以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.第1の実施形態>
最初に、本発明の第1の実施形態に係る熱風炉と、該熱風炉に設けられるチェッカー煉瓦について説明する。
[1.1.熱風炉の全体構成]
まず、図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る熱風炉の全体構成について説明する。図5は、本実施形態に係る熱風炉1を示す概略構成図である。
図5に示すように、熱風炉1は、高炉(図示せず。)に送出する例えば1200〜1400℃の熱風を製造する設備である。熱風炉1は、燃焼室4と蓄熱室3を備え、燃焼室4内で燃料ガスを燃焼させて蓄熱室3に蓄熱する蓄熱工程と、蓄熱室3で熱交換した熱風を高炉に送風する送風工程を交互に行う。通常、1基の高炉につき例えば3〜4台の熱風炉1が設置されており、これら複数の熱風炉1が蓄熱工程と送風工程を交互に切り替えて稼働することで、高炉に対して熱風を連続的に送り込む。
なお、本実施形態では、熱風炉1は、燃焼室4と蓄熱室3が分離構成された外燃式熱風炉1の例について説明するが、本発明はかかる例に限定されず、燃焼室と蓄熱室が一体構成された内燃式熱風炉、燃焼室が蓄熱室の頂上部に設けられた頂頭式熱風炉など、任意の方式の熱風炉にも適用できる。
図5に示す外燃式熱風炉1は、蓄熱室3と燃焼室4と煙突5とが分離構成された構造を有する。蓄熱室3は、基礎2の上に設けられた円筒状の蓄熱設備であり、蓄熱室3の外筒内の蓄熱領域10には、耐火煉瓦製の多数のチェッカー煉瓦30(図6参照。)が多段に積み重ねられており、その積み上げ高さは例えば約30mにも達する。該チェッカー煉瓦30は、燃焼室4から蓄熱室3に供給される排ガスの熱(燃焼熱)を蓄熱し、その熱で冷風を加熱して熱風を生成する熱交換機能を有する。このチェッカー煉瓦30の内部には、ガス流路32として、多数の貫通孔が上下方向に貫通形成されているが詳細は後述する。
上記蓄熱室3の上部は燃焼室4と連通しており、蓄熱室3の下部は煙突5と連通している。燃焼室4は、蓄熱室3の側方に並設された円筒状の燃焼設備であり、その内部で燃料ガスと空気を混合・燃焼させるためのバーナー8を備える。該燃焼室4の下部にはガス管6と空気管7が接続されており、燃焼室4の上部と蓄熱室3の上部は連絡管9で接続されている。また、煙突5は、蓄熱室3に隣接して基礎2上に立設されており、蓄熱室3の排ガス出口11から排出された排ガスを外部に放出する。
次に、上記構成の熱風炉1の動作について説明する。熱風炉1は、蓄熱工程と送風工程を交互に繰り返すようにして稼働する。
まず、蓄熱工程では、燃焼室4は、ガス管6から供給される燃料ガスと、空気管7から供給される燃焼用の空気とを混合して、バーナー8により燃焼させる。かかる燃焼室4での燃焼により得られた高温の排ガス(例えば1300〜1500℃)は、燃焼室4上部から連絡管9を通じて蓄熱室3に送出され、該蓄熱室3の蓄熱領域10に積み重ねられた多数のチェッカー煉瓦30のガス流路32内を下方向に流通する。このとき、排ガスとチェッカー煉瓦30との間の熱交換により、上記燃焼熱がチェッカー煉瓦30に蓄熱される。蓄熱領域10を通過した排ガスは、蓄熱室3下部の排ガス出口11を通じて煙突5に排出される。
その後、送風工程では、上記燃焼室4での燃焼を停止して、蓄熱室3の蓄熱領域10の下部側に設けられた冷風入口12から蓄熱室3内に空気(冷風)を送り込む。該空気は、蓄熱領域10に積み重ねられたチェッカー煉瓦30のガス流路32内を上方向に流通する。このとき、上記蓄熱されたチェッカー煉瓦30と該空気との間の熱交換により、該空気が加熱されて1200〜1400℃の熱風が製造される。該熱風は、蓄熱室3上部から連絡管9及び燃焼室4を通り、熱風出口13から排出されて高炉に送られる。
以上のような構造の熱風炉1において、蓄熱工程では、燃焼室4から蓄熱室3の上部に流入した高温の排ガスが、蓄熱室3内のチェッカー煉瓦30のガス流路32内を下方向に流通する。一方、送風工程では、蓄熱室3の下部から流入した低温の空気(冷風)が、該チェッカー煉瓦30のガス流路32内を上方向に流通する。このようにチェッカー煉瓦30のガス流路32には、蓄熱工程と送風工程とでは相互に逆方向にガスが流通し、これによって、チェッカー煉瓦30は、排ガスの熱を蓄熱し、その熱を用いて空気を加熱する熱交換機能を発揮する。
[1.2.チェッカー煉瓦の構成]
次に、図6を参照して、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30の構成について説明する。図6は、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30を示す上面図(a)及びC−C線断面図(b)である。
図6に示すように、チェッカー煉瓦30は、六角柱形状を有する煉瓦本体31と、該煉瓦本体31を上下方向(六角柱形状の軸心方向)に貫通するテーパ状の貫通孔である複数のガス流路32と、煉瓦本体31の上面に設けられる複数の凸ダボ33と、煉瓦本体31の下面に設けられる複数の凹ダボ34と、煉瓦本体31の側面39に上下方向に形成される複数の溝状のガス流路40、41とを備えている。
煉瓦本体31は、耐火煉瓦製であり、多数のチェッカー煉瓦30を上下に積み重ねた場合でも破壊されない圧縮強度を有する。この煉瓦本体31には、上下方向に複数のガス流路32が貫通形成される。しかし、このガス流路32の設置数を過度に多くしたり、ガス流路32の断面積を過度に大きしたりすると、チェッカー煉瓦30の製造時のプレス能力が不足し、高さ方向に均質な煉瓦材質が得られず、チェッカー煉瓦30の強度が不足してしまうという問題がある。一般に、チェッカー煉瓦30としては、幅が180〜320mm、高さが120〜180mmのものが使用されているが、蓄熱室3内におけるチェッカー煉瓦30の積み上げ高さは、約30〜40mにも達するため、チェッカー煉瓦30にかかる荷重と熱膨張時の応力を考慮すると、経験的に圧縮強さは40MPa以上であることが好ましい。例えば、上記サイズのチェッカー煉瓦30の1個あたりのガス流路22の設置数が37個以上である場合には、煉瓦本体31の十分な圧縮強度が得られない。従って、煉瓦本体31の材質及びサイズに応じて、ガス流路32の設置数と流路間距離を適切に決定することが好ましい。
そこで、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30の煉瓦本体31には、ガス流路として、完全な流路を成す貫通孔状のガス流路32が19個、1/2断面の溝状のガス流路40が12個、1/3断面の溝状のガス流路41が3個設けられている。また、これらのガス流路32、40、41の断面積と流路間距離は、煉瓦本体31の材質及びサイズに応じて適切に設定されている。
ガス流路32は、煉瓦本体31の上面35及び下面36に対して垂直な方向に煉瓦本体31を貫通する貫通孔である。本実施形態に係るガス流路32の断面形状は、成型の容易さの観点から円形であるが、かかる例に限定されず、例えば、四角形、三角形等の多角形、楕円形、星形、その他の任意の断面形状であってもよい。また、溝状のガス流路40、41の水平断面形状も同様である。
図2に示したように、従来のチェッカー煉瓦20のガス流路22は、煉瓦本体21の上下方向に渡って同一の内径及び断面積であることが一般的であった。これに対し、図6に示すように、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30のガス流路32は、煉瓦本体31の下面36側から上面35側に向けて拡張するテーパ孔であることを特徴としている。
即ち、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30のガス流路32は、煉瓦本体31の下面36側から上面35にかけて拡径するテーパ孔であるので、ガス流路32の上部側ほど、その内径及び断面積が拡張されている。従って、煉瓦本体31の上面35におけるガス流路32の上端開口37は、煉瓦本体31の下面36におけるガス流路32の下端開口38よりも大きくなる。つまり、ガス流路32の上端開口37の流路径φ2は、下端開口38の流路径φ1よりも大きくなる。よって、ガス流路32を水平面に投影した水平投影面上では、ガス流路32の上端開口37の外縁を成す円(直径φ2)と下端開口38の外縁を成す円(直径φ1)が同心円状に配置され、かつ、前者の円(直径φ2)が後者の円(直径φ1)を、環状の一定の隙間を空けて包囲することとなる。これにより、熱膨張により上下のチェッカー煉瓦30が横ずれしても、下段のガス流路32の上端開口37が、上段のガス流路32の下端開口38を内包できるようになるが、詳細は後述する(図9参照。)。
このように、本実施形態では、煉瓦本体31の内部に貫通形成されるガス流路32はテーパ孔であるが、同様に、煉瓦本体31の側面39に形成される溝状のガス流路40、41も、煉瓦本体31の下面36から上面35に向けて拡張するテーパ状の溝となっている。なお、上記テーパ状のガス流路32を備えたチェッカー煉瓦30を、金型を用いて成型する場合、該ガス流路32に対応するテーパを設けた中子を、チェッカー煉瓦30の上部側に引き抜く金型構造を採用すれば、該ガス流路32を備えたチェッカー煉瓦30を容易に成型可能である。
また、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30においては、煉瓦本体31の上面35に例えば3個の凸ダボ33が突出形成され、煉瓦本体31の下面36に例えば3個の凹ダボ34が陥没形成されている。凸ダボ33と凹ダボ34は相互に嵌合可能な形状を有しており、図示の例の凸ダボ33と凹ダボ34の平面形状は円形である。これらの凸ダボ33と凹ダボ34は、煉瓦本体31の上面35と下面36において相互に対応する位置に設けられる。かかる凸ダボ33と凹ダボ34は、複数のチェッカー煉瓦30を上下に積み重ねたときに相互に嵌合して、チェッカー煉瓦30の大きな横ずれを防止する機能を有する。
また、上記ガス流路32は、煉瓦本体31の上面35及び下面36において、凸ダボ33と凹ダボ34がない位置だけでなく、上記3個の凸ダボ33と凹ダボ34に対応する位置にもそれぞれ形成されている。当該凸ダボ33と凹ダボ34に対応する位置に形成されたガス流路32の中心は、凸ダボ33と凹ダボ34の中心と一致している。そして、当該ガス流路32の上端開口37の内径(流路径φ2)は、当該凸ダボ33の外径よりも小さく、当該ガス流路32の下端開口38の内径(流路径φ1)も、凹ダボ34の内径よりも小さい。このように、凸ダボ33及び凹ダボ34と重なる位置にもガス流路32を形成することで、煉瓦本体31全体に均等に複数のガス流路32を配置できる。なお、凸ダボ33及び凹ダボ34と重ならない位置にのみ、複数のガス流路32を配置しても勿論よい。
また、図示の例では、チェッカー煉瓦30の上面35に凸ダボ33を、下面36に凹ダボ34を設けたが、チェッカー煉瓦30の下面36に凸ダボ33を、上面35に凹ダボ34を設けることも可能である。また、複数のチェッカー煉瓦30を上下に煙突積み(図22(b)参照。)する場合には、チェッカー煉瓦30の上面35及び下面36の任意の位置に凸ダボ33及び凹ダボ34を配置することが可能となる。
[1.3.チェッカー煉瓦の積み重ね構造]
次に、図7を参照して、上記構成の複数のチェッカー煉瓦30を蓄熱室3内に積み重ねる構造について説明する。図7は、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30をラップ積みした構造を示す上面図(a)及びD−D線断面図(b)である。
図7に示すように、各チェッカー煉瓦30に形成された複数のガス流路32、40、41が上下に相互に連通するように、複数のチェッカー煉瓦30がラップ積みされる。ラップ積みとは、奇数段目のチェッカー煉瓦30と偶数段目のチェッカー煉瓦30とが水平方向にずれて配置されるように、チェッカー煉瓦30を多段に積み重ねる方式である。
このラップ積みでは、図7に示すように、水平面上に複数のチェッカー煉瓦30B、30C、30D・・・を並べて、1段目を構成する。各段において、水平方向に相隣接するチェッカー煉瓦30、30の側面39、39の間には、一定の微細な隙間39aが設けられる。さらに、1段目を構成する複数のチェッカー煉瓦30B、30C、30D・・・上に、該1段目を構成する複数のチェッカー煉瓦30B、30C、30D・・・とは水平方向にずれた水平位置に、複数のチェッカー煉瓦30A・・・を積み、2段目を構成する。このとき、1段目の相隣接する3つのチェッカー煉瓦30B、30C、30Dの中心を頂点とする正三角形の重心上に、2段目のチェッカー煉瓦30Aの中心が配置される。さらに、2段目を構成する複数のチェッカー煉瓦30A・・・上に、上記1段目を構成する複数のチェッカー煉瓦30B、30C、30Dと同じ水平位置に、複数のチェッカー煉瓦30を積み、3段目を構成する。
かかる積み方を繰り返して、例えば30〜40mもの積み上げ高さまで、多数のチェッカー煉瓦30が多段に積み上げられる。これにより、奇数段目のチェッカー煉瓦30の中心と偶数段目のチェッカー煉瓦30の中心とが交互に水平方向にずれた状態で、チェッカー煉瓦30を安定的に積み上げることができる。
上記のようにして多数のチェッカー煉瓦30をラップ積みした場合、上下に相隣接するチェッカー煉瓦30、30のガス流路32、32が相互に連通し、かつ、上下に相隣接するチェッカー煉瓦30、30の凸ダボ33と凹ダボ34が相互に嵌合する。このように、上下に相隣接するチェッカー煉瓦30、30のガス流路32、32を相互に連通させることより、積み重ねられた多数のチェッカー煉瓦30を上下方向に貫通する複数のガス流路を形成できる。さらに、上下に相隣接するチェッカー煉瓦30、30の凸ダボ33と凹ダボ34が嵌合することで、上下に積み重ねられたチェッカー煉瓦30を相互に拘束して、該チェッカー煉瓦30間の大きな横ずれを防止できる。
図6に示すように、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30では、煉瓦本体31の上面35と下面36に、それぞれ3個の凸ダボ33と凹ダボ34が中心角120°ごとに等間隔で配置されている。これにより、図7に示すように、複数のチェッカー煉瓦30をラップ積みしたときに、上段のチェッカー煉瓦30Aの下面36Aに形成された3個の凹ダボ34Aと、下段のチェッカー煉瓦30B、30C、30Dの上面35B、35C、35Dにそれぞれ形成された合計3個の凸ダボ33B、33C、33Dとを嵌合させることが可能となる。なお、煉瓦本体31の上面35と下面36にそれぞれ6個の凸ダボ33と凹ダボ34を中心角60°ごとに等間隔で設けたてもよい。この場合でも、複数のチェッカー煉瓦30をラップ積みしたときに、上下のチェッカー煉瓦30の凸ダボ33と凹ダボ34を嵌合させることが可能となる。
ところで、上記チェッカー煉瓦30の凸ダボ33と凹ダボ34は、隙間無く密接して嵌合するのではなく、チェッカー煉瓦30の熱膨張による小さな横ずれを吸収するために、凸ダボ33と凹ダボ34の間に例えば2.5mmから5mmの余裕代D(熱膨張代)が設けられている。つまり、当該余裕代Dは、凸ダボ33と凹ダボ34を嵌合させたときの水平方向の遊び代であり、凹ダボ34の内径は、凸ダボ33の外径に当該余裕代Dを加えた大きさである。かかる余裕代Dを設けない場合、上下のチェッカー煉瓦30の熱膨張に差が生じたときに、凸ダボ33又は凹ダボ34が破損してしまうおそれがある。これに対し、上記凸ダボ33と凹ダボ34間に余裕代Dを設けることにより、熱膨張したチェッカー煉瓦30が水平方向に最大で当該余裕代Dの分だけ移動可能となるが、この場合、上下に相隣接するチェッカー煉瓦30の間に、当該余裕代D(例えば最大5mm)の水平方向のずれ(横ずれ)が発生する。
[1.4.ガス流路の接合部の構造]
ここで、図8及び図9を参照して、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30の横ずれについて詳述する。図8は、熱膨張等により上段のチェッカー煉瓦30Aが下段のチェッカー煉瓦30B、30Cに対して右方向に横ずれした状態を示す断面図である。図9は、図8の波線円で示した部分の拡大断面図である。
図8に示すように、上段のチェッカー煉瓦30Aが熱膨張した場合には、上段のチェッカー煉瓦30Aが下段のチェッカー煉瓦30B、30Cに対して、上記凸ダボ33と凹ダボ34間の余裕代Dの範囲内で横ずれする。このため、上段のチェッカー煉瓦30Aのガス流路32Aと下段のチェッカー煉瓦30B、30Cのガス流路32B、32Cとの間にも、上記余裕代Dの範囲内で横ずれが生じる。
従来のチェッカー煉瓦では、図3に示したように、上下のチェッカー煉瓦20A、20Bに上記余裕代Dの範囲内の横ずれ(例えば最大5mm)が生じた場合には、図4(a)に示したように、上段のガス流路22Aの下端開口28Aと、下段のガス流路22Bの上端開口27Bとが横ずれして、上下のガス流路22A、22Bの接合部に段差15が生じていた。このため、熱風炉1の蓄熱工程にてガス流路22A、22B内に排ガスを下方向に流通させるときに、該段差15にダスト16が付着堆積して、上下のガス流路22A、22Bの接合部における流路の閉塞や流路断面積の縮小が発生するという問題があった。特に、ガス流路22の流路径φが小さいほど、上記段差15に対するダスト付着の弊害は大きくなる。
これに対し、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30では、ガス流路32は上面35側が拡張されたテーパ孔であり、当該テーパ状のガス流路32の上端開口37は、下端開口38よりも上記余裕代D(例えば最大5mm)以上に拡張されている。例えば、テーパ状のガス流路32の下端開口38の流路径φ1が30mmである場合、その上端開口37の流路径φ2は35mm(=30mm+5mm)以上に拡径されている。このように、ガス流路32の上端開口37は下端開口38より少なくとも余裕代D以上大きい。従って、図7に示したように、上下のチェッカー煉瓦30が横ずれしていない場合には、下段のチェッカー煉瓦30Bのガス流路32Bの上端開口37Bは、少なくとも当該余裕代D以上の余裕をもって、上段のチェッカー煉瓦30Aのガス流路32Aの下端開口38Aを包含する。なお、ここで言う包含とは、下端開口38Aに接合された上端開口37Bが、当該下端開口38Aを内側に含むことを意味する。
また、図8に示すように、上段のチェッカー煉瓦30Aと下段のチェッカー煉瓦30Bとの間に、上記余裕代Dの範囲内の横ずれ(例えば最大5mm)が生じた場合であっても、図9に示すように、下段のチェッカー煉瓦30Bのガス流路32Bの上端開口37B(流路径φ2)は、依然として、上段のチェッカー煉瓦30Aのガス流路32Aの下端開口38A(流路径φ1)を包含している。つまり、上段のガス流路32Aの下端開口38A(流路径φ1)は、下段のガス流路32Bの上端開口37B(流路径φ2)内に収まっている。このため、下段のチェッカー煉瓦30Bの上面35Bは、上段のガス流路32Aの下端開口38Aの内側に突出しておらず、上下のガス流路32の接合部には、図4(a)に示したような段差15が生じない。
従って、図9(a)に示すように、蓄熱工程にて、燃焼室4からの高温の排ガスが、チェッカー煉瓦30のガス流路32内を下方向に流通するときに、上下のガス流路32A、32Bの接合部に対してダストが付着することを防止できる。よって、熱膨張によるチェッカー煉瓦30の横ずれに起因したダスト付着の問題を解消でき、上下のガス流路32A、32Bの接合部における流路の閉塞や、流路断面積の縮小を防止できる。
また、従来のチェッカー煉瓦では、図3に示したように、上下のチェッカー煉瓦20A、20Bが横ずれした場合、上段のガス流路22Aの下端開口28A(流路径φ1)と、下段のガス流路22Bの上端開口27B(流路径φ1)とが横ずれする。このため、図4(b)に示したように、上下のガス流路22A、22Bの接合部の流路幅がφ1からWに減少するため、該接合部の流路断面積が大幅に縮小していた。従って、熱風炉1の送風工程にてガス流路22A、22B内に空気を上方向に流通させるときに、流路断面積が狭いガス流路22A、22Bの接合部がボトルネックとなって、送風中の圧力損失が増大してしまうという問題もあった。特に、ガス流路22の流路径φが小さいほど、上記圧力損失の悪影響は大きくなる。
これに対し、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30によれば、上下のチェッカー煉瓦30A、30Bが横ずれした場合であっても、図9(b)に示すように、下段のガス流路32Bの上端開口37B(流路径φ2)は、上段のガス流路32Aの下端開口38A(流路径φ1)を包含している。従って、上下のガス流路32A、32Bの接合部において、流路幅が縮小せず、横ずれする前の流路幅(φ1)を維持できるので、該接合部の流路断面積も縮小せず、横ずれする前の流路断面積を確保できる。よって、送風工程にてガス流路32A、32B内に空気を上方向に流通させるときに、ガス流路32A、32Bの接合部における圧力損失を低減できる。
<2.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係るチェッカー煉瓦30について説明する。第2の実施形態に係るチェッカー煉瓦30は、上記第1の実施形態に係るチェッカー煉瓦30と比べて、ガス流路の形状が相違し、その他の機能構成は第1の実施形態の場合と実質的に同一であるので、その詳細説明は省略する。
まず、図10を参照して、第2の実施形態に係るチェッカー煉瓦30の構成について説明する。図10は、第2の実施形態に係るチェッカー煉瓦30を示す断面図である。
上記第1の実施形態に係るチェッカー煉瓦30では、図6に示したように、ガス流路32を、下面36側から上面35側にかけて拡張するテーパ孔で構成することで、ガス流路32の上端開口37を下端開口38よりも拡張していた。
これに対し、第2の実施形態に係るチェッカー煉瓦30では、図10に示すように、ガス流路42を、上下方向に一定の断面積(一定の流路径φ1)を有する円柱状の貫通孔で構成し、該ガス流路42の上端を部分的に拡開して、上端拡開部43、44を形成する。これにより、ガス流路42の上端開口47(流路径φ3)が下端開口48(流路径φ1)よりも拡張される。
かかるチェッカー煉瓦30を製造する場合、例えば、まず、円柱状のガス流路42に対応する中子を具備した金型を用いて、複数のガス流路42が形成されたチェッカー煉瓦30を成型した後に、該ガス流路42の上端開口47の外縁コーナー部を周方向に面取り加工して、上端拡開部43、44を形成すればよい。例えば、図10(a)に示すチェッカー煉瓦30では、ガス流路42の上端開口47の外縁コーナー部をテーパ状に面取り加工して、上面35側に向けて拡張するテーパ状の上端拡開部43が形成されている。また、図10(b)に示すチェッカー煉瓦30では、ガス流路42の上端開口47の外縁コーナー部を断面R状に面取り加工して、上面35側に向けて拡張する断面R状の上端拡開部44が形成されている。
このように、上下方向に一定の流路径φ1を有するガス流路42の上端のみを部分的に拡開して、上端拡開部43、44を形成することで、ガス流路42のうち上端開口47のみを部分的に拡張することができる。上端開口47における上端拡開部43、44の拡張幅は、上述した凸ダボ33と凹ダボ34間の余裕代D以上である。つまり、上端拡開部43、44が形成されたガス流路42の上端開口47の流路径φ3は、ガス流路42の下端開口の流路径φ1より当該余裕代D以上大きい(φ3>φ1+D)。
ここで、図11を参照して、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30の横ずれについて詳述する。図11は、本実施形態に係る上下のガス流路42、42の接合部を示す部分拡大断面図である。
上記のように本実施形態では、ガス流路42の上端に上端拡開部43、44を形成することで、上端開口47を下端開口48よりも拡張する。これにより、図11(a)、(b)に示すように、熱膨張等により上下のチェッカー煉瓦30A、30Bが上記余裕代Dの範囲内で横ずれした場合であっても、下段のチェッカー煉瓦30Bのガス流路42の上端に当該余裕代D分の上端拡開部43B、44Bが形成されているので、上段のチェッカー煉瓦30Aのガス流路42Aの下端開口48A(流路径φ1)が、下段のチェッカー煉瓦30Bのガス流路42Bの上端開口47B(流路径φ3)内に収まるようになる。従って、チェッカー煉瓦30が横ずれした場合でも、上下のガス流路42A、42Bの接合部における段差15(図4(a)参照。)の発生を防止できるので、蓄熱工程において、該接合部に対してダストが付着堆積することを好適に防止できる。
<3.第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に係るチェッカー煉瓦30について説明する。第3の実施形態に係るチェッカー煉瓦30は、上記第1の実施形態に係るチェッカー煉瓦30と比べて、ガス流路の下端に下端拡開部を設ける点で相違し、その他の機能構成は第1の実施形態の場合と実質的に同一であるので、その詳細説明は省略する。
上述した従来のチェッカー煉瓦20では、図3に示したように、上下のチェッカー煉瓦20A、20Bが横ずれした場合、図4(b)に示したように、上下のガス流路22A、22Bの接合部の流路幅がφ1からWに減少するため、該接合部の流路断面積が大幅に縮小していた。従って、熱風炉1の送風工程にてガス流路22A、22B内に空気を上方向に流通させるときに、流路断面積が狭いガス流路22A、22Bの接合部がボトルネックとなって、送風中の圧力損失が増大してしまうという問題があった。
これに対し、第1の実施形態では、テーパ状のガス流路32を採用して、該ガス流路32の上端開口37(流路径φ2)と下端開口38(流路径φ1)と、凸ダボ33と凹ダボ34間の余裕代Dとの寸法関係を、φ2>φ1+Dとすることで、上下のガス流路32、32の接合部における段差15の発生を防止していた。これにより、蓄熱工程における該接合部に対するダスト付着を防止するとともに(図9(a)参照。)、送風工程における該接合部の流路断面積の縮小を防止していた(図9(b)参照。)。
しかしながら、ガス流路32の流路径φが大きいほど、送風工程におけるガス流路32での圧力損失の問題は解消されるが、煉瓦本体31の体積が減少するため、チェッカー煉瓦30の蓄熱効率が低下するという問題がある。従って、ガス流路32での圧力損失を増大させないようにしつつ、チェッカー煉瓦30の蓄熱効率を高めるために、ガス流路32の流路径φを全体的にある程度小さくすることが要求される。ところが、上記第1の実施形態に係るチェッカー煉瓦30構成では、テーパ状のガス流路32の下端開口38の流路径φ1を小さくした場合には、該小さい流路径φ1の下端開口38の流路断面積の縮小による圧力損失の問題が無視できない程度になる。このように、ガス流路32の流路径φによって、チェッカー煉瓦30の蓄熱効率と送風工程での圧力損失とがトレードオフの関係になるという問題がある。
そこで、かかる蓄熱効率と圧力損失のトレードオフの問題を解決すべく、第3の実施形態では、図12〜図19に示すように、テーパ状のガス流路32の下端のみを部分的に拡開して、下端拡開部53、54を形成することを特徴とする。かかる下端拡開部53、54を設けることにより、チェッカー煉瓦30の下面36におけるガス流路32の下端開口38を部分的に拡張することができる。従って、ガス流路32の流路径φを小さくした場合であっても、ガス流路32の下端開口38の流路断面積をある程度確保できるので、送風工程における当該下端開口38での圧力損失を抑制しつつ、ガス流路32の流路径φを小さくして、チェッカー煉瓦30の蓄熱効率を向上できるようになる。以下に第3の実施形態に係るチェッカー煉瓦30について詳述する。
まず、図12、図16を参照して、第3の実施形態に係るチェッカー煉瓦30の構成について説明する。図12は、第3の実施形態に係るチェッカー煉瓦30を示す上面図(a)及びE−E線断面図(b)であり、図16は、第3の実施形態の変更例に係るチェッカー煉瓦30を示すE−E線断面図である。
図12、図16に示すように、第3の実施形態に係るチェッカー煉瓦30は、第1の実施形態に係るチェッカー煉瓦30(図6参照。)と同様に、煉瓦本体31にテーパ状のガス流路32が複数形成されており、該ガス流路32の下端を拡開した下端拡開部53、54が形成されている点を除いては、第1の実施形態に係るチェッカー煉瓦30と同様の構成である。
図12に示すチェッカー煉瓦30では、テーパ状のガス流路32の下端のみを部分的に拡開することにより、該ガス流路32の下端開口38に、下面36に向けて拡張するテーパ状の下端拡開部53が形成されている。一方、図16に示すチェッカー煉瓦30では、テーパ状のガス流路32の下端のみを部分的に拡開することにより、該ガス流路32の下端開口38に、下面36に向けて拡張する断面R状の下端拡開部53が形成されている。かかる下端拡開部53、54により拡張された下端開口38の流路径φ4は、上端開口37の流路径φ2よりも小さい。例えば、下端開口38の流路径φ4と上端開口37の流路径φ2との差は、上述した凸ダボ33と凹ダボ34間の余裕代D以上である(φ2>φ4+D)。このように、流路径φ4、φ2を調整することによって、上下のチェッカー煉瓦30が横ずれした場合に、上下のガス流路32、32の接合部における段差15の発生を防止できる(図15(a)、図19(a)参照。)。
上記下端拡開部53、54を具備するチェッカー煉瓦30を製造する場合、例えば、まず、テーパ状のガス流路32に対応する中子を具備した金型を用いて、複数のテーパ状のガス流路32が形成されたチェッカー煉瓦30を成型する。その後、該ガス流路32の下端開口38の外縁コーナー部を周方向に面取り加工して、下端拡開部53、54を形成する。例えば、図12に示すチェッカー煉瓦30では、ガス流路32の下端開口38の外縁コーナー部をテーパ状に面取り加工して、下面36側に向けて拡張するテーパ状の下端拡開部53を形成する。また、図16に示すチェッカー煉瓦30では、ガス流路32の下端開口38の外縁コーナー部を断面R状に面取り加工して、下面36側に向けて拡張する断面R状の下端拡開部54を形成する。
次に、図13、図17を参照して、上記構成の複数のチェッカー煉瓦30を蓄熱室3内に積み重ねる構造について説明する。図13は、第3の実施形態に係るチェッカー煉瓦30をラップ積みした構造を示す上面図(a)及びF−F線断面図(b)であり、図17は、第3の実施形態の変更例に係るチェッカー煉瓦30をラップ積みした構造を示すF−F線断面図である。
図13及び図17に示すように、第3の実施形態も第1の実施形態と同様、上下に相隣接するチェッカー煉瓦30、30のガス流路32、32が相互に連通し、かつ、上下に相隣接するチェッカー煉瓦30、30の凸ダボ33と凹ダボ34が相互に嵌合するように、複数のチェッカー煉瓦30がラップ積みされる。このとき、上段のチェッカー煉瓦30Aのガス流路32Aの下端開口38Aは、下段のチェッカー煉瓦30B、30Cのガス流路32B、32Cの上端開口37B、37Cと接合される。そして、上段のガス流路32Aの下端開口38Aは、下端拡開部53、54により拡張され、その流路径がφ1からφ4に拡径されているが、φ1<φ4<φ2であるので、当該上段のガス流路32Aの下端開口38A(流路径φ4)は、下段のガス流路32B、32Cの上端開口37B、37C(流路径φ2)の内側に収まっている。
次に、図14、図15及び図18、図19を参照して、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30の横ずれについて詳述する。図14、図18は、熱膨張等により上段のチェッカー煉瓦30Aが下段のチェッカー煉瓦30B、30に対して右方向に横ずれした状態を示す断面図である。図15、図19は、図14、図18の波線円で示した部分の拡大断面図である。
図14、図18に示すように、上段のチェッカー煉瓦30Aが熱膨張した場合には、上段のチェッカー煉瓦30Aが下段のチェッカー煉瓦30B、30Cに対して、上記凸ダボ33と凹ダボ34間の余裕代Dの範囲内で横ずれする。このため、上段のチェッカー煉瓦30Aのガス流路32Aと下段のチェッカー煉瓦30B、30Cのガス流路32B、32Cとの間にも、上記余裕代Dの範囲内で横ずれ(例えば最大5mm)が生じる。
かかる横ずれが生じた場合であっても、図15及び図19に示すように、下段のチェッカー煉瓦30Bのガス流路32Bの上端開口37B(流路径φ2)は、依然として、上段のチェッカー煉瓦30Aのガス流路32Aの下端開口38A(流路径φ4)を包含している。つまり、上段のガス流路32Aの下端開口38A(流路径φ4)は、下段のガス流路32Bの上端開口37B(流路径φ2)内に収まっている。このため、下段のチェッカー煉瓦30Bの上面35Bは、上段のガス流路32Aの下端開口38Aの内側に突出しておらず、上下のガス流路32の接合部には、段差15(図4(a)参照。)が生じない。
従って、図15(a)及び図19(a)に示すように、蓄熱工程にて、燃焼室4からの高温の排ガスが、チェッカー煉瓦30のガス流路32内を下方向に流通するときに、上下のガス流路32A、32Bの接合部に対してダストが付着することを防止できる。よって、熱膨張によるチェッカー煉瓦30の横ずれに起因したダスト付着の問題を解消でき、該接合部における流路の閉塞や、流路断面積の縮小を防止できる。
さらに、図15(b)及び図19(b)に示すように、下端拡開部53A、54Aにより上段のガス流路32Aの下端開口38Aが部分的に拡張されており、当該下端開口38Aの流路断面積が拡大されている。従って、上下のガス流路32A、32Bの接合部において、流路幅が縮小せず、横ずれする前の流路幅(φ4)を維持できるので、該接合部の流路断面積も縮小せず、横ずれする前の流路断面積を確保できる。よって、送風工程にて、空気がガス流路32A、32B内を上方向に流通するときに、ガス流路32A、32Bの接合部における圧力損失を抑制できる。
以上説明したように、第3の実施形態に係るチェッカー煉瓦30では、テーパ状のガス流路32の下端に下端拡開部53、54を設けて下端開口38を拡張している。これにより、チェッカー煉瓦30が横ずれした場合であっても、当該拡張された下端開口38(流路径φ4)を下段のガス流路32の上端開口37(流路径φ2)内に収めつつ、下端開口38の流路断面積をある程度の大きさに確保できる。従って、チェッカー煉瓦30の蓄熱効率を高めるために、ガス流路32の流路径φをある程度小さくした場合であっても、ガス流路32の下端開口38における流路断面積の縮小の問題を解消できるので、送風工程における当該下端開口38での圧力損失を抑制できる。
<4.第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態に係るチェッカー煉瓦30について説明する。第4の実施形態に係るチェッカー煉瓦30は、上記第2の実施形態に係るチェッカー煉瓦30と比べて、ガス流路の下端に下端拡開部を設ける点で相違し、その他の機能構成は第2の実施形態の場合と実質的に同一であるので、その詳細説明は省略する。
以下に、図20を参照して、第4の実施形態に係るチェッカー煉瓦30の構成について説明する。図20は、第4の実施形態に係るチェッカー煉瓦30を示す断面図である。
上記第2の実施形態に係るチェッカー煉瓦30では、ガス流路42を、上下方向に一定の断面積(一定の流路径φ1)を有する円柱状の貫通孔で構成しており、該ガス流路42の下端に下端拡開部を設けていなかった。かかる第2の実施形態の構成では、上記第3の実施形態の項で説明したように、ガス流路42の流路径φ1を小さくした場合に、該小さい流路径φ1の下端開口48の流路断面積の縮小による圧力損失の問題が無視できない程度になり、チェッカー煉瓦30の蓄熱効率と送風工程での圧力損失とがトレードオフの関係になるという問題があった。
そこで、かかる蓄熱効率と圧力損失のトレードオフの問題を解決すべく、第4の実施形態では、図20に示すように、ガス流路42の下端のみを部分的に拡開して、下端拡開部54、53を形成することを特徴とする。かかる下端拡開部54、53を設けることにより、チェッカー煉瓦30の下面36におけるガス流路42の下端開口48を部分的に拡張することができる。従って、ガス流路42の流路径φ1を小さくした場合であっても、ガス流路42の下端開口48の流路断面積をある程度確保できるので、送風工程における当該下端開口48での圧力損失を抑制しつつ、ガス流路42の流路径φ1を小さくして、チェッカー煉瓦30の蓄熱効率を向上できるようになる。以下に第4の実施形態に係るチェッカー煉瓦30について詳述する。
図20に示すように、第4の実施形態に係るチェッカー煉瓦30では、ガス流路42を、上下方向に一定の断面積(一定の流路径φ1)を有する円柱状の貫通孔で構成し、該ガス流路42の上端を部分的に拡開して、上端拡開部43、44を形成するとともに、該ガス流路42の下端を部分的に拡開して、下端拡開部53、54を形成する。これにより、ガス流路42の上端開口47(流路径φ3)よりも小さい範囲内で、該ガス流路42の下端開口48(流路径φ4)が拡張される。
かかるチェッカー煉瓦30を製造する場合、例えば、まず、円柱状のガス流路42に対応する中子を具備した金型を用いて、複数のガス流路42が形成されたチェッカー煉瓦30を成型する。その後、該ガス流路42の上端開口47の外縁コーナー部を周方向に面取り加工して、上端拡開部43、44を形成し、さらに、該ガス流路42の下端開口48の外縁コーナー部を周方向に面取り加工して、下端拡開部54、53を形成する。例えば、図20(a)に示すチェッカー煉瓦30では、ガス流路42の上端開口47及び下端開口48の外縁コーナー部をテーパ状に面取り加工して、上面35側に向けて拡張するテーパ状の上端拡開部43と、下面36側に向けて拡張するテーパ状の下端拡開部54を形成する。また、図20(b)に示すチェッカー煉瓦30では、ガス流路42の上端開口47及び下端開口48の外縁コーナー部を断面R状に面取り加工して、上面35側に向けて拡張する断面R状の上端拡開部44と、下面36側に向けて拡張する断面R状の下端拡開部53を形成する。
このように、上下方向に一定の流路径φ1を有するガス流路42の上端及び下端を部分的に拡開して、上端拡開部43、44、下端拡開部54、53を形成することで、ガス流路42のうち上端開口47を部分的に拡張するとともに、下端開口48も部分的に拡張することができる。かかる下端拡開部54、53により拡張された下端開口48の流路径φ4は、上端開口47の流路径φ3よりも小さい。例えば、下端開口48の流路径φ4と上端開口47の流路径φ3との差は、上述した凸ダボ33と凹ダボ34間の余裕代D以上である(φ3>φ4+D、φ4>φ1)。このように、流路径φ4、φ3を調整することによって、上下のチェッカー煉瓦30が横ずれした場合に、上下のガス流路42、42の接合部における段差15の発生を防止できる(図21参照。)。
また、上記構成の本実施形態に係るチェッカー煉瓦30は、上記第1〜第3の実施形態と同様にラップ積みされる。このとき、上段のチェッカー煉瓦30Aのガス流路42Aの下端開口48Aは、下段のチェッカー煉瓦30B、30Cのガス流路42Bの上端開口47Bと接合される。そして、上段のガス流路42Aの下端開口48Aは、下端拡開部54、53により拡張され、その流路径がφ1からφ4に拡径されているが、φ1<φ4<φ3であるので、当該上段のガス流路42Aの下端開口48A(流路径φ4)は、下段のガス流路42Bの上端開口47B(流路径φ3)の内側に収まっている。
さらに、図21を参照して、本実施形態に係るチェッカー煉瓦30の横ずれについて詳述する。図21は、本実施形態に係るガス流路の接合部の拡大断面図である。
上下のチェッカー煉瓦30が上記余裕代Dの範囲内で横ずれ(例えば最大5mm)した場合であっても、図21に示すように、下段のチェッカー煉瓦30Bのガス流路42Bの上端開口47B(流路径φ3)は、依然として、上段のチェッカー煉瓦30Aのガス流路42Aの下端開口48A(流路径φ4)を包含している。つまり、上段のガス流路42Aの下端開口48A(流路径φ4)は、下段のガス流路42Bの上端開口47B(流路径φ3)内に収まっている。このため、下段のチェッカー煉瓦30Bの上面35Bは、上段のガス流路42Aの下端開口48Aの内側に突出しておらず、上下のガス流路42の接合部には、段差15(図4(a)参照。)が生じない。
従って、第4の実施形態も、上記第3の実施形態と同様、蓄熱工程にて、燃焼室4からの高温の排ガスが、チェッカー煉瓦30のガス流路42内を下方向に流通するときに、上下のガス流路42A、42Bの接合部に対してダストが付着することを防止できる。よって、熱膨張によるチェッカー煉瓦30の横ずれに起因したダスト付着の問題を解消でき、該接合部における流路の閉塞や、流路断面積の縮小を防止できる。
さらに、下端拡開部54A、53Aにより上段のガス流路42Aの下端開口48Aが部分的に拡張されており、当該下端開口48Aの流路断面積が拡大されている。従って、上下のガス流路42A、42Bの接合部において、流路幅が縮小せず、横ずれする前の流路幅(φ4)を維持できるので、該接合部の流路断面積も縮小せず、横ずれする前の流路断面積を確保できる。よって、送風工程にて、空気がガス流路42A、42B内を上方向に流通するときに、ガス流路42A、42Bの接合部における圧力損失を抑制できる。
以上説明したように、第4の実施形態に係るチェッカー煉瓦30では、円柱状のガス流路42の下端に下端拡開部54、53を設けて下端開口48を拡張している。これにより、チェッカー煉瓦30が横ずれした場合であっても、当該拡張された下端開口48(流路径φ4)を下段のガス流路42の上端開口47(流路径φ3)内に収めつつ、下端開口48の流路断面積をある程度の大きさに確保できる。従って、チェッカー煉瓦30の蓄熱効率を高めるために、ガス流路42の流路径φをある程度小さくした場合であっても、ガス流路42の下端開口48における流路断面積の縮小の問題を解消できるので、送風工程における当該下端開口48での圧力損失を抑制できる。
<5.まとめ>
以上、本発明の第1〜第4の実施形態に係るチェッカー煉瓦30と、該チェッカー煉瓦30が蓄熱室3内に積み重ねられた熱風炉1について説明した。上記第1〜第4の実施形態によれば、蓄熱工程において燃焼室4からの燃焼排ガスに含まれるダストの付着対策として、個々のチェッカー煉瓦30のガス流路32(42)の上端開口37(47)が、下端開口38(48)よりも拡張されている。
これにより、熱膨張により上下に隣接するチェッカー煉瓦30、30が水平方向にずれた場合でも、上段のチェッカー煉瓦30のガス流路32(42)の下端開口38(48)が、下段のチェッカー煉瓦30のガス流路32(42)の上端開口37(47)内に収まるようになる。従って、上下のガス流路32(42)の接合部において、段差15が発生しないので、当該接合部に対するダストの付着を防止できる。
また、上記第1〜第4の実施形態によれば、ガス流路32(42)の上端開口37(47)と下端開口38(48)の大きさの差(例えば、流路径差φ2−φ1)は、凸ダボ33と凹ダボ34を嵌合したときの余裕代D以上である。該余裕代Dは、熱膨張による上下のチェッカー煉瓦30、30の水平方向の最大ずれ量に相当する。よって、熱膨張により上下のチェッカー煉瓦30、30が最大ずれ量で横ずれした場合であっても、図9、図11、図15、図19、図21に示したように、上段のガス流路32A(42A)の下端開口38A(48A)は、下段のガス流路32B(42B)の上端開口37B(47B)内に収まる。従って、上下のガス流路32A、32B(42A、42B)の接合部に、従来のような段差15が発生しないので、該接合部に対するダストの付着堆積を好適に防止できる。
さらに、上記第3〜第4の実施形態によれば、送風工程において、ガス流路32(42)の接合部における圧力損失を減少するために、チェッカー煉瓦30のガス流路32(42)の下端開口38(48)に下端拡開部53、54を設けて、当該下端開口38(48)を部分的に拡張している。これにより、上下に隣接するチェッカー煉瓦30、30が水平方向にずれた場合でも、上下のガス流路32(42)の接合部における流路断面積を減少させない構造とすることができる。従って、チェッカー煉瓦30の蓄熱効率を向上するために、チェッカー煉瓦30のガス流路32(42)の流路径φを小さくした場合であっても、上下のガス流路32(42)の接合部における流路断面積を確保できるので、当該接合部での圧力損失を減少させることができる。
よって、小さい流路径φのガス流路32(42)を備えたチェッカー煉瓦30(例えば、流路径φ及び流路間距離がともに15mmのチェッカー煉瓦30)を適用可能となり、チェッカー煉瓦30の蓄熱効率を上昇させることができる。この結果、1基の高炉に対して用いられる同規模の熱風炉1の基数を4基から3基へ減少することが可能となる。或いは、同等の熱風量を得るために必要な熱風炉1基当たりのチェッカー煉瓦30の使用量を、削減することが可能となる。従って、熱風炉1の建設コストを削減できる。
次に、本発明の実施例について説明する。なお、以下の実施例は、あくまでも本発明を説明するための一具現例に過ぎす、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
表1は、本発明の実施例(No.1から15)及び比較例(No.16から19)に係るチェッカー煉瓦の試作条件と、その性能(圧力損失指数、ダスト付着の有無、熱効率)を評価した試験結果を示す。表1のうち、表面積については、チェッカー煉瓦1個当たりのガス流路の内面積を算出し、1m3の空間に築造できるチェッカー煉瓦の表面積を算出した。また、体積については、1個当たりのチェッカー煉瓦の実体積を算出し、1m3の空間に築造できるチェッカーの煉瓦の実体積を算出した。また、圧損指数は、燃焼時のチェッカー上面の炉内圧力とチェッカー下面の炉内圧力の差を表し、現行形状のNo.19を100として指数化した。本指数は蓄熱工程におけるチェッカー内の圧力を示している。
(1)比較例:No.16〜19
比較例(従来品)に係るチェッカー煉瓦の材質は粘土質れんが(Al2O3含有量が約45%)とした。ガス流路の形状は図1に示す円柱状とし、ガス流路の流路径はφ36mm以下の4種類とし、煉瓦高さは150mmとして、比較例に係るチェッカー煉瓦を製造した。
(2)本発明の実施例:No.1〜15
本発明の実施例に係るチェッカー煉瓦の材質は、比較例と同様に、粘土質れんが(Al2O3含有量が約45%)とした。
ガス流路の流路径は、熱効率を考慮し、φ30mm以下の3種類とした。流路間距離は、表面積と体積のバランスから17mm、15mm、13.5mm、11mmの4種類とし、効率的な組み合わせとした。また、ガス流路の孔形状は、表1に示すように、テーパ孔(第1の実施形態:図6)、円柱孔+上面テーパ(第2の実施形態:図10(a))、円柱孔+上面R(第2の実施形態:図10(b))テーパ孔+下面R(第3の実施形態:図12)、円柱孔+上下面R(第4の実施形態:図20)の5種類を試作した。
チェッカー煉瓦の製造方法は次の通りである。金型に、混練した材料を投入してプレスを行い、チェッカー煉瓦を成型した。この成型加工では、チェッカー煉瓦を成型したノックアウト(金型の抜き取り)を容易にするため、チェッカー煉瓦を上下転置した状態でプレスする必要があるので、上部ライナーに凹ダボとR加工またはテーパを加工し、下部からテーパを付けた棒状の中子を取り付け、下部ライナーに凸ダボを加工した金型を用いた。さらに、成型されたチェッカー煉瓦を、乾燥させた後に焼成して製品化した。
(3)評価結果
単なる円柱状のガス流路が形成された比較例(No.16から19)に係るチェッカー煉瓦は、チェッカー煉瓦の上面にダストの付着が見られた。これに対し、本実施例に係るチェッカー煉瓦についてはは、ガス流路の上面開口を拡張した場合(No.1、3、4、5、8、10、12、14)、ガス流路の上面開口を拡張し、かつ、下端開口にR加工を加えた場合(No.2、6、9、11、13、15)、及び、ガス流路の上面開口を拡張し、かつ、下端開口にテーパ加工を加えた場合(No.7)とも、ダストの付着は見られなかった。従って、本実施例において、チェッカー煉瓦のガス流路の上端開口を拡張することにより、蓄熱工程において上下のガス流路の接合部に対するダストの付着を防止できることが分かる。
また、チェッカー煉瓦を上下に貫通するテーパ状のガス流路を設けた実施例(No.1、2、3、6、8、9、10、11、12、13、14、15)は、比較例No.16〜19における同じ流路径のものと比べて、蓄熱工程における圧力損失が少なく効率的であることが分かる。また、ガス流路の下部の断面を広げた実施例(No.2、6、7、9、11、13、15)も、比較例No.16〜19における同じ流路径のものと比べて、蓄熱工程における圧力損失が小さくなることが分かるが、流路断面の縮小がないため、送風工程における圧力損失も小さくなることは自明である。更にまた、上記テーパ状のガス流路を設け且つ該ガス流路の下部の断面を広げた実施例(No.2、6、9、11、13)は、上記テーパ状のガス流路のみの実施例(No.1、3、8、10、12、14)と比べて、より圧力損失が少なくなり効率的になることが分かる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、図22(a)に示すように、蓄熱室3内に複数のチェッカー煉瓦30をラップ積みしたが、本発明のチェッカー煉瓦の積み重ね方法は、かかる例に限定されない。例えば、図22(b)に示すように、複数のチェッカー煉瓦30をいわゆる煙突積みしてもよい。煙突積みは、上下に隣接するチェッカー煉瓦30、30の水平位置をずらすことなく、複数のチェッカー煉瓦30を鉛直方向に単純に積み上げる積み重ね方法である。