以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
[第1の実施の形態]
本実施の形態における感圧センサは、歪により材料が弾性変形するときの静電容量の変化を利用するものである。感圧センサに用いられるセンサ用材料は、どのような弾性体であっても応力による変形で静電容量がわずかに変化する。本願発明者は、弾性体の構造と静電容量との関係を鋭意検討し、本実施に形態におけるセンサ用材料を得た。すなわち、本実施の形態におけるセンサ用材料は、25℃で弾性変形可能であり、かつ10%圧縮歪を与えた状態の静電容量が、無歪の状態の静電容量の3倍、好ましくは10倍以上である。
このような特性のセンサ用材料を得るためには、センサ用材料が異種材料を複合したものであることが必要である。センサ用材料は、第1の相(材料)と、第1の相(材料)の導電率の10倍以上1020倍未満の導電率を有する第2の相(材料)とを含んでいる(導電性が10倍以上1020倍未満異なる2相以上の相の組み合わせで構成されている)ことが好ましい。この場合、センサ材料は弾性体(弾性体材料)を少なくとも1種類含んでいることが好ましい。第1の相および第2の相の導電率は、たとえば、赤外分光分析、熱分析、または電子顕微鏡での観察などの手法で第1および第2の相を特定し、特定した第1および第2の相の各々の成分だけで作製された試料の導電率を測定することで測定可能である。
弾性体は、絶縁体、半導体、および導電体のいずれであってもよい。弾性体が後述する海島構造を有する場合には、位置検出を容易にするために、弾性体は1010Ωcm以上の抵抗率を有する絶縁体であることが好ましい。弾性体として1010Ωcm未満の抵抗率を有する材料を用いることも可能である。しかし、位置検出センサの用途でセンサ用材料が用いられる場合には、表面比抵抗を高くして安定したセンサを得るために、弾性体は1011Ωcm以上の抵抗率を有していることが好ましく、1012Ωcm以上の抵抗率を有していることがより好ましい。また弾性体は、ガラス転移温度(Tg)が25℃以下の高分子材料であることが好ましい。弾性体としては、ゴム年鑑2009(ポスティコーポレーション株式会社発行)に記載されているゴムを用いることが可能である。特にシリコーンゴムは、繰り返し圧縮に強く、絶縁性に優れるため、絶縁体として好適である。また熱可塑性エラストマーは、加硫工程が不要なので、経済的にセンサ用材料および感圧センサを得ることができる。
またセンサ用材料は、海島構造を有していることが好ましい。海島構造とは、固体の物質が大まかに見て2種類の相(海相、島相)からなっており、比較的連続的に見える海相の中に不連続的に島相が混在している状態の構造を意味している。海島構造を有するセンサ用材料は、たとえば弾性体の中に粒子を分散させることにより作製することができる。この場合には、弾性体の海の中に島のごとく他の材料(粒子)が分散している構造となる。また、少なくとも弾性体である高分子を1種類含む2種類以上の高分子を互いに混練することにより得られる相分離構造の中にも、海島構造となる高分子の組み合わせが存在する。
海島構造を有するセンサ用材料としては上記2つの複合構造のセンサ材料が特に好ましいが、海島構造を有するセンサ用材料は、上記2つの複合構造を有する弾性体であってもよく、弾性体が海で空気層が島となる構造の発泡体などであってもよい。
海島構造を有するセンサ用材料の製造方法としては、海島構造における島相は、(1)海相を構成する材料と異なる材質の粒子を添加し混合する方法、または(2)海相を構成する材料に均一に溶解し、島相を析出させる方法などで形成可能である。
上記製造方法において、粒子を添加する場合(上記(1)の方法の場合)、添加する粒子の導電率は、海相を構成する材料の導電率と2倍以上異なることが好ましい。また、添加する粒子の導電率は、海相を構成する材料の導電率よりも10倍以上高い(海相を構成する材料の導電率と10倍以上異なる)ことがより好ましく、1000倍以上高いことがさらに好ましい。
海島構造を有するセンサ用材料において、島相を構成する材料は、均一な材料であっても不均一な材料であってもよく、有機材料、無機材料、および有機無機複合材料のいずれであってもよい。島相を構成する材料は、炭素質材料、珪素を含有する材料、および遷移金属を含有する材料のうちいずれかであることが好ましい。また、島相を微粒子として添加する場合、微粒子の構造は単純な均一構造よりも複雑な構造が好ましい。さらに、島相を形成するために粒子(微粒子)を添加する場合(上記(1)の方法の場合)、添加される粒子は、単純で均一な構造を有する粒子であるよりも、複雑な構造を有する粒子である方が好ましい。
なお、本実施の形態における感圧センサおよびセンサ用材料は、圧力を加えると可逆的な変形が可能な材料と相関する静電容量の関係を利用したものである。センサ用材料に加えられる圧力は、弾性変形領域内の変形(圧力を取り除けば歪みが無くなり、元の形状に戻る変形)が生じる圧力であってもよいし、センサ材料の形状が完全には元に戻らないような圧力(多少の塑性変形が起きるような圧力)であってもよい。センサ材料の形状が完全に元に戻らなくても、センサとしての機能は残り、可逆的なセンサ機能を発揮可能である。このような場合には、感圧センサのキャリブレーションが行われてもよい。
続いて、本実施の形態におけるセンサ用材料の代表的な製造方法について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるセンサ用材料(たとえば感圧導電ゴム)の製造方法を示す図である。
図1を参照して、始めに、25℃(室温)でゴム弾性を示す材料(以下、ゴム状材料と記すことがある)の原材料と、導電性粒子(導電性微粒子)とを混合することにより、混合物を得る(S1)。
ゴム状材料は、室温でゴム弾性を示す材料であればよく、耐久性の観点からシリコーンゴムであることが好ましい。従って、ゴム状材料の原材料としては、たとえば液状のシリコーンゴムや、ゴム系の原材料(生ゴムなど)などが用いられる。
ゴムに導電性を付与するために添加する導電性粒子については、106Ωm以下の抵抗率を有する材料であればよく、カーボン材料が最も適している。導電性粒子の添加量は、パーコレーション転移が開始する添加量からパーコレーション転移が完了する添加量までの範囲内(パーコレーション転移の閾値近辺)にあることが好ましい。
上記混合工程(S1)において、マイカなどの絶縁性粒子がさらに混合されてもよい。また、上記混合工程(S1)として、少なくとも弾性体である高分子を1種類含む2種類以上の高分子を互いに混練することにより、2つの相を分離(相分離)させ、海島構造を有する混合物を得てもよい。
次に、得られた混合物をたとえば金型に入れることにより成型し、成型された混合物に対して電圧を印加する(S2)。金型に入れたままの状態の混合物に対して電圧が印加されてもよい。ゴム状材料が板状に成型された場合には、板の厚み方向に沿って電圧が印加されることが好ましい。このようにゴム状材料(ゴム)に電圧を印加することにより、ゴム状材料に配合された導電性粒子(島構造)が板状のゴム状材料の厚み方向に沿って配向し、異方導電性が生じる。
印加する電圧は、交流電圧および直流電圧のいずれであってもよい。また印加する電圧は400V/mm以上であることが好ましく、500V/mm以上であることがより好ましい。さらに、2kV/mm以上の高電圧を印加した場合には、ゴム状材料が高粘度のゴムであった場合でも導電性粒子を配向させることが容易となる。一方印加する電圧が10kV/mm以下であることにより、電圧の印加によるゴム状材料のゴム弾性の劣化を抑制することができる。
電圧の印加時間は、ゴムの緩和現象を考慮して1分以上であることが好ましい。しかし十分な配向が確認されれば、電圧の印加時間は1分以下であってもよい。電圧の印加時間が1分以下の場合には、工程時間が短くなり生産性を向上することができる。電圧の印加時間は、3分以上であることがより好ましい。一方電圧の印加時間は、経済的な観点から1時間以未満とすることが好ましい。
ゴム状材料が溶融しているときに電圧(電場)を印加すると、導電性粒子は電極に集まり、表面に偏析しやすくなる。従って、ゴム状材料の表面に導電性粒子が偏析しないよう、導電性粒子の厚み方向のパスができるように電圧を印加することが好ましい。マイカなどの絶縁性粒子を添加した場合には、この制御の可能な範囲(オペレーションウィンドウ)を広くすることができる。
続いて、混合体をオーブン(加硫管)に入れることにより、混合体を加硫する(S3)。これにより、ゴム状材料の原材料が架橋してゴム状材料となる。以上の工程により、センサ用材料が得られる。感圧センサを得る場合には、得られたセンサ用材料を2つの電極で挟み込む工程がさらに行われてもよい。
上記混合工程(S1)において、ゴム状材料の原材料の代わりにゴム状材料が導電性粒子と混合されてもよい。この場合には、加硫工程は実施されなくてもよい。加硫工程の実施は任意である。
上記電圧印加工程(S2)は、どのタイミングで実施されてもよい。電圧印加工程は加硫工程の前に実施されることが好ましいが、電圧印加工程を行いながら加硫工程が行われてもよい(電圧を印加しながら加硫してもよい)。ただし、ゴム状材料として熱可塑性エラストマーを用いた場合に電圧印加工程を実施する際には、50℃以上とされることが好ましく、電流が流れすぎるのを防ぐために200℃未満とされることが好ましい。
本実施の形態における静電容量の測定に関しては、電子部品の誘電率測定に用いる一般的なインピーダンス測定装置(インピーダンス法)を用いることができ、周波数1Hz以上の測定が可能なインピーダンス測定装置と、フィルム測定用電極を組み合わせた装置であることが好ましい。続いて、20Hzにおけるインピーダンスの絶対値(静電容量)を求める方法の一例(非接触法)を詳細に説明する。なお、静電容量の測定方法は、フィルム材料の(20Hzの)インピーダンスの絶対値が測定できるならば、これ以外の方法であってもよい。他の装置を用いる場合には、電極部分の補正を行う必要がある。
図2は、インピーダンス測定装置の構成を示すブロック図である。図2を参照して、インピーダンス測定装置は、フィルム測定用電極60と、LCRメータ70と、コンピュータ80との組み合わせで構成されている。フィルム測定用電極60はLCRメータ70に接続されており、LCRメータ70はGPIB(General Purpose Interface Bus)を介してコンピュータ80に接続されている。フィルム測定用電極60はたとえばHP16451B(横河・ヒューレット・パッカード株式会社製)であり、LCRメータ70はたとえばプレシジョンLCRメータHP4284A(横河・ヒューレット・パッカード株式会社製)であり、コンピュータ80はたとえばPC9801FA(日本電気株式会社製)である。
図3は、図2に示すフィルム測定用電極の構成を模式的に示す正面図であり、図4は、試料の電気容量を測定する際のフィルム測定用電極の電気的接続を示す図である。
図3および図4を参照して、フィルム測定用電極60は、主電極61と、対電極62と、主電極に取り付けられたガード電極63と、試料の厚みを計測するためのマイクロメータ64とを含んでいる。主電極61と対電極62との各々は平行な平面で互いに対向している。LCRメータ70は、主電極61と対電極62との間に交流電圧を印加し、これらの電極間の電流および電圧を測定する。コンピュータ80は、LCRメータ70において測定された電圧および電流に基づいて、試料のインピーダンスの絶対値|Z|および静電容量を測定する。
試料90の静電容量を測定する際には、たとえば温度23℃、相対湿度(RH)20%の雰囲気下で、フィルム材料(感材)である試料90が、主電極61と対電極62との間に設置される。そして、交流電圧をかけながら試料90の静電容量が測定される。ガード電極63はアース電位とされる。
試料90(サンプル)の大きさについては、電極平面よりも大きければ特に制限は無いが、主電極61の直径が3.8cmの場合には大きさ6cm×6cmから5cm×5cmまでの大きさの正方形の形状を有していることが好ましい。
直流電流を用いて測定された試料90の表面比抵抗の大きさが試料90の表裏で等しい場合には、試料90は、表面および裏面のうちどちらの面を上方に向けて配置されてもよい。直流電流を用いて測定された試料90の表面比抵抗の大きさが、試料90の表裏で互いに異なる場合には、試料90は、表面比抵抗が低い方の面を上方に向けて配置されることが好ましい。なお、フィルム測定用電極60においては、マイクロメータ64によって試料90の厚みを計測可能であるので、試料90の厚みを変化させることで、フィルムに歪を発生させて静電容量を計測することが可能である。
静電容量を測定する際の交流電圧の周波数は特に制限されない。しかし、本実施の形態におけるセンサ用材料では、センサ材料の高次構造によって特定の周波数領域で感度が高くなる場合がある。このため、測定対象の材料に応じて、感度の高い周波数領域が選択されることが好ましい。
たとえば、センサ用材料を構成する材料としてカーボンを用いた場合、測定に用いられる周波数領域は10kHz以下であることが好ましく、1kHz以下であることがより好ましい。周波数領域が100Hz以下である場合には、SN比(Signal−Noise ratio)を大きくとることができて好適である。
ところで、特開平4−227796号公報には、マトリックス相に微粒子が表面側に多く中心側に少ない状態または表面側に少なく中心側に多い状態で分散した材料が記載されている。このような特殊な構造を有した微粒子をセンサ用材料が含んでいる場合には、高周波領域で応答する感圧センサを提供できる。この場合、測定に用いられる周波数領域は、たとえば100Hz〜100kHzの範囲であることが好ましく、500Hzから50kHzの範囲であることがより好ましい。
続いて、本実施の形態における、導電性粒子などの粉体の材料の体積固有抵抗値(導電率)の測定方法について、以下に詳細に説明する。
図5は、粉体の材料の体積固有抵抗を測定するための測定装置を示す図である。なお、(b)は(a)のVB−VB線に沿う断面図を示しており、(b)には各部の寸法が記入されている。
図5を参照して、測定装置100は、ステンレスよりなる加圧部分101および102と、テフロン(登録商標)よりなる筐体104と、端子103とを備えている。筐体104は円筒形状を有しており、筐体104の内部の中空部分には、円筒形状の加圧部分101および102が重ねられて配置されている。端子103は下側の加圧部分102に電気的に接続されている。
図6は、図5の測定装置を用いた体積固有抵抗の測定方法を説明するための図である。
図6を参照して、始めに、加圧部分102上に粉体の材料200を1g入れ、材料200の上に加圧部分101を乗せる。次に、無加圧状態で測定装置100をテーブルバイブレータに乗せ、10分間振動させる。続いて、加圧部分101を通じて300kgwの荷重(圧力P)を材料200に加えながら、加圧部分101と端子103との間に電圧を加える。そして、材料200を流れる電流値を測定し、電流値から抵抗Rを算出する。次に、材料200の厚みTおよび抵抗Rから、ρ=3×R/Tという計算式に基づいて体積固有抵抗ρを算出する。得られた体積固有抵抗ρを100で割った値が、材料200の体積固有抵抗となる。
また、粒子の導電率については、粒子の粉末が錠剤成形機でペレット状にされて、CIP(Cold Isostatic Pressing)成形(圧力10気圧)され、作製された錠剤の導電率が4端子法で測定されてもよい。
[第2の実施の形態]
本実施の形態においては、第1の実施の形態で製造されたセンサ用材料を用いた感圧センサについて説明する。本実施の形態における感知センサは、センサ用材料に加えられた圧力と、センサ用材料の静電容量との関係に基づいて圧力を感知(測定)するものである。
図7は、本発明の第2の実施の形態における感圧センサの構成を模式的に示す上面図である。図8は、圧力が加えられていない状態の感圧センサにおける、図7のVIII−VIII線に沿う断面図である。図7および図8を参照して、感圧センサ1は、下部電極(第1電極)10と上部電極(第2電極)20と、異方性導電シート3とを主に備えている。異方性導電シート3は、第1の実施の形態におけるセンサ用材料に対応するものである。下部電極10の上部には上部電極20が配置されており、異方性導電シート3は下部電極10と上部電極20との間に挟み込まれている。下部電極10および上部電極20は、異方性導電シート3の抵抗値を測定する。
図9は、図7の下部電極の電極パターンを示す図である。なお、図9は異方性導電シートに接触する側の面を示している。図9を参照して、下部電極10は、基板13と、複数の電極パターン11a〜11d・・・と、接続電極パターン12a〜12d・・・とを含んでいる。基板13の下端部には、たとえば銅よりなる電極パターン11a〜11dが形成されている。基板13はたとえばFPC(Flexible Printed Circuits)基板などのポリイミド系基板である。電極パターン11a〜11dの各々は、基板13上に形成されており、たとえば図9中縦方向に延在している。電極パターン11a〜11dが形成された矩形領域は、異方性導電シート3と直接接触している。また、基板13は図9中上方向に突出した接続部13aを有しており、基板13上における接続部13aの先端には、接続電極パターン12a〜12dの各々が形成されている。電極パターン11a〜11dの各々と接続電極パターン12a〜12dの各々とは電気的に接続されている。
図10は、図7の上部電極の電極パターンを示す図である。なお、図10は異方性導電シートに接触する側の面を説明の便宜上、透過的に示している。図10を参照して、上部電極20は、基板23と、複数の電極パターン21a〜21d・・・と、接続電極パターン22a〜22d・・・とを含んでいる。基板23の下端部には、たとえば銅よりなる電極パターン21a〜21dが形成されている。基板23はたとえばポリイミド系基板である。電極パターン21a〜21dの各々は、基板23上に形成されており、たとえば図10中横方向に延在している。電極パターン21a〜21dが形成された矩形領域は、異方性導電シート3と直接接触している。電極パターン11a〜11dの各々と電極パターン21a〜21dの各々とは、平面的に見て互いに交差しており、この交差部分が異方性導電シート3の抵抗値の検出部分となっている。また、基板23は図10中上方向に突出した接続部23aを有しており、基板23上における接続部23aの先端には、接続電極パターン22a〜22dの各々が形成されている。電極パターン21a〜21dの各々と接続電極パターン22a〜22dの各々とは電気的に接続されている。
なお、図9および図10においては、代表的な電極パターンにのみ符号を付している。電極パターンの数および形状は任意である。電極パターンの幅を小さくし、その数を多くするほどに抵抗値を検出する箇所の数を増やすことができる。
続いて、本実施の形態における感圧センサを用いた圧力の測定方法(センシング方法)について説明する。
始めに図11に示すように、感圧センサを圧力測定装置本体(以下、装置本体と記すことがある)に接続する。
図11は、本発明の第2の実施の形態における感圧センサが接続される圧力測定装置本体付近の構成を模式的に示す図である。
図11を参照して、装置本体30とコンピュータ40とは電気的に接続されている。装置本体30は取付ソケット31および32と、ロック部31aおよび32aとを含んでいる。下部電極10の接続電極パターン12a〜12dと、上部電極20の接続電極パターン22a〜22dとは、互いに図11中横方向に並ぶように構成されている。下部電極10の接続電極パターン12a〜12dの各々は取付ソケット31に挿入され、ロック部31aによって固定される。同様に、上部電極20の接続電極パターン22a〜22dの各々は取付ソケット32に挿入され、ロック部32aによって固定される。これにより、感圧センサと装置本体30とが電気的に接続される。
次に、圧力を測定する箇所へ感圧センサ1を配置し、圧力を感知する。図12は、圧力が加えられた状態の感圧センサの構成を模式的に示す断面図である。
図12を参照して、圧力が加えられると感圧センサ1は凹形状に変形する。A部分は最も圧力が加えられているため、変形(圧縮)が最も大きくなっており、C部分は圧力が加えられていないため、変形しておらず、B部分はA部分よりも小さな圧力が加えられているため、わずかに変形している。異方性導電シート3の電気容量は変形に応じて変化するため、位置Aの電気容量よりも位置Bの電気容量の方が低く、位置Bの電気容量よりも位置Cの電気容量の方が低くなっている。したがって、感圧センサ1に対し圧力を加えた際の異方性導電シート3の電気容量が、下部電極10および上部電極20で測定される。
次に図11を参照して、測定された電気容量は装置本体30へ送信される。装置本体30は、スイッチ部により電極パターン11a〜11dのうち任意のパターンと電極パターン21a〜21dのうち任意のパターンとを選択することによって、測定位置を特定し、特定された位置において測定された異方性導電シート3の局所的な電気容量を圧力値に変換する。そして、特定する位置を順次切り替えることにより、所望の領域における電気容量が圧力値に変換される。
図13は、感圧センサにおける特定の位置における圧力値の測定の仕方を説明するための図である。図11および図13を参照して、電極パターン11a〜11dの各々と電極パターン21a〜21dの各々とは、たとえば直角に交差している。たとえば交差部分40a〜40dの圧力値を得る場合には、最初に電極パターン11aと電極パターン21aとを選択することにより交差部分40aが特定され、交差部分40aで測定された電気容量が圧力値に変換される。次に、電極パターン11aと電極パターン21bとを選択することにより交差部分40bが特定され、交差部分40bで測定された電気容量が圧力値に変換される。次に、電極パターン11bと電極パターン21aとを選択することにより交差部分40cが特定され、交差部分40cで測定された電気容量が圧力値に変換される。次に、電極パターン11bと電極パターン21bとを選択することにより交差部分40dが特定され、交差部分40dで測定された電気容量が圧力値に変換される。
装置本体30において得られた圧力値は、コンピュータ40へ出力されてもよい。装置本体30はA/D変換や、シリアルデータの出力を行ってもよい。コンピュータ40は、ソフトを用いて圧力分布に関する二次元の図を作成し、ディスプレイに表示してもよい。
また、上記感圧センサは、装置本体内で互いに圧接する部材相互間の圧接力を検出し、その圧接力が適切となるよう調節することを目的として用いられてよい。すなわち、装置本体内において第1の部材と第2の部材とが圧接する構成である場合に、上記第2の態様あるいはその他の態様で検出された圧力が適切な目標値となるよう第1の部材及び第2の部材の少なくとも一方の位置等を調節することができる。また、上記装置本体に備えられた制御部の制御により、例えば上記第2の実施形態の態様あるいはその他の態様で検出された圧力が適切な目標値に近づくよう第1の部材と第2の部材の圧接を制御することが可能となる。
そのためには、上記感圧センサが第1の部材と第2の部材間に配置される、あるいは第1、第2の両部材もしくは何れか一方の部材の少なくとも一部が上記感圧センサで構成される、上記第1、第2の部材のうちの一方の部材を他方の部材に押圧するための押圧部材に上記感圧センサを配置する、などの構成を採用し得る。
[実施の形態の効果]
上述の実施の形態によれば、ゴム状材料と導電性粒子とを混合した状態で電圧を印加することにより、ゴム状材料内において導電性粒子を厚み方向に配向させることができる。これにより、感度および応答性の良好なセンサ用材料および感圧センサを得ることができ、小さな歪でも検出可能となる。上述の実施の形態によれば、薄膜で10%の圧縮歪(微笑歪)に対して、3倍以上、好ましくは1桁以上(10倍以上)の静電容量変化を示す感圧導電ゴムが得られる。
ここで、絶縁体である高分子に導電性粒子を分散させると、パーコレーション転移という現象が生じる。導電性粒子の分散が純粋に確率だけに依存すると仮定すると、パーコレーション転移の起き易さは、導電性粒子の分散確率(1つの導電性粒子が絶縁体の中のどこに存在するか、という確率)、導電性粒子の短径と長径の比であるアスペクト比、または導電性粒子の添加量などに依存し、パーコレーション転移は材料全体に均一に生じる。
しかし現実の系では、絶縁体と導電性粒子との相互作用や、その他に添加された材料とこれらの物質との相互作用や、プロセス条件などによって、パーコレーション転移の起き易さは様々に変化する。また、導電性粒子が絶縁体へ分散し難いような絶縁体と導電性粒子との組み合わせの場合、すなわち絶縁体が導電性粒子の表面に濡れ難い場合には、絶縁体中で導電性粒子は凝集し、導電性粒子の添加量がある値以上になると絶縁体と混合することができなくなる。この濡れ難さは、一般的に、絶縁体と導電性粒子との双方に親和性を有する界面活性剤のような第3成分をさらに添加することで改善することができるが、この方法には限界はある。界面活性剤のような第3成分の他にも、絶縁体中に分散しやすい別の(種類の異なる)微粒子を第3成分として添加することによっても、導電性粒子の分散性を制御することができる。
また最近では、磁場や電場の存在下で微粒子の分散性を制御する方法も研究されている。特に、電場をかけて微粒子の分散状態を制御する方法については、1990年頃流行した電気粘性流体(ERF)の分野でよく研究されていた。電場や磁場を用いたプロセスによって導電性粒子の分散は制御可能であるが、外部場の力が働かないプロセスでは、材料が硬化するまでのマトリックスである高分子の緩和、流動、熱の対流、または溶媒の蒸発(但し、溶媒を使用していた場合)などの影響が働く。さらに、絶縁体をシート状に成型した場合、表面あるいは中心部への導電性粒子の偏析が生じる場合がある。
導電性粒子を絶縁体(高分子材料)に分散させたときに見られるこれらの現象は、感圧センサ(高分子半導体センサ)のばらつきに影響を及ぼすだけでなく、感圧センサの性能へも大きく影響を及ぼす。一方で、パーコレーション転移は、導電性粒子の添加率がある範囲内にある場合に生じるものである。このため、従来の感圧センサのように、導電性粒子の添加率がその範囲以上に設定されると、感圧センサのばらつきは小さくなり、性能は安定化する。
導電性粒子を絶縁体に分散することにより製造される半導体材料シートでは、偏析が生じなければ(すなわち均一材料であり、パーコレーション転移だけが生じると仮定するならば)、表面比抵抗と、シートの厚みと、体積固有抵抗との間には下記の式(1)の関係が成立する。一方、従来の技術のように電圧を印加せずに感圧センサを製造した場合には、偏析が生じやすく、偏析が生じた場合(不均一な材料である場合)には、式(1)の関係は成立しなくなる。たとえば、導電性粒子がシート表面に偏析した場合には、下記の式(2)の関係が成立する。また、導電性粒子がシートの中央部に偏析した場合には、下記の式(3)の関係が成立する。さらに、上述の実施の形態の製造方法のように、電場を印加して、シートの厚み方向に導電性粒子を並びやすく制御した場合にも、下記の式(3)の関係が成立する。導電性粒子が偏析した場合には、いずれも異方性となる。
上述の実施の形態の感圧センサにおいては、感圧センサの表面に加わる圧力を厚み方向の電気容量変化として検出するので、下記式(4)で示すように、感圧センサの表面方向(横方向)は絶縁体に近く、厚み方向(縦方向)は半導体に近い状態となることが好ましい。上述の実施の形態の感圧センサによれば、このような状態を実現することができる。式(4)のような関係が成立することにより、表面に沿う方向の影響を受けることなく厚み方向の変位感度を向上することができる。
表面比抵抗×シートの厚み=体積固有抵抗 ・・式(1)
表面比抵抗×シートの厚み<体積固有抵抗 ・・式(2)
表面比抵抗×シートの厚み>体積固有抵抗 ・・式(3)
表面比抵抗×シートの厚み>>体積固有抵抗 ・・式(4)
また、マイカなどの絶縁性粒子は、センサ用材料が受ける圧力の有無による導電性粒子の接触・非接触をコントロールする(粒子のつながりをオン・オフする)役目を果たす。すなわち、マイカなどの絶縁性粒子は、電場が印加された場合に導電性粒子の列から排除されて、センサ用材料の表面に沿う方向(横方向)の電気抵抗を上げる働きをする。このため、マイカなどの絶縁性粒子を、ゴム状材料および導電性粒子に対してさらに添加することにより、式(4)の関係が一層成立しやすくなる。上述の実施の形態におけるセンサ用材料においては、製造時に電圧を印加することで厚み方向に導電性粒子のパスが形成されているので、絶縁性粒子が存在していても導電性を高い状態に保つことができ、SN(Signal−Noise ratio)比および感度を上げることができる。さらに、センシングを直流ではなく交流で使用するときには、一層感度を向上することができる。
上述の実施の形態においてマイカの添加により感度が向上する理由は、以下のように推測される。すなわち、(製造時に電圧を印加せずに)ゴム状材料および導電性粒子に対してマイカを単に混合した場合には、マイカも導電性粒子(カーボン)も均一に分散する。一方、上述の実施の形態のように製造時に電圧を印加した場合には、導電性粒子は導電性パスを形成し、マイカは導電性粒子の導電性パス(導電性粒子のつながり)の周囲に配向分散し、導電性パスを保持する。故に、マイカが無い場合には、材料がひずみを受けたときに、導電性粒子(炭素粒子)の一粒一粒が応力を受け、導電性パスの一部が壊れ易くなる。従って、ゴム状材料および導電性粒子に対してマイカを添加することにより、導電性粒子(炭素)のかたまりで応力を受けることができる。
上述の実施の形態によれば、導電性粒子の添加量を、パーコレーション転移が開始する導電性粒子の添加量からパーコレーション転移が完了する導電性粒子の添加量までの範囲内に設定することにより、感度を一層向上することができる。これについて以下に説明する。
図14は、絶縁体中への導電性粒子の添加率と絶縁体の電気抵抗との関係を模式的に示す図である。図15は、絶縁体中における導電性粒子の配列の様子を模式的に示す図である。
図14および図15を参照して、絶縁体への導電性粒子の添加量(導電性粒子の分散量)を増やしていくと、添加量が少ない場合には導電性粒子同士は互いに分離しているものの(図15中(a)の状態)、ある添加量を閾値として導電性粒子同士が偶然つながりやすくなり(図15中(b)の状態)、パーコレーション転移が生じ、電気抵抗が急激に低下する。パーコレーション転移が完了した後は、電気抵抗が低い状態となる(図15中(c)の状態)。
パーコレーション転移の起き易さ(導電性粒子同士が偶然つながる確率)は、導電性粒子の置かれた場の状態(バインダーと粒子の相互作用や、電場の有無など)により決まる。
図16は、アスペクト比が1である導電性粒子の体積分率(添加量)と、体積固有抵抗の対数値との関係のシミュレーション結果を示す図である。図16中L1で示す曲線は、縦方向に並びやすくする乱数が発生する場合(パーコレーション転移が起き易い確率(転移促進)の場合)のシミュレーション結果の曲線であり、図16中L2で示す曲線は、横方向に並びやすくする乱数が発生する場合(パーコレーション転移が起き難い確率(転移緩和)の場合)のシミュレーション結果の曲線である。
図16を参照して、パーコレーション転移が起き易い確率の場合のシミュレーション結果である曲線L1と、パーコレーション転移が起き難い確率の場合のシミュレーション結果である曲線L2とでは、パーコレーション転移が起きる体積分率の範囲が互いに異なっている。したがって、パーコレーション転移が起き易い確率の場合にパーコレーション転移が開始する体積分率A1から、パーコレーション転移が起き難い確率の場合にパーコレーション転移が完了する体積分率A2までの範囲A内では、絶縁体中の導電性粒子はパーコレーション転移の途中の状態にあるものと推測される。
パーコレーション転移の生じる導電性粒子の体積分率(添加量)は、外力をかけなければバインダ(絶縁性粒子)と導電性粒子との相互作用で決まる。外力が働くと、たとえばプロセス因子でさえも変化する。
図17は、絶縁体に導電性粒子を添加した材料に対して引っ張り試験を行った場合における、引っ張り歪と体積固有抵抗との関係を示す図である。図17中の曲線L3は、導電性粒子の体積分率を図16の範囲A内に設定した材料についての結果であり、図17中の直線L4は、導電性粒子の体積分率をパーコレーション転移の完了の体積分率よりも高く設定した材料(図16中横軸において位置A2よりも右側の体積分率に設定した材料)についての結果である。
図17を参照して、材料の表面に沿う方向に引っ張り力を加えた場合、材料の表面に沿う方向に伸び歪が生じるとともに、ポアソン比に起因して生じる厚み方向の圧縮力により、厚み方向に圧縮歪が生じる。曲線L3では、この厚み方向の圧縮歪(圧縮力)により体積固有抵抗が一旦低下する。引っ張り力が大きくなると、厚み方向の圧縮力に比べて表面に沿う方向の引っ張り力の方が体積固有抵抗に強く影響を及ぼし、引っ張り歪の増加ととともに体積固有抵抗は増加する。
一方、直線L4に着目すると、パーコレーション転移が完了(完結)した材料では、引っ張り歪の増加とともに体積固有抵抗値は単調に増加している。これは、パーコレーション転移が完了(完結)した材料においては、導電性粒子同士は密着した状態で存在しているので、初期の圧縮歪による体積固有抵抗値の低下の影響よりも、引っ張り力で導電性粒子同士が離れることによる体積固有抵抗値の増加の影響の方が大きいためである。
図17の結果は、材料に引っ張り力を加えた場合の体積固有抵抗の変化であるが、材料に圧縮力を加えた場合の体積固有抵抗の変化の特性についても、図17の結果と同様になる。すなわち、導電性粒子の体積分率を図16の範囲A内に設定した材料では、圧縮歪による体積固有抵抗値の低下の効果が大きくなる。
従って、導電性粒子の添加量を、パーコレーション転移が開始する導電性粒子の添加量からパーコレーション転移が完了する導電性粒子の添加量までの範囲内(パーコレーション転移の閾値近辺)とする(導電性粒子を図16中の範囲Aの体積分率とする)ことにより、体積固有抵抗を低くすることができ、体積固有抵抗に対する表面比抵抗の値を高くすることができる。その結果、感圧センサとして活用することが可能となる。
一方、従来の感圧センサでは、圧力による導電性粒子の接触抵抗の変化を利用するために、パーコレーション転移が完了する導電性粒子の添加量を超える量(パーコレーション転移の閾値を越える量)まで導電性粒子が多量に添加されている。このような添加量では、体積固有抵抗と表面比抵抗との両方が低くなり、表面に沿う方向(横方向)の感度を上げることができない。したがって、本実施の形態のように平面の圧力分布を細かく計測することは困難である。また、静電容量変化を利用する構成の従来の感圧センサにおいても、抵抗値が低すぎるため、感度を上げることはできない。
図18は、SnO2ゾルとアクリル系ラテックスとの2元系による薄膜の顕微鏡写真である。
図18を参照して、SnO2ゾル単独の場合(図18中(a))には、SnO2は2nm未満の長さとなっており、SnO2の配列は見られない。一方、図16中範囲Aに含まれる体積分率でSnO2ゾルをアクリル系ラテックスに添加して、0.1μmの厚さの薄膜を作製した場合(図18中(b))には、SnO2の各々は図18中横方向に互いに繋がって、約50nmの長さとなっている。
従って、高度の技術で制御した場合には、電場を印加しなくても、図18中縦方向に延在する導電性粒子(SnO2)のネットワークがうまく形成されることが分かる。
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例においては、様々な条件でセンサ用材料を作製し、それぞれのセンサ用材料における圧縮歪と静電容量との関係を調べた。
(本発明例1)
乳鉢にカーボン(デンカカーボン(登録商標)、電気化学工業株式会社製)0.236gと、平均粒径が0.8μmであるマイカ0.1gと、液状シリコーンゴム(KE−106、信越化学工業株式会社製)10gと、硬化剤(CAT−RG、信越化学工業株式会社製)1gとを添加し、5分間混合した。次に、得られた混合物(組成物)を3本ロールで10分間混練し脱泡した。次に、脱泡後の混合物を、厚み300μmのシートを成形可能な金型へ充填し(移し)、金型を1時間静置した。続いて、混合物を充填した金型に対して、400Vの電圧を3分印加した。その後、電圧印加後の金型をオーブンに入れ、オーブン内で混合物を30分加硫した。
以上の工程により得られたゴムシート(センサ用材料)の厚みは300μmであり、表面比抵抗は7.5×108Ω/sqであり、体積固有抵抗は2.5×107Ωcmであった。さらにこのゴムシートについて、圧縮歪に対する静電容量の変化を測定したところ、図19〜21の結果が得られた。図19〜図21は、本発明の実施例1における圧縮歪と静電容量との関係を示す図である。図19は、20Hzの周波数の交流電圧を加えた時の圧縮歪と静電容量との関係を示す図であり、図20は、40Hzの周波数の交流電圧を加えた時の圧縮歪と静電容量との関係を示す図であり、図21は、100Hzの周波数の交流電圧を加えた時の圧縮歪と静電容量との関係を示す図である。
図19〜図21を参照して、いずれの周波数の場合も、歪と静電容量との間に線形性が成立していることが分かる。特に、20Hzの場合(図19)には、10%圧縮歪を与えた状態の静電容量が、無歪の状態の静電容量の3倍以上となっている。また40Hzおよび100Hzの場合(図20および図21)にも、10%圧縮歪を与えた状態の静電容量が、無歪の状態の静電容量の約3倍程度となっている。図19〜図21の結果は互いに異なっていることから、センサ用材料の静電容量は測定周波数に依存することが分かる。
(本発明例2)
乳鉢にカーボン0.26gと、マイカ微粉体0.1gと、液状シリコーンゴム1.5gと、硬化剤0.7gとを添加し、5分間混合した。さらに、液状シリコーンゴム8.5gと、硬化剤0.3gとを添加し、5分間混合した。次に、得られた混合物(組成物)を3本ロールで10分間混練し脱泡した。次に、脱泡後の混合物を金型へ充填し、金型を1時間静置した。続いて、混合物を充填した金型に対して、400Vの電圧を3分印加した。その後、電圧印加後の金型をオーブンに入れ、オーブン内で混合物を30分加硫した。
以上の工程により得られたゴムシートの厚みは300μmであった。また、20Hzの周波数の交流電圧を加えて圧縮歪に対する静電容量の変化を測定したところ、本発明例1と同様の応答性が得られた。
(本発明例3)
熱硬化性樹脂であるフェノール球(ユニベックスS、ユニチカ株式会社製)150gをオルソ珪酸エステル(エチルシリケート28、コルコート株式会社製)160gに1昼夜含浸後、濾別することにより処理した。続いて、処理されたフェノール球をエタノールで洗浄し、トルエンスルフォン酸を4g添加した蒸留水400g中にて、このフェノール球を40℃の温度で8時間加熱した後、濾別した。次に、このフェノール球を80℃の真空オーブン中にて8時間乾燥した。このようにして得られた珪酸含有フェノール球を、アルゴン雰囲気で、昇温速度5℃/分にて600℃まで昇温し、この状態で1時間加熱した。これにより、珪酸含有フェノール球を炭化し、平均粒径37μmの球状の複合粒子からなる比重1.45の粉体を得た。
得られた粉体の複合粒子を調べたところ、複合粒子は炭素質材料(炭素含有率90.6%)をマトリックス相とし、シリカを微粒子分散相とするものであった。炭素質材料およびシリカの電気伝導度は、それぞれ6×10-9Scm-1と1×10-13Scm-1であった。得られた粉体の全体の電気伝導度は4×10-12Scm-1であった(なおこれらの電気伝導度は、上述の図5および図6に示す方法で測定された)。また、複合粒子中に分散したシリカの大きさは20nmであった。シリカの重量比率は、全体の平均では5.0%であったが、複合粒子の表面付近層、中間付近層および中心付近層のシリカの重量比率はそれぞれ8.7%、2.5%および0%であった(これらの重量比率は、天秤で配合比率に応じた重量を量ることによって測定された)。また、得られた粉体を室温で放置した状態での粉体の水分含有量を、カールフィッシャー法により測定したところ、0.2%であった。以上の結果から、この複合粒子は、炭素質材料に対してシリカが不均一に分散しており、粒子表面から中心に向けてシリカが漸減する望ましい傾斜態様を示す構造(微粒子不均一分散型複合粒子構造)であることが確認された。
続いて乳鉢に、得られた複合粒子の粉体2.6gと、液状シリコーンゴム10gと、硬化剤1gとを添加し、5分間混合した。次に、得られた混合物(組成物)を3本ロールで10分間混練し脱泡した。次に、脱泡後の混合物を金型へ充填し(移し)、金型を1時間静置した。続いて、混合物を充填した金型に対して、180Vの電圧を3分印加した。その後、電圧印加後の金型をオーブンに入れ、オーブン内で混合物を30分加硫した。
以上の工程により得られたゴムシートの厚みは300μmであった。また、10kHzの周波数の交流電圧を加えて圧縮歪に対する静電容量の変化を測定したところ、10%圧縮歪を与えた状態の静電容量が、無歪の状態の静電容量の約30倍となった。
(本発明例4)
17質量%の塩化第二スズ水溶液500gをラボミキサーにて撹拌しながら、飽和炭酸水素アンモニウム1800gにゆっくりと添加することにより、ゲル分散水溶液を生成した。続いて、生成したゲルをデカンテーションにより取り出し、このゲルを蒸留水にて何度も水洗いした。次に、ゲルを洗浄するのに用いた蒸留水中に硝酸銀を適下し、沈澱ができないことを確認した後、蒸留水1000ml中にアンモニア水を添加することによりpHを9前後に調整した水溶液を作製した。続いて、この水溶液にゲルを添加し、水溶液をラボミキサーで激しく撹拌することにより、ゲルを水溶液中に分散させた。続いて、この分散液に、上記と同様の方法にて合成したアンチモンの酸化物ゲル2gを添加して、ゲルスラリーを調製した。続いて、壁面が石英製の筒型電気炉を350℃に加熱保持し、調整したゲルスラリーをこの電気炉内にスプレーすることにより粉末化し、得られた粉末を乾燥して回収した。以上の工程により得られた粉末を粉末P1とする。
続いて、乳鉢に粉末P1を6gと、液状シリコーンゴム1.5gと、硬化剤0.7gとを添加し、5分間混合した。さらに、液状シリコーンゴム8.5gと、硬化剤0.3gとを添加し、5分間混合した。次に、得られた混合物(組成物)を3本ロールで10分間混練し脱泡した。次に、脱泡後の混合物を金型へ充填し(移し)、金型を1時間静置した。続いて、混合物を充填した金型に対して、400Vの電圧を3分印加した。その後、電圧印加後の金型をオーブンに入れ、オーブン内で混合物を30分加硫した。
以上の工程により得られたゴムシートの厚みは300μmであった。また、5kHzの周波数の交流電圧を加えて圧縮歪に対する静電容量の変化を測定したところ、10%圧縮歪を与えた状態の静電容量が、無歪の状態の静電容量の約15倍となった。
(比較例1)
乳鉢にカーボン0.236gと、液状シリコーンゴム10gと、硬化剤1gとを添加し、5分間混合した。次に、得られた混合物(組成物)を3本ロールで10分間混練し脱泡した。次に、脱泡後の混合物を金型へ充填し、金型を1時間静置した。続いて電圧を印加せずに、混合物が充填された金型をオーブンに入れ、オーブン内で混合物を30分加硫した。
以上の工程により得られたゴムシートの厚みは300μmであった。また、圧縮歪に対する静電容量の変化を測定したところ、10%圧縮歪を与えた状態の静電容量が、無歪の状態の静電容量の約1.3倍となった。
本実施例においては、パーコレーション転移とインピーダンスとの関係を調べた。
始めに、PET(Polyethylene terephthalate)フィルムに0.1μmの大きさの導電性粒子(SnO2)を分散させた薄膜を作製した。導電性粒子の体積分率は0体積%、5体積%、および40体積%とした。なお、本実施例における40体積%という導電性粒子の体積分率は、図16の範囲A内(パーコレーション転移近傍)の体積分率である。次に、図2〜図4に示すインピーダンス測定装置を用いて、これらの薄膜の各々に対して、交流電圧の周波数を変えながらインピーダンスの絶対値|Z|および静電容量を測定した。この結果を図22に示す。
図22は、本発明の実施例2において得られた薄膜についての、交流電圧の周波数f(Hz)の対数値と、インピーダンスの絶対値|Z|との関係を示す図である。
図22を参照して、いずれの薄膜においても、低周波数領域(1kHz未満)における薄膜のインピーダンスの絶対値|Z|が増加している。低周波数領域(1kHz未満)における薄膜のインピーダンスの絶対値|Z|の増加は、導電性粒子の体積分率が多いほど顕著であり、導電性粒子の体積分率がパーコレーション転移近傍である40体積%の場合には特に顕著である。一方、高周波数領域における薄膜のインピーダンスの絶対値|Z|は、薄膜(バインダー)の組成によらずほぼ同じであった。これにより、低周波数領域の交流電圧に対する薄膜のインピーダンスは、バインダーの組成によらず、パーコレーション転移の変化に対して鋭敏に応答することが分かる。従って、低周波数領域のインピーダンス変化(異常)は、薄膜内の導電性粒子間の導電機構の影響を受け発生するものと考えられる。
続いて、薄膜のインピーダンスの絶対値|Z|に及ぼす薄膜の電気容量の影響をシミュレーションした。
二次元平面で導電性粒子が分布している、と仮定し、導電性粒子とマトリックスで構成される1つの電気の流路のインピーダンスZnは、抵抗Rの薄膜中にN個の導電性粒子が分散しているとした場合におけるn番目の粒子によるインピーダンスZnを用いて表現した場合における下記の式(5)のように表れる。
また、全体の電気の流路はその総和であらわされるので、全導電性粒子が及ぼすインピーダンスZtotalと、Znとの間には下記の式(6)の関係が成り立つ。
式(5)および式(6)においてn→∞とすることにより、式(5)および式(6)から下記の式(7)が得られる。
従って、式(7)に基づいて、電気容量Cおよび角速度ωを代入することにより、Ztotal(インピーダンス|Z|)が得られる。
図23は、本発明の実施例2における、交流電圧の周波数f(Hz)の対数値と、薄膜のインピーダンスの絶対値|Z|との関係を示す図である。図23において、薄膜の電気容量は10-3(F)、10-6(F)、および10-8(F)にそれぞれ設定されている。
図23を参照して、薄膜の電気容量がいずれの場合においても、図22のインピーダンスの絶対値|Z|の結果と同様に、低周波数領域における薄膜のインピーダンスの絶対値|Z|が増加している。低周波数領域における薄膜のインピーダンスの絶対値|Z|の増加は、電気容量が低いほど、言い換えれば導電性粒子間の距離が小さくなるほど顕著である。従って、導電性粒子間の距離が小さくなるほど静電容量(コンデンサ成分)の変化は大きくなり、インピーダンスは増加することが分かる。
続いて、薄膜の導電性粒子の体積分率と、薄膜のインピーダンスの絶対値および抵抗との関係について調べた。薄膜のインピーダンスは、薄膜に加える交流電圧の周波数を20Hzとして測定した。
図24は、本発明の実施例2において得られた薄膜の導電性粒子(SnO2)の体積分率と、薄膜のインピーダンス(|Z|)および抵抗(R)との関係を示す図である。
図24を参照して、薄膜における導電性粒子の体積分率が増加した場合、薄膜の抵抗値は、導電体粒子を添加しなかった場合の抵抗値に対して3倍未満しか増加していない。これに対し、薄膜の電気容量は、導電体粒子を添加しなかった場合のインピーダンスの絶対値に対して106倍も低下している。つまり、導電性粒子の添加量の増加に対して、抵抗値よりも静電容量値の方が高変化率である(応答性がよい)。これは、薄膜の抵抗変化よりも薄膜の低周波領域の交流電圧に対するインピーダンス変化の方が応答性がよいことを意味している。
上述の実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。