JP2011231386A - 鉄系溶射皮膜用溶射ワイヤ - Google Patents

鉄系溶射皮膜用溶射ワイヤ Download PDF

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Abstract

【課題】溶射皮膜中のC含有量を適正な含有量として溶射皮膜の耐摩耗性を十分に確保できる一方、ワイヤの伸線加工性,ワイヤ収納性を良好に確保でき、また溶射皮膜の仕上加工の際の被削性も良好となし得る鉄系溶射皮膜用溶射ワイヤを提供する。
【解決手段】溶射ワイヤを質量%でC:0.20超〜0.30%,Si:0.20〜0.60%,Mn:1.20〜2.30%、且つ2Si+1.10≦Mnで残部Fe及び不可避的成分の組成を有するものとなす。
【選択図】 なし

Description

この発明は自動車エンジンのシリンダボア内面への溶射用等に用いて好適な溶射皮膜用の溶射ワイヤ、特に鉄系の溶射ワイヤに関する。
従来、アルミニウム合金(以下アルミ合金とする)製の自動車エンジンのシリンダブロックにおけるシリンダボア内面に対して強度,耐摩耗性,摺動性等の機能を付与する手段として、シリンダボア内面に鋳鉄ライナを装着することが行われている。
しかしながら鋳鉄製ライナの場合、その肉厚が厚いためにライナ自体、ひいてはシリンダブロックの重量が重くなってしまう。
そこでエンジン部品の軽量化,性能向上の観点から鋳鉄製ライナをシリンダボアに装着するのに代えて、シリンダボア内面に鉄系の溶射皮膜を形成することが行われている。
鋳鉄製ライナに代えてこのような鉄系の溶射皮膜を形成するに際し、溶射皮膜の硬さ,耐摩耗性を確保するため、従来にあっては溶射皮膜に所要量のCを含有させるべく溶射材料としてC含有量の高いものを用いていた。
例えば溶射材料として溶射ワイヤを用いる場合、従来にあっては、例えば0.4C-0.2Si-0.7Mn-残部Feの組成を有する溶射ワイヤ等C含有量の高い溶射ワイヤを用いていた。
しかしながらこのようなC含有量の高い従来の溶射ワイヤの場合、高いC含有量によって伸線加工性が低下し、これが製造コストの上昇に繋がる問題の他、線材の引張強度が大きくなることによってワイヤを所定の収納器に収納する際の収納性が悪化してしまう問題を生じる。
溶射ワイヤは、例えば図6(A)に示しているようなリール(収納器)に巻き付けるようにして収納したり(ワイヤ量が20kg程度の場合)、或いは図6(ロ)に示しているようにドラム缶状の円筒状の容器(収納器)12の内部に巻回状態に収納したりするが(ワイヤ量が250kg程度の場合)、溶射ワイヤが硬く、引張強度が大き過ぎると、溶射ワイヤがはね出してしまってこれを綺麗な形に巻き、整えた状態に収納器に納めることが難しいといった問題を生じる。
更に、従来にあっては溶射皮膜を形成した後において、その溶射皮膜を仕上加工する際の被削性が劣化してしまうといった問題も生じていた。
これらの問題点はC含有量を少なくすることで改善できるが、C含有量を少なくすると耐摩耗性等の特性が不足してしまう。
溶射ワイヤを用いた溶射の方法として、図7の模式図に示すようなアーク溶射、詳しくは直流電圧を印加した状態で2本の溶射ワイヤ14,14を送給してそれらの先端部で接触させ(短絡させ)、そこでアークを発生させてワイヤ先端部を溶融し、そしてその溶融した材料(溶滴)に対してノズル16から圧縮空気を噴射することで、溶滴を細かい粒子として飛翔させ、そして飛翔した粒子を基材18表面に堆積させて溶射皮膜20を形成する方法を好適に用い得るが、その際溶融した粒子が空気と接触することで溶射材料中のCがOと反応して大気中に失われ、その結果溶射皮膜20中のC量が低下してしまうといった現象を生じる。
伸線加工性の確保、引張強度の増大を抑制してワイヤ収納性を確保すべくワイヤ中のC含有量を低く抑えておくと、溶射によってワイヤ中のCが更に失われて溶射皮膜中のCが低下してしまい、耐摩耗性を十分に確保できなくなってしまうのである。
溶射ワイヤにはまた、その他の特性として溶射皮膜が繰り返し衝撃を受けた場合の耐皮膜剥離性が優れていることが求められる。
例えばシリンダブロックの内面に施される溶射皮膜の場合、高い燃焼圧力等に基づいて繰返し高荷重が衝撃的に加わる。
その繰返しの衝撃荷重は溶射皮膜を剥離させる力として作用してしまう。
溶射ワイヤとしては、溶射皮膜がこのような繰返し作用する衝撃荷重による剥離に対して高い耐性を有するものであることが求められる。
尚本発明に対する先行技術として、下記特許文献1には「溶射材料、シリンダ及び溶射皮膜の形成方法」についての発明が示され、そこにおいて「少なくとも2〜7重量%のSiと、0.3〜2.0重量%のCと、3〜20重量%のCrと、を含有する鉄合金粉末」から成る溶射材料を用いて溶射皮膜を形成する点が開示されている。
但しこの特許文献1に開示のものは、溶射材料が粉末である点で本発明とは基本的に異なっている。
また下記特許文献2には「溶射被膜とその形成方法、溶射材料線材およびシリンダブロック」についての発明が示され、そこにおいて「主成分であるFeと、0.01〜0.2重量%のCと、0.25〜1.7重量%のSiと、を含有するアーク溶射用線材」を用いて溶射皮膜を形成する点が開示されている。
この特許文献2に開示のものは、溶射材料として線材(ワイヤ)を用いるものであるが、このものは線材のC含有量が本発明の溶射ワイヤに比べて低く、またMnとSiとの成分の関係が規定されていない点で本発明と異なる。
更に下記特許文献3には「鉄系溶射被膜、その形成方法及び摺動部材」についての発明が示され、そこにおいて「アルミ合金製母材の表面を被覆する鉄系溶射被膜において、上記鉄系溶射被膜の主原料である線材又は粉末が鉄を主成分とし、上記線材又は粉末に含まれる炭素量(C)が、0.12≦C(質量%)の範囲にあることを特徴とする鉄系溶射被膜」が開示されている。
但しこの特許文献3に開示のものはMnの含有量が本発明に比べて低く、本発明と別異のものである。
特開2004−244709号公報 特開2008−240029号公報 特開2009−155720号公報
本発明は以上のような事情を背景とし、溶射皮膜中のC含有量を適正な含有量として溶射皮膜の耐摩耗性を十分に確保できる一方、ワイヤの伸線加工性,引張強度の低下によるワイヤ収納性を良好に確保でき、また溶射皮膜の仕上加工の際の被削性も良好となし得る鉄系溶射皮膜用溶射ワイヤを提供することを目的としてなされたものである。
而して請求項1のものは、質量%でC:0.20超〜0.30%,Si:0.20〜0.60%,Mn:1.20〜2.30%、且つ2Si+1.10≦Mn(式1)(但し式1中の元素記号は対応する元素の含有質量%を表す)で残部Fe及び不可避的成分の組成を有することを特徴とする。
請求項2のものは、請求項1において、質量%でV:0.05〜0.25%を更に含有していることを特徴とする。
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、質量%でB:0.002〜0.005%を更に含有していることを特徴とする。
請求項4のものは、請求項1において、質量%でCa:0.0015〜0.0030%,S:0.05〜0.22%,Ti:0.15〜0.40%,Te:0.03〜0.07%の1種または2種以上を更に含有していることを特徴とする。
発明の作用・効果
以上の本発明は、溶射ワイヤにおけるC含有量を低めに設定する一方、Mn含有量を高めに設定し、またMnとSiとが一定の関係を満たすように成分規定した点を一つの特徴としたものである。
本発明では、溶射ワイヤのC含有量が従来に比べて低量であるにも拘わらず、溶射皮膜中にCを多く残し含有させることができる。
これは次の理由による。
本発明では、上記のようにワイヤ中のMn含有量を高く設定しており、このMnは脱酸剤として用いられることからも分かるように、Cに比べて酸素との反応性が高く、Cに優先してこのMnが酸素と反応することにより、Cが酸素と反応しガスとなって溶射材料から失われていくのを抑制する働きをなす。
そのために本発明ではワイヤ中のC量を低量としているにも拘わらず、溶射皮膜中にCを適正な量で多く含有させることができ、これによって溶射皮膜における耐摩耗性を高く確保することが可能である。
一方においてワイヤにおけるC含有量は低量であるため、ワイヤの伸線加工性を高く確保し、またワイヤの引張り強度を従来に比べて適正な引張り強度に落とし、これによってワイヤを収納器に収納する際のワイヤ収納性を高く確保することができる。
本発明は、溶射ワイヤ中のMnの含有量を多くするとともにMnとSiの含有量を、2Si+1.10≦Mn(式1)を満たすように成分規定する。
図1は本発明における溶射ワイヤのSi量とMn量との関係を表している。
これは次のような意味を有している。
溶射ワイヤに含まれるMnとSiは、それぞれが独立してMn酸化物,Si酸化物を生成するのと併せて、MnとSiとが複合した形で酸化物(複合酸化物)を生成する。
而してMnとSiとの含有量を上記に規定しておくことで、MnとSiとの低融点の複合酸化物の生成量を多くすることができる。
これにより溶射ワイヤの溶滴を噴射ガスにより細かな粒子として基材表面に付着堆積する際に、粒子がより扁平な形となって基材表面に付着堆積し、溶射皮膜形成するようになる。
図2の模式図に示しているように、融点が高く溶融粘性の高い粒子は(ロ)に示しているように球形に近い形を保って基材表面に付着堆積し、このとき粒子と粒子との間には多くの空隙が生じる。
一方低融点のMn,Si複合酸化物を多く生じた溶滴の粒子では、基材に当った粒子が扁平化し易く且つその扁平形状を保ってゆっくりと固化し基材表面に堆積する。この場合粒子と粒子との間の空隙は小さくなり、各粒子は強い結合力で結合して緻密な溶射皮膜を形成する。
そのため本発明の溶射ワイヤを用いた溶射皮膜は優れた耐皮膜剥離性を有する。
本発明では、必要に応じて溶射ワイヤにVを0.05〜0.25%の範囲内で更に含有させておくことができる(請求項2)。
これにより溶射皮膜の焼入性を高めることができる。
本発明ではまた、溶射ワイヤにBを0.002〜0.005%の範囲内で更に含有させておくことができる(請求項3)。
Bを含有させておくことで溶射皮膜の焼入性を高めることができる。
本発明ではまた、溶射ワイヤにCa:0.0015〜0.0030%,S:0.05〜0.22%,Ti:0.15〜0.40%,Te:0.03〜0.07%の1種又は2種以上を更に含有させておくことができる(請求項4)。
これにより溶射皮膜の被削性を高めることができる。
次に本発明における各化学成分の限定理由を以下に説明する。
C:0.20超〜0.30%
Cは溶射皮膜の硬さ,耐摩耗性を確保する上で必要な元素であり、0.20%以下であると硬さ,耐摩耗性を確保できない。
一方でC量が0.30%を超えて多量になるとワイヤの伸線加工性が悪くなって製造性の低下をもたらすとともに、硬さ,引張強度が大となり過ぎてワイヤ収納性が悪化し、また被削性が低下する。
そこで本発明ではCの含有量を0.30%以下とする。
Si:0.20〜0.60%
Siの含有量が0.20%未満であるとMnとSiの複合酸化物が十分に生成されず、溶射皮膜の硬さが不十分となり、十分な耐摩耗性が得られない。
一方Siが0.60%を超えて多量になるとMn量とのバランスを失してMnとの複合酸化物を効果的に多く生成できず、溶射皮膜の皮膜強度が弱くなって摩耗減量が大きくなる。
Mn:1.20〜2.30%
脱酸力の高いMnは、CがOと反応するのを抑制して溶射皮膜中にCを多く残留させる働きをなす。Mnはまた溶射皮膜の焼入性を高める上でも有用である。そのためにはMnの含有量を1.20%以上としておく必要がある。好ましくは1.90%以上、より好ましくは2.00%超としておく。
一方2.30%を超えて多量に含有させると、溶射ワイヤの強度が高くなり過ぎて製造性の悪化を招く。
従って本発明ではMnの含有量を2.30%以下とする。
2Si+1.10≦Mn(式1)
Mnを単に多く含有させても、それ以上にSiが含有されるとSi酸化物が優先的に析出され、溶射皮膜の緻密化,皮膜強度の高強度化に寄与するMn,Si複合酸化物を十分に生成させることができない。本発明においてMnとSi量を上記関係を満たすように含有させることでMn,Si複合酸化物を有効に多く生成させることができ、溶滴を粒子化したときの粒子の扁平率を高め得て緻密な溶射皮膜を形成することができる。
V:0.05〜0.25%
Vは溶射皮膜の焼入性を高める上で有効であり、本発明では0.05〜0.25%の範囲内で含有させる。
Vが0.25%を超えて多量になると溶射ワイヤの強度が高くなり過ぎて製造性の悪化をもたらす。
B:0.002〜0.005%
Bもまた溶射皮膜の焼入性を高める上で有効であり、本発明では0.002%以上の量で溶射ワイヤに含有させる。
但し0.005%を超えて多量に含有させると溶射ワイヤの強度が高くなり過ぎて製造性の悪化をもたらす。
Ca:0.0015〜0.0030%
S:0.05〜0.22%
Ti:0.15〜0.40
Te:0.03〜0.07%
これらCa,S,Ti,Teは被削性を高める上で有効な成分である。但し上記の下限値未満では十分な効果が得られない。一方上限値を超えて多く含有させても効果は飽和してしまう。
本発明の溶射ワイヤにおけるSi量とMn量との関係を表した図である。 本発明の溶射ワイヤを用いた場合に緻密な溶射皮膜が形成される理由を説明した説明図である。 本発明の実施形態における摩耗深さの評価方法の説明図である。 同実施形態における摩耗減量の評価方法の説明図である。 実施例の溶射皮膜の研削後の表面性状を従来例と比較して示した図である。 溶射ワイヤの収納性を説明するための説明図である。 溶射ワイヤを用いてアーク溶射を行う方法を模式的に示した図である。
次に本発明の実施形態を以下に説明する。
表1に示す組成の溶射ワイヤを製造し、溶射試験を行って以下の条件で表1に示す摩耗深さ,摩耗減量(耐皮膜剥離性),ワイヤ引張強度等の特性を測定し評価を行った。
I.溶射条件
図7に模式図で示したアーク溶射によって基材に対し表1に示す各種組成の溶射ワイヤを用いて溶射を行った。
ここで基材としては、JIS H 4000に規定する熱処理型展伸材のアルミニウム合金A6061(成分は0.6%Si-0.2%Cu-0.2%Cr-1.0%-Bal.Al,形状は厚さ9mm、幅100mm、長さ250mmの板状)を用い、その表面に膜厚400μmで溶射皮膜を形成した。
溶射条件については以下の条件とした。
溶射方法:アーク溶射(2線式)
溶射電流:200A
溶射電圧:28V
使用ガス:空気
ガス圧:60psi
溶射距離:40mm
溶射ピッチ:7mm
トラバース速度:100mm/sec
II.摩耗深さ
上記の試験片に対して、図3に示す方法で摩耗深さの測定を以下のようにして行った。
詳しくは、ヒータ22付きの保持部24に試験片Sを固定保持し、そして試験片Sの表面に荷重ピン26を荷重100Nで押し付け、また潤滑油(エンジンオイル)28を給油量:3ml/hrで摺動面に供給しつつ、アクチュエータ30により試験片Sを図中左右方向に往復摺動させ、溶射皮膜の摩耗深さを測定した。
ここで荷重ピン26は組成がSKD11で、直径φ8mmの合金鋼(18Rの面取りをし、バフ磨耗を実施したもの)を使用し、摺動面にCrNを被覆形成してある。
また往復のストローク長は50mmで、移動速度は6m/minとした。
以上の摺動運動を10時間連続して行った後、14時間無負荷状態で乾燥し、続いて再び10時間連続摺動試験を行い、溶射皮膜の摩耗深さを3次元データのスキャニングにより測定した。
測定は非接触3次元表面形状測定装置((株)オプティカルソリューソンズ製:μScan-AF2)にて行い、Z軸(高さ)の情報を使用した。
III.摩耗減量の評価(耐皮膜剥離性評価)
摩耗減量の測定は、図4に示すように試験片固定用治具32の上に試験片Sを載せて固定し、そしてノズル34からブラスト粒子を溶射皮膜に向けて噴射することにより行った。
試験条件は以下とした。
ノズル径:φ10mm
ブラスト粒子;褐色アルミナ研削材(モリタ研磨材工業(株)のF30モランダム使用)
空気圧:0.55MPa
噴射角度:90°
ブラスト距離:70mm
照射量:50g/回×10回(合計500g)
ブラスト時間:20秒
測定方法:試験前後の溶射試験片の重量を測定し摩耗減量を算出した。
IV.ワイヤ引張強度
ワイヤ引張強度は、直径φ1.6mmを用い、JIS Z 2201 9A号試験片で測定を行った。
これらの結果が表1に併せて示してある。
表1の結果において、比較例1はC含有量が0.18で、本発明の下限値0.20よりも低いために摩耗深さが目標とする20以下の基準を超えて大であり、また摩耗減量も目標値とする0.10以下の基準を超えて大となっている。
比較例2はC量が本発明の下限値よりも低い0.18であるのに加えて、式(1)の条件を満たしておらず、摩耗深さ,摩耗減量ともに目標とする基準を満たしていない。
比較例3はMn量が0.77で本発明の下限値の1.20よりも低く、また式(1)の条件も満たしておらず、摩耗減量が目標とする基準を満たしていない。
比較例4はSi量が0.72で本発明の上限値の0.60よりも高く、Mn量も本発明の下限値よりも低い。更に式(1)の条件も満たしていない。結果として摩耗深さ,摩耗減量ともに目標とする基準を満たしていない。
比較例5はMn量が2.34で本発明の上限値よりも多く、ワイヤ引張強度が目標とする基準を超えて大きい。
比較例6はC量が0.33で本発明の上限値よりも多く、ワイヤ引張強度が目標とする基準を超えて大きい。
比較例7はSi量が0.19で本発明の下限値の0.20よりも低く、摩耗深さ,摩耗減量ともに目標とする基準を満たしていない。
比較例8はMn量が0.30で少ない値であり、また式(1)の条件も満たしていない。そして摩耗深さ,摩耗減量ともに目標とする基準を満たしていない。
比較例9は式(1)の条件を満たしておらず、摩耗減量が目標とする基準を満たしていない。
比較例10もまた式(1)の条件を満たしておらず、摩耗減量が目標とする基準を満たしていない。
比較例11はSi量が0.87で本発明の上限値の0.60よりも多く、また式(1)の条件も満たしていない。結果として摩耗深さ,摩耗減量がともに目標とする基準を満たしていない。
これに対して本発明の実施例1〜実施例11のものは摩耗深さ,摩耗減量,ワイヤ引張強度の何れの特性も良好な結果が得られている。
因みに、図5は実施例4について溶射皮膜の表面を以下の条件で研削した後の表面性状の光学顕微鏡写真(倍率50倍)を従来例(比較例7)と比較して示したもので、図に示しているように従来例では空隙Kが大きく生じているのに対し、実施例のものは空隙Kが僅かであり、溶射皮膜が緻密であることがこの図から見て取れる。
また表2に示す組成の溶射ワイヤを製造し、被削性の評価を行った。結果が表2に併せて示してある。
溶射ワイヤにCa,S,Ti,Teの成分を添加していない実施例4,実施例5の被削性(切削工具の寿命)の評価(○)に対して、Ca,S,Ti,Teの1種又は2種以上を添加した実施例12〜22のものは、切削工具の寿命が1.5倍以上の(◎)であり、被削性が向上している。
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明の溶射ワイヤは、上記のアーク溶射をするに際して好適なものであるが、電極間にアークを発生させて作動ガスをプラズマ化し、ノズルから高温高速のプラズマジェットを噴射して、プラズマジェットにより溶射ワイヤを溶融して基材に溶射を行うプラズマ溶射法で溶射を行う場合においても適用可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。

Claims (4)

  1. 質量%で
    C:0.20超〜0.30%
    Si:0.20〜0.60%
    Mn:1.20〜2.30%、且つ2Si+1.10≦Mn(式1)(但し式1中の元素記号は対応する元素の含有質量%を表す)
    で残部Fe及び不可避的成分の組成を有することを特徴とする鉄系溶射皮膜用溶射ワイヤ。
  2. 請求項1において、質量%で
    V:0.05〜0.25%
    を更に含有していることを特徴とする鉄系溶射皮膜用溶射ワイヤ。
  3. 請求項1,2の何れかにおいて、質量%で
    B:0.002〜0.005%
    を更に含有していることを特徴とする鉄系溶射皮膜用溶射ワイヤ。
  4. 請求項1において、質量%で
    Ca:0.0015〜0.0030%
    S:0.05〜0.22%
    Ti:0.15〜0.40%
    Te:0.03〜0.07%
    の1種または2種以上を更に含有していることを特徴とする鉄系溶射皮膜用溶射ワイヤ。
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