JP2011191256A - クロマトカラム及びその可動栓 - Google Patents

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Abstract

【課題】液体クロマトグラフィーの操作性、信頼性、経済性、分離精製効率を向上させることができる可動栓と、この可動栓を備えたクロマトカラムを提供する。
【解決手段】可動栓コア20と、環状のスクレーパ30と、該可動栓コアの基端側が内嵌した凹所41を有するベース40と、可動栓コアの外周を取り巻いているパッキン50と、可動栓コア20を引き付けるボルト60とを備えてなり、可動栓コアのフランジ部22にスクレーパ30が係合している可動栓10。スクレーパ30及び可動栓コア20のフランジ部22にテーパ面31,22aが設けられている。フランジ部22の円筒状外周面22bの外側をスクレーパ30の円筒面32が取り囲んでいる。
【選択図】図1

Description

本発明は、液体クロマトグラフィー用のカラム(以下、クロマトカラムということがある。)に用いられる可動栓と、この可動栓を用いたクロマトカラムに関する。
液体クロマトグラフィーは、天然物や発酵生産物、遺伝子組み替え等による培養生産物、合成反応物中の目的物質を目的の純度、精製速度で分離精製する手段として広く用いられている。
従来、液体クロマトグラフィー用カラムへの充填剤の充填は、第10図のような方法により行われている。
即ち、まず、第10図(a)に示す如く、可動栓1を備えたカラム2を用い、第10図(b)に示す如く、このカラム2に充填剤を溶媒に混合して調製したスラリー3を投入する。そして、第10図(c)に示す如くカラム上部に溶媒流出口を備え、充填剤の流出を防止する多孔板を有した上蓋4を取り付け、可動栓1を押し上げることにより、溶媒を上蓋4の溶媒流出口から押し出し、第10図(d)に示す如く、充填剤の充填層5を加圧形成する。即ち、この可動栓1の移動により、可動栓と反対の側から均一な充填層を積層させてゆき、充填終了後は、この可動栓1による充填層5の加圧を維持する。この充填装置はアクシャルコンプレッション型カラムとして広く知られている。
この可動栓とカラムの内周面との間には、密にシールして液体や充填剤が漏れないようにするためのシール構造が設けられている。
可動栓とカラム内周面との間のシール構造体には、従来、例えばOリングシールや、可動栓が所定位置まで移動した後圧縮空気を抜いてシールするもの(特許第4098342号)などがある。
特許第4098342号
上記のOリングシールは、Oリングシール部とカラム本体内壁面の間に空隙ができ、この空隙部分からの空気抜きが容易でないばかりでなく、充填剤や液だまりとなり、汚染や精製効率の低下の原因となる。
特許第4098342号のシール構造は、圧縮媒体で加圧してシール部を後退させて緩めておいて、可動栓をカラム内の所定位置に移動させ、その後、圧縮媒体による加圧を除き、バネの押す作用力によってシール材を押しあてて密閉するものである。この方式では、シールを緩めておいて可動栓を移動させる為、カラム内にあらかじめ充填剤を充填している場合、可動栓を充填層表面に接触させた時、スラリー状の充填剤がシール部とカラム内壁面に毛管現象によって入り込み、シール状態が悪化するだけでなく、できた隙間が液だまりとなり、汚染原因となり、クロマト分離精製効率を低下させる。また、バネの押圧力は、バネ反発力の劣化によって経過時間によって変化し、一定のシール精度を保ちにくい。さらに、充填剤スラリーがシール部とカラム内壁面との間に入り込むことを防止するために、シールを緩めない又はほとんど緩めないで可動栓を移動させる場合、シールの移動が容易でない他、シール材の摩耗が激しく、シール材寿命が短くなり、頻繁に取り換えることが必要になるが、取り換え時期の予測が容易でなく、また、取り換えにかかる時間、労力、シール材費用などのコストが必要になり経済的でない。
本発明は、上記従来の問題点を解決し、液体クロマトグラフィーの操作性、信頼性、経済性、分離精製効率を向上させることができる可動栓と、この可動栓を備えたクロマトカラムを提供することを目的とする。
本発明(請求項1)の可動栓は、液体クロマトグラフィーのカラム内に配置される可動栓において、先端部が充填剤に対面し、可動栓の軸心部をカラムの軸心線方向に延在する可動栓コアと、該可動栓コアの先端側の外周に外嵌した環状のスクレーパと、該可動栓コアの基端側が内嵌した凹所を有するベースと、該スクレーパとベースとの間において該可動栓コアの外周を取り巻いているパッキンと、該可動栓コアをベースの凹所に押し込む方向に引き付けるための引付手段とを備えてなり、可動栓コアの先端側には拡径したフランジ部が設けられ、前記スクレーパは該フランジ部に係合していることを特徴とするものである。
請求項2の可動栓は、請求項1において、該フランジ部は、可動栓コアの先端側ほど拡径した形状となるテーパ面を有しており、該スクレーパの内周面は、該可動栓コアのテーパ面に重なるテーパ面を有していることを特徴とするものである。
請求項3の可動栓は、請求項1又は2において、前記可動栓コアの最先端部の外周面を前記スクレーパが囲んでいることを特徴とするものである。
請求項4の可動栓は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記引付手段は、前記ベースを貫通して前記可動栓コアに螺着されたボルトであることを特徴とするものである。
請求項5の可動栓は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記引付手段は、ベースの前記凹所の内周面に設けられた雌螺子と、前記スクレーパの基端部の外周面に設けられ、該雌螺子に螺合した雄螺子であることを特徴とするものである。
本発明(請求項6)の液体クロマトグラフィーのカラムは、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の可動栓が内部に配置されたものである。
本発明の可動栓及びこの可動栓を備えたクロマトカラムにおいては、可動栓のコアをベースに引き付けることにより、パッキンが拡径方向に膨らむ。このパッキンがカラム内周面に接触することにより可動栓とカラム内周面との間のシールが行われる。本発明では、このシールの安定性が高く、クロマトの分離精製効率が高く、信頼性にも優れる。スクレーパは、カラム内の微粒子や微粒子スラリーが可動栓の外周面とカラム内周面との間に入り込むことを阻止する。
請求項2の可動栓にあっては、可動栓コアの先端側ほどスクレーパが薄くなっているため、スクレーパ先端部に液溜まりができにくくなる。また、基端側ほどスクレーパが厚くなっているため、可動栓コアがベースに引き付けられた際に、スクレーパ基端部が確実にパッキンを狭圧することとなる。
請求項3の可動栓にあっては、可動栓コアの最先端部の外周面をスクレーパが囲んでいるので、可動栓コアの外周面がカラム内周面に直に当ることがない。従って、可動栓コアを金属など高硬度材料で構成しても、カラム内周面が可動栓コアと接触して傷つくことがない。
可動栓コアをベース側に引き付ける手段は、ボルトであってもよく、可動栓コアとベースとの螺着であってもよい。
第1の実施の形態に係る可動栓の断面図である。 第2の実施の形態に係る可動栓の断面図である。 第3の実施の形態に係る可動栓の断面図である。 第4の実施の形態に係る可動栓の断面図である。 第5の実施の形態に係る可動栓の断面図である。 第6の実施の形態に係る可動栓の断面図である。 第7の実施の形態に係る可動栓の断面図である。 第8の実施の形態に係る可動栓の断面図である。 第9の実施の形態に係る可動栓の断面図である。 従来例を示す断面図である。
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
第1図(a)は第1の実施の形態に係る可動栓の軸心線方向の断面図、同(b)はこの可動栓の先端部に多孔質板を装着した状態の断面図、同(c)は同(a)のC部の拡大図である。
この可動栓10は、可動栓コア20、スクレーパ30、ベース40、Vパッキン50等を備えている。この可動栓10は、先端側(図の上端側)がカラム内の充填剤に接するように配置される。可動栓コア20は、可動栓10の先端から軸心線方向に延在する略々円柱状体よりなる。この可動栓コア20の中間から基端側(図の下端側)にかけては、等径の円柱部21(第1図(c))である。この円柱部21よりも上側はフランジ部22である。
このフランジ部22の下面は、上方ほど拡径するテーパ面22aとなっている。フランジ部22には、該テーパ面22aに引き続いて、先端側に円筒状外周面22bが設けられている。可動栓コア20の上端面には浅い円形の凹所23が設けられ、この凹所23の側周面の上部側には拡径段部24が形成されている。この段部24に係合することにより、多孔質板25が該可動栓コア20の先端面に装着され、多孔質板25と凹所23底面との間に、液の分配供給又は収集排出用の空室が形成される。
凹所23の底面の中心部から可動栓コア20の底面の中心部にまで貫通するように液の供給又は排出用の連通孔26が設けられている。
可動栓コア20の底面には、後述のボルト60が螺合する雌螺子穴27が可動栓10の軸心線と平行方向に設けられている。
スクレーパ30は、このフランジ部22の外周に嵌合した環状部材である。スクレーパ30の外周面は等径の円筒面よりなる。スクレーパ30の内周面は、前記テーパ面22aと重なるテーパ面31と、このテーパ面31の上端に連なる円筒面32とからなる。この円筒面32に対しフランジ部22の円筒状外周面22bが係合する。スクレーパ30の底面は、可動栓10の軸心線に対し垂直となっている。
ベース40は、略円柱形状のものであるが、上面中央には可動栓コア20の下部が内嵌する凹部41が設けられている。この凹部41の底面からベース40の底面にまで環通する液流通孔42が設けられている。この実施の形態では、ベース40にボルト60の挿通孔43が設けられている。
Vパッキン50は、スクレーパ30とベース40との間において可動栓コア20を周回するように設けられている。なお、複数枚のVパッキン50が積層状に配置されている。Vパッキン50の積層体とスクレーパ30との間、及び該積層体とベース40との間にそれぞれパッキンアダプタ51,52が介在されている。
ボルト60は、挿通孔43を通って雌螺子穴27にねじ込まれている。ボルト60の頭部がベース40の底面に当接した後、さらにボルト60を回転させることにより、可動栓コア20がベース40側に引き付けられ、Vパッキン50がスクレーパ30とベース40との間で挟圧されて拡径方向に膨出する。このVパッキン50がクロマトグラフィー用カラムの内周面に当接することにより、可動栓10とカラムの内周面とのシールが行われる。
この可動栓10にあっては、カラム挿入前のスクレーパ30の外径をカラムの内径と等しいか、それよりもごく僅か大きいものとし、スクレーパ30の外周面をカラムの内周面に押し付けるようにするのが好ましい。具体的にはカラムの内径をdとし、スクレーパ30の外径(直径)をdとした場合、d−dが0よりも大きく且つdの3%以下特に2%以下とりわけ1%以下であることが好ましい。スクレーパ30の材料としては、フッ素化樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレンや、部分フッ素化樹脂、例えば、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルやフッ素化樹脂共重合体、例えば、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体、エチレン−四フッ素化エチレン共重合体などが好ましい。これらの他、フッ素化樹脂、部分フッ素化樹脂、フッ素化樹脂共重合体で被覆したゴムや、フッ素ゴム、EPDMなども適用できる。
上記のスクレーパ30及びフランジ部22のテーパ面31,22aのテーパ角θ(第1図(c)参照)は5°以上90°未満特に15〜60°程度であることが好ましい。可動栓コア20の円筒状外周面22b及びスクレーパ30の円筒面32の高さhはカラムの内径dの1/400以上特に1/250以上であることが好ましい。また、hは20mm以下、特に10mm以下であることが好ましい。スクレーパ30の円筒面32部分の肉厚tはdの1/15以下、特に1/20以下が好ましい。
可動栓コア20の材料は、ステンレス、チタン、ハステロイなどの耐食性金属が好ましいが、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、アクリル、メチルペンテンなどの合成樹脂であってもよい。
パッキン50の積層枚数は2枚以上、特に4〜8枚程度が好適である。パッキンの材料としては、フッ素樹脂、フッ素ゴム、EPDM、フッ素樹脂被覆合成ゴムなどが好適であるが、これに限定されない。
ベース40の好ましい材料としては、可動栓コア20と同様のものが例示されるが、これに限定されない。ベース40の外径はカラムの内径dよりも小さいことが好ましく、またパッキンアダプタ52の内径と外径の中間値以上であることが好ましい。
この実施の形態では、可動栓コア20のフランジ部22の円筒状外周面22bの外周をスクレーパ30の円筒面32が取り巻いており、可動栓コア20がカラム内周面に直当りしない。このため、カラム内周面の傷付きが防止される。また、スクレーパ30の外周面がカラム内周面に密着することにより、スクレーパ30とカラム内周面との間に充填剤や液が侵入せず、液溜りも生じない。この結果、精製分離効率が向上する。
この可動栓10が内挿されたクロマトカラムにあっては、液が孔42,26及び多孔板25を通ってカラム内に導入又はカラムから流出する。カラム内の充填剤が可動栓10とカラム内周面との間に入り込まないので、クロマト分離精製効率が高い。
この可動栓10にあっては、ボルト60を外してベース40と可動栓コア20とを分離することにより、Vパッキン50を容易に交換することができる。
第2図〜第8図を参照して第2〜第8の実施の形態に係る可動栓について説明する。
第2図の可動栓11は、可動栓コア20の代わりに、下部外周面に雄螺子28が刻接された可動栓コア20Aを用い、ベース40の代わりに、凹部41の内周面に雌螺子44が刻接されたベース40Aを用い、該雄螺子28と雌螺子44とを螺合させることにより、可動栓コア20Aをベース40A側に引き付けるよう構成したものである。
ボルト60、ボルト挿通孔43、及び雌螺子穴27は設けられていない。第2図のその他の構成は第1図と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
第3図の可動栓12では、スクレーパ30の代わりに、テーパ面31の下端に引き続いて円筒状内周面33が設けられたスクレーパ30Aを用いている。その他の構成は第1図と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
第4図の可動栓13は、第2図の可動栓11においてスクレーパ30の代わりに第3図のものと同様のスクレーパ30Aを用いたものである。その他の構成は第2図と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
第5図の可動栓14は、Vパッキン50の代わりにテーパパッキン70を複数枚積層したものである。テーパパッキン70は、上下両面がテーパ面となったパッキンであり、その材料としてはVパッキン50と同様のものが用いられる。また、このテーパパッキン積層体の上下にパッキンアダプタ71,72が配置されている。その他の構成は第1図と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
第6図、第7図及び第8図の可動栓15,16,17は、それぞれ、第2図、第3図及び第4図の可動栓11,12,13においてテーパパッキン70及びパッキンアダプタ71,72を用いたものであり、その他の構成は第2図、第3図及び第4図と同様であり、同一符号は同一部分を示している。これらの第2図〜第8図の可動栓11〜17によっても可動栓10と同様の効果が得られる。
第9図の可動栓18は、第3図の可動栓13において、ボルト60に皿バネ53を複数枚装着したものである。皿バネ53は、皿の凸部と凸部、または凹部と凹部が向き合うように重ねることにより、ボルト60の接続に弾力性が生じる。それにより、Vパッキン50やスクレーパ30に外力が生じたとき、Vパッキン50だけでなく、皿バネ53が収縮したり、伸びたりして、ボルト60の締めつけの程度が調節されて、Vパッキン50とカラム内壁面との間に漏れが生じることなく、かつ、Vパッキン50やスクレーパ30の劣化を軽減できる。第9図では、8枚の皿バネ53が設置されているが、枚数に制限はなく、2〜12枚とするのが好ましい。皿バネ53はボルト60により可動栓コア20をベース40に引き付ける態様であれば適用可能であり、第1図、第3図、第7図の態様においても適用できる。
第1図〜第9図において、スクレーパ30、30Aとパッキンアダプタ51、71は一体に成形されていてもよい。そうすることにより、スクレーパ30,30Aとパッキンアダプタ51,71との間に液だまりができることがなく好ましい。
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。
10〜17 可動栓
20,20A 可動栓コア
30,30A スクレーパ
40,40A ベース
50,70 パッキン
60 ボルト

Claims (6)

  1. 液体クロマトグラフィーのカラム内に配置される可動栓において、
    先端部が充填剤に対面し、可動栓の軸心部をカラムの軸心線方向に延在する可動栓コアと、
    該可動栓コアの先端側の外周に外嵌した環状のスクレーパと、
    該可動栓コアの基端側が内嵌した凹所を有するベースと、
    該スクレーパとベースとの間において該可動栓コアの外周を取り巻いているパッキンと、
    該可動栓コアをベースの該凹所に押し込む方向に引き付けるための引付手段と
    を備えてなり、
    可動栓コアの先端側の外周部にフランジ部が設けられ、前記スクレーパは該フランジ部に係合していることを特徴とする可動栓。
  2. 請求項1において、該フランジ部は、可動栓コアの先端側ほど拡径した形状となるテーパ面を有しており、
    該スクレーパの内周面は、該可動栓コアのテーパ面に重なるテーパ面を有していることを特徴とする可動栓。
  3. 請求項1又は2において、前記可動栓コアの最先端部の外周面を前記スクレーパが囲んでいることを特徴とする可動栓。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記引付手段は、前記ベースを貫通して前記可動栓コアに螺着されたボルトであることを特徴とする可動栓。
  5. 請求項1ないし3のいずれか1項において、前記引付手段は、ベースの前記凹所の内周面に設けられた雌螺子と、前記スクレーパの基端部の外周面に設けられ、該雌螺子に螺合した雄螺子であることを特徴とする可動栓。
  6. 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の可動栓が内部に配置された液体クロマトグラフィーのカラム。
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