JP2011256085A - セメント組成物及びセメント硬化体 - Google Patents

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憲一 安久
Toru Sasaki
徹 佐々木
Hitomi Taketsu
ひとみ 竹津
Yutaka Ando
豊 安藤
Keisuke Maeda
恵佑 前田
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Abstract

【課題】 水分と混練してセメント硬化体を形成した際に、セメント硬化体が経時的に中性化されてしまうのを抑制することができるセメント組成物及び該セメント組成物を用いて形成されたセメント硬化体を提供することを課題とする。
【解決手段】 平均粒径が300μm以下であるモルデナイト系ゼオライトとセメント成分とを用いて構成され、セメント成分とモルデナイト系ゼオライトとの合計量に対するモルデナイト系ゼオライトの割合が8重量%以上であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、セメント硬化体の中性化を抑制し得るセメント組成物に関する。また、斯かるセメント組成物を用いて形成されたセメント硬化体に関する。
セメント組成物は、水分と混練することによって硬化体(セメント硬化体)となることで強度を発現するものであるが、このような硬化体は、一般的に引張り方向や曲げ方向の力に対して脆弱であるため、内部に鉄筋などの鋼材を埋設して補強されることが多い。
セメント硬化体中に埋設された鋼材は、表面に不動態被膜が形成されており、しかもセメント硬化体の内部が強アルカリ性の状態となっているため、本来、腐食(酸化することなど)から保護されている。ところが、セメント硬化体の使用環境中に存在する二酸化炭素などの影響によってセメント硬化体が経時的に表面から内部に向かって中性化されてしまう場合がある。
このような場合、中性化された領域に鋼材が存在していると、鋼材の表面に形成されていた不動態被膜が破壊され、鋼材が腐食(錆が発生)して膨張し、セメント硬化体の内部に亀裂が発生する要因となる。
このため、通常、硬化体中に鋼材を埋設する際には、中性化される可能性がある領域よりも内側に鋼材を埋設することで鋼材の腐食が抑制されているが、鋼材を埋設する位置が内側になるほど、特に曲げ方向の強度を補強するために必要な鋼材の本数を増やしたり、太い径の鋼材を用いたりする必要があるため、コストが嵩む要因となる。
これに対し、セメント硬化体内部の中性化を抑制する方法が幾つか提案されている。例えば、中性化の要因となるイオン成分(炭酸イオンなど)を捕捉する薬品(イオン交換体やアミノ酸)をセメント組成物中に含有させる方法(特許文献1又は2参照)や、ブレーン比表面積が所定の値となる物質と硫酸塩などとを含む混和剤を用いる方法(特許文献3参照)などが知られている。
特開平10−231157号公報 特許第2937412号公報 特許第4115766号公報
しかしながら、特許文献1及び2のような方法は、イオン交換体やアミノ酸といった高価な薬品を用いる必要があるため、硬化体を形成する際のコストが嵩む要因となる。また、特許文献3の方法は、急硬性の材料を使用するため、流動性の保持に遅延剤を用いる必要があり、気温や施工量の変化に影響されやすく、施工時に多大な手間を要することとなる。
そこで、本発明は、水分と混練してセメント硬化体を形成した際に、セメント硬化体が経時的に中性化されてしまうのを高価な薬品を用いることなく容易に抑制することができるセメント組成物を提供すると共に、該セメント組成物を用いたセメント硬化体を提供することを課題とする。
斯かる課題に鑑みて本発明者らが鋭意研究したところ、セメント組成物を構成する成分の1つとして、所定の平均粒径を有するモルデナイト系ゼオライトを用いることで、セメント組成物が水と混練されてセメント硬化体となった際に、該セメント硬化体が経時的に中性化されてしまうのを抑制し得ることを見出し本発明を完成させるに到った。
即ち、本発明に係るセメント組成物は、平均粒径が300μm以下であるモルデナイト系ゼオライトとセメント成分とを用いて構成され、セメント成分とモルデナイト系ゼオライトとの合計量に対するモルデナイト系ゼオライトの割合が8重量%以上であることを特徴とする。
本発明に係るセメント硬化体は、上記のセメント組成物を用いて形成されることを特徴とする。
斯かる構成によれば、上記のような重量割合でモルデナイト系ゼオライトが含有されたセメント組成物は、水と混練されてセメント硬化体となった際に、従来のセメント組成物を用いて形成された従来のセメント硬化体よりも、全体がモルデナイト系ゼオライトによって緻密化される。このため、二酸化炭素などの中性化の要因となる成分がセメント硬化体に接触した際にも、そのような成分がセメント硬化体の内部へ侵入するのを抑制することができる。これにより、セメント硬化体の内部が中性化されてしまうのを容易に抑制することができる。
以上のように、本発明によれば、セメント組成物と水分とを混練してセメント硬化体を形成した際に、セメント硬化体が表面から内側に向かって経時的に中性化されてしまうのを高価な薬品を用いることなく容易に抑制することができる。
実施例の第三試験において、モルデナイト系ゼオライトの平均粒径と試験体の表面から染色された領域(中性化されていない領域)までの距離との関係を示したグラフ。
以下、本発明に係る実施形態について説明する。
本発明に係るセメント組成物は、セメント成分以外の成分として、モルデナイト系ゼオライトを含有するものである。モルデナイト系ゼオライトとは、天然或いは合成ゼオライトの一種であり、ゼオライトの中では最もケイ酸を多く含むものである。
モルデナイト系ゼオライトの化学組成は、ケイ酸塩のケイ素の一部がアルミニウムに置換されたアルミノケイ酸塩の形をとるものであり、代表的な組成は、下記一般式(1)で示される。
Figure 2011256085
また、モルデナイト系ゼオライトは、毛状や針状の結晶を多く含むものであり、結晶(MOR型)中には多数の細孔を有している。また、一般に、イオン交換性を有するとともに、吸着性や触媒担体能力などの物性を有するものである。
本願発明で用いられるモルデナイト系ゼオライトは、平均粒径が300μm以下のものであり、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下のものである。また、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましく、3μm以下であることが極めて好ましい。なお、モルデナイト系ゼオライトの平均粒径は、JIS Z 8801−1に規定するふるい(公称目開き:106μm、212μm、425μm、850μm、1.70mm、3.35mm)を用いてふるい分け試験(JIS A 1102参照)を行ない、モルデナイト系ゼオライトの全量に対する各ふるいに残る量の質量百分率から算出した質量平均粒子径である。ただし、モルデナイト系ゼオライトの全量のうち、公称目開き106μmのふるいを通過するものが50質量%以上ある場合には、レーザー回折式粒度分布測定装置(LEEDS&NORTHRUP株式会社製 「マイクロトラック SRA 7995−10−30」)を用いて粒子径を測定した際のメジアン径、即ち、体積の小さい粒子から順に体積を累積した累積値が全粒子の体積に対して50%に達した際の粒径を平均粒径とする。
また、モルデナイト系ゼオライトのブレーン比表面積は、5000cm2/g以上であることが好ましく、10000cm2/g以上であることがより好ましい。
また、セメント組成物におけるモルデナイト系ゼオライトの含有量は、セメント成分とモルデナイト系ゼオライトとの合計量に対して8重量%以上であり、10〜30重量%程度とすることが好ましい。また、セメント成分100重量部に対しては、9〜43重量部程度とすることが好ましく、11〜43重量部程度とすることがより好ましい。
前記セメント成分としては、特に限定されるものではないが、各種ポルトランドセメントのほか、高炉セメントやフライアッシュセメント等の混合セメントなどを用いることができる。また、前記セメント組成物には、セメント成分及びモルデナイト系ゼオライト以外の成分として、コンクリートを形成する際に用いられる骨材(細骨材、粗骨材)や各種混和材料などを含有させることもできる。
上記のようなセメント組成物は、コンクリートやモルタル、セメントペーストから形成されるセメント硬化体を形成する材料として用いられる。特に、セメント硬化体中に鋼材を埋設する必要がある場合に好適に用いられるものである。前記セメント組成物を用いてセメント硬化体を形成する際の水分量としては、セメント成分とモルデナイト系ゼオライトとの合計量に対する重量比(水粉体比)が20〜70%となるようにすることが好ましい。なお、モルデナイト系ゼオライトは、モルデナイト系ゼオライト以外の成分と水とを混練する際に上記の重量割合となるように添加されてもよい。
上記のようなセメント組成物を水分と混練して得られるセメント硬化体は、モルデナイト系ゼオライトによって全体が緻密化されるため、二酸化炭素などの中性化の要因となる成分と接触した際にも、そのような成分がセメント硬化体の内部へまで侵入するのを抑制することができる。このため、硬化体の内部が中性化されてしまうのを抑制することができ、鋼材を埋設した際にも鋼材が腐食するのを抑制することができる。このため、セメント硬化体の表面に近い位置に鋼材を埋設することができ、例えば、セメント硬化体の曲げ方向の強度の向上を効果的に図ることができる。
以下、本発明の実施例について説明する。
1.第1試験
<実施例1>
イ)試験体の作製
セメント成分以外にモルデナイト系ゼオライト(日東粉化工業社製、「SP#2300」)を含むセメント組成物を用いてセメント硬化体(試験体)を作製した。具体的には、普通ポルトランドセメントとモルデナイト系ゼオライトとの合計量に対するモルデナイト系ゼオライトの割合(置換率)が20重量%となるように、普通ポルトランドセメントとモルデナイト系ゼオライトとを混合し、混合粉体を作製した。
次に、得られた混合粉体と水分とを水粉体比が40%となる割合で混練し、φ5cm×10cmの内部空間を有する型内に充填した。そして、室温20±3℃、湿度80%の環境下で25時間養生して硬化させ、円柱状(φ5cm×10cm)の試験体を得た。
ロ)試験方法
得られた試験体を室温20±2℃、湿度60±5%、二酸化炭素濃度5±0.2%の環境下(中性化環境下)に配置し、14日後及び28日後の試験体の中性化の度合について評価試験を行なった。
評価試験の方法としては、円柱状の試験体を中心軸に沿って切断し、断面にフェノールフタレイン液を噴霧してアルカリ性を示す領域(中性化されていない領域)を染色した。そして、試験体の表面から染色された領域までの距離(試験体の径方向に沿った距離)を測定することにより中性化された領域を評価した。測定結果については下記表1に示す。
<比較例1〜3>
モルデナイト系ゼオライトに代えて下記表1に記載の材料を用いたこと以外は、実施例1と同一条件で試験体を作製し、同一条件で試験を行なった。測定結果については下記表1に示す。
<比較例4>
セメント成分のみからなるセメント組成物を用いて試験体を作製したこと以外は、実施例1と同一条件で試験体を作製し、同一条件で試験を行なった。測定結果については下記表1に示す。
Figure 2011256085
<第1試験まとめ>
実施例1と比較例1〜4とを比較すると、染色された領域までの距離が実施例1の方が長期間に亘って短いことが認められる。つまり、モルデナイト系天然ゼオライトを用いることで、セメント硬化体が表面から内部へ向かって中性化されてしまうのを長期に亘って抑制し得ると認められる。
2.第2試験
<実施例2〜6及び比較例5〜8>
モルデナイト系ゼオライトの置換率を下記表2に記載の通りとしたこと以外は、第1試験の実施例1と同一条件で試験体を作製した。また、試験方法については、14日後の試験のみを行なったこと以外は、第1試験の実施例1と同一条件で試験を行なった。測定結果については下記表2に示す。
Figure 2011256085
<第2試験まとめ>
実施例2〜6と比較例5〜8とを比較すると、染色された領域までの距離が各実施例の方が短いことが認められる。つまり、モルデナイト系ゼオライトの置換率が8重量%以上となるように配合したセメント組成物を用いることで、セメント硬化体の中性化を効果的に抑制し得ることが認められる。
3.第3試験
<実施例7及び8、比較例9〜11>
平均粒径が下記表3に記載の通りとなるモルデナイト系ゼオライトを用いたこと以外は、第1試験の実施例1と同一条件で試験体を作製した。また、試験方法については、14日後の試験のみを行なったこと以外は、第1試験の実施例1と同一条件で試験を行なった。測定結果については下記表3及び図1に示す。なお、実施例7の平均粒径は、上記実施形態のレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて粒子径を測定した際の体積平均粒子径であり、実施例8及び比較例9〜11の平均粒径は、上記実施形態記載のふるい分け試験を行なって算出された質量平均粒子径である。
Figure 2011256085
<第3試験まとめ>
実施例7及び8と比較例9〜11とを比較例すると、染色された領域までの距離が各実施例の方が短いことが認められる。つまり、平均粒径が300μm以下であるモルデナイト系ゼオライトを含有するセメント組成物を用いてセメント硬化体を形成することで、セメント硬化体が表面から中性化されてしまうのを効果的に抑制し得ると認められる。
4.まとめ
以上のように、平均粒径が300μm以下であるモルデナイト系ゼオライトとセメント成分との合計重量に対するモルデナイト系ゼオライトの重量割合が8重量%以上となるように構成されたセメント組成物を用いてセメント硬化体を形成することで、該セメント硬化体の内部が表面側から経時的に中性化されることを効果的に抑制することができる。

Claims (2)

  1. 平均粒径が300μm以下であるモルデナイト系ゼオライトとセメント成分とを用いて構成され、セメント成分とモルデナイト系ゼオライトとの合計量に対するモルデナイト系ゼオライトの割合が8重量%以上であることを特徴とするセメント組成物。
  2. 請求項1に記載のセメント組成物を用いて形成されることを特徴とするセメント硬化体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016109528A (ja) * 2014-12-05 2016-06-20 日本電信電話株式会社 耐中性化特性の評価方法

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