JP2011219782A - 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Si、Mnを含有する鋼板を母材とし、高加工時の耐めっき剥離性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.01〜0.18%、Si:0.02〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、Al:0.001〜1.0%、P:0.005〜0.060%、S≦0.01%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板に対して連続式溶融亜鉛めっき設備において焼鈍および溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、加熱過程では、加熱炉内温度:600℃以上A℃以下(A:650≦A≦780)の温度域を水素濃度:20vol%以上、かつ、昇温速度:7℃/s以上で、加熱炉内温度:A℃超えB℃以下(B:800≦B≦900)の温度域を雰囲気の露点:−5℃以上で行う。
【選択図】なし

Description

本発明は、SiおよびMnを含有する高強度鋼板を母材とする加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、自動車、家電、建材等の分野において、素材鋼板に防錆性を付与した表面処理鋼板、中でも溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板が広範に使用されている。また、自動車の燃費向上および自動車の衝突安全性向上の観点から、車体材料の高強度化によって薄肉化を図り、車体そのものを軽量化しかつ高強度化する要望が高まっている。そのために高強度鋼板の自動車への適用が促進されている。
一般的に、溶融亜鉛めっき鋼板は、スラブを熱間圧延や冷間圧延した薄鋼板を母材として用い、母材鋼板を連続式溶融亜鉛めっきライン(以下、CGLと称す)の焼鈍炉にて再結晶焼鈍および溶融亜鉛めっき処理を行い製造される。合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合は、溶融亜鉛めっき処理の後、さらに合金化処理を行い製造される。
ここで、CGLの焼鈍炉の加熱炉タイプとしては、DFF型(直火型)、NOF型(無酸化型)、オールラジアントチューブ型等があるが、近年では、操業のし易さやピックアップが発生しにくい等により低コストで高品質なめっき鋼板を製造できるなどの理由からオールラジアントチューブ型の加熱炉を備えるCGLの建設が増加している。しかしながら、DFF型(直火型)、NOF型(無酸化型)と異なり、オールラジアントチューブ型の加熱炉は焼鈍直前に酸化工程がないため、Si、Mn等の易酸化性元素を含有する鋼板についてはめっき性確保の点で不利である。
Si、Mnを多量に含む高強度鋼板を母材とした溶融めっき鋼板の製造方法として、特許文献1および特許文献2には、還元炉における加熱温度を水蒸気分圧で表される式で規定し露点を上げることで、地鉄表層を内部酸化させる技術が開示されている。しかしながら、露点を制御するエリアが炉内全体を前提としたものであるため、露点の制御が困難であり安定操業が困難である。また、不安定な露点制御のもとでの合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造は、下地鋼板に形成される内部酸化物の分布状態にバラツキが認められ、鋼板の長手方向や幅方向でめっき濡れ性ムラや合金化ムラなどの欠陥が発生する懸念がある。
また特許文献3には、酸化性ガスであるHOやOだけでなく、CO濃度も同時に規定することで、めっき直前の地鉄表層を内部酸化させ外部酸化を抑制してめっき外観を改善する技術が開示されている。しかしながら、特許文献3のようにSiを特に多量に含有する場合には、内部酸化物の存在により加工時に割れが発生しやすくなり、耐めっき剥離性が劣化する。また、耐食性の劣化も認められる。さらにCOは炉内汚染や鋼板表面への浸炭などが起こり機械特性が変化するなどの問題が懸念される。
さらに、最近では、加工の厳しい箇所への高強度溶融亜鉛めっき鋼板、高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の適用が進んでおり、高加工時の耐めっき剥離特性が重要視されるようになっている。具体的にはめっき鋼板に90°超えの曲げ加工を行い、より鋭角に曲げた時や、衝撃が加わり鋼板が加工を受けた場合の、加工部のめっき剥離の抑制が要求される。
このような特性を満たすためには、鋼中に多量にSiを添加し所望の鋼板組織を確保するだけでなく、高加工時の割れなどの起点になる可能性があるめっき層直下の地鉄表層の
組織、構造のより高度な制御が求められる。しかしながら従来技術ではそのような制御は困難であり、焼鈍炉にオールラジアントチューブ型の加熱炉を備えるCGLでSi含有高強度鋼板を母材として高加工時の耐めっき剥離特性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板を製造することができなかった。
特開2004−323970号公報 特開2004−315960号公報 特開2006−233333号公報
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、Si、Mnを含有する鋼板を母材とし、めっき外観および高加工時の耐めっき剥離性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
従来は、単に焼鈍炉内の水蒸気分圧を上昇させることで露点を上げて過剰に鋼板の内部を酸化させていたため、上述したように、加工時に割れが発生しやすくなり、耐めっき剥離性が劣化していた。また、内部酸化と同時に鋼中易酸化性元素の表面拡散及び表面酸化(以降、表面濃化と称す)も起こるため、内部酸化が十分に起こるまでの比較的低温域においては表面濃化を抑制しきれず、不めっき等の表面欠陥を完全に防止するには至っていなかった。そこで、本発明者らは、従来の考えにとらわれない新たな方法で課題を解決する方法を検討した。その結果、内部酸化が十分に起こらない一方で表面濃化が起こる、比較的低い温度域で水素濃度を制御し、限定温度域で雰囲気露点を制御することで、選択的表面酸化を抑制し表面濃化を抑制することができることを知見した。具体的には、加熱過程における加熱炉内温度:600℃以上A℃以下(A:650≦A≦780)の温度域において、水素濃度を20vol%以上、かつ、昇温速度を7℃/s以上に制御し、さらに、加熱炉内温度:A℃超えB℃以下(B:800≦B≦900)の限定された温度域において、雰囲気の露点を−5℃以上となるように制御して溶融亜鉛めっき処理を行う。このような処理を行うことによって、選択的表面酸化を抑制し、表面濃化を抑制することができ、めっき外観および高加工時の耐めっき剥離性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られることになる。なお、めっき外観に優れるとは、不めっきや合金化ムラが認められない外観を有することを言う。
そして、以上の方法により得られる高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき層直下の鋼板表層部において、下地鋼板表面から100μm以内の鋼板表層部にFe、Si、Mn、Al、P、さらには、B、Nb、Ti、Cr、Mo、Cu、Niの中から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物を片面あたり0.010〜0.50g/m形成し、めっき層直下から10μmまでの領域において、粒界から1μm以内の地鉄粒内に結晶性Si、Mn系複合酸化物が析出している組織、構造となる。これによって地鉄表層における曲げ加工時の応力緩和や割れ防止が実現でき、めっき外観および高加工時の耐めっき剥離性に優れることになる。なお、前記結晶性Si、Mn系複合酸化物とは、結晶性Si系酸化物および/または結晶性Mn系酸化物であり、結晶性Si系酸化物にはMnをSi含有量(質量%)未満含有する場合を含み、結晶性Mn系酸化物にはSiをMn含有量(質量%)未満含有する場合を含む。また、FeがSiおよび/またはMnの含有率(質量%)よりも多い場合でも、酸素を除く成分の含有率(質量%)としてSiまたはMnがFeに次いで多い場合には、それぞれ結晶性Si系酸化物、結晶性Mn系酸化物とみなす。また、以下において、前記結晶性Si、Mn系複合酸化物を、略して、結晶性Si、Mn系酸化物と記載することもある。
本発明は上記知見に基づくものであり、特徴は以下の通りである。
[1]質量%で、C:0.01〜0.18%、Si:0.02〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、Al:0.001〜1.0%、P:0.005〜0.060%、S≦0.01%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板の表面に、片面あたりのめっき付着量が20〜120g/mの亜鉛めっき層を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法であって、鋼板に連続式溶融亜鉛めっき設備において焼鈍および溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、加熱過程では、加熱炉内温度:600℃以上A℃以下(A:650≦A≦780)の温度域を水素濃度:20vol%以上、かつ、昇温速度が7℃/s以上で、加熱炉内温度:A℃超えB℃以下(B:800≦B≦900)の温度域を雰囲気の露点:−5℃以上で行うことを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[2]前記[1]において、前記鋼板は、成分組成として、質量%で、さらに、B:0.001〜0.005%、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.05%、Cr:0.001〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%の中から選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[3]前記[1]または[2]において、溶融亜鉛めっき処理後、さらに、450℃以上600℃以下の温度に鋼板を加熱して合金化処理を施し、亜鉛めっき層のFe含有量を7〜15質量%の範囲にすることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[4]前記[1]〜[3]に記載のいずれかの製造方法により製造され、亜鉛めっき層直下、下地鋼板表面から100μm以内の鋼板表層部にFe、Si、Mn、Al、P、B、
Nb、Ti、Cr、Mo、Cu、Niの中から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物を、片面あたり0.010〜0.50g/m形成し、更に、めっき層直下の下地鋼板表面から10μm以内の領域において、下地鋼板結晶粒界から1μm以内の粒内に結晶性Si、Mn系酸化物が存在していることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
なお、本発明において、高強度とは、引張強度TSが340MPa以上である。また、
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき処理後合金化処理を施さないめっき鋼板(以下、GIと称することもある)、合金化処理を施すめっき鋼板(以下、GAと称することもある)のいずれも含むものである。
本発明によれば、めっき外観および高加工時の耐めっき剥離性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
以下、本発明について具体的に説明する。なお、以下の説明において、鋼成分組成の各元素の含有量、めっき層成分組成の各元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であり、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
先ず、本発明で最も重要な要件である、めっき層直下の下地鋼板表面の構造を決定する焼鈍雰囲気条件について説明する。
焼鈍炉内の加熱過程で、加熱炉内温度:600℃以上A℃以下(A:650≦A≦780)の温度域において、水素濃度を20vol%以上に制御して溶融亜鉛めっき処理を行うことで、鋼板表面の酸素ポテンシャルが低下し、選択的表面酸化(表面濃化)を抑制することが可能となる。しかし、酸素ポテンシャルの低下分のみでは不めっきの発生を完全に抑制できる程度まで表面濃化を抑制しきれない場合がある。このため、水素濃度を20vol%以上に制御することに加え、さらに昇温速度を7℃/s以上に制御する。このように、水素濃度と昇温速度を制御することにより、表面濃化する温度域を極力早く通過させ、不めっきが発生しない程度まで表面濃化をさらに抑制することが可能となる。
水素濃度の上限は特に設けないが、75vol%超えではコストアップし、かつ効果が飽和する。よって、コストの点から水素濃度は75vol%以下が好ましい。
昇温速度の上限は特には設けないが、500℃/s超えでは効果が飽和し、コストが増
大するため、500℃/s以下が望ましい。
600℃以上A℃以下(A:650≦A≦780)とする理由は以下の通りである。600℃未満の温度域では、低温のため表面拡散する易酸化性元素の量が少ない。また、表面濃化がもともと少ない温度域であり、溶融亜鉛と鋼板との濡れ性が阻害されることがない。よって、600℃以上とする。また、上限温度をA℃とした理由は、後述するように、A℃を超える温度域では、雰囲気露点を−5℃以上とすることにより、内部酸化が促進され、表面濃化が殆ど起こらなくなるためである。
焼鈍炉内の加熱過程で、加熱炉内温度:A℃超えB℃以下(A:650≦A≦780、B:800≦B≦900)の限定された温度域において、雰囲気の露点を−5℃以上となるように制御して溶融亜鉛めっき処理することで、鋼板表層10μm以内の内部に易酸化
性元素(Si、Mnなど)の酸化物(以下、内部酸化と称する)を適量に存在させ、焼鈍後の溶融亜鉛めっきと鋼板の濡れ性を劣化させる鋼中Si、Mn等の鋼板表層における表面濃化を抑制することが可能となる。
下限温度Aを650≦A≦780とする理由は以下の通りである。650℃よりも低い温度域では、露点を−5℃以上に制御しても、内部酸化が殆ど形成しない。650℃以上で内部酸化が起こり始める。また、露点制御せず780℃を超える温度まで昇温した場合、表面濃化が多いため、酸素の内方拡散が阻害され、内部酸化が起こりにくくなる。従って、少なくとも780℃以下の温度域から−5℃以上の露点に制御しなければならない。以上から、Aの許容範囲は650≦A≦780であり、上述した理由により、この範囲内においてAはなるべく低い値であることが望ましい。
上限温度Bを800≦B≦900とする理由は以下の通りである。表面濃化を抑制するメカニズムは、以下の通りである。内部酸化を形成することにより、鋼板表層10μm以
内の内部の易酸化性元素(Si、Mnなど)の固溶量を減少させた領域(以下、欠乏層と称する)を形成させ、鋼中からの易酸化性元素の表面拡散を抑制する。この内部酸化を形成し、表面濃化を抑制するために十分な欠乏層を形成させるためには、Bを800≦B≦900とする必要がある。800℃を下回った場合、十分に内部酸化が形成されない。また、900℃超えは内部酸化の形成量が過剰となり、加工時に割れが発生しやすくなり、耐めっき剥離性が劣化する。
A℃超えB℃以下の温度域における露点を−5℃以上とする理由は以下の通りである。露点を上昇させることにより、HOの分解から生じるOポテンシャルを上昇させ、内部酸化を促進することが可能である。−5℃を下回る温度域では、内部酸化の形成量が少ない。また、露点の上限については特に定めないが、90℃を超えてくるとFeの酸化量が多くなり、焼鈍炉壁やロールの劣化が懸念されるため、90℃以下が望ましい。
次いで、本発明の対象とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の鋼成分組成について説明する。
C:0.01〜0.18%
Cは、鋼組織としてマルテンサイトなどを形成させることで加工性を向上させる。そのためには0.01%以上必要である。一方、0.18%を超えると溶接性が劣化する。したがって、C量は0.01%以上0.18%以下とする。
Si:0.02%〜2.0%
Siは鋼を強化して良好な材質を得るのに有効な元素であり、本発明の目的とする強度を得るためには0.02%以上が必要である。Siが0.02%未満では本発明の適用範囲とする強度が得られず、高加工時の耐めっき剥離性についても特に問題とならない。一方、2.0%を超えると高加工時の耐めっき剥離性の改善が困難となってくる。したがって、Si量は0.02%以上2.0%以下とする。
Mn:1.0〜3.0%
Mnは鋼の高強度化に有効な元素である。機械特性や強度を確保するためは1.0%以上含有させることが必要である。一方、3.0%を超えると溶接性やめっき密着性の確保、強度と延性のバランスの確保が困難になる。したがって、Mn量は1.0%以上3.0%以下とする。
Al:0.001〜1.0%
AlはSi、Mnに比べ熱力学的に酸化し易い元素であるため、Si、Mnと複合酸化物を形成する。Alが含有されない場合に比べ、Alを含有することで地鉄表層直下におけるSi、Mnの内部酸化を促進する効果を有する。この効果は0.001%以上で得られる。一方、1.0%を超えるとコストアップになる。したがって、Al量は0.001%以上1.0%以下とする。
P:0.005〜0.060%以下
Pは不可避的に含有される元素のひとつであり、0.005%未満にするためには、コストの増大が懸念されるため、0.005%以上とする。一方、Pが0.060%を超えて含有されると溶接性が劣化する。さらに、表面品質が劣化する。また、合金化処理を施さない時にはめっき密着性が劣化し、合金化処理時には合金化処理温度を上昇しないと所望の合金化度とすることができない。また所望の合金化度とするために合金化処理温度を上昇させると延性が劣化すると同時に合金化めっき皮膜の密着性が劣化するため、所望の合金化度と、良好な延性、合金化めっき皮膜を両立させることができない。したがって、P量は0.005%以上0.060%以下とする。
S≦0.01%
Sは不可避的に含有される元素のひとつである。下限は規定しないが、多量に含有されると溶接性が劣化するため0.01%以下とする。
なお、強度と延性のバランスを制御するため、B:0.001〜0.005%、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.05%、Cr:0.001〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%の中から選ばれる1種以上の元素を必要に応じて添加してもよい。また、これらの元素のうち、Cr、Mo、Nb、Cu、Niは単独または2種以上の複合添加で焼鈍雰囲気がHOを比較的多量に含むような湿潤雰囲気である場合に、Siの内部酸化を促進し、表面濃化を抑制する効果を有するため、機械的特性改善のためではなく、良好なめっき密着性を得るために添加してもよい。
これらの元素を添加する場合における適正添加量の限定理由は以下の通りである。
B:0.001〜0.005%
Bは0.001%未満では焼き入れ促進効果が得られにくい。一方、0.005%超えではめっき密着性が劣化する。よって、含有する場合、B量は0.001%以上0.005%以下とする。
Nb:0.005〜0.05%
Nbは0.005%未満では強度調整の効果やMoとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果が得られにくい。一方、0.05%超えではコストアップを招く。よって、含有する場合、Nb量は0.005%以上0.05%以下とする。
Ti:0.005〜0.05%
Tiは0.005%未満では強度調整の効果が得られにくい。一方、0.05%超えでは
めっき密着性の劣化を招く。よって、含有する場合、Ti量は0.005%以上0.05%以下とする。
Cr:0.001〜1.0%
Crは0.001%未満では焼き入れ性や焼鈍雰囲気がHOを比較的多量に含むような湿潤雰囲気である場合の内部酸化促進効果が得られにくい。一方、1.0%超えではCrが表面濃化するため、めっき密着性や溶接性が劣化する。よって、含有する場合、Cr量は0.001%以上1.0%以下とする。
Mo:0.05〜1.0%
Moは0.05%未満では強度調整の効果やNb、またはNiやCuとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果が得られにくい。一方、1.0%超えではコストアップを招く。よって、含有する場合、Mo量は0.05%以上1.0%以下とする。
Cu:0.05〜1.0%
Cuは0.05%未満では残留γ相形成促進効果やNiやMoとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果が得られにくい。一方、1.0%超えではコストアップを招く。よって、含有する場合、Cu量は0.05%以上1.0%以下とする。
Ni:0.05〜1.0%
Niは0.05%未満では残留γ相形成促進効果やCuとMoとの複合添加時におけるめっき密着性改善効果が得られにくい。一方、1.0%超えではコストアップを招く。よって、含有する場合、Ni量は0.05%以上1.0%以下とする。
上記以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
次に、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法とその限定理由について説明する。
上記化学成分を有する鋼を熱間圧延した後、冷間圧延し鋼板とし、次いで、連続式溶融亜鉛めっき設備において焼鈍および溶融亜鉛めっき処理を行う。なお、この時、本発明においては、焼鈍時の加熱過程では、加熱炉内温度:600℃以上A℃以下(A:650≦A≦780)の温度域を水素濃度:20vol%以上、かつ、昇温速度:7℃/s以上で、加熱炉内温度:A℃超えB℃以下(B:800≦B≦900)の温度域を雰囲気の露点:−5℃以上で行うこととする。これは本発明において、最も重要な要件である。このように焼鈍、溶融亜鉛めっき処理工程において露点、すなわち雰囲気中酸素分圧を制御することで、酸素ポテンシャルを高め易酸化性元素であるSiやMn等がめっき直前に予め内部酸化し地鉄表層部におけるSi、Mnの活量が低下する。そして、これらの元素の外部酸化が抑制され、結果的にめっき性及び耐めっき剥離性が改善することになる。
熱間圧延
通常、行われる条件にて行うことができる。
酸洗
熱間圧延後は酸洗処理を行うのが好ましい。酸洗工程で表面に生成した黒皮スケールを除去し、しかる後冷間圧延する。なお、酸洗条件は特に限定しない。
冷間圧延
40%以上80%以下の圧下率で行うことが好ましい。圧下率が40%未満では再結晶温度が低温化するため、機械特性が劣化しやすい。一方、圧下率が80%超えでは高強度鋼
板であるため、圧延コストがアップするだけでなく、焼鈍時の表面濃化が増加するため、めっき特性が劣化する。
冷間圧延した鋼板に対して、焼鈍した後溶融亜鉛めっき処理を施す。
焼鈍炉では、前段の加熱帯で鋼板を所定温度まで加熱する加熱工程を行い、後段の均熱帯で所定温度に所定時間保持する均熱工程を行う。
上述したように、加熱炉内温度:600℃以上A℃以下(A:650≦A≦780)の温度域において、水素濃度が20vol%以上、かつ、昇温速度が7℃/s以上となるように制御し、かつ、加熱炉内温度:A℃超えB℃以下(B:800≦B≦900)の温度域において、雰囲気の露点が−5℃以上となるように制御して溶融亜鉛めっき処理を行う。
なお、600℃を下回る温度域、及びA℃超え(A:650≦A≦780)の温度域においては、水素濃度が1vol%未満では還元による活性化効果が得られず耐めっき剥離性が劣化する。上限は特に規定しないが、20vol%未満でもよい。A℃超えB℃以下の領域以外の焼鈍炉内雰囲気の露点は特に限定されない。好ましくは−40℃超〜−10℃の範囲が望ましい。なお、焼鈍炉内の気体成分は、水素以外には窒素と不可避不純物気体からなる。本発明効果を損するものでなければ他の気体成分を含有してもよい。昇温速度が7℃/s以上となるように加熱する方法は特に限定されないが、ラジアントチューブとインダクションヒーターを併用する加熱が例示できる。
溶融亜鉛めっき処理は、常法で行うことができる。
また、同一焼鈍条件で比較した場合、Si、Mnの表面濃化量は、鋼中Si、Mn量に比例して大きくなる。また、同一鋼種の場合、比較的高い酸素ポテンシャル雰囲気では、鋼中Si、Mnが内部酸化に移行するため、雰囲気中酸素ポテンシャルの増加に伴い、表面濃化量も少なくなる。そのため、鋼中Si、Mn量が多い場合、露点を上昇させることにより、雰囲気中酸素ポテンシャルを増加させる必要がある。
次いで、必要に応じて合金化処理を行う。
溶融亜鉛めっき処理に引き続き合金化処理を行うときは、溶融亜鉛めっき処理をしたのち、450℃以上600℃以下に鋼板を加熱して合金化処理を施し、めっき層のFe含有量が7〜15質量%になるよう行うのが好ましい。7質量%未満では合金化ムラが発生したりフレーキング性が劣化する。一方、15質量%超えは耐めっき剥離性が劣化する。
以上により、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板の表面に、片面あたりのめっき付着量が20〜120g/mの亜鉛めっき層を有する。20g/m未満では耐食性の確保が困難になる。一方、120g/mを超えると耐めっき剥離性が劣化する。
そして、以下のように、めっき層直下の下地鋼板表面の構造に特徴を有することになる。亜鉛めっき層の直下の、下地鋼板表面から100μm以内の鋼板表層部には、Fe、Si、Mn、Al、P、さらには、B、Nb、Ti、Cr、Mo、Cu、Niのうちから選ばれる1種以上の酸化物が合計で片面あたり0.010〜0.50g/m形成される。また、めっき層直下の、下地鋼板表面から10μmまでの領域においては、粒界から1μm以内の地鉄粒内に結晶性Si、Mn系複合酸化物が存在する。
鋼中にSi及び多量のMnが添加された溶融亜鉛めっき鋼板において、高加工時の耐めっき剥離性を満足させるためには高加工時の割れなどの起点になる可能性があるめっき層直下の地鉄表層の組織、構造をより高度に制御する必要がある。そこで、本発明では、まず、めっき性を確保するために焼鈍工程において酸素ポテンシャルを高めるため、露点制御を上述のように制御した。その結果、酸素ポテンシャルを高めることで易酸化性元素であるSiやMn等がめっき直前に予め内部酸化し地鉄表層部におけるSi、Mnの活量が低
下する。そして、これらの元素の外部酸化が抑制され、結果的にめっき性及び耐めっき剥離性が改善する。さらに、この改善効果は、亜鉛めっき層の直下の、下地鋼板表面から100μm以内の鋼板表層部にFe、Si、Mn、Al、P、さらには、B、Nb、Ti、Cr、Mo、Cu、Niの中から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物を片面あたり0.010g/m以上存在させることになる。一方、0.50g/mを超えて存在させてもこの効果は飽和するため、上限は0.50g/mとする。
また、内部酸化物が粒界にのみ存在し、粒内に存在しない場合、鋼中易酸化性元素の粒界拡散は抑制できるが、粒内拡散は十分に抑制できない場合がある。したがって、本発明では、上述したように、加熱過程では、加熱炉内温度:600℃以上A℃以下(A:650≦A≦780)の温度域を水素濃度:20vol%以上、かつ、昇温速度:7℃/s以上で、加熱炉内温度:A℃超えB℃以下(B:800≦B≦900)の温度域を雰囲気の露点:−5℃以上で行うことで、粒界のみならず粒内でも内部酸化させる。具体的には、めっき層直下から10μmまでの領域において、粒界から1μm以内の地鉄粒内に結晶性Si、Mn系複合酸化物を存在させることになる。地鉄粒内に酸化物が存在することで、酸化物近傍の地鉄粒内の固溶Si、Mnの量が減少する。その結果、Si、Mnの粒内拡散による表面への濃化を抑制することができる。
なお、本発明の製造方法で得られる高強度溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層直下の下地鋼板表面の構造は、上記の通りであるが、例えば、めっき層直下(めっき/地鉄界面)から100μmを超えた領域で前記酸化物が成長していても問題はない。また、めっき層直下の、下地鋼板表面から10μmを超えた領域おいて、粒界から1μm以上の地鉄粒内に結晶性Si、Mn系複合酸化物を存在させても問題はない。
さらに、上記に加え、本発明では、耐めっき剥離性を向上させるために、Si、Mn系複合酸化物が成長する地鉄組織は軟質で加工性に富むフェライト相が好ましい。
以下、本発明を、実施例に基いて具体的に説明する。
表1に示す鋼組成からなる熱延鋼板を酸洗し、黒皮スケール除去した後、表2に示す条件にて冷間圧延し、厚さ1.0mmの冷延鋼板を得た。
Figure 2011219782
次いで、上記で得た冷延鋼板を、焼鈍炉にオールラジアントチューブ型の加熱炉を備えるCGLに装入した。加熱はラジアントチューブとインダクションヒーターを併用して行った。CGLでは、表2に示す通り、加熱炉内の所定の温度域の露点を制御して通板し、加熱帯で加熱し、均熱帯で均熱保持し、焼鈍したのち、460℃のAl含有Zn浴にて溶融亜鉛めっき処理を施した。上記で露点を制御した領域以外の焼鈍炉内雰囲気の露点は−35℃とした。
なお、雰囲気の気体成分は窒素と水素および不可避不純物気体からなり、−5℃以上の露点の制御については、窒素雰囲気中に設置した水タンクを加熱して加湿した窒素ガスが流れる配管を予め別途設置し、加湿した窒素ガス中に水素ガスを導入して混合し、これを炉内に導入することで雰囲気の露点を制御した。雰囲気の水素濃度の制御は、窒素ガス中へ導入する水素ガス量をガスバルブで調整することで行った。加熱炉温度A℃以上の領域、均熱炉、冷却炉雰囲気中の水素濃度は10vol%を基本とした。
また、GAは0.14%Al含有Zn浴を、GIは0.18%Al含有Zn浴を用いた。付着量はガスワイピングにより40g/m、70g/mまたは140g/m(片面あたり付着量)に調節し、GAは合金化処理した。
以上により得られた溶融亜鉛めっき鋼板(GAおよびGI)に対して、外観性(めっき外観)、高加工時の耐めっき剥離性、加工性を調査した。また、めっき層直下の100μmまでの地鉄鋼板表層部に存在する酸化物の量(内部酸化量)、および、めっき層直下10μmまでの地鉄鋼板表層に存在するSi、Mn系複合酸化物の形態と成長箇所、粒界から1μm以内の位置におけるめっき層直下の粒内析出物を測定した。測定方法および評価基準を下記に示す。
<外観性>
外観性は、不めっきや合金化ムラなどの外観不良が無い場合は外観良好(記号○)、ある場合は外観不良(記号×)と判定した。
<耐めっき剥離性>
高加工時の耐めっき剥離性は、GAでは、90°を超えて鋭角に曲げたときの曲げ加工部のめっき剥離の抑制が要求される。本実施例では120°曲げした加工部にセロハンテープを押し付けて剥離物をセロハンテープに転移させ、セロハンテープ上の剥離物量をZnカウント数として蛍光X線法で求めた。なお、この時のマスク径は30mm、蛍光X線の加速電圧は50kV、加速電流は50mA、測定時間は20秒である。下記の基準に照らして、ランク1、2のものを耐めっき剥離性が良好(記号○)、3以上のものを耐めっき剥離性が不良(記号×)と評価した。
蛍光X線Znカウント数 ランク
0−500未満:1(良)
500以上−1000未満:2
1000以上−2000未満:3
2000以上−3000未満:4
3000以上:5(劣)
GIでは、衝撃試験時の耐めっき剥離性が要求される。ボールインパクト試験を行い、加工部をテープ剥離し、めっき層の剥離有無を目視判定した。ボールインパクト条件は、ボール重量1000g、落下高さ100cmである。
○:めっき層の剥離無し
×:めっき層が剥離
<加工性>
加工性は、JIS5号片を作成し引っ張り強度(TS/MPa)と伸び(El%)を測定し、TSが650MPa未満の場合は、TS×El≧22000のものを良好、TS×El<22000のものを不良とした。TSが650MPa以上900MPa未満の場合は、TS×El≧20000のものを良好、TS×El<20000のものを不良とした。TSが900MPa以上の場合は、TS×El≧18000のものを良好、TS×El<18000のものを不良とした。
<めっき層直下100μmまでの領域における内部酸化量>
内部酸化量は、「インパルス炉溶融−赤外線吸収法」により測定した。ただし、素材(すなわち焼鈍を施す前の高強度鋼板)に含まれる酸素量を差し引く必要があるので、本発明では、連続焼鈍後の高強度鋼板の両面の表層部を100μm以上研磨して鋼中酸素濃度を測定し、その測定値を素材に含まれる酸素量OHとし、また、連続焼鈍後の高強度鋼板の板厚方向全体での鋼中酸素濃度を測定して、その測定値を内部酸化後の酸素量OIとした。このようにして得られた高強度鋼板の内部酸化後の酸素量OIと、素材に含まれる酸素量OHとを用いて、OIとOHの差(=OI−OH)を算出し、さらに片面単位面積(すなわち1m)当たりの量に換算した値(g/m)を内部酸化量とした。
<めっき層直下10μmまでの領域の鋼板表層部に存在するSi、Mn系複合酸化物の成長箇所、粒界から1μm以内の位置におけるめっき層直下の粒内析出物>
めっき層を溶解除去後、その断面をSEMで観察し、粒内析出物の電子線回折で非晶質、結晶性の別を調査し、EDX、EELSで組成を決定した。粒内析出物が結晶性で、Si、Mnが主成分である場合にSi、Mn系複合酸化物であると判定した。視野倍率は5000〜20000倍で、各々5箇所調査した。5箇所の内、1箇所以上にSi、Mn系複合酸化物が観察された場合、Si、Mn系複合酸化物が析出していると判断した。内部酸化の成長箇所がフェライトであるか否かは、断面SEMで第2相の有無を調査し、第2相が認められないときはフェライトと判定した。また、めっき層直下から10μmまでの領域において、粒界から1μm以内の地鉄粒内のSi、Mn系複合酸化物は、断面を抽出レプリカ法で析出酸化物を抽出し上記と同様の手法で決定した。
以上により得られた結果を製造条件と併せて表2に示す。
Figure 2011219782
表2から明らかなように、本発明法で製造されたGI、GA(本発明例)は、Si、Mn等の易酸化性元素を多量に含有する高強度鋼板であるにもかかわらず加工性および高加工時の耐めっき剥離性に優れ、めっき外観も良好である。
一方、比較例では、めっき外観、加工性、高加工時の耐めっき剥離性のいずれか一つ以上が劣る。
表3に示す鋼組成からなる熱延鋼板を酸洗し、黒皮スケール除去した後、表4に示す条件にて冷間圧延し、厚さ1.0mmの冷延鋼板を得た。
Figure 2011219782
次いで、上記で得た冷延鋼板を、焼鈍炉にオールラジアントチューブ型の加熱炉を備えるCGLに装入した。加熱はラジアントチューブとインダクションヒーターを併用して行った。CGLでは、表4に示す通り、加熱炉内の所定の温度域の露点を制御して通板し、加熱帯で加熱し、均熱帯で均熱保持し、焼鈍したのち、460℃のAl含有Zn浴にて溶融亜鉛めっき処理を施した。上記で露点を制御した領域以外の焼鈍炉内雰囲気の露点は−35℃とした。
なお、雰囲気の気体成分は窒素と水素および不可避不純物気体からなり、−5℃以上の露点の制御については、窒素雰囲気中に設置した水タンクを加熱して加湿した窒素ガスが流れる配管を予め別途設置し、加湿した窒素ガス中に水素ガスを導入して混合し、これを炉内に導入することで雰囲気の露点を制御した。雰囲気の水素濃度の制御は、窒素ガス中へ導入する水素ガス量をガスバルブで調整することで行った。加熱炉温度A℃以上の領域、均熱炉、冷却炉雰囲気中の水素濃度は10vol%を基本とした。
また、GAは0.14%Al含有Zn浴を、GIは0.18%Al含有Zn浴を用いた。付着量はガスワイピングにより40g/m、70g/mまたは140g/m(片面あたり付着量)に調節し、GAは合金化処理した。
以上により得られた溶融亜鉛めっき鋼板(GAおよびGI)に対して、外観性(めっき外観)、高加工時の耐めっき剥離性、加工性を調査した。また、めっき層直下の100μmまでの地鉄鋼板表層部に存在する酸化物の量(内部酸化量)、および、めっき層直下10μmまでの地鉄鋼板表層に存在するSi、Mn系複合酸化物の形態と成長箇所、粒界から1μm以内の位置におけるめっき層直下の粒内析出物を測定した。測定方法および評価基準を下記に示す。
<外観性>
外観性は、不めっきや合金化ムラなどの外観不良が無い場合は外観良好(記号○)、ある場合は外観不良(記号×)と判定した。
<耐めっき剥離性>
高加工時の耐めっき剥離性は、GAでは、90°を超えて鋭角に曲げたときの曲げ加工部のめっき剥離の抑制が要求される。本実施例では120°曲げした加工部にセロハンテープを押し付けて剥離物をセロハンテープに転移させ、セロハンテープ上の剥離物量をZnカウント数として蛍光X線法で求めた。なお、この時のマスク径は30mm、蛍光X線の加速電圧は50kV、加速電流は50mA、測定時間は20秒である。下記の基準に照らして耐めっき剥離性を評価した。◎、○は高加工時のめっき剥離性にまったく問題のない性能である。△は加工度によっては実用できる場合がある性能であり、×、××は通常の使用には適さない性能である。
蛍光X線Znカウント数 ランク
0−500未満:◎
500以上−1000未満:○
1000以上−2000未満:△
2000以上−3000未満:×
3000以上:××
GIでは、衝撃試験時の耐めっき剥離性が要求される。ボールインパクト試験を行い、加工部をテープ剥離し、めっき層の剥離有無を目視判定した。ボールインパクト条件は、ボール重量1000g、落下高さ100cmである。
○:めっき層の剥離無し
×:めっき層が剥離
<加工性>
加工性は、JIS5号片を作成し引っ張り強度(TS/MPa)と伸び(El%)を測定し、TSが650MPa未満の場合は、TS×El≧22000のものを良好、TS×El<22000のものを不良とした。TSが650MPa以上900MPa未満の場合は、TS×El≧20000のものを良好、TS×El<20000のものを不良とした。TSが900MPa以上の場合は、TS×El≧18000のものを良好、TS×El<18000のものを不良とした。
<めっき層直下100μmまでの領域における内部酸化量>
内部酸化量は、「インパルス炉溶融−赤外線吸収法」により測定した。ただし、素材(すなわち焼鈍を施す前の高強度鋼板)に含まれる酸素量を差し引く必要があるので、本発明では、連続焼鈍後の高強度鋼板の両面の表層部を100μm以上研磨して鋼中酸素濃度を測定し、その測定値を素材に含まれる酸素量OHとし、また、連続焼鈍後の高強度鋼板の板厚方向全体での鋼中酸素濃度を測定して、その測定値を内部酸化後の酸素量OIとした。このようにして得られた高強度鋼板の内部酸化後の酸素量OIと、素材に含まれる酸素量OHとを用いて、OIとOHの差(=OI−OH)を算出し、さらに片面単位面積(すなわち1m)当たりの量に換算した値(g/m)を内部酸化量とした。
<めっき層直下10μmまでの領域の鋼板表層部に存在するSi、Mn系複合酸化物の成長箇所、粒界から1μm以内の位置におけるめっき層直下の粒内析出物>
めっき層を溶解除去後、その断面をSEMで観察し、粒内析出物の電子線回折で非晶質、結晶性の別を調査し、EDX、EELSで組成を決定した。粒内析出物が結晶性で、Si、Mnが主成分である場合にSi、Mn系複合酸化物であると判定した。視野倍率は5000〜20000倍で、各々5箇所調査した。5箇所の内、1箇所以上にSi、Mn系複合酸化物が観察された場合、Si、Mn系複合酸化物が析出していると判断した。内部酸化の成長箇所がフェライトであるか否かは、断面SEMで第2相の有無を調査し、第2相が認められないときはフェライトと判定した。また、めっき層直下から10μmまでの領域において、粒界から1μm以内の地鉄粒内のSi、Mn系複合酸化物は、断面を抽出レプリカ法で析出酸化物を抽出し上記と同様の手法で決定した。
以上により得られた結果を製造条件と併せて表4に示す。
Figure 2011219782
表4から明らかなように、本発明法で製造されたGI、GA(本発明例)は、Si、Mn等の易酸化性元素を多量に含有する高強度鋼板であるにもかかわらず加工性および高加工時の耐めっき剥離性に優れ、めっき外観も良好である。
一方、比較例では、めっき外観、加工性、高加工時の耐めっき剥離性のいずれか一つ以上が劣る。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、めっき外観、加工性および高加工時の耐めっき剥離性に優れ、自動車の車体そのものを軽量化かつ高強度化するための表面処理鋼板として利用することができる。また、自動車以外にも、素材鋼板に防錆性を付与した表面処理鋼板として、家電、建材の分野等、広範な分野で適用できる。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.18%、Si:0.02〜2.0%、Mn:1.0〜3.0%、Al:0.001〜1.0%、P:0.005〜0.060%、S≦0.01%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼板の表面に、片面あたりのめっき付着量が20〜120g/mの亜鉛めっき層を有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法であって、鋼板に連続式溶融亜鉛めっき設備において焼鈍および溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、加熱過程では、加熱炉内温度:600℃以上A℃以下(A:650≦A≦780)の温度域を水素濃度:20vol%以上、かつ、昇温速度が7℃/s以上で、加熱炉内温度:A℃超えB℃以下(B:800≦B≦900)の温度域を雰囲気の露点:−5℃以上で行うことを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  2. 前記鋼板は、成分組成として、質量%で、さらに、B:0.001〜0.005%、Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.05%、Cr:0.001〜1.0%、Mo:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%、Ni:0.05〜1.0%の中から選ばれる1種以上の元素を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 溶融亜鉛めっき処理後、さらに、450℃以上600℃以下の温度に鋼板を加熱して合金化処理を施し、亜鉛めっき層のFe含有量を7〜15質量%の範囲にすることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  4. 請求項1〜3に記載のいずれかの製造方法により製造され、亜鉛めっき層直下の、下地
    鋼板表面から100μm以内の鋼板表層部にFe、Si、Mn、Al、P、B、Nb、T
    i、Cr、Mo、Cu、Niの中から選ばれる少なくとも1種以上の酸化物を、片面あたり0.010〜0.50g/m2形成し、更に、めっき層直下の下地鋼板表面から10μm以内の領域において、下地鋼板結晶粒界から1μm以内の粒内に結晶性Si、Mn系酸化
    物が存在していることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
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