウスモデルにおいて腫瘍の増殖プロファイルを変化させなかった。
SW620/miR−145細胞における変化がmiR−145発現に起因することを確認するために、我々はmiR−145−特異的2’O−メチル(2’Ome)アンチセンスRNAノックダウン実験を実施した。miR−145をSW620/miR−145細胞中で欠乏させ、センス対照以外にmiR−145−特異的2’OmeアンチセンスRNAを受容させた(図7A)。上記した実験(図6C)に見られるように、センス対照RNAの存在下でのmiR−145の過剰発現は、血清含有培地における、更に顕著には無血清培地における細胞増殖の増加をもたらした(図7B)。しかしながら、SW620/miR−145中にアンチセンスmiR−145を共発現させた場合には、細胞の高増殖性が変換された(図7B)。これらの結果は、miR−145の特異的な異所性発現が、増殖性の増加に関連する、細胞分化における変化を誘導したことを示している。CRC細胞中でのmiR−143の発現は、細胞の形態及び増殖を変化させる。
miR−145がmiR−143と同じゲノム部位から発現されることと、後者のmiRNAもCRC中で同様に下方制御されたことから、我々はmiR−143を過剰発現するSW620 CRC細胞の表現形を調査した(図8)。miR−143を発現する7つの安定なクローンを単離し、E−カドヘリンタンパク質の発現増加に関連する、変化した形態をそれぞれ表示した(図8A〜C)。細胞増殖率については何の違いも観察されなかったが、全てのクローンで足場非依存性増殖の減少が示された(図8D)。これらのデータは、miR−143を過剰発現する細胞の方が、miR−145を異所的に発現している細胞よりも、足場非依存性細胞増殖に対して反作用を有することを示唆する。我々は、miR−143介在性の増殖阻害の可能性を避けるためには協調発現が重要であるということを提案する。実際に、プロファイリングされた49の臨床CRC検体におけるmiR−143の発現とmiR−145の発現との間の相関は、0.95であった(これはこれらのゲノム上の近接性と一致する(図1、図9)。我々にはmiR−143−145のゲノム位を過剰発現する安定した細胞を生成することはできず、したがって両方のmiRNAが協調的に過剰発現した場合のCRCの細胞表現型を調査することはできなかった。miR−17−92クラスタの過剰発現は、miR−17−92クラスタからのmiRNAをプロファイリングするCRC増殖に作用し、染色体X及び7上に位置するそのパラログを、正常結腸組織と比較してCRCにおいてより高い安定状態のレベルで発現した(図1、表2、5及び6)。miR−17−92、及びパラログクラスタメンバーの異なった発現は、正常な細胞から腫瘍原性結腸癌細胞への遷移におけるこれらのmiRNAの潜在的な役割を検討するための基礎を提供した。図10は、miR−17−92についての相互作用地図を示す。Blenkiron et al.(2007).
13番染色体に基づくmiR−17−92クラスタを含有するゲノム領域をPCR増幅し、CMVプロモータの制御下でレトロウイルスベクターpQCXIN中にクローン化し、HCTl16結腸癌細胞株に送達した。スクリーニングされた他の細胞株と比較して、内因性のmiR−17−92クラスタメンバーのレベルが低かったことから、HCTl16を選択した(図5)。2つのHCTl16/miR−17−92クローン、4−1及び4−7が単離され、成熟miR−20a、miR−18a、miR−19a及びmiR−92において随伴性の4〜5倍の増加を示した(図11A及びB)。
miR−17−92過剰発現クローン、4−1及び4−7は、無血清培地中で増殖させた場合、細胞増殖/代謝活性の50%〜60%の減少を示した(図11C)。しかしながら、血清の存在下で増殖させた場合には、増殖においてより少ない有意な減少が見出された。miR−17−92クラスタを過剰発現するどちらのクローンにおいても、細胞形態の変化は見つからなかった。他の実験とは対照的に、上記の結果は、miR−17−92クラスタの発現の更なる増加は、血清の不在下で増殖させた場合の細胞の細胞増殖/代謝活性を減少させ得ることを示唆した。
miR−20aはmiR−17−92クラスタの活性化因子である。
クラスタの過剰発現に基づき増殖不利益か又は代謝活性の減少をもたらすmiR−17−92クラスタ構成要素の更なる特徴づけのために、我々はmiR−20a単独の過剰発現の効果を検討した。我々が、miR−20aの増加を示す4 HCT116/miR−20aクローンを生成したところ、そのうち3つはベクター対照と比較して10〜12倍の再現性のある増加を示した(9−3、9−9及び9−12)。内因性miR−17−92クラスタの他の3つのmiRNAメンバーでは発現の変化は見られなかった(図11A及びB)。細胞形態の変化を示すHCT116/miR−20aクローンは存在しなかった。しかしながら、HCT116/miR−17−92クローンに関しては、全てのmiR−20aクローンが、無血清培地中での細胞増殖/代謝活性について有意な減少を示した(図11C)。この表現型は、クローンが血清由来の増殖因子の存在下で増殖する場合にはあまり顕著なものではなかった(有意差に達したのは2つのクローンだけだった)。
2つのmiR−20a発現クローンと、miR−17−92クラスタクローンの内の1つとが足場非依存性増殖において有意な増加を示したが、これは細胞増殖時のmiR−17−92の発現効果が、細胞状況に依存することを示す(図11D)。これらの結果はまた、HCT116増殖の調節が、おそらくmiR−20aによって指示されていたであろうことも示唆する。しかしながら、クラスタの他のメンバーにおける配列関連性の種は与えられたが、我々はCRC表現型においてこれらの他のmiRNAに対しての役割を排除できていない。
考察
我々は、CRC患者検体と細胞株の両方でmiRNA発現プロファイリングを実施し、正常結腸及び異なったステージのCRC間で異なった発現を示す、一連の特異的なmiRNAを見出した。我々は更に、代表的な後期転移性疾病のCRC細胞株中のmiR−143又はmiR−145の再発現が、ある異なった状態の細胞を異なった様式で改変し、反対の方法で細胞増殖に影響を及ぼすことを示した。癌についてのこれまでのほとんどの報告とは対照的に、これらの進行したCRC細胞におけるmiR−17−92発現の増加は、細胞増殖を減少させるにもかかわらず、足場非依存性増殖の増加に関連する。クラスタの更なる詳細な分析が、miR−20aが、それらの変化をもたらす、miR−17−92の少なくとも1つの活性化因子であることを明らかにした。
正常結腸と比較して、臨床CRC検体間で37のmiRNAの発現が変更され、これらのmiRNAの内11はCRC細胞株において同一の発現パターンを示した。これは、細胞株が、原発腫瘍において観察されるmiRNA発現パターンの一部を保持し、特異的なmiRNAの機能解析のための好適なモデルとして機能し得ることを示した。miR−143及びmiR−145がCRCにおいて下方制御されるという我々の観察結果は、先の報告で裏付けられている。Akao et al.(2006);Bandres et al.(2006);Cummins et al.(2006);Michael et al.(2003);及びLanza et al.(2007)。我々はまた、以前報告されたmiR−30a−3p(Bandres et al.(2006))、miR−10b、miR−30c、miR−125a、miR−1、miR−133a及びmiR−195の下方制御を検証した。Lu et al.(2005)。
興味深いことに、筋特異的なmiRNA、miR−1及びmiR−133aは正常結腸粘膜で高発現されるが、CRCにおいては有意に下方制御された。我々は、正常検体において筋層粘膜からの混入を完全には排除できていないが、以下の理由から我々の観察結果は正しいと考えている。第一に、正常結腸において筋層粘膜の割合はわずかであり、これらの検体で高レベルのmiR−l−133a発現が割合を占めることは起こりそうにない。第2に、疾病後期と比較して疾病初期での発現がより高く、並びに第3に、このクラスタはCRC特異的なmiRNAクラスタmiR−143−145を協調的に発現した。加えて、我々の知識では、筋肉及び正常結腸粘膜上皮においてmiR−l−133aの発現間の直接的な比較は存在しないことから、ひいてはこれらのmiRsが完全には筋肉特異的ではない可能性がある。Chen et al.(2006).
miR−31、miR−21、及びmiR−17−92クラスタのメンバー並びにそのパラログは、CRCにおいて上方制御されることが示された。miR−31におけるこの増加は以前報告されているが、CRCにおけるいくつかの他のmiRNA発現についての研究は見出されていなかった。Bandres et al.(2006);Cummins et al.(2006);Lu et al.(2005);及びVolinia et al.(2006)。初期臨床検体(ステージI及びII)及び正常結腸間で全22のmiRNAが調節解除された一方で、6つのmiRNAが初期検体及び後期検体間で異なる発現レベルを示した。これらのmiRNAは、CRC病期分類のための新規のバイオマーカーになり得る。最後に、我々はまた、FFPE CRC検体中のmiRNAの再現性のある検出を実証し、この保存状態が良くない材料中でmiRNAが安定であることを示した。FFPE CRC検体中のmiRNAを再現可能に検出する能力は、Xi et al.(2007)の近年の結果を裏付ける。
我々の研究では、miR−143の再発現はコロニー形成を減少させ、E−カドヘリン(上皮細胞分化のマーカー)を上方制御して、miR−143が、これらの条件下でCRC細胞に対して腫瘍抑制効果を示すことを示唆した。我々の観察結果と一致して、Akao et al.(2006)は、DLDl又はSW480 CRC細胞株への合成pre−miR−143の送達に基づく細胞生存率の用量依存的な減少を報告している。同様にして、Borralho et al.(2007)は、HCTl16、LoVo、SW480及びSW620細胞におけるmiR−143の過剰発現が細胞生存率の低下をもたらし、及びアポトーシスを増加させることを示し、正常粘膜においてmiR−143がアポトーシスを促進する役割を果たすことを示唆した。この後者の研究にはmiR−143遺伝子のより大きな前駆体の発現が含まれ、この研究は本研究で用いた再発現ストラテジー最も似ている。対照的に、miR−145は細胞増殖、足場非依存性増殖を増加させ、Eカドヘリンレベルは減少させた。無血清培地で細胞を増殖させた場合にこれらの効果が増強されることは、細胞増殖因子がこれらのmiRNAの活性に影響を与え得ることを示唆する。これらの結果は、CRC細胞株において、miR−145の発現が細胞増殖を促進し、及び/又はアポトーシスのための通常のシグナルをブロックするよう作用することを示唆している。興味深いことに、miR−145の再発現に基づく我々の観察結果は、合成pre−miR−145を導入する前にDLDl又はSW480細胞において細胞生存率の喪失を報告した、このmiRNAの機能的な役割を検討する単独の研究とは異なる。Akao et al.(2006).miR−145を導入する方法に加えて、我々の研究結果はまた我々が後期CRC細胞を使用し、miR−145の高度に安定した発現レベルを達成することができなかった点においても異なる。
我々が、成熟miR−145を高レベルに発現する単一のクローンを生成できないということは、特異的な閾値を越えてmiR−145が発現された場合に、細胞増殖が維持され得ないことを示唆した。しかしながら、miR−145を発現する細胞をプールした集団は、CRC細胞株において増殖の増加を一貫して示した。我々の研究室及び他の研究室からのデータは、miR−145を独立して過剰発現させた場合、miR−143がCRC細胞の増殖を減少させることを示した。どちらのmiRNAも同じゲノム位置(5q23)を占有することから、我々は、miR−143及びmiR−145が、それぞれ潜在的な腫瘍抑制因子及び癌遺伝子として反対の様式で協調的に作用するという仮説を立てた。独立して発現させた場合、次いでこれらのmiRNAのそれぞれは、それらのそれぞれの発癌性の働き及び腫瘍抑制因子の働きを呈する。miR−143が単独クローンで高レベルに発現され得る一方で、miR−145の生理的な発現レベルを達成するにはmiR−143との同時発現が必要とされる場合がある。重要なことに、我々の結果はまた、単離時のmiR−143の送達が、CRCのための潜在的な治療戦略であり得ることも強調する。
本研究における1つの具体的な興味深い観察結果は、miR−17−92の多シストロン性の又はmiR−20a単独の更なる過剰発現が、無血清培地における細胞増殖の減少をもたらしたことである。これらの結果は、miR−17−92及びmiR−20aが、急速に分裂しているHCT116細胞において過剰発現した場合、腫瘍抑制因子として作用し得ることを示唆する。対照的に、一部のmiR−17−92及びmiR−20aクローンでは足場非依存性増殖の増加が見られた。これらの逆向性の観察結果は、報告されている、癌におけるmiR−17−92の役割と一致する。
いくつかの研究は、miR−17−92が癌遺伝子に関係があるとしている。このクラスタはゲノム位置(13q)に関連付けられ、異なったクラスのリンパ腫及びCRCで頻繁に増幅されている。Ota et al.(2004);及びTsafrir et al.(2006)。このクラスタによりコードされているmiRNAはまた、リンパ腫、結腸癌、肺癌、膵臓癌及び前立腺癌においても高発現される。Volinia et al.(2006);Hayashita et al.(2005);及びHe et al.(2005)。Wang et al.(2006)は、レトロウイルス性の変異誘発を用いて、マウスにおける潜在的な癌遺伝子としてmiR−17−92を同定したが、miR−17−92はリンパ腫の形成をもたらした。更に、miR−17−92クラスタの過剰発現は、マウスにおいてB細胞リンパ腫を促進し、インビトロにおいて肺癌細胞株の細胞増殖の増加を示した。Hayashita et al.(2005);及びHe et al.(2005)。予後不良を導き得るいくつかの異なる癌型において、13q31〜32でヘテロ接合性が失われていることから、miR−17−92クラスタが腫瘍抑制因子として作用し得るという証拠もある。Eiriksdottir et al.(1998);Lin et al.(1999);及びTsang et al.(1999)。更に、Hossain et al.(2006)は、乳癌細胞株へのmiR−17−5pの再導入は細胞増殖及び足場非依存性増殖を減少させることを示し、このクラスタのメンバーが、腫瘍抑制因子様の性質を示しうることを裏付けた。任意の特異的なmiRNAに対して、異なる生物学的な効果が状況依存的に存在し、異なる細胞型において発現される標的遺伝子のレパートリーにより制御されているようである。我々の結果は、血清及び関連付けられる増殖因子の不在下で作用する腫瘍抑制因子が、CRCにおいて、miR−17−92に対して、特にmiR−20aに対して複雑な正の及び負のフィードバック制御機構を反映させ得ることを示す。
要約すると、我々は非常に大きな数の臨床CRC検体をスクリーニングし、miRNA発現に対して正常結腸直腸組織を対応させた。37のmiRNAが、正常な、初期の又は後期のCRC間で異なった発現をすることが見出され、これらmiRNAのうち11のmiRNAの調節解除がCRC細胞株モデルにおいて確認された。したがって、これらの候補miRNAは、この疾病における潜在的な治療標的である。具体的には、miR−145ではなくmiR−143の添加が、CRCにおける治療的な適用として考慮され得る。
(実施例2)
miR−145のアンチセンス介在性の抑制
総量100nMのビオチン化2’−O−メチルアンチセンスmiR−145 RNA(5AAGGGAUUCCUGGGAAAACUGGAC3’(配列番号:11))(IDT)又は逆向き対照(reverse control)(5’CAGGUCAAAAGGGUCCUUAGGGAAS’(配列番号:12))(IDT)を、Lipofectamine(商標)2000(Invitrogen)で、2×10個のSW620/miR−145細胞にトランスフェクトした。メーカーの取扱説明書に従って、トランスフェクション後48時間で細胞を回収し、TRIzol(登録商標)(Invitrogen)を用いて全RNAを抽出した。250μgのDynabeads M−280ストレプトアビジンコーティングされた磁気ビーズ(Invitrogen)を用いて、100μgの全RNAに3つの配列的な欠乏操作を行った。各欠乏操作には、0.1M NaOH、0.05M NaCl溶液で2回、次いで0.1M NaClで1回ビーズを洗浄することが含まれた。ビーズを0.1M NaClに再懸濁し、次いで250μgのビーズをRNA検体に添加した。検体を4℃で20分間にわたって撹拌した。ビーズは、磁気分離装置(Promega)を用いてRNA溶液から分離し、溶液(欠乏処理したRNAを含有している)をビーズから取り除いた。欠乏処理したRNAをエタノール沈殿し、miR−145及びU6 snRNAの発現についてノーザン解析によって解析した。FAM−標識2’O−メチルアンチセンスmiR−145 RNAオリゴヌクレオチドのトランスフェクション効率を、欠乏実験と並行して行った。100nMの全FAM−標識2’O−メチルアンチセンスmiR−145 RNA(IDT)を、miR−145を発現している1.2×10個のSW620細胞に、Lipofectamine(商標)2000(Invitrogen)でトランスフェクトした。トランスフェクション後48時間で細胞を回収し、FACS解析を行った。
miRNAのためのノーザンブロット
全RNAの、TRIzol(登録商標)抽出を、メーカーの取扱説明書(Invitrogen)に従って実行した。簡潔に述べれば、細胞をPBSで洗浄し、5mL TRIzol(登録商標)試薬を添加し、細胞を室温で5分間にわたってインキュベートした。1mLクロロホルムを添加した後、細胞を15秒間、手で激しく振り混ぜた。検体を遠心分離し、水性層を、2.5mLイソプロパノールが入った15mLファルコンチューブに移した。この検体を室温で20分間インキュベートし、上記のように遠心分離にかけてRNAをペレット状に沈殿させ、これを1mL75%EtOHで再懸濁した。遠心分離によりRNAをペレット状に沈殿させ、風乾し、50μLDEPC水(Ambion社)で再懸濁した。
SequaGel(登録商標)Sequencing System(National Diagnostics)を用いて調整した15%PAGE−尿素ゲルを使用してノーザン解析を実行し、MimProtean(登録商標)IIゲル電気泳動装置(BioRad)を用いて電気泳動を実施した。全40μgのRNAを10μl RNAローディング色素(95%ホルムアミド、18mM EDTA及び0.025% SDS、キシレンシアノール及びブロモフェノールブルーの2X溶液)に添加し、65℃で10分間にわたってインキュベートした。検体を15%PAGE−尿素/TBEゲルにロードし、ブロモフェノールブルー色素がゲルの底面に到達するまで1X TBE中で100Vで電気泳動した。RNAを、Mini Trans−Blot Electrophoretic Transfer Cell(BioRad)を用いて、0.5X TBEバッファ中で80Vで1時間にわたってHybond−N+membrane(GE Healthcare)に転写した。UV Stratahnker(登録商標)1800(1200ジュール)(Stratagene)を用いて、RNAをメンブレンに架橋させた。
メンブレンを、10mL Express hybridization solution(Clontech)中で、37℃でプレハイブリダイズした。Starfire(登録商標)オリゴヌクレオチドプローブを1分間煮沸し、次いでハイブリダイゼーション溶液に添加した。37℃で一晩ハイブリダイゼーションした後、ハイブリダイゼーション溶液を除去し、メンブレンを2X SSC/0.1% SDSで3回すすぎ、更に2X SSC/0.1% SDS溶液で、37℃で15分間にわたって洗浄した。メンブレンをStorage Phosphor Screen(GE Healthcare)に一晩曝露し、Typhoon Trio machine(GE Healthcare)を用いて画像化した。煮沸した0.1%SDSを直接メンブレン上に注ぎ、次いで30分以上かけて溶液をゆっくりと冷ますことにより、結合したプローブをメンブレンから取り除いた。
Integrated DNA Technologies(IDT)によって、Custom Starfire(登録商標)オリゴヌクレオチドプローブが合成された。凍結乾燥オリゴヌクレオチドプローブをIX TE pH 8.0中に希釈して、100μM原液とした。標識反応は、IX exo reaction buffer(NEB)、1μL Starfire(登録商標)Universal template oligonucleotide(IDT)及び0.5pmol Starfire(登録商標)オリゴヌクレオチドプローブを含んだ。反応混合液を1分間煮沸し、次いで5分間室温へと冷まし、50μCi α−32P−dATP(10mCi/mL、6000Ci/mmol)(Perkin−Elmer)及び5 U exo Klenow DNA polymerase(NEB)を添加し、室温で90分にわたってインキュベートした。40μL 10mM EDTAを添加することで反応を停止した。MicroSpin G−25 columns(GE Healthcare)を用いて、メーカーの取扱説明書に従い、取り込まれなかったα−32P−dATPを反応混合物から取り除いた。使用に先立ち、プローブを1分間煮沸した。
Figure 2011520454
U6 snRNAオリゴヌクレオチドプローブ(5’AACGCTTCACGAATTTGCGT3’(配列番号:34))を、最終容量20μLの、20pmoleオリゴヌクレオチドプローブ、1X T4ポリヌクレオチドバッファ(NEB)、50μCiγ−32P−dATP(10mCi/mL、6000Ci/mmol)(Perkin Elmer)及び10U T4ポロヌクレオチドキナーゼ(NEB)を用いて最終標識した。プローブを37℃で30分にわたってインキュベートした。40μLの10mM EDTAを加えることによって反応を止めた。MicroSpin G−25 columns(GE Healthcare)を用い、メーカーの取扱説明書に従い、取り込まれなかったγ−32P−dATPを反応混合液から除去した。使用前に、このプローブを5分間煮沸した。
Figure 2011520454
Figure 2011520454
Figure 2011520454
Figure 2011520454
〔実施の態様〕
(1) ヒトにおける結腸直腸癌のステージを判定するためのプロセスであって、
抽出されたRNAからのマイクロRNAの制御変化を、野生型結腸直腸組織検体における同一のマイクロRNAと比較して観察する工程であって、前記マイクロRNAが、配列番号56、配列番号57及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、制御変化を観察する工程と、
観察された前記制御変化に基づいて結腸直腸癌のステージを判定する工程と、を含む、ヒトにおける結腸直腸癌のステージを判定するためのプロセス。
(2) 前記制御変化を観察する工程の前に、組織検体からRNAを抽出する工程を更に含む、実施態様1に記載のプロセス。
(3) 前記制御変化を観察する工程が、配列番号56における上方制御を観察するものである、実施態様1に記載のプロセス。
(4) 前記制御変化を観察する工程が、配列番号56、配列番号57及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるマイクロRNAの下方制御を観察するものである、実施態様1に記載のプロセス。
(5) 前記マイクロRNAが配列番号109を含み、前記制御変化を観察する工程が、配列番号109及び配列番号56の両方の上方制御を観察するものである、実施態様1に記載のプロセス。
(6) 前記マイクロRNAが配列番号57を含み、前記配列番号57について2倍以上の上方制御がある場合には前記結腸直腸癌のステージがステージIII以降であると判定される、実施態様1に記載のプロセス。
(7) ヒトにおける結腸直腸癌のステージを診断するためのプロセスであって、
結腸直腸細胞からRNAを抽出する工程と、
抽出された前記RNAからの少なくとも2つのマイクロRNAの制御変化を、正常な結腸直腸組織検体における同一のマイクロRNAと比較して観察する工程であって、前記マイクロRNAが、配列番号56、配列番号57及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、観察する工程と、
観察された前記制御変化に基づいて結腸直腸癌のステージを判定する工程と、を含む、ヒトにおける結腸直腸癌のステージを診断するためのプロセス。
(8) 前記少なくとも2つのマイクロRNAが、配列番号109及び配列番号110の両方を含む、実施態様13に記載のプロセス。
(9) ヒトにおける結腸直腸癌のステージを診断するためのプロセスであって、
配列番号56及び配列番号57の両方を含む少なくとも2つのマイクロRNAの制御変化を観察する工程と、
観察された前記制御変化に基づいて結腸直腸癌のステージを判定する工程と、を含む、ヒトにおける結腸直腸癌のステージを診断するためのプロセス。

Claims (9)

  1. ヒトにおける結腸直腸癌のステージを判定するためのプロセスであって、
    抽出されたRNAからのマイクロRNAの制御変化を、野生型結腸直腸組織検体における同一のマイクロRNAと比較して観察する工程であって、前記マイクロRNAが、配列番号56、配列番号57及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、制御変化を観察する工程と、
    観察された前記制御変化に基づいて結腸直腸癌のステージを判定する工程と、を含む、ヒトにおける結腸直腸癌のステージを判定するためのプロセス。
  2. 前記制御変化を観察する工程の前に、組織検体からRNAを抽出する工程を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
  3. 前記制御変化を観察する工程が、配列番号56における上方制御を観察するものである、請求項1に記載のプロセス。
  4. 前記制御変化を観察する工程が、配列番号56、配列番号57及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるマイクロRNAの下方制御を観察するものである、請求項1に記載のプロセス。
  5. 前記マイクロRNAが配列番号109を含み、前記制御変化を観察する工程が、配列番号109及び配列番号56の両方の上方制御を観察するものである、請求項1に記載のプロセス。
  6. 前記マイクロRNAが配列番号57を含み、前記配列番号57について2倍以上の上方制御がある場合には前記結腸直腸癌のステージがステージIII以降であると判定される、請求項1に記載のプロセス。
  7. ヒトにおける結腸直腸癌のステージを診断するためのプロセスであって、
    結腸直腸細胞からRNAを抽出する工程と、
    抽出された前記RNAからの少なくとも2つのマイクロRNAの制御変化を、正常な結腸直腸組織検体における同一のマイクロRNAと比較して観察する工程であって、前記マイクロRNAが、配列番号56、配列番号57及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、観察する工程と、
    観察された前記制御変化に基づいて結腸直腸癌のステージを判定する工程と、を含む、ヒトにおける結腸直腸癌のステージを診断するためのプロセス。
  8. 前記少なくとも2つのマイクロRNAが、配列番号109及び配列番号110の両方を含む、請求項13に記載のプロセス。
  9. ヒトにおける結腸直腸癌のステージを診断するためのプロセスであって、
    配列番号56及び配列番号57の両方を含む少なくとも2つのマイクロRNAの制御変化を観察する工程と、
    観察された前記制御変化に基づいて結腸直腸癌のステージを判定する工程と、を含む、ヒトにおける結腸直腸癌のステージを診断するためのプロセス。
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