以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態では、以下に述べるように、作業機械2から部品3が取り外されたときには、その部品3に設けられている無線タグ4を無効にするための情報を当該無線タグ4に直ちに書き込み、無線タグ4が模造品等に流用されるのを未然に防止する。
図1は、本実施形態の全体概念を示す説明図である。本実施形態に係る作業機械の部品監視装置は、例えば、ホイールローダやトラック等のような作業機械2に適用される。作業機械2には、制御装置1,種々の部品3及びエンジン5等が搭載される。ここで、部品3は、交換可能な種々の部品であり、例えば、燃料フィルタ、オイルフィルタ、油圧シリンダ、油圧ポンプ、油圧制御弁等を挙げることができる。部品3には、無線タグ4が予め設けられている。
無線タグ4の構成は後述するが、無線タグ4は、例えば、外部のアンテナ6から受信した電波に応じて起動し、予め記憶されている部品識別情報を外部に送信する。無線タグ4は、例えば、部品製造工場等において正規の部品3に取り付けられる。無線タグ4には、例えば、品番や製造番号を示す情報が記憶されている。また、無線タグ4には、その使用の可否を示す使用制限情報(使用可否フラグ)を記憶させることもできる。アンテナ6は、無線タグ4との距離が所定距離になるように、部品3の近傍に位置して取り付けられている。
制御装置1は、無線タグ4と通信を行って正規の部品であるか否かを監視する。また、制御装置1は、エンジン5の作動を制御する。さらに、制御装置1は、部品3が交換される場合、この部品3の有する無線タグ4を無効とし、以後の使用を禁止させる。図中下側に示すように、制御装置1は、例えば、照合タイミング検出手段1Aと、部品識別情報取得手段1Bと、照合手段1Cと、部品識別情報記憶手段1Dと、異常状態制御手段1Eと、部品装着状態検出手段1F及び再利用制限手段1Gを備えて構成される。
ここで、正規部品とは、部品3の製造販売に関する正当な権限を有する者により提供された部品を意味する。例えば、作業機械2の製造者や作業機械2の製造者から許可を受けた者により提供される部品3は、正規部品である。正規部品以外の部品3は、模造品等に該当し、性能の優劣を問わない。
照合タイミング検出手段1Aは、部品3が正規部品であるか否かを判定するためのタイミングが訪れたか否かを検出する。照合タイミングとしては、例えば、部品3の交換時やエンジンスイッチの操作時等を挙げることができる。部品識別情報取得手段1Bは、無線タグ4に記憶されている部品識別情報をアンテナ6を介して読み出すものである。
照合手段1Cは、無線タグ4から読み出された部品識別情報と部品識別情報記憶手段1Dに記憶されている部品識別情報とを比較し、両者が一致するか否かを判定する。ここで、無線タグ4に記憶されている部品識別情報は、「第1の部品識別情報」に対応する。部品識別情報記憶手段1Dに記憶されている部品識別情報は、「第2の部品識別情報」に対応する。なお、説明の便宜上、以下の説明では、部品識別情報を部品ID(Parts Identification)と略記する。従って、例えば、第1の部品識別情報は第1の部品IDと第2の部品識別情報は第2の部品IDと、部品識別情報記憶手段1Dは部品ID記憶手段1Dと、それぞれ表記される。
部品3が正規の部品である場合、無線タグ4内の第1の部品IDと部品ID記憶手段1Dに記憶されている第2の部品IDとは一致する。正規部品の場合、無線タグ4に書き込まれる部品IDと同一の部品IDが、制御装置1に送信されて部品ID記憶手段1Dに記憶されているためである。
部品3が正規部品ではない模造品等の場合は、無線タグ4を最初から備えていない、あるいは、無線タグ4を備えていても正しい部品IDが書き込まれていない、のいずれかであることが多いと考えられる。前者の場合、即ち、無線タグ4を備えない模造品の場合は、部品側から第1の部品IDを読み出すことができないため、第2の部品IDと照合することができない。従って、照合手段1Cは、不一致の判定を下す。後者の場合、即ち、正しい部品IDが書き込まれていない無線タグ4を備える模造品の場合、模造品等から読み出された第1の部品IDと部品ID記憶手段1Dに記憶されている第2の部品IDとは一致しないため、照合手段1Cは、不一致の判定を下す。
異常状態制御手段1Eは、照合手段1Cによる照合結果(判定結果)に基づいて、ユーザに警告を発したり、または/及び、作業機械2の動作を制御するものである。例えば、異常状態制御手段1Eは、不一致判定がされた場合に、エンジン始動を禁止したり、エンジン5の出力を制御することができる。また、異常状態制御手段1Eは、エンジン始動の制限と共に、警告信号を出力することもできる。さらに、異常状態制御手段1Eは、不一致判定がされた場合に、作業機械2の備える作業機の動作を制限することもできる。
なお、より高度な模造品の場合、正規の第1の部品IDと同一の第1の部品IDが書き込まれた無線タグ4を備えている可能性も考えられる。つまり、正規の無線タグ4そのものが丸ごと不正にコピーされたような場合である。この場合の対策として、一度使用された部品3の第1の部品IDをチェックしておき、使用された第1の部品IDと同一の部品IDを部品ID記憶手段1Dから消去しておく方法を挙げることができる。
部品装着状態検出手段1Fは、作業機械2に部品3が取り付けられているか否か、即ち例えば、作業機械2から部品3が取り外されたか否かを検出する。部品装着状態検出手段1Fは、例えば、部品3の取付位置近傍に設けられた取付状態センサ7を用いて、部品3が取り外されたか否かを判定する。
再利用制限手段1Gは、部品3が作業機械2から取り外されたことが検出されると、直ちに、その部品3の備える無線タグ4の再利用を制限させる。部品3が作業機械2から取り外されても、その部品3がアンテナ6との通信可能範囲に存在する間に、無線タグ4に再利用を制限するための情報を書き込むことができる。再利用の制限には、再利用の禁止も含まれる。
例えば、再利用制限手段1Gは、照合手段1Cによる照合に使用される情報(部品ID)の全部または一部を消去したり、書き換えることにより、無線タグ4の再利用を禁止させることができる。書き換える場合は、品番としては無意味な情報や、全ての作業機械2について使用不能な品番として予め設定されている禁止品番に書き換えればよい。
また、再利用制限手段1Gは、使用の可否を示す別の情報を無線タグ4に書き込むことにより、その無線タグ4の再利用を禁止させることもできる。そして、異常状態制御手段1Eは、部品3の有する無線タグ4に使用不可状態を示す情報が書き込まれている場合は、警告を発したり、または/及び、作業機械2の動作を制限する。
このように構成される本実施形態では、作業機械2に搭載される部品3が正規部品であるか否かを、部品交換時やエンジンスイッチの操作時に判定し、正規部品以外の部品3が装着されている場合は、ユーザに警告を発したり、または/及び、エンジン5の始動を禁止したり、エンジン5の出力を制限することができる。従って、正規部品以外の模造品等が使用されるのを抑制することができ、作業機械2の性能や寿命が低下するのを防止することができ、作業機械2の信頼性を維持することができる。
さらに、本実施形態では、部品3が作業機械2から取り外される場合に、その部品3の有する無線タグ4の再利用を制限するための情報を、この無線タグ4に書き込むことができる。従って、無線タグ4が別の部品に流用されるのを未然に防止することができ、信頼性が向上する。以下、本実施形態の詳細を詳述する。
本発明の第1実施例を説明する。図2は、システム全体図である。図1に示すように、本実施例に係る作業機械の部品監視装置を備えるシステムは、例えば、一つまたは複数の作業機械10と、管理センタ11と、部品供給工場12と、通信ネットワーク13と、通信衛星14と、GPS(Global Positioning System)衛星15等を備えている。
作業機械10としては、例えば、油圧ショベル、ホイールローダ、ブルドーザ、モータグレーダ、クレーン等の建設機械や、ダンプトラック等の運搬車両、各種破砕機や発電機等の産業機械を挙げることができる。各作業機械10には、作業機械10の各種状態を定期的にまたは不定期に収集して管理センタ11に送信する機械管理装置10Aがそれぞれ搭載されている。機械管理装置10Aの詳細は図3と共に後述するが、機械管理装置10Aは、通信衛星14及び通信ネットワーク13を介して、管理センタ11と相互通信可能に接続されている。また、機械管理装置10Aは、GPS衛星15からの電波を受信することにより、現在位置を把握する。なお、各機械管理装置10Aと管理センタ11とを、移動体通信網や公衆電話回線網等の他の通信ネットワークを介して接続してもよい。
管理センタ11は、各作業機械10を一元的に管理する。管理センタ11の管理サーバ11Aは、各作業機械10の機械管理装置10Aと通信することにより、各作業機械10の状態を把握し管理する。また、管理サーバ11Aは、部品供給管理サーバ12Aから通知された品番や製造番号等の情報のうち、必要な情報を各機械管理装置10Aにそれぞれ送信する。
部品供給工場12は、各作業機械10に使用される種々の部品16を生産して供給するものである。部品16としては、エンジンに使用されるエンジン部品、油圧制御回路に使用される油圧部品、電気制御回路に使用される電装品等を挙げることができる。なお、以下の説明では、部品16として燃料フィルタ170(図3参照)を中心に説明するが、本発明は作業機械10に使用される種々の部品に適用可能である。
部品供給工場12の部品供給管理サーバ12Aは、製造された各部品16に関する種々の情報を管理する。管理される情報には、例えば、品番、製造番号、製造数、製造ロット番号、適用機種、納期、顧客名、単価、品質データ等が含まれる。
部品供給管理サーバ12Aには、タグ発行システム12Bが接続されている。タグ発行システム12Bは、部品16に設けられる無線タグ17を発行する。タグ発行システム12Bは、例えば、部品16の品番や製造番号等を無線タグ17に書き込む。品番等の書き込まれた無線タグ17は、部品16に設けられて、部品16と共に出荷される。
部品供給管理サーバ12Aは、通信ネットワーク13を介して、管理センタ11の管理サーバ11Aと相互通信可能に接続されている。部品供給管理サーバ12Aは、無線タグ17に書き込まれる品番や製造番号等の情報を定期的にまたは不定期に、管理サーバ11Aに送信する。
図3は、作業機械10の機能構成を示すブロック図である。図3には、燃料タンク150,エンジン160,燃料ポンプ180等からなるエンジン系統の構成と、各コントロー
ラ100,110等からなる制御系統の構成とがそれぞれ示されている。先に制御系統に
ついて説明する。
作業機械10は、例えば、電子コントローラ100と、通信コントローラ110と、GPSセンサ121と、衛星通信端末122と、UI(User Interface)部130と、複数のセンサ140〜142と、サービスメータ143とを備えて構成可能である。これらの各部の全部または一部は、一つまたは複数の車内ネットワークを介して相互に接続することができる。また、例えば、電子コントローラ100と通信コントローラ110とを一体化させる等のように、複数の機能や回路を一つにまとめることもできる。なお、電子コントローラ100,通信コントローラ110,各センサ140〜142,サービスメータ143等から機械管理装置10Aが構成される。
電子コントローラ100には、通信コントローラ110と、UI部130と、各種センサ群140〜142及びサービスメータ143と、エンジンスタータ161及びエンジンスイッチ162を接続させることができる。
リーダ/ライタ140は、無線タグ17との間で情報の読出し及び書込みを行うためのものである。リーダ/ライタ140及び無線タグ17の詳細については、図4と共に後述する。部品交換スイッチ141は、部品16が交換されたか否かを検出するもので、部品交換を検出するためのセンサである。例えば、部品交換スイッチ141は、機械式スイッチ(リミットスイッチ等)、近接スイッチ、光電スイッチ等のようなセンサから構成することができる。部品交換スイッチ141は、部品16が作業機械10に取り付けられているか否かを検出する。例えば、部品交換スイッチ141は、部品16が作業機械10の所定の取付場所に位置している場合にオン状態の信号を出力し、部品16が所定の取付場所に存在しない場合にオフ状態の信号を出力することができる。これにより、例えば、部品16の取り外しが検出された後、部品16の装着が検出された場合は、部品16が交換されたものと判定することができる。
その他のセンサ142群としては、例えば、エンジン回転数センサ、バッテリー電圧センサ、冷却水温センサ等を挙げることができる。サービスメータ143は、作業機械10の稼働時間を計測して出力するものである。
電子コントローラ100は、プロセッサやメモリ等を備えたコンピュータ装置として構成されており、無線タグ17との間のデータの読出しまたは書込みを制御する。電子コントローラ100は、上述のセンサ群により検知された稼働時間、エンジン回転数、バッテリー電圧、燃料量、冷却水温等を示す情報を生成し、これを通信コントローラ110に送信することができる。上記の稼働時間やエンジン回転数等のような、作業機械10の種々の状態や動作を示す情報を、「稼働情報」と総称する。稼働情報は、例えば、一日一回等のように定期的に管理サーバ11Aに送信される。また、特定のイベントが検出された場合は、機械管理装置10Aから管理サーバ11Aに情報を送信することができる。機械管理装置10Aは、稼働情報の定期的な送信時に、または、部品16の交換時に、無線タグ17から読み出した第1の部品IDや品番等を管理サーバ11Aに送信する。
電子コントローラ100の内部には部品ID管理テーブルT1が記憶されている。この部品ID管理テーブルT1の構成については、図6と共に後述する。この部品ID管理テーブルT1は、管理サーバ11Aから定期的または不定期に送られてくるデータにより、更新される。
作業機械10の通信系統について説明する。GPSセンサ121は、GPS衛星15からの電波を受信するためのGPSアンテナ121Aを有する。GPSセンサ121は、作業機械10の現在位置を計測して、これを通信コントローラ110に通知する。衛星通信端末122は、通信衛星14と通信するための衛星通信アンテナ122Aを有する。衛星通信端末122は、通信コントローラ110と管理サーバ11Aとの間での衛星通信網を介した通信を可能にする。なお、衛星通信網に限らず、例えば、移動体通信網を介して、通信コントローラ110と管理サーバ11Aとを接続することもできる。
通信コントローラ110は、管理サーバ11Aとの間の通信を制御する。通信コントローラ110は、電子コントローラ100から稼働情報等を受信する。また、通信コントローラ110は、GPSセンサ121から現在位置を示す位置情報を受信する。通信コントローラ110は、稼働情報及び位置情報を、定期的または不定期に、衛星通信端末122及び衛星通信回線を介して、管理サーバ11Aに送信する。例えば、通信コントローラ110は、現場作業が終了した時間帯に、一日一回、稼働情報及び位置情報を管理サーバ11Aに送信することができる。
通信コントローラ110は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置111を備えることができる。記憶装置111には、例えば、作業機械10の機体番号、ユーザ名、稼働時間、作業エリア、及び、作業機械10の稼働履歴等を記憶させることができる。作業エリアとは、作業機械10の稼働が許可された特定の地域である。機体番号とは、各作業機械をそれぞれ識別するための識別情報である。
UI部130は、例えば、作業機械10の運転席近傍に設けることができる。UI部130は、例えば、出力部及び入力部を備える。出力部としては、例えば、ディスプレイ装置や音声出力装置等を挙げることができる。入力部としては、例えば、キーボードスイッチやポインティングデバイス、マイクロフォン等を挙げることができる。部品16(例えば、燃料フィルタ170)が正規部品ではないと電子コントローラ100によって判定された場合、UI部130は、警告メッセージを表示または音声出力させる。
作業機械10のエンジン系統を簡単に説明する。燃料タンク150は燃料を貯蔵するものである。燃料フィルタ170は、燃料タンク150に貯蔵された燃料の塵埃や水分等を除去するためのものである。燃料ポンプ180は、燃料フィルタ170によって濾過された燃料をエンジン160に供給する。図5と共に後述するように、それぞれフィルタ径等の異なる複数の燃料フィルタ170を燃料供給経路に設けることができる。
図4は、リーダ/ライタ140と無線タグ17の構成を示すブロック図である。リーダ/ライタ140は、例えば、アンテナ140Aと、無線インターフェース部140Bと、制御部140C及び外部インターフェース部140Dを備えて構成される。図中では、インターフェースを「I/F」と略記する。
アンテナ140Aは、部品16のアンテナ17Aの近傍に位置するようにして、作業機械10に取り付けられる。無線インターフェース部140Bは、アンテナ140Aを介して、無線タグ17と通信を行うための回路である。
ここで、無線タグ17がRFIDタグとして構成される場合、例えば、125Khzや13.56Mhz等のような比較的低い周波数を選択することができる。125Khzの場合、無線タグ17とアンテナ140との通信可能距離は4〜5cm程度であり、13.56Mhzの場合の通信可能距離は10cm程度となる。950Mhzや2.45Ghzのような、より高い周波数も使用可能であるが、周波数を高くするほど電波の直進性が強くなる。従って、種々の金属部品が配置され、複雑な形状を有するエンジンルーム内のような場所では、低い周波数を用いる方が有利であると考えられる。もっとも、上述の周波数選択に関する記載は、それが特許請求の範囲に記載されない限り、本発明の権利範囲に影響を与えない。また、950Mhzのような高い周波数を用いることが可能な場合は、その高い周波数を利用してもよい。
制御部140Cは、リーダ/ライタ140の動作を制御する。外部インターフェース部140Dは、外部システムである電子コントローラ100との間の通信を担当する回路である。制御部140Cは、電子コントローラ100から外部インターフェース部140Dを介して、読出しコマンドまたは書込みコマンドを受信する。読出しコマンドを受信した場合、制御部140Cは、無線インターフェース部140B及びアンテナ140Aを介して、無線タグ17内に記憶されている情報を読出し、読み出した情報を電子コントローラ100に転送する。書込みコマンドを受信した場合、制御部140Cは、無線インターフェース部140B及びアンテナ140Aを介して、無線タグ17に情報を送信し、無線タグ17内の記憶部17Dに書き込ませる。なお、無線タグ17に情報を書き込まない場合には、リーダ/ライタ140に代えて、リーダ専用の装置を使用してもよい。
次に、無線タグ17の構成を説明する。無線タグ17は、例えば、アンテナ17Aと、無線インターフェース部17Bと、制御部17C及び記憶部17Dを備えて構成される。アンテナ17Aは、リーダ/ライタ140のアンテナ140Aから発信された電波を受信し、また、アンテナ140Aに向けて電波を送信する。無線インターフェース部17Bは、リーダ/ライタ140との無線通信を担当する回路である。制御部17Cは、無線タグ17の動作を制御する。記憶部17Dは、例えばフラッシュメモリ等のような書換可能な不揮発性メモリから構成される。
記憶部17Dに記憶されるデータ構造を図4の下側に模式的に示す。記憶部17Dには、例えば、数十バイト程度のシステムエリア17D1と、数百〜数千バイト程度のユーザエリア17D2とが設けられている。システムエリア17D1には、例えば、各無線タグ17を一意に特定するためのユニークID等が記憶されている。システムエリア17D1
は、原則として、リーダ/ライタ140によって書き換えることはできない。
ユーザエリア17D2は、無線タグ17を利用するユーザが利用することのできる記憶領域である。本実施例の場合、ユーザエリア17D2を利用するユーザとは、作業機械10のベンダである。ユーザエリア17D2には、例えば、品番やシリアル番号等を記憶させることができる。品番とは、部品16の品種を特定するための情報である。シリアル番号とは、部品16の製造番号であり、同一品種の部品16において、各部品16をそれぞれ一意に特定するための識別情報である。また、ユーザエリア17D2には、無線タグ17の使用の可否を示す使用制限情報を書き込むこともできる。使用制限情報は後述の実施例で用いられる。ユーザエリア17D2のデータは、リーダ/ライタ140によって書き換え可能である。なお、第1の部品IDと第2の部品IDとが不一致の場合に、警告が与えられるユーザは、例えば、作業機械10を使用している者である。
無線タグ17の作動を説明する。リーダ/ライタ140のアンテナ140Aから制御信号を含んだ電波が発信されると、この電波はアンテナ17Aにより受信される。無線インターフェース部17Bは、例えば、電磁誘導等を利用することにより、リーダ/ライタ140から受信した電波を電源電圧に変換する。制御部17Cは、リーダ/ライタ140から受信した電波に含まれる制御信号に基づいて、記憶部17Dにアクセスし、データの読出しまたはデータの書込みを行う。なお、無線タグ17は、例えば、小型電池や熱電変換素子等のような独自電源を備えてもよい。
図5は、部品16としての複数の燃料フィルタ170との間で無線通信を行う様子を示す説明図である。図4では、リーダ/ライタ140と無線タグ17との基本的な構成を説明したが、図5に示すように、リーダ/ライタ140は複数の無線タグ17とそれぞれ無線通信を行うことができる。
エンジン160には、部品16としての複数の燃料フィルタ170がそれぞれ取り付けられている。エンジン160には複数のフィルタ取付部171が設けられており、各フィルタ取付部171には、それぞれ燃料フィルタ170が着脱可能に取り付けられる。各フィルタ取付部171の近傍には、燃料フィルタ170の装着を検出する部品交換スイッチ141がそれぞれ設けられる。
各フィルタ170は、その品番やシリアル番号等が記憶された無線タグ17をそれぞれ備える。各無線タグ17に対応する複数のアンテナ140Aが、無線タグ17の近傍に位置するようにして設けられる。各アンテナ140Aは、マルチプレクサ190にそれぞれ接続されており、マルチプレクサ190はリーダ/ライタ140に接続されている。リーダ/ライタ140は、マルチプレクサ190を用いることにより、複数のアンテナ140Aを順番に切り替えながら、各無線タグ17と交信可能である。
アンテナ140Aの交信可能範囲内に複数の無線タイミング17が位置する場合、一つのアンテナ140Aによって複数の無線タイミング17と交信可能である。
図6は、部品ID管理テーブルT1を示す。部品ID管理テーブルT1は、図1中の部品ID記憶手段に該当し、電子コントローラ100内に記憶されている。部品ID管理テーブルT1は、例えば、品番管理部T11とシリアル番号管理部T12とを備えて構成される。品番管理部T11は、作業機械10に使用される各部品16の品番を管理する。シリアル番号管理部T12は、その品番について製造された各部品16のシリアル番号を管理する。一つの品番には、複数のシリアル番号が対応付けられる。
図7は、部品供給管理サーバ12Aの機能的構成を示す。部品供給管理サーバ12Aは、例えば、通信制御部200と、演算処理部210及び記憶部220を備えて構成することができる。
通信制御部200は、通信ネットワーク13を介して、管理センタ11の管理サーバ11Aとの通信を制御する。演算処理部210は、記憶部220に記憶されたプログラムを実行することにより、製造した部品群を管理等するための処理を実行する。記憶部220には、演算処理部210により実行されるプログラムを格納するプログラム格納部221と、部品管理データベース222等が記憶される。
演算処理部210は、例えば、部品管理処理211,部品ID書込み処理212及び部品ID転送処理213をそれぞれ実行する。部品管理処理211は、部品供給工場12で製造され出荷される部品群を管理するための処理である。部品ID書込み処理212は、リーダ/ライタ230を介して、無線タグ17に品番及びシリアル番号等を書き込ませるための処理である。部品ID転送処理213は、出荷された部品群の品番及びシリアル番号等を管理センタ11の管理サーバ11Aに送信させる処理である。
図7の下側に示すリーダ/ライタ230は、アンテナ230Aを介して、無線タグ17に部品IDを書き込む。部品IDには、例えば、品番及びシリアル番号等が含まれる。このリーダ/ライタ230は、部品ID書込み処理212と共に、図2中のタグ発行システム12Bを構成する。
図8は、管理センタ11の管理サーバ11Aの機能構成を示す。管理サーバ11Aは、例えば、通信ネットワーク13を介した通信を制御する通信制御部300と、通信制御部300を通じて送受信される情報を処理するための演算処理部310と、半導体メモリやハードディスク装置等から構成される記憶部320とを備えることができる。
記憶部320は、演算処理部310で実行される各種のコンピュータプログラムが格納されたプログラム格納部321と、車体管理データベース322等が記憶される。車体管理データベース322は、作業機械10の稼働情報や位置情報等を管理するためのものである。車体管理データベース322は、各作業機械10で使用されている部品群の部品IDを管理することもできる。なお、部品IDを管理するためのデータベースを別に備える構成でもよい。
演算処理部310は、上記各種のコンピュータプログラムにより、部品ID受信処理311と、部品ID更新処理312と、稼働情報受信処理313及び車体管理処理314をそれぞれ実行させる。
部品ID受信処理311は、通信ネットワーク13を介して、部品供給管理サーバ12Aから部品IDを受信するための処理である。部品ID更新処理312は、部品供給管理サーバ12Aから受信した部品IDに基づいて、記憶部320に記憶されている部品ID及び各作業機械10の電子コントローラ100に記憶されている部品ID管理テーブルT1をそれぞれ更新させる処理である。例えば、新しく発行された品番やシリアル番号は新たに部品ID管理テーブルT1に記憶され、廃止された品番やシリアル番号は部品ID管理テーブルT1から消去される。
稼働情報受信処理313は、各作業機械10の機械管理装置10Aから送信される稼働情報を受信するための処理である。車体管理処理314は、各稼働情報に基づいて、各作業機械10の状態や位置を管理するための処理である。
図9は、作業機械10の電子コントローラ100に記憶されている部品ID管理テーブルT1を更新させるための処理を示すフローチャートである。図中、ステップを「S」と略記する。
まず、電子コントローラ100は、管理サーバ11Aから部品IDの更新データを受信したか否かを判定する(S10)。更新データとは、部品ID管理テーブルT1を最新の状態に更新させるためのデータであり、既存の部品ID管理テーブルT1との差分データである。
電子コントローラ100は、管理サーバ11Aから更新データを受信すると(S10:YES)、この更新データに従って、部品ID管理テーブルT1を更新させる(S11)。これにより、電子コントローラ100は、部品ID管理テーブルT1の記憶内容を最新の内容に保持することができる。
図10は、部品監視処理を示すフローチャートである。この処理は、電子コントローラ100によって実行される。まず、電子コントローラ100は、部品交換スイッチ141からの検出信号を読み込むことにより、部品16(例えば、燃料フィルタ170)が交換
されたか否かを判定する(S20)。
例えば、古い燃料フィルタ170がいったんフィルタ取付部171から取り外された後、新品の燃料フィルタ170がフィルタ取付部171に取り付けられる場合を考える。この場合、部品交換スイッチ141の検出信号は、オン状態(古い燃料フィルタ170が取り付けられている状態)→オフ状態(古い燃料フィルタ170が取り外された状態)→オン状態(新品の燃料フィルタ170が取り付けされた状態)に変化する。従って、部品交換スイッチ141の検出信号の変化から、燃料フィルタ170の交換を検出できる。なお、部品交換スイッチ141は、部品16としての燃料フィルタ170が取り付けられている場合にオフ状態の信号を出力し、フィルタ170が取り外された場合にオン状態の信号
を出力する構成でもよい。
部品16の交換が検出された場合(S20:YES)、電子コントローラ100は、リーダ/ライタ140を介して、その部品16の備える無線タグ17から、品番を読み込む(S21)。電子コントローラ100は、その読み込んだ品番で、部品ID管理テーブルT1を検索する(S22)。そして、電子コントローラ100は、無線タグ17から読み込んだ品番を部品ID管理テーブルT1から発見したか否かを判定する(S23)。
無線タグ17から読み込まれた品番が部品ID管理テーブルT1から発見された場合(S23:YES)、電子コントローラ100は、本処理を終了する。
無線タグ17から読み込まれた品番を部品ID管理テーブルT1から発見できない場合(S23:NO)、電子コントローラ100は、警告信号を出力する(S24)。この警告信号によって、例えば、「交換された燃料フィルタは正規部品ではありません。正規部品に交換して下さい。」等のようなメッセージを、UI部130を介してユーザに通知することができる。この場合のユーザとは、作業機械10の部品を交換等した者である。また、S
24で警告信号が出力されたことを示す警告フラグを設定することもできる。
図11は、エンジン始動処理を示すフローチャートである。ユーザが、エンジンキーを挿入等してエンジンスイッチ162を操作すると、電子コントローラ100は、エンジンスイッチ162がオン状態になったことを検出する(S30:YES)。電子コントローラ100は、例えば、警告フラグを参照することにより、S24で警告信号が出力されたか否かを判定する(S31)。警告信号が出力されている場合(S31:NO)、正規部品が使用されていない場合なので、電子コントローラ100は、ユーザに警告を発した後で、エンジン160を始動させる(S32)。例えば、電子コントローラ100は、「正規部品が使用されていないため、エンジンの始動を制限中です。」等のようなメッセージを、UI部130を介してユーザに通知することができる。従って、本実施例では、S24及びS31のそれぞれにおいて警告を発することができる。なお、別の方法として、S32では、ユーザに警告を与えると共に、エンジン160の始動を制限することもできる。エンジン160の始動の制限には、エンジン160の始動を禁止する場合や、エンジン回転数を一定値以下に制限する場合が含まれる。さらに別の方法として、作業機械10の備えている作業機の動作速度を遅くすることもできる。
図12は、無線タグ17の再利用を制限するための処理を示す。例えば、予定された寿命が経過した場合、その部品16(この実施例では、燃料フィルタ170である)は、作業機械10の取付部171から取り外される。
部品16が取り外されると、部品交換スイッチ141の検出信号がオン状態からオフ状態に変化するため(オフ状態からオン状態への変化でもよい)、電子コントローラ100は、部品16の取り外しを検出することができる(S40:YES)。電子コントローラ100は、取り外された部品16の備える無線タグ17に、リーダ/ライタ140を介して、再利用を制限するための情報を書き込ませる(S41)。
例えば、電子コントローラ100は、取り外された無線タグ17に記憶されている品番の全部または一部を消去させたり、使用不能な品番(または、使用の禁止された品番)に書き換えさせることにより、その取り外された無線タグ17の再利用を禁止する。無線タグ17に記憶されている品番が消去または書き換えられると、上述した図10のS23で「NO」と判定されるため、警告信号が出力される(S24)。
以上詳述した通り、本実施例では、作業機械10に搭載される部品16が正規部品であるか否かを、部品交換時に判定し、正規部品以外の部品16が装着されている場合は、ユーザに警告メッセージを通知したり、または/及び、エンジン160の始動を禁止したりすることができる。従って、模造品等の使用に対してユーザに警告を与えることができ、模造品を装着したまま作業機械10が稼働するのを抑制することができる。これにより、作業機械10の性能低下を防止して、市場クレームの発生を抑制することができ、作業機械10の信頼性を維持することができる。
さらに、本実施例では、部品16が作業機械10から取り外される場合に、無線タグ17の再利用を制限するための情報を無線タグ17に書き込む構成とした。従って、例えば、正規部品16に使用されていた無線タグ17が模造品等の別の部品に流用されるのを未然に阻止することができ、信頼性をより一層向上させることができる。
本実施例では、無線タグ17に書き込まれている品番が正規の品番であるか否かを、部品16の交換時に判定する。従って、交換された部品16についてのみ、その交換時点で正規部品であるか否かを直ちに判定することができる。これにより、比較的簡易な制御構造で、正規部品であるか否かを早期に検出することができる。
図13,図14に基づいて第2実施例を説明する。本実施例では、部品16が取り外された場合に、無線タグ17を使用不能状態に設定する。図13は、本実施例による再利用制限処理を示すフローチャートである。
電子コントローラ100は、部品16が取り外されたことを検出すると(S40:YES)、その部品16の有する無線タグ17に記憶されている使用制限情報を使用不能状態に設定する(S42)。使用制限情報T2として示すように、使用制限情報には2種類の設定値のうちのいずれかが設定される。一つの設定値は使用不能状態(「0」)であり、他の一つの設定値は使用可能状態(「1」)である。使用不能状態とは、その無線タグ17が無効であり、使用できないことを示す。使用可能状態とは、その無線タグ17が有効であり、使用できることを示す。
図14は、本実施例による部品監視処理のフローチャートである。このフローチャートは、図10に示すフローチャートと共通のステップ(S20,S22〜S25)を備えている。
本実施例による部品監視処理には、例えば、S21AとS22との間に新規なステップ(S26)が追加されている。即ち、部品の交換が検出されると(S20:YES)、電子コントローラ100は、リーダ/ライタ140を介して、無線タグ17から品番及び使用制限情報を読み込む(S21A)。
電子コントローラ100は、その無線タグ17の使用制限情報が使用可能状態に設定されているか否かを判定する(S26)。使用可能状態に設定されている場合(S26:YES)、電子コントローラ100は、その交換された部品16の無線タグ17から読み込まれた品番で、部品ID管理テーブルT1を検索する(S22)。電子コントローラ100は、無線タグ17から読み込まれた品番を部品ID管理テーブルT1から発見できたか否か、即ち、無線タグ17から読み込まれた品番が部品ID管理テーブルT1に登録されているか否かを判定する(S23)。無線タグ17から読み込まれた品番を部品ID管理テーブルT1から発見できた場合(S23:YES)、電子コントローラ100は、本処理を終了する。これに対し、無線タグ17から読み込まれた品番を部品ID管理テーブルT1から発見
できなかった場合、電子コントローラ100は、警告信号を出力する(S24)。
一方、無線タグ17の使用制限情報が使用不能状態に設定されている場合(S26:NO)、電子コントローラ100は、警告信号を出力する(S24)。交換された部品16の使用が禁止されているためである。
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。
図15に基づいて第3実施例を説明する。本実施例では、エンジンスイッチ162の操作時に、正規部品が使用されているか否かの判定を行う。図15は、本実施例による作業機械の部品監視装置により実行される部品監視処理を示すフローチャートである。
電子コントローラ100は、エンジンスイッチ162が操作されたか否かを判定する(S50)。エンジンスイッチ162が操作されると(S50:YES)、電子コントローラ100は、リーダ/ライタ140を介して、各部品16の無線タグ17からそれぞれ品番及び使用制限情報を読み込む(S51)。
電子コントローラ100は、使用制限情報が使用可能状態に設定されているか否かをそれぞれ判定する(S52)。使用可能状態に設定されている場合(S52:YES)、電子コントローラ100は、各部品16の無線タグ17から読み込まれた品番で、部品ID管理テーブルT1を検索する(S53)。そして、電子コントローラ100は、各部品16のそれぞれについて、無線タグ17から読み込まれた品番が部品ID管理テーブルT1に登録されているか否かを判定する(S54)。
全ての部品16の品番が部品ID管理テーブルT1に登録されている品番と一致する場合(S54:YES)、電子コントローラ100は、本処理を終了する。
これに対し、各無線タグ17から読み込まれた品番のうち、いずれか一つでも部品ID管理テーブルT1に登録されていない場合(S54:NO)、電子コントローラ100は、警告信号を出力する(S55)。
また、いずれか一つの無線タグ17が使用不能状態に設定されている場合(S52:NO)も、電子コントローラ100は、警告信号を出力する(S55)。
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。これに加えて、本実施例では、エンジンの始動が要求される度に、正規部品であるか否かをそれぞれ検査することができ、信頼性が向上する。
図16,図17に基づいて第4実施例を説明する。本実施例では、部品交換時に使用制限情報と品番及びシリアル番号とを確認し、かつ、一度使用されたシリアル番号を部品ID管理テーブルT1から消去する。
図16は、本実施例による部品監視装置により実行される部品監視処理を示すフローチャートである。電子コントローラ100は、部品交換スイッチ141からの検出信号に基づいて、部品16が交換されたか否かを判定する(S60)。
部品の交換が検出されると(S60:YES)、電子コントローラ100は、リーダ/ライタ140を介して、無線タグ17から使用制限情報と品番及びシリアル番号とをそれぞれ読み込む(S61)。続いて、電子コントローラ100は、無線タグ17から読み込まれた品番で、部品ID管理テーブルT1を検索する(S62)。
電子コントローラ100は、無線タグ17の使用制限情報が使用可能状態に設定されているか否かを判定する(S63)。使用不能状態に設定されている場合(S63:NO)、電子コントローラ100は、品番及びシリアル番号の照合を行うことなく、警告信号を出力して処理を終了させる(S68)。なお、部品ID管理テーブルT1から品番及びシリアル番号を読み込む前に、使用制限情報が使用可能状態に設定されているか否かを判定する構成でもよい。つまり、S62とS63の順番を入れ替えてもよい。
無線タグ17が使用可能状態に設定されている場合(S63:YES)、電子コントローラ100は、無線タグ17から読み込まれた品番が部品ID管理テーブルT1から発見されたか否かを判定する(S64)。無線タグ17から読み込まれた品番を部品ID管理テーブルT1から発見できた場合(S64:YES)、電子コントローラ100は、無線タグ17から取得したシリアル番号で、部品ID管理テーブルT1を検索する(S65)。ここで、シリアル番号の検索を行う場合、部品ID管理テーブルT1の全体を検索する必要はなく、S53で発見された品番についてのみ、部品ID管理テーブルT1を検索すれば足りる。
無線タグ17に記憶されているシリアル番号が部品ID管理テーブルT1に登録されている場合(S66:YES)、電子コントローラ100は、そのシリアル番号を部品ID管理テーブルT1から消去させる(S67)。図17には、部品ID管理テーブルT1から使用済みのシリアル番号を消去する様子が示されている。
これに対し、無線タグ17から読み込まれた品番が部品ID管理テーブルT1に登録されていない場合(S64:NO)、交換された部品16は模造品であると考えられるため、電子コントローラ100は警告信号を出力する(S68)。
無線タグ17から読み込まれた品番が部品ID管理テーブルT1に登録されている場合でも、無線タグ17から読み込まれたシリアル番号が部品ID管理テーブルT1に登録されていない場合(S66:NO)、不正にコピーされた無線タグ17を有する模造品であると考えられる。そこで、電子コントローラ100は警告信号を出力する(S68)。
上述のように、新品の部品16が作業機械10に装着された場合、S67において、その部品16のシリアル番号は部品ID管理テーブルT1から消去される。部品16の有する無線タグ17が流通過程で不正にコピーされ、この不正にコピーされた無線タグ17が模造品に添付された場合を考える。この場合、模造品のシリアル番号は部品ID管理テーブルT1から消去されているため、S66で「NO」と判定され、警告信号が出力される(S68)。
そして、例えば、模造品の使用を諦めたユーザが、その模造品を作業機械10から取り外すと、図13で述べたように、不正コピーされた無線タグ17の使用制限情報が使用不能状態に設定される。従って、使用不能状態に設定された無線タグ17を有する模造品がが、他の作業機械10に使用される事態を未然に防止できる。
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。これに加えて、本実施例では、一度使用された部品16のシリアル番号を部品ID管理テーブルT1から消去するため、不正にコピーされた無線タグ17を有する模造品が使用されるのを未然に防止することができる。例えば、悪質なユーザの場合、正規部品を一つだけ購入し、正規部品に添付されている無線タグ17の記憶内容をコピーすることが考えられる。不正コピーした無線タグを模造品に添付することにより、以後は模造品を使用してメンテナンスコストを低減可能だからである。しかし、本実施例では、既に使用されたシリアル番号を部品ID管理テーブルT1から消去するため、このような不正行為を排除することができる。
なお、上述のように、各作業機械10は、管理センタ11の管理サーバ11Aに作動状態等を通知しており、また、管理サーバ11Aは、部品ID管理テーブルT1の更新データを各作業機械10に送信している。従って、各作業機械10で使用された品番及びシリアル番号を管理サーバ11Aで一元管理し、いずれか一つの作業機械10で使用されたシリアル番号を全ての作業機械10の部品ID管理テーブルT11から消去させることにより、より一層模造品の使用を効果的に排除することができる。
さらに、本実施例では、取り外された部品の無線タグ17を使用不能状態に設定するため、もしも部品ID管理テーブルT1が最新の状態に管理されていない作業機械10が存在した場合でも、その作業機械10に、不正な無線タグ17を用いることはできず、信頼性がより一層向上する。
図18〜図20に基づいて第5実施例を説明する。本実施例では、エンジンスイッチの操作時に使用制限情報と品番及びシリアル番号とを確認し、かつ、一度使用されたシリアル番号を部品ID管理テーブルT1Aから消去する。
図18は、本実施例による部品監視装置により使用される部品ID管理テーブルT1Aを示す説明図である。この部品ID管理テーブルT1Aには、上述の部品ID管理テーブルT1に比較して、品番管理部T11及びシリアル番号管理部T12のほかに、使用フラグ管理部T13及び認証フラグ管理部T14が新たに追加されている。
使用フラグは、その部品16が使用されたか否かを判定するためのもので、各シリアル番号毎に設けられる。部品が使用された場合、そのシリアル番号の使用フラグは、オンに設定される。未使用のシリアル番号の使用フラグはオフに設定されている。即ち、本実施例では、使用された部品16のシリアル番号を部品ID管理テーブルT1Aから消去する代わりに、使用された部品16のシリアル番号を使用フラグによってチェックする。
認証フラグは、その部品16に関する認証が完了しているか否かを判定するためのもので、各品番毎に設定される。
図19は、本実施例による部品監視処理を示すフローチャートである。電子コントローラ100は、エンジンスイッチ162がオンになった場合(S70:YES)、リーダ/ライタ140を介して、各部品16の無線タグ17から使用制限情報と品番及びシリアル番号とをそれぞれ読み込む(S71)。
電子コントローラ100は、各無線タグ17からそれぞれ読み込んだ品番で、部品ID管理テーブルT1Aを検索し(S72)、続いて、使用制限情報が使用可能状態に設定されているか否かを判定する(S73)。なお、S72とS73の順番を入れ替えてもよい。使用不能状態に設定されている場合(S73:NO)、電子コントローラ100は、警告信号を出力する(S81)。
無線タグ17が使用可能状態に設定されている場合(S73:YES)、電子コントローラ100は、無線タグ17から読み込んだ品番を部品ID管理テーブルT1Aから発見できたか否かを、各部品16毎にそれぞれ判断する(S74)。
無線タグ17から読み込まれた品番が部品ID管理テーブルT1に登録されている場合(S74:YES)、電子コントローラ100は、各無線タグ17から読み込まれたシリアル番号で部品ID管理テーブルT1Aを検索し(S75)、各無線タグ17に記憶されているシリアル番号が部品ID管理テーブルT1Aに登録されているか否かをそれぞれ判定する(S76)。
無線タグ17に記憶されているシリアル番号が部品ID管理テーブルT1Aに登録されている場合(S76:YES)、電子コントローラ100は、そのシリアル番号に関する使用フラグがオンに設定されているか否かを判定する(S77)。
新品の正規部品である場合、使用フラグはオフに設定されている。使用フラグがオフに設定されている場合(S77:YES)、電子コントローラ100は、使用フラグをオンに設定し(S78)、また、認証フラグをオンに設定する(S79)。
一方、無線タグ17から読み込まれた品番が部品ID管理テーブルT1に登録されていない場合(S74:NO)、品番不一致の部品は模造品であると考えられるため、電子コントローラ100は、警告信号を出力し(S81)、ユーザに警告する。
使用フラグがオンに設定されている場合(S77:NO)、電子コントローラ100は、認証フラグがオンに設定されているか否かを判定する(S80)。認証フラグがオンに設定されている場合(S80:YES)、正規部品が使用されていると判断され、電子コントローラ100は、本処理を終了する。これに対し、認証フラグがオンに設定されていない場合(S80:NO)、電子コントローラ100は、警告信号を出力する(S81)。
図20は、認証フラグをリセットさせるための処理を示すフローチャートである。電子コントローラ100は、部品交換スイッチ141からの検出信号に基づいて、部品16が交換されたか否かを監視している(S90)。部品16の交換を検出した場合(S90:YES)、電子コントローラ100は、その交換された部品16の認証フラグをリセットし、オフ状態に設定する(S91)。
本実施例による具体的な処理の流れを幾つか説明する。例えば、正規部品の場合は、最初に装着されたときに、使用フラグ及び認証フラグがそれぞれオンに設定される(S78,S79)。従って、次のエンジン始動時には、S80で「YES」と判定される。つまり、使用フラグがオンに設定されている場合でも、その部品16が正規部品である場合は、
警告信号は出力されない。
使用済みの正規部品の無線タグ17が不正にコピーされた場合を考える。正規部品に代えて模造品が装着された場合、図20に示すように認証フラグはリセットされる。使用フラグはリセットされずにオンのままである。従って、S80で「NO」と判定され、警告信号が出力される(S81)。
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。
なお、上記実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこれのみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態以外の他の種々の形態で実施することができる。
本発明の一つの側面に従う、作業機械に搭載される交換可能な部品を監視するための監視装置は、部品には、この部品を識別するための第1の部品識別情報を記憶する無線タグが予め設けられており、第1の部品識別情報を無線タグから読み出すための情報読取り手段と、正規部品に関する第2の部品識別情報を管理するための部品情報管理手段と、予め設定された照合時期が到来したか否かを検出するための照合時期検出手段と、照合時期の到来が検出された場合、情報読取り手段によって無線タグから読み出された第1の部品識別情報と部品情報管理手段により管理されている第2の部品識別情報とを比較し、第1の部品識別情報と第2の部品識別情報とが一致するか否かを判定する照合手段と、第1の部品識別情報と第2の部品識別情報とが不一致の場合は、警告を発するか、または/及び、作業機械の動作を制限させる異常状態制御手段と、部品が装着されているか否かを検出するための部品装着状態検出手段と、部品装着状態検出手段によって部品の取り外しが検出された場合に、この部品に設けられている無線タグの再利用を制限するための情報を当該無線タグに記憶させるための再利用制限手段と、を備える。