JP2011518551A - ヘパラナーゼ欠損非ヒト哺乳動物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、少なくとも1つの破壊されたヘパラナーゼ対立遺伝子を有する、細胞及びトランスジェニック非ヒト哺乳動物に関する。本発明はさらに、ヘパラナーゼ欠損非ヒト哺乳動物及び細胞を利用する治療剤候補のスクリーニング方法に関する。

Description

本発明は、少なくとも1つの破壊されたヘパラナーゼ対立遺伝子を有する、細胞及びトランスジェニック非ヒト哺乳動物に関する。本発明はさらに、ヘパラナーゼ欠損非ヒト哺乳動物を利用する治療剤候補のスクリーニング方法に関する。
ヘパラナーゼは、細胞表面及び細胞外マトリックスに偏在的に存在するヘパラン硫酸(HS)プロテオグリカンを特異的に分解する哺乳動物エンド−β−D−グルクロニダーゼである。ヘパラナーゼ活性は、腫瘍由来細胞の転移能と相互に関連及び原因として関連しており、これは、HS切断及びECM障壁リモデリングの結果として細胞播種が増大することに起因する。同様に、ヘパラナーゼ活性は、血管内皮細胞及び免疫系活性化細胞の移動を伴う新血管形成、炎症及び自己免疫に関与している。さらに、ヘパラナーゼのアップレギュレーションは、癌患者の腫瘍血管増生の増加及び低い術後生存率と相関している。
幾つかの哺乳動物ヘパリン/HS分解エンドグリコシダーゼの存在に関する初期の報告にもかかわらず、幾つかのグループによる同遺伝子のクローニングは、哺乳動物細胞が主に単一の優性機能ヘパラナーゼを発現することを示している(Hulettら、Nat.Med.、1999年、5:803〜809頁;Vlodavskyら、Nat.Med.、1999年、5:793〜802頁)。
ヘパラナーゼは、形態形成、発達及び恒常性から炎症、血管新成及び癌転移まで、基本的な生物学的現象に重要な役割を果たすことから、インビボでのヘパラナーゼ研究を可能にする動物モデルが当技術分野で必要とされている。米国特許公報US2002/0194625は、ヒトヘパラナーゼを過剰発現するトランスジェニックマウス、及び腫瘍発生などの病理学的過程の研究におけるこの使用を開示する。国際特許公報WO2004/006949は、発毛のさまざまな側面におけるヘパラナーゼの役割をテストするためのモデル系としての、ヘパラナーゼ過剰発現トランスジェニックマウスの使用を開示する。
ヘパラナーゼの重要及び多面的な役割を考慮すると、ヘパラナーゼ活性を欠く動物は、ヘパラナーゼの役割を綿密に考察するための貴重なツールを提供するであろう。ヘパラナーゼノックアウト動物を作製する、当技術分野で認識されている必要性及び幾つかの試みにもかかわらず、こうした動物は現在入手不可能である。国際特許公報WO2005/118808は、低分子干渉RNA(siRNA)法による細胞におけるヘパラナーゼ活性のサイレンシングを開示する。あいにく、siRNA法は、安定なノックアウト哺乳動物系の作製にも、ヘパラナーゼ活性の完全なサイレンシングにも適さない。
故に、ヘパラナーゼ活性を欠く動物が依然として必要とされている。
本発明は、少なくとも1つの破壊されたヘパラナーゼ対立遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。1つの実施形態では、破壊されたヘパラナーゼ対立遺伝子は、プロモーター及びエクソン1を欠く。より具体的には、破壊されたヘパラナーゼ遺伝子は、Hind III−Xbalフラグメントを欠くことができる。前記哺乳動物は、破壊に対してヘテロ接合又はホモ接合であってよい。
本発明はまた、上記トランスジェニック非ヒト哺乳動物由来の単離細胞も提供する。
さらに、本発明は、少なくとも1つの破壊されたヘパラナーゼ対立遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作製方法であって、非ヒト哺乳動物胚性幹細胞での相同組換えによりヘパラナーゼ遺伝子の部分を欠失させるステップと、得られた組換え細胞を単離された胚盤胞に導入するステップと、前記胚盤胞を偽妊娠した非ヒト哺乳動物に移植するステップと、前記移植された胚盤胞がトランスジェニック非ヒト哺乳動物に発達することを可能にするステップと、前記トランスジェニック非ヒト哺乳動物を飼育して子孫を産生するステップと、前記子孫をスクリーニングして、少なくとも1つの破壊されたヘパラナーゼ対立遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を同定するステップとを含む方法を提供する。1つの具体的な実施形態では、ヘパラナーゼ遺伝子の欠失された部分が、配列番号1に示されたヌクレオチド配列を含む。
本発明はまた、ヘパラナーゼコーディング配列の1つのエクソンの少なくとも一部分が、選択可能なマーカー配列に置換されている、ヘパラナーゼノックアウト構築物をコードする核酸配列を含むベクターも提供する。1つの具体的な実施形態では、前記選択可能なマーカー配列はネオマイシン耐性遺伝子を含む。
さらに、本発明は、少なくとも1つの破壊されたヘパラナーゼ対立遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供するステップと、前記哺乳動物を疾患刺激に曝露するステップと、前記哺乳動物に前記薬剤候補を投与するステップと、前記疾患刺激により誘導された疾患の発症について前記哺乳動物を分析するステップとを含む、治療剤候補のスクリーニング方法を提供する。具体的な実施形態では、疾患刺激は接種された腫瘍細胞及び炎症刺激から選択され、前記分析は、それぞれ、任意の腫瘍転移の形成を決定又は任意の炎症反応のレベルを決定することを含む。他の実施形態では、前記疾患刺激は実験的自己免疫性脳脊髄炎を誘導する。さらに他の実施形態では、前記疾患刺激はアレルギー反応を誘導する。方法は、野生型非ヒト哺乳動物において得られた対応する結果と、得られた結果を比較することを含むことができる。
以下では本発明が、添付図を参照して好ましい実施形態により、より詳細に記載される。
ヘパラナーゼ(Hpse)遺伝子(正常な対立遺伝子として表されている)、及びHpse遺伝子の標的妨害用に設計(targeted interruption)された標的構築物(K/O対立遺伝子として表されている)の5’末端の構造を示す図である。相同組換えは、第1エクソン及びプロモーターの除去並びに新遺伝子による置換をもたらす。Sca I又はERvの制限酵素で処理された遺伝子産物のサイズが示されている。1〜4の番号の付いた黒い線は、サザンブロットスクリーニングに使用することができるプローブを表す。新カセットの方向が示されている。 ERvによる消化後にHpse+/−ヘテロ接合マウスの交雑受精胚から抽出されたゲノムDNAのサザンブロット分析を示す図である。試料は、図1Aに示されたようなプローブ3とハイブリダイズされた。野生型(wt)胚は正常な対立遺伝子のみを示し、ヘテロ接合胚は正常及び変異対立遺伝子の両方を示し、Hpse−KOマウスはより短いKO対立遺伝子のみを示した。 ヘパラナーゼmRNA発現のPCR分析を示す図である。RNAは、wt及びHpse−KOマウスの肺及び脾臓から抽出され、示されたようなHpse遺伝子の異なる領域を増幅するように設計された3つの異なるPCRプライマー対を用いてPCR増幅に供された。ヘパラナーゼ発現は、wt由来であるがHpse−KO由来ではない試料において同定された。L−19は、異なる試料間のmRNAレベルを標準化するためハウスキーピング遺伝子として使用されたリボソーム遺伝子を表す。 ヘパラナーゼ活性アッセイを示す図である。4匹のwtマウス及び4匹のHpse−KOマウス由来の血液試料が、硫酸標識ECMと共にインキュベートされた(16時間、37℃、pH6.2)。インキュベーション培地に放出された標識分解産物は、Sepharose 6Bでのゲル濾過分析に供された。高ヘパラナーゼ活性はwtマウス由来の試料でのみ認められた。ヘパラナーゼ活性がHpse−KO試料で検出されることはなかった。 HS分解アッセイを示す図である。wt及びHpse−KOマウス由来の肝臓、腎臓及び脾臓組織抽出物がホモジナイズされ、H−アセチル標識HSと共にインキュベートされた(18時間、37℃、pH5.8)。反応混合物は、次いでSuperose−12でのゲルクロマトグラフィーに供された。上のパネルは、ブランク(ピークI)及び陽性対照(組換えヘパラナーゼ;ピークII)インキュベーションを示す。Hpse−KO組織抽出物のインキュベーション(線)は、ブランクインキュベーション(上のパネル)と同じ溶出プロファイルをもたらし、検出可能なヘパラナーゼ活性がないことを示した。一方、wt組織抽出物とのインキュベーションは、組換えヘパラナーゼとのインキュベーションの場合(上のパネル)のようにHS基質の実質的な切断をもたらした(点線)。 wtマウス(点線)対Hpse−KOマウス(連続線)由来のHSの分子構造を示す図である。肝臓(パネルA及びB)及び腎臓(パネルC及びD)由来の全ての代謝的に35S標識されたHS鎖が、Superose 12カラムで分析された。パネルA及びCがHSPGの分子構造を示すのに対し、パネルB及びDは遊離HS鎖の分子構造を示す。 wt対Hpse−KOマウス由来の乳腺の形態的外観を示す図である。3カ月齢の処女マウス由来の乳腺の全載標本はヘマトキシリンで染色された。Hpse−KO由来乳腺(下のパネル)は、年齢をマッチさせたwt動物由来の腺(上のパネル)と比べて豊富な分枝及び胞巣状構造を示した。 大動脈輪モデルでの増殖因子誘導性の内皮の発芽を示す図である。Hpse−KO及びwtマウス由来の大動脈輪が、6日間、FGF−2誘導性の血管の発芽に供された。輪は次いで固定され、0.02%クリスタルバイオレット溶液で染色され、血管の発芽について評価された。より広範な内皮の発芽は、wt由来の輪(上のパネル)に比べてHpse−KO由来の輪(下のパネル)で認められた。 マトリゲルプラグアッセイにおける血管新生を示す図である。Hpse−KO(下のパネル)及びwt(上のパネル)マウスは、FGF−2(80ng/ml)を追加した増殖因子枯渇マトリゲル200μlを皮下注射された。7日後、マトリゲルプラグは切除及び撮影され、ホモジナイズされ、Drabkin試薬を用いてヘモグロビン含量について評価された。顕著な血管新生反応が、wtと比べてHpse−KOマウスで認められた(それぞれ、26±4.8mg/dl対55.57±7.18mg/dl;p=0.0002)。 リアルタイムPCRにより評価されたHpse−KOマウスにおけるMMP発現を示す図である。RNAは、wt及びHpse−KOマウスの腎臓、肝臓及び乳腺から抽出され、MMP−2、MMP−9、MMP−14及びMMP−25の発現を評価するため定量的リアルタイムPCR分析に供された。wt組織(白いバー)で各MMPについて決定された発現レベルは100%と見なされ、Hpse−KO組織(黒いバー)マウスで決定された対応する発現が、これと比較したパーセンテージで表されている。各反応は6回繰り返され、平均±SDが示されている。 ウェスタンブロット分析により決定されたHpse−KOマウスでのMMP発現を示す図である。肝臓、腎臓及び乳腺組織抽出物が、抗マウスMMP−2モノクロナール抗体(mA801B;上のパネル)、抗マウスβ−カテニン(mAb610154;真ん中のパネル)、又は抗マウスa−チューブリン(B−5−1−2;下のパネル)を用いたウェスタンブロット分析に供された。 β−カテニン免疫染色を示す図である。パラフィン包埋腎臓試料がβ−カテニンに対する抗体を用いた免疫染色に供された。染色の増加は、wt由来の腎臓切片と比べてHpse−KO由来の腎臓切片で観察された。 ヘパラナーゼトランスフェクトMDA−231ヒト乳癌細胞でのMMP発現を示す図である。MDA−231細胞は、偽(空ベクター)又は活性若しくは変異不活性ヘパラナーゼ遺伝子をトランスフェクトされた。mRNA発現レベルはリアルタイムPCRにより決定された。偽トランスフェクト細胞で決定された発現レベルは100%と見なされ、Hpse及びmut−Hpseトランスフェクト細胞でのレベルが、偽トランスフェクト細胞と比較したパーセンテージで表された。図6Aはヘパラナーゼ発現を示すのに対し、図6BはMMP発現を示す。MMP−2、MMP−9、MMP−14 mRNAのレベルの低下は、ヘパラナーゼ活性型を過剰発現する細胞で認められたが、酵素の2通りの変異、不活性型では認められなかった。 リポ多糖(LPS)刺激でのHpse−KOマウスにおける好中球動員の増加を示す図である。成体動物(各群に5匹)は、100mlのPBSに溶解された10μgのLPSを腹腔内注射された。16時間後、動物は屠殺され、腹膜腔が10mlのPBSで洗い流され回収された。細胞が計数され、腹膜腔内に見出された合計細胞数で表された。 全皮膚切開後の血管新生反応をまとめた図である。hpa−tgマウスと共にwt、hspe−KOマウスは麻酔され、剪毛され、マウスの背中の皮膚に1cm長の全層切開が行われた。切開口はシアノクリレート接着剤により塞がれ、創傷後1、3、及び7日目にMRI分析により調べられた。
本発明の目的は、破壊されたヘパラナーゼ遺伝子を有するトランスジェニックノックアウト又はノックダウン細胞系及び動物を提供することである。破壊は、例えば遺伝子発現又は機能性タンパク質の産生に不可欠な位置でヘパラナーゼ遺伝子に変異を導入することにより、ヘパラナーゼ遺伝子の部分的又は完全な機能的不活性化をもたらす。
ヘパラナーゼ遺伝子の破壊は、相同組換え、突然変異誘発、cre/lox技術、アンチセンス技術、及びトランスポゾンレトロトランスポゾン技術などの当技術分野で公知の種々の方法により達成することができる。
相同組換えでは、ノックアウトされる遺伝子は、典型的には、抗生物質耐性(例えばネオマイシン耐性)などの選択可能なマーカーにより妨害される。標的遺伝子の転写ユニットへのマーカーの組み込みは、遺伝子を破壊し、相同組換えを起こした細胞の選択を可能にする。相同組換えに使用するため当技術分野で利用可能な多くの適切なベクターの一例は、Gene Bridges GmbH社から入手可能なNeomycin Selection Cassette(loxP−PGK−gb2−neo−loxP)である。
1つの特定の実施形態では、相同組換えはHpse遺伝子をノックアウトするのに使用された。この目的のために、標的Hpse遺伝子座と同一の配列を有するDNAに隣接されたネオマイシン耐性カセットを含有するDNA構築物が、設計及び操作された。非ヒト哺乳動物胚性幹細胞は、次いで線状化構築物をトランスフェクトされ、相同組換えを起こした細胞が、成長培地に抗生物質を添加して選択された。相同組換え幹細胞は、次いで単離胚盤胞に注入され、偽妊娠した非ヒト哺乳動物に移植された。相同組換えによる1つのHpse対立遺伝子の不活性化に続いて、破壊されたHpse遺伝子の両方の対立遺伝子を有する均一なHpseノックアウト非ヒト哺乳動物を提供するために、2世代以上の選抜飼育が行われた。
したがって、本発明は、ヘパラナーゼをコードする遺伝子が破壊された、例えば、ラット、モルモット、及び特にマウスなどのげっ歯類を含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。結果として、こうした動物は、機能性ヘパラナーゼタンパク質を部分的に又は、好ましくは、完全に欠く。
マウスヘパラナーゼ遺伝子は、ヘパラナーゼを不活性化するために欠失され得る12個のエクソンから成る。しかし、エクソンの幾つかは該活性にとってあまり必須ではない可能性があり、これらの欠失は、ヘパラナーゼ機能の部分的不活化をもたらすのみである。ヘパラナーゼのこうした不完全な不活化をもたらす欠失は、ノックダウン欠失(knockdown deletion)と呼ぶことができる。単一の構築物で1つを超えるエクソンを欠失させることは、Hpseノックアウト又はノックダウン動物を提供するうえで1つの選択肢である。しかし、この手法の難しさは、欠失される配列の長さの増加に伴い指数関数的に増加する。Hpseノックアウト又はノックダウンマウスの提供に使用するための好ましい構築物は、エクソン2及び3の欠失、エクソン4の欠失、エクソン5から9の欠失、エクソン10の欠失、エクソン11の欠失又はエクソン12の欠失を含むものである。最も好ましい構築物は、プロモーター及びエクソン1の欠失を含む。
1つの特定の実施形態は、プロモーター領域が部分的に欠失、エクソン1が完全に欠失された変異Hpse遺伝子を有する、トランスジェニックHpseノックアウトマウスを提供する。より具体的な実施形態では、Hpse遺伝子は、Hind III−Xba I制限フラグメントを欠き、さらにより具体的な実施形態におけるこのフラグメントは、配列番号1に示されたヌクレオチド配列を有する。こうしたマウスは、機能性ヘパラナーゼが欠損している。
本発明の実施形態は、破壊されたHpse遺伝子を有するトランスジェニックラット及びこの調製方法を提供する。Hpseノックアウト又はノックダウンラットを得る戦略は、マウスでの標的遺伝子破壊に使用されたものと基本的に同じである。簡単には、ヘパラナーゼをコードする遺伝子は、ラットゲノムから特徴付けられる。遺伝子構造に基づき、遺伝子の所望部分を欠失させるために設計された構築物が、適切なプラスミドを用いて確立される。好ましい構築物では、プロモーター領域の部分及びエクソン1が欠失される。1つの特定の実施形態では、2〜3kbの上流隣接配列及び4〜6kbの(エクソン1の)下流配列が、相同体(homologue)組み込みのためloxp−neo−loxpプラスミドに含められる。ラットhpse遺伝子は5つのエクソンのみを含有し、他の好ましい構築物にはエクソン2の欠失、エクソン3の欠失、エクソン2及び3の欠失、エクソン4の欠失又はエクソン5の欠失を含むものが含まれる。構築物は、遺伝子マッピング及び部分配列決定により確認することができる。構築物は、次いでラットES細胞に注入され、陽性クローンが、選択された選択可能なマーカーに基づき選択される。陽性クローンは、例えばサザンブロット分析及び/又はPCRによる相同組み込みについてスクリーニングされる。相同組み込みを有するESクローンは、偽妊娠ラットに移植された単離ラット胚盤胞に注入される。最後に、キメラ子孫が生殖細胞系選択のため飼育される。ヘテロ接合動物はホモ接合子孫を得るために同系交配することができる。
別の実施形態では、長鎖散在反復配列(LINE)などのトランスポゾンレトロトランスポゾン技術が、トランスジェニック非ヒトHpseノックアウト哺乳動物、特にラットを提供するのに使用され得る。
本発明によるトランスジェニックノックアウト又はノックダウン哺乳動物は、さらなるトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供するために、他のトランスジェニック(過剰発現又はノックアウト)非ヒト哺乳動物と交配することができる。
本発明によるトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、ヘパラナーゼ欠損哺乳動物細胞系を確立するのに使用することができる。こうした細胞系の確立方法は、当技術分野では容易に利用可能である。好ましい細胞系には、胚性幹細胞及び線維芽細胞系が含まれる。不死化線維芽細胞系は、ヘパラナーゼヌル細胞系として使用しやすい。
Hpse遺伝子の標的破壊の成功は、当技術分野で公知の方法により分析することができる。例えば、ノーザンブロッティングは、ヘパラナーゼmRNA発現のダウンレギュレーションを確認するのに使用することができる。他の方法は、ヘパラナーゼ酵素活性の排除を検証するのに容易に利用可能である。
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、さまざまな薬剤候補をスクリーニングするのに使用することができる。スクリーニング方法は、疾患刺激への前記哺乳動物の曝露、及び前記哺乳動物への薬剤候補の投与を含み得る。哺乳動物は、次いで疾患刺激により誘導された疾患の発症について分析される。
幾つかの実施形態では、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、例えば、抗ヘパラナーゼ及び/又は抗癌剤候補をスクリーニングするのに使用することができる。典型的なスクリーニングアッセイは、疾患刺激として働く、黒色腫、癌腫又は肝細胞腫細胞などの腫瘍細胞を、Hpseノックアウト動物に接種することを含む。接種後、動物は、異なる用量及び時間間隔で、通常は腹腔内注射、尾静脈注射、経口摂取又は経鼻摂取により、テスト剤で治療される。腫瘍転移(例えば肺又は骨への)形成に対する投与されたテスト剤の影響が次いで評価され、並びに年齢及び性別をマッチさせた野生型及び/又はヘパラナーゼ過剰発現動物で得られた対応する結果と比較され得る。該アッセイは、例えば、テスト剤の有効用量を決定するのに使用することができる。
本発明のトランスジェニック動物では、ヘパラナーゼの欠如は、幾つかのMMP、特にMMP2及びMMP14のアップレギュレートされた発現により代償される。故に、1つの特定の実施形態は、抗転移候補化合物の特別なクラスである、抗MMP剤の治療可能性を評価するための該動物の使用に関する。
MMPは、多発性硬化症及び炎症を起こした又は損傷した中枢神経系における重要なプレーヤーであることから、本発明の1つの実施形態は、多発性硬化症の治療をテストするためのHpseノックアウト動物の使用に関する。この目的のために、多発性硬化症に関する公知の疾患モデル、すなわち実験的自己免疫性脳脊髄炎が、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物をミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)35−55ペプチド及び百日咳毒に曝露して使用され得る(Shaoら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.2004年、45:4060〜4065頁。投与された候補化合物の影響が次いで評価され、麻痺のレベルの低下は治療可能性を示す。
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、野生型哺乳動物と比較して炎症刺激に対するより強い反応を示し(図7)、したがって、抗炎症剤候補をスクリーニングするのに使用され得る。この目的のために、Hpseノックアウト哺乳動物は、カラゲナン足浮腫(CPE)、アジュバント誘発関節炎(AIA)、コラーゲン誘発関節炎(CIA)、マウス耳浮腫、リポ多糖(LPS)の腹腔内注射及び空気嚢ラット又はマウスにおける細胞反応分析を含む当技術分野で公知の十分に確立されたインビボ炎症モデルの1つ又は複数を用いて、疾患刺激に曝露することができる。投与された抗炎症剤候補の影響が次いで評価され、炎症反応の低下は抗炎症の可能性を示す。
本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物はまた、創傷治癒剤又は薬剤候補をスクリーニングするのに使用することもできる。1つの実施形態では、スクリーニングアッセイは、wt及びHpseノックアウト動物を麻酔及び剪毛した後、動物の背中の皮膚を切開すること、並びに典型的には1cm長の全層創傷である切開口を、例えばシアノクリレート接着剤による接着により塞ぐことを含む。創傷治癒は、例えば創傷後1、3、及び7日目に上皮端間の距離を測定して調べることができる。或いは又はさらに、約5mmのポリビニルスポンジなどの適切なスポンジを創傷に挿入し、及び1日など所望の期間の後にスポンジを除去して、創傷液が回収されてよい。創傷液は、次いで遠心分離により抽出され得、液中の炎症因子の量が、例えばウェスタンブロッティングにより分析され得る。創傷組織も、組織切片の調製後、組織学的分析に供することができる。こうした切片は、切開された創傷組織を例えばPBS中4%ホルムアルデヒドで固定し、固定された組織をパラフィンに包埋し、及び約5μmのパラフィン切片をカットして調製することができる。パラフィン切片の脱パラフィン及び再水和は、組織学的分析の前に当技術分野で十分に公知の方法により行うことができる。スクリーニングアッセイでテストされる創傷治癒剤候補は、0日目若しくはこれ以降など、任意の所望の時間に創傷に適用されてよく、又はこれらは皮下注射されてよい。
さらに、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、マスト特異的プロテアーゼ(mast specific protease)の貯蔵の増加を示す。例えば、カルボキシルペプチダーゼ(carboxylpeptidase)A(マウスマスト細胞プロテアーゼ−5及び−6)の貯蔵は、ウェスタンブロット分析により示されたようにHpseノックアウトマウスで増加する。この所見は、マスト細胞機能の制御、特にアレルギー反応の調節におけるヘパラナーゼの役割を指し示している。故に、本トランスジェニック非ヒト哺乳動物は、アレルギー反応を調節するための薬剤候補をスクリーニングするのに使用することができる。ノックアウト哺乳動物は、慢性アレルギーモデルの役割を果たすために曝露され得る。投与された薬剤候補のアレルギー反応に対する影響が次いで評価され、年齢及び性別をマッチさせた野生型及び/又はヘパラナーゼ過剰発現動物で得られた対応する結果と比較され得る。
本発明によるトランスジェニックマウスは、繁殖性であり、正常な寿命を示し、軽度の変化(すなわち、乳腺の過剰分岐、血管新生反応の増大)を別にして顕著な病理学的表現型を示さなかった。脳、心臓、肝臓、肺、腎臓及び脾臓などのさまざまな臓器の組織学的分析は、病理学的変化を示さなかった。故に、ヘパラナーゼをノックアウトすることは、罹患動物をもたらすことはないが、さまざまな生理学的及び病理学的状態におけるヘパラナーゼの役割の綿密な考察、並びに治療剤候補のスクリーニングに対する貴重なツールを提供する。
(例1)
ヘパラナーゼ欠損マウスの作製
ヘパラナーゼ欠損マウスは、ES細胞における該遺伝子の標的妨害により作製した。最小プロモーター領域(転写開始点の約500bp上流)及び第1エクソン全体を欠失させて機能的変異を生成するために、標的ベクターを構築した(図1A)。欠失部分のヌクレオチド配列は配列番号1に示されている。この目的のために、ヘパラナーゼ遺伝子(Hpse)の5’末端を含有する15−kbゲノムクローンを、バクテリオファージマウス(株129/Sv)ゲノムライブラリー(Stratagene社、シダークリーク、TX)から単離した。エクソン1の上流の2.5−kbフラグメントを、短い相同性アームとして、ネオマイシン耐性遺伝子(新カセット)の下流のpNT−Lox2プラスミド(Peter Carmeliet博士、Department of Molecular and Cellular Medicine、Catholic University、ルーベン、ベルギーにより提供)にクローニングした。エクソン1の下流の4.8−kbフラグメントは、内在性遺伝子の長い相同性アームとして新カセットの上流にクローニングした。標的ベクター構築物は、約14.5−kbの合計サイズを有した。
標的ベクターを制限酵素Not Iにより線状化し、Uppsala Transgenic Facility(UUTF)社により提供された胚性幹(ES)細胞にエレクトロポレーションした。他のES細胞は容易に入手可能である。該新耐性遺伝子を発現するクローンを、G418(350μg/ml;Invitrogen社、カールスバッド、CA)を細胞培養培地に含めて選択し、ゲノムDNAのサザンブロット分析により標的遺伝子相同組換えについて分析した。簡単には、ES細胞から抽出したゲノムDNAを、EcoR V又はSca1のいずれかにより消化した。得られたフラグメントは、0.8%アガロースゲルで分離し、ナイロン膜にブロットした後、図1Aに示した32P標識プローブ#3とハイブリダイズした。
得られた400個の新耐性ESクローンのスクリーニングでは、Hpse遺伝子における2つの相同組換えのみが同定された。さらなる組み込み部位は、これらの陽性クローンでは検出されなかった。両方の陽性クローンをC57BL/6胚盤胞にマイクロインジェクションし、キメラ動物を産する偽妊娠マウスに移植し、このうち1匹が生殖細胞系伝達を示した。キメラオス初代マウスはC57BL/6メスと交配させた。ヘテロ接合マウスを交雑受精してHpse変異マウスを作製した。表現型試験は混合遺伝的背景を有するマウス(129/SvJ/Sv/C57BL/6)で行った。動物は、スウェーデン及びイスラエルの国立実験動物委員会により策定されたガイドラインに従って維持した。
ヘテロ接合同腹子間の交雑受精からの子孫の遺伝子型分析は、上記の通りサザンブロッティングにより行い(図1B)、基本的にメンデル遺伝を示し、初期の胚死がないことを示した。Hpse遺伝子の完全な妨害を確認するために、wt及びHpse−KOマウスの異なる組織由来のヘパラナーゼmRNAの発現を、特異的プライマーを用いたリアルタイムPCRにより調べた。この目的のために、全RNAを、TRIzol(Invitrogen社、カールスバッド、CA)を用いてメーカーの指示に従い、約100mg脾臓又は肺組織から単離し、分光測定により定量化した。500ngの全RNAのオリゴ(dT)プライムされた逆転写の後、得られた一本鎖cDNAをPCRプライマーを用いて増幅した。ヘパラナーゼに関するPCR条件は、94℃で2分間の変性の後、94℃で15秒間の変性、58℃で1分間のアニーリング、及び72℃で1分間の伸長の25サイクルであった。増幅産物のアリコート(10μl)を1.5%アガロースゲルで電気泳動により分離し、臭化エチジウム染色(Hy Labs社、レホヴォト、イスラエル)により視覚化した。PCRに使用したプライマーは表1にまとめられている。プライマーは、ヘパラナーゼ遺伝子の5’、中間、及び3’領域を増幅するように設計された。図1Cに示した通り、ヘパラナーゼmRNAは、wtマウス由来の試料でのみ検出されたが、Hpse−KOマウス由来の試料では検出されなかった。
ヘパラナーゼ酵素活性の排除を検証するために、wt及びHpse−KOマウス由来の4つの血液血清試料及び3つの組織(肝臓、腎臓及び脾臓)を、それぞれ基質として、硫酸標識したインタクトなECM(図1D)又は可溶性HS側鎖(図1E)を用いて分析した。血清試料は、反応緩衝液(1mMジチオスレイトール、1mM CaCl2及び50mM NaClを含有する20mMリン酸−クエン酸緩衝液 pH6.2)で1:1に希釈し、35S標識ECMでコートしたディッシュでインキュベートした(16時間、37℃)。インキュベーション培地を遠心分離し(20,000×g、4℃、1分)、35S標識HS分解フラグメントを含有する上清を、Sepharose CL−6Bカラムでゲル濾過により分析した。画分(0.2mL)を回収し、各画分における放射能量をベータシンチレーションカウンターで計数した。ほぼインタクトなHSプロテオグリカン(HSPG)が空隙容量(ピークI、Kav<0.2)直後にSepharose 6Bから溶出されるのに対し、HS分解フラグメントはカラムのVt(ピークII、0.5<Kav<0.8)の少し前に溶出される。アッセイに使用したECMコートディッシュは次のように調製した。ウシ角膜内皮細胞を、播種後1日目及び5日目に添加(25μCi/mL)したNa35S]O(GE Healthcare Bioscience社、ウプサラ、スウェーデン)の存在下で培養した。7日から10日後、細胞単層を溶解し、ECMは0.5%Triton X−100及び20mM NH4OH含有PBSで細胞培養ディッシュを処理して曝露させた後、PBSで4回洗浄した。ECMは、インタクトなままであり、細胞残屑がなく、組織培養ディッシュの全域にしっかり付着していた。
組織試料分析については、4カ月齢のwt及びHpse−KOマウスを屠殺し、臓器を1%Triton X−100及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma−Aldrich社、セントルイス、MO)含有2ml PBS、pH7.4で直ちにホモジナイズした。ホモジネートを氷上で30分間インキュベートした後、20分間、4℃、15,000rpmで遠心分離した。上清は、ホモジナイゼーション緩衝液で平衡化したHiTrap heparin−Sepharose(GE Healthcare Bioscience社)カラムに充填した。10ml PBSで洗浄後、結合物質は1M NaCl含有PBSで溶出した。総タンパク質量はBradford方法により決定した。溶出からの50μgタンパク質の試料を、20mMリン酸−クエン酸緩衝液(pH5.8)中5,000cpm[H]アセチル標識HS、1mMジチオスレイトール、1mM CaCl、及び50mM NaClと共にインキュベートした(37℃、一晩)。得られた産物は、Superose−12カラム(GE Healthcare Biosciences社)でゲルクロマトグラフィーにより分析した。
アッセイ系に関係なく、Hpse−KOマウス由来の試料がいずれもヘパラナーゼ活性を示さなかったのに対し、wt試料はヘパラナーゼ活性の正常レベルを示した(図1D及びE)。特に重要なのは、極めて高レベルの該酵素を発現することが知られている活性化血小板及び白血球細胞を含有する血清試料におけるヘパラナーゼ活性の欠如である。図1Dに示した通り、wtマウス由来の血液試料は、画分20〜40で溶出された大量の低分子量物質(図1D、ピークII)により検出されたように、高レベルのヘパラナーゼ活性を示した。ピークIIで溶出された標識フラグメントは、これらがHSPGのインタクトなHS鎖より5〜6倍小さく、パパイン及びコンドロイチナーゼABCによるさらなる消化に耐性があり、亜硝酸により脱アミノ化されやすかったことから、HSの分解産物であることが示された。一方、Hpse−KOマウス由来の血液試料は、HS分解フラグメントの欠如(ピークII)及び画分5〜10で溶出された高分子量物質の生成(ピークI、図1D)により明らかになったように、ヘパラナーゼ活性を示さなかった。ほぼインタクトなHSPGを表すこの物質は、ECM及び細胞溶解物中に存在するプロテアーゼによるプロテオグリカンコアタンパク質のタンパク質分解により生成される。同様に、対応するwt組織抽出物とのインキュベーションでのHSの有意な分解(ピークII、図1E)と比べて、Hpse−KOマウス由来の肝臓、腎臓及び脾臓抽出物とのインキュベーションでのH標識HSの切断はなかった(ピークI)。まとめると、これらのデータは、Hpse−KOマウスにおけるヘパラナーゼ酵素活性の完全な排除を明らかに示している。
(例2)
ヘパラナーゼ欠損マウスの表現型分析
ホモ接合変異動物は、明らかに異常な表現型を示さず、繁殖性であり、正常な寿命を示した。いずれかの可能性のある年齢に関連した表現型を調べるために、6、12及び18カ月齢マウスを屠殺し、臓器を切開し、96%エタノール、1%氷酢酸及び3%蒸留水含有溶液で固定した。パラフィン包埋組織切片を、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。脳、心臓、肝臓、肺、腎臓及び脾臓由来の切片の組織学的検査は、Hpse−KOマウスにおける重大な構造的又は病理学的異常性を明らかにしなかった。
乳腺形態形成を試験するため、3カ月齢処女ホモ接合Hpse−KO又はwtマウス由来の全載乳腺を、当技術分野で公知の通りに調製し、Tellys固定液(100ml EtOH 70%、5mlホルマリン、5ml氷酢酸)で固定し、再水和し、ヘマトキシリンで3時間染色した。染色後、腺を水道水で洗浄し(1時間)、再水和し、サリチル酸メチル中で貯蔵した。驚くべきことに、処女Hpse−KOマウスは、妊娠マウスに特有の、乳腺における管の異常な、豊富な分岐及び早熟な胞巣状構造を示した(図3、下のパネル)のに対し、処女wt処女マウスは発達の乏しい乳腺を示した(図3、上のパネル)。以前に、ヒトヘパラナーゼ遺伝子を過剰発現するトランスジェニック処女マウス(hpa−tgマウス)は、処女ホモ接合Hpse−KOマウスに似た乳腺形態を示すことが報告されている。しかし、hpa−tg対対照マウスとは異なり、wtとHpse−KOマウスとの間では主な管の幅に有意差はなかった。
ヘパラナーゼの役割、並びに肝臓及び腎臓機能に対するHS構造変化の影響を調べるために、血液試料を、72時間の絶食の前後に15匹のwt及び15匹のHpse−KOマウスから採取した。試料は、総タンパク質量並びにクレアチニン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、及びアルカリホスファターゼ(ALP)含量について分析した。この目的のために、尿試料(25μl)は、自動化Kodak 250系を用いて、総タンパク質量及びクレアチニン含量について分析した。血液試料(25μl)は、自動化Kodak 950系を用いて、クレアチニン、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、及びアルカリホスファターゼ(ALP)含量について調べた。絶食の前後のいずれにおいても、wt及びHpse−KOマウスの間に有意差は検出されなかった。さらに、血小板が大量のヘパラナーゼを含有することから、血液試料は凝固特性(すなわち、APTT)についても調べた。この場合もやはり、Hpse−KOとwtマウスとの間に有意差はなかった。
以前に、ヘパラナーゼは、成熟した健康な肝臓と比べて肝臓発生及び再生中により容易に発現されることが報告されている。さらに、本発明者は、組換え活性ヘパラナーゼによる治療が肝臓再生を促進することを見出している(未発表結果)。故にHpse−KOマウスの肝臓は、部分的肝切除に反応してより緩慢な再生速度を示す可能性があることが想定された。wt及びHpse−KOマウス(各群に4匹)を、部分的肝切除に供し、インビボで肝臓サイズを評価するためMRIを適用して、肝臓再生について1日おきに調べた。意外にも、肝切除後8日間では2群間に有意差は観察されなかった。
(例3)
ヘパラナーゼ欠損マウスにおけるヘパラン硫酸構造の生化学分析
ヘパリン硫酸(HS)の分解がヘパラナーゼの1つの主要な機能であることから、選択された臓器由来のHSを分析した。この目的のために、野生型及びHpse−KOマウスに0.5 mCi Na 35SO(特異的活性1,500 Ci/mmol;Perkin Elmer社、ワルトハム、MA)を腹腔内注射し、水及び食べ物を自由に摂取させて45分間維持した。動物を次いで頸椎脱臼により屠殺し、臓器を切開した。組織は、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma−Aldrich社)を含有する、6容量の氷冷50mM Tris−HCl、pH7.4、1%(v/v)Triton X−100、4M尿素、0.25M NaClにおいてDounceホモジナイザーによりホモジナイズした後、4℃で一晩インキュベートした。遠心分離後、上清を、50mM Tris−HCl、pH7.4、0.3M NaClで平衡化したDEAE−Sephacelカラムに適用した。カラムは同緩衝液で大規模洗浄し、次いで1.5M NaCl含有同緩衝液で溶出した。溶出液を脱塩し、凍結乾燥し、コンドロイチナーゼABC(Seikagaku社、東京、日本)及びベンゾナーゼ(Merck社、サンディエゴ、CA)で消化した。消化物は、次いでDEAE−Sephacelに再適用して、分解されたコンドロイチン硫酸及びオリゴヌクレオチドを除去した。1.5M NaClで溶出したHSPG画分は、さらなる分析のためプールした。
HS分子構造の分析については、HSPG及びHS遊離鎖のゲルクロマトグラフィーを、50mM Tris−HCl、pH7.4、1M NaCl、0.1% Triton X−100で溶出したSuperose 12カラムで行った。ドメイン構成を分析するために、HS試料は、pH1.5での亜硝酸による処理により、N−硫酸化GlcN残基での切断に供した後、NaB[H]により還元した。還元産物は、0.5M NaCl中、Bio−Gel P−10(Bio−Rad社、ハーキュリーズ、CA)のカラム(1×200cm)でゲルクロマトグラフィーにより分離した。亜硝酸分解産物の部分は、Sephadex G−15カラムに適用し、二糖類を回収した。脱塩及び濃縮後、N−硫酸化ドメイン由来のH又は35S標識二糖類は、当技術分野で公知の通り、Partisil−10 SAXカラムで陰イオン交換HPLCによりさらに分析した。
予想通り、Hpse−KO組織由来のHS鎖は、wt組織から抽出したHSと比べてより高い分子量であった(図2)。さらに、Hpse−KO組織から単離した遊離HS鎖の溶出ピークは、wt組織から単離したHS側鎖の溶出プロファイルと比べてより狭くより対称的であるように見え、サイズ分布の不均一性がより小さいことを示した(全体的に幅広いサイズのピークは、HS生合成の状態を反映している)。HS硫酸化及び二糖組成の構造分析は、wt及びHpse−KO組織由来の試料間の検出可能な差を示さなかった。
(例4)
ヘパラナーゼ欠損マウスにおける内皮発芽及び血管新生の分析
ヘパラナーゼの細胞移動及び血管新生への関与は、十分に文献化されている。したがって、内皮細胞移動及び発芽に対するヘパラナーゼノックアウトの影響が評価された。先ず、エクスビボ大動脈輪アッセイが適用された。簡単には、8匹のwt及び8匹のHpse−KOマウスを屠殺し、この大動脈を浄化、及び1〜2mmの厚さの輪にカットした。輪を3次元増殖因子枯渇マトリゲル(BD Biosciences社、サンホセ、CA)に包埋し、添加FGF−2(50ng/mL)の存在下又は非存在下で0.5ml Bio−MPM(Biological industries社、ベスハエメク、イスラエル)でインキュベートした。輪を6日間維持し(37℃、8%CO、加湿雰囲気)、培地及びFGF−2の両方を2日ごとに交換した。血管発芽を毎日、6日間評価し、次いで4%ホルマリンで24時間固定し、エタノール中0.02%クリスタルバイオレット(Sigma−Aldrich社)で染色し、Nikon Eclipse TS 100フェーズコントラスト顕微鏡を用いて撮影した。予想通り、FGF−2の非存在下ではwt又はHpse−KO輪のいずれにおいても発芽はほとんど又は全くなかった(不図示)。FGF−2による刺激では、wt及びHpse−KO輪のいずれも内皮発芽を示した(図4A)。特に、Hpse−KO由来の輪は、wt大動脈輪(図4A、上のパネル)と比べてより顕著な管形成を示し(図4A、下のパネル)、FGF−2刺激に対する反応の増加を示唆した。
エクスビボでの結果を検証するため、本発明者はインビボ血管新生アッセイを行った。このモデルでは、マウスにFGF−2(80ng/mL)が有る又は無い場合の増殖因子枯渇マトリゲル200μLを皮下注射した。7日後、マトリゲルプラグを切除し、撮影し、低張溶解緩衝液(250μlの0.1%Brij−35/プラグ)でホモジナイズし、5,000gで5分間遠心分離した。Drabkin試薬によるヘモグロビン含量の測定により新血管形成を評価するために、上清は2通りに使用した。顕著な血管新生反応は、wtマウスと比べてHpse−KOマウスにおいてマトリゲル包埋FGF−2により誘導され(図4B)、エクスビボでの結果を裏付けた。ヘモグロビンの測定は、wtマウスと比べてHpse−KOに包埋したマトリゲルプラグのヘモグロビン含量の約2倍の増加を明らかにした(それぞれ、26±4.8mg/dl対55.5±7.18mg/dl;p=0.0002)。
(例5)
ヘパラナーゼ欠損マウスにおける代償反応の分析
Hpse−KOマウスでの異常な乳腺形態及び新血管形成の増加という予想外の結果は、この表現型の背後にあるメカニズムの調査につながった。1つの疑問は、他のECM分解酵素(単数又は複数)が、ヘパラナーゼ発現の欠如を代償しているかどうかであった。ヘパラナーゼ遺伝子と顕著な相同(約38%)を示す(WO01/77341に開示)が、いかなる検出可能なヘパラナーゼ酵素活性も欠く遺伝子であるHpa2が、調査の第1候補であった。Hpa2発現の分析は、wtとHpse−KOマウスとの間のいかなる差を明らかにしなかった。さらに、Hpse−KOマウスで見出されるHS長の増加は、別のヘパラナーゼ様酵素を指し示さない。
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が、ECM構造の再編成及びこれによる組織リモデリング、形態形成及び新血管形成において重要な役割を果たすことを考慮して、MMP発現をリアルタイムPCRにより調査した。この目的のために、Hpse−KO及びwtマウスの腎臓、肝臓及び乳腺から抽出した全RNAを、MMP−2、−3、−9、−14及び−25に対応する特異的プライマーを用いて分析した(表2)。リアルタイム定量的PCR分析は、自動化回転遺伝子系RG−3000A(Corbett research社、シドニー、オーストラリア)により行った。PCR反応ミックス(20μl)は、10μl QPCR SYBRグリーンミックス(ABgene社、エプソム、UK)、5μlの希釈cDNA(各試料6通り)及び最終濃度0.3μMの各プライマーから成った。PCR条件は次の通りであった:最初の変性ステップ、95℃で15分間;95℃で15秒間の変性、57℃で30秒間のハイブリダイゼーション、及び72℃で30秒間の伸長の40サイクル。アクチンプライマーを内部標準として使用した。
wt組織における異なるMMPの発現レベルを100%と見なし、Hpse−KOマウスのMMPレベルをこの値と比較して計算した。結果(図5A)は、ヘパラナーゼ発現の欠如がMMPファミリーの幾つかの膜の発現レベルにおける著しい変化と関連があることを示した。MMP−2は、wtマウスと比べてHpse−KOマウスから抽出した全ての試料で過剰発現した(2〜3.5倍)。MMP−14は肝臓及び腎臓で過剰発現した(4〜7倍)が、wtマウスと比べてHpse−KOマウス由来の乳腺でダウンレギュレートされた(約4倍)。MMP−9及びMMP−25発現レベルも、組織により変化した(図5A)。
これらの結果は、wtマウスと比べてHpse−KOマウスの肝臓、腎臓及び乳腺から抽出したホモジナイズした組織でのMMP−2タンパク質レベルの増加を明らかにするウェスタンブロット分析により、さらに裏付けられた(図5B 上のパネル)。組織抽出物のアリコート(50μg)を10%SDS−ポリアクリルアミドゲル(PAGE)での電気泳動により分離し、Immobilon−P膜(Millipore、ベッドフォード、MA)に移した。MMP2を抗マウスMMP2モノクロナール抗体801B(1:150、Rafael Fridman博士、Wayne State University、デトロイト、MIにより提供)により検出した。β−カテニンは、抗マウスモノクロナール抗体(1:150、BD transduction laboratories社、サンホセ、CA)、及び抗マウスa−チューブリンクローンB−5−1−2(1:5000;sigma社)により検出した。膜は一次抗体と共に2時間、室温でインキュベートし、TTBSで洗浄し、HRP結合二次抗体(Jackson Laboratories社、バーハーバー、ME)でプローブした。TTBSで数回洗浄後、二次抗体の検出をSuperSignal Chemiluminescent Substrate系(Pierce社、ロックフォード、IL)を用いて行った。化学発光シグナルは、FujiメディカルX線フィルム(Super RX)に露光した。
MMP−2発現の増加がMMP−2酵素活性の上昇により現れるかどうかも、さらに調査した。この目的のために、wt及びHpse−KO血液由来の血漿試料をザイモグラフィーに供し、MMP−2活性を評価した。MMP−2活性は、wtマウスと比べてHpse−KOマウス由来の血漿試料で2倍高かった。
次に、ヘパラナーゼとMMPとの間の相互作用に関与する可能性のある分子経路を綿密に考察した。β−カテニンは、以前にMMP制御に関与したことから、この活性化を、細胞質におけるβ−カテニン蓄積を調べて評価した。組織抽出物のウェスタンブロット分析は、wtマウスと比べてHpse−KOマウス由来の肝臓、腎臓及び乳腺におけるβ−カテニン蓄積を明らかにした(図5B、真ん中のパネル)。同様に、wt及びHpse−KOマウス由来の腎臓組織切片の免疫染色(図5C)は、ウェスタンブロットの結果と対応する、Hpse−KO腎臓におけるβ−カテニン染色の増加を明らかにした。
さらに、ヘパラナーゼとMMPとの相互関係は、中程度のヘパラナーゼレベルを正常に発現しているヒト乳癌MDA−231細胞に、活性ヘパラナーゼ又は酵素活性を欠く変異ヘパラナーゼ(Alaにより置換された活性部位Gln225及びGln343)のいずれかをトランスフェクトして調査した。mRNA発現レベルは、表3に示したプライマーを用いてリアルタイムPCRにより決定した。
活性及び不活性変異ヘパラナーゼはいずれも、偽トランスフェクト細胞と比べてHpse−トランスフェクト細胞で30倍過剰発現した(図6A)。図6Bに示した通り、活性ヘパラナーゼをトランスフェクトした細胞は、Hpse−KOマウスで見出された発現増加の鏡像である、MMP−2(5.8倍)、MMP−9(6.5倍)及びMMP−14(3倍)発現の著しい減少を示した。一方、MDA−239細胞に変異不活性ヘパラナーゼをトランスフェクトすることは、MMP発現(図6B)に影響を与えず、ヘパラナーゼ酵素活性が、観察されたMMP発現の制御に関与することを示した。
(例6)
多発性硬化症を治療するための候補化合物の評価モデルとしてのヘパラナーゼ欠損マウス
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、次のスキームによりC57/Bl遺伝的背景の最適には6〜8週齢のHpse−KOメスマウスにおいて誘導される。
0日目:完全フロインドアジュバントを有する50:50エマルション中の300μg MOG35−55ペプチドの皮下注射;200μl注入量;
500μg Pertussis Toxinの腹腔内注射;注入量100ml;
2日目:500μg Pertussis Toxinの腹腔内注射;注入量100μl;
7日目:完全フロインドアジュバントを有する50:50エマルション中の300μg MOG35−55の皮下注射;200μl注入量;
0日目又はこれ以前に、盲検試験における後の同定のためマウスをマーク又はタグ付けする。さらに、試験開始前にマウスを秤量し、健康状態をチェックする。
マウスを毎日チェックし、7日目(又はこれ以前)以降(最大28日目まで)マウスを秤量及びモニターして毎日臨床スコア(c.s.)を得る。
テスト化合物は、例えば0、7日目又はこれ以後に適用してよく、上の表に示したような臨床スコアを評価する。臨床スコアが低いほど、テスト化合物の治療可能性は高まる。

Claims (15)

  1. 少なくとも1つの破壊されたヘパラナーゼ対立遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
  2. 前記破壊されたヘパラナーゼ対立遺伝子がプロモーター及びエクソン1を欠く、請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
  3. 前記破壊されたヘパラナーゼ遺伝子が、Hind III−Xbalフラグメントを欠く、請求項2に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
  4. ヘパラナーゼ遺伝子の破壊に対してホモ接合である、請求項1から3までのいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。
  5. 請求項1から4までのいずれか一項に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物由来の単離細胞。
  6. a)非ヒト哺乳動物胚性幹細胞での相同組換えによりヘパラナーゼ遺伝子の部分を欠失させるステップと、
    b)ステップa)で得られた組換え細胞を単離された胚盤胞に導入するステップと、
    c)前記胚盤胞を偽妊娠した非ヒト哺乳動物に移植するステップと、
    d)前記移植された胚盤胞がトランスジェニック非ヒト哺乳動物に発達することを可能にするステップと、
    e)前記トランスジェニック非ヒト哺乳動物を飼育して子孫を産生するステップと、
    f)前記子孫をスクリーニングして、少なくとも1つの破壊されたヘパラナーゼ対立遺伝子を有するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を同定するステップと
    を含む、請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物の作製方法。
  7. a)において欠失された部分が、配列番号1に示されたヌクレオチド配列を含む、請求項6に記載の方法。
  8. 請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物を作製するためのベクターであって、ヘパラナーゼコーディング配列の1つのエクソンの少なくとも一部分が、選択可能なマーカー配列に置換されている、ヘパラナーゼノックアウト構築物をコードする核酸配列を含む上記ベクター。
  9. 前記選択可能なマーカー配列がネオマイシン耐性遺伝子を含む、請求項8に記載のベクター。
  10. a)請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供するステップと、
    b)前記哺乳動物を疾患刺激に曝露するステップと、
    c)前記哺乳動物に前記薬剤候補を投与するステップと、
    d)前記疾患刺激により誘導された疾患の発症について前記哺乳動物を分析するステップと
    を含む、治療剤候補のスクリーニング方法。
  11. 前記疾患刺激が接種された腫瘍細胞を含み、前記ステップd)が任意の腫瘍転移形成を決定することを含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記疾患刺激が炎症刺激であり、前記ステップd)が任意の炎症反応のレベルを決定することを含む、請求項10に記載の方法。
  13. 前記疾患刺激が実験的自己免疫性脳脊髄炎を誘導する、請求項10に記載の方法。
  14. 前記疾患刺激がアレルギー反応を誘導する、請求項10に記載の方法。
  15. 野生型非ヒト哺乳動物において得られた対応する結果と、得られた結果を比較することをさらに含む、請求項10から14までのいずれか一項に記載の方法。
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