JP2011232068A - ころがり軸受の劣化診断方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ころがり軸受の回転速度が低速であっても、スラスト方向の振動が優位となる劣化モード(ミスアライメント等)を精度よく検出することができ、劣化状態を正しく判断できるころがり軸受の劣化診断方法を提供すること。
【解決手段】2N個の転動体と1個の内輪から構成される転がり軸受を、外輪-ばね-転動体-ばね-内輪-ばね-転動体-ばね-外輪からなる2N+6次元の連成振動系としてそのスラスト方向の固有振動数を求めておき、回転中の転がり軸受けが発生するスラスト振動および/または音響を周波数解析にて、前記固有振動周波数成分のピーク値の大小によって劣化状態を判断する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ころがり軸受の劣化診断方法に関するものであり、特に鋼帯を搬送するハースロールやブライドルロールのような大型低速回転体の軸を支持する回転ころがり軸受に適した劣化診断方法に関するものである。
例えば鋼帯の焼鈍ラインなどには、炉内で鋼帯を走行させるために多数の大型ロールが用いられている。これらのロールのような大型低速回転体の軸はころがり軸受で支持されているが、初期の据付け不良や連続使用による軸の曲がりなどでミスアライメントが生じることがあり、軸受の内輪や外輪、あるいは軸受内部のボールやコロなどの転動体の劣化に繋がる。更にこのミスアライメントを放置しておくと、振動が発生したり、設備寿命の急速な低下などの重大なトラブルを引き起こすおそれがある。
従来から、軸受の劣化状態を定期的に診断することにより、トラブルを未然に防止するための努力がなされてきた。その代表的な方法は、熟練した作業員が回転中の軸受の音を聴き、異常の有無によって劣化状態を判断する聴音法である。しかしこの方法は作業員による個人差が大きいため、劣化を見逃す危険性がある。
また、従来から行われてきた他の代表的な方法として、振動ピックアップを軸受に当てて振動を検出する振動法がある(例えば、特許文献1)。この方法では、転動体が疵を通過する時間間隔を特徴周波数として捉え、その周波数成分を評価する。すなわち、疵付いた部分を転動体が周期的に通過することによって生ずる一定周波数の振動を、振動ピックアップにより検出する方法である。しかしこの方法は、300rpm以上の高速回転領域では優れた検出率を発揮するが、それよりも低速回転領域では発生周波数が数Hzであって振動エネルギーが低いため、低速回転ころがり軸受では検出率が低下するという問題があった。
当該問題を解決する手段として、本願出願人は、ころがり軸受を、内輪−ばね−転動体−ばね−外輪の連成振動系として、予めその固有振動周波数を求めておき、回転中のころがり軸受が発生する振動および/または音響を周波数解析して、100〜1000Hzの周波数領域に含まれる前記固有振動周波数成分のピーク値の大小によって劣化状態を判断する技術を開示している(特許文献2)。当該技術は、回転中のころがり軸受が発生する振動および/または音響を利用して疵の有無を検出することは従来と同様であるが、従来のように疵付いた部分を転動体が周期的に通過することによって生ずる特徴周波数の振動や音響をピックアップするのではなく、ころがり軸受自体を内輪−ばね−転動体−ばね−外輪の連成振動系と見て、その固有振動周波数成分のピーク値の大小で劣化状態を判断するものであり、ころがり軸受の内部に疵付いた部分があると、全体の振動や音響も増加するが必ずこの固有振動周波数成分も増加するため、そのピーク値の大小によって正確な診断が可能である。しかもこの固有振動周波数は回転速度に依存せず、低速回転する軸受であっても100〜1000Hzとなるから、マイクロフォン、加速度計、振動計などにより確実に検出することができる。
ただし、特許文献2記載の技術は、ラジアル方向の振動のみを考慮した連成振動モデルを採用し、その連成振動モデルを、内輪および複数の転動体各々2方向、合計2N+2個の振動を考慮した「内輪−ばね−転動体−ばね−外輪」からなる連成振動系とするものであり、スラスト方向の振動が優位となる劣化モード(ミスアライメント等)の検出には適さないという問題があった。
特開2001−296213号公報 特開2008−38949号公報
本発明は上記した従来の問題点を解決し、ころがり軸受の回転速度が低速であっても、スラスト方向の振動が優位となる劣化モード(ミスアライメント等)を精度よく検出することができ、劣化状態を正しく判断できるころがり軸受の劣化診断方法を提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するためになされた本発明のころがり軸受の劣化診断方法は、2N個の転動体と1個の内輪から構成される転がり軸受を、外輪-ばね-転動体-ばね-内輪-ばね-転動体-ばね-外輪からなる2N+6次元の連成振動系としてそのスラスト方向の固有振動数を求めておき、回転中の転がり軸受けが発生するスラスト振動および/または音響を周波数解析にて、前記固有振動周波数成分のピーク値の大小によって劣化状態を判断することを特徴とするものである。前記連成振動系のばねは非線形ばねであり、内輪は剛体、ばねは質点であることが好ましい。好ましい実施形態では、ころがり軸受が低速回転ころがり軸受であり、低速回転中の振動および/または音響を検出する。回転中の音響はマイクロフォンにより検出することができ、回転中の振動は加速度計または振動計により検出することができる。
本発明のころがり軸受の劣化診断方法は、回転中のころがり軸受が発生する振動および/または音響を利用して疵の有無を検出することは従来と同様であるが、従来のように疵付いた部分を転動体が周期的に通過することによって生ずる特徴周波数の振動や音響をピックアップするのではなく、ころがり軸受自体を外輪-ばね-転動体-ばね-内輪-ばね-転動体-ばね-外輪の連成振動系と見て、その固有振動周波数成分のピーク値の大小で劣化状態を判断する。
ころがり軸受自体を外輪-ばね-転動体-ばね-内輪-ばね-転動体-ばね-外輪の連成振動系とするモデルは、内輪の運動を3次元剛体運動、コロの運動を3次元質点運動としてモデル化したものであり、スラスト方向の振動を表わすことができる。
ミスアライメント等の発生によりスラスト方向の振動が変化すると、全体の振動や音響も増加するが必ずこの固有振動周波数成分も増加するため、そのピーク値の大小によって正確な診断が可能である。しかもこの固有振動周波数は回転速度に依存せず、低速回転する軸受であっても100〜1000Hzとなるから、マイクロフォン、加速度計、振動計などにより確実に検出することができる。従って、本発明によればころがり軸受の劣化状態を正確に診断することができ、ミスアライメントの放置による、振動発生や、設備寿命の急速な低下などの重大なトラブルを未然に回避することができる。
以下に本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
本発明においては先ず、診断対象となるころがり軸受の固有振動周波数を求める。このためには図1に示すように、内輪1と外輪2との間に多数の転動体3を配置したころがり軸受4を、連成振動系としてモデル化する。
ここでばね5とばね6は、接触している場合は荷重が変位の3分の2乗に比例し、接触していない場合は荷重が0となるような数1で表すことのできる非線形ばねである。ただしk1、k2はヘルツ理論を用いて内輪1と外輪2との径、内輪1や外輪2や転動体3のヤング率、ポアソン比を用いて求める。
内輪1や外輪2や転動体3のヤング率はそれぞれ多少異なるが、通常工業分野で使用されるベアリングでは、これらの値を同一としてこの後のシミュレーションを実施しても大きな影響がなく差し支えない。これは内輪1や外輪2や転動体3のポアソン比についても同様である。
本発明は、軸受自体を、内輪1の3次元剛体運動、複数(2N個)ある転動体3それぞれの3次元質点運動を考慮した連成振動系としてモデル化したものであり、転動体3の局所座標系を、i番目の転動体3について、転動体3の公転方向の同一速度で回転し接触している外輪から見て、内輪側をZ軸とする円筒座標系Oi'-xi'yi'zi' (i=1,…,2N)をとし、内輪1の局所座標系を、板厚を考慮しない質量Mpの円盤であるとし、慣性モーメントをJ´とし慣性主軸を局所座標系とすると、連成振動系の運動方程式は数2(転動体に関して2N個、内輪に関して6個の微分方程式)により表すことができる。下記式において、変換行列をCOPと表す。また、qはi番目のコロの位置ベクトル、pは内輪の位置ベクトル、ω'は内輪Pの角速度ベクトル、f´PQiは内輪Pから転動体Qへの接触反力、f´RQiは外輪Rから転動体Qへの接触反力、〜はチルダオペレータ(例えば数3)である。
上記の運動方程式について、まず、f´PQi及びf´RQiに関して以下の式(数4)が成立する。
数4において、k,lは接触形状及び弾性率から定まる定数でありヘルツ理論を用いて求めることができる。ここで、ξiは内輪Pと転動体Qとの近接距離、ηiは外輪Pと転動体Qとの近接距離であり、以下の式(数5)で定義される。
数5において、rPは転動体Qの重心から内輪との接点Pまでのベクトル(全体座標系)、rRは転動体Qの重心から外輪との接点Rまでのベクトル(全体座標系)であり、各々の幾何学的な関係を求めることで導出することができる。rPPも含めるとCOPを用いて、以下の式(数6)が成立する。
上記の運動方程式を数値シミュレーションにより解き周波数解析を実施すると、上記の連成振動系は図2のような周波数特性を示し、診断対象となるころがり軸受4の固有振動周波数を求めることができる。この固有振動周波数成分は、ころがり軸受4にスラスト方向の振動が優位となる劣化(ミスアライメント等)が発生すると発生する。しかも大小さまざまのころがり軸受4について計算した結果、ほとんど100〜1000Hzの周波数領域に含まれることが確認できた。
本発明では、図3に示すように、診断対象となるころがり軸受4が回転中に発生する音響をマイクロフォン7により検出し、周波数解析装置8によって周波数解析を行う。そして予め求めた固有振動周波数成分のピークにより、劣化状態を判断する。この本発明の方法によれば、実施例のデータに示すとおり、ころがり軸受4のスラスト方向の振動が優位となる劣化の有無を非常に精度よく検出することができる。
上記のようにころがり軸受4が回転中に発生する音響をマイクロフォン7により検出するほか、図4に示すようにころがり軸受4が回転中に発生する振動を加速度計または振動計9により検出し、周波数解析装置8によって周波数解析を行う方法を取ることもできる。この実施形態では振動計9として地震計のような高感度振動計(高感度加速度計)を使用している。ころがり軸受4が回転中に発生する振動のピーク周波数は軸受全体による連成振動計の固有振動数と一致するから、このピーク値の大小により、劣化状態を判断することができる。
図5には、ころがり軸受(型番:#22214、コロ数:N=19個(片側)、合計38個、内輪外半径42.3mm、外輪内半径55.9mm、コロ半径6.8mm、内輪質量68.5kg、コロ質量17g/個)について、ハンマリング試験による固有振動解析を行った結果を示している。また、ハンマリング試験による固有振動解析を行った結果と、上記運動方程式による数値計算結果との比較を表1に示している。
ころがり軸受(実施例1と同じ)について、実際の設備に組み込んで周波数解析を行った結果と、上記運動方程式による数値計算結果との比較を表2に示している。
上記実施例により、本発明のスラスト振動モデルは、軸受け全体のスラスト方向の固有振動を表していることが検証できた。
本発明の方法によってスラスト方向の固有振動数付近でのピークを傾向管理すれば、ころがり軸受の回転速度が低速である場合にも、スラスト方向の振動が優位となる劣化の有無を精度よく検出することができ、ころがり軸受の劣化状態を正しく判断することができる。
ころがり軸受を連成振動系としてモデル化した説明図である。 連成振動系の周波数特性を示すグラフである。 本発明の音響による劣化診断方法の模式図である。 本発明の振動による劣化診断方法の模式図である。 ハンマリング試験による固有振動解析を行った結果を示すグラフである。
1 内輪
2 外輪
3 転動体
4 ころがり軸受
5 ばね
6 ばね
7 マイクロフォン
8 周波数解析装置
9 振動計

Claims (5)

  1. 2N個の転動体と1個の内輪から構成される転がり軸受を、外輪-ばね-転動体-ばね-内輪-ばね-転動体-ばね-外輪からなる2N+6次元の連成振動系としてそのスラスト方向の固有振動数を求めておき、回転中の転がり軸受けが発生するスラスト振動および/または音響を周波数解析にて、前記固有振動周波数成分のピーク値の大小によって劣化状態を判断することを特徴とする転がり軸受の劣化診断方法
  2. 連成振動系のばねは非線形ばねであり、内輪は剛体、ばねは質点であることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受劣化診断方法
  3. ころがり軸受が低速回転ころがり軸受であり、低速回転中の振動および/または音響を検出することを特徴とする請求項1または2に記載のころがり軸受の劣化診断方法。
  4. 回転中の音響をマイクロフォンにより検出することを特徴とする請求項3に記載のころがり軸受の劣化診断方法。
  5. 回転中の振動を加速度計または振動計により検出することを特徴とする請求項3に記載のころがり軸受の劣化診断方法。
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