JP2011196335A - 油圧ガバナ - Google Patents
油圧ガバナ Download PDFInfo
- Publication number
- JP2011196335A JP2011196335A JP2010066592A JP2010066592A JP2011196335A JP 2011196335 A JP2011196335 A JP 2011196335A JP 2010066592 A JP2010066592 A JP 2010066592A JP 2010066592 A JP2010066592 A JP 2010066592A JP 2011196335 A JP2011196335 A JP 2011196335A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- oil
- pressure
- hydraulic
- oil chamber
- port
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- High-Pressure Fuel Injection Pump Control (AREA)
Abstract
【課題】従来の油圧ガバナでは、燃料噴射装置に連動連結するパワーピストンの両油室側の受圧面積に差を設け、エンジン始動時には、該両油室に補助油圧ポンプ等から高圧作動油を追加供給してパワーピストンを高速移動させてエンジン始動性を向上させたため、部品コストが高くなり、組立性やメンテナンス性も低下する、という問題があった。
【解決手段】パワーピストン3と、パワーピストン3により仕切られる第一油室14・第二油室15と、パワーピストン3への作動油の油路を切り換えるコントロールバルブ5を備え、第二油室15側の受圧面積よりも第一油室14側の受圧面積を小さくし、受圧面積の差により第一油室14側にパワーピストン3を移動して燃料噴射量を増加させる油圧ガバナ1に、エンジン始動時に第一油室14内の作動油の油圧を第二油室15内よりも低く設定可能な始動補助機能を有する油路切換構造84を設けた。
【選択図】 図1
【解決手段】パワーピストン3と、パワーピストン3により仕切られる第一油室14・第二油室15と、パワーピストン3への作動油の油路を切り換えるコントロールバルブ5を備え、第二油室15側の受圧面積よりも第一油室14側の受圧面積を小さくし、受圧面積の差により第一油室14側にパワーピストン3を移動して燃料噴射量を増加させる油圧ガバナ1に、エンジン始動時に第一油室14内の作動油の油圧を第二油室15内よりも低く設定可能な始動補助機能を有する油路切換構造84を設けた。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ディーゼルエンジン等のエンジンの燃料噴射装置からの燃料噴射量をエンジン回転数に応じて制御する油圧ガバナに関し、特に、エンジン始動時のガバナ出力軸のトルク不足を補うための始動補助機能を有する油路切換構造に関する。
従来より、ディーゼルエンジン等のエンジンの燃料噴射量をエンジン回転数に応じて制御する油圧ガバナ101が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
図10に示すように、該油圧ガバナ101は、ハウジング102と、該ハウジング102に内蔵されると共に図示せぬエンジンの燃料噴射装置へのガバナ出力軸170に連動連結するパワーピストン103と、スリーブ117内をスプール122が移動して前記パワーピストン103への作動油の油路を切り換えるコントロールバルブ105とを備える。そして、前記スプール122は、エンジン回転数によって変位するフライウェイト113と連動している。
図10に示すように、該油圧ガバナ101は、ハウジング102と、該ハウジング102に内蔵されると共に図示せぬエンジンの燃料噴射装置へのガバナ出力軸170に連動連結するパワーピストン103と、スリーブ117内をスプール122が移動して前記パワーピストン103への作動油の油路を切り換えるコントロールバルブ105とを備える。そして、前記スプール122は、エンジン回転数によって変位するフライウェイト113と連動している。
前記ハウジング102内には、前記パワーピストン103で摺動方向前後に仕切ることにより、第一油室114と第二油室115とが形成され、該第一油室114と第二油室115とは、それぞれ、前記スリーブ117に開口した第一ポート137と第二ポート118に連通されている。更に、このパワーピストン103では、前記第一油室114側における受圧面積の方が、第二油室115側における受圧面積よりも小さく設定されている。
このような構成において、エンジン負荷が大きいエンジン始動時には、前記第一ポート137と第二ポート118のいずれも、図示せぬ油圧ポンプからのポンプ油路144に連通されており、第一油室114と第二油室115内の作動油は略等しい高圧に設定される。
すると、前述の如く受圧面積は第一油室114側の方が小さいため、該第一油室114側からパワーピストン103が受ける押動力も小さいことから、該パワーピストン103は、この第一油室114側に移動し、燃料噴射量が増加してエンジン回転数が上昇する。
更に、エンジン始動後、エンジン負荷が減少してエンジン回転数が上昇すると、前記フライウェイト113が開いてコントロールバルブ105のスプール122が移動し、それに伴い、該スプール122に形成されたランド121が位置81から位置82まで移動する。これにより、第一ポート137はポンプ油路144と連通したままで、第二ポート118のみが低圧ポート140を介してドレン油路141に連通されるようになり、第一油室114内の作動油は高圧に保持される一方、第二油室115内の作動油は低圧に設定される。
すると、該第二油室115側からパワーピストン103が受ける押動力の方が小さくなり、該パワーピストン103は、この第二油室115側に移動し、燃料噴射量が減少してエンジン回転数も低下する。
このように、パワーピストン103を用いることにより、エンジン負荷に応じてエンジン回転数を増減させ、エンジンを平衡状態に復帰させることができる。この油圧ガバナ101を、エンジン始動の確実性が特に要求される非常発電用エンジンや、油圧ガバナの出力軸のトルクに余裕があまりない高出力エンジン等に適用することを目的として、始動補助機能を油圧ガバナ101に付与し、エンジン始動性を向上させる技術が知られている。
該技術では、始動補助機能を付与するために、例えば補助油圧ポンプ83が新たに設置される。該補助油圧ポンプ83によって、エンジン始動時に、既に前述の如く高圧に保持されている前記第一油室114と第二油室115内に高圧作動油を追加供給し、第一油室114と第二油室115内の作動油の油圧を更に上昇させる。
すると、その油圧上昇の分だけ、第一油室114側からの押動力と第二油室115側からの押動力との差が増大し、パワーピストン103は受圧面積の小さい第一油室114側に高速で移動して、エンジン始動に必要な所定量まで燃料噴射量を迅速に増加させることができ、エンジン始動性が著しく向上する。
しかしながら、前述の如く、エンジン始動時に補助油圧ポンプ等によって前記第一油室114と第二油室115に高圧作動油を追加供給する技術では、エンジン始動性は確かに向上するものの、補助油圧ポンプ等を新たに設ける必要があり、部品コストが高くなると共に、補助油圧ポンプ等のための設置空間が必要となり、油圧ガバナ内における他の装置の設置空間が小さくなって組立性やメンテナンス性が低下する、という問題があった。更に、前記第一油室114と第二油室115内の作動油の油圧を大きく上昇させるために、部品間の液密性や部品自体の耐久性も高める必要があり、なお一層、部品コストが高くなると共に組立性やメンテナンス性が低下する、という問題があった。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、エンジンの燃料噴射装置に連動連結するパワーピストンと、該パワーピストンにより仕切られる第一油室・第二油室と、該第一油室・第二油室にそれぞれ連通する第一ポート・第二ポートが開口されたスリーブ内をスプールのランドが移動して前記パワーピストンへの作動油の油路を切り換えるコントロールバルブとを備え、前記パワーピストンでは第二油室側の受圧面積よりも第一油室側の受圧面積を小さく設定し、該受圧面積の差により前記第一油室側にパワーピストンを移動して燃料噴射量を増加させる油圧ガバナにおいて、エンジン始動時に前記第一油室内の作動油の油圧を前記第二油室内の作動油の油圧よりも低く設定可能な始動補助機能を有する油路切換構造を設けたものである。
請求項2においては、前記油路切換構造では、前記第二ポートを高圧部側または低圧部側に切り換える第二ランドに加えて、前記第一ポートを高圧部側または低圧部側に切り換える第一ランドを設けることにより、前記ランドを構成し、該ランドにより、エンジン始動時には、前記第一ポート・第二ポートをそれぞれ低圧部側・高圧部側に切り換えるものである。
請求項3においては、前記油路切換構造では、前記第一ポートを高圧部に連通すると共に、該第一ポートと前記第一油室との間の油路に圧力切換バルブを介設し、該圧力切換バルブにより、エンジン始動時には、前記第一油室を低圧部側に連通させ、エンジン始動後に、前記高圧部内の作動油の油圧が所定値に達するか、あるいはエンジン回転数が所定値に達すると、前記第一油室を第一ポートを介して高圧部側に連通させるものである。
すなわち、請求項1においては、エンジンの燃料噴射装置に連動連結するパワーピストンと、該パワーピストンにより仕切られる第一油室・第二油室と、該第一油室・第二油室にそれぞれ連通する第一ポート・第二ポートが開口されたスリーブ内をスプールのランドが移動して前記パワーピストンへの作動油の油路を切り換えるコントロールバルブとを備え、前記パワーピストンでは第二油室側の受圧面積よりも第一油室側の受圧面積を小さく設定し、該受圧面積の差により前記第一油室側にパワーピストンを移動して燃料噴射量を増加させる油圧ガバナにおいて、エンジン始動時に前記第一油室内の作動油の油圧を前記第二油室内の作動油の油圧よりも低く設定可能な始動補助機能を有する油路切換構造を設けたものである。
請求項2においては、前記油路切換構造では、前記第二ポートを高圧部側または低圧部側に切り換える第二ランドに加えて、前記第一ポートを高圧部側または低圧部側に切り換える第一ランドを設けることにより、前記ランドを構成し、該ランドにより、エンジン始動時には、前記第一ポート・第二ポートをそれぞれ低圧部側・高圧部側に切り換えるものである。
請求項3においては、前記油路切換構造では、前記第一ポートを高圧部に連通すると共に、該第一ポートと前記第一油室との間の油路に圧力切換バルブを介設し、該圧力切換バルブにより、エンジン始動時には、前記第一油室を低圧部側に連通させ、エンジン始動後に、前記高圧部内の作動油の油圧が所定値に達するか、あるいはエンジン回転数が所定値に達すると、前記第一油室を第一ポートを介して高圧部側に連通させるものである。
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、エンジン始動時に第一油室と第二油室内の作動油の油圧を上昇させるための補助油圧ポンプ等を新たに設ける必要がなく、部品コストが低下すると共に、油圧ガバナ内における他の装置の設置空間が大きくなり、油圧ガバナの組立性やメンテナンス性が向上する。更に、前記第一油室と第二油室内の作動油の油圧上昇に備えて部品間の液密性や部品自体の耐久性を高めておく必要がなく、なお一層、部品コストが低下し、組立性やメンテナンス性も向上する。
請求項2により、従来のコントロールバルブや油路等の比較的簡単な変更だけで、前記油路切換構造を形成することができ、更なる部品コストの低下、組立性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項3により、圧力切換バルブを新たに設ける必要はあるものの、それ以外の構造は変更せずに済ますことができ、更なる部品コストの低下、組立性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
すなわち、請求項1により、エンジン始動時に第一油室と第二油室内の作動油の油圧を上昇させるための補助油圧ポンプ等を新たに設ける必要がなく、部品コストが低下すると共に、油圧ガバナ内における他の装置の設置空間が大きくなり、油圧ガバナの組立性やメンテナンス性が向上する。更に、前記第一油室と第二油室内の作動油の油圧上昇に備えて部品間の液密性や部品自体の耐久性を高めておく必要がなく、なお一層、部品コストが低下し、組立性やメンテナンス性も向上する。
請求項2により、従来のコントロールバルブや油路等の比較的簡単な変更だけで、前記油路切換構造を形成することができ、更なる部品コストの低下、組立性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項3により、圧力切換バルブを新たに設ける必要はあるものの、それ以外の構造は変更せずに済ますことができ、更なる部品コストの低下、組立性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図1の矢印Lで示す方向、矢印Uで示す方向を、それぞれ油圧ガバナ1の左方向、上方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等を説明する。
なお、図1の矢印Lで示す方向、矢印Uで示す方向を、それぞれ油圧ガバナ1の左方向、上方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等を説明する。
初めに、本発明に関わる油圧ガバナ1の全体構成について、図1により説明する。
該油圧ガバナ1はハウジング2を備え、該ハウジング2にパワーピストン3が内蔵されている。該パワーピストン3は、リンク機構68を介してガバナ出力軸70に連結され、該ガバナ出力軸70には、図示せぬ燃料噴射装置のコントロールラックに連動連結する出力レバー69が、揺動可能に取り付けられている。
該油圧ガバナ1はハウジング2を備え、該ハウジング2にパワーピストン3が内蔵されている。該パワーピストン3は、リンク機構68を介してガバナ出力軸70に連結され、該ガバナ出力軸70には、図示せぬ燃料噴射装置のコントロールラックに連動連結する出力レバー69が、揺動可能に取り付けられている。
そして、前記パワーピストン3により一対の油室14・15が仕切られ、該油室14・15は、いずれも前記ハウジング2内に形成されると共に、前記パワーピストン3の受圧面積は、上方側の第一油室14における受圧面積の方が、下方側の第二油室15における受圧面積よりも小さく設定されている。
更に、前記ハウジング2には、油圧ポンプ4が内蔵されている。該油圧ポンプ4は、互いに噛合する駆動ギア32と従動ギア33とを有するギアポンプであって、前記駆動ギア32には、図示せぬエンジンのクランク軸からの動力が伝達されると共に、前記従動ギア33は、ハウジング2に回転可能に挿入されたスリーブ17に一体的に形成されている。
該スリーブ17の上端には、フライウェイト13が回動可能に取り付けられている。該フライウェイト13の内端には、スプール22が連結され、該スプール22と前記スリーブ17とからコントロールバルブ5が構成される。
これにより、図示せぬエンジンが作動して前記駆動ギア32が回転し、該駆動ギア32に噛合する従動ギア33と一緒に前記スリーブ17が回転すると、フライウェイト13が遠心力によって変位し、その変位量に応じて、前記スプール22が上下方向に移動する。
すると、後述する作動油の油路切換構造84とその切換プロセスに従って、コントロールバルブ5が切り換えられ、作動油が、前記油圧ポンプ4からパワーピストン3に供給されたり、逆に、該パワーピストン3からタンク9に排出されることにより、パワーピストン3が上下方向に移動する。このようにしてパワーピストン3が上下動すると、リンク機構68を介してガバナ出力軸70が回動し、出力レバー69等を介して図示せぬ燃料噴射装置が作動し、該燃料噴射装置からの燃料噴射量が増減する。これにより、エンジン回転数が制御されてエンジンが平衡状態に復帰する。
また、前記ハウジング2には、コンペンセーティングピストン8が内蔵されている。該コンペンセーティングピストン8は、前記パワーピストン3に、連結ロッド16を介して連結されている。
このコンペンセーティングピストン8により一対の油室10・11が仕切られ、該油室10・11は、いずれも前記ハウジング2内に形成されると共に、低圧部であるタンク9に連通されている。このうちの下方側の第四油室11は、ドレン油路40を介して前記タンク9と直接連通されるのに対し、上方側の第三油室10とタンク9との間には、コンペンセータバルブとしてニードル弁12が介設されている。
該ニードル弁12と前記第三油室10との間に設けた補償油路20の途中部は、前記コントロールバルブ5のスリーブ17の挿入孔34に連通されており、前記第三油室10内の作動油の油圧が、補償油路20を介してスプール22の下端側に作用するようにしている。
このような構成において、平衡状態からエンジン回転数が上昇し、フライウェイト13が開いてスプール22が上方に移動すると、後述の第二油室低圧モードのように、パワーピストン3に連結されるコンペンセーティングピストン8は下方に移動する。すると、前記第三油室10の上下高さが大きくなって容積が増加し、補償油路20内が負圧となって、前記スプール22のそれ以上の上方への移動、すなわち、それ以上の燃料減少方向への移動が抑制される。
逆に、平衡状態からエンジン回転数が低下し、フライウェイト13が閉じてコントロールバルブ5のスプール22が下方に移動すると、後述の第一油室低圧モード・両油室高圧モードのように、コンペンセーティングピストン8は上方に移動し、前記第三油室10の上下高さが小さくなって容積が減少し、補償油路20内が正圧となって、スプール22のそれ以上の下方への移動、すなわち、それ以上の燃料増加方向への移動が抑制される。
このようにして、パワーピストン3のオーバーシュートが抑制され、エンジン回転数の変化に対する燃料噴射量の変化の応答速度が速くなり、ハンチングが防止される。そして、この際の補償油路20内の圧力調整は、前記ニードル弁12の開度調整により行うようにしており、該開度調整により、エンジン回転数の整定時間を調節することができる。
また、前記ハウジング2には、エンジン回転数設定用のコントロールレバー25が揺動可能に取り付けられ、該コントロールレバー25には、リンク機構26を介して圧縮バネ27が連結され、該圧縮バネ27によって、前記コントロールバルブ5のスプール22には、該スプール22を下方、すなわち燃料増加方向に押圧する弾性力が常時作用している。そして、該弾性力は前記コントロールレバー25の操作により変化することから、該コントロールレバー25を操作することにより、スプール22を移動させてエンジン回転数を変更できるようにしている。
なお、以下の説明で取り上げる図において、油路中に記載した細実線から成る矢印線は、高圧作動油が流れる経路と方向を示し、細破線から成る矢印線は、低圧作動油が流れる経路と方向を示す。
なお、以下の説明で取り上げる図において、油路中に記載した細実線から成る矢印線は、高圧作動油が流れる経路と方向を示し、細破線から成る矢印線は、低圧作動油が流れる経路と方向を示す。
次に、前記パワーピストン3に送る作動油の油路切換構造84とその切換プロセスについて、図1、図2により説明する。
図1に示すように、該油路切換構造84においては、前記コントロールバルブ5のスリーブ17の外周に、複数の環状溝45・46・47・48・49が形成され、該複数の環状溝45・46・47・48・49のそれぞれの底部から、スリーブ17の内周面部18にかけて、複数のポート35・36・37・38・39が半径方向に延出して形成されている。
図1に示すように、該油路切換構造84においては、前記コントロールバルブ5のスリーブ17の外周に、複数の環状溝45・46・47・48・49が形成され、該複数の環状溝45・46・47・48・49のそれぞれの底部から、スリーブ17の内周面部18にかけて、複数のポート35・36・37・38・39が半径方向に延出して形成されている。
該ポート35・36・37・38・39は、前記スリーブ17に上から順に配置されており、最上位置の上低圧ポート35と最下位置の下低圧ポート39とは、それぞれ環状溝45と環状溝49を介して、共通のドレン油路41に連通され、該ドレン油路41は低圧部である前記タンク9に連通されており、上下の低圧ポート35・39を介して作動油がタンク9に常時排出されるようにしている。
前記高圧ポート37は、上下略中央位置に配置されると共に、環状溝47を介してポンプ油路44に連通され、該ポンプ油路44には、前記油圧ポンプ4の吐出口が連通されており、該油圧ポンプ4からの高圧作動油を前記高圧ポート37に常時供給できるようにしている。更に、該高圧ポート37を挟んで上下に前記第一ポート36と第二ポート38が配置され、該第一ポート36と第二ポート38は、それぞれ、環状溝46と環状溝48を介して、前記第一油室14に連通する第一油路23と、前記第二油室15に連通する第二油路24とに接続されている。
このうちの第一ポート36と第二ポート38との間隔よりも大きい間隔をあけるようにして、第一ランド6と第二ランド7が、前記スプール22の外周に径を太くして設けられている。該第一ランド6と第二ランド7は、いずれも前記スリーブ17の内周面部18に摺接されており、第一ランド6の外周面部6aまたは第二ランド7の外周面部7aによって、各ポート35・36・37・38を開閉できるようにしている。
そして、前記スリーブ17とスプール22との間の隙間のうち、前記第一ランド6よりも上方、第一ランド6と第二ランド7との間、第二ランド7よりも下方には、それぞれ、環状断面の上低圧通路28、高圧通路29、下低圧通路30が形成されている。このうちの上下の低圧通路28・30には、それぞれ、上下の前記低圧ポート35・39が開口されており、該低圧通路28・30はタンク9に常時連通される。一方、前記高圧通路29には、前記高圧ポート37が開口されており、高圧通路29は油圧ポンプ4の吐出口に常時連通されている。
また、このような油路切換構造84の切換プロセスについて説明する。
図2(a)に示すように、エンジン始動時には、第一ランド6は、前記第一ポート36と高圧ポート37との間、第二ランド7は、第二ポート38と下低圧ポート39との間に位置している。つまり、第一ポート36は、第一ランド6よりも上方にあって低圧部側である前記上低圧通路28に開口されており、この第一ポート36を介して、第一油室14がタンク9に連通し、第一油室14内の作動油は低圧となる。一方、前記第二ポート38は、第一ランド6と第二ランド7との間にあって高圧部側である前記高圧通路29に開口されており、この第二ポート38を介して、第二油室15が油圧ポンプ4に連通し、第二油室15内の作動油は高圧となる。
図2(a)に示すように、エンジン始動時には、第一ランド6は、前記第一ポート36と高圧ポート37との間、第二ランド7は、第二ポート38と下低圧ポート39との間に位置している。つまり、第一ポート36は、第一ランド6よりも上方にあって低圧部側である前記上低圧通路28に開口されており、この第一ポート36を介して、第一油室14がタンク9に連通し、第一油室14内の作動油は低圧となる。一方、前記第二ポート38は、第一ランド6と第二ランド7との間にあって高圧部側である前記高圧通路29に開口されており、この第二ポート38を介して、第二油室15が油圧ポンプ4に連通し、第二油室15内の作動油は高圧となる。
従って、パワーピストン3の第一油室14内の作動油の油圧は、第二油室15内の作動油の油圧よりも低くなり(以下、「第一油室低圧モード」とする)、この油圧差が前述した受圧面積差に加わった結果、第一油室14側からの押動力と第二油室15側からの押動力との差が増大される。これにより、パワーピストン3は第一油室14側に高速移動し、エンジン始動に必要な所定量まで燃料噴射量を迅速に増加させることができ、エンジン始動性が著しく向上する。
図2(b)に示すように、エンジン始動後からエンジン回転数が上昇していくと、前記フライウェイト13が開いてスプール22が上方に移動し、第一ランド6は、前記上低圧ポート35と第一ポート36との間に移動するが、第二ランド7は、第二ポート38と下低圧ポート39との間に位置したままとなる。つまり、第一ポート36、第二ポート38のいずれも、第一ランド6と第二ランド7との間にあって前記高圧通路29に開口されており、第一油室14・第二油室15内の作動油は、略等しい高圧となる(以下、「両油室高圧モード」とする)。
ここで、前述の如く受圧面積は第一油室14側の方が小さいため、該第一油室14側からパワーピストン3が受ける押動力は小さくなり、該パワーピストン3は、この第一油室14側に移動し、燃料噴射量が増加してエンジン回転数が上昇する。ただし、前述したエンジン始動時とは異なり、第一油室14と第二油室15間の油圧差がないため、パワーピストン3は、第一油室14側にエンジン始動時ほど高速では移動できない。
図2(c)に示すように、更にエンジン回転数が上昇すると、第一ランド6は、前記上低圧ポート35と第一ポート36との間に位置したままで、第二ランド7のみが、高圧ポート37と第二ポート38との間に移動する。つまり、第一ポート36は、第一ランド6と第二ランド7との間にあって前記高圧通路29に開口されており、この第一ポート36を介して、第一油室14が油圧ポンプ4に連通し、第一油室14内の作動油は高圧となる。一方、第二ポート38は、第二ランド7よりも下方にあって前記下低圧通路30に開口されており、この第二ポート38を介して、第二油室15がタンク9に連通し、第二油室15内の作動油は低圧となる。
従って、パワーピストン3の第二油室15内の作動油の油圧は、第一油室14内の作動油の油圧よりも低くなり(以下、「第二油室低圧モード」とする)、この油圧差によって、第二油室15側からパワーピストン3が受ける押動力も小さくなり、該パワーピストン3は、この第二油室15側に移動し、燃料噴射量が減少してエンジン回転数が低下する。
すなわち、エンジンの燃料噴射装置に連動連結するパワーピストン3と、該パワーピストン3により仕切られる第一油室14・第二油室15と、該第一油室14・第二油室15にそれぞれ連通する第一ポート36・第二ポート38が開口されたスリーブ17内をスプール22のランド6・7が移動して前記パワーピストン3への作動油の油路を切り換えるコントロールバルブ5とを備え、前記パワーピストン3では第二油室15側の受圧面積よりも第一油室14側の受圧面積を小さく設定し、該受圧面積の差により前記第一油室14側にパワーピストン3を移動して燃料噴射量を増加させる油圧ガバナ1において、エンジン始動時に前記第一油室14内の作動油の油圧を前記第二油室15内の作動油の油圧よりも低く設定可能な始動補助機能を有する油路切換構造84を設けたので、エンジン始動時に第一油室14と第二油室15内の作動油の油圧を上昇させるための補助油圧ポンプ83等を新たに設ける必要がなく、部品コストが低下すると共に、油圧ガバナ1内における他の装置の設置空間が大きくなり、油圧ガバナ1の組立性やメンテナンス性が向上する。更に、前記第一油室14と第二油室15内の作動油の油圧上昇に備えて部品間の液密性や部品自体の耐久性を高めておく必要がなく、なお一層、部品コストが低下し、組立性やメンテナンス性も向上する。
更に、前記油路切換構造84では、前記第二ポート38を高圧部である高圧通路29側または低圧部である下低圧通路30側に切り換える第二ランド7に加えて、前記第一ポート36を高圧部である高圧通路29側または低圧部である上低圧通路28側に切り換える第一ランド6を設けることにより、前記ランド6・7を構成し、該ランド6・7により、エンジン始動時には、前記第一ポート36・第二ポート38をそれぞれ上低圧通路28側・高圧通路29側に切り換えるので、従来のコントロールバルブ105や油路であるドレン油路141等の比較的簡単な変更だけで、前記油路切換構造を形成することができ、更なる部品コストの低下、組立性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
なお、以下に前記油路切換構造84の各種別形態について説明するが、異なる構成を中心に説明し、同等の構成のものは、同じ符号で表記すると共に、その説明は簡略化している。
次に、前記油路切換構造84の別形態である油路切換構造84Aについて、図3、図4により説明する。
該油路切換構造84Aは、前記油路切換構造84における両油室高圧モードを省くことにより、パワーピストン3が第一油室14側に高速移動する前記第一油室低圧モードの占める割合を拡大し、エンジン始動性を更に向上させたものである。
該油路切換構造84Aは、前記油路切換構造84における両油室高圧モードを省くことにより、パワーピストン3が第一油室14側に高速移動する前記第一油室低圧モードの占める割合を拡大し、エンジン始動性を更に向上させたものである。
図3に示すように、油圧ガバナ1Aの油路切換構造84Aにおいては、前記油路切換構造84と同様に、コントロールバルブ5Aのスリーブ17Aの外周には複数の環状溝45・46A・47・48A・49が形成され、該複数の環状溝45・46A・47・48A・49のそれぞれの底部から、スリーブ17Aの内周面部18Aにかけて、複数のポート35・36A・37・38A・39が半径方向に延出して形成されている。
そして、このうちの第一ポート36Aと第二ポート38Aは、その間隔が前記油路切換構造84の場合よりも広がり、前記第一ランド6と第二ランド7との間隔に略等しく設定されている。これにより、第一ポート36Aと第二ポート38Aが、第一ランド6と第二ランド7との間に形成された前記高圧通路29内に、同時には開口されないようにしている。
また、このような油路切換構造84Aの切換プロセスについて説明する。
図4(a)に示すように、エンジン始動時には、前記油路切換構造84と同様に、第一ランド6は、前記第一ポート36Aと高圧ポート37との間、第二ランド7は、第二ポート38Aと下低圧ポート39との間に位置しており、第一ポート36Aが前記上低圧通路28に開口されて第一油室14内の作動油が低圧となる一方、第二ポート38Aが前記高圧通路29に開口されて第二油室15内の作動油が高圧となる。
図4(a)に示すように、エンジン始動時には、前記油路切換構造84と同様に、第一ランド6は、前記第一ポート36Aと高圧ポート37との間、第二ランド7は、第二ポート38Aと下低圧ポート39との間に位置しており、第一ポート36Aが前記上低圧通路28に開口されて第一油室14内の作動油が低圧となる一方、第二ポート38Aが前記高圧通路29に開口されて第二油室15内の作動油が高圧となる。
従って、前記第一油室低圧モードでエンジンが始動して、パワーピストン3が第一油室14側に高速移動するため、エンジン始動に必要な所定量まで燃料噴射量を迅速に増加させることができ、エンジン始動性が著しく向上する。
図4(b)に示すように、エンジン始動後からエンジン回転数が上昇すると、第一ランド6は前記上低圧ポート35と第一ポート36Aとの間に向かって、第二ランド7は高圧ポート37と第二ポート38Aとの間に向かって、同時に移動する。すると、移動途中で、第一ランド6と第二ランド7が、それぞれ第一ポート36Aと第二ポート38Aを閉じた後は、第一ポート36Aが前記高圧通路29に開口されて第一油室14内の作動油が高圧となる一方、第二ポート38Aが前記下低圧通路30に開口されて第一油室14内の作動油が低圧となる。
従って、エンジン回転数が上昇すると前記第二油室低圧モードとなり、パワーピストン3が第二油室15側に移動するため、燃料噴射量が減少してエンジン回転数が低下する。
次に、以上述べた油路切換構造84・84Aとは異なる油路切換構造284について、図5乃至図8により説明する。
前記油路切換構造84・84Aでは、エンジン始動時に第一油室14内の作動油の油圧を第二油室15内の作動油の油圧よりも低く設定するため、第一ランド6を新たに設け、エンジン始動時には、該第一ランド6によって、第一油室14に連通する第一ポート36・36Aを上低圧通路28に開口させている。一方、ここで説明する油路切換構造284では、高圧部に常時連通している前記第一油路223の途中部に油圧駆動式の圧力切換バルブ50を介設し、エンジン始動時には、該圧力切換バルブ50により、第一油路223の途中部を低圧部であるタンク9に連通させるようにしている。
前記油路切換構造84・84Aでは、エンジン始動時に第一油室14内の作動油の油圧を第二油室15内の作動油の油圧よりも低く設定するため、第一ランド6を新たに設け、エンジン始動時には、該第一ランド6によって、第一油室14に連通する第一ポート36・36Aを上低圧通路28に開口させている。一方、ここで説明する油路切換構造284では、高圧部に常時連通している前記第一油路223の途中部に油圧駆動式の圧力切換バルブ50を介設し、エンジン始動時には、該圧力切換バルブ50により、第一油路223の途中部を低圧部であるタンク9に連通させるようにしている。
図5に示すように、この油路切換構造284を設ける油圧ガバナ201は、前記油圧ガバナ1・1Aと同様に、ハウジング202を備え、該ハウジング202にパワーピストン3が内蔵されている。そして、該パワーピストン3により一対の油室14・15が仕切られると共に、該パワーピストン3の受圧面積は、上方側の第一油室14における受圧面積の方が、下方側の第二油室15における受圧面積よりも小さく設定されている。
このパワーピストン3を制御するコントロールバルブ205においては、前記油圧ガバナ1・1Aとは異なり、スプール222では、前記第一ランド6が省略されて単一のランド207のみが設けられると共に、スリーブ217では、前記上低圧ポート35と高圧ポート37が省略されており、従来の前記油圧ガバナ101のコントロールバルブ105と略同一構造となっている。
つまり、コントロールバルブ205のスリーブ217の外周に、複数の環状溝246・248・249が形成され、該複数の環状溝246・248・249のそれぞれの底部から、スリーブ217の内周面部218にかけて、複数のポート236・238・239が半径方向に延出して形成されており、各ポート236・238・239は、前記ランド207の外周面部207aによって開閉できるようにしている。
該ポート236・238・239は、前記スリーブ217に上から順に配置され、このうちの最上位置の第一ポート236は、環状溝246を介してポンプ油路244に連通され、該ポンプ油路244には、前記油圧ポンプ4の吐出口が連通されると共に、該第一ポート236は、途中部に圧力切換バルブ50を介設した第一油路223に連通されており、この第一ポート236を介して、油圧ポンプ4からの高圧作動油を第一油路223に常時供給できるようにしている。なお、該第一油路223は、スプール側油路223aと第一油室側油路223bとから構成されており、該スプール側油路223aと第一油室側油路223bとの間に、前記圧力切換バルブ50が介設されている。
上下中央位置の前記第二ポート238は、第二油路24に連通されている。最下位置の前記低圧ポート239は、環状溝249を介してドレン油路241に連通され、該ドレン油路241は低圧部である前記タンク9に連通されており、低圧ポート239を介して、作動油がタンク9に排出されるようにしている。
そして、前記スリーブ217とスプール222との間の隙間のうち、前記ランド207よりも上方と、ランド207よりも下方とには、それぞれ、環状断面の高圧通路229と低圧通路230とが形成されている。このうちの高圧通路229には、前記第一ポート236が常時開口されており、高圧通路229は、前記ポンプ油路244を介して油圧ポンプ4の吐出口に連通されている。一方、前記低圧通路230には、前記低圧ポート239が常時開口されており、低圧通路230は、ドレン油路241を介してタンク9に連通されている。
ここで、前記圧力切換バルブ50について説明する。
該圧力切換バルブ50は、弁体51と、該弁体51を下方に向けて摺動可能に付勢するバネ等の弾性体52と、該弾性体52及び前記弁体51を収納するシリンダ58とから構成され、前記弁体51を挟んで上下に上シリンダ室53と下シリンダ室54が形成されている。
該圧力切換バルブ50は、弁体51と、該弁体51を下方に向けて摺動可能に付勢するバネ等の弾性体52と、該弾性体52及び前記弁体51を収納するシリンダ58とから構成され、前記弁体51を挟んで上下に上シリンダ室53と下シリンダ室54が形成されている。
前記シリンダ58の上部は、ドレン開口55を介して前記タンク9に連通されると共に、シリンダ58の下部には下開口56が形成され、シリンダ58の内周側面には横開口57が形成されている。このうちの下開口56に、前記スプール側油路223aが連通されると共に、該下開口56は、前記弾性体52によって付勢される弁体51の先端部により、通常は閉塞されている。そして、前記横開口57には、前記第一油室側油路223bが連通されている。
また、このような油路切換構造284の切換プロセスについて説明する。
図6に示すように、エンジン始動時には、ランド207は、前記第二ポート238と低圧ポート239との間に位置している。つまり、第一ポート236、第二ポート238のいずれも、ランド207よりも上方にあって前記高圧通路229に開口されており、高圧作動油が、第一ポート236と第二ポート238を介して、それぞれ第一油路223と第二油路24に供給される。
図6に示すように、エンジン始動時には、ランド207は、前記第二ポート238と低圧ポート239との間に位置している。つまり、第一ポート236、第二ポート238のいずれも、ランド207よりも上方にあって前記高圧通路229に開口されており、高圧作動油が、第一ポート236と第二ポート238を介して、それぞれ第一油路223と第二油路24に供給される。
該第二油路24に供給された高圧作動油は、そのまま前記第二油室15に供給され、第二油室15内の作動油は高圧となる。しかしながら、前記第一油路223に供給された高圧作動油は、スプール側油路223a内に流入するものの、下開口56が前述のように弁体51によって閉塞されて「閉」状態となっているため、高圧作動油の流れが遮断される。
この際、弁体51の上端は横開口57の上端よりも下方にあり、該横開口57が弁体51によっては閉塞されずに「開」状態となっているため、前記第一油室側油路223bが、横開口57から上シリンダ室53とドレン開口55を介して前記タンク9に連通し、第一油室14内の作動油は低圧となる。
従って、前記第一油室低圧モードでエンジンが始動して、パワーピストン3が第一油室14側に高速移動するため、エンジン始動に必要な所定量まで燃料噴射量を迅速に増加させることができ、エンジン始動性が著しく向上する。
図7に示すように、エンジン始動後からエンジン回転数が上昇していくと、前記フライウェイト13が開いてスプール222が上方に移動するものの、ランド207は、前記第二ポート238と低圧ポート239との間に位置したままである。つまり、第一ポート236、第二ポート238のいずれも、ランド207よりも上方にあって前記高圧通路229に開口されたままであり、高圧作動油が、第一ポート236と第二ポート238を介して、それぞれ第一油路223と第二油路24に供給される。
ここで、エンジン回転数の上昇に伴って油圧ポンプ4の駆動ギア32の回転数が上昇し、油圧ポンプ4から供給される高圧作動油の圧力、つまり、高圧部である高圧通路229内の作動油の油圧が所定値に達すると、前記第一油路223のスプール側油路223a内に流入した高圧作動油の圧力によって、前記弁体51が弾性体52の弾性力に抗して押し上げられる。
この際、弁体51の下端が横開口57の下端よりも上方にあり、下開口56、横開口57のいずれも「開」状態となっているため、前記第一油室側油路223bが、横開口57から下シリンダ室54、下開口56、スプール側油路223aを介して、前記高圧通路229に連通され、第一油室14内の作動油が高圧となる。一方、第二油路24に供給される高圧作動油は、そのまま前記第二油室15に供給され、第二油室15内の作動油も高圧となる。
従って、エンジン始動後からエンジン回転数が上昇して高圧通路229内の作動油の油圧が所定値に達すると、第一油室14が第一ポート236を介して高圧通路229に連通し、前記両油室高圧モードとなり、パワーピストン3は、この第一油室14側に移動し、燃料噴射量が増加してエンジン回転数が上昇する。ただし、前述したエンジン始動時とは異なり、第一油室14と第二油室15間の油圧差がないため、パワーピストン3は、第一油室14側にエンジン始動時ほど高速では移動できない。
図8に示すように、更にエンジン回転数が上昇すると、前記フライウェイト13が開いてスプール22が更に上方に移動し、ランド207は、前記第一ポート236と第二ポート238との間に移動する。
つまり、第一ポート236は、ランド207よりも上方にあって前記高圧通路229に開口されたままであり、この際も、エンジン回転数の上昇に伴って増加する高圧通路229内の作動油の油圧によって、前記弁体51が押し上げられ、弁体51の下端が横開口57の下端よりも上方になっている。これにより、下開口56、横開口57のいずれも「開」状態となり、前記第一油室側油路223bが、横開口57から下シリンダ室54、下開口56、スプール側油路223aを介して高圧通路229に開口され、第一油室14内の作動油が高圧となっている。
一方、前記第二ポート238は、ランド207よりも下方にあって前記低圧通路230に開口されており、第二油室15が、第二油路24から、環状溝248、第二ポート238、低圧通路230、低圧ポート239、環状溝249、ドレン油路241を介してタンク9に連通し、第二油室15内の作動油は低圧となる。
従って、更にエンジン回転数が上昇すると、前記第二油室低圧モードとなり、パワーピストン3が第二油室15側に移動するため、燃料噴射量が減少してエンジン回転数が低下する。
次に、前記油路切換構造284の別形態である油路切換構造284Aについて、図9により説明する。
該油路切換構造284Aは、前記油路切換構造284における油圧駆動式の圧力切換バルブ50の代わりに、電磁駆動式の圧力切換バルブ50Aを用いることにより、油路切換の応答性を高めると共に、適用するエンジン毎に油路切換時のエンジン回転数等の条件を調整可能として、エンジン始動性を更に向上させたものである。
該油路切換構造284Aは、前記油路切換構造284における油圧駆動式の圧力切換バルブ50の代わりに、電磁駆動式の圧力切換バルブ50Aを用いることにより、油路切換の応答性を高めると共に、適用するエンジン毎に油路切換時のエンジン回転数等の条件を調整可能として、エンジン始動性を更に向上させたものである。
この油路切換構造284Aを設ける油圧ガバナ201Aは、圧力切換バルブ50Aと、該圧力切換バルブ50Aの制御機構59とを除き、前記油圧ガバナ201の構成とは略同一である。つまり、油圧ガバナ201Aは、前記油圧ガバナ201と同様に、ハウジング202を備え、該ハウジング202にパワーピストン3が内蔵され、該パワーピストン3により一対の油室14・15が仕切られると共に、該パワーピストン3の受圧面積は、上方側の第一油室14における受圧面積の方が、下方側の第二油室15における受圧面積よりも小さく設定されている。
更に、前記パワーピストン3を制御するコントロールバルブ205を備え、該コントロールバルブ205において、スプール222には、単一のランド207が設けられると共に、スリーブ217には、第一ポート236、第二ポート238、低圧ポート239が形成されている。
そして、前記制御機構59は、前記圧力切換バルブ50Aに接続され該圧力切換バルブ50Aに経路信号を送信するコントローラ60と、該コントローラ60に回転数信号を送信する回転センサ61とから構成される。該回転センサ61のセンサ部61aは、前記フライウェイト13を支持する支持台219の外周に当接されると共に、該支持台219は、図示せぬエンジンと同期回転するスリーブ217の上部に外嵌固定されている。
前記圧力切換バルブ50A内には、第一油室側油路223bを低圧部である前記タンク9に連通する低圧作動油経路62と、第一油室側油路223bを高圧部である前記高圧通路229に連通する高圧作動油経路63とが形成されており、該高圧作動油経路63と前記低圧作動油経路62との間は、前記コントローラ60からの経路信号に基づいて切換可能となっている。
また、このような油路切換構造284Aの切換プロセスについて説明する。
エンジン始動時には、ランド207は位置281にあって、前記第二ポート238と低圧ポート239との間に位置している。つまり、第一ポート236、第二ポート238のいずれも、ランド207よりも上方にあって前記高圧通路229に開口されており、高圧作動油が、第一ポート236と第二ポート238を介して、それぞれ第一油路223と第二油路24に供給される。
エンジン始動時には、ランド207は位置281にあって、前記第二ポート238と低圧ポート239との間に位置している。つまり、第一ポート236、第二ポート238のいずれも、ランド207よりも上方にあって前記高圧通路229に開口されており、高圧作動油が、第一ポート236と第二ポート238を介して、それぞれ第一油路223と第二油路24に供給される。
該第二油路24に供給された高圧作動油は、そのまま前記第二油室15に供給され、第二油室15内の作動油は高圧となる。この際、回転センサ61により検知されたエンジン回転数は所定値未満であって、コントローラ60から圧力切換バルブ50Aには前記低圧作動油経路62を選択する経路信号が送信されるため、前記第一油路223に供給された高圧作動油はスプール側油路223a内に流入するものの、その流れは圧力切換バルブ50Aによって遮断される。代わりに、第一油室側油路223bが低圧作動油経路62を介してタンク9に連通し、第一油室14内の作動油は低圧となる。
従って、前記第一油室低圧モードでエンジンが始動して、パワーピストン3が第一油室14側に高速移動するため、エンジン始動に必要な所定量まで燃料噴射量を迅速に増加させることができ、エンジン始動性が著しく向上する。
更に、エンジン始動後からエンジン回転数が上昇して、ランド207が位置282まで移動しても、該ランド207は前記第二ポート238と低圧ポート239との間に位置したままである。つまり、前記第一ポート236、第二ポート238のいずれも前記高圧通路229に開口されており、高圧作動油が、第一ポート236と第二ポート238を介して、それぞれ第一油路223と第二油路24に供給される。
該第二油路24に供給された高圧作動油は、そのまま前記第二油室15に供給され、第二油室15内の作動油は高圧となる。同時に、エンジン回転数の上昇に伴って、回転センサ61が検知したエンジン回転数が所定値に達し、コントローラ60から圧力切換バルブ50Aに、前記高圧作動油経路63を選択する経路信号が送信されるため、前記第一油路223に供給された高圧作動油は、スプール側油路223aから高圧作動油経路63を介して第一油室側油路223bに供給され、第一油室14内の作動油も高圧となる。
従って、エンジン始動後からエンジン回転数が上昇して所定値に達すると、第一油室14が第一ポート236を介して高圧通路229に連通し、前記両油室高圧モードとなり、パワーピストン3は、この第一油室14側に移動し、燃料噴射量が増加してエンジン回転数が上昇する。ただし、パワーピストン3は、エンジン始動時ほど高速では移動できない。
更にエンジン回転数が上昇して、ランド207が位置283まで移動すると、ランド207は、前記第一ポート236と第二ポート238との間に移動する。つまり、第一ポート236は前記高圧通路229に開口されると共に、前記高圧作動油経路63も選択されたままであり、前記第一油室側油路223bが、高圧作動油経路63からスプール側油路223aを介して高圧通路229に連通されており、第一油室14内の作動油は高圧のままである。
一方、前記第二ポート238は前記低圧通路230に開口されており、第二油室15が、第二油路24から低圧通路230等を介してタンク9に連通し、第二油室15内の作動油は低圧となる。
従って、更にエンジン回転数が上昇すると、前記第二油室低圧モードとなり、パワーピストン3が第二油室15側に移動するため、燃料噴射量が減少してエンジン回転数が低下する。
すなわち、以上のような構成から成る前記油路切換構造284・284Aでは、前記第一ポート236を高圧部である高圧通路229に連通すると共に、該第一ポート236と前記第一油室14との間の油路である第一油路223に圧力切換バルブ50・50Aを介設し、該圧力切換バルブ50・50Aにより、エンジン始動時には、前記第一油室14を低圧部であるタンク9側に連通させ、エンジン始動後に、前記高圧通路229内の作動油の油圧が所定値に達するか、あるいはエンジン回転数が所定値に達すると、前記第一油室14を第一ポート236を介して高圧通路229側に連通させるので、圧力切換バルブ50・50Aを新たに設ける必要はあるものの、それ以外の構造は変更せずに済ますことができ、更なる部品コストの低下、組立性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
本発明は、エンジンの燃料噴射装置に連動連結するパワーピストンと、該パワーピストンにより仕切られる第一油室・第二油室と、該第一油室・第二油室にそれぞれ連通する第一ポート・第二ポートが開口されたスリーブ内をスプールのランドが移動して前記パワーピストンへの作動油の油路を切り換えるコントロールバルブとを備え、前記パワーピストンでは第二油室側の受圧面積よりも第一油室側の受圧面積を小さく設定し、該受圧面積の差により前記第一油室側にパワーピストンを移動して燃料噴射量を増加させる、全ての油圧ガバナに適用することができる。
1・1A・201・201A 油圧ガバナ
5・5A・205 コントロールバルブ
6 ランド・第一ランド
7 ランド・第二ランド
9 タンク(低圧部)
13 パワーピストン
14 第一油室
15 第二油室
17・217 スリーブ
22・222 スプール
28 上低圧通路(低圧部)
29・229 高圧通路(高圧部)
30 下低圧通路(低圧部)
36・36A・236 第一ポート
38・38A・238 第二ポート
50・50A 圧力切換バルブ
84・84A・284・284A 油路切換構造
207 ランド
223 第一油路(油路)
5・5A・205 コントロールバルブ
6 ランド・第一ランド
7 ランド・第二ランド
9 タンク(低圧部)
13 パワーピストン
14 第一油室
15 第二油室
17・217 スリーブ
22・222 スプール
28 上低圧通路(低圧部)
29・229 高圧通路(高圧部)
30 下低圧通路(低圧部)
36・36A・236 第一ポート
38・38A・238 第二ポート
50・50A 圧力切換バルブ
84・84A・284・284A 油路切換構造
207 ランド
223 第一油路(油路)
Claims (3)
- エンジンの燃料噴射装置に連動連結するパワーピストンと、該パワーピストンにより仕切られる第一油室・第二油室と、該第一油室・第二油室にそれぞれ連通する第一ポート・第二ポートが開口されたスリーブ内をスプールのランドが移動して前記パワーピストンへの作動油の油路を切り換えるコントロールバルブとを備え、前記パワーピストンでは第二油室側の受圧面積よりも第一油室側の受圧面積を小さく設定し、該受圧面積の差により前記第一油室側にパワーピストンを移動して燃料噴射量を増加させる油圧ガバナにおいて、エンジン始動時に前記第一油室内の作動油の油圧を前記第二油室内の作動油の油圧よりも低く設定可能な始動補助機能を有する油路切換構造を設けたことを特徴とする油圧ガバナ。
- 前記油路切換構造では、前記第二ポートを高圧部側または低圧部側に切り換える第二ランドに加えて、前記第一ポートを高圧部側または低圧部側に切り換える第一ランドを設けることにより、前記ランドを構成し、該ランドにより、エンジン始動時には、前記第一ポート・第二ポートをそれぞれ低圧部側・高圧部側に切り換えることを特徴とする請求項1に記載の油圧ガバナ。
- 前記油路切換構造では、前記第一ポートを高圧部に連通すると共に、該第一ポートと前記第一油室との間の油路に圧力切換バルブを介設し、該圧力切換バルブにより、エンジン始動時には、前記第一油室を低圧部側に連通させ、エンジン始動後に、前記高圧部内の作動油の油圧が所定値に達するか、あるいはエンジン回転数が所定値に達すると、前記第一油室を第一ポートを介して高圧部側に連通させることを特徴とする請求項1に記載の油圧ガバナ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010066592A JP2011196335A (ja) | 2010-03-23 | 2010-03-23 | 油圧ガバナ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010066592A JP2011196335A (ja) | 2010-03-23 | 2010-03-23 | 油圧ガバナ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011196335A true JP2011196335A (ja) | 2011-10-06 |
Family
ID=44874851
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010066592A Pending JP2011196335A (ja) | 2010-03-23 | 2010-03-23 | 油圧ガバナ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2011196335A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014190181A (ja) * | 2013-03-26 | 2014-10-06 | Yanmar Co Ltd | 電子油圧ガバナ |
JP2015190362A (ja) * | 2014-03-28 | 2015-11-02 | ヤンマー株式会社 | 油圧ガバナのリンク機構組立体および油圧ガバナのリンク機構の組付け方法 |
CN117329003A (zh) * | 2023-10-31 | 2024-01-02 | 燕山大学 | 双喷嘴子母阀控制的高灵敏快响应调速系统 |
-
2010
- 2010-03-23 JP JP2010066592A patent/JP2011196335A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014190181A (ja) * | 2013-03-26 | 2014-10-06 | Yanmar Co Ltd | 電子油圧ガバナ |
JP2015190362A (ja) * | 2014-03-28 | 2015-11-02 | ヤンマー株式会社 | 油圧ガバナのリンク機構組立体および油圧ガバナのリンク機構の組付け方法 |
CN117329003A (zh) * | 2023-10-31 | 2024-01-02 | 燕山大学 | 双喷嘴子母阀控制的高灵敏快响应调速系统 |
CN117329003B (zh) * | 2023-10-31 | 2024-05-07 | 燕山大学 | 双喷嘴子母阀控制的高灵敏快响应调速系统 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US9845738B2 (en) | Variable compression ratio piston system | |
CN101842577B (zh) | 具有共轨增压器的发动机及方法 | |
JP6167004B2 (ja) | コントロール弁 | |
EP2093410B1 (en) | A fuel injector with an improved valve control arrangement | |
CN102667261B (zh) | 能够改善制动的液压传动装置 | |
KR20090042934A (ko) | 콘크리트 믹서 드럼 구동 장치 | |
WO2008041576A1 (fr) | Turbocompresseur variable | |
CN102812232A (zh) | 用于内燃机的高压燃料喷射阀 | |
WO2008041577A1 (fr) | Turbocompresseur variable et procédé d'entraînement de ce dernier | |
CN108545612B (zh) | 一种闭式系统集成切换阀及控制方法 | |
US20120097022A1 (en) | Pump unit | |
JP2011196335A (ja) | 油圧ガバナ | |
KR101158631B1 (ko) | 2중 연료분사밸브 | |
JPH04351384A (ja) | ロードセンシング機能付き方向切換弁 | |
JP4145563B2 (ja) | バルブタイミング調整装置 | |
CN101627186B (zh) | 用于液压控制往复式内燃机的换气阀的装置 | |
KR20040019008A (ko) | 엔진의 전기 유압식 밸브 제어 장치의 작동 방법, 엔진작동을 위한 컴퓨터 프로그램 및 제어 및 조절 장치 | |
JP2011196334A (ja) | 油圧ガバナ | |
CN110454457A (zh) | 一种流量卸荷阀及液压挖掘机的液压驱动系统 | |
JP2022516145A (ja) | 可変容量形油圧ポンプセット及びショベル | |
CN104214090A (zh) | 一种齿轮泵与射流阀的一体结构 | |
IT201800020377A1 (it) | Sistema di regolazione della cilindrata di una pompa a cilindrata variabile | |
CN109653827B (zh) | 一种凸轮轴调节器 | |
CN215804761U (zh) | 先导阀及其二级变排量机油泵控制系统 | |
JPH0639093Y2 (ja) | 燃料噴射ポンプ |