JP2011224048A - 上肢運動モデル - Google Patents

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Abstract

【課題】応答性能を向上させることができ、比較的急速な運動であっても良好な再現性が得られ、上肢の動作特性を十分に表現することができる上肢運動モデルを提供する。
【解決手段】所定の回転軸を中心に回転する目標指針に、該目標指針と同軸回転するリンクを追従させる位置決め操作にともなう人間の上肢の動作をモデル化した上肢運動モデルであって、目・脳モデル化部13と、上肢モデル化部14と、インターフェイスモデル化部12とを備え、目・脳モデル化部13に誤差補償感度係数βにより調整されるフィードフォワード項を有し、上肢モデル化部14に力覚フィードバック結合特性α(s)によるフィードバック項を有することで、視覚・力覚混合型フィードバックモデルとして構成される。
【選択図】図2

Description

本発明は、人間の上肢の動作による機械操作モデルを表現するための上肢運動モデルに関する。
近年、安全・安心を実現する技術の開発が注目される中、様々な機械操作を人間中心の観点から支援する機械操作の支援装置がある。実用化されている機械操作の支援装置の例として、例えばAuto Cruise Control(非特許文献1参照)やパワードスーツ(非特許文献2参照)等を挙げることができる。前者は操縦タスクの一部を自動操縦装置に委ねるタイプの、後者は人間の筋力を増幅することで必要な力を得るタイプの支援である。しかし、主制御装置として機能する人間の随意性を損なわずに操作精度の向上を目指す場合には、タスクの一部の自動化やパワー増幅だけでは不十分であり、人間と協調制御を行う知的支援システムが必要となる。
そこで、発明者らは、機械操作の支援装置の試みとして、「コラボレータ」の概念と設計法を提案し(非特許文献3参照)、その性能向上に向けた研究を進めている。コラボレータは、操作者の技量不足や過誤に起因する機械の応答劣化を防ぎ、人間−機械系全体の制御性能を維持・回復させることを目的とし、人間の機械操作モデルに基づいて設計される。
また、人間の動作を支援する構成としては、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、訓練用の目標起動を訓練患者がなぞることにより上肢の機能回復訓練を行う上肢訓練支援システムが開示されている。具体的には、特許文献1に開示の技術は、センサによって検出した患者の上肢の位置や向き等に基づく患者の動作軌道を目標軌道とともに画面に表示し、その情報を患者の視覚にフィードバックするとともに、患者による目標軌道を外れる動作を阻害する力をダンパ装置によって患者にフィードバックすることで、患者の訓練を行うものである。
また、機械操作が体幹を大きく動かすことなく腕の動きにより実現される場合、人間の機械操作モデルは、上肢運動モデルにより表現できる。上肢運動としての機械操作に用いられるハンドルやレバーには、不用意な動作を防止するために、バネやダンパ等により適度な力が付与されている。したがって、人間の機械操作モデルの内部には、操作機器の動特性が含まれるのが妥当であると考えられる。この点、上肢運動モデルの一つに、コンピュータの画面を見ながら行うマウス操作をモデル化したDFF(Delayed Feed−Forward)モデルがある(非特許文献4参照)が、このDFFモデルは、人間により操作される操作機器の動特性が考慮されていない。
そこで、発明者らは、DFFモデルをベースに筋のインピーダンス特性と操作機器の動特性を考慮した上肢運動モデルとして、視覚情報に基づくフィードバックモデル(視覚フィードバックモデル)を提案した。視覚フィードバックモデルは、緩やかな機械操作については操作特性が再現できており、コラボレータの設計に活かされている。
特開2000−288046号公報
L.Vlacic,M.Parent,F.Harashima:Intelligent Vehicle Technologies:Theory and Applications,Society of Automotive Engineers,2001. S.Lee,Y.Sankai:Power Assist Control for Walking Aid with HAL−3 Based on EMG and Impedance Adjustment around Knee Joint,Proc.of IEEE/RSJ International Conf.on Intelligent Robots and Systems,1499−1504,2002. H.Ohtsuka,K.Shibasato,H.Uemura,S.Kawaji:A Study on a Human−Oriented Compensator for the Human−Machine System,Proc.of International Conference on Control,Automation and Systems,657−662,2003. 石田,沢田:人の感覚運動システムにおける先行位相の定量的研究,計測自動制御学会論文集,39(1),59−66,2003.
しかしながら、従来の視覚フィードバックモデルによれば、例えば工具を使って部品を取り上げ定められた場所に素早く移動させる作業のように、製造現場においてよく見受けられるステップ状の目標追従動作については、上肢の動作特性が十分に表現できず、応答性能に限界がある。つまり、従来の視覚フィードバックモデルは、急速運動の再現性が低い。このことは、視覚フィードバックモデルにおいて、視覚情報に基づく訂正動作が神経系のむだ時間(情報伝達時間)を介することに起因すると考えられる。
したがって、上肢運動モデルにおいて、視覚や神経系のむだ時間に依存しないフィードバック構造が望まれる。しかし、このような上肢運動モデルを人間の機械操作支援という観点から理論的にあるいは実験的に提案する試みは、従来行われていない。
そこで、本発明は、応答性能を向上させることができ、比較的急速な運動であっても良好な再現性が得られ、上肢の動作特性を十分に表現することができる上肢運動モデルを提供する。
本発明の上肢運動モデルは、所定の回転軸を中心に回転する目標指針に、該目標指針と同軸回転するリンクを追従させる位置決め操作にともなう人間の上肢の動作をモデル化した上肢運動モデルであって、視覚により取得される前記目標指針の位置の情報である目標位置情報と、フィードバックされることにより取得される前記リンクを動かす上肢の手先の位置の情報である手先位置情報とを比較し、その比較結果としての誤差情報に基づき、脳からの上肢の筋肉への動作指令を発する目・脳モデル化部と、前記動作指令および該動作指令により生じた上肢の筋の変位に基づき、上肢の筋肉による前記リンクを動かす筋の発生力を発する上肢モデル化部と、前記筋の発生力による前記リンクの動作から、前記手先位置情報を発するとともに前記手先位置情報を前記目・脳モデル化部にフィードバックするインターフェイスモデル化部と、を備え、前記目・脳モデル化部は、前記誤差情報と、前記目標位置情報からフィードフォワードされ前記目標位置情報に基づいて予測される位置の情報である予測位置情報と、前記誤差情報からフィードフォワードされ前記誤差情報に基づいて訂正される位置の情報である訂正位置情報とを結合して前記動作指令となる情報を生成する結合部を有し、前記上肢モデル化部は、前記動作指令と、前記筋の発生力からフィードバックされ上肢の力覚により取得される力覚情報とを比較して前記筋の変位となる情報を生成する比較部を有するものである。
また、本発明の上肢運動モデルは、所定の回転軸を中心に回転する目標指針に、該目標指針と同軸回転するリンクを追従させる位置決め操作にともなう人間の上肢の動作をモデル化した上肢運動モデルであって、次式(1)〜(3)により表わされるものである。
Figure 2011224048
Figure 2011224048
Figure 2011224048
本発明によれば、応答性能を向上させることができ、比較的急速な運動であっても良好な再現性が得られ、上肢の動作特性を十分に表現することができる。
本発明の一実施形態に係る位置決め操作についての説明図。 本発明の一実施形態に係る上肢運動モデルを示すブロック線図。 視覚フィードバックモデルを示すブロック線図。 本発明の一実施形態に係る上肢運動モデル生成システムの構成を示す図。 本発明の実施例に係る規範応答のグラフを示す図。 本発明の実施例に係る応答のむだ時間を説明するためのグラフを示す図。 本発明の実施例に係る上肢運動モデルのパラメータの同定の結果の表を示す図。 本発明の実施例に係る実験値とシミュレーションとの比較結果のグラフを示す図。 本発明の実施例に係るリンクの操作についての説明図。 本発明の実施例に係る上肢運動モデルにおける操作力のグラフを示す図。 本発明の実施例に係る視覚フィードバックモデルにおける操作力のグラフを示す図。
本発明は、指針で示される目標にリンクを回転させ追跡するステップ状の位置決め操作を対象として、上肢運動モデルを提案する。本発明に係る上肢運動提案モデルは、力覚が機械操作で果たす役割を考慮してむだ時間を介さないマイナーフィードバックモデルを内部構造に持たせることで、視覚フィードバックモデルの構造に起因するステップ状の目標追従応答の問題点を改善するものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
本実施形態に係る上肢運動モデルは、指針で示される目標に対し1軸リンク機構を回転させ追跡する位置決め操作を対象とするものであり、この1軸リンク機構の機械操作を行う人間の挙動を分析するものである。このような位置決め操作は、工作機械やマスタースレーブシステムの遠隔操縦などで求められる基本操作の一つである。
図1に示すように、本発明に係る上肢運動モデルは、所定の回転軸を中心に回転する目標指針1に、この目標指針1と同軸回転するリンク2を追従させる位置決め操作にともなう人間3の上肢4の動作をモデル化したものである。
図1に示すように、目標指針1は、鉛直方向を軸方向とする回転軸1aを中心に回転するように設けられる。目標指針1は、あらかじめ設定される所定の角度ごと回転するように構成される。目標指針1は、回転軸1aに支持される側と反対側の先端により、目標指針1の回転軸1aを中心とする回転方向の位置(角度、以下単に「位置」ともいう。)を指し示す。
リンク2は、目標指針1と同軸回転するように設けられるレバー状の部材である。つまり、リンク2の回転軸心は、目標指針1の回転軸1aの回転軸心と一致する。リンク2は、人間3の上肢4により把持されるグリップ2aを有する。グリップ2aは、リンク2の先端部において鉛直方向の一側(図1では下側)に向けて突出する棒状の部分である。目標指針1およびリンク2は、互いに干渉することなく回転可能に設けられる。したがって、目標指針1とリンク2とは互いに位置を合わせることができる。
このように同軸回転する目標指針1およびリンク2を有する1軸リンク機構5が、人間3によって上肢4の動作により操作される。具体的には、1軸リンク機構5において、モータ等の駆動源によって目標指針1があらかじめ設定された所定の角度だけ回転する。このように回転する目標指針1に追従するように、リンク2が人間3によって回転操作される。つまり、人間3により、所定の角度回転する目標指針1にリンク2の位置を合わせる位置決め操作が行われる。
このような1軸リンク機構5に対する人間3による位置決め操作は、詳細には次のような一連の挙動として行われる。図1に示すように、人間3は、目標指針1の回転を、目6の目視により視覚情報として認識する(矢印A1参照)。目視により認識された視覚情報は、目6の網膜から神経系を伝って人間3の脳7に伝達される(矢印A2参照)。視覚情報の伝達を受けた脳7は、リンク2の位置が目標指針1の位置に一致するようにグリップ2aを握る上肢4を動作させるため、上肢4の筋肉8に対して動作指令を送る(矢印A3参照)。これにより、上肢4の筋肉8が収縮し、リンク2が目標指針1に追従するように操作される(矢印B1参照)。以上のような人間3による位置決め操作、言い換えると目標指針1に対するリンク2の位置のずれを訂正する訂正動作が、本実施形態に係る上肢運動モデルによりモデル化される。
本実施形態に係る上肢運動モデルに至る過程で得られたモデルとして、視覚フィードバックモデルがある。視覚フィードバックモデルは、DFFモデルをベースに筋のインピーダンス特性と操作機器の動特性を考慮した上肢運動モデルである。DFFモデルは、コンピュータ画面上で運動するターゲットをマウスカーソルで追従する実験の実験結果の特徴に一致する数理モデルとして提案されたモデルである。
DFFモデルは、手の運動がターゲット運動に先行し、目視によるターゲットと手の位置誤差の情報がむだ時間を経て網膜から脳に伝播され、その誤差情報に基づいて筋肉への収縮指令の変化量が決定されるという脳内の処理と、神経系を経て筋肉に到達する収縮指令と現在の手の誤差により手の変化量が決定されるという筋肉の動作とをモデル化したものである。DFFモデルでは、人間の感覚−運動制御システムの先行運動はフィードフォワード結合強度で表現されており、目標追従のための誤差修正フィードバック動作は視覚からの情報に基づいてのみ行われるとしてモデル化がなされている。
一方、人間−機械系のインターフェイスは、不用意な動作を防止することなどを目的として動特性を有することが多いが、上述のようなDFFモデルでは、人間が操作する機器の動特性は考慮されていない。これに対して提案されたのが、人間の機械操作を表現できるように拡張した視覚フィードバックモデルである。
視覚フィードバックモデルは、ターゲット(目標指針)の位置と上肢の手先の位置の誤差を視認し、誤差が減少するように上肢を動作させるフィードバック項と予測を行うフィードフォワード項とからなる二自由度構造となっている。視覚フィードバックモデルによれば、緩やかに変化する目標への追従動作のシミュレーションでは、実験に近い応答が得られている。
しかし、視覚フィードバックモデルは、ステップ状の目標値追従操作などの急激な変化を伴う操作については、極端に遅い山なりの応答を示し、実際の応答と乖離した結果を示すことがわかっている。ここで、上肢の手先が目標を追跡するという随意運動制御には、次の2種類の運動がある。
1.末梢からのフィードバックが運動を方向づけるのに利用できないほど短時間で行われる急速運動。
2.運動中に諸感覚情報を利用して修正が行える緩やかな緩徐運動。
視覚情報に基づく訂正動作をモデル化した視覚フィードバックモデルは、応答性能に限界があることから、緩徐運動に適すると位置づけられる。しかし、ステップ状の目標値追従操作などの急激な変化を伴う動作については、神経系のむだ時間経過後には動作がほぼ完了することから急速運動に相当し、視覚フィードバックモデルではこの振舞いを表現できない。以上より、急速運動に対してはむだ時間を介さないモデル構造が有効と考えられる。
本実施形態の上肢運動モデルは、上述のような視覚フィードバックモデルの持つ問題点を克服すべく、視覚情報に力覚情報を追加したモデルである。したがって、本実施形態の上肢運動モデルは、視覚フィードバックモデルに対して「視覚・力覚混合型フィードバックモデル」と呼ぶことができる。
本実施形態の上肢運動モデル10について、図1および図2を用いて説明する。図2に示すように、本実施形態の上肢運動モデル10は、人間(human)3と、操作機器(interface)としての1軸リンク機構5との関係を表わすものであり、人間3をモデル化した部分である人間モデル化部11と、1軸リンク機構5についてのモデル化部分であるインターフェイスモデル化部12とを備える。そして、人間モデル化部11は、人間3の目(eye)6および脳(brain)7についてのモデル化部分である目・脳モデル化部13と、上肢(upper limb)4についてのモデル化部分である上肢モデル化部14とを含む。
脳モデル化部13は、視覚により取得される目標指針1の位置(T)の情報である目標位置情報と、フィードバックされることにより取得されるリンク2を動かす上肢4の手先の位置(X)の情報である手先位置情報とを比較し、その比較結果としての誤差情報に基づき、脳7からの上肢4の筋肉8への動作指令(Y)を発する。
脳モデル化部13は、目標位置情報と手先位置情報とを比較するための比較部21を有する。比較部21は、人間3の目6の目視により視覚情報として取得される目標指針1の位置(T)と、インターフェイスモデル化部12からフィードバックされる上肢4の手先の位置(X)とを比較し、その追従誤差(tracking error)を、比較結果である誤差情報として生成する。
また、脳モデル化部13は、比較部21により生成される誤差情報と他の情報とを結合する結合部22を有する。具体的には、結合部22は、比較部21により生成される誤差情報と、目標位置情報からフィードフォワードされる予測位置情報(図2、γ参照)と、誤差情報からフィードフォワードされる訂正位置情報(図2、β参照)とを結合する。
結合部22において誤差情報等と結合される予測位置情報は、目標位置情報に基づいて予測される位置の情報である。また、同じく結合部22において誤差情報等と結合される訂正位置情報は、誤差情報に基づいて訂正される位置の情報である。ここで、比較部21により生成される誤差情報は、目6から視覚情報を受けた脳7が上肢4の筋肉8への指令を発するまでの応答性の遅れ(1/τs)が加味され、結合部22において他の情報と結合される。
結合部22は、前記のとおり誤差情報と予測位置情報と訂正位置情報とを結合して、動作指令(Y)となる情報を生成する。結合部22により生成された情報は、目6の網膜から脳7までのむだ時間(e−δs)が加味され、脳モデル化部13から発せられる動作指令(Y)となる。
上肢モデル化部14は、脳モデル化部13から発せられる動作指令(Y)および動作指令(Y)により生じた上肢4の筋の変位(Z)に基づき、上肢4の筋肉8によるリンク2を動かす筋の発生力(F)を発する。
また、上肢モデル化部14は、脳モデル化部13から発せられる動作指令(Y)と、筋の発生力(F)からフィードバックされ上肢4の力覚により取得される力覚情報(α(s))とを比較して筋の変位(Z)となる情報を生成する比較部23を有する。
比較部23は、動作指令(Y)と、フィードバックされる力覚情報(α(s))とを比較し、その差を比較結果である偏差情報として生成する。比較部23により生成された偏差情報は、脳7から発せられた指令が上肢4の筋肉8に達するまでの応答性の遅れ(1/(τs+1))が加味され、筋の変位(Z)となる。そして、筋の変位(Z)は、筋の開ループインピーダンス特性(open loop impedance;G(s))が加味されることで、上肢モデル化部14から発せられる筋の発生力(F)となる。
インターフェイスモデル化部12は、筋の発生力(F)によるリンク2の動作から、手先位置情報を発するとともに手先位置情報を目・脳モデル化部13にフィードバックする。インターフェイスモデル化部12においては、上肢モデル化部14からの筋の発生力(F)が、操作機器の動特性(machine dynamics;G(s))が加味されることで、手先位置情報となる。この手先位置情報は、脳モデル化部13にフィードバックされ、比較部21において目標位置情報に対する比較の対象となる。
図2に示される本実施形態の上肢運動モデル10は、次式(1)〜(3)により時間関数で表わされる。ただし、G(t),G(t),およびα(t)は、それぞれG(s),G(s),およびα(s)の原関数である。
Figure 2011224048
Figure 2011224048
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上記式(1)〜(3)において、T:目標指針1の位置、Y:脳7から筋肉8への動作指令、Z:筋の変位、F:筋の発生力、X:上肢4の手先の位置、δ:目6の網膜から脳7までの情報伝達時間(むだ時間)、ξ:脳7から上肢4の筋肉8までの情報伝達時間(むだ時間)、τ:運動指令時定数、τ2-:筋運動の時定数、γ:フィードフォワード結合強度、G(s):筋の開ループインピーダンス特性、G(s):目標指針1およびリンク2を含む操作機器(1軸リンク機構5)の動特性である。また、β:誤差補償感度係数、α(s):力覚フィードバック結合特性である。以下では、上記各式における各パラメータおよび上記の各式について説明する。
パラメータTは、回転軸1aを中心に回転する目標指針1の位置であり、例えば所定の位置を基準(0°)とする角度である。パラメータYは、脳7から上肢4への動作量についての指令であり、筋肉8の収縮量についての指令である。パラメータZは、上肢4の筋肉8の変位である。パラメータFは、筋の変位であるZが力に変換されたものである。つまり、パラメータFは、リンク2を操作する力を表わす。パラメータXは、目標指針1に追従させリンク2を動かす上肢4の手先の位置、言い換えると上肢4に回転させられるリンク2の位置である。
パラメータδは、目6の網膜に映った映像情報が神経系を介して脳7に伝達されるまでの時間(むだ時間)である。パラメータξは、脳7で上肢4をどう動作させるか決定されてから、つまり筋肉8に対する動作指令が生成されてから、その動作指令が神経系を介して筋肉8に伝達されるまでの時間(むだ時間)である。パラメータτは、目6から視覚情報を受けた脳7が上肢4の筋肉8への指令を発するまでの応答性(一次遅れ応答)の特性を表わす。パラメータτは、脳7から発せられた指令が上肢4の筋肉8に達するまでの応答性(一次遅れ応答)の特性を表わす。
パラメータγは、回転する目標指針1の速度変化に基づいて、リンク2をどの程度動かすかの予測を定めるためのパラメータである。γの値が大きくなると、予測によるリンク2の移動量が大きくなり、γの値が小さくなると、予測によるリンク2の移動量が小さくなる。パラメータβは、訂正動作の精細な表現を行うためのパラメータである。βの値が大きくなると、リンク2を動かす動作についての訂正量が大きくなり、βの値が小さくなると、リンク2を動かす動作についての訂正量が小さくなる。なお、パラメータG(s),G(s),およびα(s)については後述する。
上記式(1)において、第1項および第2項は、視覚より得られる目標(目標指針1)と上肢4の手先の誤差情報がむだ時間を経て脳7に伝播する過程において、その誤差情報およびその時間変化量と、目標の移動速度に基づく筋肉8への収縮指令の変化量が決定される関係を表している。
上記式(1)の第2項は、人間3が目標(目標指針1)との誤差を正確に評価することなく誤差を減らすべく感覚的かつ瞬時に行う動作に対応している。つまり、式(1)の第2項は、目標指針1の移動速度に基づいて目標指針1の位置を予測して筋肉8への動作指令を定めるという予測(一次予測)に相当する動作を表わしている。
上記式(1)の第3項は、訂正動作を表わす。訂正動作とは、目標指針1の位置からずれているリンク2を目標指針1の位置に合わせようとリンク2の位置を修正する動作である。具体的には、リンク2を目標指針1に追従させようとしてリンク2が目標指針1の位置を行き過ぎた場合(オーバーシュートの場合)、訂正動作はリンク2を戻す動作となる。逆に、リンク2を目標指針1に追従させようとしてリンク2が目標指針1の位置の手前である場合(アンダーシュートの場合)、訂正動作はリンク2を進める動作となる。
第3項の訂正動作は、誤差補償感度係数βにより調節される。誤差補償感度係数βは、目標(目標指針1)の動きや操作する機械系(1軸リンク機構5)のダイナミクスを学習することにより調整されると考えられ、主にオーバーシュートを軽減する効果を持つ。ここで、機械系のダイナミクスを学習することには、人間3が、リンク2を目標指針1に追従させる位置決め操作を何度も繰り返すことで、訂正動作についての訂正量を感覚的に掴むことに相当する。したがって、式(1)は、ダイナミクスを持つ機械を操作する上肢運動において、緩徐動作を精細に表現したモデルといえる。
上記式(2)は、上肢4の筋運動に関する方程式である。本実施形態に係る上肢運動モデル10と視覚フィードバックモデルとの相違点は、力覚情報が純粋むだ時間(例えば神経系(nervous system)によるe−δs)を介することなくフィードバックループを構成する点である。本実施形態に係る1軸リンク機構5のように、力覚が得られる程度の質量やダイナミクスを有する機械の操作時には、視覚情報に加え力覚情報も操作に反映すると考えられる。
したがって、操作する機器の特性を理解している場合には、事前の学習により機器を操作するのに適した特性をあらかじめ上肢に持たせる。すなわち、上肢運動モデル10においては、上肢モデル化部14において、手先の反力や上肢全体の感覚として知覚された情報によるマイナーフィードバックループを構成することでインピーダンスを変化させていると従えることができる。ここで、インピーダンスを変化させることは、筋肉8への力の入れ具合を変化させることに相当する。
FやG(s)に対応させた筋のインピーダンスパラメータテーブルを用意し、リアルタイムに切り替えるとすることで可変パラメータ型のインピーダンス表現も可能であるが、人間の情報処理ではテーブルを設けるメカニズムは不自然で、フィードバックによりインピーダンスが調整されると解釈する方が自然である。このように、上肢運動モデル10においては、上肢モデル化部14でのマイナーフィードバックループにより、筋のインピーダンスのパラメータ(G(s))が人間によって任意に調整される。
上記式(3)は、上肢4が発生した力により機器(1軸リンク機構5)が操作されることを表しており、上述した視覚フィードバックモデルと同様である。
以上のように、視覚・力覚混合型フィードバックモデルとしての上肢運動モデル10は、視覚と力覚情報に基づいて上肢4のインピーダンスを調整するフィードバック構造を有するモデルとなっている。
ここで、図3に、視覚フィードバックモデル110を示す。図3に示す視覚フィードバックモデル110は、上記式(1)〜(3)において、式(1)および式(2)それぞれの最後の項を除いたものにより表わされる。なお、図3では、便宜上、上肢運動モデル10と対応する部分については同一の符号を付している。
視覚フィードバックモデル110は、本実施形態の上肢運動モデル10との対比において、力覚フィードバック結合特性α(s)の力覚フィードバックおよび誤差補償感度係数βによるフィードフォワードが存在しない。言い換えると、視覚フィードバックモデル110に、力覚フィードバック結合特性α(s)および誤差補償感度係数βのパラメータが追加されることで、視覚・力覚混合型フィードバックモデルである上肢運動モデル10が得られる。なお、視覚フィードバックモデル110においては、筋の開ループインピーダンス特性としてのG(s)が単なるインピーダンスとして表わされる。
視覚フィードバックモデル110は、視覚・力覚混合型フィードバックモデルである上肢運動モデル10において操作対象のダイナミクスがない(あるいは無視できるほど微少な)特殊なケースと位置づけることができる。つまり、例えば1軸リンク機構5を操作するための力が非常に軽い場合等、力覚が操作対象に影響を与えないような場合、本実施形態の上肢運動モデル10により、視覚フィードバックモデル110を表現することができる。したがって、本実施形態の上肢運動モデル10には、操作対象の構成等によっては、視覚フィードバックモデル110が実質的に含まれることとなる。
以下では、本実施形態に係る上肢運動モデル10の生成の一実施例について説明する。ここで、上肢運動モデル10の生成には、上肢運動モデル10を構成する各パラメータを同定することが含まれる。そして、本実施例では、上肢運動モデル10の有効性の検証を行った。
図4は、本実施例に係る実験装置としての上肢運動モデル生成システム30の構成を示す。上肢運動モデル生成システム30は、1軸リンク機構31と、制御手段としてのコンピュータ32と、情報提示装置33とを備える。
1軸リンク機構31は、鉛直方向を軸方向とする回転軸34を中心に回転するように設けられるリンク35を有する。リンク35の先端には、グリップ36が取り付けられている。グリップ36は、リンク35の先端部において鉛直方向の下側に向けて突出する棒状の部分である。グリップ36のリンク35に対する付け根部分には、グリップ36による操作力を測定するための力センサ37が設けられている。また、1軸リンク機構31においては、回転軸34に、ロータリエンコーダ38が取り付けられている。ロータリエンコーダ38は、回転軸34を介してリンク35の操作角を測定する。
コンピュータ32は、演算制御部39と、入力部40と、表示部41とを備える。演算制御部39は、上肢運動モデル生成システム30の一連の動作を制御する。演算制御部39は、プログラム等を格納する格納部、プログラム等を展開する展開部、プログラム等に従って所定の演算を行う演算部、演算部による演算結果等を保管する保管部等を有する。
演算制御部39としては、具体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続される構成や、ワンチップのLSI等からなる構成が用いられる。演算制御部39としては、専用品のほか、市販のパーソナルコンピュータやワークステーション等に上記プログラム等が格納されたものが用いられる。
入力部40は、演算制御部39に接続され、演算制御部39に上肢運動モデル生成システム30の動作に係る種々の情報・指示等を入力する。入力部40としては、専用品のほか、市販のキーボード、マウス、ポインティングデバイス、ボタン、スイッチ等が用いられる。
表示部41は、演算制御部39に接続され、上肢運動モデル生成システム30の動作状況、入力部40から演算制御部39への入力内容、上肢運動モデル生成システム30によるデータ解析結果等を表示する。表示部41としては、専用品のほか、市販のモニターや液晶ディスプレイ等が用いられる。
情報提示装置33は、被験者による視認差の発生を防ぐために、目標指針と被験者が操作するリンク35とを仮想的に表示するための手段である。例えば、図1に示すような1軸リンク機構5の場合、目標指針1とリンク2との位置の関係について、1軸リンク機構5の操作者が見る角度によって誤差(視認差)が生じる。そこで、情報提示装置33は、ロータリエンコーダ38により測定されるリンク35の角度情報に基づき、目標指針を含む1軸リンク機構を表示画面33a上で構築する。
情報提示装置33は、表示画面33aに、仮想目標指針42と、仮想リンク43とを表示する。仮想目標指針42と仮想リンク43とは、情報提示装置33の表示画面33a上にて、表示画面33aに対する垂直方向を軸方向とする回転軸部44を中心として同軸回転する。仮想目標指針42は、表示画面33aにて、回転軸部44を中心として、あらかじめ設定された角度ごとにステップ状に回転する。仮想リンク43は、ロータリエンコーダ38により測定されるリンク35の角度情報に基づき、リンク35の回転に連動して、情報提示装置33の表示画面33a上にて回転軸部44を中心として回転する。
リンク35の操作角は、回転軸34に設けられるロータリエンコーダ38により測定され、コンピュータ32の演算制御部39が有するカウンタボードより取り込まれる。演算制御部39は、ロータリエンコーダ38から取り込んだリンク35の角度情報に基づき、情報提示装置33に対する制御信号を生成し、情報提示装置33に、仮想リンク43を仮想目標指針42と重ね合わせてリンク35の回転動作を反映した状態で表示させる。本実施例では、ロータリエンコーダ38から演算制御部39へのデータの取り込みや、演算制御部39から情報提示装置33への制御信号による画像表示は、10[ms]のサンプリング間隔で行われており、1軸リンク機構31の操作者(被験者)が体感できるレベルのタイムラグは生じない。
情報提示装置33は、被験者による1軸リンク機構31の自然な操作感が得られるように、目から上肢の手先への視線上において自由にレイアウトすることができる。また、情報提示装置33は、表示画面33a上に、キャリブレーション用に仮想目標指針42とリンク35との誤差の情報を表示する誤差情報表示部45を有する。
上肢運動モデル生成システム30は、例えばテーブル上に配置され、1軸リンク機構31の操作者(被験者)は、椅子に腰掛けて操作を行う。操作者の椅子としては、体幹の捻り動作による操作が行われないように、操作者の脇腹、腰、腿の体側を覆って体を固定するバケットシートが使用される。
なお、本実施例に係る上肢運動モデル生成システム30においては、情報提示装置33が用いられることで、リンク35の目標に対する位置決め操作が、表示画面33a上における仮想的な表示が用いられて行われているが、これに限定されない。したがって、上肢運動モデル生成システム30においては、例えば図1に示すように、リンク35と同軸回転する実物の目標指針(目標指針1参照)が設けられることで、情報提示装置33は省略可能である。ただし、本実施例のように情報提示装置33を用いることで、リンク35の目標に対する視認差の発生を抑制することができ、より正確に安定した実験データを取得することができる。
以上のような構成を備える上肢運動モデル生成システム30による実験方法について説明する。本実施例では、まず、20代成人男性の操作初心者を被験者として、ステップ状に変化する仮想目標指針42にリンク35を追従させる動作を、目標角度ごとに20回実施した。被験者には、仮想目標指針42がステップ状に変化することをあらかじめ伝え、可能な限り素早くかつ正確に仮想目標指針42に対してリンク35(仮想リンク43)を追従操作するよう指示する。
本実施例では、目標角度ごとのデータ全体の分布から極端に離れているデータを除き、各時刻での角度を加算平均したものを規範応答とした。規範応答より、仮想目標指針42の移動量を予測しようと思えば可能な環境下における視覚・力覚混合型フィードバックモデルのパラメータを同定した。
図5に、仮想目標指針42が測定開始1.5[s]後の時点でステップ状に変化したときの規範応答を示す。図5に示すグラフにおいて、横軸は時間[s]を示し、縦軸は回転の角度[deg]を示す。図5において、実線で示すグラフG1、破線で示すグラフG2、および点線で示すグラフG3は、それぞれ目標角度が10[deg]の場合、20[deg]の場合、および30[deg]の場合の規範応答を示す。
図5の各グラフG1〜G3から、被験者による操作開始直後に、オーバーシュート(上に凸の部分参照)とアンダーシュート(下に凸の部分参照)が観測される。また、図5のグラフG1〜G3から、オーバーシュートの量は目標角度が増加しても同程度であることがわかる。また、同じくグラフG1〜G3から、定常時(被験者がその回における位置決め操作を終えた状態)では、上肢のゆらぎ以外の偏差は見受けられないことがわかる(各グラフG1〜G3における約3.0秒以降の部分参照)。このことは、本実施例では、情報提示装置33が使用されることにより、被験者による視認差が発生しないことに起因する。
続いて、上肢運動モデル10におけるパラメータの同定の手順について説明する。上肢運動モデル10におけるパラメータの同定に際しては、はじめに、規範応答より目の網膜から脳までと、脳から上肢の筋肉までのむだ時間(δ+ξ)を求め、上肢運動モデル10のパラメータτ,τ,α,α,β,γ,ηの探索域と分解能を設定する。ここで、探索域とは、パラメータの同定に際して探索する各パラメータの数値範囲であり、分解能とは、探索域の範囲でパラメータを探索する際の数値間隔(変化幅)である。
図6に、応答のグラフにおける運動開始直後の部分を拡大したものを示す。図6に示すグラフにおいて、横軸は時間[s]を示し、縦軸は回転の角度[deg]を示す。図6において、実線で示すグラフG4は、仮想目標指針42(Target)の位置(10[deg]の位置)を示し、点線で示すグラフG5は、目標角度が10[deg]の場合の規範応答における運動開始直後の応答を示す。
図6のグラフG5から、仮想目標指針42の移動が完了した時点(仮想目標指針42が0°から10°に変位した時点、時刻0[s])から、リンク35が移動を始める時点(操作者が腕を動かし始める時点、時刻0.25[s])まで、0.25[s]経過している。したがって、本実施例では、網膜から脳までのむだ時間、および脳から筋肉までのむだ時間をそれぞれ示すδとξの個別の値は特定できないものの、むだ時間(Dead Time)の和(δ+ξ)は、0.25[s]と読み取ることができる。このむだ時間(δ+ξ)=0.25[s]という値は、過去の研究により視覚性反応時間遅れが0.2[s]、視覚フィードバック時間が0.29[s]という値が得られていることから妥当と判断される。
なお、脳が操作指令に要する時間は、上記の視覚フィードバック時間と視覚性反応時間遅れとの差の0.09[s]前後と考えられることから、τの探索域を、0.05〜0.15[s]とした。また、上肢の運動時間と移動距離の関係を経験的に表したフィッツの法則を参考に、τの探索上限を0.15[s]とした。
また、フィードフォワード結合強度γのように生理学的に対応が困難なパラメータについては、広めの探索域と粗めの変化幅を設定し、二乗誤差を最小とする解が見込まれる区間で再度探索域を設定することで対応した。力覚フィードバックを考慮した上肢運動モデル10においては、筋のインピーダンスは、G(s)とα(s)/(τs+1)のフィードバック結合により表わされる(図2参照)。
ここで、視覚フィードバックモデルにおいて、G(s)をダンパ系で近似すると、緩徐運動の応答の再現性が良いとの結果が得られていることから、上肢運動モデル10においても、G(s)をダンパ系とした。力覚フィードバック結合特性α(s)は、人間は操作対象の内部モデルを獲得し制御に用いていると考えられることから、G(s)を内部モデルとして持ち、G(s)をダンパ系としたときのZからFまでの内部安定性の観点から積分器を含み、かつ、視覚フィードバック部のむだ時間補償構造となるPI制御器と仮定して、
(s)=ηs(η>0) ・・・(4)
α(s)=(α+(α/s))G(s) ・・・(5)
とおいた。
次に、各パラメータの値でステップ応答をシミュレーションし、規範応答との比較を行い、二乗誤差を求める。設定した分解能でパラメータを変化させながらすべての組み合わせで同様の計算を行い、探索域の中で二乗誤差を最小とするものを、最適なモデルパラメータとする。
本実施例では、20代成人男性被験者の上肢運動モデル10の同定を行ったところ、図7の表に示す同定値が得られた。図7は、本実施例の上肢運動モデル10における各パラメータについての探索域、分解能、および同定値の表を示す。図7に示す表は、目標角度が10[deg]の場合についてのものである。
図8は、実験により求められた規範応答と、同定された上肢運動モデル10のシミュレーション応答とを比較したものである。図8に示すグラフにおいて、横軸は時間[s]を示し、縦軸は回転の角度[deg]を示す。図8からわかるように、時刻0において、仮想目標指針42がステップ状に変化している。
本実施例における上肢運動モデル10の同定には、目標角度10[deg]の規範応答を用いた。図8には、同じパラメータを用いて目標角度を20,30[deg]としたシミュレーション結果も表示している。図8において、各目標角度10,20,30[deg]についてのグラフのうち、実線で示すグラフG11a,G12a,G13aは、視覚・力覚混合型フィードバックモデル(Mixed visual and force feedback model)である上肢運動モデル10によるシミュレーション応答を示し、点線で示すグラフG11b,G12b,G13bは、実験値(Experiment)を示す。
図8に示すように、目標角度10[deg]においては、実験値(グラフG11b)とシミュレーション(グラフG11a)が比較的合っており、行き過ぎ時間や行き過ぎ量などの応答の特徴がよく再現されている。他方、図8に示すグラフから、目標角度を20,30[deg]とした応答では、実験により求められた規範応答(グラフG12b,G13b)とシミュレーション(グラフG12a,G13a)の誤差が増加していることがわかる。
図9に示すように、上肢運動モデル10によるモデル化の対象となるリンク2の回転動作は、リンク2の操作角が大きくなると、上肢4を体に引きつける動作(引きつけ動作、矢印C1参照)と、上肢4を体から離れるように前に押し込む動作(押し込み動作、矢印C2参照)との組み合わせとなる。本実施例では、モデルのばらつきを抑えるために、引きつけ動作のみとなるように、操作終了時のリンク2(35)が体に対して垂直となるようにスタート位置を決めている。しかし、目標角度20,30[deg]の応答が、10[deg]の応答を2倍、3倍したものとは異なることから、引きつけ動作のみであっても、人間の骨格構造に依存する非線形性の影響が出るものと判断される。なお、図9では、図1と共通の符号を用いている。
参考として、視覚フィードバックモデルによるシミュレーションを、図8において一点鎖線のグラフG14で示す。このグラフG14には、視覚フィードバックモデルの特徴的な問題点が表れている。すなわち、グラフG14からわかるように、視覚フィードバックモデルは、ステップ状の目標値変化に対し緩やかな立ち上がりを見せており、定常状態に落ち着くまでに多くの時間を要している。
視覚フィードバックモデルにおいては、人間の制御行動における入力情報はすべて視覚により得られるとしているため、神経系の情報伝達むだ時間を介してフィードバックが行われることに起因するものと考えられる。これは、緩徐運動を表現するモデルとしては適当であっても、急速運動のモデルとしては限界があることを示している。
一方、視覚・力覚混合型フィードバックモデルである上肢運動モデル10は、視覚フィードバックモデルの持つ構造的な問題点を改良し、むだ時間を有さないマイナーフィードバックループを構成している。このため、上肢運動モデル10は、目を閉じても物体から受ける力感覚を用いて作業を行えるという現実の動作に則したモデルであるといえる。このように、本実施例によれば、ステップ状目標値変化への追従操作実験において、従来の運動モデルに比べて応答特性が大幅に改善されることが確認された。
以上のように、本実施例により、視覚・力覚混合型フィードバックモデルである上肢運動モデル10が、従来の視覚フィードバックモデルと比べ、ステップ状目標値追従応答を改善することを確認することができた。しかし、上肢運動モデル10では、力覚をフィードバックすることで上肢の筋のインピーダンスを調整しており、フィードバック要素は操作対象である機器の動特性を操作者が学習し、かつPI制御構造を持つとの仮定を設けている。したがって、モデルの妥当性を検証するため、モデル内部の状態量の評価も必要である。以下では、モデル内部状態の評価として操作力を選び、実験とシミュレーションの比較と検討を行う。
視覚フィードバックモデル、および上肢運動モデル10を用いたシミュレーションで求めた操作力を、図10および図11に示す。図10および図11それぞれに示すグラフにおいて、横軸は時間[s]を示し、縦軸は力[N]を示す。図10において、実線で示すグラフG15は、シミュレーション結果を示すものであり、点線で示すグラフG16は、上肢運動モデル生成システム30においてグリップ36に装着された力センサ37により測定された操作力を示すものである。
図10と図11を比較すると、上肢運動モデル10は視覚フィードバックモデルに比べて操作力の再現性が高いことがわかる。また、上肢運動モデル生成システム30において37により測定される操作力はモデルパラメータ同定に用いられていないが、それにもかかわらず一定時間経過後に表れるインパルス状の操作力の大きさや波形の形状においてシミュレーションに対する類似性が観察されており、モデルの妥当性が実験的に確認できる。定常状態における操作力の違いは、実験装置のケーブルにより生じる外乱力が大きく影響していることから、モデル自体の問題ではないと考えられる。
本実験は、目標指針(仮想目標指針42)の移動量を予測しようと思えば可能な環境下において、初心者が操作したデータに基づいてパラメータを同定した。
本実施形態の上肢運動モデル10では、1軸リンク機構のステップ状目標追従操作における上肢の感覚−運動制御モデルとして、視覚・力覚混合型フィードバックモデルを提案した。そして、本実施例では、人間の随意運動を理論的に考察し、操作機器のモデルを内部に持ち、むだ時間を介することなく力覚情報をフィードバックする構造としたことで、視覚フィードバックモデルの問題であった急速運動を再現できることを実験的に確認した。つまり、本実施形態の上肢運動モデル10によれば、応答性能を向上させることができ、比較的急速な運動であっても良好な再現性が得られ、上肢の動作特性を十分に表現することができる。
上肢運動モデル10の導出により、人間が行う機器の操作をシミュレーションで容易に再現でき、繰り返し動作実験が必要な操作機器の設計・開発や評価の場面で効率化に繋がると期待される。また、機械操作支援システムの一つであるコラボレータでは、人間の機器操作モデルの構造を利用した設計が行われることから、操作支援システムへの応用が期待され、現在検討中である。
本発明の活用例として、産業分野において、生産ラインでの重量物組み立て現場でのアシストを行う産業用マニピュレータが挙げられる。パワーアシスト機器は現在でも利用されているが、運動モデルを組み合わせることで、労働者のストレス軽減、生産性の向上や事故防止に寄与することができる。
また、本発明の活用例として、福祉介護分野において、例えば食事や書字など、脳梗塞などで麻痺が残る体の動きを支援する個人適応型生活支援装置が挙げられる。食事の支援として、スプーンを小型のロボットアームに取り付けた例はあるが、書字への応用事例はなく、今後さらに増加する高齢者の生活の質の維持に必要な技術でニーズが見込める。
また、本発明の活用例として、医療分野において、細胞膜を仮想現実感により直接触るような感覚で操作できる遠隔微細作業用ロボットが挙げられる。既存のシステムは力覚再現に留まり、人間の運動特性までを考慮した事例はなく、直観性や操作性の大幅な改善が期待できる。
1 目標指針
1a 回転軸
2 リンク
3 人間
4 上肢
10 上肢運動モデル
12 インターフェイスモデル化部
13 目・脳モデル化部
14 上肢モデル化部
22 結合部
23 比較部

Claims (2)

  1. 所定の回転軸を中心に回転する目標指針に、該目標指針と同軸回転するリンクを追従させる位置決め操作にともなう人間の上肢の動作をモデル化した上肢運動モデルであって、
    視覚により取得される前記目標指針の位置の情報である目標位置情報と、フィードバックされることにより取得される前記リンクを動かす上肢の手先の位置の情報である手先位置情報とを比較し、その比較結果としての誤差情報に基づき、脳からの上肢の筋肉への動作指令を発する目・脳モデル化部と、
    前記動作指令および該動作指令により生じた上肢の筋の変位に基づき、上肢の筋肉による前記リンクを動かす筋の発生力を発する上肢モデル化部と、
    前記筋の発生力による前記リンクの動作から、前記手先位置情報を発するとともに前記手先位置情報を前記目・脳モデル化部にフィードバックするインターフェイスモデル化部と、を備え、
    前記目・脳モデル化部は、前記誤差情報と、前記目標位置情報からフィードフォワードされ前記目標位置情報に基づいて予測される位置の情報である予測位置情報と、前記誤差情報からフィードフォワードされ前記誤差情報に基づいて訂正される位置の情報である訂正位置情報とを結合して前記動作指令となる情報を生成する結合部を有し、
    前記上肢モデル化部は、前記動作指令と、前記筋の発生力からフィードバックされ上肢の力覚により取得される力覚情報とを比較して前記筋の変位となる情報を生成する比較部を有する、
    上肢運動モデル。
  2. 所定の回転軸を中心に回転する目標指針に、該目標指針と同軸回転するリンクを追従させる位置決め操作にともなう人間の上肢の動作をモデル化した上肢運動モデルであって、次式(1)〜(3)により表わされる上肢運動モデル。
    Figure 2011224048
    Figure 2011224048
    Figure 2011224048
    ここで、T:前記目標指針の位置、Y:前記動作指令、Z:前記筋の変位、F:前記筋の発生力、X:前記手先の位置、δ:網膜から脳までの情報伝達時間、ξ:脳から上肢の筋肉までの情報伝達時間、τ:運動指令時定数、τ2-:筋運動の時定数、γ:フィードフォワード結合強度、G(s):筋の開ループインピーダンス特性、G(s):前記目標指針および前記リンクを含む操作機器の動特性であり、G(t),G(t),およびα(t)は、それぞれG(s),G(s),およびα(s)の原関数である。
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