JP2011241429A - 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】引張強度が590MPa以上の穴拡げ性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板は、質量%で、C:0.02〜0.075%、Si:0.001〜0.2%、Mn:2.0〜4.5%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001〜0.2%、N:0.01%以下、O:0.01%以下を含有し、さらに、TiおよびNbの1種または2種を下記不等式を満たす範囲で含有する化学組成を有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
0.14≦Ti+Nb/2≦0.3
【選択図】 なし

Description

本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。具体的には、本発明は、穴拡げ性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関し、特に、自動車の車体のようにプレス成形、その中でも、従来困難であった伸びフランジ成形が必要不可欠となる用途に好適な高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。ここで、本発明において、「溶融亜鉛めっき鋼板」には「合金化溶融亜鉛めっき鋼板」が含まれ、「高強度溶融亜鉛めっき鋼板」には「高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板」が含まれる。
近年、地球環境保護のために、自動車の燃費向上が求められており、車体の軽量化と乗員の安全性確保のために、引張強度が590MPa以上の鋼板、特に、耐食性を必要とする部品に対して、溶融亜鉛めっき鋼板のニーズが高まっている。
自動車用部品に適用される高強度鋼板において、強度特性だけでなく、プレス成形性や溶接性等、部品成形時に要求される各種施工性が満足されなければならない。自動車部品の成形プロセスにおいて、伸びフランジ成形の使用頻度は極めて高く、それによって、様々な形状の部品が成形されるので、耐伸びフランジ割れ、すなわち、穴拡げ性に優れる高強度鋼板が必要になる。しかし、一般的に、引張強度の上昇に伴い、穴拡げ性は劣化する。この原因は、高強度鋼板は、フェライトを母相としマルテンサイトやベイナイト等の硬質相で強化された組織であり、延性破壊の起点となるマイクロボイドがフェライトと硬質相の異相界面、または、その近傍に発生しやすいことに因る。そこで、高強度鋼板の穴拡げ性改善に対して、多数の研究開発がなされ、それを実現する組織制御方法が確立しつつある。
例えば、非特許文献1は、フェライトとマルテンサイトの複合組織鋼板において、フェライトとマルテンサイトの硬度差(変形応力差)の低下に伴い、穴拡げ性が向上するという知見を開示している。また、非特許文献2は、マルテンサイト等の硬質相そのもの含まない穴拡げ性に優れるフェライト単相鋼板を開示している。
しかし、従来の知見の殆どにおいて、溶融亜鉛めっき鋼板の製造プロセスは考慮されていない。非特許文献1は、焼入れ、焼戻し処理で製造される冷延鋼板に関するものであり、非特許文献2は、析出強化に寄与するTiとMo等のマイクロアロイを一旦固溶させる熱処理で製造される熱延鋼板に関するものであった。
高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造プロセスにおいて、再結晶焼鈍温度は750〜950℃であり、590MPa以上の引張強度を達成するために必要な量のマイクロアロイを固溶させる条件、具体的には、スラブ加熱温度の下限に相当する1100℃より遥かに低い。
また、再結晶焼鈍から冷却する場合、約460℃の溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、次いで、浸漬後に、500〜600℃まで再加熱するという合金化処理が施される場合がある。すなわち、この製造プロセスにおいて、冷却はベイナイト変態温度域の高温側で一旦中断され、鋼板は恒温に近い状態で熱処理される。したがって、高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合、その鋼板は上部ベイナイトを含む組織になりやすい。上部ベイナイト組織において、粗大なセメンタイトは、ラス境界、パケット境界、ブロック境界、旧オーステナイト粒界に、優先的に析出する。このようにセメンタイトが析出すると、歪が偏在し、セメンタイトそのものが破壊する、または、マイクロボイドがその近傍に発生するようになる。したがって、そのような組織の鋼板は穴拡げ性に劣るということが容易に理解される。さらに、冷却停止から合金化処理までの所要時間は短いので、鋼の一部だけがベイナイトになり、その残部はオーステナイトやマルテンサイトになる。これらのオーステナイトやマルテンサイトは、ベイナイトの部分的な生成によって、C(炭素)が組織間で分配され、それらのC濃度は極めて高くなっているので、極めて硬質な組織である。すなわち、高強度溶融めっき鋼板を製造するための熱処理条件において、セメンタイトや硬いマルテンサイトを含まない穴拡げ性に優れる鋼板を生産することは極めて困難であった。そこで、高強度溶融めっき鋼板の穴拡げ性改善に対して、より高度な組織制御方法が検討された。
例えば、特許文献1は、鋼板にMnとTiを添加し、再結晶温度以上かつAc点以上で焼鈍し、溶融亜鉛めっき浴に至るまでの間に、Ms点以下に急冷し、部分的、または、全体的に焼戻しマルテンサイトを生成させることによって、590MPa以上の引張強度と80%以上の穴拡げ率を達成した鋼板を開示している。しかし、Ms点以下に冷却することは、通常の溶融亜鉛めっきラインで実現困難であり、それを実現させるために、鋼板を焼鈍する均熱帯とめっき浴の間に、強制冷却装置と加熱炉を新設することが必要になる。さらに、Ms点以下からめっき浴温度まで、鋼板を再加熱するためのエネルギーが追加され、製造コストが極めて高くなる。
また、特許文献2は、鋼板にTiやNbを積極的に添加し、単相域(オーステナイト単相温度域)直上で焼鈍し、酸洗し、500℃以上A点以下で熱処理した後に溶融亜鉛めっき処理し、硬質なマルテンサイトやオーステナイトを分解し、複合組織を構成する第二相をベイナイト、または焼戻しマルテンサイト主体にすることによって、590MPa以上の引張強度を有し、優れた穴拡げ性の鋼板を開示している。しかし、実質的に、二回の焼鈍工程が必要となるので、製造コストが高くなる。さらに、二回目の熱処理温度は通常の焼鈍温度より著しく低く、それを実現させるために、ラインの生産性が阻害される。
一方、特許文献3は、鋼板にSiやMnを積極的に添加し、鋳造条件を最適化し、偏析を低減し、組織を均質化することによって、590MPa以上の引張強度を有し、優れた穴拡げ性の鋼板を開示している。しかし、所望の凝固速度は、スラブの厚みを200〜300mmとする通常の薄板用連続鋳造設備で実現されず、それを実現させるために、スラブの厚みを30〜70mmとする薄スラブ連続鋳造方法の適用が必要になるので、製造コストが極めて高くなる。
以上、特許文献1から3に開示された技術は、590MPa以上の引張強度と優れた穴拡げ性を両立する組織が実現されるために、大幅な設備改造や長大、特別な製造工程を必要とするので、現実的な手法でない。したがって、化学組成や加工熱処理の組み合わせをより工夫し、通常の製造工程で所望の鋼板が生産される組織制御方法を検討しなければならない。
前述したように、硬質な組織が混在する場合には穴拡げ性が劣化するので、硬質な組織を含まない単相組織の創製という究極的な方法が検討された。
特許文献4は、鋼板にTiとMoを積極的に添加し、熱延の巻取り温度条件を最適化し、組織を微細な炭窒化物で強化されたフェライト単相にすることによって、590MPa以上の引張強度を有し、優れた穴拡げ性の鋼板を開示している。しかし、Tiを添加した鋼を冷間圧延すると、その再結晶温度が著しく上昇する。したがって、再結晶する温度において、炭窒化物が不安定となり、引張強度の焼鈍温度依存性が大きくなるだけでなく、引張強度の高めることそのものが困難になる。
また、特許文献5は、鋼板にMnとMoを積極的に添加し、焼鈍温度条件を最適化し、組織をマルテンサイト単相にすることによって、900MPa以上の引張強度を有し、優れた穴拡げ性の鋼板を開示している。しかし、組織をマルテンサイト単相にすると、延性が著しく劣化し、様々な成形不良が起こりやすくなる。したがって、そのような組織の鋼板はプレス成形に適さない。さらに、高価なMoを多量に添加するので、製造コストが極めて高くなる。
一方、特許文献6は、鋼板にNbとMoを積極的に添加し、焼鈍条件と焼鈍後の冷却停止条件を最適化し、ベイナイト変態を促進させ、ベイナイトまたはベイニティックフェライト組織の面積率を高めることによって、590MPa以上の引張強度を有し、優れた穴拡げ性の鋼板を開示している。しかし、前述したように、ベイナイトの場合、ラス境界等に析出する粗大セメンタイト、ベイニティックフェライトの場合、C濃度の高いマルテンサイトやオーステナイトが不可避的に生成する。したがって、ベイナイトの変態速度に影響するめっき浴温度や合金化処理温度を厳密に制御しなければ、穴拡げ性が劣化する。合金化処理温度を430℃以上580℃以下とするような広範囲の温度制御において、良好な穴拡げ性を安定して確保することは困難であり、そのような技術は量産に適さない。以上、特許文献4から6に開示された技術も、単相組織、または、それに準ずるベイナイト組織の溶融亜鉛めっき鋼板を創製することは容易でないので、現実的な手法でない。
一方、マイクロアロイのTiやNbの添加によって、組織の微細化やフェライトの著しい強化が発現するので、それらの最適量、さらに、他元素や製造方法との組み合わせまでも最適化する方法が検討された。
特許文献7は、鋼板にTiとSiを添加し、熱間圧延温度や焼鈍温度条件を最適化し、再結晶させたフェライトを微細析出物で強化し、複合組織を構成する隣接組織間の硬度差を小さくすることによって、590MPa以上の引張強度を有し、優れた穴拡げ性の鋼板を開示している。しかし、Tiを添加した鋼を二相域(フェライトとオーステナイトの二相共存温度域)で焼鈍すると、引張強度の焼鈍温度依存性が大きくなる。すなわち、所望の強度特性を安定して確保することが困難になり、そのような技術は量産に適さない。
また、特許文献8は、鋼板にTiを積極的に添加するだけでなく、C量、Mn量とTi量の比率を制御し、焼鈍温度を最適化し、複合組織を構成する第二相をベイナイト主体とすることによって、590MPa以上の引張強度を有し、優れた穴拡げ性の鋼板を開示している。さらに、焼鈍温度条件は単相域も含むので、引張強度の焼鈍温度依存性の小さな鋼板を量産できると期待される。しかし、前述したように、ベイナイトやマルテンサイトを積極的に利用した複合組織鋼板において、焼鈍した後の冷却以降の組織変化は著しく、その温度履歴によって、穴拡げ性が著しく劣化する。特に、鋼板のMn含有量が3.0%以下の場合、鋼の一部だけがベイナイトとなる傾向が強いので、めっき浴温度や合金化処理温度までも含めた冷却以降の全温度履歴を厳密に制御しなければ、穴拡げ性が劣化する。すなわち、良好な穴拡げ性を安定して確保することが困難であり、そのような技術は量産に適さない。
さらに、特許文献9は、鋼板にTi、NbとBを添加し、熱間圧延温度や焼鈍温度を最適化し、複合組織を構成するオーステナイト低温変態相の結晶粒径を大きくすることによって、590MPa以上の引張強度を有し、優れた穴拡げ性の鋼板を開示している。さらに、焼鈍温度条件が単相域を含み、鋼板のMn含有量が3.0%を超える範囲(Mn量:1.4%以上3.5%以下)も含むので、鋼板の引張強度や穴拡げ性が焼鈍温度だけでなく、冷却以降の温度履歴の影響も受けにくく、量産に適する技術と期待される。しかし、鋼板のMn含有量が3.0%を超える範囲であっても、後述するように、鋼板の[Ti]+[Nb]/2値([Ti]は鋼中の含有Ti質量%、[Nb]は鋼中の含有質量%)が0.14%以下の場合、焼鈍後の冷却停止から合金化処理にかけての組織変化が著しく、その温度履歴によって、非常に硬質な組織が形成され、穴拡げ性が著しく変化する。したがって、焼鈍し、冷却した後に、450℃以上600℃以下で10秒以上120秒以下保持するだけで、良好な穴拡げ性を安定して確保することは不可能である。
特開平6−93340号公報 特開2004−211126号公報 特開2007−70649号公報 特開2002−322540号公報 特開2004−315882号公報 特開2003−193190号公報 特開2002−69574号公報 特開2005−220417号公報 特開2007−9317号公報
ISIJ International,44(2004),No.3,p.603−609 ISIJ International,44(2004),No.11,p.1945−1951
本発明の課題は、前述したように、従来の技術で製造することが困難であった、引張強度が590MPa以上、好ましくは780MPa以上の穴拡げ性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法を提供することである。本発明の鋼板においては、穴拡げ性(後述する穴拡げ率)の目標値は50%以上である。
本発明は、穴拡げ性を劣化させる粗大なセメンタイト、C濃度の高いマルテンサイトやオーステナイトで構成される硬質組織の生成を抑制できるように、従来の鋼板に比べて、より多量のMnを鋼に添加し、さらに、C量、Ti量やNb量を特定の範囲に制御し、その化学組成に対する最適な製造条件を見出すことによって、引張強度が590MPa以上の穴拡げ性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができるという知見に基づく。さらに、本発明は、溶融亜鉛めっきラインの設備改造や長大な製造工程を必要とすることなく、所望の性能を有する鋼板が製造されるので、量産に適する技術である。従来の技術において、そのような鋼板を安定して製造することは困難であった。
本発明は、鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える溶融亜鉛めっき鋼板において、この鋼板は、C:0.02%以上0.075%以下(本明細書においては特に断りがない限り組成に関する「%」は「質量%」を意味するものとする)、Si:0.001%以上0.2%以下、Mn:2.0%以上4.5%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001%以上0.2%以下、N:0.01%以下、O:0.01%以下を含有し、さらに、TiおよびNbの1種または2種を下記不等式を満たす範囲で含有する化学組成を有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板である。
0.14≦Ti+Nb/2≦0.30
ここで、上記式中のTiおよびNbはそれぞれTiおよびNbの含有量(単位:質量%)を意味する。
この本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板では、化学組成が、質量%で、Cr:0.1%以下、Mo:0.1%以下、Cu:0.1%以下、Ni:0.1%以下およびV:0.1%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有することが好ましい。
この本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板では、化学組成が、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下、Zr:0.01%以下およびBi:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有することが好ましい。
この本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板では、化学組成が、質量%で、B:0.002%以下をさらに含有することが好ましい。
この本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板では、面積率で、残留オーステナイトを2.0%以下含有する鋼組織であることが好ましい。
別の観点から、本発明は、下記工程(A)〜(C)を備えることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
(A)前述した本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の化学組成を有する鋼材に、圧延開始温度を1100℃以上1300℃以下、巻取温度:530℃以上600℃以下の熱間圧延を施して熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に、冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(C)前記冷延鋼板に、Ac点以上950℃以下の温度域に90秒間以下保持する再結晶焼鈍を施し、その後に、[亜鉛めっき浴温度−20℃]以上[亜鉛めっき浴温度+100℃]以下の温度域まで冷却し、次いで、前記温度域にめっき浴浸漬時を含めて500秒間以下保持する連続溶融亜鉛めっき工程。
さらに、別の観点から、本発明は、前述した本発明に係る製造方法により得られた溶融亜鉛めっき鋼板に、430℃以上600℃以下の温度域で合金化処理を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
本発明によって、引張強度が590MPa以上の穴拡げ性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板を量産することが可能になる。本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板は、産業上、特に、自動車分野において、広範に使用することが可能である。
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の化学組成を前述のように規定した理由を説明する。
(C:0.02%以上0.075%以下)
Cは強度向上に寄与する元素であり、鋼板の引張強度を590MPa以上にするために、0.02%以上含有させる。好ましくは0.035%以上、さらに好ましくは0.045%以上である。しかし、0.075%を超えてCを含有させると、硬質組織が混在しやすくなり、穴拡げ性が劣化する。このため、C含有量は0.075%以下とする。好ましくは、0.065%以下である。このようにC量を制御することによって、Mn、Ti、Nb等の高価な合金元素の添加量を抑えることができ、製造コストを下げることが可能になる。
(Si:0.001%以上0.2%以下)
Siは強度向上に寄与する元素であり、本発明において、0.001%以上含有させる。しかし、0.2%を超えてSiを含有させると、鋼板に不めっき部が発生し、耐食性が劣化する。このため、Si含有量は、0.001%以上0.2%以下とする。なお、好ましくは、Si含有量は0.05%以上0.15%以下であり、このようにSi量を制御することによって、めっきの密着性が向上し、プレス成形によるパウダリングやフレーキング発生を防止することが可能になる。
(Mn:2.0%以上4.5%以下)
Mnはベイナイト変態を遅らせ、さらに、C量、Ti量やNb量のバランスによって、粗大なセメンタイトや硬質組織の生成を抑制できるだけでなく、強度向上に著しく寄与する元素であり、鋼板の引張強度を590MPa以上にするために、2.0%以上含有させる。好ましくは3.0%超である。しかし、4.5%を超えてMnを含有させると、転炉における精錬、鋳造が著しく困難になるだけでなく、溶接性が劣化する。このため、Mn含有量は4.5%以下とする。
(P:0.1%以下)
Pは不純物として含有される元素であるが、強度向上に寄与する元素でもあるので、積極的に含有させてもよい。しかし、0.1%を超えてPを含有させると、溶接性が著しく劣化する。このため、P含有量は0.1%以下とする。なお、好ましくは、P含有量は0.005%以上0.025%以下であり、このようにP量を制御することによって、より確実に鋼板を強化することとパウダリング等のめっき不良を防止することが可能になる。
(S:0.01%以下)
Sは不純物として不可避的に含有され、穴拡げ性を著しく劣化させる元素である。このため、S含有量は0.01%以下とする。なお、その含有量が低いほど、穴広げ性は向上し、好ましくは、0.005%以下である。さらに好ましくは、0.0015%以下である。
(sol.Al:0.001%以上0.2%以下)
Alは鋼を脱酸して、Ti等の炭窒化物形成元素の歩留まりを向上させる元素である。Ti系、Nb系、またはTi−Nb複合系の酸化物の生成を抑制するために、sol.Al含有量は0.001%以上とする。好ましくは0.02%以上である。しかし、0.2%を超えてsol.Alを含有させると、鋼板に不めっき部が発生し、耐食性が劣化する。このため、sol.Al含有量は、0.2%以下とする。好ましくは0.1%以下である。
(N:0.01%以下)
Nは不純物として不可避的に含有され、穴拡げ性を著しく劣化させる元素である。このため、N含有量は0.01%以下とする。なお、その含有量が低いほど、穴広げ性は向上し、好ましくは、0.005%以下である。さらに好ましくは、0.003%以下である。
(O:0.01%以下)
Oは不純物として不可避的に含有され、穴拡げ性を著しく劣化させる元素である。このため、O含有量は0.01%以下とする。なお、その含有量が低いほど、穴広げ性は向上し、好ましくは、0.005%以下である。さらに好ましくは、0.002%以下である。
(TiとNb:0.14%≦Ti+Nb/2≦0.30%)
TiとNbは微細な炭化物、窒化物、または炭窒化物を形成させ、強度向上に著しく寄与する元素である。また、前述したように、C量とMn量をバランスさせ、さらに、後述するような焼鈍条件を組み合わせることによって、粗大なセメンタイトや硬質組織が生成し難くなり、引張強度が590MPa以上でありながら、優れた穴拡げ性も達成される。このような効果を発現させるために、少なくとも、TiとNbの1種または2種を含有させ、Ti+Nb/2の値(ただし、TiおよびNbはそれぞれTiおよびNbの含有量(単位:質量%))で0.14以上含有させる。しかし、Ti+Nb/2の値で0.3を超えてTi、Nbの1種または2種を含有させても、前記効果が飽和し、製造コストが高くなるだけである。このため、Ti+Nb/2の値は0.14以上0.3以下とする。なお、Ti+Nb/2の値で0.18以上含有させると、残留オーステナイトの面積率が2.0%以下である鋼組織を得ることが容易になり、良好な穴拡げ性をさらに安定して確保することが可能となる。
(Cr:0.1%以下、Mo:0.1%以下、Cu:0.1%以下、Ni:0.1%以下およびV:0.1%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上)
Cr、Mo、Cu、NiおよびVは、いずれも、強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。しかし、0.1%を超えてそれぞれを含有させても、前記効果が飽和し、製造コストが高くなるだけである。このため、Cr、Mo、Cu、NiおよびVの1種または2種以上を前記の量で含有することが好ましい。なお、より確実に前記効果を得るために、いずれかの元素を0.01%以上含有させることが好ましい。
(Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下、Zr:0.01%以下およびBi:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上)
Ca、Mg、REM、ZrおよびBiは、いずれも、穴拡げ性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。しかし、0.01%を超えてそれぞれを含有させると、表面性状が劣化する。このため、Ca、Mg、REM、ZrおよびBiの1種または2種以上を前記の量で含有することが好ましい。なお、より確実に前記効果を得るために、いずれかの元素を0.0005%以上含有させることが好ましい。
(B:0.002%以下)
Bは強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。ただし、0.002%を超えてBを含有させても、前記効果が飽和する。このため、B含有量は0.002%以下とすることが好ましい。なお、より確実に前記効果を得るために、0.0002%以上含有させることが好ましい。
(残留オーステナイトの面積率:2.0%以下)
次に、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の好適な鋼組織を説明する。
前述した化学組成の本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板は、フェライト、ベイニティックフェライトおよびベイナイトを主相とする組織であり、マルテンサイトおよび残留オーステナイトは極力含有しないことが好ましい。その中でも、オーステナイトは、加工誘起変態によって、最も硬質な組織になる。したがって、切断加工、または打抜き加工した残留オーステナイトを含む鋼板を伸びフランジ成形した場合、穴拡げ性が著しく劣化する。このため、面積率で評価した分率で、残留オーステナイトが2.0%以下(0%の場合も含む)であることが好ましい。そして、マルテンサイトおよび残留オーステナイトの合計面積率は30%以下とすることが好ましい。なお、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板においては、フェライト、ベイニティックフェライトおよびベイナイトを明確に区別することが困難であるので、各々の面積率を規定することは困難である。フェライト、ベイニティックフェライトおよびベイナイトの合計面積率は70%以上とすることが好ましい。
次に、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の好適な製造方法を説明する。
前述した化学組成を有する溶鋼を、転炉や電気炉等の公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法でスラブ等の鋼素材とすることが好ましい。なお、連続鋳造法に代えて、造塊法、薄スラブ鋳造法等で鋳造してもよい。この鋼素材に、熱間圧延を施し、熱延鋼板とする。熱間圧延は、鋳造された鋼素材を室温まで冷却せず、温片のまま加熱炉に装入し、加熱した後に圧延する直送圧延、または、わずかに保熱した後に直ちに圧延する直接圧延するか、あるいは、一旦、鋼素材を冷却した後に再加熱し、圧延してもよい。
(熱間圧延の開始温度:1100℃以上1300℃以下)
TiとNb等の微細析出物の分散によって、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の引張強度は高められる。したがって、鋼板の引張強度を590MPa以上にするために、熱間圧延する前に、TiやNbを一旦固溶させる必要がある。このため、熱間圧延する前の加熱温度は1100℃以上とする。しかし、1300℃を超えて加熱すると、鋼素材の内部酸化が促進され、表面性状が著しく劣化する。このため、鋼素材の加熱温度は1100℃以上1300℃以下とする。換言すれば、熱間圧延の開始温度は1100℃以上1300℃以下である。熱間圧延の開始温度は、好ましくは1200℃以上1270℃以下であり、このように温度を制限することによって、より確実に前記効果を得ることが可能になる。また、熱間圧延を開始するまでに、鋼素材を1200℃以上の温度域に30分間以上保持することが好ましい。このように鋼素材を高温に保持することによって、Mnの凝固偏析に起因する不均一組織が解消され、穴拡げ性が向上する。しかし、180分間を超えて保持しても、前記効果が飽和し、製造コストが高くなるだけであるので、180分間以下とすることが好ましい。
(仕上げ圧延温度:800℃以上1000℃以下)
熱間圧延時の変形抵抗を小さくし、操業をより容易にするために、仕上げ圧延温度を800℃以上とすることが好ましい。しかし、1000℃を超えて仕上げ圧延すると、スケール疵が発生しやすくなり、表面性状が著しく劣化する。このため、仕上げ圧延温度を800℃以上1000℃以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、850℃以上950℃以下である。
(熱延巻取り温度:530℃以上600℃以下)
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板はMnならびにTiおよび/またはNbを多量に含有する。これらは易酸化元素であるので、鋼板表面およびその近傍は巻取り過程において酸化しやすい。したがって、鋼板の酸化を抑制し、良好な表面性状を確保するために、熱延巻取り温度を600℃以下とする。一方、これらの元素は熱延鋼板の強度を高める作用を有する。特に、530℃未満で巻取ると、硬質なベイナイトやマルテンサイトが生成し、その後に、冷間圧延することが困難になる。さらに、鋼板の板厚精度が劣化する。このため、熱延巻取り温度を530℃以上600℃以下とする。好ましくは、540℃以上590℃以下である。
なお、熱間圧延工程において、特性変動を抑制するために、粗圧延の後に、仕上げ圧延する前の粗バーに誘導加熱等を施すことによって、粗バー全長の温度均一化を図ることが好ましい。
前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板は、酸洗等の常法によって、脱スケール処理を施し、その後に、冷間圧延が施し、冷延鋼板とする。この場合、熱間圧延および冷間圧延における総圧下率を95%以上とすることが好ましい。ここで、総圧下率は次式で算出される。
総圧下率(%)={1−(冷延鋼板の板厚)/(熱間圧延に供するスラブの板厚)}×100
総圧下率を大きくすると、板厚方向に分布するMn偏析帯が薄くなり、穴拡げ性が向上する。なお、連続焼鈍後の鋼組織を均一にするために、冷間圧延の総圧下率を30%以上とすることが好ましい。また、鋼板の平坦性を確保するために、酸洗の前もしくは後に、圧下率5%以下の圧延を施し、形状を修正することが好ましい。また、このような軽度の圧延を酸洗の前に施すことによって、酸洗性が向上し、表面濃化元素の除去が促進され、表面性状が向上する。
前記熱間圧延工程および冷間圧延工程により得られた冷延鋼板は、Ac3点以上950℃以下の温度域で再結晶焼鈍を施し、その後に、[亜鉛めっき浴温度−20℃]以上[亜鉛めっき浴温度+100℃]以下の温度域まで冷却し、次いで、前記温度域にめっき浴浸漬時を含めて500秒間以下保持する連続溶融亜鉛めっき処理を施し、溶融亜鉛めっき鋼板とすることが好ましい。また、亜鉛めっき浴に浸漬した後に、430℃以上600℃以下の温度域で合金化処理を施し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板とすることが好ましい。それらの鋼板は、連続溶融亜鉛めっきラインで、焼鈍熱処理、溶融亜鉛めっき処理、合金化処理され、製造されることが好ましい。
(再結晶焼鈍温度:Ac点以上950℃以下の温度域に90秒間以下保持)
前述したように、多量のTiやNbを含有する鋼板を二相域で焼鈍すると、未再結晶のフェライトが残存し、引張強度の焼鈍温度依存性が大きくなるだけでなく、曲げ性が著しく劣化する。このため、焼鈍温度はAc点以上とする。しかし、950℃を超えて焼鈍すると、焼鈍炉が急速に損傷し、その補修が必要となり、生産性が劣化する。このため、再結晶焼鈍温度はAc点以上950℃以下とする。
Ac点以上950℃以下の温度域に保持する時間は90秒間以下とする。Ac点以上950℃以下の温度域に保持する時間が90秒間超では、粒界およびその近傍の析出物が粗大化し、靭性の劣化が著しくなる場合がある。上記の温度域保持に時間の下限は特に限定されないが、10秒間以上とすることが好ましい。このように焼鈍時間までを制御することによって、良好な穴拡げ性を安定して確保することが可能になる。
また、めっきの濡れ性や合金化処理性を向上させるために、焼鈍中の露点を−40℃以上とすることが好ましい。
再結晶焼鈍した後に、鋼板は亜鉛めっき浴に浸漬する過程で冷却される。この場合、平均冷却速度はその最高到達温度から700℃までを1℃/秒以上50℃/秒以下とし、次いで、700℃から冷却停止温度までを3℃/秒以上50℃/秒以下とすることが好ましい。700℃までを1℃/秒以上50℃/秒以下で冷却することによって、フェライト、ベイニティックフェライトおよびベイナイトの面積率ならびにマルテンサイトおよび残留オーステナイトの面積率を容易に調整することが可能になる。一方、700℃から冷却停止温度までを3℃/秒以上で冷却することによって、強度低下に繋がるパーライト変態を抑制することが可能になる。また、冷却停止温度までを50℃/秒超で冷却する場合、連続溶融亜鉛めっき設備の大幅な改造を必要とし、製造コストが著しく高まるので、50℃/秒以下とすることが好ましい。
(冷却停止温度:[亜鉛めっき浴温度−20℃]以上[亜鉛めっき浴温度+100℃]以下)
めっき浴浸入時の抜熱を小さくし、操業を容易にするために、冷却停止温度は[亜鉛めっき浴温度−20℃]以上とする。しかし、[亜鉛めっき浴温度+100℃]を超えて鋼板の冷却を停止すると、めっき浴の温度変化が著しくなり、操業が困難になる。このため、冷却停止温度は[亜鉛めっき浴温度−20℃]以上[亜鉛めっき浴温度+100℃]以下とする。溶融亜鉛めっき処理は、410℃以上490℃以下の溶融亜鉛めっき浴中に焼鈍した鋼板を浸漬する常法に従う。
([亜鉛めっき浴温度−20℃]以上[亜鉛めっき浴温度+100℃]以下の保持時間:500秒間以下、ただし、めっき浸漬時も含める。)
フェライトやベイニティックフェライトの軟化を抑制し、所望の引張強度を確保するために、[亜鉛めっき浴温度−20℃]以上[亜鉛めっき浴温度+100℃]以下の保持時間は、めっき浸漬時も含め、500秒間以下とする。なお、好ましくは、保持時間は10秒間以上であり、このような保持時間を付与することによって、鋼板のめっき付着量が調整され、良好な耐食性を安定して確保することが可能になる。
(合金化処理温度:430℃以上600℃以下)
合金化処理を施す場合、合金化未処理の発生を抑制し、耐食性を向上させるために、めっき浴浸漬後の合金化処理温度は430℃以上とする。しかし、600℃を超えて合金化処理すると、フェライトやベイニティックフェライトが軟化し、引張強度が著しく低下する。このため、合金化処理温度は430℃以上600℃以下とする。なお、好ましくは、合金化処理温度は500℃以上560℃以下であり、このように温度を制御することによって、合金化度(めっき層のFe含有量)を8質量%以上13質量%以下とし、めっきの密着性を向上させることが容易になる。一方、合金化処理温度を[亜鉛めっき浴温度+40℃]以上にすると、オーステナイトが分解し、面積率で、残留オーステナイトを2.0%以下含有する鋼組織が得られやすくなり、良好な穴拡げ性が安定して確保することが容易となる。このため、合金化処理温度を430〜600℃かつ[亜鉛めっき浴温度+40℃]以上にすることが好ましい。
降伏点伸びの発生を抑制するだけでなく、プレス時の焼付けやかじりを防止するために、連続溶融亜鉛めっき処理後に、伸び率0.05%以上1%以下で調質圧延することが好ましい。
また、めっきの濡れ性や合金化処理性を向上させるために、焼鈍前の鋼板に、Ni、Cu、CoおよびFeの1種または2種以上で構成されるめっきを施してもよい。
前記製造方法により、引張強度が590MPa以上の穴拡げ性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができる。
このように、鋼の化学組成を工夫し、熱間圧延と冷間圧延後の連続焼鈍、溶融亜鉛めっき、合金化処理条件を最適化することによって、引張強度が590MPa以上の穴拡げ性に優れる溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法が提供される。穴拡げ性について、JFST1001に規定の方法で測定した穴拡げ率(HER)が50%以上の場合、穴拡げ性が良好である。HERの値が80%以上の場合、穴拡げ性はより良好である。
本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼を転炉で溶製し、連続鋳造によって、245mm厚のスラブを鋳造した。
なお、表1に示すAcは、文献値や実験値を回帰分析し、以下の式より求めた。
Ac=910−203×(C1/2)−15.2×Ni+44.7×Si+104×V+31.5×Mo−30×Mn−11×Cr−20×Cu+700×P+400×Al+400×Ti
Figure 2011241429
得られたスラブを表2に示す条件にて熱間圧延し、2.6mm厚の熱延鋼板を製板した。得られた熱延鋼板を酸洗し、冷間圧延し、1.2mm厚の冷延鋼板を製板した。
Figure 2011241429
得られた冷延鋼板を700℃まで10℃/秒の昇温速度で加熱し、700℃から最高到達温度となる表3に示す焼鈍温度まで3℃/秒の昇温速度で加熱し、その温度で表3に示す時間保持し、焼鈍した。焼鈍温度から冷却停止温度まで8℃/秒の平均冷却速度で冷却し、さらに、溶融亜鉛めっき処理中の熱履歴を模擬するために、冷却停止温度で表3に示す時間保持し、想定めっき浴温である460℃まで5秒かけて冷却し、その温度で10秒保持し、室温まで10℃/秒の冷却速度で冷却し、焼鈍冷延鋼板を作製した。また、合金化処理中の熱履歴を模擬する場合、460℃で10秒保持した後に、さらに、表3に示す合金化処理温度まで5秒かけて加熱し、その温度で表2に示す時間保持し、室温まで10℃/秒の冷却速度で冷却し、焼鈍冷延鋼板を作製した。なお、冷却停止温度の保持時間は、冷却停止温度での保持時間、めっき浴温まで冷却する時間、めっき浴温度に保持する時間の合計である。
本例で作製した焼鈍冷延鋼板は、溶融亜鉛めっきが施されていないが、溶融亜鉛めっき鋼板と同じ熱履歴を受けているので、鋼板の機械的性質は、同じ熱履歴を有する溶融亜鉛めっき鋼板と実質的に同一である。
Figure 2011241429
得られた焼鈍冷延鋼板について、光学顕微鏡または電子顕微鏡、さらにはX線回折法で組織を解析するとともに、引張試験、穴拡げ試験し、その機械特性を評価した。その結果を表4に示す。
[試験方法]
(フェライト、ベイニティックフェライトおよびベイナイトの合計の面積率)
各焼鈍冷延鋼板から圧延方向および圧延直角方向に試験片を採取し、圧延方向の断面組織および圧延直角方向の断面組織を光学顕微鏡または電子顕微鏡で撮影し、画像解析によりフェライト、ベイニティックフェライトおよびベイナイトの合計の面積率を測定した。求めた面積率を表4において面積率1の欄に示した。
(残留オーステナイトの面積率)
各焼鈍冷延鋼板に板厚の1/4だけ減厚するための化学研磨を施し、化学研磨後の表面にX線回折を施し、得られたプロファイルを解析し、残留オーステナイトの面積率を算出した。求めた面積率を表4において面積率2の欄に示した。
(機械的性質)
圧延方向に直角方向からJIS5号引張試験片を採取し、引張強度を測定した。JFST1001に規定の方法によって、穴拡げ率を測定した。
なお、表1〜4において下線を付された数値は、その数値により示される含有量、製造条件、または機械特性が本発明の範囲外であることを示している。
Figure 2011241429
表4における供試材No.1、3〜5、8〜11、13、14および16〜18は、本発明の条件を全て満足する本発明例の鋼板であり、供試材No.2、6、7、12、15、19および20は本発明の条件の少なくとも一つを満足しない比較例の鋼板である。
供試材No.1、3〜5、8〜11、13、14および16〜18の本発明例の鋼板は、引張強度が590MPa以上の穴拡げ性に優れた高強度鋼板である。
これに対して、比較例の鋼板No.2、7と15は化学組成が本発明の範囲から外れており、所望の強度が得られない。鋼板No.6、19と20は製造条件が本発明の範囲から外れており、所望の強度が得られない。鋼板No.12は化学組成が本発明の範囲から外れており、穴広げ性が悪い。
本発明例の鋼板うち、残留オーステナイトの面積率が2.0%以下である鋼板No.1、3、5、8、9、11、13、14および16〜18は、引張強度が590MPa以上であり、穴広げ率が80%以上の好ましい鋼板となった。
また、本発明例の鋼板うち、C量とMn量が好ましい範囲である鋼板No.1、3、4、8、10、11、13、14、16および17は、引張強度が780MPa以上の穴拡げ性に優れた好ましい鋼板となった。

Claims (7)

  1. 鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板は、質量%で、C:0.02%以上0.075%以下、Si:0.001%以上0.2%以下、Mn:2.0%以上4.5%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.001%以上0.2%以下、N:0.01%以下、O:0.01%以下を含有し、さらに、TiおよびNbの1種または2種を下記不等式を満たす範囲で含有する化学組成を有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
    0.14≦Ti+Nb/2≦0.3
    ここで、上記式中のTiおよびNbはそれぞれTiおよびNbの含有量(単位:質量%)を意味する。
  2. 前記化学組成が、質量%で、Cr:0.1%以下、Mo:0.1%以下、Cu:0.1%以下、Ni:0.1%以下およびV:0.1%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有する、請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 前記化学組成が、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下、Zr:0.01%以下およびBi:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有する、請求項1または請求項2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 前記化学組成が、質量%で、B:0.002%以下をさらに含有する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 残留オーステナイトの面積率が2.0%以下である鋼組織を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. 下記工程(A)〜(C)を備えることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
    (A)請求項1から4までのいずれか1項に記載の化学組成を有する鋼材に、圧延開始温度:1100℃以上1300℃以下、巻取温度:530℃以上600℃以下の熱間圧延を施して熱延鋼板とする熱間圧延工程;
    (B)前記熱延鋼板に、冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
    (C)前記冷延鋼板に、Ac点以上950℃以下の温度域に90秒間以下保持する再結晶焼鈍を施し、その後に、[亜鉛めっき浴温度−20℃]以上[亜鉛めっき浴温度+100℃]以下の温度域まで冷却し、次いで、前記温度域にめっき浴浸漬時を含めて500秒間以下保持する連続溶融亜鉛めっき工程。
  7. 請求項6に記載の製造方法により得られた溶融亜鉛めっき鋼板に、430℃以上600℃以下の温度域で合金化処理を施すことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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