JP2011202304A - 繊維構造体およびその製造方法、ならびにプリフォーム - Google Patents
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Abstract
【課題】取り扱い性、複雑な形状への形状追従性に優れ、かつ、繊維強化複合材料とした場合に優れた力学物性を発現する繊維構造体およびその製造方法、ならびに該繊維構造体を用いたプリフォームを提供すること。
【解決手段】実質的に連続した強化繊維と、不連続な強化繊維が、実質的に平行して混在する繊維束を含む繊維構造体であって、該繊維構造体が前記強化繊維以外の、熱可塑性樹脂からなる繊維を含有することを特徴とする繊維構造体。また、かかる繊維構造体は、実質的に連続した強化繊維束と、該強化繊維以外の熱可塑性樹脂からなる繊維を含む繊維構造前駆体を、ニードルパンチングすることにより強化繊維を切断することにより製造できる。
【選択図】なし
【解決手段】実質的に連続した強化繊維と、不連続な強化繊維が、実質的に平行して混在する繊維束を含む繊維構造体であって、該繊維構造体が前記強化繊維以外の、熱可塑性樹脂からなる繊維を含有することを特徴とする繊維構造体。また、かかる繊維構造体は、実質的に連続した強化繊維束と、該強化繊維以外の熱可塑性樹脂からなる繊維を含む繊維構造前駆体を、ニードルパンチングすることにより強化繊維を切断することにより製造できる。
【選択図】なし
Description
本発明は、取り扱い性が良好で、かつ、変形性に優れ立体形状への賦型が容易であると共に、優れた機械特性を有する繊維強化複合材料を得るための繊維構造体およびその製造方法、ならびに該繊維構造体を用いたプリフォームに関する。
繊維強化プラスチック(FRP)は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、PPS、PEEK等の熱可塑性樹脂のマトリックス樹脂と、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の繊維強化材とからなるものであり、軽量でかつ強度特性に優れるため、近年、航空宇宙産業から一般産業分野に至るまで、幅広い分野において利用されている。そして、その成形方法としては色々な方法・手段が知られているが、樹脂トランスファー成形法は、特に多品種中量生産に適する成形法として注目されている。
樹脂トランスファー(以下、RTMと略称する場合もある)成形法においては、上型と下型からなる金型内部に、繊維強化材を成形品形状に賦形したプリフォーム又はシート状の繊維強化材(ドライ基材)を配置し、金型を型締めした後、上型と下型が形成するキャビティ内を、金型の排出口から排出用ホースを介して排気し、一方、金型の注入口から注入用ホースを介して樹脂をキャビティ内に注入して繊維強化材に含浸せしめ、そして必要なら加熱して硬化させる方法がとられる。このようなRTM成形法は、従来幾つかの部品の組み立てによって製作していた複雑な製品を、一体的に成形することができるという特徴を有する。
前記のごとくRTM成形法は、ドライ基材を密閉された金型内に配置し、金型外部より樹脂を注入することで行われるが、成形品形状が複雑化するほど、織物基材の賦型は困難となる。その結果、基材には突っ張りやダブつきが起こり、特にアール部(稜線部)において、局所的な樹脂ヒケによる凹形状が成形品表面に発生し、成形品の品質の低下を招く原因となる。
特に複雑な3次元形状の場合、さらにこの問題は深刻であった。複雑な3次元形状に、例えば紙など面内でせん断変形を起こしにくいシートを想像すると分かりやすいが、このような連続繊維基材を賦形した場合には、形状表面を覆いきれない箇所で突っ張りが、基材が余った箇所でシワが発生するため、高品位な賦形が難しい。連続繊維基材であっても、織物基材のように面内でせん断変形が可能な場合は、紙などに比べるとかなり賦形しやすいものの、形状が複雑になれば、やはり繊維の突っ張りやシワが発生してしまう、とい
う問題があった。
う問題があった。
3次元形状等の複雑な形状に適した成形方法として、SMC(シートモールディングコンパウンド)等の不連続な強化繊維からなる基材が知られている。SMCは、通常25mm程度に切断したチョップドストランドに熱硬化性樹脂を含浸せしめ半硬化状態としたSMCシートを、加熱型プレス機を用いて加熱加圧することにより成形を行う。多くの場合、加圧前にSMCシートを成形体の形状より小さく切断して成形型上に配置し、加圧により成形体の形状に引き伸ばして(流動させて)成形を行う。そのため、その流動により3次元形状等の複雑な形状にも追従可能となる。しかしながら、SMCはそのシート化工程において、チョップドストランドの分布ムラ、配向ムラが必然的に生じてしまうため、力学物性が低下し、あるいはその値のバラツキが大きくなってしまう。さらには、そのチョップドストランドの分布ムラ、配ムラにより、特に薄物の部材ではソリ、ヒケ等が発生しやすくなり、構造材としては不適な場合がある力学的特性が低いため、構造部材には適用できないという問題があった。
また、連続繊維からなる織物に切れ込みを入れて賦型性を改善する方法(例えば特許文献3)も知られているが、この方法では樹脂を含浸して成形品とした際に織物の切れ込み部分の樹脂含有量が多くなりやすく、成形品の他の部分に比べて強度等の力学特性が低くなるという欠点がある。
また、連続繊維からなるプリプレグに、切れ込み同士の距離が遠くなるように切れ込みを入れて成形性と成形品の力学特性を両立させる技術(例えば特許文献4)が知られている。この技術を適用することにより成形品の破壊の起点となる切れ込み同士がつながりにくくなるため、成形品の力学特性を低下させることなく成形性を向上することができるものの、さらに高い力学特性学を有する成形品が求められている。
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、取り扱い性、複雑な形状への形状追従性に優れ、かつ、繊維強化複合材料とした場合に優れた力学物性を発現する繊維構造体およびその製造方法、ならびに該繊維構造体を用いたプリフォームを提供することにある。
本発明はかかる課題を解決するために次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)実質的に連続した強化繊維と、不連続な強化繊維が、実質的に平行して混在する繊維束を含む繊維構造体であって、該繊維構造体が前記強化繊維以外の、熱可塑性樹脂からなる繊維を含有することを特徴とする繊維構造体。
(1)実質的に連続した強化繊維と、不連続な強化繊維が、実質的に平行して混在する繊維束を含む繊維構造体であって、該繊維構造体が前記強化繊維以外の、熱可塑性樹脂からなる繊維を含有することを特徴とする繊維構造体。
(2)熱可塑性樹脂からなる繊維の繊維径が強化繊維の繊維径の1.5倍以上10倍未満である、前記(1)に記載の繊維構造体。
(3)熱可塑性樹脂からなる繊維が繊維束を形成しており、その繊維束に500〜2000t/m以上の撚りがかかっていることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の繊維構造体。
(4)強化繊維の繊維束の長軸方向の長さ3mmの間に存在する、切断端を有する強化繊維の本数と切断端を有さない強化繊維の本数の比が3:7〜7:3である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の繊維構造体
(5)熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、エポキシ樹脂からなる群より選ばれた熱可塑性樹脂である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の繊維構造体
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維構造体が複数枚積層されてなるプリフォームであって、プリフォームの厚さ方向に複数の前記繊維構造体を貫通した穴が実質的に存在しないことを特徴とするプリフォーム。
(5)熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、エポキシ樹脂からなる群より選ばれた熱可塑性樹脂である、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の繊維構造体
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の繊維構造体が複数枚積層されてなるプリフォームであって、プリフォームの厚さ方向に複数の前記繊維構造体を貫通した穴が実質的に存在しないことを特徴とするプリフォーム。
(7)実質的に連続した強化繊維束と、該強化繊維以外の熱可塑性樹脂からなる繊維を含む繊維構造前駆体を、ニードルパンチングすることにより強化繊維を切断することを特徴とする繊維構造体の製造方法。
(8)熱可塑性樹脂からなる繊維の繊維径が強化繊維の繊維径の1.5倍以上10倍未満である、前記(7)に記載の繊維構造体の製造方法。
(9)熱可塑性樹脂からなる繊維が繊維束を形成し、その繊維束に500〜2000t/mの撚りがかかっている、前記(7)または(8)に記載の繊維構造体の製造方法。
(10)繊維構造前駆体を、100〜3000/cm2のパンチ密度でニードルパンチングすることにより強化繊維を切断する、前記(7)〜(9)のいずれかに記載の繊維構造体の製造方法。
(11)熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれた熱可塑性樹脂である、前記(7)〜(10)のいずれかに記載の繊維構造体の製造方法。
(12)繊維構造前駆体に貫通する部分のニードルの断面積が0.05mm2以上1mm2以下である、前記(7)〜(11)のいずれかに記載の繊維構造体の製造方法。
本発明は、取り扱い性が良好で、かつ、変形性に優れ立体形状への賦型が容易であると共に、優れた機械特性を有する繊維強化複合材料を得ることができる。そのため、意匠性、力学特性に優れた繊維強化複合材料を生産性良く製造することができる。
以下に本発明について、好ましい実施の形態と共に詳細を説明する。
本発明の繊維構造体は、実質的に連続した強化繊維と、不連続な強化繊維が、実質的に平行して混在する繊維束を含む繊維構造体であって、該繊維構造体が前記強化繊維以外の、熱可塑性樹脂からなる繊維(以下、熱可塑性樹脂繊維と略すことがある。)を含有することを特徴とする。
繊維構造体が、実質的に連続した強化繊維と、不連続な強化繊維が、実質的に平行して混在する繊維束と、熱可塑性樹脂からなる繊維を含むことにより、取り扱い性が良好で、かつ、変形性に優れ立体形状への賦型が容易であると共に、優れた機械特性を有する繊維強化複合材料を得ることができる。すなわち、繊維構造体を構成する強化繊維束内に実質的に連続した強化繊維が存在することにより、繊維構造体に形態安定性が付与されて取り扱い性が良好となる。また、繊維構造体を構成する繊維束内に不連続な強化繊維が存在することにより、RTM成形に用いた場合は金型に設置した際の賦型性(金型内の凹凸への追従性)が良好であり、この繊維構造体を熱可塑性中間基材として用いた場合は、樹脂の流動に伴い不連続繊維が移動するのでリブやボスの部分にも強化繊維を存在させることができる。さらに、繊維構造体中に熱可塑性樹脂繊維を含むことにより、繊維構造体の形態安定性が向上し、RTM成形の際に金型に繊維構造体を設置する際等の取り扱い性が向上する。
なお、本発明の繊維構造体が有するこれらの機能を効果的に発現させるため、熱可塑性樹脂繊維が、強化繊維の繊維径よりも大きい繊維径を有することが好ましい。
ここでいう実質的に連続した強化繊維とは、少なくとも30mm以上の長さにわたり連続した繊維を示し、繊維構造体全体にわたって全てのフィラメントが連続している必要はない。また、ここでいう不連続な強化繊維とは、長さが30mm未満の繊維のことを示す。
本発明の繊維構造体は、繊維束の長軸方向の長さ3mmの間に存在する、切断端を有する強化繊維の本数と切断端を有さない強化繊維の本数の比が3:7〜7:3であることが好ましい。この比が3:7より小さいと強化繊維が自由に動ける範囲が小さくなるため、本発明の目的である賦型性が達成できない場合がある。また、この比が7:3より大きいと繊維構造体の形状が不安定となり取り扱い性が低下することがあり、得られる成形品の強度も低下することがある。
繊維束を構成する強化繊維の本数は、該繊維構造体を作成するときに用いた強化繊維束の中の強化繊維の本数が既知であれば、その繊維本数を採用する。強化繊維の本数が未知の場合は以下の方法により測定する。繊維構造体から強化繊維の切断されていない部分を取り出し、単繊維が整列した糸束を、任意の場所で5cmサンプリングしエポキシ樹脂で糸束全体を包埋し固定化した。この糸束をミクロトームによってきれいに断面を露出させ、その切片全体を光学顕微鏡で観察し1000倍に拡大して写真をとった。この写真から強化繊維の本数を測定した。この作業を強化繊維の切断されていない異なる3箇所で行い、平均値を強化繊維の本数とした。
本発明において切断端を有する繊維の本数は以下のようにして測定する。繊維構造体の中の繊維が切断されている箇所から任意の10箇所を選び出し、切断箇所からの前後3mmを含む場所を500倍に拡大して写真撮影する。その写真の中に存在する強化繊維の中で切断端を有する強化繊維の数を数える。なお、連続した強化繊維が1箇所で切断されると切断端を有する強化繊維は2本発生するが、本発明においてはそのうちの1本の切断端を有する強化繊維のみを数える。すなわち、強化繊維の切断箇所に対して切断端を有する強化繊維のうち片側に存在する強化繊維のみ数を数える。切断箇所の両側で切断端を有する強化繊維の数が異なる場合は多い方の数を採用する。
繊維束の本数から切断端を有する繊維の数を引いたものを、切断端を有さない強化繊維の本数とする。このようにして測定した切断端を有する強化繊維の本数と切断端を有さない強化繊維の本数を用いて両者の比を求める。
本発明で用いる強化繊維は特に限定はなく、例えば、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、および、アラミド、パラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリアリレートおよびポリイミド等の有機繊維等が挙げられ、これらの1種または2種類以上を併用したものを使用することができる。中でも、炭素繊維は、比強度・比弾性率に優れており、好ましく用いられる。炭素繊維は、その糸条の引張強度が4GPa以上7GPa以下、好ましくは4.5GPa以上6.5GPa以下、引張弾性率が200GPa以上500GPa以下であることが、特に構造材に好適である。上記補強繊維は、一種類の繊維のみを使用するもの、または、これらを組み合わせたもの、例えば、ガラス繊維でのE−ガラスとT−ガラスとの組み合わせや、Eガラスと炭素繊維の組み合わせ等複数種の補強繊維を組み合わせたものでもよい。このように強度、物性の違う強化繊維を別々の方向に揃えて繊維構造体とすることにより強度に方向性を持たせることも可能である。
本発明において、実質的に平行とは、対象となる2つの線、線分、または、方向等のなす角度の絶対値が5°以下であることを表すものとし、平行を含む用語(例えば“平行移動”等)においても同様である(以下、単に「平行」と称することがある)。また、強化繊維の配向方向を基準として方向を表す場合には、強化繊維と直交する方向を、繊維直交方向、強化繊維の配向方向に平行な方向を、繊維配向方向と記すこととし、それぞれ、平行の場合と同様、±5°以下のずれは許容するものとする。
本発明の繊維構造体は、強化繊維以外の、熱可塑性樹脂からなる繊維を含有することを特徴とするが、ここでいう熱可塑性樹脂とは、繊維にできるものであれば特に制限は無く、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、液晶ポリエステル樹脂(LCP)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらは一種または二種以上のポリマーブレンドあるいはポリマーアロイとして使用される。なかでも、熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、PPS、PEEK、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂からなる群より選ばれた熱可塑性樹脂である場合、耐熱性やマトリックス樹脂との接着性が高く、成形品とした場合の曲げ強度等の機械特性に優れるため好ましい。
上記熱可塑性樹脂を繊維化するにあたっては公知の紡糸方法を採用することができ、熱可塑性樹脂を含む溶液を口金から吐出した後に溶媒を乾燥して除去する乾式紡糸法や、同じく熱可塑性樹脂溶液と口金から吐出した後で別の溶媒中に導いて溶媒置換をした後で乾燥する湿式紡糸法、さらには、熱可塑性樹脂を融点以上に加熱して溶融した状態で口金から吐出する溶融紡糸法を採用することができる。
かかる熱可塑性樹脂繊維の繊維径は強化繊維の径の1.5倍以上10倍未満であることが好ましい。熱可塑性樹脂繊維の繊維径が強化繊維の繊維径の1.5倍未満である場合は熱可塑性樹脂繊維が柔らかすぎるために繊維構造体の形態を安定化する効果が小さい場合がある。さらに、後述する繊維構造体中の強化繊維の一部を切断するにあたってニードルパンチングを施す場合には熱可塑性樹脂繊維が細すぎるとニードルパンチングにより切断されてしまう場合がある。また、熱可塑性樹脂繊維の繊維径が強化繊維の繊維径の10倍以上である場合は熱可塑性樹脂繊維が硬すぎるため、繊維構造体の賦型性が低下する場合がある。
ここで強化繊維および熱可塑性樹脂繊維の繊維径は、該繊維構造体を製造した際に用いた強化繊維および熱可塑性樹脂繊維の繊維径が既知であればその繊維径を採用する。繊維径が未知の場合は以下のようにして求める。繊維構造体の強化繊維および熱可塑性樹脂繊維を含む断面を300倍に拡大したSEM写真を撮影する。このSEM写真を画像データとしてコンピューターに取り込み、画像処理ソフトを用いて、対象繊維の横断面積と同じ横断面積を持つ円の直径を求め、これを強化繊維あるいは熱可塑性樹脂繊維の繊維径とする。
また、かかる熱可塑性樹脂繊維は繊維束を形成しており、500〜2000t/mの撚りがかかっていることが好ましい。熱可塑性樹脂繊維の繊維束の撚り数が500t/m未満の場合は熱可塑性樹脂繊維が柔らかすぎるために繊維構造体の形態を安定化する効果が小さい場合がある。さらに、後述する繊維構造体中の強化繊維の一部を切断するにあたってニードルパンチングを施す場合には熱可塑性樹脂繊維の撚り数が少なすぎると熱可塑性繊維がばらけて、ニードルパンチングにより切断されてしまう場合がある。また、熱可塑性樹脂繊維の繊維束の撚り数が2000t/m以上である場合は熱可塑性樹脂繊維の繊維束が硬すぎるため、繊維構造体の賦型性が低下する場合がある。ここで熱可塑性樹脂繊維の繊維束の撚り数は、該繊維構造体を製造した際に用いた熱可塑性樹脂繊維の繊維束の撚り数が既知であればその撚り数を採用する。撚り数が未知の場合はJISL 1096(一般織物試験方法)付属書13に規定の方法により繊維構造体を分解して取り出した熱可塑性樹脂繊維の繊維束を、検撚機を用いて解撚し、撚り数を測定する。撚糸方法は特に限定はされず、撚数や撚糸形態、撚糸張力などを考慮し、イタリー式撚糸機やダブルツイスターなどのアップツイスター、リング撚糸機などのダウンツイスター、カバリングマシン、ベルドール撚糸機などを用いて行うことができる。また、これらを組み合わせた複合撚糸機を採用することもできる。
また、ここでいう、繊維構造体とは、前記実質的に連続した強化繊維と、不連続な強化繊維が、実質的に平行して混在する繊維束からなるものであり、代表的な形態としては、織物、一方向織物、多軸ステッチ基材等を例示することができる。なお、一方向織物とは、平行に並んだ強化用繊維の束(ストランド)をナイロン糸、ポリエステル糸、ガラス繊維糸等で編んだ織物をいう。多軸ステッチ織物とは、一方向に引き揃えた強化用繊維の束をシート状に形成し、このシート状の強化用繊維を繊維軸の角度を変えて複数積層し、ナイロン糸、ポリエステル糸、ガラス繊維糸等でステッチした織物をいう。繊維構造体が織物である場合は、織組織として、平織物、綾織物、サテン織物、もじり織物、絡み織物、立体織物等、織組織のものを用いても良い。また、熱可塑性樹脂繊維が繊維構造体に含まれる状態としては、本発明の目的である、熱可塑性樹脂繊維により繊維構造体の形態安定性が発揮できれば特に制限はなく、織物の経糸あるいは緯糸として交織することもできるし、強化繊維と引き揃えて混繊して使用することもできる。
これら繊維構造体の目付は、目的とする成形品の形状や求められる特性に合せて適宜選択できるが、目付けが低すぎると強化繊維の間に大きな隙間が生じ成形品とした場合の特性が低下しやすくなるため好ましくない。また、目付けが高すぎると繊維構造体が変形しにくくなり作製できる成形品の形状の範囲が狭くなるため好ましくない。したがって、繊維構造体の目付けは50〜4000g/m2が好ましく、100〜2000g/m2がより好ましい。
また、本発明の繊維構造体は、複数枚積層されてなるプリフォームを形成するに際し、そのプリフォームの厚さ方向に複数の前記繊維構造体を貫通した穴が実質的に存在しないように形成することが好ましい。
本発明において、プリフォームとは、強化繊維を含み、予め所定の形状に賦形された、マトリックス樹脂を含まない、最終成形品としてのFRPを成形するための素材としての部材のことを言う。かかるプリフォームは、本発明の繊維構造体のみを積層して構成されていてもかまわないし、本発明の繊維構造体とそれ以外の繊維構造体を積層していてもかまわない。また、同じ種類の繊維構造体から構成されていてもかまわないし、複数の種類の繊維構造体を組み合わせてプリフォームを作成してもよい。
また、本発明において、プリフォームの厚さ方向に複数の前記繊維構造体を貫通した穴が実質的に存在しないとは、本発明の繊維構造体を積層してなるプリフォームにおいて、1つの繊維構造体に存在する穴がすぐ上または下に積層された繊維構造体の穴同士が、部分的にも重なっていない(穴同士のオーバーラップが無い)ことをいう。
本発明のプリフォームは、エポキシ樹脂等のマトリックス樹脂を含浸することにより繊維強化複合材料とするが、このプリフォームに用いられる複数の繊維構造体を貫通した穴が実質的に存在しない場合、プリフォームの他の箇所に樹脂が浸透しやすくなり、未含浸部分ができにくくなるので好ましい。すなわち、繊維構造体をこのように積層することにより、プリフォームにマトリックス樹脂を均一に含浸することができる。
プリフォームの厚さ方向に複数の前記繊維構造体を貫通した穴は、本発明の繊維構造体を作製するにあたって、強化繊維の一部を切断する前の繊維構造体(以下、繊維構造前駆体と呼ぶことがある。)の強化繊維をニードルパンチングにて切断する際に複数の繊維構造前駆体を積層した状態でニードルパンチングすることにより形成されるが、このような方法で繊維構造前駆体にニードルパンチングを施すと、切断された強化繊維の切断端がニードルパンチングにより上または下の層の繊維構造前駆体に突き刺さるため、繊維構造体同士が部分的に固定されてずれにくくなるため賦型性が低下する場合がある。
本発明のプリフォームは、複数の前記繊維構造体を面対称となるように組み合わせて積層してすることにより、得られる成形品の反りを防止できる。
本発明の繊維構造体ないしプリフォームを用いて繊維強化複合材料を製造する際に用いられるマトリックス樹脂は、特に限定されるものではないが、その初期の粘度は、含浸性の観点から、注入温度において、400mPa・s以下が好ましく、200mPa・s以下がより好ましい。注入温度は、100℃以下であると設備が簡易なものにできるため好ましい。本発明では、マトリックス樹脂として、注入前には常温で液状である熱硬化性樹脂が使用され、該熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が使用可能である。さらにエラストマー、ゴム、硬化剤、硬化促進剤、触媒等を添加したものも使用可能である。マトリックス樹脂を、一方向性強化繊維基材に含浸させる場合、マトリックス樹脂の粘度が低いと含浸時間が短くできる。
本発明の繊維構造体は、実質的に連続した強化繊維束と、強化繊維以外の熱可塑性樹脂からなる繊維を含む繊維構造前駆体を、ニードルパンチングすることにより、実質的に連続した強化繊維束からなる繊維構造前駆体を切断することにより製造できる。
熱可塑性樹脂は強化繊維と比較して柔軟で伸びやすいため、このような繊維構造前駆体をニードルパンチングすることにより、選択的に強化繊維を切断して賦型性を向上させると同時に、熱可塑性樹脂繊維は切断されにくいので形態安定性に優れハンドリングしやすい繊維構造体を得ることができる。
ニードルパンチ本数が100/cm2未満の場合は、繊維構造前駆体の切断が少なく繊維構造前駆体が動きにくいために、得られる繊維構造体の賦型性が不十分なる。また、ニードルパンチ本数が3000/cm2を超えると、繊維構造前駆体の切断が多くなり繊維構造前駆体が動きやすくなりすぎて、得られる繊維構造体の形態保持性が低くなり取り扱い性が悪くなると同時に、繊維構造前駆体の長さが短くなりすぎて、マトリックス樹脂を含浸して得られる繊維強化複合材料の機械特性が不十分となる。
ここでいうニードルパンチングとは、後述するニードルを繊維構造前駆体に突き刺すことをいう。一般的にニードルパンチ処理とは、バーブを有するニードルで不織布を多数回突き刺すことによって、バーブに繊維を引っかけ、繊維を切断せずに、繊維同士を三次元的に交絡させて、不織布の機械的強度を上げるものをいう。しかしながら、本発明におけるニードルパンチ処理は、実質的に連続した強化繊維束を切断、また、開孔を付与することを目的として行うものである。かかるニードルパンチングを繊維構造前駆体に施す方法としては特に制限は無く、例示するとニードルの通る孔のあいたストリッパプレートとベットプレートとの間に繊維構造前駆体を通し、ニードルを植えたニードルプレートを昇降運動させることにより繊維構造前駆体にニードルを突き刺す一般的なニードルパンチ装置を使用することができる。
かかるニードルパンチングにおいては、繊維構造前駆体を動かさない状態でニードルを突き刺しても良いし、繊維構造前駆体が所定の速度で移動しながら配列したニードルを突き刺してもかまわない。また、ここでいうニードルパンチ本数とは、繊維構造前駆体のニードルパンチングするにあたり、ニードルが突き刺さる側の繊維構造前駆体の面積で、ニードルが繊維構造前駆体を突き刺した回数を割ってcm2あたりの突き刺し回数で表したものである。
本発明で使用するニードルは、一般的に不織布の製造において用いられるものと同様のものも適宜用いることが可能であるが、本発明の効果を得る上で繊維構造前駆体に貫通する部分のニードルの断面積が0.05mm2以上1mm2以下であることが望ましい。
ニードルの平均断面積が0.05mm2未満の場合はニードルパンチング中にニードルが折れやすく、ニードルパンチングを安定的に施すのが困難となる場合がある。また、ニードルの平均断面積が1mm2を超える場合はニードルが繊維構造前駆体を突き刺した跡が大きな穴が開きやすく、その部分が、強化繊維が少ない樹脂リッチになって製品の強度や耐久性を低下させる場合がある
ここで繊維構造前駆体に貫通する部分のニードルの平均断面積は、以下のようにして測定する。ニードルを繊維構造前駆体に突き刺す深さの2倍以上の厚さにペーパータオルを積み重なる。積み重ねたペーパータオルの上に、コピー用紙を1枚載せる。このとき、ペーパータオルからコピー用紙がはみ出ないようにする。繊維構造前駆体のニードルパンチングに使用するニードルを無作為に1本取り出し前記コピー用紙の上からニードルパンチでニードルを繊維構造前駆体に突き刺すのと同じ深さだけ突き刺す。その後、ニードルを引き抜いた後に開いた穴を100倍に拡大した画像を撮影し、その画像から画像処理ソフトにて穴の面積を求める。この作業を30回繰り返して得られた面積の平均値を繊維構造前駆体に貫通する部分のニードルの断面積とする。
ここで繊維構造前駆体に貫通する部分のニードルの平均断面積は、以下のようにして測定する。ニードルを繊維構造前駆体に突き刺す深さの2倍以上の厚さにペーパータオルを積み重なる。積み重ねたペーパータオルの上に、コピー用紙を1枚載せる。このとき、ペーパータオルからコピー用紙がはみ出ないようにする。繊維構造前駆体のニードルパンチングに使用するニードルを無作為に1本取り出し前記コピー用紙の上からニードルパンチでニードルを繊維構造前駆体に突き刺すのと同じ深さだけ突き刺す。その後、ニードルを引き抜いた後に開いた穴を100倍に拡大した画像を撮影し、その画像から画像処理ソフトにて穴の面積を求める。この作業を30回繰り返して得られた面積の平均値を繊維構造前駆体に貫通する部分のニードルの断面積とする。
繊維構造前駆体に貫通する部分のニードルの断面形状は、繊維の引っ掛かり易さや摩擦抵抗の小ささなどの点から、三角形が好ましい。
本発明で用いるニードルは、繊維構造前駆体を切断するためにバーブと呼ばれるくぼみを有する。ニードル側面より外側に突き出したバーブの先端までの高さ(キックアップということもある)とニードル側面より内側に形成されたバーブの最深部までの深さ(スロートデプスということもある)とを合わせた高さをバーブ深さというが、バーブ深さが、繊維構造前駆体の強化繊維束を形成する強化繊維(単糸)の直径未満だと、強化繊維がバーブに極めて引っ掛かり難くなる場合があり、バーブ深さが大きすぎると、強化繊維は極めて引っ掛かり易い反面、繊維構造体の表面に大きな孔径の穴が生じ、上述したように、その部分が、強化繊維が少ない樹脂リッチになって製品の強度や耐久性を低下させる場合がある。
また、バーブの数は、特に制限は無く通常、1〜9個までの範囲で所望の強化繊維の切断効果が得られるように適宜選択すればよいが、またバーブの数は1種類である必要はなく、例えば1個と6個、3個と6個、6個と9個、1個と6個と9個などの異なるバーブ数のニードルを適宜組み合わせ、任意の順序で使用してもよい。複数個のバーブを有するニードルにおいて、それぞれのバーブの位置は、ニードル先端側からの距離が全て異なるものと、同じ距離にいくつかのバーブを有するものとがある。後者のニードルとしては、例えばブレード部の断面形状が正三角形であって、3つの頂角それぞれにバーブが1個ずつ先端から同じ距離に付いたニードルなどが挙げられる。なお、ここでバーブ数というのは、ニードル先端の繊維構造前駆体を貫通するバーブから貫通せずとも維構造前駆体に実質的に作用するバーブまでの合計個数のことであり、繊維構造前駆体には作用しない部分にあるバーブは含まない。例えば、ニードルに形成されるバーブ数が9個であっても、ニードルが一番深く突き刺さった時点で繊維構造前駆体の外にバーブが3個残るような絡合処理条件を採用すれば、それは実質的にはバーブ数が6個のニードルパンチングと同等の効果を有するからである。
以下、本発明の繊維構造体およびその製造方法を、実施例を用いてさらに詳細に説明する。
「切断端を有する強化繊維の本数と切断端を有さない強化繊維の本数の比の測定方法」
繊維構造体の中の繊維が切断されている箇所から任意の10箇所を選び出し、切断箇所からの前後3mmを含む場所を500倍に拡大して写真撮影した。その写真の中に存在する強化繊維の中で強化繊維の切断箇所に対して切断端を有する強化繊維のうち片側に存在する強化繊維のみ数を数えた。切断箇所の両側で切断端を有する強化繊維の数が異なる場合は多い方の数を採用した。繊維束の本数から切断端を有する繊維の数を引いたものを、切断端を有さない強化繊維の本数とし、このようにして測定した切断端を有する強化繊維の本数と切断端を有さない強化繊維の本数を用いて両者の比を求めた。
繊維構造体の中の繊維が切断されている箇所から任意の10箇所を選び出し、切断箇所からの前後3mmを含む場所を500倍に拡大して写真撮影した。その写真の中に存在する強化繊維の中で強化繊維の切断箇所に対して切断端を有する強化繊維のうち片側に存在する強化繊維のみ数を数えた。切断箇所の両側で切断端を有する強化繊維の数が異なる場合は多い方の数を採用した。繊維束の本数から切断端を有する繊維の数を引いたものを、切断端を有さない強化繊維の本数とし、このようにして測定した切断端を有する強化繊維の本数と切断端を有さない強化繊維の本数を用いて両者の比を求めた。
「ニードルの断面積の測定方法」
ニードルを繊維構造体に突き刺す深さの2倍以上の厚さにペーパータオルを積み重なる。積み重ねたペーパータオルの上に、コピー用紙を1枚載せた。このとき、ペーパータオルからコピー用紙がはみ出ないようにした。繊維構造体のニードルパンチングに使用するニードルを無作為に1本取り出し前記コピー用紙の上からニードルパンチでニードルを繊維構造体に突き刺すのと同じ深さだけ突き刺した。その後、ニードルを引き抜いた後に開いた穴を100倍に拡大した画像を撮影し、その画像から画像処理ソフトにて穴の面積を求めた。この作業を30回繰り返して得られた面積の平均値を繊維構造体に貫通する部分のニードルの断面積とした。
ニードルを繊維構造体に突き刺す深さの2倍以上の厚さにペーパータオルを積み重なる。積み重ねたペーパータオルの上に、コピー用紙を1枚載せた。このとき、ペーパータオルからコピー用紙がはみ出ないようにした。繊維構造体のニードルパンチングに使用するニードルを無作為に1本取り出し前記コピー用紙の上からニードルパンチでニードルを繊維構造体に突き刺すのと同じ深さだけ突き刺した。その後、ニードルを引き抜いた後に開いた穴を100倍に拡大した画像を撮影し、その画像から画像処理ソフトにて穴の面積を求めた。この作業を30回繰り返して得られた面積の平均値を繊維構造体に貫通する部分のニードルの断面積とした。
「繊維強化複合材料の曲げ強度測定方法」
JIS−K7074(1988)「炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法」の3点曲げ試験に準拠して、曲げ強度を測定した。板厚約2.0mmの複合材料(成形品)を長さ100×幅15mmに切り出し、支点間距離LをL=32h(mm)(h:試験片の厚さの平均値)とし、室温にて試験片の曲げ強度を測定した。
JIS−K7074(1988)「炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法」の3点曲げ試験に準拠して、曲げ強度を測定した。板厚約2.0mmの複合材料(成形品)を長さ100×幅15mmに切り出し、支点間距離LをL=32h(mm)(h:試験片の厚さの平均値)とし、室温にて試験片の曲げ強度を測定した。
実施例1
熱可塑性樹脂として融点100℃の共重合ナイロンを用いて溶融紡糸することにより、繊維径14μmの単糸36本からなるナイロン繊維束を作製した。このナイロン繊維束にダブルツイスター式撚糸機を用いて、2000t/mの撚りを施した後、炭素繊維(東レ株式会社製、繊維径 7μm、ヤング率230GPa、引張強度4.9GPa)と一緒に引きそろえたものをたて糸およびよこ糸に用いて平織りクロス(クロス目付け320g/m2)を作製した。この平織りクロスに断面形状が1辺約0.5mmの三角形の1バーブニードルを用いてニードルが織物を貫通する長さが14mmとなる針深度にてパンチ密度5000/cm2のニ−ドルパンチを行った。
熱可塑性樹脂として融点100℃の共重合ナイロンを用いて溶融紡糸することにより、繊維径14μmの単糸36本からなるナイロン繊維束を作製した。このナイロン繊維束にダブルツイスター式撚糸機を用いて、2000t/mの撚りを施した後、炭素繊維(東レ株式会社製、繊維径 7μm、ヤング率230GPa、引張強度4.9GPa)と一緒に引きそろえたものをたて糸およびよこ糸に用いて平織りクロス(クロス目付け320g/m2)を作製した。この平織りクロスに断面形状が1辺約0.5mmの三角形の1バーブニードルを用いてニードルが織物を貫通する長さが14mmとなる針深度にてパンチ密度5000/cm2のニ−ドルパンチを行った。
なお、このニードルを14mm突き刺したときのニードルの断面積は0.1mm2であった。
得られた織物の、繊維束の長軸方向の長さ3mmの間に切断端を有する強化繊維の本数と切断端を有さない強化繊維の本数の比を測定したところ、約7.3:2.7であった。
得られた織物は熱可塑性樹脂繊維による形態保持性が十分残っており、成形材料として問題なく取り扱えるレベルであった。得られた織物を6枚積層し、底面が直径150mm、開口部直径200mm、高さ5cm(いずれも内寸法)の円錐台のお椀状のプリフォームが得られるように設計した金型に挟んで型締めを行った。次に、金型温度を155℃に加温して5分間保持した後、80℃以下に冷却し、織物の積層体を金型から脱型した。
得られたプリフォームは型に沿って全体的に変形しており、しわが発生することなく良好なプリフォームであった。
次に、得られたプリフォームを、成形型に配置し、予め60℃に加温したマトリックス樹脂(エポキシ樹脂 “エピコート”828(ジャパンエポキシレジン(株)製)90質量部、“ERISYS”GE−20(CVC社製)10質量部、“アンカミン”2049(PTIジャパン社製)32質量部)を、樹脂注入装置を用い、注入圧0.2MPaで金型内に注入し、強化繊維基材に含浸させた。得られる成形品中の強化繊維の体積含有量が60%となるように間の厚みを約2mmに調節した。樹脂含浸後、155℃の温度で2時間保持した後、30℃の温度まで降温し、脱型して成形品を得た。
成形品の平らな底面から試験片を切り出して測定した曲げ強度は710MPaと、実用的に十分高い値であった。
比較例1
実施例1で用いたものと同じ平織りクロスを、ニードルパンチングを施さずに、実施例1と同じ方法でプリフォームを作製した。得られたプリフォームはしわが多く発生しており、成形に供することができなかった。
実施例1で用いたものと同じ平織りクロスを、ニードルパンチングを施さずに、実施例1と同じ方法でプリフォームを作製した。得られたプリフォームはしわが多く発生しており、成形に供することができなかった。
比較例2
ナイロン繊維を用いず炭素繊維のみを使用した以外は実施例1と同じ方法で平織りクロスを作製し、ニードルパンチングを施した。得られた織物の、繊維束の長軸方向の長さ3mmの間に切断端を有する強化繊維の本数と切断端を有さない強化繊維の本数の比を測定したところ、約7.2:2.8であった。この繊維構造体を用いて実施例1と同じ方法でプリフォームおよび成形品を作成した成形品の平らな底面から試験片を切り出して測定した曲げ強度は715MPaと実用的に十分高い値であった。しかし、繊維構造体の状態では形態保持性が不十分であり、丁寧に取り扱うことにより、なんとかプリフォームを作製することはできたものの、成形材料として取り扱うのは非常に困難なものであった。
ナイロン繊維を用いず炭素繊維のみを使用した以外は実施例1と同じ方法で平織りクロスを作製し、ニードルパンチングを施した。得られた織物の、繊維束の長軸方向の長さ3mmの間に切断端を有する強化繊維の本数と切断端を有さない強化繊維の本数の比を測定したところ、約7.2:2.8であった。この繊維構造体を用いて実施例1と同じ方法でプリフォームおよび成形品を作成した成形品の平らな底面から試験片を切り出して測定した曲げ強度は715MPaと実用的に十分高い値であった。しかし、繊維構造体の状態では形態保持性が不十分であり、丁寧に取り扱うことにより、なんとかプリフォームを作製することはできたものの、成形材料として取り扱うのは非常に困難なものであった。
実施例2
ポリエーテルスルフォン60質量%とフェノキシ樹脂40質量%を溶融混練して作製したペレットを用いて繊維径32μmの単糸36本からなるエポキシ樹脂繊維束を作製した。この繊維束にダブルツイスター式撚糸機を用いて、100t/mの撚りを施した後、実施例1と同様の方法で炭素繊維とエポキシ樹脂繊維を交織して平織りクロスを作製した。この平織りクロスをパンチ密度2000/cm2とした以外は実施例1と同じ条件でニ−ドルパンチングを行った。得られた織物の、繊維束の長軸方向の長さ3mmの間に切断端を有する強化繊維の本数と切断端を有さない強化繊維の本数の比を測定したところ、約4.5:5.5であった。得られた織物は形態保持性が十分残っており、成形材料として問題なく取り扱えるレベルであった。
ポリエーテルスルフォン60質量%とフェノキシ樹脂40質量%を溶融混練して作製したペレットを用いて繊維径32μmの単糸36本からなるエポキシ樹脂繊維束を作製した。この繊維束にダブルツイスター式撚糸機を用いて、100t/mの撚りを施した後、実施例1と同様の方法で炭素繊維とエポキシ樹脂繊維を交織して平織りクロスを作製した。この平織りクロスをパンチ密度2000/cm2とした以外は実施例1と同じ条件でニ−ドルパンチングを行った。得られた織物の、繊維束の長軸方向の長さ3mmの間に切断端を有する強化繊維の本数と切断端を有さない強化繊維の本数の比を測定したところ、約4.5:5.5であった。得られた織物は形態保持性が十分残っており、成形材料として問題なく取り扱えるレベルであった。
この織物を実施例1と同じ方法でプリフォームとしたところ、得られたプリフォームは型に沿って全体的に変形しており、しわが発生することなく良好なプリフォームであった。このプリフォームを用いて実施例1と同じ方法で成形品を得た。
得られた成形品の平らな底面から試験片を切り出して測定した曲げ強度は735MPaと、実用的に十分高い値であった。
本発明は、取り扱い性が良好で、かつ、変形性に優れ立体形状への賦型が容易であると共に、優れた機械特性を有する繊維強化複合材料を得るための繊維構造体およびその製造方法に関する。具体的には取り扱い性、複雑な形状への形状追従性に優れ、かつ、成形品とした場合に優れた力学物性を発現する繊維構造体およびその製造方法を提供するものであり、ラケット、ヘルメット等のスポーツ用品、各種自動車用部材、電子部品等の筐体、宇宙・航空機分野の各種部材等幅広く利用することが可能である。
Claims (12)
- 実質的に連続した強化繊維と、不連続な強化繊維が、実質的に平行して混在する繊維束を含む繊維構造体であって、該繊維構造体が前記強化繊維以外の、熱可塑性樹脂からなる繊維を含有することを特徴とする繊維構造体。
- 熱可塑性樹脂からなる繊維の繊維径が強化繊維の繊維径の1.5倍以上10倍未満である、請求項1に記載の繊維構造体。
- 熱可塑性樹脂からなる繊維が繊維束を形成しており、その繊維束に500〜2000t/mの撚りがかかっている、請求項1または2に記載の繊維構造体。
- 強化繊維の繊維束の長軸方向の長さ3mmの間に存在する、切断端を有する強化繊維の本数と切断端を有さない強化繊維の本数の比が3:7〜7:3である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維構造体
- 熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンからなる群より選ばれた熱可塑性樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維構造体
- 請求項1〜5のいずれかに記載の繊維構造体が複数枚積層されてなるプリフォームであって、プリフォームの厚さ方向に複数の前記繊維構造体を貫通した穴が実質的に存在しないことを特徴とするプリフォーム。
- 実質的に連続した強化繊維束と、該強化繊維以外の熱可塑性樹脂からなる繊維を含む繊維構造前駆体を、ニードルパンチングすることにより強化繊維を切断することを特徴とする繊維構造体の製造方法。
- 熱可塑性樹脂からなる繊維の繊維径が強化繊維の繊維径の1.5倍以上10倍未満である、請求項7に記載の繊維構造体の製造方法。
- 熱可塑性樹脂からなる繊維が繊維束を形成し、その繊維束に500〜2000t/mの撚りがかかっている、請求項7または8に記載の繊維構造体の製造方法。
- 繊維構造前駆体を、100〜3000/cm2のパンチ密度でニードルパンチングすることにより強化繊維を切断する、請求項7〜9のいずれかに記載の繊維構造体の製造方法。
- 熱可塑性樹脂がポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、エポキシ樹脂からなる群より選ばれた熱可塑性樹脂である、請求項7〜10のいずれかに記載の繊維構造体の製造方法。
- 繊維構造前駆体に貫通する部分のニードルの断面積が0.05mm2以上1mm2以下である、請求項7〜11のいずれかに記載の繊維構造体の製造方法。
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CN104105825A (zh) * | 2012-02-09 | 2014-10-15 | 株式会社神户制钢所 | 含浸丝布和含浸丝布的制造方法 |
WO2018147072A1 (ja) * | 2017-02-08 | 2018-08-16 | 株式会社豊田自動織機 | 繊維構造体及び繊維強化複合材 |
US11975496B2 (en) | 2019-07-19 | 2024-05-07 | Kabushiki Kaisha Toyota Jidoshokki | Fiber structure body and fiber-reinforced composite material |
-
2010
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