JP2011208555A - クーラントポンプ - Google Patents

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Abstract

【課題】大幅なコストダウンとポンプケーシング内に切粉などの異物が堆積し難いクーラントポンプを提供する。
【解決手段】クーラント液を吸い上げるクーラントポンプ100であって、ポンプケーシング1の内方に、自身の回転中心線a3を上下向きに配置され該ポンプの全揚程を生成させる単一のインデューサ羽根車2を備え、該インデューサ羽根車2はボス部11の外周囲にヘリカル翼12を固設された構成となっている。各ヘリカル翼12は出口角度を入口角度よりも2度以上大きく設定されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、工作機械などにおいて潤滑用のクーラント液をクーラント液タンクから金属などの加工箇所に供給する場合に使用されるクーラントポンプに関する。
遠心羽根車を使用する上で、ポンプ使用環境の有効NPSH(絶対吸込揚程)が低い、または使用しているポンプの必要NPSHが高いなどの要因からキャビテーションが発生し易い環境において、エロージョンによって羽根車が浸食され羽根車の破損が起きることはよく知られている。
このエロージョンの対策として、遠心ポンプの吸込口にインデューサ羽根車を配置して昇圧させることで、遠心羽根車でのキャビテーション発生を抑制させる方法が採られている。インデューサ羽根車自身にもキャビテーションが発生するのであるが、その羽根形状と流体特性から、遠心羽根車と異なり、揚水不能となりにくいし、エロージョンが起きにくいなどの特徴を有している。遠心ポンプの吸込口に配置されるインデューサ羽根車の設計は、エロージョン対策として耐久性を重視するか、逆流渦によるサージングなどの不安定現象の解消に主眼が置かれている。
このようなインデューサ羽根車はその一般的な形状を斜流ポンプのそれに近似したものであって、ボスの周囲に複数枚(2枚〜3枚)のヘリカル翼が軸対称に螺旋状に配置されている。
インデューサ羽根車は上記したように本来的には遠心ポンプの羽根車などの吸込側に配置されて使用されるものであるが、この出願において、インデューサ羽根車と言うときは、特に限定のない場合には、自身の中心線回りに回転されるボス部の外周面に、ヘリカル翼が螺旋状に固設され、水力効率が最高近傍点での後述の比速度が斜流ポンプの範疇に属するようなものを言うもので、必ずしも他の羽根車の入口側に設置されるものでないものであっても差し支えないものである。
特許文献1は典型的なクーラントポンプを記載しており、ポンプ内部のケーシングに切粉などの異物が堆積することを防止するために、セミオープン型のインペラを備え、ケーシングはクーラント液の流路面積を低減して内側を通過するクーラント液の流速が増大さする構造となっている。したがってケーシング内における切り粉などの異物の残留が抑制されるようになる。
しかし、このポンプでは、ケーシング内に吸い上げられたクーラント液は、インペラ部を通過して渦巻室へ流れ込み、この後、渦巻室の側壁に押し付けられつつ、渦巻室に案内されて吐出口へ向け圧送されるという、依然として複雑な経路を流れるのであり、したがって切り粉などの異物の堆積は十分には抑制されない。
一方、単一のインデューサを利用したポンプとして、水平線回りへ回転されるインデューサ羽根車を備えたポンプが特許文献2に記載されている。このポンプは用水路内の水を水平方向への圧送することを目的としているため、そのインデューサ羽根車は必然的に、処理水量が多く、揚程の低い仕様となる。
しかしクーラントポンプでは、より少ない処理液量が要求される一方、揚程の高い仕様が要求され、特許文献2に開示されたポンプはクーラントポンプとしては使用できない。
特開2009−299596号公報 特開2003−239898号公報
インデューサ羽根車はボス部の外周面にヘリカル翼を固設されており、羽根車形状が軸流ポンプのそれに近似するため、インデューサ羽根車で揚程を生成させるポンプは軸流ポンプとしての特徴を引き継ぐものであり、キャビテーションが発生しても、遠心ポンプのように揚水不能になりにくいなどの性質を有している。
本発明は、インデューサ羽根車ポンプの上記のような性質を引き継ぐと共に、従来の遠心ポンプに較べて構造の簡易化を図って大幅なコストダウンを可能とし、さらにはポンプケーシング内に切り粉などの異物が堆積し難いものとすることのできるクーラントポンプを提供することを目的とする。
本発明に係るクーラントポンプは、クーラント液を吸い上げるクーラントポンプであって、上部にクーラント液出口が形成され下端にクーラント液の吸込口が形成された筒状の内部空間を備えたポンプケーシングと、前記ポンプケーシング内に該ポンプの全揚程を生成させる単一のインデューサ羽根車を備え、前記インデューサ羽根車はボス部の外周囲に複数のヘリカル翼を固設され、かつ各ヘリカル翼について出口角度を入口角度よりも2度以上大きく設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、クーラントポンプとして必要とされる通常の揚程を発生させることができる。またインデューサ羽根車が翼作用により揚程を発現させるようになるため、遠心羽根車による従来のクーラントポンプに較べて揚水不能などの性能低下が起こり難いものとなる。クーラント液の流動状況は斜流ポンプの羽根車に近似した状態となって、ポンプケーシング内でのクーラントの流路を遠心ポンプの場合に較べて広くて曲がりの少ない状態にすることができ、これによりクーラント液に混じってポンプケーシング内に流入した切粉などの異物がポンプケーシング内に堆積する現象を抑制することができる。さらにはポンプケーシングの構造を、遠心羽根車の使用された従来のクーラントポンプに較べて単純化することができて製造コストを大幅に低減させることができる。
また、インデューサ羽根車と前記ポンプケーシングの内周壁面との半径上の隙間が前記インデューサ羽根車部の外径の1%よりも大きく設定することにより、インデューサ羽根車の回転エネルギーによりポンプケーシングの内方空間のインデューサ羽根車より下方の領域に存在するクーラント液を旋回させ、この旋回をさらに前記液吸込口を通じてポンプケーシング外側に存在するクーラント液に伝播させる作用を効率的に行わせることができる。これにより、クーラント液に含まれる切粉などの異物をインデューサ羽根車まで浮遊流動させ、クーラント液に含まれる異物がポンプケーシングを取り囲むクーラント液の容器の内方に沈殿し堆積するのを防止することができる。
本発明の一実施例であるクーラントポンプを示し大部分を断面で表した側面視全体図である。 上記クーラントポンプの要部を詳細に示した側面視断面図である。 上記クーラントポンプのインデューサ羽根車の斜視図である。 上記インデューサ羽根車の側面図である。 上記クーラントポンプの使用例を示す系統図である。 上記クーラントポンプの特性曲線を示す図である。 上記クーラントポンプについて、キャビテーション係数と揚程係数との関係を表す図である。 従来のクーラントポンプについて、キャビテーション係数と揚程係数との関係を表す図である。 従来のクーラントポンプの流路を説明するための断面図である。 図2に示すクーラントポンプについて、出口角度と揚程係数との関係を示す図である。 図2に示すクーラントポンプについて、ポンプケーシングとインデューサ羽根車との隙間と、該隙間からの漏れ量や揚程係数との関係を示す図である。
発明の実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
《本実施例のクーラントポンプの構造》
本実施例であるクーラントポンプは、図1及び図2に示すように、ポンプケーシング1、インデューサ羽根車2、回転軸3及び駆動部4を備えている。
各部について詳述すると、ポンプケーシング1は、上部ケーシング1aと下部ケーシング1bとで形成されている。上部ケーシング1aは、中心線a1を縦向きとされた直管部材5と、この直管部材5の上端面を閉鎖した頂板6と、直管部材5の周壁部5aの下端に固着されたフランジ部材7aと、周壁部5aの上端近傍に形成された円形のクーラント出口5bに連通され直管部材5の半径方向外側へ延長された吐出管8を具備している。そして頂板6は回転軸3を回転自在且つ液密状に貫通させるための軸封部9を有している。
一方、下部ケーシング1bは中心線a2を縦向きの直管部材10と、この直管部材10の周壁部10aの上端に固着されたフランジ部材7bとを具備し、周壁部10aの下端の内側領域の全体をクーラント液の吸込口10bとして開口されている。
上部ケーシング1aと下部ケーシング1bとはそれぞれの中心線a1、a2が縦向きの一線状の配列となるようにボルトb1やパッキンb2などを介して気密状に結合されている。これにより、ポンプケーシング1の内方には直管部材5の内方領域c1と直管部材10の内方領域c2とからなる筒状の内部空間c0が形成される。直管部材5、10は既存のスケジュール管を必要長さに切断したものを用いて作成するのが製造コストを低減する上で好ましい。
図2において、ポンプケーシング1の下端からクーラント液出口5bの中心までの高さc10は350.5mmであり、直管部材5及び直管部材10については何れも外径が139.8mmで、内径d1が130.5mmである。
インデューサ羽根車2は、ボス部11と3枚のヘリカル翼12とを備えている(図3及び図4参照)。ボス部11は羽根保持部11aとこれの下側に配置される単独の先端部11bとを備えている。羽根保持部11aは先細りのテーパ状とされた外周面c01を有し、この外周面c01に3枚のヘリカル翼12a、12b、12cの翼元縁c02を一体状に結合され、中心部に段付の軸挿入孔c03を有している。先端部11bは先細り状の半楕円回転体形状とされた外面を有すると共に中心部に回転軸3の先端雄ねじ部3aに螺着されるナット部c04を有している。先端部11bは回転軸3に羽根保持部11aを固定させ、インデューサ羽根車2の外面に沿って流れるクーラント液の流れを円滑化させる整流作用を奏する。
ヘリカル翼12の枚数は図示のように3枚とするのが実際上好ましいが、2枚であっても或いは4枚以上であっても差し支えない。但し、ヘリカル翼12を1枚のみにすることはインデューサ羽根車2の回転時のバランスや効率を確保する上で好ましくない。
この実施例では、インデューサ羽根車2におけるヘリカル翼12は3枚であって、羽根保持部11aの外周面にこれの中心線a3周りの等角度間隔に固定されている。各ヘリカル翼12a、12b、12cは帯板を羽根保持部11の外周面にこれの中心線a3回りの例えば250度〜360度の範囲に渡って螺旋状に巻き付けた状態に固定されている。各ヘリカル翼12a、12b、12cは中心線a3を含む平面(半径面)で切断したときの羽根切断面の中心線方向長さ中央点を連ねた線(羽根厚さ中央線)a4が中心線a3に直交する直線となるように位置決めされている。このさい、羽根厚さ中央線a4は強度的或いは水力的な性能の向上を図る上で、必ずしも中心線a3に直交していなくてもよく、またヘリカル翼12の前面(正圧面)や後面(負圧面)が僅かな円弧状に屈曲したものであってもよい。また各ヘリカル翼12a、12b、12cは回転半径方向高さを入口部f1の先端から出口部f2の後端まで均一にしてもよく、或いは入口部f1近傍や出口部f2近傍で水力損失や応力集中を少なくするように変化させてもよいのであり、この実施例では入口部f1近傍において先端に近づくほど高さが小さくなるように設計されている。
また図3に示すようにインデューサ羽根車2の各ヘリカル翼12a、12b、12cの入口部f1の角度(入口角度)θ1は7度に設定されている。ここに、入口角度θ1とは各ヘリカル翼12a、12b、12cの代表位置(例えばヘリカル翼12a、12b、12cの翼元縁c02)の入口部f1での微少長さ部分と、中心線a3に直交する平面との交叉角を言う。
一方、インデューサ羽根車2の各ヘリカル翼12a、12b、12cの出口部f2の角度(出口角度)θ2は9度に設定されている。ここに、出口角度θ2とは各ヘリカル翼12a、12b、12cの代表位置(例えばヘリカル翼12a、12b、12cの翼元縁c02)の出口部f2での微少長さ部分と、中心線a3に直交する平面との交叉角を言う。
そして各ヘリカル翼12a、12b、12cの入口部f1の先端から出口部f2の後端までは該ヘリカル翼12a、12b、12cの翼元縁c02上の任意点の微少長さ部分と、中心線a3に直交する平面に対するとの交叉角が漸増するように円滑に結合されている。
さらにインデューサ羽根車2は、図4に示すようにヘリカル翼12の外径d2を129.6mmに、ハブ部11の入口側の径(入口ハブ径)を51.91mmに、ハブ部11の入口側の外径を77.48mmに、ヘリカル翼12a、12b、12cの厚さを3.87mmに、ヘリカル翼12a、12b、12cの中心線a3方向の長さをヘリカル翼12の外径d2の70%に、回転数を3500rpmに、入口流量係数を0.0046に設定されている。
図1、図2及び図4に示すように、回転軸3は駆動部4の出力軸であり下部に第1段部3bを介して第1細径部3cが形成されている。さらにその下側に第2段部3dを介して第2細径部3eを形成され、この第2細径部3eの下側に第3段部3fを介して雄ネジ部3aが形成されている。そして、第1細径部3cは羽根保持部11aの軸挿入孔c03の大径部に内挿され、第2細径部3eは軸挿入孔c03の小径部に内挿されており、第2段部3dが軸挿入孔c03の段部に衝接して羽根保持部11aの上方変位を規制している。雄ネジ部3aは羽根保持部11aの軸挿入孔c03の下方へ突出し、ナット部c04を介して先端部11bを締結状に螺着され、羽根保持部11aを回転軸3の下端に固定状態に位置決めされている。第2細径部3eの外周面と羽根保持部11aの軸挿入孔c03の小径部の内周面とのそれぞれにキー溝が形成されており、これらキー溝間にキーc05が嵌合されて羽根保持部11aと回転軸3との相対回転を規制している。ポンプケーシング1の下端からインデューサ羽根車2のヘリカル翼12の入口部f1の先端までの高さc20(図2)は、57.3mmである。
駆動部4は電動モータで形成されている。電動モータ4は上部ケーシング1aに介材ブロック部13やボルトb2を介して結合され、ポンプケーシング1と一体化されている。
《本実施例のクーラントポンプの使用例》
次に本実施例のクーラントポンプの使用例を示す。
図5に示すように、ポンプケーシング1のクーラント液出口5bよりも下方部分は、工作機械などのクーラント液タンク14の内側に位置するよう固定される。クーラント液タンク14内にはクーラント液gがインデューサ羽根車2よりも上方まで貯溜される。
吐出管8を延長されて供給ライン15が形成され、その先端が工作機械の金属加工箇所16などに導かれる。供給ライン15の途中にはクーラントポンプ100から圧送されたクーラント液gに混入した切粉などの異物を漉し取るための濾過装置17が設けられる。金属加工箇所16などの下部とクーラント液タンク14の間には金属加工箇所16などに供給されて落下したクーラント液gが自然に流下してクーラント液タンク14内に帰還するための排出ライン18が形成される。
この状態の下で、クーラントポンプ100が作動されると、クーラント液タンク14内のクーラント液gが、駆動部4により回転されるインデューサ羽根車2の送液作用により送り出され、金属加工箇所16などに供給され、この後、排出ライン18を通じることにより、切粉などと一緒になってクーラント液タンク14内に帰還する。
このように帰還するクーラント液gは排出ライン18に流れ込む過程で粒径が2mm以上の切粉などの異物を除去することが可能であり、これによりクーラント液タンク14内に2mm以下の粒径の切粉などが侵入することは回避される。
本実施例のクーラントポンプ100においてはその作動中、単一のインデューサ羽根車2がポンプの全揚程を生じさせる。
《実施例のクーラントポンプ100の性能試験結果と、その特性に関連した作用》
クーラントポンプ100の性能試験結果について図6を参照して以下に説明する。
図6において、横軸は流量係数φで、次の式(1)で算出されるものである。
φ=Q/Dt・Ut・・・・式(1)
ここに、Qは流量(m/s)、Dtはヘリカル翼12の外径(m)、Utはヘリカル翼12の周速度(m/s)である。
縦軸は揚程係数ψとポンプ効率η(%)を表しており、このさい揚程係数ψは次の式(2)で算出されるものである。
ψ=gH/Ut・・・・式(2)
ここに、gは重力加速度(m/s)、Utはヘリカル翼12の周速度(m/s)である。
図6において、流量係数φとポンプ効率ηとの関係は曲線e1で表され、流量係数φと揚程係数ψとの関係は曲線e2で表される。
この図6において、基準の使用状態(通常使用状態の意味で、一般に設計点とされる状態)での流量を表す流量係数φの大きさは0.02〜0.03の範囲内の数値であって縦線e3の位置に対応する大きさである。この基準の使用状態では比速度Ns(m、min、m)は凡そ550程度となる。比速度が550の位置における揚程係数ψの大きさは0.20〜0.25の範囲内程度で、揚程は約8.5m程度である。
このとき、インデューサ羽根車2は回転数が凡そ3500rpmであり、流量は0.6mであるが、これらの数値は遠心羽根車を備えた既存のクーラントポンプの対応する数値にほぼ合致している。
また曲線e1によれば、比速度Nsが550となる点でのポンプ効率ηは30%程度となっている。この30%の数値は、従来の遠心羽根車を備えた既存のクーラントポンプの効率が50%であるのに較べ低いものとなっているが、このことはクーラント液出口5b近傍に図2中に仮想線で示すようにクーラント液gの旋回規制板19を設けたりポンプケーシング1内の流路形状を改善することにより解消される。ここに旋回規制板19は平板状のもので上下方向に沿ったものであり、流路を90度以上に曲げるようなものとはされない。
また曲線e2は流量係数φが小さくなるに伴って、揚程係数ψが大きくなることを示しているが、これは流量係数φが数値「0.04」の位置から最小の数値「0」までの任意点で使用されても、サージングを誘発することなく作動することを示している。
一方、遠心羽根車を備えた従来のクーラントポンプでは、流量係数φが小さいときには、流量係数φが小さくなるに伴って、揚程係数ψが小さくなる性質を有するが、これに起因して、従来のものは本実施例のクーラントポンプ100に較べてサージングが発生し易いものとなる。
図6中、e01は羽根車形状が同一の場合で周囲環境の異なる状態での効率を表す曲線であり、e02は羽根車形状が同一の場合で周囲環境の異なる状態での揚程係数を表す曲線である。ここで、e1やe2の曲線と対比すると差が生じているが、これは吸込側でクーラント液gに旋回が発生し、それによりポンプ100の液送りに対して逆流が促進されるためであり、またこの逆流したクーラント液gが再度、ポンプ100に吸い込まれて揚程が上昇するためのである。
《本実施例のクーラントポンプ100が奏する他の作用》
本実施例のクーラントポンプ100において、キャビテーション係数と揚程係数との関係を流量係数φの異なる複数の状態で試験したところ、図7に曲線e4で示すように、揚程が3%低下した点h1を過ぎても、揚程係数ψが急落するものとならない。ここに、e4(1)からe4(6)までのそれぞれの曲線e4はそれぞれ異なる流量係数φに対応するものである。一方、遠心羽根車を備えた従来のクーラントポンプについて、同様の試験をしたところ、図8に曲線e5で示すように、キャビテーションが発生して揚程が低下し始めると、直ぐに、揚程係数ψが急落し、揚液不能になってしまう。ここに、e5(1)からe5(6)までのそれぞれの曲線e5はそれぞれ異なる流量と羽根車回転数に対応するものである。このように本実施例のクーラントポンプ100においては、キャビテーションが発生しても、遠心羽根車を備えた従来のクーラントポンプに較べ揚程係数ψが低下し難い。その理由は、遠心羽根車が遠心力で流体に力を付与するのに対して、インデューサ羽根車2は流体に力を付与する手段が翼理論によるからである。クーラントポンプ100の特性は図5に示すような使用において、クーラント液タンク14内のクーラント液gが低レベルになってもクーラント液gを吸引し、吐出側へ送り出すことを可能としている。これにより、インデューサ羽根車2はヘリカル翼12の先部が少しでもクーラント液gに浸っておれば、揚水することできる。
またクーラントポンプ100はポンプケーシング1が直管部材5、10で形成され、且つ、インデューサ羽根車2が斜流ポンプの羽根車に属する形態であるため、クーラント液gの流れる流路が大きく屈曲するものとならず、また流路の断面積も比較的広く確保されることから、クーラント液gの圧送中、これに混入した切粉などの異物がポンプケーシング1内に堆積し難く、クーラント液g中に浮遊状態で混入し流動され易い。その結果、異物が流路を閉塞するような事態は防止される。
これに対し、従来の遠心羽根車を備えたクーラントポンプは、図9に示すように、吸込口20からポンプケーシング21内に矢印i1で示すように入ったクーラント液は90度に折れ曲がりつつ遠心羽根車22の狭隘な流路22aに流れ込み、遠心羽根車22から流出した後のクーラント液は吸込口20の外側に環状に配置された渦巻室23内に矢印i2で示すように流入し、その後、矢印i3で示すように上方へ向け90度に折れ曲がりつつ吐出管24内に流入し上方へ移動し吐出口25から矢印i4で示すように流出する。このように従来のクーラントポンプではクーラント液は狭隘な流路や全体としてS字状に折れ曲がった流路を経て流動することから、クーラントポンプ100に較べると、ポンプケーシング1内に切粉などの異物が堆積し易く、流路が閉塞され易いのである。
またクーラントポンプ100は、インデューサ羽根車2の入口角度θ1を、入口部f1に流入するクーラント液gのインデューサ羽根車2に対する相対角度に対し意図的に非合致状態としているという第1の理由と、インデューサ羽根車2とポンプケーシング1の内方空間c0の内周壁面の半径上の隙間c3を従来の遠心羽根車を備えたクーラントポンプの場合よりも大きく設定されているという第2の理由とにより、インデューサ羽根車2の下方のポンプケーシング1内のクーラント液gは従来のクーラントポンプに較べ積極的に旋回力を付与されるものとなる。これをさらに詳細に説明すると、第1の理由に基づいて、インデューサ羽根車2の下側のクーラント液gが駆動部4で回転されるインデューサ羽根車2のヘリカル翼12の入口部f1に衝突して旋回力を付与されるようになる。また第2の理由に基づいて、ヘリカル翼12の昇圧させたクーラント液gが半径上の隙間c3を通じて従来のクーラントポンプの場合よりも多量に下向きへ漏れ出し、この漏れ出しによりインデューサ羽根車2の下方のポンプケーシング1内のクーラント液gが旋回力を付与されるようになる。このようにしてポンプケーシング1内にて旋回されるクーラント液gは吸込口10bを通じてポンプケーシング1の外側のクーラント液gに旋回のためのエネルギを付与し、やがてクーラント液タンク14内のクーラント液gの全体が旋回されるようになる。なお、クーラントポンプ100は、クーラント液タンク14内のクーラント液g全体の旋回を促進するため、インデューサ羽根車2の下側はクーラント液タンク14に開放されており、旋回防止板のような旋回を阻害するものは付加していない。
このようなクーラント液gの旋回はクーラント液gに混入している粒径が2mm以下の切粉などの異物をクーラント液g中に浮遊流動させてクーラント液gと共にポンプケーシング1の吸込口10b内に流動させる。したがって、クーラント液タンク14内の底面上に切粉などの異物が沈殿して堆積することは抑制され、清掃の手間が省ける。
《本実施例に係るクーラントポンプ100の全揚程の増大化のための第1の処理》
従来のインデューサ羽根車は、3500rpm以下で回転される場合において、一般的な工作機械などに使用されるクーラントポンプとして必要とされる数m(例えば6m程度〜20m程度)を超えるような揚程を発生させるものとはなっていない。クーラントポンプ100において、インデューサ羽根車2の形態は固定的であるため、流量係数φと揚程係数ψとの関係は任意に変更することはできないのであり、これを種々の全揚程のクーラントポンプに適合するように変更するにはインデューサ羽根車2の各ヘリカル翼12a、12b、12cの出口角度θ2を変化させなければならない。
このように出口角度θ2を変化させた場合の、出口角度θ2と揚程係数ψとの関係について図10を参照して説明する。
図10において、横軸は羽根車の出口角度θ2(度)であり、縦軸は揚程係数ψである。曲線e6はコンピュータによるシミュレーションや簡易な実験により確認した出口角度θ2と揚程係数ψとの関係を表すものである。
この図10から判断されるように出口角度θ2が増大していくとき、出口角度θ2が7度近傍では曲線の傾斜角度は緩やかに増大していき、9度を超えると、これよりも小さい出口角度θ2における曲線e6の傾斜角度よりも大きな傾斜角度となっている。
これを言い換えると、インデューサ羽根車2の出口角度θ2を9度以上に設定すると、各ヘリカル翼12a、12b、12cの出口部f2における揚程は比較的大きく変化させることができるのであり、また出口角度θ2を例えば30度程度まで増大させると、本実施例のクーラントポンプ100の揚程は大幅に増大させることができ、一般にクーラントポンプとして要求される広い範囲の揚程に対応させることが可能となる。
曲線e6のデータを取得したインデューサ羽根車2の入口角度θ1は7度であるから、出口角度θ2は、入口角度θ1と比較したとき、これよりも2度以上大きい任意な大きさに設定されることにより、クーラントポンプ100は比較的広い範囲における任意な大きさの揚程を生じるものとなる。これをさらに言い換えれば、出口角度θ2が入口角度θ1よりも2度以上大きい任意な大きさに設定されることにより、インデューサ羽根車2の基準の使用状態における比速度を比較的広い範囲で大小に変化させることができ、インデューサ羽根車2を備えた本発明に係るクーラントポンプ100を、比較的広い揚程範囲における任意な大きさの揚程を発生するものとすることができる。
このように形成される本実施例に係るインデューサ羽根車2(前者)と従来におけるインデューサ羽根車2(後者)との相違点は次のとおりである。
a:前者はポンプ100の全揚程を生成するものであるのに対し、後者は主体をなす別の羽根車のキャビテーションなどを防止するために液吸引側に付加的に設けられるものである。
b:前者は出口角度θ2が2度以上であるのに対し、後者はこれよりも小さい。
c:前者は基準の使用状態における比速度が最小で250程度とされることがあるが、後者は基準の使用状態における比速度が最低でも800程度を超えるものとされる。
d:前者は3500rpm以下で使用されることがあるが、後者は一般に7000rpm以上で使用される。
このような相違を有する前者のインデューサ羽根車2を備えた本実施例のクーラントポンプ100は、単に、従来のインデューサ羽根車2を新規な用途に使用したに留まらず、従来と相違した構造及び概念を有するインデューサ羽根車2を備えるものであり、実用性に優れたものである。
《本実施例に係るクーラントポンプ100の全揚程の増大化のための第2処理》
本実施例のクーラントポンプ100においては、作動中に、インデューサ羽根車2とポンプケーシング1の内方空間c0の周壁面との半径上の隙間c3からクーラント液gが漏れ出て、この漏れ出たクーラント液gがインデューサ羽根車2より下側のポンプケーシング1内のクーラント液gやクーラント液タンク14内のクーラント液gを旋回させる上で寄与することは既に説明したが、このように旋回しているクーラント液gはこれを吸引するクーラントポンプ100の揚程を上昇させるように作用するのである。
そこで、ポンプケーシング1の形状は変化させないでインデューサ羽根車2の径を小さくすることでインデューサ羽根車2とポンプケーシング1の内方空間c0の内周壁面との半径上の隙間c3を変化させた場合の、該隙間c3と、該隙間c3からの漏れ量及びクーラントポンプ100の揚程係数との関係について、図11を参照して説明する。
図11において、横軸は半径上の隙間c3(mm)の大きさを表示するものであり、縦軸は漏れ量(m)及び揚程係数ψを表すものである。曲線e7はコンピュータによるシミュレーションや簡易な実験により確認した隙間c3と揚程係数ψとの関係を表すものであり、その形状はサインカーブに近似したものとなっている。曲線e7のデータを取得するときにおいて、半径上の隙間c3が1.5mmのとき、クーラントポンプ100の揚程は6.4mでクーラント液gの流量は0.2m/minである。
この図11から判断されるように半径上の隙間c3が増大していくとき、半径上の隙間c3の大きさが1.3mm(インデューサ羽根車2の外径に対する割合で表示すると1%の大きさ)近傍では漏れ量及びクーラントポンプ100の揚程係数との関係を表す曲線e7の傾斜角度は小さく、その後、次第に大きくなり、半径上の隙間c3が或る大きさを過ぎると、その後は次第に小さくなり、半径上の隙間c3の大きさが4.3mm(インデューサ羽根車2の外径に対する割合で表示すると3.3%の大きさ)近傍では再び小さくなり、やがて正負の反転する極点k1(半径上の隙間c3の大きさが約4.8mmの点)に到達し、その後は負の値となってその絶対値が次第に増大するように変化していく。
したがって半径上の隙間c3は、該隙間c3の大きさと、該隙間c3を通じて前記ポンプケーシング1の吸込口10b側へ漏れ出る流量とが比例して増大する範囲内の大きさに設定することが、極点に対応した隙間より大きい範囲上で設定するよりも、この隙間c3から漏れるクーラント液gによるクーラントポンプ100の全揚程を効果的或いは効率的に増大させる上で有効であり、その数値の範囲をインデューサ羽根車2の半径に対する割合で表すと、1%以上である。この割合としてさらに好ましくは、曲線e8の傾斜角度の大きい範囲の隙間c3の数値、2%〜5%の範囲が良い。
この隙間c3から漏れ出るクーラント液gによるクーラントポンプ100の揚程の上昇分を揚程係数ψで示すと、図6から判断して最大で0.15程度であり、その大きさは特に流量が極めて小さいときは基準の使用状態におけるクーラントポンプ100の全揚程の約50%程度を超えるようにもなり、その有効性が理解される。
一般的にはポンプケーシング1とインデューサ羽根車2との半径上の隙間c3は流体が出来るだけ漏れでないように設定されるのであり、その大きさはインデューサ羽根車2の外径の0.5%以下程度とされる。
したがって本実施例に係る半径上の隙間c3はポンプケーシング1内の流体が出来るだけ漏れ出ないように配慮される従来の羽根車とポンプケーシングとの隙間と較べ、その存在理由及び大きさにおいて明確に区別されるものである。
《本実施例に係るクーラントポンプ100の特徴的構成及び作用〉
次に本実施例に係るクーラントポンプ100の特徴的構成について補足的な説明をする。
(1)インデューサ羽根車2が2900rpm〜3500rpmで回転される構成をされているが、該構成はインデューサ羽根車2を回転させるための駆動部4である電動モータが汎用的に使用されるもので済むようになる上で寄与する。これにより、クーラントポンプ100の製造コストが低減される。
ここに、2900rpmの回転速度は周波数が50サイクルの商用電源で駆動される2極の電動モータ4の回転速度であり、3500rpmの回転速度は周波数が60サイクルの商用電源で駆動される2極の電動モータ4の回転速度である。これらの回転速度には、電動モータの出力軸の回転に伴うスリップが見込まれている。
(2)基準の使用状態での比速度Ns(m、min,m)が250〜650の範囲内とされ、このさいインデューサ羽根車2の回転速度は2900rpm〜3500rpmとされる。そして、比速度Nsが250のときの、クーラントポンプ100の揚程は例えば20m程度であり、その流量は例えば150リットル/min程度となる。一方、比速度Nsが650のときの、クーラントポンプ100の揚程は例えば10m程度であり、その流量は例えば500リットル/min程度となる。これにより、本実施例のクーラントポンプ100は実際上必要とされる種々の揚程と流量の得られるものとなる。
(3)ポンプケーシング1が上部にクーラント液出口5bを形成され下端をクーラント液gの吸込口10bとされ自身の中心線a1、a2が縦向きとされ外径がインデューサ羽根車の外径よりも大きく直線状の円筒内部の空間である内部空間c0を備え、またインデューサ羽根車2がポンプケーシング1の前記内部空間c0内のクーラント液出口5bよりも下側範囲内に同心状に配置され入口部f1を下位に且つ出口部f2を上位に位置されている。このような構成のポンプケーシング1は直状管鋼管やフランジなどの既存の部材の活用により安価に形成することができる。またポンプケーシング1やインデューサ羽根車2は吸込口10bを通じてクーラント液タンク14内のクーラント液gに旋回力を効率的に付与するものとなり、且つ、旋回状態のクーラント液gの運動エネルギを無駄に消失させることなく、これを吸い上げるものとなる。
(4)駆動部4がポンプケーシング1の内部空間c0内のインデューサ羽根車2の上側範囲の中心位置に配置される回転軸3を介してインデューサ羽根車2を回転させるようにしている。この構成によれば回転軸3はポンプケーシング1で包囲されて他物と接触することのないものとなり、また内部空間c0内のインデューサ羽根車2の上側範囲で中心部の回転軸3を除いた筒状の領域はインデューサ羽根車2の送り出したクーラント液gの流出路として活用され、クーラント液g中に含まれる切粉などの異物の堆積を従来のクーラントポンプに較べ抑制することができる。
(5)ポンプケーシング1の内部空間c0内におけるインデューサ羽根車2の下端から吸込口10bまでの範囲の全体が真っ直ぐでインデューサ羽根車よりも大きな外径の完全な空所とされている。この構成によれば、インデューサ羽根車2は障害物に邪魔されることなくクーラント液タンク14内のクーラント液gに旋回力を効率的に付与することができ、また旋回状態のクーラント液gをその運動エネルギを無駄に消失させることなく吸い上げることができる。
(6)ポンプケーシング1の内部空間c0内におけるインデューサ羽根車2の上端からクーラント液出口5bまでの範囲のうち回転軸3を除いた領域は空所であるか、或いは該空所内に旋回規制板19を固設された構成である。これによれば、インデューサ羽根車2が送り出したクーラント液gはクーラント液出口5bまで流動する。旋回規制板19が設けられていると、インデューサ羽根車2が送り出したクーラント液gの旋回を旋回規制板19が規制して旋回エネルギを圧力に変換しクーラント液出口5bから流出するクーラント液gの圧力を上昇させる。
(7)ポンプケーシング1の内部空間c0内におけるインデューサ羽根車2の上端からクーラント液出口5bまでの範囲の上下長さがインデューサ羽根車2の外径の2倍〜3倍程度にされている。これにより、ポンプケーシング1の内部空間c0内におけるインデューサ羽根車2の上端からクーラント液出口5bまでの範囲内にたとえ旋回規制板19が存在しなくても、インデューサ羽根車2が送り出したクーラント液gの旋回はポンプケーシング1の内面との摩擦や、クーラント液の粘性抵抗などで抑制されるようになる。
100 クーラントポンプ
1 ポンプケーシング
2 インデューサ羽根車
3 回転軸
4 駆動部
5b クーラント液出口
11 ボス部
10b 吸込口
12a ヘリカル翼
12b ヘリカル翼
12c ヘリカル翼
Ns 比速度
θ2 出口角度
θ1 入口角度
a1 中心線
a2 中心線
c0 内部空間
c3 隙間
d2 ヘリカル翼12の外径
f1 入口部
f2 出口部
g クーラント液

Claims (5)

  1. クーラント液を吸い上げるクーラントポンプであって、上部にクーラント液出口が形成され下端にクーラント液の吸込口が形成された筒状の内部空間を備えたポンプケーシングと、前記ポンプケーシング内に該ポンプの全揚程を生成させる単一のインデューサ羽根車を備え、前記インデューサ羽根車はボス部の外周囲に複数のヘリカル翼を固設され、かつ各ヘリカル翼について出口角度を入口角度よりも2度以上大きく設定されていることを特徴とするクーラントポンプ。
  2. 前記インデューサ羽根車と前記ポンプケーシングの内周壁面との半径上の隙間が前記インデューサ羽根車部の外径の1%以上に設定されていることを特徴とする請求項1記載のクーラントポンプ。
  3. 前記インデューサ羽根車と前記ポンプケーシングの内周壁面との半径上の隙間が前記インデューサ羽根車部の外径の5%以下に設定されていることを特徴とする請求項2記載のクーラントポンプ。
  4. 前記内部空間内における前記インデューサ羽根車の下端から前記吸込口までの範囲の全体は前記インディーサ羽根車の外径よりも大きな径の空所とされていることを特徴とする請求項2記載のクーラントポンプ。
  5. 前記内部空間内における前記インデューサ羽根車の上端から前記液出口までの範囲に旋回規制板が上下方向に沿わせで配置されていることを特徴とする請求項1記載のクーラントポンプ。
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