JP2011231642A - スクロール型圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】固定側渦巻壁を有した固定スクロールの剛性及び製造性を確保しつつ、前記固定側渦巻壁における根元付近への応力集中を緩和する。
【解決手段】スクロール型圧縮機10を構成する固定スクロール16には、内周部から外周部に向かって徐々に拡径する固定側渦巻壁22を備え、前記固定側渦巻壁22の内壁側に形成された内側壁インボリュート曲線36と、外壁側に形成された外側壁インボリュート曲線38との始点を通る基準線MLに対して前記固定側渦巻壁22の旋回方向と反対方向に所定角度傾斜した第1直線L1と、前記基準線MLに対して前記固定側渦巻壁22の旋回方向に所定角度傾斜した第2直線L2とを設定する。そして、第1直線L1と第2直線L2とがなす設定範囲S内に、前記固定スクロール16とリアハウジング14とを締結する締結ボルト34が配置される。
【選択図】図2

Description

本発明は、相互に噛み合わされて圧縮室を形成する固定スクロールと可動スクロールとを有し、前記可動スクロールの旋回によって流体を圧縮するスクロール型圧縮機に関する。
従来から、固定板と該固定板に直立した渦巻状の固定壁を有する固定スクロールと、可動板と該可動板に直立した渦巻状の可動壁を前記固定ラップに噛み合わせるように配置した可動スクロールとをハウジングの内部に備え、偏心する駆動ピンを介して前記可動スクロールを旋回させることにより、固定スクロールの固定壁及び可動スクロールの可動壁と固定板及び可動板との間で形成される圧縮室を外周部位から徐々に中央部位へと移動させて流体(例えば、冷媒)を圧縮させるスクロール型圧縮機が知られている。
このようなスクロール型圧縮機では、上述した流体を圧縮する圧縮工程や、圧縮された圧縮流体を吐出する吐出工程において、前記圧縮流体が高温且つ高圧となるため、前記固定板及び可動板に対してそれぞれ片持ち状に設けられた固定壁及び可動壁の根元部に応力集中が生じる。
このような固定壁及び可動壁に対する応力集中の緩和を目的としたスクロール型圧縮機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このスクロール型圧縮機では、固定スクロールを構成する固定板において、固定壁が設けられる端面とは反対側の端面に、T字状の凹部を設けることにより、前記固定板の剛性を部分的に低下させて変形を生じさせ、前記固定壁の根元部に生じる応力の大きさ及び方向を調整して該応力の集中を緩和している。
特開2006−274827号公報
しかしながら、上述したスクロール型圧縮機においては、固定スクロールの背面側に新たな凹部を設ける必要が生じるため、その加工を含めた製造工程が長くなると共に、前記凹部を設けることによる固定スクロールの剛性低下を回避することができない。
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、固定側渦巻壁を有した固定スクロールの剛性及び製造性を確保しつつ、前記固定側渦巻壁における根元付近への応力集中を緩和可能なスクロール型圧縮機を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、固定側渦巻壁を有した固定スクロールが複数の締結ボルトでハウジングに固定されるスクロール型圧縮機であって、
前記固定側渦巻壁は、内側の壁を形成する内側壁インボリュート曲線の開始点である内側壁インボリュート始点と、
外側の壁を形成する外側壁インボリュート曲線の開始点である外側壁インボリュート始点と、
を備え、
前記内側壁インボリュート始点と前記外側壁インボリュート始点とを通る基準線に対し、前記内側壁インボリュート始点を起点として、内周側から外周側に向かって旋回する前記固定側渦巻壁の旋回方向と反対方向に所定角度傾斜して延在する第1の直線と、前記内側壁インボリュート始点を起点とし、前記基準線に対して前記旋回方向と同一方向に所定角度傾斜して延在する第2の直線との間となる所定範囲内に前記締結ボルトが配置され、前記第1の直線と前記基準線とのなす第1角度が、10°以内に設定され、前記第2の直線と前記基準線とのなす第2角度が、45°以内に設定されることを特徴とする。
本発明によれば、固定スクロールを構成する固定側渦巻壁において、内側壁インボリュート始点と外側壁インボリュート始点とを通る基準線を設定し、前記内側壁インボリュート始点を起点とし、且つ、前記基準線に対して固定側渦巻壁の旋回方向と反対方向に所定角度だけ離間した第1の直線と前記基準線とがなす第1角度を10°以内とし、一方、前記基準線に対して固定側渦巻壁の旋回方向に所定角度だけ離間した第2の直線と該基準線とがなす第2角度を45°以内と設定している。そして、第1の直線と第2の直線とで囲まれた所定範囲内に、複数の締結ボルトのうちのいずれか1本を配置する。
従って、締結ボルトを所定範囲内に設けることによって、該締結ボルトを固定側渦巻壁の内周側端部に近接して設けることができ、それに伴って、外側壁インボリュート始点側の剛性を高めることが可能となるため、内側壁インボリュート始点側との間に生じていた剛性の差を補正して均衡化させることができる。その結果、可動スクロールの旋回作用下に圧縮された流体の圧力や、可動側渦巻壁との接触圧が固定側渦巻壁の内周側端部に付与された場合でも、剛性の均衡化された前記内周側端部の全体で負担することが可能となるため、前記外側壁インボリュート始点の根元近傍における応力集中を緩和することができる。
また、従来技術に係るスクロール型圧縮機のように、固定スクロールに対して応力低減を目的とした凹部を設ける必要がないため、該固定スクロールの剛性低下を招くことなく、例えば、耐久性の向上を図ることができると共に、前記凹部を加工等する工程も不要であるため、製造性の向上を図ることができる。
さらに、第1角度を、5°以内に設定し、且つ、第2角度を、15°以内に設定することにより、応力集中をさらに緩和させることが可能となり、さらに、前記第1角度を、前記基準線と前記第1直線とが一致した0°に設定し、且つ、前記第2角度を、5°以内に設定すると、前記応力集中をより一層緩和させることができて好適である。
さらにまた、締結ボルトは、その中心が所定範囲内となるように配置するとよい。
本発明によれば、以下の効果が得られる。
すなわち、固定スクロールを構成する固定側渦巻壁において、内側壁インボリュート始点を起点とし、且つ、基準線に対して固定側渦巻壁の旋回方向と反対方向に所定角度だけ離間した第1の直線と前記基準線とがなす第1角度を10°以内とし、一方、前記基準線に対して固定側渦巻壁の旋回方向に所定角度だけ離間した第2の直線と該基準線とがなす第2角度を45°以内と設定し、前記第1の直線と第2の直線とで囲まれた範囲内に、複数の締結ボルトのうちのいずれか1本を配置することにより、固定側渦巻壁の内周側端部において、外側壁インボリュート始点側の剛性を高めることが可能となり、内側壁インボリュート始点側との間に生じていた剛性の差を補正して均衡化させることができる。その結果、外側壁インボリュート始点の根元近傍における応力集中を緩和することができる。また、従来技術に係るスクロール型圧縮機のように、固定スクロールに対して応力低減を目的とした凹部を設ける必要がないため、該固定スクロールの剛性低下を招くことなく、しかも、前記凹部を加工等する工程も不要であるため、製造性の向上を図ることができる。
本発明の実施の形態に係るスクロール型圧縮機の一部省略縦断面図である。 図1のスクロール型圧縮機を構成する固定スクロールを固定側渦巻壁側から見た平面図である。 図2に示す固定側渦巻壁における内周先端部の根元近傍に生じる応力と、固定スクロールにおける締結ボルトの配置される範囲を示す第1及び第2角度との関係を示す特性曲線図である。 固定側渦巻壁及び可動側渦巻壁と、該固定側渦巻壁の内周先端部に付与される合力との関係を示す模式説明図である。
本発明に係るスクロール型圧縮機について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係るスクロール型圧縮機を示す。
このスクロール型圧縮機10は、図1に示されるように、カップ状に形成されたフロントハウジング12と、冠状に形成されたリアハウジング14とを含む。フロントハウジング12の上部には、例えば、冷媒ガス等からなるガス(流体)をその内部へと導入する吸入口(図示せず)が形成されている。一方、リアハウジング14の上部には、スクロール型圧縮機10により前記ガスが圧縮された圧縮ガスを、例えば、冷媒循環系へと吐出する吐出口(図示せず)が形成されている。
一方、フロントハウジング12の内部には、固定スクロール16と、該固定スクロール16に対して旋回する可動スクロール18とが配設される。
固定スクロール16は、リアハウジング14に連結される外周縁部を含む固定側基板部20と、この固定側基板部20から可動スクロール18側へと渦巻状に立設される固定側渦巻壁22とを有する。なお、固定側渦巻壁22における固定側基板部20側を根元24側と称し、その反対側を上端26側と称することもある。
固定スクロール16の背面にはリアハウジング14が装着され、これにより、前記吐出口に連通するガス吐出室28が形成される。また、固定側基板部20の略中心部には、後述するガス圧縮室30からガス吐出室28へと連通する圧縮ガス導出孔32が形成されると共に、前記固定側基板部20は、複数(例えば、3本)の締結ボルト34によってリアハウジング14と互いに連結される。この締結ボルト34は、リアハウジング14及び固定スクロール16の軸線を中心として周方向に沿って互いに所定角度離間して配置される。
また、固定側基板部20の背面には、圧縮ガス導出孔32を閉塞する一方、ガス圧縮室30において圧縮された圧縮ガスが所定圧となった際に、開動作してガス吐出室28へ該圧縮ガスを導出する吐出弁(図示せず)が備えられている。
固定側渦巻壁22は、図2に示されるように、該固定側渦巻壁22側から固定スクロール16を見た際に、内周部から外周部に向かって反時計回り(矢印A方向)に徐々に拡径する渦巻状に形成される。また、固定側渦巻壁22の内壁及び外壁は、それぞれインボリュート曲線で形成される。ここでは、固定側渦巻壁22の内壁側を、内側壁インボリュート曲線36といい、前記固定側渦巻壁22の外壁側を、外側壁インボリュート曲線38という。
そして、固定側渦巻壁22において、固定側基板部20の中央部側となる内周先端部22a近傍には、内壁面側に内側壁インボリュート曲線36の開始点である内側壁インボリュート始点P1が設けられ、一方、外壁面側には外側壁インボリュート曲線38の開始点である外側壁インボリュート始点P2が設けられる。
また、固定側渦巻壁22の内周先端部22a近傍は、略直角に接合される固定側基板部20と根元24側との接合部位が、断面R形状に形成されていると好適である。すなわち、固定側基板部20と根元24側との接合部位が、断面直角状ではなく、断面円弧状で緩やかに接合されるとよい。これにより、固定側渦巻壁22の内周先端部22aにおいて、前記根元24近傍に生じる応力集中を緩和することが可能となる。
可動スクロール18は、図1に示されるように、可動側基板部40と、該可動側基板部40から固定スクロール16側へと渦巻状に立設され、前記固定側渦巻壁22に噛み合う可動側渦巻壁42とを有する。また、可動側基板部40には、その前面側に開口した円形凹部44が形成されている。
そして、固定スクロール16を構成する固定側基板部20及び固定側渦巻壁22と、可動スクロール18を構成する可動側基板部40及び可動側渦巻壁42とによってガス圧縮室30が形成される。このガス圧縮室30を封止するために、固定側渦巻壁22及び可動側渦巻壁42の各端部には、それぞれ可動側基板部40及び固定側基板部20に摺接するようにシール部材46が装着されている。
回転シャフト48は、その一端である軸部50がフロントハウジング12の端部に設けられた開口に挿入され、第1軸受52を介して回転自在に支持される。また、軸部50の外周側には、フロントハウジング12との間にガス吸入室54を封止するための封止部材56が嵌挿される。
一方、回転シャフト48の他端には、軸部50に対して拡径した支持体58が設けられ、前記支持体58は、第2軸受60に挿通されることによって回転自在に支持される。なお、第2軸受60はフロントハウジング12の内部に保持される。支持体58には、その軸心に対して偏心した駆動ピン62が設けられている。
ブッシュ64は、可動スクロール18の円形凹部44に旋回軸受66を介して回転可能に嵌挿される。ブッシュ64は、その軸心に偏心して形成された孔部68に前記駆動ピン62が挿入されることで回転シャフト48によってスイング運動可能に旋回され、これにより、可動スクロール18を旋回半径可変に旋回させる。
また、ブッシュ64は、係止リング70により駆動ピン62の軸方向への抜け止めがなされた状態で、該駆動ピン62を中心として回転可能に構成されている。なお、駆動ピン62の根元24近傍には、ブッシュ64を介してバランスウェイト72が装着される。
可動スクロール18における可動側基板部40とフロントハウジング12の内部に形成された支持面との間には、該可動スクロール18を回転シャフト48の軸方向に対して直交方向に摺動可能に支持するスラスト軸受74が設けられる。
一方、フロントハウジング12の開口の外周部には、第3軸受76を介してプーリ78が装着されている。このプーリ78に図示しないエンジン等の回転駆動源から回転力が伝達され、電磁クラッチ80のオン/オフ動作によって前記回転シャフト48への前記回転力の伝達あるいは切り離しが行われる。
本発明の実施の形態に係るスクロール型圧縮機10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、固定スクロール16とリアハウジング14とを連結する締結ボルト34の配置を設定する場合について簡単に説明する。
先ず、図2に示されるように、固定スクロール16を固定側渦巻壁22側から見た状態で、該固定側渦巻壁22を構成する内側壁インボリュート曲線36の開始点である内側壁インボリュート始点P1と、外側壁インボリュート曲線38の開始点である外側壁インボリュート始点P2とを通る基準線MLを設定する。この基準線MLは、固定側基板部20の外周側に向かって延在する。
次に、内側壁インボリュート始点P1を起点とし、且つ、前記基準線MLに対して固定側渦巻壁22の旋回方向と反対方向となる時計回り(矢印B方向)に所定角度だけ離間した第1直線L1を設定すると共に、反対に、前記内側壁インボリュート始点P1を起点とし、且つ、前記基準線MLに対して固定側渦巻壁22の旋回方向となる反時計回り(矢印A方向)に所定角度だけ離間した第2直線L2を設定する。
そして、内側壁インボリュート始点P1を起点として第1直線L1と基準線MLとがなす第1角度θ1は、例えば、10°以内に設定され(θ1≦10°)、前記内側壁インボリュート始点P1を起点として第2直線L2と基準線MLとがなす第2角度θ2は、例えば、45°以内に設定される(θ2≦45°)。
すなわち、第1直線L1と第2直線L2とが、基準線MLを間として第1及び第2角度θ1、θ2でそれぞれ形成され、前記第1直線L1と第2直線L2との間に形成された扇状の設定範囲Sが、固定スクロール16の固定側基板部20に対して締結ボルト34を配置すべき範囲となる。詳細には、締結ボルト34の中心となる中心点CPを、設定範囲S内となるように配置する。この中心点CPは、締結ボルト34におけるねじ部の中心線上となる位置に設定される。
この設定範囲Sは、内側壁インボリュート始点P1を起点とした第1直線L1から第2直線L2までとなる55°(θ1+θ2)の範囲で、且つ、固定側基板部20の外周面20aより半径内方向となる範囲である。換言すれば、設定範囲Sは、第1直線L1、第2直線L2及び固定側基板部20の外周面20aによって囲まれた範囲(図2中、斜線範囲参照)となる。
さらに、上述した第1角度θ1を、例えば、5°以内に設定し(θ1≦5°)、且つ、第2角度θ2を、例えば、15°以内に設定すると好適であり(θ2≦15°)、前記第1角度θ1を、例えば、0°、すなわち、基準線MLと第1直線L1とが一致するように設定し(θ1=0°)、且つ、前記第2角度θ2を、例えば、5°以内に設定すると最適である(θ2≦5°)。
次に、上述した締結ボルト34を配置する際の第1及び第2角度θ1、θ2の設定方法について、図3を参照しながら簡単に説明する。この図3は、固定側渦巻壁22における内周先端部22aに生じる応力と、締結ボルト34を配置すべき設定範囲Sをなす第1及び第2角度θ1、θ2との関係を示す特性曲線図である。なお、ここでは、便宜上、基準線MLを基準とし、第1角度θ1をマイナス(−)で記載し、第2角度θ2をプラス(+)で記載して説明する。すなわち、図3における0°が、基準線MLであり、その左側の角度が第1角度θ1、右側の角度が第2角度θ2を示している。
この図3から諒解されるように、例えば、第1角度θ1が、−10°であり、且つ、第2角度θ2が、45°である場合(θ1=−10°、θ2=45°)に、最大応力の発生する固定側渦巻壁22における根元24近傍の応力がそれぞれ許容応力値Fmax以下となり、しかも、前記第1角度θ1における応力値と前記第2角度θ2における応力値とが略同等となる。このように、固定側渦巻壁22における根元24近傍の応力が許容応力値Fmax以下であり、しかも、発生する応力値が略同等となる第1及び第2角度θ1、θ2が設定される。
また、第1角度θ1が、−5°であり、且つ、第2角度θ2が、15°である場合(θ1=−5°、θ2=15°)には、さらに固定側渦巻壁22における根元24近傍の発生応力を低減することが可能となり、前記第1角度θ1を、0°とし、且つ、前記第2角度θ2が、5°とすると(θ1=0°、θ2=5°)、さらに前記発生応力を低減できて最適であることが図3から諒解される。
すなわち、上述したように複数の締結ボルト34のうちのいずれか1本を、第1角度θ1と第2角度θ2とがなす設定範囲S内に設ける際、第1及び第2角度θ1、θ2の角度がより小さくなるのに伴って、固定側渦巻壁22における根元24近傍の発生応力が低減していることが諒解される。
次に、上述したスクロール型圧縮機10の動作並びに作用効果について説明する。
先ず、電磁クラッチ80の動作作用下に、回転シャフト48に回転力が伝達されると、支持体58が第2軸受60を介して回転し、これによって前記支持体58に固着された駆動ピン62が回転シャフト48の軸心に対して偏心した状態で旋回する。これにより、ブッシュ64が回転して、スラスト軸受74に摺動可能に支持された可動スクロール18が自転を拘束されながら固定スクロール16に対して旋回する。このとき、バランスウェイト72は、可動スクロール18の旋回による遠心力に平衡する遠心力を発生させて旋回している。
その結果、固定スクロール16における固定側渦巻壁22と可動スクロール18における可動側渦巻壁42との間で形成されるガス圧縮室30が外周部位から徐々に中央部位へと進行し、シール部材46の封止作用下にガス吸入室54に導入されたガスが圧縮される。そして、圧縮された圧縮ガスが、圧縮ガス導出孔32からガス吐出室28へと導出され、図示しない吐出口を介して図示しない冷媒循環系へと吐出される。
ここで、可動側渦巻壁42及び固定側渦巻壁22によってガス圧縮室30でガスが圧縮される場合について、図4を参照しながら説明する。
図4に示されるように、可動スクロール18の旋回によって可動側渦巻壁42における内周先端部42aと固定側渦巻壁22における内周先端部22aとからなるガス圧縮室30の容積が最も小さくなった時、すなわち、スクロール型圧縮機10における圧縮工程の最終段階において前記内周先端部22a、42a同士が互いに離間する直前に前記ガス圧縮室30内におけるガスの圧力が最大となる。この場合、一般的に、固定側渦巻壁22の内側壁インボリュート始点P1において可動側渦巻壁42の内周先端部42aが離間し、前記固定側渦巻壁22の内周先端部22aにおける外側壁インボリュート始点P2で、該固定側渦巻壁22が、前記可動側渦巻壁42の内壁面から離間している。
また、この場合、固定側渦巻壁22の内周先端部22aには、圧縮されたガスのガス圧力と、相手側となる可動スクロール18との接触作用下に生じる接触圧とが付与されている。このガス圧力と接触圧との合力Gは、固定側渦巻壁22の内周先端部22aと可動側渦巻壁42の内周先端部42aとが互いに離間する直前に最も大きくなり、その合力Gは、前記内側壁インボリュート始点P1と外側壁インボリュート始点P2とを通る基準線MLに対して垂直な方向に作用する。詳細には、前記基準線MLから固定側渦巻壁22の内周先端部22a側に向かって作用する。
この際、固定側渦巻壁22は、内側壁インボリュート始点P1側に対して外側壁インボリュート始点P2側が、渦巻形状の途切れた端部となっているため、前記内側壁インボリュート始点P1側に対して剛性が低く変形しやすい傾向がある。換言すれば、固定側渦巻壁22の内周先端部22aにおいて、内側壁インボリュート始点P1側と外側壁インボリュート始点P2側との間で剛性の差が生じている。
本実施の形態では、固定側渦巻壁22側から見た状態で、該固定側渦巻壁22を構成する内側壁インボリュート始点P1と外側壁インボリュート始点P2とを通る基準線MLを設定し、前記内側壁インボリュート始点P1を起点とし、且つ、前記基準線MLに対して固定側渦巻壁22の旋回方向と反対方向となる時計回り(矢印B方向)に所定角度だけ離間した第1直線L1と前記基準線MLとがなす第1角度θ1と、前記基準線MLに対して固定側渦巻壁22の旋回方向となる反時計回り(矢印A方向)に所定角度だけ離間した第2直線L2と前記基準線MLとがなす第2角度θ2とを設定した際、例えば、第1角度θ1が10°に設定された第1直線L1と、前記第2角度θ2が45°に設定された第2直線L2とで囲まれた設定範囲Sを設定する。そして、この設定範囲S内に、固定スクロール16とリアハウジング14とを連結する複数の締結ボルト34のうちのいずれか1本を配置する。
これにより、固定側渦巻壁22の内周先端部22aにおいて、外側壁インボリュート始点P2側の剛性を高めることができるため、内側壁インボリュート始点P1側との間に生じていた剛性の差を補正して均衡させることができる。その結果、可動スクロール18の旋回作用下に可動側渦巻壁42と固定側渦巻壁22との間で圧縮されたガスのガス圧力が前記固定側渦巻壁22における内周先端部22aに付与され、しかも、可動側渦巻壁42との接触圧が合わせて前記内周先端部22aに付与された場合でも、前記内周先端部22aにおいて、外側壁インボリュート始点P2近傍で生じていた応力を前記内周先端部22aにおける広範囲で負担することが可能となるため、前記外側壁インボリュート始点P2近傍における応力集中を緩和することができる。
また、従来技術に係るスクロール型圧縮機のように、固定スクロール16に対して応力低減を目的とした凹部を設ける必要がないため、該固定スクロール16の剛性低下を招くことなく、例えば、耐久性の向上を図ることができると共に、前記凹部を加工等する工程も不要であるため、製造性の向上を図ることができる。
さらに、固定側渦巻壁22の内周先端部22aにおいて、その根元24側と固定側基板部20との接合部位を断面R形状に形成することにより、前記根元24側における応力集中をより一層好適に緩和することができる。
さらにまた、上述した本実施の形態に係るスクロール型圧縮機10では、3本の締結ボルト34によって固定スクロール16とリアハウジング14とを互いに連結する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、4本の締結ボルト34を用いて連結すると共に、そのうちのいずれか1本を設定範囲S内となるように配置すればよい。
なお、本発明に係るスクロール型圧縮機は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
10…スクロール型圧縮機 12…フロントハウジング
14…リアハウジング 16…固定スクロール
18…可動スクロール 20…固定側基板部
22…固定側渦巻壁 22a、42a…内周先端部
24…根元 28…ガス吐出室
30…ガス圧縮室 34…締結ボルト
36…内側壁インボリュート曲線 38…外側壁インボリュート曲線
40…可動側基板部 42…可動側渦巻壁
48…回転シャフト 58…支持体
62…駆動ピン 64…ブッシュ

Claims (4)

  1. 固定側渦巻壁を有した固定スクロールが複数の締結ボルトでハウジングに固定されるスクロール型圧縮機であって、
    前記固定側渦巻壁は、内側の壁を形成する内側壁インボリュート曲線の開始点である内側壁インボリュート始点と、
    外側の壁を形成する外側壁インボリュート曲線の開始点である外側壁インボリュート始点と、
    を備え、
    前記内側壁インボリュート始点と前記外側壁インボリュート始点とを通る基準線に対し、前記内側壁インボリュート始点を起点として、内周側から外周側に向かって旋回する前記固定側渦巻壁の旋回方向と反対方向に所定角度傾斜して延在する第1の直線と、前記内側壁インボリュート始点を起点とし、前記基準線に対して前記旋回方向と同一方向に所定角度傾斜して延在する第2の直線との間となる所定範囲内に前記締結ボルトが配置され、前記第1の直線と前記基準線とのなす第1角度が、10°以内に設定され、前記第2の直線と前記基準線とのなす第2角度が、45°以内に設定されることを特徴とするスクロール型圧縮機。
  2. 請求項1記載のスクロール型圧縮機において、
    前記第1角度が、5°以内に設定され、且つ、前記第2角度が、15°以内に設定されることを特徴とするスクロール型圧縮機。
  3. 請求項2記載のスクロール型圧縮機において、
    前記第1角度は、前記基準線と前記第1直線とが一致した0°に設定され、且つ、前記第2角度が、5°以内に設定されることを特徴とするスクロール型圧縮機。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクロール型圧縮機において、
    前記締結ボルトは、その中心が前記所定範囲内となるように配置されることを特徴とするスクロール型圧縮機。
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CN107503938A (zh) * 2017-10-09 2017-12-22 合肥圣三松冷热技术有限公司 一种涡旋压缩机涡旋型线的设计方法

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