本発明者らは、FAK Y397リン酸化を標的にすることでFAKリン酸化の阻害に対処する治療戦略を発見した。かかる相互作用は、特に、FAK機構が重要な役割を果たす特定の癌型におけるアポトーシスおよび細胞増殖の調節に関連している。
本発明は、FAK Y397リン酸化介在プロセスが腫瘍治療の標的(例:選択的)として有用であることを発見したことに少なくとも部分的に関する。これらの相互作用を破壊することで、in vitroにおける正常細胞ではなく癌の生存率の損失およびアポトーシスを引き起こす。
1.定義
本発明をさらに説明する前に、本発明をより容易に理解できるようにするために、特定の用語を最初に定義し、便宜上ここにまとめる。
「投与」または「投与する」という用語は、目的の機能を実行するため本発明の化合物(単数または複数)を対象に導入する経路のことを言う。使用できる投与経路の例としては、注射(皮下、静脈内、非経口、腹腔内、髄腔内)、経口、吸入、直腸、および経皮が挙げられる。医薬製剤は、投与経路ごとに適切な形にすることができる。例えば、これらの製剤は、錠剤またはカプセル剤で、注射、吸入、点眼薬、軟膏、坐薬など;注射、輸液、または吸入による投与;ローション剤または軟膏による局所投与;および坐薬による直腸投与などにより投与される。経口投与が好ましい。注射は、ボーラスであっても持続注入であってもよい。投与経路に応じて、目的の機能を実行するための能力に悪影響を及ぼし得る自然条件から保護するため、本発明の化合物を選択材料でコーティングしても選択材料内に配置してもよい。本発明の化合物は、単独で、または、上述の別の薬剤または薬学的に許容される担体あるいはその両方と組み合わせて投与することができる。本発明の化合物は、他の薬剤の投与前に、該薬剤と同時に、あるいは該薬剤の投与後に投与することができる。さらに、本発明の化合物は、その活性代謝物、またはin vivoでより活性な代謝物に変換されるプロドラッグ形でも投与することができる。
「アルキル」という用語は、飽和脂肪族基のラジカルのことを言い、直鎖アルキル基、分枝鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基が挙げられる。「アルキル」という用語は、アルキル基をさらに含み、これは、炭化水素骨格の1つ以上の炭素を置換している酸素、窒素、硫黄、またはリン原子、例えば、酸素、窒素、硫黄、またはリン原子をさらに含むことができる。好ましい実施形態において、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格(例:直鎖ではC1〜C30、分枝鎖ではC3〜C30)に30個以下、好ましくは26個以下、より好ましくは20個以下、さらにより好ましくは4個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、環構造に3〜10個の炭素原子、より好ましくは、環構造に3、4、5、6、または7個の炭素を有する。
さらに、本明細書全体を通じて使用される「アルキル」という用語は、「未置換アルキル」および「置換アルキル」の両方を含むものとし、後者は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素が置換している置換基を有するアルキル部分のことを言う。かかる置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または、芳香族あるいはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。当業者であれば、炭化水素鎖上の置換された部分は、それら自身、必要に応じて置換することができることが理解されるであろう。シクロアルキルは、例えば上述の置換基でさらに置換することができる。「アルキルアリール」部分は、アリール(例:フェニルメチル(ベンジル))で置換されたアルキルである。「アルキル」という用語はまた、上述のアルキルと長さが類似しておりかつ上述のアルキルに置換することができるが、少なくとも1つの二重または三重結合をそれぞれが含む不飽和脂肪族基のことを言う。
炭素数が他に指定されない限り、本明細書で使用される「低級アルキル」は、その骨格構造に1〜10個、より好ましくは1〜6個、さらにより好ましくは1〜4個の炭素原子を有する前述のアルキル基のことを意味し、これは、直鎖または分枝鎖であってもよい。低級アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、tert−ブチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられる。好ましい実施形態において、「低級アルキル」という用語は、その骨格に4個以下の炭素原子を有する直鎖アルキル、例えばC1〜C4アルキルのことを言う。
「アルコキシアルキル」、「ポリアミノアルキル」、および「チオアルコキシアルキル」という用語は、炭化水素骨格の1つ以上の炭素を置換している酸素、窒素、または硫黄原子、例えば、酸素、窒素、または硫黄原子をさらに含む上述のアルキル基のことを言う。
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、上述のアルキルと長さが類似しておりかつ上述のアルキルに置換することができるが、少なくとも1つの二重または三重結合をそれぞれが含む不飽和脂肪族基のことを言う。例えば、本発明では、シアノ基およびプロパルギル基が考えられる。
本明細書で使用される「アリール」という用語は、アリール基のラジカルのことを言い、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどのヘテロ原子を0〜4個含み得る5員および6員単環芳香族基が挙げられる。アリール基としては、多環式縮合芳香族基も挙げられ、例えば、ナフチル、キノリル、インドリルなどである。環構造にヘテロ原子を有するこれらアリール基は、「アリールヘテロ環」、「ヘテロアリール」、または「ヘテロ芳香族」とも呼ばれる。芳香族環は、1つ以上の環位置で、上述のかかる置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または、芳香族あるいはヘテロ芳香族部分で置換することができる。アリール基は、芳香族ではない脂環式環または複素環と縮合または架橋して、多環(例:テトラリン)を形成することもできる。
「と会合する」という用語は、化学物質または化合物あるいはその部分と、タンパク質上の結合ポケットまたは結合部位との間の近接条件のことを言う。会合は、非共有結合性(並置は、水素結合またはファン・デル・ワールスあるいは静電相互作用によりエネルギー的に有利である)であっても共有結合性であってもよい。
本明細書で使用される「結合ポケット」という用語は、その形状により、別の化学物質または化合物と良好に会合する分子または分子複合体の領域のことを言う。
本発明の化合物の「生物活性」という言葉は、応答細胞において本発明の化合物により誘発される全ての活性を含む。これらの化合物より誘発されるゲノム活性および非ゲノム活性を含む。
「生物学的組成物」または「生物学的試料」は、細胞または生体高分子を含む、あるいは、それに由来する組成物のことを言う。細胞含有組成物としては、例えば、哺乳類血液、赤血球濃縮物、血小板濃縮物、白血球濃縮物、血液タンパク質、血漿、多血小板血漿、血漿濃縮物、血漿の任意の分別からの沈殿物、血漿の任意の分別からの上清、血漿タンパク質分別、精製または部分精製した血液タンパク質または他の成分(血清、精液、哺乳類初乳、乳汁、唾液、胎盤抽出物、寒冷沈降物、寒冷上清、細胞溶解物、哺乳類細胞培養物、または培地)、発酵生成物、腹水、血球内で誘導されたタンパク質、正常細胞または形質転換細胞により細胞培養物で生成された生成物(例:組み換えDNAまたはモノクローナル抗体の技術経由)が挙げられる。生物学的組成物は、無細胞であってもよい。好ましい実施形態において、適当な生物学的組成物または生物学的試料は、赤血球浮遊液である。いくつかの実施形態において、血球懸濁剤としては哺乳類血球が挙げられる。好ましくは、血球は、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、またはブタから得られる。好ましい実施形態において、血球懸濁剤としては、赤血球、および/または血小板、および/または白血球、および/または骨髄細胞が挙げられる。
「キラル」という用語は、鏡像パートナーの非重畳可能性の特性を有する分子のことを言い、「アキラル」という用語は、鏡像パートナーに重畳可能な分子のことを言う。
「ジアステレオマー」という用語は、2つ以上の非対称中心をもち、その分子は互いに鏡像ではない立体異性体のことを言う。
「有効量」という用語は、所望の結果を達成するために必要な投与量および期間にわたって有効な、例えば、細胞増殖性疾患の治療に有効な量のことを含む。
本発明の化合物の有効量は、対象の病状、年齢、および体重などの要因、対象において所望の反応を誘発するための本発明の化合物の能力などに応じて変えることができる。投与計画は、最適な治療反応をもたらすように調整することができる。有効量はまた、治療に有効な作用が本発明の化合物のあらゆる毒性作用または有害作用(例:副作用)を上回る量である。
本発明の化合物の治療に有効な量(即ち、有効投与量)は、約0.001〜30mg/kg体重、好ましくは、約0.01〜25mg/kg体重、より好ましくは、約0.1〜20mg/kg体重、さらにより好ましくは、約1〜10mg/kg、2〜9mg/kg、3〜8mg/kg、4〜7mg/kg、または5〜6mg/kg体重の範囲であってよい。限定的ではないが、疾病または疾患の重症度、前に行われた治療、対象の全身状態および/または年齢、および存在している他の疾病を含む特定の要因が、対象を効果的に治療するのに必要な投与量に影響を及ぼし得ることは当業者であれば分かるであろう。さらに、本発明の化合物の治療に有効な量による対象の治療は、単一の治療であってもよく、好ましくは、一連の治療であってもよい。一例において、対象は、約0.1〜20mg/kg体重の範囲で、週一回で約1〜10週間、好ましくは、2〜8週間、より好ましくは、約3〜7週間、さらにより好ましくは、約4、5、または6週間にわたり本発明の化合物で治療される。治療に使用される本発明の化合物の有効投与量は、特定の治療の経過と共に増減できることが分かるであろう。
「鏡像異性体」という用語は、互いに非重畳可能な鏡像である、化合物の2つの立体異性体のことを言う。2つの鏡像異性体の等モル混合物は、「ラセミ混合物」または「ラセミ化合物」と呼ばれる。本発明の化合物は、1つ以上の不斉中心を含んでもよく、従って、ラセミ化合物およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマー、およびジアステレオマー混合物として生じることができる。これら化合物のかかる異性体の全ては、本発明に明示的に含まれる。本発明の化合物は、多数の互変異性型で表すこともでき、そのような場合、本発明は、本明細書に記載された化合物の全ての互変異性型を明示的に含む。かかる化合物の全てのかかる異性体は、本発明に明示的に含まれる。本明細書に記載された化合物の全ての結晶形は、本発明に明示的に含まれる。
「ハロアルキル」という用語は、ハロゲンによりモノ−、ジ−、またはポリ置換される前述で定義したアルキル基を含むものであり、例えば、フルオロメチルおよびトリフルオロメチルである。
「ハロゲン」という用語は、−F、−Cl、−Br、または−Iを示す。
「ヒドロキシル」という用語は、−OHを意味する。
本明細書で使用される「ヘテロ原子」という用語は、炭素または水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は、窒素、酸素、硫黄、およびリンである。
「恒常性」という用語は、当該技術分野において承認されており、内部環境の条件を静的または一定に持続することを意味する。
「改善された生物学的特性」という言葉は、in vivoでその有効性を高める、本発明の化合物に固有の任意の活性のことを言う。好ましい実施形態において、この用語は、本発明の化合物の任意の定性的または定量的に改善された治療特性のことを言い、例えば、毒性低減である。
「細胞増殖性疾患」という用語は、望ましくないまたは制御されていない細胞増殖を伴う疾患のことを言う。かかる疾患の例としては、限定的ではないが、腫瘍または癌(例:肺癌(小細胞や非小細胞)、甲状腺癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、または結腸癌)、肉腫、またはメラノーマが挙げられる。
「FAKタンパク質−タンパク質結合パートナー」という言葉は、FAK(例:全長、N末端、C末端、カルボキシ末端、キナーゼドメイン、FERMドメイン、FATドメイン)と結合するタンパク質(本明細書に示されるものを含む)のことを言う。
「任意に置換される」という用語は、未置換基、または、1つ以上の利用可能な位置で、通常、1、2、3、4、または5つの位置において水素以外により1つ以上の適当な基(同一であっても異なっていてもよい)で置換される基を包含するものとする。かかる任意の置換基としては、例えば、ヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1−C8アルキル、C2−C8アルケニル、C2−C8アルキニル、C1−C8アルコキシ、C2−C8アルキルエーテル、C3−C8アルカノン、C1−C8アルキルチオ、アミノ、モノ−またはジ−(C1−C8アルキル)アミノ、ハロC1−C8アルキル、ハロC1−C8アルコキシ、C1−C8アルカノイル、C2−C8アルカノイルオキシ、C1−C8アルコキシカルボニル、−COOH、−CONH2、モノ−またはジ−(C1−C8アルキル)アミノカルボニル、−SO2NH2、および/または、モノ−またはジ−(C1−C8アルキル)スルホンアミドのみならず、炭素環式および複素環式基が挙げられる。任意の置換は、「0〜X個の置換基で置換される」という字句によっても示され、ここで、Xは可能な置換基の最大数である。ある任意に置換される基は、0〜2、3、または4つの個々に選択された置換基で置換される(即ち、未置換、あるいは、記載の置換基の最大数まで置換される)。
「異性体」または「立体異性体」という用語は、同一の化学構造を有するが、空間における原子または基の配置に関して異なっている化合物のことを言う。
「調節する」という用語は、例えば、本発明の化合物への暴露に反応して細胞が増殖する能力を増減すること、例えば、所望の最終結果(例:治療結果)が得られるように動物の少なくとも亜集団の細胞増殖の阻害を増減することを言う。
「FAKのY397リン酸化を阻害することができる化合物を得る」などの「得る」という用語は、化合物を購入する、合成する、あるいは取得することを含むものとする。
本明細書で使用される「非経口投与」および「非経口的に投与した」という字句は、腸内投与および局所投与以外の、通常、注射による投与様式を意味し、限定的ではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経皮気管内、皮下内、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、および胸骨内注射ならびに輸液が挙げられる。
「ポリシクリル」または「多環式ラジカル」という用語は、2つ以上の炭素が2つの隣接環で共通である、例えば、環が「縮合環」である2つ以上の環式環(例:シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/またはヘテロシクリル)のラジカルのことを言う。非隣接原子を通じて結合している環は、「架橋」環と呼ばれる。多環の各環は、上述のかかる置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイル、およびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、スルホナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキル、アルキルアリール、または、芳香族あるいはヘテロ芳香族部分で置換することができる。
「プロドラッグ(prodrug)」または「プロドラッグ(pro−drug)」という用語は、in vivoで代謝することができる部分をもつ化合物のことを言う。一般に、プロドラッグは、エステラーゼあるいは他の機構によりin vivoで実薬に代謝される。プロドラッグおよびそれらの使用例は、当業界では周知である(例えば、Bergeら(1977)「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.66:1−19を参照されたい)。プロドラッグは、化合物の最終単離および精製中にin situで調製することができる、あるいは、その遊離酸形態あるいはヒドロキシルの精製化合物を適当なエステル化剤と別々に反応させることで調製することができる。ヒドロキシル基は、カルボン酸による処理を介してエステルに変換することができる。プロドラッグ部分の例としては、置換および未置換の、分枝または非分枝の低級アルキルエステル部分、(例、プロビオン酸エステル)、低級アルケニルエステル、ジ−低級アルキルアミノ、低級アルキルエステル(例、ジメチルアミノエチルエステル)、アシルアミノ低級アルキルエステル(例、アセチルオキシメチルエステル)、アシルオキシ低級アルキルエステル(例、ピバロイルオキシメチルエステル)、アリールエステル(フェニルエステル)、アリール−低級アルキルエステル(例、ベンジルエステル)、置換(例、メチル、ハロ、またはメトキシ置換基で置換)アリールおよびアリール低級アルキルエステル、アミド、低級アルキルアミド、ジ−低級アルキルアミド、およびヒドロキシアミドが挙げられる。好ましいプロドラッグ部分は、プロビオン酸エステルおよびアシルエステルである。in vivoで他の機構を通じて活性型に変換されるプロドラッグも含む。
化合物の「予防的に有効な量」という言葉は、患者への単回または複数回投与に際し、細胞増殖性疾患の予防または治療に有効な、本明細書のあらゆる式あるいは本明細書に記載の本発明の化合物の量のことを言う。
「毒性低減」という言葉は、in vivoで投与する際に、本発明の化合物より誘発されるあらゆる望ましくない副作用の低減を含むものとする。
「スルフヒドリル」または「チオール」という用語は、−SHを意味する。
「対象」という用語は、細胞増殖性疾患を患い得る、あるいは、本発明の化合物の投与により恩恵を受けることができる有機体のことを含み、例えば、ヒトおよび非ヒト動物である。好ましいヒトとしては、本明細書に記載の細胞増殖性疾患または関連症状を患っているまたは罹り易いヒト患者が挙げられる。本発明の「非ヒト動物」という用語は、哺乳類、齧歯類(例、マウス)、非哺乳類、非ヒト霊長類(例、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ)、両生類、爬虫類などの全脊椎動物を含む。
「細胞増殖性疾患に罹り易い」という用語は、細胞増殖の疾患、例えば、癌を発症する危険性のある対象、すなわち、癌ウイルスによるウイルス感染を患っている対象、電離放射線または発癌性化合物に暴露した対象、癌などの家族歴または病歴を有する対象等を含むことを意味する。
本明細書で使用される「全身投与」、「全身に投与した」、「末梢投与」、「末梢に投与した」という字句は、患者の体内に入れることで、代謝や他の同様のプロセスを施すように、本発明の化合物、薬剤、または他の材料を投与することを意味し、例えば、皮下投与である。
本発明の化合物の「治療に有効な量」という言葉は、患者に単回または複数回投与する際、細胞増殖および/または細胞増殖性疾患の症状を阻害する、あるいは、かかる治療なしで予想される生存を超えてかかる細胞増殖性疾患をもつ患者の生存を長引かせるのに有効な薬剤量のことを言う。
キラル中心の命名に関して、「d」および「l」配置という用語は、IUPAC勧告の定義による。用語の使用について、ジアステレオマー、ラセミ体、エピマー、および鏡像異性体は、製剤の立体化学を説明するため通常の文脈で使用する。
2.本発明の化合物
一態様において、本発明は、FAK結合活性を(直接的または間接的に)調節(例、阻害または刺激)することができる化合物を提供する。
一実施形態において、本発明は、FAKタンパク質−タンパク質結合を調節することができる化合物と;薬学的に許容されるそのエステル、塩、およびプロドラッグとを提供する。
ある好ましい化合物としては、本明細書に具体的に記載された化合物が挙げられる:
阻害剤:
Y11:3,5,7−トリアザ−1−アゾニアトリシクロ(3.3.1.13,7)デカン−1−(2−ヒドロキシエチル)−ブロミド;
Y15:1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド;
Y30:9−チア−1,3,6,8−テトラアザトリシクロ[4.3.1.1(3,8)]ウンデカン−9,9−ジオキシドである。
本発明は、上述の化合物の薬学的に許容される塩およびエステルにも関する。
天然に存在する異性体または合成異性体は、当該技術分野において公知のいくつかの方法で分離することができる。2つの鏡像異性体のラセミ混合物の分離方法としては、キラル固定相を用いたクロマトグラフィーが挙げられる(例:「Chiral Liquid Chromatography」、W.J.Lough,Ed.Chapman and Hall,New York(1989)を参照されたい)。鏡像異性体は、標準的な分解能技術により分解することもできる。例えば、ジアステレオマー塩や分別結晶の生成を用いて、鏡像異性体を分離することができる。カルボン酸の鏡像異性体を分離するために、ブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネなどの鏡像異性的に純粋なキラル塩基を加えることで、ジアステレオマー塩を生成することができる。あるいは、ジアステレオマーエステルは、メントールなどの鏡像異性的に純粋なキラルアルコールと反応させることに続いて、ジアステレオマーエステルを分離し、加水分解して遊離の鏡像異性的に濃縮されたカルボン酸を得ることにより形成できる。光学異性体をアミノ化合物から分離するために、樟脳スルホン酸、酒石酸、マンデル酸、または乳酸などのキラルカルボン酸またはスルホン酸を加えることにより、ジアステレオマー塩を形成することができる。
別の実施形態によれば、本発明は、本明細書に記載の方法により生成または同定されるFAKのY397リン酸化を阻害することができる化合物を提供する。
3.本発明の化合物の用途
一実施形態において、本発明は、FAKのY397リン酸化を阻害することができる化合物を有効量で対象に投与することにより細胞増殖性疾患をもつ対象の治療方法を提供する。細胞増殖性疾患には、癌が挙げられる。ある実施形態において、対象は、哺乳類、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。
本実施形態において、本発明の化合物は、FAKのリン酸化活性、またはその特異的ドメインを直接的または間接的に調節することができる。制御されていない増殖が起こっている細胞を本発明の化合物と接触させて、細胞増殖を阻害するまたはアポトーシスを誘発することができる。細胞に接触させること、または、本発明の化合物を対象に投与することは、不要または望ましくない細胞増殖あるいは細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い細胞または対象を治療する1つの方法である。
一実施形態において、不要または望ましくない細胞増殖あるいは細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象の治療方法としては、FAKまたはそのドメインのリン酸化を阻害することができる化合物を治療に有効な量でそれを必要とする対象に投与することを含み、それにより、不要または望ましくない細胞増殖あるいは細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象を治療する。例示化合物としては、本明細書に記載の化合物が挙げられる。
従って、一実施形態において、本発明は、FAKのY397リン酸化を阻害することができる化合物を有効量で対象に投与することにより、細胞増殖性疾患を有する対象の治療方法を提供する。
ある実施形態において、本発明の方法は、別の医薬活性化合物と組み合わせて本発明の化合物を治療に有効な量で対象に投与することを含む。医薬活性化合物の例としては、細胞増殖性疾患の治療に公知の化合物が挙げられ、例えば、抗癌剤、抗増殖剤、化学療法薬である。使用できる他の医薬活性化合物は、Harrison’s Principles of Internal Medicine,Thirteenth Edition,Eds.T.R.Harrisonら、McGraw−Hill N.Y.,NY;およびthe Physicians Desk Reference 50th Edition 1997,Oradell New Jersey,Medical Economics Co.に記載されており、その全教示内容を参照により本明細書に明確に組み込むものとする。本発明の化合物および医薬活性化合物は、同一の医薬組成物または異なる医薬組成物で(同時にまたは別時間で)対象に投与することができる。
ある実施形態において、本発明の化合物は、従来の癌化学療法薬と併用療法で用いることができる。白血病および他の腫瘍に対する従来の治療計画としては、放射線、薬剤、またはそれらの組み合わせが挙げられる。放射線に加えて、以下の薬剤:ビンクリスチン、プレドニゾン、メトトレキサート、メルカプトプリン、シクロホスファミド、およびシタラビンは、通常、互いに組み合わせて急性白血病の治療に使用することが多い。他の例としては、例えば、ドキソルビシン、シスプラチン、タキソール、5−フルオロウラシル、エトポシド、ゲムシタビンなどが挙げられ、本明細書に記載の化合物と組み合わせて有効性(例:細胞の化学増感)を示す。慢性白血病では、例えば、ブスルファン、メルファラン、およびクロラムブシルを併用することができる。従来の抗癌剤のほとんどは、毒性が強く、治療中に患者の体調を非常に悪化させやすい。積極的な治療は、全ての癌性細胞は破壊されない限り、残存細胞が増殖して再発を引き起こすという前提に基づいている。
本明細書に記載の方法としては、対象が特定の治療の必要であると見なされているものが挙げられる。かかる治療が必要である対象の同定は、対象または医療専門家の判断であってよく、主観的(例:意見)または客観的(例:試験又は診断法により測定可能)であってもよい。他の方法において、対象は、かかる治療に対する適合性について関連マーカーまたはインジケータを評価することによって、かかる治療が必要であるとプレスクリーニングしたり、あるいは同定したりする。
本発明の化合物の治療に有効な抗増殖性量または予防に有効な抗増殖性量は、公知技術を用いて、類似環境下で得られた観察結果により、当業者の医師または獣医(「担当医」)により容易に決定することができる。投与量は、担当医の判断による患者の必要条件、治療している症状の重症度、および使用される特定の化合物に応じて変更することができる。治療に有効な抗増殖性量または用量や、予防に有効な抗増殖性量または用量の判断においては、担当医により多くの要因が考えられ、限定的ではないが:発症している特定の細胞増殖性疾患;特定薬剤、その様式、および投与経路の薬力学的特性;所望の治療経過時間;哺乳種;その大きさ、年齢、および全身状態;発症している特定の疾病;疾病の発症度または重症度;個々の患者の反応;投与した特定の化合物;投与様式;投与した製剤のバイオアベイラビリティ特性;選択された用法;併用療法の種類(即ち、他の併用療法と本発明の化合物の相互作用);およびその他の関連状況が挙げられる。
治療は、より少ない投与量で開始することができ、これは、化合物の最適用量には満たない。その後、状況下で最適効果が得られるまで投与量を少しずつ増加することができる。便宜上、1日の総投与量を分割し、必要に応じて1日に部分投与することができる。本発明の化合物の治療に有効な量および予防に有効な抗増殖性量は、約0.1mg/kg/日〜約100mg/kg/日に変化すると考えられる。
動物、例えば、イヌ、ニワトリ、齧歯類において細胞増殖性疾患の予防または治療に有効であると判断された化合物は、ヒトの腫瘍治療にも有用であり得る。ヒトの腫瘍を治療する当業者であれば、動物研究で得られたデータに基づいて、ヒトへの化合物の投与量および投与経路は分かるであろう。一般に、ヒトにおける投与量および投与経路は、動物のものと同様であると考えられる。
細胞増殖性疾患の予防的治療に必要な患者の同定は、当業者の能力および知識の十分な範囲内である。対象方法により治療することができる細胞増殖性疾患を発症する危険性がある患者の特定の同定方法は、医学分野であれば理解され、例えば、家族歴や、対象患者の病状発現に関連しているリスク要因の存在である。当該担当医であれば、例えば、臨床試験、健康診断、および病歴/家族歴を用いることによりかかる候補患者を容易に同定することができる。
対象における治療効果の評価方法は、当業界では周知の方法(例:細胞増殖性疾患が癌である場合、腫瘍の大きさを判断するか、または、腫瘍マーカーをスクリーニングする)により治療前の細胞増殖性疾患の程度を判断した後、本発明による細胞増殖の阻害剤(例:本明細書に記載のもの)を治療に有効な量で対象に投与することを含む。化合物の投与後適当な期間の後(例:1日、1週間、2週間、1か月、6か月)、細胞増殖性疾患の程度を再び判断する。細胞増殖性疾患の程度または侵襲性の調節(例:低下)は、治療効果を示す。細胞増殖性疾患の程度または侵襲性は、治療中、定期的に判断することができる。例えば、細胞増殖性疾患の程度または侵襲性について、数時間、数日、または数週間ごとにチェックし、さらなる治療効果を評価することができる。細胞増殖性疾患の程度または侵襲性が低下することは、治療が有効であることを示す。上述の方法を用いて、細胞増殖性疾患の阻害剤による治療から恩恵を受け得る患者をスクリーニングまたは選択することができる。
本明細書で使用される「対象から生物学的試料を得ること」は、本明細書に記載の方法で使用される試料を得ることを含む。生物学的試料は、上述のものである。
さらに別の態様において、FAKまたはその特異的ドメインのリン酸化を調節する化合物の同定方法を提供する。本方法は、試験化合物の有無に関わらず、FAKまたはその特異的ドメイン(アポ形態であっても複合体であってもよい)の結晶構造を得ること、または、FAKまたはその特異的ドメイン(アポ形態であっても複合体であってもよい)の結晶構造に関する情報を得ることを含む。FAKまたはその特異的ドメインの結晶構造の結合部位内で、あるいは、部位上で化合物をコンピュータモデリングし、FAKまたはその特異的ドメインと試験化合物との相互作用の安定化を予測することができる。潜在的な調節化合物が同定されると、本明細書に記載のものおよび当該技術分野において公知の競合アッセイなどのin vitro、in vivo、または細胞アッセイを用いて、化合物をスクリーニングすることができる。このようにして同定された化合物は、治療薬として有用である。
別の態様において、本発明の化合物は、薬学的に許容される担体または希釈剤と共に治療に有効な量で包装される。組成物は、細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象を治療するために調合し、細胞増殖性疾患を患っているまたは該疾患に罹り易い対象を治療するための使用説明書と一緒に包装してもよい。
別の態様において、本発明は、細胞増殖の阻害方法を提供する。一実施形態において、本発明による細胞増殖(または細胞増殖性疾患)の阻害方法は、細胞をFAK、FAK結合パートナー、またはその特異的ドメインを調節することができる化合物と接触させることを含む。いずれの実施形態においても、接触は、例えば、細胞を取り囲む液体、例として、細胞が生存または存在している増殖培地に化合物を添加することによりin vitroで行うことができる。接触は、化合物を細胞に直接接触させることでも行うことができる。あるいは、接触は、例えば、対象を通じた化合物の通過によりin vivoで行うことができる。例えば、投与した後、投与経路に応じて、化合物は、消化管または血流を通じて移動してもよく、あるいは、治療が必要な細胞に直接的に適用または投与してもよい。
別の態様において、対象における細胞増殖性疾患の阻害方法は、本発明の化合物(即ち、本明細書に記載の化合物)を有効量で対象に投与することを含む。投与は、医薬分野で公知の任意の投与経路であってよい。対象は、細胞増殖性疾患に対する感受性を増加させ得る状態への予想または予想外の暴露、例えば、発癌物質あるいは電離放射線への暴露に先立ち、細胞増殖性疾患を有する、細胞増殖性疾患を発症する危険性がある、あるいは予防的治療を必要としている場合である。
一態様において、本明細書の化合物で治療されている対象の進行を監視する方法は、細胞増殖性疾患の治療前の状況(例:腫瘍のサイズ、増殖速度、または侵襲性)を判断すること、本明細書の化合物を治療に有効な量で対象に投与すること、および、化合物による最初の治療期間の後に細胞増殖性疾患の状況(例:腫瘍のサイズ、増殖速度、または侵襲性)を判断することを含む。ここで、状態が調節されることは、治療の有効性を示す。
対象は、細胞増殖性疾患を発症する危険性がある、細胞増殖性疾患の症状を発現している、細胞増殖性疾患に罹り易い、および/または細胞増殖性疾患と診断されている場合がある。
状態が調節されることで、対象が治療に良好な臨床反応を示す場合、対象は化合物により治療され得る。例えば、対象には、化合物を治療に効果的な用量で投与することができる。
別の態様において、試験化合物の評価方法は、FAKまたはその特異的ドメインを試験化合物(複合体)と接触させる工程と、接触後の結合相互作用を評価する工程とを含み、ここで、基準値に対する複合体の安定性の変化は、試験化合物が複合体の安定性を調節していることを示す。
FAKまたはその特異的ドメインの複合体は、in silicoでモデリングしても、または、細胞内で複合体であっても、細胞から単離されても、組み換え技術により発現しても、細胞または組み換え発現システムから精製あるいは単離されても、あるいは、細胞または組み換え発現システムから部分的に精製あるいは単離されてもよい。
本発明のキットは、対象における細胞増殖性疾患の治療用キットを含む。キットには、本発明の化合物、例えば、本明細書に記載の化合物、薬学的に許容されるそのエステル、塩、およびプロドラッグと、使用説明書とを含み得る。使用説明書には、投与量情報、送達方法、キットの保存などを含み得る。キットには、試薬、例えば、試験化合物、緩衝剤、培地(例:細胞増殖培地)、細胞なども含み得る。試験化合物は、公知の化合物、または新たに発見された化合物、例えば、化合物のコンビナトリアルライブラリを含み得る。本発明の1つ以上のキットを一緒に包装してもよく、例えば、細胞増殖性疾患の治療効果の評価用キットを、本発明による細胞増殖性疾患を治療している対象の進行のモニタリング用キットと一緒に包装してもよい。
本方法は、例えば、in vitroもしくはex vivoで培養中の細胞上で行ってもよく、例えば、in vivoで動物対象内に存在する細胞上で行ってもよい。本発明の化合物は、増殖細胞、例えば、形質転換細胞、腫瘍細胞株などの初代培養を用いてin vitroで初期試験を行ってもよい。
本方法は、例えば、in vitroもしくはex vivoで培養中の細胞上で行ってもよく、例えば、in vivoで動物対象内に存在する細胞上で行ってもよい。本発明の化合物は、胚齧歯類(embryonic rodent pups)(例:米国特許第5,179,109号に記載の胎児ラット組織培養を参照されたい)、他の哺乳類(例:米国特許第5,089,517号に記載の胎児マウス組織培養を参照されたい)、または非哺乳動物モデルからの気道細胞を用いてin vitroで初期試験を行ってもよい。
あるいは、本発明の化合物の効果は、動物モデルを用いてin vivoで特徴付けることができる。
4.医薬組成物
本発明は、有効量の本明細書に記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。別の実施形態において、有効量とは、前述のように、細胞増殖性疾患の治療に有効であることである。
一実施形態において、本発明の化合物は、薬学的に許容される製剤、例えば、薬学的に許容される製剤を対象に投与した後、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、1週間、2週間、3週間、または4週間にわたって本発明の化合物を対象に徐放する薬学的に許容される製剤を用いて対象に投与される。
ある実施形態において、これらの医薬組成物は、対象への局所投与または経口投与に適当である。他の実施形態において、以下に詳細を述べるように、本発明の医薬組成物は、以下の投与用に適用されたものを含む、固形または液体形態での投与用に特別に調合してもよい。投与としては、(1)経口投与、例えば、飲薬(水性または非水性溶液、あるいは懸濁剤)、錠剤、ボーラス剤、粉末剤、顆粒剤、ペースト剤;(2)非経口投与、例えば、滅菌溶液または懸濁剤として、例えば、皮下、筋肉内、または静脈内注入;(3)局所塗布、例えば、皮膚に塗布されるクリーム剤、軟膏、または噴霧剤;(4)腟内または直腸内、例えば、ペッサリー剤、クリーム剤、または発泡剤;または(5)噴霧剤、例えば、水性噴霧剤、リポソーム製剤、または化合物を含む固体粒子が挙げられる。
「薬学的に許容される」という字句は、堅実な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題あるいは合併症を伴わない、妥当な損益比に見合った、ヒトおよび動物の組織との接触における使用に適している本発明の化合物、かかる化合物を含む組成物、および/または剤形のことを言う。
「薬学的に許容される担体」という字句は、ある器官(人体の一部)から別の器官(人体の一部)へ対象化学物質の運搬または輸送に関わる、薬学的に許容される材料、組成物、または賦形剤(例えば、液体または固形の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶剤、または封入材)を含む。各担体は、製剤の他の成分と適合性があり、かつ、患者に害がないという意味で「許容」である。薬学的に許容される担体として利用できる材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類;(2)コーンスターチおよびジャガイモでんぷんなどのでんぷん類;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび座薬ワックスなどの賦形剤;(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油などの油脂;(10)プロピレングリコールなどのグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール類;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル類;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質なしの水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;(21)医薬製剤に使用される他の非毒性の適合性物質が挙げられる。
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤、ならびに、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、着香料および芳香剤、防腐剤ならびに酸化防止剤も組成物中に存在してもよい。
薬学的に許容される酸化防止剤の例としては、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ・トコフェロールなどの油溶性酸化防止剤;(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤が挙げられる。
本発明の化合物を含む組成物としては、経口、鼻腔、局所(口腔および舌下を含む)、直腸、膣内、噴霧投与、および/または非経口投与に適当なものが挙げられる。組成物は、便宜上、単位剤形で存在してもよく、製薬業界では周知のあらゆる方法で調製することができる。担体材料と組み合わせて単位剤形を作製することができる活性成分量は、治療される宿主および特定の投与様式に応じて変化する。担体材料と組み合わせて単位剤形を作製することができる活性成分量は、一般に、治療効果を生む化合物量である。一般に、100%中、活性成分の量は、約1%〜約99%、好ましくは、約5%〜約70%、より好ましくは、約10%〜約30%の範囲である。
これらの組成物の調製方法は、本発明の化合物を担体と、必要に応じて、1つ以上の補助成分と会合させる工程を含む。
一般に、本発明の化合物を液体担体または微粉化した固体担体もしくはその両方と均一かつ密接に会合させ、必要に応じて、製品に成形することによって、製剤は調製される。
経口投与に適した本発明の組成物は、それぞれが活性成分として本発明の化合物の定義量を含む、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(香料基剤、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカントを用いて)、粉末剤、顆粒剤、水性または非水性液体における溶液もしくは懸濁剤として、水中油または油中水の液体乳剤として、エリキシル剤またはシロップ剤として、香錠(ゼラチンおよびグリセリンなどの不活性基剤、またはスクロースおよびアカシアを用いて)として、および/またはマウスウォッシュなどの剤形であってもよい。化合物は、ボーラス剤、舐剤、またはペースト剤として投与してもよい。
経口投与用の本発明の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖剤、粉末剤、顆粒剤など)において、活性成分をクエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウム、および/または以下のいずれかなどの1つ以上の薬学的に許容される担体と混合する:(1)でんぷん類、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;(2)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/またはアカシアなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカでんぷん、アルギン酸、あるケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)第四アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(7)アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの潤滑剤;ならびに(10)着色剤。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、医薬組成物は、緩衝剤も含み得る。類似のタイプの固体組成物も同様に、ラクトースまたは乳糖と共に、高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いる軟および硬ハードゼラチンカプセルにおける充填剤として用いてもよい。
錠剤は、必要に応じて1つ以上の補助成分と共に圧縮または成形によって作製してもよい。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、グリコール酸ナトリウムスターチ、または架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤または分散剤を用いて調製してもよい。成形錠剤は、不活性な液体希釈剤によって湿らせた粉末化活性成分の混合物を、適当な機械で成型により作製してもよい。
錠剤、および、糖剤、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤などの本発明の医薬組成物の他の固体剤形は、必要に応じて、腸溶コーティングおよび製薬技術分野において周知の他のコーティングなどのコーティングおよび外皮によって作製または調製してもよい。それらは、例えば、所望の放出プロフィールを提供するために多様な割合のヒドロキシメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、リポソーム、またはミクロスフェアを用いて、その中の活性成分の放出の遅延または制御を提供するように調製してもよい。それらは、例えば、細菌捕獲濾紙を通して濾過することによって、または滅菌水もしくは他のいくつかの注射用媒体に使用直前に溶解することができる滅菌固体組成物の形で、滅菌剤を組み入れることによって滅菌してもよい。これらの組成物は、必要に応じて、乳白剤も含んでいてよく、なおかつ、活性成分(単数または複数)のみを放出する、あるいは選択的に、消化管の特定部分に必要に応じて遅れて活性成分を放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質およびワックスが挙げられる。活性成分は、必要に応じて、1つ以上の上記賦形剤と共にマイクロカプセル形態にすることもできる。
本発明の化合物の経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。活性成分の他に、液体剤形は、例えば水または他の溶媒などの当該技術分野において一般的に用いられる不活性希釈剤、溶解剤、ならびにエチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油脂(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの乳化剤、ならびにそれらの混合物を含んでもよい。
不活性希釈剤の他に、経口組成物には、湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤、甘味料、着香料、着色料、香料、および防腐剤のような補助剤を含んでもよい。
懸濁剤は、本発明の化合物の活性成分の他に、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカントなどの懸濁剤、ならびにそれらの混合物を含んでもよい。
直腸または膣内投与用の本発明の医薬組成物は、坐薬として提示することができ、これは、1つ以上の本発明の化合物を、1つ以上の適当な非刺激性賦形剤または担体と混合することにより調製することができる。該賦形剤または担体は、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール、座薬ワックス、またはサリチル酸塩を含み、室温では固体であるが、体温では液体になるため、直腸または膣腔で溶けて活性薬剤を放出する。
膣内投与に適した本発明の組成物としては、当該技術分野で適当であることが公知のかかる担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、発泡剤、または噴霧製剤も挙げられる。
本発明の化合物の局所または経皮投与用の剤形としては、粉末剤、噴霧剤、軟膏、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、溶液、パッチ、および吸入剤が挙げられる。本発明の活性化合物は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体、および、必要に応じて、任意の防腐剤、緩衝剤、または噴射剤と混合してもよい。
軟膏、ペースト剤、クリーム剤、およびゲル剤は、本発明の化合物の他に、動物性および植物性脂肪、油脂、ワックス、パラフィン、でんぷん、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、および酸化亜鉛などの賦形剤、またはそれらの混合物を含んでもよい。
粉末剤および噴霧剤は、本発明の化合物の他に、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末などの賦形剤、またはこれらの物質の混合物を含んでもよい。噴霧剤はさらに、クロロフルオロ炭化水素などの通常の噴射剤や、ブタンおよびプロパンなどの揮発性の未置換炭化水素を含んでいてもよい。
また、本発明の化合物は、エアロゾルで投与することができる。これは、化合物を含む水性エアロゾル、リポソーム調製物、または固体粒子を調製することで達成される。非水性(例:フルオロカーボン噴射剤)懸濁液を使用してもよい。音波ネブライザーは、薬剤を剪断にさらすのを最小にするので好ましく、その結果、化合物を分解し得る。
一般的に、水性エアロゾルは、従来の薬剤的に許容される担体および安定剤と共に薬剤の水溶液または懸濁液を配合することにより調製される。担体および安定剤は、特定の化合物の必要条件により異なるが、一般的には、非イオン性界面活性剤(ツイーン、プルロニック、またはポリエチレングリコール)、血清アルブミンなどの無害なタンパク質、ソルビタンエステル、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝液、塩、糖質または糖アルコールが挙げられる。エアロゾルは一般的に、アイソトニック溶液から調製される。
経皮パッチには、本発明の化合物を制御しながら体に送達するという追加の利点がある。かかる剤形は、薬剤を適切な媒質中に溶解または分散させることにより調製することができる。吸収増強剤を用いて、皮膚を横切る活性成分の流れを増大させることができる。かかる流れの速度は、速度調節膜を提供するか、もしくは高分子マトリクスまたはゲル中に活性成分を分散させるかのいずれかにより制御することができる。
眼用製剤、眼用軟膏、粉末剤、溶液等もまた、本発明の範囲内にあると考えられる。
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、意図する受容体の血液または懸濁剤あるいは増粘剤で製剤を等張性にする溶質、懸濁剤、もしくは増粘剤を含んでいてもよい、1つ以上の薬学的に許容される無菌な等張水性または非水性溶液、分散液、懸濁液または乳濁液、もしくは使用前に無菌注射可能溶液または懸濁液中に再構成してもよい無菌粉末と組み合わせて、1つ以上の本発明の化合物を含む。
本発明の医薬組成物に用いてもよい適当な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適当な混合物、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散の場合には、必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用により、維持することができる。
これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などの補助剤を含んでもよい。微生物の作用は、様々な抗菌性物質および抗真菌性物質、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノール(phenol sorbic acid)等を含めることにより確実に阻止することができる。糖質、塩化ナトリウム等のような等張剤を組成物中に含めることも望ましい。さらに、注射可能な医薬形態の持続性吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤を含めることにより行うことができる。
場合によっては、薬物の効果を延長させるために、皮下注射または筋肉内注射により薬物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性が乏しい結晶質または非晶質材料の懸濁液を使用することにより達成され得る。そこで、薬物の吸収速度は、溶解の速度に依存し、これは、結晶サイズおよび結晶質形態に依存し得る。あるいは、非経口投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油ビヒクル中に溶解または懸濁させることにより達成される。
注射可能なデポー剤形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性高分子中で本発明の化合物の微小被包マトリクスを形成することにより調製される。薬物対高分子の比率、および用いられる特定の高分子の性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生分解性高分子の例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー剤の注射可能製剤は、体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を捕捉することによっても調製される。
本発明の化合物をヒトおよび動物に製薬として投与する場合、それらを、それら自体で与えてもよいし、あるいは、例えば、0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の活性成分を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物として与えてもよい。
選択した投与経路にかかわらず、適当な水和形態で用いてもよい本発明の化合物、および/または本発明の医薬組成物は、当業者に公知の従来の方法により薬学的に許容される剤形に調合される。
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルおよび投与の時間経過は、患者にとって毒性ではない限り、特定の患者、組成物および投与様式に対する所望の治療反応を達成するのに効果的な活性成分の量を得るように変更することができる。一例の用量範囲は、1日当たり0.1〜10mgである。
本発明の化合物の好ましい用量は、患者が耐えることができ、かつ、重篤な副作用を起こさない最大量である。本発明の化合物は、約0.001mg〜約100mg/kg体重、約0.001〜約10mg/kg体重、あるいは約0.001mg〜約100mg/kg体重の濃度で投与するのが好ましい。前述した値の中間の範囲も本発明の一部であるものとする。
6.スクリーニング方法およびシステム
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の結合ポケットまたは同様の形状の相同性結合ポケットのいずれか一つあるいは両方の構造座標を含む機械読み取り可能な記憶媒体を提供する。これらのデータをコード化したかかる記憶媒体は、かかる結合ポケットを含む分子または分子複合体の三次元グラフィック表示をコンピュータ画面または同様の視覚装置上に表示することができる。
本発明は、上記の結合ポケットに結合する化合物の設計、評価、および同定方法についても提供する。従って、コンピュータは、結合ポケットを含む分子または分子複合体の三次元グラフィック構造を生成する。
別の実施形態において、本発明は、FAKまたはそのドメインの構造座標により定義される分子または分子複合体の三次元表示、あるいは、前記分子または分子複合体のホモログの三次元表示を生成するコンピュータを提供し、ここで、前記ホモログは、2.0(より好ましくは、1.5以下)オングストローム以下の前記アミノ酸の主鎖原子から二乗平均平方根偏差を有する結合ポケットを含む。
例示実施形態において、コンピュータまたはコンピュータシステムは、例えば、米国特許第5,978,740号および/または同第6,183,121号(参照により本明細書に引用したものとする)に開示されるように、当該技術分野において従来の構成要素を含むことができる。例えば、コンピュータシステムは、中央演算処理装置(「CPU」)、ワーキングメモリ(例えば、RAM(ランダムアクセスメモリ)あるいは「コア」メモリであってもよい)、大容量記憶メモリ(1つ以上のディスクドライブまたはCD−ROMドライブなど)、1つ以上の陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)表示端末、1つ以上のキーボード、1つ以上の入力回線、および1つ以上の出力回線を備えるコンピュータを含むことができ、これら全ては、従来のシステムバスにより相互接続される。
本発明の機械読み取り可能データは、データ回線で接続されたモデム(単数または複数)の使用を介してコンピュータに入力することができる。あるいは、またはさらに、入力ハードウェアは、CD−ROMドライブ、ディスクドライブ、またはフラッシュメモリを含んでもよい。表示端末と組み合わせて、キーボードは、入力装置としても使用できる。
出力回線によってコンピュータに連結された出力ハードウェアは、従来の装置によって同様に実施できる。例として、出力ハードウェアは、QUANTAまたはPYMOLなどのプログラムを用いて本発明の結合ポケットのグラフィック表示を表示するためのCRTあるいはLCD表示端末を含んでもよい。出力ハードウェアはまた、後の使用のためにシステム出力を保存するため、プリンタまたはディスクドライブを含んでもよい。
操作において、CPUは、種々の入力および出力装置と連係し、大容量記憶装置からのデータアクセスならびにワーキングメモリとの相互アクセスと連係し、データ処理工程の順序を決定する。市販のソフトウェアを含む多くのプログラムを用いて、本発明の機械読み取り可能データを処理することができる。
本発明による機械読み取り可能データを記憶するための磁気記憶媒体は、従来通りであってもよい。磁気データ記憶媒体は、上述のコンピュータシステムなどのシステムによって実行できる機械読み取り可能データをコード化することができる。媒体は、従来型である適当な基板と、極性または配向性を磁気的に変更することが可能な磁区を含む従来型である適当なコーティングを片面あるいは両面に有する、従来型のフロッピー(登録商標)ディスクまたはハードディスクであってもよい。また、媒体は、ディスクドライブまたは他のデータ記憶装置のスピンドルを受ける開口部(不図示)を有してもよい。
媒体の磁区は、本明細書に記載のコンピュータシステムなどのシステムによる実行のために、従来の方法で、本明細書中に記載されているような機械読み取り可能データをコード化するように、極性化または配向化される。
また、光学的に読込み可能なデータ記憶媒体は、機械読み取り可能データまたは一連の指示でコード化することができ、これは、コンピュータシステムによって実行することができる。媒体は、従来のコンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)、または、光学的に読み取り可能であり、かつ、光磁気的に書き込み可能な光磁気ディスクなどの再書き込み可能媒体であってもよい。
周知であるCD−ROMの場合には、ディスクコーティングは、反射的であり、機械読み取り可能データをコード化するため複数のピットで押印(impress)される。ピットの配列は、レーザ光をコーティング表面から反射させることで読み込まれる。好ましくは実質的に透明な保護コーティングを反射コーティングの表面上に設ける。
周知である光磁気ディスクの場合には、データ記録用コーティングは、ピットを有さないが、レーザにより一定の温度を超えて加熱された場合にその極性または配向が磁気的に変化され得る、複数の磁区を有する。この区の配向は、コーティングから反射されたレーザ光の偏光を測定することにより読み取ることができる。この区の配列は、上記のようにデータをコード化する。
構造データは、結合ポケットを含む分子または分子複合体の三次元構造にこれらの座標を変換させるソフトウェアでプログラム化されたコンピュータと組み合わせて用いる場合、創薬などの種々の目的に使用され得る。
例えば、データによりコード化される構造は、化学物質と会合するその能力について、コンピュータ上で評価され得る。FAKまたはその特異的ドメインの結合ポケットと会合する化学物質は、潜在的な薬物候補である。あるいは、データによりコード化された構造は、コンピュータ画面上にグラフィック三次元表示で表示され得る。これにより、構造の視覚的検査、ならびに化学物質との構造の会合の視覚的検査が可能になる。
従って、別の実施形態によれば、本発明は、化学物質が、a)FAKまたはその特異的ドメインの結合ポケットを含む分子または分子複合体、またはb)前記分子または分子複合体のホモログと会合する潜在力を評価するための方法に関し、ここで、前記ホモログは、2.0(より好ましくは、1.5)オングストローム以下の前記アミノ酸の主鎖原子から二乗平均平方根偏差を有する結合ポケットを含む。
本方法は以下の工程:
i)計算手段を用いて、化学物質と分子もしくは分子複合体の結合ポケットとの間の適合操作を行う工程と;
ii)この適合操作の結果を分析して、化学物質と結合ポケットとの間の会合を定量化する工程とを含む。本明細書で使用される「化学物質」という用語は、化学化合物、少なくとも2つの化学化合物の複合体、かかる化合物または複合体の断片のことを言う。
FAKまたはその特異的ドメインの本発明による結合ポケットに結合または該ポケットを阻害する化合物の設計は、一般に、いくつかの要因を考慮する必要がある。第一に、化学物質は、FAKまたはその特異的ドメインに関係する結合ポケットの一部または全部と物理的かつ構造的に会合できなければならない。この会合で重要な非共有結合性の分子間相互作用としては、水素結合、ファン・デル・ワールス相互作用、疎水性相互作用、および静電相互作用が挙げられる。第二に、化学物質は、FAKまたはその特異的ドメインに関係する結合ポケット(単数または複数)と直接的に会合できる配座を想定できなければならない。化学物質のある部分は、これらの会合に直接的には参加しないが、化学物質のこれらの部分もまた、分子の全体的な配座に影響を及ぼし得る。これは、力価に対して著しい影響をもつ可能性がある。かかる配座要件としては、結合ポケット(すなわち、結合ポケットまたはそのホモログと直接相互作用するいくつかの化学物質を含む物質の官能基間スペーシング)の全部または一部との関連における化学物質の全体的な三次元構造および配向が挙げられる。
化学物質がFAKまたはその特異的ドメインに関係する結合ポケットに及ぼす潜在的な阻害作用または結合効果は、それを実際に合成および試験する前にコンピュータモデリング技術を用いて解析することができる。所与の物質の理論構造が、それと標的の結合ポケット間の相互作用および会合が不十分であると示唆する場合、その物質の試験を回避する。しかしながら、コンピュータモデリングが強い相互作用を示した場合、次にその分子を合成し、その結合ポケットに結合する能力を試験する。これは、例えば、分子がFAKまたはその特異的ドメインの活性を阻害する能力を試験することで、例えば、本明細書に記載された、あるいは、当該技術分野において公知のアッセイを用いて達成することができる。こうして無効な化合物の合成を避けることができる。
FAKまたはその特異的ドメインに関係する結合ポケットの潜在的な阻害剤は、化学物質または断片をスクリーニングして選択する一連の工程により、FAKまたはその特異的ドメインに関係する結合ポケットと会合する能力をコンピュータ上で評価することができる。
当業者は、いくつかの方法の1つを用いて、FAKまたはその特異的ドメインに関係する結合ポケットと会合する能力について化学物質または断片をスクリーニングすることができる。このプロセスは、FAKまたはその特異的ドメインの本明細書に記載の構造座標、または機械読み取り可能な記憶媒体から作製された類似形状を定義する他の座標に基づいて、コンピュータ画面上で、例えば、FAKまたはその特異的ドメインに関係する結合ポケットを視覚検査することで開始される。選択された断片または化学物質は、様々な配向に配置し、上記で定義したようにその結合ポケット内でドッキングすることができる。ドッキングは、QuantaおよびDOCKなどのソフトウェアを使用し、続いて、CHARMMやAMBERなどを用いる基準分子力学力場についてのエネルギー最小化および分子動態により達成することができる。
特殊なコンピュータプログラム(例:当該技術分野において公知のもの、および/または市販のもの、および/または本明細書に記載のもの)も、断片または化学物質の選択処理を支援することができる。
適切な化学物質または断片が選択されると、それらを組み立てて単一の化合物または複合体にすることができる。組立てに先立って、標的の結合ポケットの構造座標に関して、コンピュータ画面に表示された三次元画像上で互いの断片の関係を視覚検査することができる。
上述のように一度に1つの断片または化学物質で段階的に結合ポケットの阻害剤の構築を進行する代わりに、空の活性部位または必要に応じて公知の阻害剤(単数または複数)のある部分(単数または複数)を含むもののいずれかを用いて、阻害化合物または他の結合化合物を全体として、または「デノボ(de novo)」設計することができる。当該技術分野において公知のデノボリガンド設計法は多数あり、そのうちのいくつかは、市販されている(例:Tripos Associates(ミズーリ州セントルイス)から入手可能なLeapFrog)。
本発明に従って、他の分子モデリング技術も用いることができる[例えば、N.C.Cohenら、「Molecular Modeling Software and Methods for Medicinal Chemistry,J.Med.Chem.,33,pp.883−894(1990)を参照されたい;M.A.Navia and M.A.Murcko,「The Use of Structural Information in Drug Design」,Current Opinions in Structural Biology,2,pp.202−210(1992);L.M.Balbesら、「A Perspective of Modern Methods in Computer−Aided Drug Design」,in Reviews in Computational Chemistry,Vol.5,K.B.Lipkowitz and D.B.Boyd,Eds.,VCH,New York,pp.337−380(1994)も参照されたい;W.C.Guida,「Software For Structure−Based Drug Design」,Curr.Opin.Struct.Biology,4,pp.777−781(1994)も参照されたい]。
化合物が設計または選択されると、化学物質が結合ポケットに結合できる効率についてコンピュータ評価により試験し、最適化することができる。
化合物の変形エネルギーおよび静電相互作用を評価するための特定のコンピュータソフトウェアを当該技術分野において利用することができる。かかる用途用に設計されたプログラムの例としては、AMBER;QUANTA/CHARMM(Accelrys,Inc.,ウィスコンシン州マディソン)などが挙げられる。これらのプログラムは、例えば、市販のグラフィックスワークステーションを用いて実行することができる。他のハードウェアシステムおよびソフトウェアパッケージは、当業者に公知である。
別の技術としては、例えば、本明細書に記載の化合物の仮想ライブラリのin silicoスクリーニングが挙げられる。何千もの多くの化合物を迅速にスクリーニングでき、最良の仮想化合物をさらなるスクリーニング用に選択することができる(例:合成およびin vitro試験により)。FAKまたはその特異的ドメインの結合ポケットに全体的または部分的に結合することができる化学物質または化合物について、小分子データベースをスクリーニングすることができる。このスクリーニングにおいて、かかる化学物質が結合部位にフィットする性質は、形状相補性または推定相互作用エネルギーのいずれかにより判断することができる。
実施例
本発明の範囲を限定することなく説明するためのものである以下の実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。
材料
細胞株および培養−BT474乳癌細胞を、10%胎仔ウシ血清(FBS)、5μg/mlのインスリン、および1μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI1640培地で維持した。MCF−7細胞株をATCCから入手し、製造業者のプロトコルに従って維持した。結腸癌細胞株であるHT−29をMcCoy’s5A+10%FBS培地で維持した。MCF10A細胞および他の癌細胞株をATCCプロトコルに従って維持した。Panc−1およびMiapaca−2癌細胞、正常ヒト線維芽細胞、および良性ヒト乳房上皮細胞をATCCから入手し、10%胎仔ウシ血清(FBS)、5μg/mlのインスリン、および1μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI1640培地で維持した。
小分子阻害剤化合物−FAKのY397部位に最良適合するとDOCKプログラムによって検出された36個の化合物を米国国立癌研究所、開発治療プログラム(NCI/DTP)から無料で入手した。各化合物を25mMの濃度で水またはDMSO中に可溶化し、−20℃および−80℃で保存した。Y15化合物をSigmaから入手し、in vitroで生化学分析を行い、マウスに注入してin−vivo検査した。Y15を25mMの濃度で水中に可溶化し、−20℃および−80℃で保存した。
FAK阻害剤−FAKキナーゼ阻害剤であるNVP−TAE226(TAE226と呼ばれる)をNovartis Inc.から入手した(15)。TAE226を25mMでDMSOに溶解させた。化合物の構造および治療効果は(15、16、18)に記載されている。TAE226阻害剤は、実験におけるFAK阻害の対照として用いた。TAE226阻害剤は、in vitro実験におけるFAK阻害の対照として用いた。
抗体−N末端FAKに対するモノクローナル抗FAK(4.47)抗体と、モノクローナル抗パキシリン抗体は、Upstate Biotechnology,Incから入手した。ポリクローナル抗リン酸化Tyr397−FAKおよび抗リン酸化Tyr−418−Src抗体は、Biosource Incから入手した。モノクローナル抗カスパーゼ3抗体は、Transduction Labsから入手した。モノクローナル抗α−チューブリンおよびβ−アクチン抗体は、Sigmaから入手した。ポリクローナル抗c−Src抗体は、Santa Cruz Inc.から入手し、ウエスタンブロットに用いた。モノクローナル抗Src抗体(クローン327)は、Oncogene Research Products Incから入手した。モノクローナルおよびERK抗体は、Millipore(ニューヨーク州レークプラシッド)から入手した。カスパーゼ−3およびKi67に対する抗体は、それぞれ、DAKO(カリフォルニア州カーピンテリア)およびCell Signaling(マサチューセッツ州デンバー)から入手した。
実施例1
強力なFAK小分子阻害剤の構造ベース分子ドッキング
FAKの結晶構造であるN−末端FERMドメイン(20)をFAK阻害剤のドッキングに用いた。分子ドッキングを機能試験と組み合わせた、構造に基づくアプローチを用いた。薬らしい特性をもつ(リピンスキーの法則に従う)20,000個の小分子化合物を、DOCK5.1を用いて、ヒトFAK結晶構造のFATドメインのN末端ドメインに100個の異なる配向でドッキングさせた。Pyk2およびFAKは、NおよびC末端の両端で非触媒ドメインに挟まれているチロシンキナーゼドメインと同様の構造機構を共有する。これら2つのキナーゼは、中央の触媒ドメインではおよそ60%の同一性であり、NおよびC末端ドメインの両方ではおよそ40%の同一性を共有する。Pyk2とFAKとは配列相同性が高く、かつ、全体の機構が類似しているため、Y15とこれら両方の分子との相互作用を比較することは特に興味深い。リピンスキーの法則に従って、Y15は、上述したようにDOCK5.1プログラムを用いて、ヒト結晶構造を用いてFAKおよびPyk2のN末端ドメインに100個の異なる配向でドッキングさせた。ドッキング計算は、16個のプロセッサを用いて、フロリダ大学高性能コンピューティング・スーパーコンピュータークラスター上で行った(http://hpc.ufl.edu)。
全てのドッキング計算は、クリーク−マッチングアルゴリズムを用いて、カリフォルニア大学(サンフランシスコ)のDOCK5.1プログラムで行い、Y15をFAKのY397部位とPyk2のアミノ末端に配向させた。水素原子および部分電荷のファイルは、SYBDBプログラムを用いて作成した。
実施例2:
細胞生存性アッセイ−細胞を種々のペプチド濃度のペプチドにて24時間処理した。Promega Viability kit(イリノイ州マディソン)からの3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム化合物を加え、細胞を37℃で1〜2時間インキュベートした。96プレート上の光学濃度を490nmでマイクロプレートリーダーにより分析し、細胞生存性を測定した。さらに、Y15による処理の24時間後に、細胞をトリパンブルーで染色し、陽性に染色された細胞の割合を血球計により測定した。
細胞接着アッセイ−ポリ−L−リジンまたはコラーゲン(5μg/ml)を被覆した96ウェルプレートをブロッキングバッファー(0.5%BSAの培地)で37℃にて1時間ブロックした。細胞を薬剤で3時間前処理し、プレートして、4x105細胞に接着させた。細胞を37℃にて1時間インキュベートし、3.7%ホルムアルデヒドで固定し、PBS中の0.1%BSAで洗浄し、クリスタルバイオレット(2%エタノール中に5mg/ml)に10分間染色した。次いで、2%SDSを乾燥プレートに加え、590nmの光学濃度を測定し、細胞接着を検出した。
ウェスタンブロット−細胞または均質な腫瘍の試料を冷却1xPBSで2回洗浄し、氷上で30分間バッファーに溶解させた。該バッファーには、50mMのトリス−HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、1% トリトン−X、0.5% NaDOC、0.1% SDS、5mMのEDTA、50mMのNaF、1mMのNaVO3、10%グリセロール、およびプロテアーゼ阻害剤:10μg/mlのロイペプチン、10μg/mlのPMSF、ならびに1μg/mlのアプロチニンとを含有する。溶解物を4℃にて10,000rpm、30分間遠心分離した。Bio−Radキットを用いてタンパク質濃度を測定した。ボイルした試料をReady SDS−10%PAGEゲル(Bio Rad,Inc)上に載せ、タンパク質特異抗体を用いてウェスタンブロット分析した。Renaissanceケミルミネッセンス試薬(NEN Life Science Products,Inc)で免疫ブロットを現像した。
免疫沈降−標準プロトコルに従って免疫沈降を行った。簡単に言えば、等量のタンパク質をもつ前清浄化(pre−cleared)溶解物を1μgの一次抗体と、30μlのA/Gアガロースビーズとで一晩4℃でインキュベートした。沈殿物をリシスバッファーで3回洗浄し、2×レムリバッファー(Laemmli buffer)で再懸濁させた。ボイルした試料を前述したようにウエスタンブロットに用いた。
剥離アッセイ−細胞を阻害剤有りあるいは無しで24時間プレートし、剥離し吸着した細胞を血球計でカウントした。剥離細胞数を全細胞数で割って剥離の割合を算出した。剥離細胞の割合は3回の独立した実験で算出した。
アポトーシスアッセイ−剥離細胞を回収し、1×PBS溶液中の3.7%ホルムアルデヒドで固定し、アポトーシスアッセイを行った。Hoechst33342染色によってアポトーシスの検出を行った。アポトーシス細胞の割合は、螢光顕微鏡によって様々な領域で3回の独立した実験で、アポトーシス剥離細胞を全細胞数で割った比として算出した。各実験において、一回の処理につき300個の細胞をカウントした。
In vitroキナーゼアッセイ−0.1μgの精製FAKタンパク質を含むキナーゼバッファー(20mM HEPES、pH7.4、5mM MgCl2、5mM MnCl2、0.1mM Na3VO4)中の10μCiの[γ−32P]−ATPを、10μCiの[γ−32P]−ATPを含むキナーゼバッファーでインキュベートした。キナーゼ反応を室温で5分間行い、2×レムリバッファーを加えて反応を停止させた。タンパク質をReady SDS−10%PAGEゲル上で分離させ、リン酸化エノラーゼをオートラジオグラフィーによって視覚化した。
KinaseProfilerスクリーニング−http://www.millipore.com/drugdiscovery/dd3/KinaseProfilerから入手可能なKinaseProfiler(登録商標)サービス(Millipore)でキナーゼ特異性スクリーニングを行った。スクリーニングは、Milliporeプロトコルに従って、1μMのY15、10μMのATP、ならびに、9個の組み換え体キナーゼ上のキナーゼ基質で行った。
ヌードマウス内の腫瘍増殖−生後6週の雌のヌードマウスをHarlan Laboratoryから購入した。マウスは動物施設で維持し、全ての実験は、NIH動物実験に関するガイドライン、ならびにUF動物管理委員会によって承認されたIACUCプロトコルに従って行った。BT474細胞を2百万細胞/皮下注射で注入した。注入した翌日に、30mg/kgの1日用量で5日/週で3週間にわたって、薬剤をIP注射で導入した。Panc−1細胞を2×106細胞/皮下注射で注入した。予備実験では、異なる用量の化合物をマウスに導入し、最適な非毒性用量として30mg/kgを選択した。この用量が腫瘍増殖を阻害する能力について測定した。腫瘍接種した翌日、30mg/kgの1日用量で5日/週で3週間にわたって、化合物をIP注射で導入した。次に、ゲムシタビン化学療法の存在下でこの化合物の効果について評価した。腫瘍の直径をキャリパーで測定し、この式=(幅)2×長さ/2を用いて腫瘍体積(mm3)を算出した。実験の最後に、腫瘍の重量および体積を求めた。
免疫組織化学染色−上述したように、パラフィン包埋腫瘍試料を含むスライド上のY397抗体にてFAK染色を行った(21)。パラフィン包埋腫瘍試料を含むスライド上で、カスパーゼ−3(1:400希釈)およびKi67(1:500希釈)に対する免疫組織化学染色を行った(Golubovskaya VM,Finch R,Kweh F,Massoll NA,Campbell−Thompson M,Wallace MR,Cance WG.p53はヒト腫瘍細胞のFAK発現を調節する。Mol Carcinog 2007;47:373−82を参照されたい)。
統計分析−必要に応じて、ステューデントt検定を行い、有意性を判断した。P<0.05におけるデータ間の差異は、有意であると見なした。
実施例3
構造ベース分子ドッキング法によるFAKのY397部位の標的化、およびNCIデータベーススクリーニングにより、細胞生存を減少させるY397薬剤を示す。
FAKのN末端(FERM)ドメインの結晶構造は、近年、同定されている(20)。ハイスループットスクリーニングの代わりに、分子ドッキングと機能試験とを組み合わせた構造に基づくアプローチを用いた。公知の三次元構造をもつ20,000個以上の化合物を、Y397部位を含むFAKの構造ポケットにドッキングさせた。この方法では、NCI/DTP(原子座標および小分子)データベースを、DOCK5.1プログラムの改良された分子ドッキングおよびスコアリングアルゴリズムと組み合わせた(19)。20,000個の小分子化合物の各々は、DOCK5.1.0を用いて100個の異なる配向でドッキングさせた。一例として、FAKのY397部位にドッキングされたかかる化合物の1つを図1に示す。Y397 FAKとの相互作用でスコアが最も高かった、>20,000個の化合物のうちの36個の化合物はNCIから入手し、MTTアッセイによって癌細胞の生存における効果について試験した。
FAKホモログであるPyk2のアミノ末端上にY15をドッキングさせた。ファンデルワールス力および静電力を利用して、Pyk2の上にドッキングしたY15に対する最も高いスコアは−14.2であった。FAKにおいてY15に結合するポケットは、Pyk2上には存在しない点に留意されたい。Y15がFAK(−38.5)上にドッキングすることを示すスコアは、Pyk2よりもはるかに高い。
6種類の異なる癌細胞株:BT474、T47D、MCF−7乳癌細胞株、HT29結腸癌、C8161メラノーマ、およびA549肺癌細胞株について、FAKのY397部位を標的にする36個の化合物で試験した。これらの化合物のうちの1つであるY15化合物は、全癌細胞株における細胞生存を最大限に減少させた(図2Aおよび図2B)。図2は、T47D乳癌細胞(図2A)およびC8161メラノーマ癌細胞(図2B)の生存度が減少していることを示し、公知のFAK触媒的阻害剤であるTAE226(Novartis)と比較している。Y15は、Srcが過剰発現し、かつ、FAKが活性化した(図示せず)耐性乳癌細胞の細胞生存を効果的に阻止した。Y397部位にドッキングするY15の構造、およびこの化合物名である1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリドを図3に示す(簡潔にするために、テキスト中ではこの化合物をY15と呼ぶ)。
実施例4
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)は、細胞生存を用量依存的に阻害する。
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)が細胞生存を用量依存的に阻害するかどうか判断するため、異なる用量0、0.1、1、10、30、50、および100μMのY15でMTTアッセイを行った(図4A)。BT474細胞の生存度は、10μMの用量で減少し始め、50〜100μMの用量のY15薬剤で著しく阻止された。従って、Y15は、癌細胞の生存を用量依存的に阻止する。
MTTを用いて、膵臓腫瘍細胞生存におけるY15の効果を72時間で試験した。Y15は、1μMの用量で膵臓癌細胞の生存を阻害し始め、より高用量で効果は増した(図8Aおよび図8B)。従って、Y15は、膵臓癌細胞の生存度を用量依存的に阻害する。Y15の効果について、FAKヌル線維芽細胞とFAK野生型線維芽細胞とで比較した。0.1μMの用量から出発し、Y15は、FAKヌル線維芽細胞と比較してFAK野生型線維芽細胞の生存度を減少させた(p<0.05、図8C)。これにより、Y15が効果を有するためにFAKの存在が重要であることが示される。
実施例5
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)は、Y397−FAKリン酸化を特異的に阻止する。
Y397リン酸化におけるY15の効果を試験するため、BT474乳癌細胞を100μM用量のY15で処理し、Y397FAK抗体でウエスタンブロットを行った(図4B)。Y15は、FAKのY397リン酸化を特異的に阻害し、FAKの下流基質パキシリンであるY118−パキシリンのリン酸化も特異的に阻害した(図4B)。Y15は、VEGFR−3およびc−Src(図示せず)などの他のタンパク質のリン酸化については阻害しなかった。従って、Y15の効果は、FAKに特異的であった。全てのFAK自動リン酸化活性におけるY15の効果を試験するため、FAKを免疫沈降させ、P−チロシン抗体でウエスタンブロットを行った(図4C)。従って、FAKのY397を標的にし、かつ、細胞生存を減少させるY15は、Y397および全FAKリン酸化を特異的に阻害する。
実施例6
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)は、FAK自動リン酸化を用量依存的に阻止する。
次に、FAK Y397リン酸化を用量依存的に阻害するかについてY15の効果を分析した。BT474乳癌細胞を0、0.1、1、10、50、および100μMのY15薬剤で24時間処理し、Y397抗体でウエスタンブロットを行った(図4D)。Y15は、Y397リン酸化を用量依存的に減少させた。高阻害および最大阻害はそれぞれ50μMおよび100μMの用量で検出され、細胞生存への効果と一致している。100μMの用量で、Y15は、TAE226阻害剤(Novartis)と同じ阻害を有した(図4D)。従って、Y15薬剤である1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリドは、FAKを用量依存的に阻害する。
Y397リン酸化におけるY15の効果を試験するため、Panc−1膵臓癌細胞をY15(用量を増していく)もしくはTAE226で24時間処理し、Y397 FAK抗体でウエスタンブロットを行った(図9A)。Y15は、Panc−1細胞において0.1μMでFAKのY397リン酸化を阻害し始めた。100μMの用量で、Y15は、TAE226と同等もしくはそれよりも高い阻害を有した。注目すべきは、全FAKがより高用量のY15で下方調節されることである。Y15は、FAK下流基質であるパキシリンのリン酸化も阻止した(図9B)。全パキシリンは、FAKと同様に、より高用量で減少した。従って、Y15である1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリドは、FAKリン酸化を用量依存的に阻害する。Miapaca−2細胞についても同様の結果が見られた。
実施例7
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)は、FAK自動リン酸化を時間依存的に阻止する。
次に、Y15がFAK Y397リン酸化を時間依存的に阻害するかについて分析した。BT474細胞を100μMのY15で0、1、4、8、および24時間処理し、次いで、Y397抗体でウエスタンブロットを行った(図4E)。Y15で4時間処理した場合にはY397リン酸化を著しく減少させなかったが、8時間の場合にはY397リン酸化を完全に阻止し、FAKを下方調節するのに十分であったことを結果は示している。対照阻害剤であるTAE226(Novartis)も100μMでY397リン酸化を完全に阻止した。Y15薬剤と同様に、TAE226も全FAKを下方調節した(図4E)。従って、Y15がFAK Y397リン酸化を時間依存的に阻害し、FAKを下方調節することがデータにより示される。
実施例8
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)は、FAK自動リン酸化の直接阻害剤である。
Y15がFAKの直接阻害剤であるかどうか試験するため、(22)に記載の、バキュロウイルス精製FAKタンパク質で単離した組み換え体でin vitroキナーゼアッセイを行った。1〜100μMの用量でin vitroキナーゼアッセイを行った。陽性対照としてTAE226(Novartis)阻害剤を用いた。Y15は、1μMの用量から始まって、FAKのみならず対照TAE226の自動リン酸化活性を直接阻止した(図5)。さらに、Y15は、材料および方法に記載のように、市販の9つの他の組み換えキナーゼ(c−RAF、c−Src、EGFR、VEGFR−3、IGF−1、Met、PDGFR−α、Pyk2、PI3K(p110δ/p85α)(Upstate Biotechnology,Inc)によるin vitroキナーゼアッセイによってスクリーニングした。Y15は、FAKと同様に1μMの用量で他のキナーゼによるキナーゼ活性を著しく減少させなかった(図5)。従って、Y15は、FAK自動リン酸化の直接および特異的阻害剤である。
実施例9
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)は、用量依存的に細胞剥離させるが、FAK自動リン酸化を阻害する高濃度では細胞に対し非細胞毒性である。
乳癌細胞におけるY15薬剤の細胞毒性効果を試験するため、BT474細胞を1μMおよび100μMのY15薬剤で24時間処理した。Y15処理BT474細胞における剥離およびアポトーシスの分析を行った(図6A)。Y15は、BT474細胞を用量依存的に剥離させた(図6A)。10μMの用量では、Y15はBT474細胞において8%しか剥離を引き起こさなかったが、50μMの用量では、剥離は38%と同程度であった。100〜200μMの用量では、剥離はそれぞれ58%〜66%に到達した。Y15は、10μMで30%剥離、50μMの用量で>80%剥離を誘発したTAE226(Novartis)阻害剤よりも剥離が少なかった。従って、Y15は、用量依存的な細胞剥離を効果的に引き起こした。
アポトーシスにおけるY15の効果を試験するため、未処理細胞およびY15処理細胞にHoechst染色を行った。50〜100μMの高い用量で、Y15は、BT474細胞で著しいアポトーシスを引き起こさず、アポトーシスレベルは6%未満であった(図6B)。これに対し、TAE226阻害剤(Novartis)は、より高レベルのアポトーシスを引き起こし、10μMでは35%と同程度であったが、20μMの用量では69%に到達した(図6B)。Y15およびTAE226−処理細胞のHoechst染色した核を図6Cに示す。アポトーシス核は、Y15−処理細胞では200μMの用量で検出されなかったが、TAE226−処理細胞では20μMの用量で検出された(図6C)。Y15薬剤は50μMおよび100〜200μMの用量で著しいアポトーシスを引き起こさないので、細胞内FAKキナーゼ阻害のメカニズムは細胞傷害活性と無関係である。従って、Y15阻害剤は、細胞に非毒性であり、アポトーシスを引き起こさない。
アポトーシスにおけるY15の効果を試験するため、未処理細胞およびY15−処理細胞にHoechst染色を行った。高用量(50〜100μM)で、Y15は、Panc−1細胞におけるアポトーシスを著しくではないが少し(10%未満)増加させた。Miapaca−2細胞においても同様の効果が見られた。同様の用量のY15と比較して、TAE226(Novartis)は、48時間の処理後に僅かに高いレベルのアポトーシスを引き起こした。Y15およびTAE226−処理細胞のHoechst染色した核は、50μMの用量ではY15−処理細胞におけるアポトーシス核は検出されないが、TAE226−処理細胞においては50μMの用量で検出される。Y15は高用量で著しいアポトーシスを引き起こさないので、細胞内FAKキナーゼ阻害のメカニズムはアポトーシス細胞死と無関係である。
Panc−1およびMiapaca−2細胞のトリパンブルー染色により、細胞生存が減少したことが示される。これは、Y15の用量の増加にともなうネクローシスを示唆している(図10D)。これは、正常乳腺上皮細胞(MCF10A)に見られる効果とは異なっている。MCF10Aは、最大10μMの用量では細胞生存の減少が見られない。
実施例10
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)は、細胞接着を用量依存的に阻害する。
細胞接着におけるY15の効果を試験するため、コラーゲン被覆プレート上でBT474を異なる用量のY15と、100μMのTAE226とで処理し、接着を測定した。Y15は細胞接着を用量依存的に阻害した(図6D)。50μMから始まって、細胞接着は著しく減少した。FAKのY397リン酸化がこれらの用量で減少したことと一致する。100μMの用量で、Y15はTAE−226薬剤のように細胞接着を著しく阻害した(図6D)。従って、Y15は細胞接着を効果的に阻止する。
細胞接着におけるY15の効果を試験するため、コラーゲン被覆プレート上で膵臓腫瘍細胞を異なる用量のY15と、50μMのTAE226とで処理し、接着を測定した。Y15は細胞接着を用量依存的に阻害した。10μMの用量から始まって、細胞接着は著しく減少した。FAKのY397リン酸化がこれらの用量で減少したことと一致する。用量50μMのY15は、50μMのTAE226と同様に接着を減少させた。従って、Y15は細胞接着を用量依存的に効果的に阻止する。
実施例11
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)は、in vivoで乳房腫瘍増殖を阻害し、Y397−FAKを減少させる。
Y15薬剤のin vivo効果を検出するため、BT474細胞をヌードマウスに皮下導入した。まず、最適用量は30mg/kgであると判断した。マウスを30mg/kg用量のY15で5日/週処理し、腫瘍増殖を未処理マウスと比較した。Y15は、in vivoでの腫瘍増殖を著しく阻止した(図7A)。Y15は、未処理マウスと比較して腫瘍重量が著しく減少し(図7B、上部パネル)、腫瘍体積は、未処理試料のものよりも著しく小さかった(図7B、下部パネル)。未処理マウスおよびY15で処理したマウスから腫瘍を単離し、ウエスタンブロットによってY397レベルをプローブした。未処理マウスからの腫瘍は、Y15で処理した腫瘍よりもY397リン酸化のレベルが著しく高かったが、全FAKレベルは同じであった(図7C)。Y397抗体をもつ腫瘍の免疫組織化学的染色によっても同様の結果が得られた(図7D)。Y15−処理マウスからの腫瘍は、未処理マウスからの腫瘍よりもY397−FAKリン酸化が少なかった。従って、Y15は、乳癌形成を著しく抑制した。これは、in vitro生存度および生化学的データと一致している。
実施例12
従って、構造ベース分子ドッキングおよびNCIデータベーススクリーニング法によるFAK Y397の標的化により、20,000個の異なる化合物のうち36個の化合物はこのポケットに最良適合することが分かった。これらの化合物の中で、1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15化合物と呼ぶ)が、いくつかの癌細胞株における細胞生存を最も効果的に減少させた。
重要なのは、この化合物が、Y397リン酸化および全FAKリン酸化を減少させたことである。FAK自動リン酸化をin vitroで直接減少させた。Y15は、FAKリン酸化を用量依存的かつ時間依存的に減少させ、なおかつ、100μMの高用量でも著しいアポトーシスが検出されなかったため細胞には非細胞毒性であった。Y15は、細胞剥離を増加させ、細胞接着を減少させた。in vivoに加えて、Y15化合物は、マウスに皮下注射したBT474乳癌細胞の腫瘍増殖を著しく阻害した。Y15で処理したマウスからの腫瘍は、FAKのY397リン酸化を減少させた。従って、FAKのY397部位を標的とするY15阻害剤は、抗癌治療に有効であり得る。
従って、DOCKプログラムがシリコベース戦略(silico−based strategies)を用いてFAKの新規阻害剤を同定する原理証明を示していることを本報告書は示している。本方法は、Jak2キナーゼに対しては以前うまく用いられたが(19)、FAKキナーゼに対してや、FAKの主要なリン酸化部位を標的化することについては一度も報告されなかった。従って、他のリン酸化を標的にするスクリーニング化合物は、潜在的に治療に用いることが可能な新規阻害剤も提供することができる。
Y15(1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド)の分子構造は公知であり、これは、単環芳香環を含む。従って、この単環芳香環化合物は、将来的な化学合成誘導体や新規のFAK阻害剤に対する潜在的なリード化合物として機能することができる。
最も重要な発見は、Y15がマウスの腫瘍形成をin vivoで阻止し、これらの薬剤が治療への可能性を示したことである。2つの他の新規FAK薬剤も報告されており、1つはPfizerによるPF−228、もう1つはNovartisによるTAE226である。これらの薬剤は両方ともそれ自体の限界を有している。すなわち、第1の薬剤は細胞生存には効果がなく、腫瘍形成における報告が無いことが知られている。第2の薬剤は、IGFR−1、MAPK、およびAKTにおける阻害効果を有する(16)。Y15薬剤は、細胞接着を用量依存的に阻止した。Y15が細胞接着への阻害が少なく、かつ、TAE226薬剤よりも剥離が少なかったという事実は、TAE226薬剤が他のキナーゼと交差反応するため、TAE226薬剤のFAKへの特異性が少ないと説明することができる。Y15は、FAKのY397リン酸化を特異的に阻止し、他のキナーゼを阻害しなかった。Y15薬剤は、TAE226よりも少ない用量で腫瘍形成を阻止した。グリオーマ腫瘍では、TAE226は50〜75mg/kgで用いた(16)。卵巣腫瘍モデルでは、TAE226単独では30mg/kgで効果がそれ程なかったため、腫瘍増殖を減少させるためにドセタキセル処理をさらに要した(18)。乳癌モデルでは、Y15単独でも30mg/kg用量で腫瘍増殖の>74%を効果的に阻害した。従って、腫瘍形成を阻止する新規のより特異的なFAK阻害剤を開発することがこの分野において重要である。
従って、本報告書により、FAKのY397自動リン酸化部位を直接標的にし、リン酸化を減少させ、細胞生存および接着をin vitroで阻害し、なおかつ、腫瘍形成をin vivoで阻止した小分子FAK阻害剤である1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリドの同定へとつながった。従って、この化合物およびその誘導体は将来の治療にとって重要であり得る。
実施例13
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)は、24時間でFAK自動リン酸化を阻止する。
次に、Y15がFAK Y397リン酸化を時間依存的に阻害するかについて分析した。膵臓腫瘍細胞を100μMのY15で0、1、4、6、および24時間処理し、次いで、Y397抗体でウエスタンブロットを行った。Y15による治療が6時間以下ではY397リン酸化は著しく減少しなかったが、24時間ではY397リン酸化を完全に阻止し、FAKを下方調節するのに十分であったことを結果は示している。
実施例14
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)は、ERK1/2リン酸化を阻止する。
ERK1/2は、生存シグナル伝達におけるFAKからの下流プレーヤーであることが知られている。FAKシグナル伝達におけるY15の効果を実証するため、ERK1/2リン酸化における効果を試験した。p−ERKを下方調節するY15の能力について評価した。p−FAKにおけるY15の効果と一致して、p−ERKは両方の細胞株で用量依存的に下方調節される。Miapaca−2細胞についても同様の結果が見られた。
実施例15
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)は、細胞剥離を用量依存的に引き起こす。
膵臓癌細胞におけるY15阻害剤の細胞毒性効果を試験するため、Panc−1細胞をY15阻害剤(用量を増していく)で24時間および48時間処理した。剥離およびアポトーシスの分析を種々の時点で行った。Y15は、剥離を用量依存的に増加させた。10μMの用量で48時間後、Y15はPanc−1細胞を13%剥離させたが、50μMの用量で剥離は32%に相当した。Y15は、TAE226(Novartis)阻害剤よりも多くの剥離を引き起こした。従って、Y15は、細胞剥離を用量依存的に効果的に引き起こした。著しい剥離が3μMの用量から始まったMiapaca−2細胞においても同様の結果が見られた。Y15は、10μMまでの用量では、モルホロジーあるいは正常ヒト線維芽細胞の細胞剥離の増加に著しい変化は引き起こさなかった。従って、両方の膵臓癌細胞株は、正常な線維芽細胞と比較してY15誘発剥離により鋭敏である。
実施例16
1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)は、ヒト膵臓腫瘍増殖をin vivoで阻害し、Y397−FAKリン酸化を減少させる。
ゲムシタビンは、膵臓癌の患者の治療において最も活性のある薬剤と考えられる。従って、Y15もしくはゲムシタビン単独で、あるいは、Y15+ゲムシタビン化学療法の組み合わせの存在下で、膵臓癌細胞の生存をin−vitroで評価した。図11Aに示すように、ゲムシタビン(10μM)化学療法+Y15(10μM)治療の組み合わせによって、ゲムシタビン(10μM)もしくはY15(10μM)の単独治療と比較して、細胞生存を著しく減少させた。その後、Y15のin−vivo効果を評価するため、膵臓腫瘍細胞をヌードマウスに皮下導入した。まず、最適な非毒性用量は30mg/kgであると判断した。マウスを腹腔内Y15(30mg/kg)で5日/週処理し、偽薬の食塩水対照を受けたマウスと腫瘍増殖を比較した。動物の体重減少または死は、36日間のいずれの腫瘍増殖阻害実験でも観察されなかった(データは図示せず)。次に、ヌードマウスにPanc−1腫瘍細胞を皮下位置に注射した。腫瘍増殖の1週間後、動物(n=5/群)を無作為化し、PBS、Y15単独(30mg/kg)、ゲムシタビン単独(30mg/kg)、またはY15(30mg/kg)+ゲムシタビン(30mg/kg)の腹腔内注射を毎日行った。図11Bに示すように、単独で与えた場合、Y15またはゲムシタビンは腫瘍増殖を阻害した。Y15は、ゲムシタビン単独よりも腫瘍増殖をさらに良好に阻害した。重要なのは、Y15+ゲムシタビン治療の組み合わせが、いずれか単独の場合と比較して腫瘍増殖を著しく阻害したことである。さらに、Y15+ゲムシタビンの併用治療により、他の群と比較して腫瘍重量が著しく減少した。36日目に、最後の治療後にマウスを犠牲にし、ウエスタンブロットによってFAK−Y397レベルについて腫瘍を分析した。Y15処理マウスからの腫瘍は、PBS(対照)で処理した腫瘍よりもY397リン酸化レベルは低かった。従って、Y15は膵臓癌腫瘍形成を著しく抑制し、ゲムシタビン化学療法との相乗効果を有した。これらの所見は、in−vitroの生存度データと一致する。
4つの群全ての腫瘍から免疫組織化学を行い、カスパーゼ−3およびKi67を評価した。カスパーゼ−3染色により、Y15単独(6%)、ゲムシタビン単独(2%)、またはY15+ゲムシタビン(2%)で処理した腫瘍においてアポトーシス細胞の著しい増加はないことが分かった。しかしながら、Ki67染色は、Y15+ゲムシタビンで処理した腫瘍で最も減少した。
(図の説明)
(図1Aおよび図1B)構造ベース分子ドッキング法によるFAKのY397部位の標的化。NCl化合物の1つがFAKのY397部位の標的になっている(矢印で示す)(20)で報告されたFAK(FERM)ドメインの結晶構造(A)。Y397部位およびこの例示化合物の拡大画像(B)。
(図2Aおよび図2B)乳癌およびメラノーマ細胞株の生存度における、Y397部位を標的にする化合物の効果。36個の薬剤を100μMの用量で細胞に24時間加え、材料および方法に記載された通りにMTTアッセイを行った。公知のFAK阻害剤であるTAE226(Novartis)を対照として用いた。T47D乳癌細胞株(A)およびC8161メラノーマ細胞株(B)。バーは、平均±標準偏差を示す。
(図3)1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド(Y15)化合物の構造。上部パネル:FAKのY397部位を標的にする1,2,4,5−ベンゼンテトラアミンテトラヒドロクロリド。下部パネル:Y15化合物の化学構造および化学名。
(図4A、図4B、図4C、および図4D)Y15が、用量依存的に、細胞生存を阻害し、Y397 FAKリン酸化を減少させる。BT474乳癌細胞を異なる用量のY15薬剤で24時間処理し、MTTアッセイを行って、細胞生存における効果について試験した(A)。バーは、平均±標準偏差を示す。Y15は、細胞生存を用量依存的に阻害する。*Y15−処理細胞対対照未処理細胞の生存度P<0.05
Y15は、FAKのY397リン酸化を特異的に阻害する。BT474細胞を100μMのY15薬剤で24時間処理し、Y397およびY118パキシリンでウエスタンブロットを行い、FAKおよびパキシリンのリン酸化レベルをそれぞれ検出した(B)。全FAK、パキシリン、およびβ−アクチンでウエスタンブロットを行い、細胞におけるタンパク質の発現を検出した。Y15は、Y397およびFAK基質であるY118−パキシリンのリン酸化を効果的に阻害した。Y15はFAKの全リン酸化を阻止した(C)。FAK抗体で免疫沈降を行い、ホスホチロシン抗体でウエスタンブロットを行った。ブロットをストリップし、FAK抗体でプローブした。Y15はFAKのリン酸化を阻止した。Y397抗体で免疫染色したことにより、Y15および対照TAE226(Novartis)阻害剤で処理した細胞でY397は減少したことが示され、Y15はFAK自動リン酸化を用量依存的に阻害する(D)。細胞を異なる用量のY15阻害剤で処理し、Y−397で、次いでFAK抗体でウエスタンブロットを行った。β−アクチン抗体でウエスタンブロットを行い、等しいタンパク質ローディングを制御した。
(図4E)Y15は、FAK自動リン酸化を時間依存的に阻害する。細胞を100μMのY15で1、4、8、および24時間処理した。TAE226薬剤100μMでの24時間処理は対照として用いた。Y397でウエスタンブロットを行い、Y397−FAKレベルを検出した。次いで、ブロットをストリップし、FAKおよびβ−アクチンでウエスタンブロットを行った。Y15はY397−FAKリン酸化を用量依存的に阻害する。
(図5)Y15は、FAKのin vitroキナーゼ活性を直接阻止する。材料および方法に記載のように、γ−ATP32、0.1μgの精製FAKタンパク質、および異なる用量のY15薬剤でin vitroキナーゼアッセイを室温にて10分間行った。Y15はFAKキナーゼ活性を用量依存的に直接阻止する。
(図6A)Y15は、BT474細胞の細胞剥離を用量依存的に引き起こす。BT474細胞を異なる用量のY15で処理した。材料および方法に記載のように、血球計で剥離を測定した。バーは、3回の独立した実験での平均±標準偏差を示す。Y15は細胞剥離を著しく減少させた。
(図6B)Y15は、BT474細胞の著しいアポトーシスを引き起こさない。材料および方法に記載のように、異なる用量のY15とTAE226薬剤とで、BT474細胞上のHoechst染色を行った。TAE226阻害剤と比較して、Y15薬剤では著しいアポトーシスは検出されなかった。バーは、3回の独立した実験での平均±標準偏差を示す。*未処理細胞に対するP<0.05
(図6C)Y15−処理BT474細胞のHoechst染色。Hoechst染色したアポトーシス核を示す。20μMの用量のTAE226阻害剤と比較して、200μMの用量のY15阻害剤でアポトーシス核は観察されなかった。
(図6D)Y15は、細胞接着を用量依存的に阻止する。BT474細胞を異なる濃度のY15薬剤で処理し、材料および方法に記載のように細胞接着を測定した。100μMのTAE226阻害剤を対照として用いた。Y15は、細胞接着を用量依存的に著しく阻止した。バーは、4回の独立した実験での平均±標準誤差を示す。*P<0.05、Y15−処理細胞の細胞接着は、対照未処理細胞よりも少ない。
(図7Aおよび図7B)in vivoでの腫瘍増殖におけるY15の効果。BT474乳癌細胞を5匹のマウスに皮下注射した(A)。注射した翌日、30mg/kgのY15を毎日、週に5日間加えた。5匹の未処理マウスは対照群として用いた。キャリパーで腫瘍体積を測定した。Y15は、in vivoでの腫瘍増殖を著しく阻止した。バーは、平均±標準偏差(n=5)を表す。P<0.05、ステューデントt検定。
Y15は、腫瘍の重量および体積を阻止した(B)。乳癌細胞注射後23日目で、腫瘍を抽出し、重量および体積をそれぞれグラム(上部パネル)およびmm3(下部パネル)で測定した。Y15は、腫瘍の重量(上部パネル)および体積(下部パネル)を著しく阻止した。バーは、平均±標準偏差を表す。*p<0.05、ステューデントt検定。
(図7Cおよび図7D)Y15は、腫瘍のY397−FAKリン酸化を減少させる。未処理マウスと、Y15薬剤で処理したマウスとから腫瘍を単離した。細胞溶解物を調製し、Y397抗体でウエスタンブロットを行った(C)。FAKおよびβ−アクチン抗体を用いて、全FAKおよびβ−アクチンレベルを検出した。Y397抗体をもつ未処理腫瘍およびY15処理腫瘍で免疫組織化学的染色分析を行った(D)。未処理マウス群とY15処理マウス群とから2つの代表的な腫瘍を示す(各群の腫瘍をT1およびT2としてマークしている)(C、D)。Y15は、未処理マウスと比較して、Y15(30mg/kg)で処理した腫瘍でY397FAKを減少させた。
(図8A、図8B、および図8C)膵臓癌細胞株、FAK野生型線維芽細胞、およびヌル線維芽細胞の生存度におけるY15の効果。Panc−1(A)およびMiapaca−2(B)細胞にY15を漸増用量で72時間加え、材料および方法に記載のようにMTTアッセイを行った。公知のFAK阻害剤であるTAE226(Novartis)は対照として用いた。バーは、平均±標準偏差を示す。*未処理に対するp<0.05。FAKヌルおよび野生型MEFにY15を72時間加え、MTTアッセイを行った。バーは、平均±標準偏差を示す。*未処理に対するp<0.05。
(図9Aおよび図9B)FAKおよびERKリン酸化におけるY15の効果(A)。異なる用量のY15またはTAE226阻害剤で細胞を24時間処理し、Y−397でウエスタンブロットを行い、次いで、FAK抗体、p−パキシリンおよびパキシリンに対する抗体でウエスタンブロットを行った(B)。β−アクチン抗体でウエスタンブロットを行い、等しいタンパク質ローディングを制御した。デンシトメトリーをブロットの下に示す。Miapaca−2細胞についても同様の結果が見られた。
(図10Y)15は、膵臓癌細胞において著しいアポトーシスが無い状態で細胞剥離を用量依存的に引き起こす。Y15は、細胞生存を用量依存的に減少させる。これは恐らくは、腫瘍関連線維芽細胞ではなく膵臓癌細胞のネクローシスを介してである。漸増用量のY15で細胞を24時間処理した。トリパンブルー染色により、膵臓癌細胞におけるアポトーシスを著しく増加させることなく、生存度の減少が見られた。線維芽細胞の生存度に著しい減少はなかった。
(図11Aおよび図11B)ゲムシタビンと組み合わせた場合のY15のin vitroおよびin vivo効果。(A)Y15は、ゲムシタビン活性をin vitroで増強する。ゲムシタビン単独(10μM)、Y15単独(10μM)、または、ゲムシタビン(10μM)およびY15(10μM)の両方の組み合わせでPanc−1細胞を72時間処理した。MTTアッセイによって細胞生存を測定した。*Y15またはゲムシタビン単独に対するp<0.05。(B)Y15は、腫瘍増殖をin vivoで著しく阻止し、その効果はゲムシタビン処理との相乗効果である。マウス(n=5/群)にPanc−1細胞を皮下注射した。注射した翌日、腹腔内PBS、腹腔内Y15(30mg/kg)、腹腔内ゲムシタビン単独(30mg/kg)、またはY15(30mg/kg)+ゲムシタビン(30mg/kg)でマウスを毎日処置した。Y15+ゲムシタビンの組み合わせは、Y15またはゲムシタビン(Gen)単独の場合と比較して腫瘍体積を著しく減少させた。*Y15またはゲムシタビン単独に対するp<0.05。
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20.Ceccarelli,D.F.,Song,H.K.,Poy,F.,Schaller,M.D.,and Eck,M.J.(2006)J Biol Chem 281(1),252−259
21.Golubovskaya,V.M.,Finch,R.,Kweh,F.,Massoll,N.A.,Campbell−Thompson,M.,Wallace,M.R.,and Cance,W.G.(2007)Mol Carcinog,Sept.11[Epub]
22.Golubovskaya,V.M.,Finch,R.,and Cance,W.G.(2005)J Biol Chem 280(26),25008−25021
本明細書に引用した個々の全ての特許、特許出願、および刊行物の開示内容は、参照によってそれらの内容全体を本明細書に引用したものとする。
本明細書の変数の定義における化学基のリストの列挙は、任意の単一基またはリストされた基の組み合わせとしての変数の定義を含むものである。本明細書の変数における実施形態の列挙は、任意の単一実施形態、あるいは、任意の他の実施形態またはその一部と組み合わせたものとしての実施形態を含むものである。
具体的な実施形態を参照しながら本発明を開示してきたが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱せずに本発明の他の実施形態および変形形態を案出できることが明らかであろう。特許請求の範囲は、かかる実施形態および均等な変形形態の全てを包含するものと解釈するものである。