JP2011191254A - 転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 極めて高速な負荷が可能な超音波ねじり疲労試験によって、チャージした水素が散逸しないうちに金属材料の試験片にせん断疲労を与え、水素侵入下のせん断疲労特性を合理的かつ迅速に評価することができる転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法を提供する。
【解決手段】 金属材料の試験片1を水素チャージし、その後、試験片1に完全両振りの超音波ねじり振動を与える超音波ねじり疲労試験によって、前記金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性を評価する。
【選択図】 図1
【解決手段】 金属材料の試験片1を水素チャージし、その後、試験片1に完全両振りの超音波ねじり振動を与える超音波ねじり疲労試験によって、前記金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性を評価する。
【選択図】 図1
Description
この発明は、転がり軸受用や動力伝達シャフト用等の転がり接触する機械要素または繰り返しねじり負荷を受ける機械要素の金属材料のせん断疲労特性を評価する方法に関し、極めて高速な負荷が可能な超音波ねじり疲労試験(完全両振り)によって、チャージした水素が散逸しないうちに、前記金属材料の試験片にせん断疲労を与え、水素侵入下のせん断疲労特性を評価する方法に関する。
転がり軸受は、水が混入する条件下、すべりを伴う条件下、通電が起きる条件下などで使用されると、水あるいは潤滑剤が分解して水素が発生し、それが鋼中に侵入することで早期はく離が起きることがある。水素は鋼の疲労強度を著しく低下させるため、接触要素間が油膜で分断される良好な潤滑条件でも、交番せん断応力が大きくなる表層内部にき裂が発生,進展して早期はく離に至る。
せん断応力で疲労破壊させる試験としてねじり疲労試験があるが、油圧サーボ型ねじり疲労試験機の負荷周波数は高々10Hzであり,例えば108 回の負荷回数に到達するには約4ヶ月も要する。常温における転がり軸受用鋼中の水素の拡散係数は10-11m2/sec のオーダーであり、例えば、直径4mmの丸棒に水素を約20hに渡ってチャージすれば、芯部までほぼ飽和し、水素チャージ後に常温大気中で約20h放置すれば、ほぼすべて抜けてしまう。そのため、油圧サーボ型などの従来のねじり疲労試験では水素侵入下のせん断疲労特性を合理的に評価することは不可能である。
せん断応力で疲労破壊させる試験としてねじり疲労試験があるが、油圧サーボ型ねじり疲労試験機の負荷周波数は高々10Hzであり,例えば108 回の負荷回数に到達するには約4ヶ月も要する。常温における転がり軸受用鋼中の水素の拡散係数は10-11m2/sec のオーダーであり、例えば、直径4mmの丸棒に水素を約20hに渡ってチャージすれば、芯部までほぼ飽和し、水素チャージ後に常温大気中で約20h放置すれば、ほぼすべて抜けてしまう。そのため、油圧サーボ型などの従来のねじり疲労試験では水素侵入下のせん断疲労特性を合理的に評価することは不可能である。
転がり軸受の耐水素性を評価する方法として,転がり軸受を急加減速させる試験(特許文献1)、転がり軸受に塩水噴霧しながら運転する試験(特許文献2)、水混入潤滑油中で転がり軸受を運転する試験(特許文献3)、一定電流を流しながら転がり軸受を運転する試験(特許文献4)などが考案されている。
ワイ.マツバラ、エッチ.ハマダ著(Y. Matsubara and H. Hamada),軸受鋼技術(Bearing Steel Technology), ASTM STP1465, J. M. Beswick Ed., (2007), 153-166.
M. A. Devanathan and Z. Stachurski, Proc. Royal Soc., A270 (1962) 90-102.
日本材料学会, 改訂 材料強度学, 日本材料学会, 京都, (2006), 94p.
しかし、上記特許文献1〜4の試験では、鋼中への水素侵入量が一定であることは担保されておらず、目下、それを検証する術もない。また、転がり軸受を使用した加速試験に過ぎず,実機条件を完全に模擬するものでもない.しかしながら、転がり軸受で耐水素性を評価しなければ、ユーザーの理解は得にくい。
陰極電解チャージを同一条件(電解液,電流密度,時間)で各種転がり軸受用鋼に対して施した後、ぜい化に寄与する拡散性水素量を昇温脱離水素分析(検出器:ガスクロマトグラフ)で定量した結果、鋼種によって侵入する拡散性水素量は異なった。したがって、水素起因のはく離という点から、水素侵入量を制御して耐水素性を評価することが第1ステップとして不可欠である。そういった評価法として、水素チャージした後に極めて高速な垂直荷重の負荷が可能な超音波軸荷重疲労試験(完全両振り)を行い、水素が散逸しないうちに疲労させる耐水素性評価方法が考案されている(特許文献5)。電流密度を変えて軸受鋼SUJ2製の試験片に陰極電解水素チャージを一定時間施した後、超音波軸荷重疲労試験を行った結果、拡散性水素量が増加するにつれて107 回における疲労強度は低下し、両者間に直線関係があると報告されている(非特許文献1参照)。このことは、拡散性水素量が疲労強度低下の支配因子であることを意味し、侵入水素量を制御しての本来の耐水素性評価が第1ステップとして必要であることを示唆している。
ところで、材料の疲労破壊を支配する応力は、突き詰めれば垂直応力かせん断応力のどちらかである。上記の超音波軸荷重疲労試験(完全両振り)は垂直応力による疲労特性を高速に評価するものである。それに対し、転がり軸受における水素起因の早期はく離の支配応力は表層内部に作用する交番せん断応力(ほぼ両振り) である。したがって、せん断応力による疲労特性を高速に評価するための超音波ねじり疲労試験機が必要である。しかしながら、超音波ねじり疲労試験の研究はほとんど行われておらず、これまでに評価された材料は最大せん断応力振幅(完全両振り)が250MPa以下で疲労破壊する軟鋼やアルミ合金である。
この発明の目的は、極めて高速な負荷が可能な超音波ねじり疲労試験によって、チャージした水素が散逸しないうちに金属材料の試験片にせん断疲労を与え、水素侵入下のせん断疲労特性を合理的かつ迅速に評価することができる転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法を提供することである。
この発明の転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法は、転がり接触しまたは繰り返しねじり負荷を受ける機械要素に用いられる金属材料の試験片に水素チャージした後に、この試験片に超音波ねじり振動を与える超音波ねじり疲労試験によって、前記金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性を評価する方法である。前記転がり接触しまたは繰り返しねじり負荷を受ける機械要素は、転がり軸受の軌道輪や転動体となる機械要素や、動力伝達シャフト等であり、前記金属材料は、例えば軸受用鋼である。なお、超音波はこの明細書では16000Hz以上の音波を言う。
この方法によると、試験片に加振周波数が超音波領域となる超音波ねじり振動を与えるねじり疲労試験を行うため、極めて高速な負荷を繰り返し与えるねじり疲労試験が行える。そのため、チャージした水素が散逸しないうちに、評価対象の金属材料の試験片にせん断疲労を与え、水素侵入下のせん断疲労特性を合理的かつ迅速に評価することすることができる。例えば、20000Hzで連続加振すれば、わずか8.3min.で107 回の負荷回数に到達する。
この方法によると、試験片に加振周波数が超音波領域となる超音波ねじり振動を与えるねじり疲労試験を行うため、極めて高速な負荷を繰り返し与えるねじり疲労試験が行える。そのため、チャージした水素が散逸しないうちに、評価対象の金属材料の試験片にせん断疲労を与え、水素侵入下のせん断疲労特性を合理的かつ迅速に評価することすることができる。例えば、20000Hzで連続加振すれば、わずか8.3min.で107 回の負荷回数に到達する。
この発明において、水素チャージは、水素を陰極電解チャージで行っても良い。この陰極電解チャージに希硫酸水溶液を用いても良い。この場合に、水素チャージ効率を上げるため、希硫酸水溶液に触媒毒としてチオ尿素を添加しても良い。このチオ尿素の添加量は1.4g/Lを上限とするのが良い。
この発明において、水素チャージを陰極電解チャージで行う場合に、その陰極電解チャージに塩化ナトリウム水溶液を用いても良い。この場合に、水素チャージ効率を上げるため、塩化ナトリウム水溶液に触媒毒としてチオシアン酸アンモニウムを添加しても良い。チオシアン酸アンモニウムの添加量3g/Lを上限とするのが良い。
この発明において、水素チャージを陰極電解チャージで行う場合に、その陰極電解チャージに水酸化ナトリウム水溶液を用いても良い。この場合に、水素チャージ効率を上げるため、水酸化ナトリウム水溶液に触媒毒として硫化ナトリウム九水和物を添加しても良い。硫化ナトリウム九水和物の添加量は、1g/Lを上限とするのが良い。
この発明において、水素を水溶液に浸漬してチャージしても良い。この場合に、チオシアン酸アンモニウム水溶液に浸漬して水素をチャージしても良い。チオシアン酸アンモニウム水溶液の濃度は、20mass%を上限とするのが良い。
この発明において、上記いずれの方法の場合においても、前記試験片に与えるねじり振動は、正回転方向と逆回転方向のねじりが対称となる振動である完全両振りとするのが良い。前記超音波ねじり疲労試験は、交流電力が印加されることで回転中心軸回りの正逆の回転となるねじり振動を発生するねじり振動コンバータと、先端に同心に試験片を取付ける取付部を有し基端でねじり振動コンバータに固定され、基端に与えられた前記振動コンバータのねじり振動の振幅を拡大する振幅拡大ホーンとを用い、前記試験片の形状,寸法を、前記ねじり振動コンバータの駆動による振幅拡大ホーンの振動に共振する形状,寸法とし、前記振動コンバータを超音波領域の周波数で駆動し前記試験片を前記振幅拡大ホーンの振動に共振させてせん断疲労破壊させることによって行うのが良い。前記振幅拡大ホーンは、前記ねじり振動コンバータの試験中の加振周波数による振動に共振するものが良い。前記振幅拡大ホーンの形状は、例えば、横断面形状が円形であって、基端部を除く部分の縦断面形状が、指数関数で表される先細り形状とする。この形状とすることで、振幅拡大が効果的に行われる。前記試験片の形状は、両端の円柱形状の肩部と、これら両側の肩部に続き軸方向に沿う断面形状が円弧曲線となる中細り部とでなるダンベル形であるのが良い。
この発明において、上記いずれの方法の場合においても、超音波ねじり疲労試験において試験片の発熱を抑制するため、負荷と休止を交互に繰り返しても良い。超音波ねじり疲労試験において、試験片の発熱が試験結果として問題にならない低負荷域では連続負荷するのが良い。
ある程度高いせん断応力振幅で連続加振すると試験片が発熱するため、試験片を強制空冷するのが良い。強制空冷だけでは試験片の発熱抑制が不十分な場合は、加振と休止を交互に繰り返すことが好ましい。休止することで実質の負荷周波数は小さくなるが、休止時間を加振時間の10倍程度としても、加振周波数が20000Hzの場合、実質の負荷周波数が2000Hz程度と依然高速であり、ちょうど2000Hzの場合、わずか1.38hで107 回の負荷回数に到達する。
ある程度高いせん断応力振幅で連続加振すると試験片が発熱するため、試験片を強制空冷するのが良い。強制空冷だけでは試験片の発熱抑制が不十分な場合は、加振と休止を交互に繰り返すことが好ましい。休止することで実質の負荷周波数は小さくなるが、休止時間を加振時間の10倍程度としても、加振周波数が20000Hzの場合、実質の負荷周波数が2000Hz程度と依然高速であり、ちょうど2000Hzの場合、わずか1.38hで107 回の負荷回数に到達する。
この発明において、上記いずれの方法の場合においても、転がり接触する要素または転がり接触・ねじり負荷を受ける部品に用いる金属材料製の試験片に水素チャージした後に、超音波ねじり疲労試験によって水素侵入下のせん断疲労特性を評価しても良い。
この発明において、上記いずれの方法の場合においても、せん断疲労強度の絶対値が必要な場合、せん断応力振幅と負荷回数の関係から任意の破壊確率のP-S-N 線図を求め、それから求まる任意の負荷回数におけるせん断疲労強度を絶対値と見なしても良い。S-N 回帰曲線上の任意の負荷回数におけるせん断疲労強度の85%を絶対値と見なしても良い。また、S-N 回帰曲線上の任意の負荷回数におけるせん断疲労強度の80%を絶対値と見なしても良い。最も安全な絶対値の見積りは、上記3つの組み合わせである。すなわち、せん断応力振幅と負荷回数の関係から任意の破壊確率のP-S-N 線図を求め、それから求まる任意の負荷回数におけるせん断疲労強度の85%を、さらに80%した値を絶対値と見なすことである。
超音波ねじり疲労試験では、従来の疲労試験に対し、大きな負荷を受ける体積(危険体積)が略等しい場合、せん断疲労強度を高めに評価する傾向がある。
上記試験片にねじり振動を与えた場合、試験片の断面内の各部の応力は、中心部で最も小さく外周面で最大となるように応力勾配が生じる。このため、試験により得た負荷回数とせん断応力振幅の関係から計算して理論上で求まるせん断疲労強度に対する、80%の値が、せん断疲労特性の評価に用いるのに適切な値となる。
超音波ねじり疲労試験では、従来の疲労試験に対し、大きな負荷を受ける体積(危険体積)が略等しい場合、せん断疲労強度を高めに評価する傾向がある。
上記試験片にねじり振動を与えた場合、試験片の断面内の各部の応力は、中心部で最も小さく外周面で最大となるように応力勾配が生じる。このため、試験により得た負荷回数とせん断応力振幅の関係から計算して理論上で求まるせん断疲労強度に対する、80%の値が、せん断疲労特性の評価に用いるのに適切な値となる。
この発明において、上記いずれの方法の場合においても、せん断疲労強度の絶対値を安全に見積もるため、上記3つの補正、すなわち、せん断応力振幅と負荷回数の関係から任意の破壊確率のP-S-N 線図を求め、それから求まる任意の負荷回数におけるせん断疲労強度を絶対値と見なす補正である破壊確率補正と、S-N 回帰曲線上の任意の負荷回数におけるせん断疲労強度の85%を絶対値と見なす補正である過大評価補正と、S-N 回帰曲線上の任意の負荷回数におけるせん断疲労強度の80%を絶対値と見なす補正である寸法効果補正との3つの補正のうち、任意の2つ以上の補正を組み合わせて求まるせん断疲労強度を絶対値と見なしても良い。このように2つ以上の補正を組み合わせることで、より一層安全にせん断疲労強度を評価することができる。
この発明の転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法は、転がり接触しまたはねじり負荷を受ける機械要素に用いられる金属材料の試験片に水素チャージした後に、この試験片に完全両振りの超音波ねじり振動を与える超音波ねじり疲労試験によって、前記金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性を評価する方法であり、超音波領域となる極めて高速な負荷を与えてねじり疲労試験するため、チャージした水素が散逸しないうちに転がり軸受用鋼製等の試験片にせん断疲労を与え、水素侵入下のせん断疲労特性を合理的かつ迅速に評価することができる。
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。この転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法は、図1(A)に示すように、金属材料の試験片1に水素チャージする水素チャージ過程(図2のステップS1)と、この水素チャージ後に、図1(B)の試験装置により、試験片1に完全両振りの超音波ねじり振動を与えて前記金属材料の水素侵入下でデータを採取する超音波ねじり疲労試験過程(S2)と、採取されたデータから前記金属材料のせん断疲労特性を評価する評価過程(S3)とを含む。試験過程(S2)では、水素チャージ下でのせん断応力振幅と負荷回数との関係のデータ等を採取し、評価過程(S3)ではその採取したせん断応力振幅と負荷回数との回数から、せん断疲労限等のせん断疲労特性を評価する。
前記金属材料は、転がり軸受の軌道輪や転動体等の転がり接触する機械要素、または動力伝達シャフト等の繰り返しねじり負荷を受ける機械要素とされる金属材料、特に高強度金属材料である。前記金属材料は、より具体的には、転がり軸受用の高強度金属材料としては、例えば高炭素クロム軸受鋼(JIS-SUJ2)等の軸受鋼である。動力伝達シャフト用の高強度金属材料としては、例えば、約0.4mass%の炭素を含み、焼入性向上元素(Mn ,B など) を添加した鋼である。
図1(A)の水素チャージ手段2は、次のいずれかの方法によって試験片1に水素チャージする手段である。例えば、水素を陰極電解チャージする手段、または水素を水溶液に浸漬してチャージする手段とされる。陰極電解水素チャージは、例えば図17に示すように、容器21内の電解液22にプラチナの電極24と試験片23とを浸漬し、試験片23をマイナス、電極24をプラスとして電圧を印加することで行う。これらの水素チャージについては、後に具体的に説明する。
図1(B)は、試験片1に完全両振りの超音波ねじり振動を与えるせん断疲労特性評価装置の一例を示す。この装置は、ねじり振動コンバータ7および振幅拡大ホーン8を有する試験機本体10と、発振器4と、アンプ5と、制御・データ採取手段3とを備える。
試験機本体10は、フレーム6の上部に設置したねじり振動コンバータ7に、下向きに突出する振幅拡大ホーン8を取付け、その先端に試験片1を着脱可能に取付け、ねじり振動コンバータ7で発生した超音波振動を、振幅拡大ホーン8の軸心O回りの正逆回転方向の振動として拡大して試験片1に伝えるものである。試験機本体10は、試験片1の強制空冷を行う試験片空冷手段9を有している。試験片空冷手段9は、例えば、ブロワー等の圧縮空気発生源(図示せず)に配管等で接続されて試験片1に対して空気を吹き付けるノズル等からなり、電子バルブ(図示せず)または前記圧縮空気発生源のオンオフによって、空気の吹き付けと吹き付け停止との切換が可能である。
ねじり振動コンバータ7は、2相の交流電力が印加されることで、その交流電力の周波数で回転中心軸O回りの正逆の回転となるねじり振動を発生する装置である。ねじり振動コンバータ7に与える交流電力は、電圧がサイン波等の正負対称の交流電力とされ、発生するねじり振動は、完全両振り、つまり正回転方向と逆回転方向とは対称となる振動とされる。
振幅拡大ホーン8は、先細り形状に形成されて先端面に同心に試験片を取付ける雌ねじ孔からなる取付部を有し、基端でねじり振動コンバータ7に固定される。振幅拡大ホーン8は、基端に与えられた振動コンバータ7のねじり振動の振幅を、先端部で拡大した振幅とする。振幅拡大ホーン8の素材は、例えばチタン合金である。
振幅拡大ホーン8は、先細り形状に形成されて先端面に同心に試験片を取付ける雌ねじ孔からなる取付部を有し、基端でねじり振動コンバータ7に固定される。振幅拡大ホーン8は、基端に与えられた振動コンバータ7のねじり振動の振幅を、先端部で拡大した振幅とする。振幅拡大ホーン8の素材は、例えばチタン合金である。
発振器4は、振幅拡大ホーン8を加振する周波数となる超音波領域の周波数の電圧信号を生成する電子機器からなる。発振器4は、発振周波数が、例えば20000±500Hzの範囲で、固定の周波数とされ、または周波数調整可能とされている。
アンプ5は、発振器4の出力を増幅して超音波領域の周波数の交流電力をねじり振動コンバータ7に印加する電子機器である。アンプ5は、前記交流電力の出力の大きさ、およびオンオフが外部からの入力により制御可能なものとする。アンプ5の最大出力は、この実施形態では300Wとされている。
制御・データ採取手段3は、前記アンプ5に前記出力の大きさおよびオンオフ等の制御の入力を与え、かつ試験中の加振周波数、アンプ5の出力等の状態、および負荷回数を含むデータをアンプ5から採取する手段である。制御・データ採取手段3は、上記の他に、試験片冷却手段9を制御する機能を備える。制御・データ採取手段3は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータと、これに実行させるプログラム(図示せず)とでなり、キーホード、マウス等の入力機器11と、液晶表示装置等の画像を画面で表示する画面表示装置12が接続され、または上記コンピュータの一部として設けられている。
この試験方法によると、試験片に加振周波数が超音波領域となる超音波ねじり振動を与える超音波ねじり疲労試験を行うため、極めて高速な負荷を繰り返し与えるねじり疲労試験が行える。そのため、チャージした水素が散逸しないうちに、評価対象の金属材料の試験片にせん断疲労を与え、水素侵入下のせん断疲労特性を合理的かつ迅速に評価することすることができる。例えば、20000Hzで連続加振すれば、わずか8.3min.で107 回の負荷回数に到達する。試験片は共振させるため、僅かなエネルギの投入で効率良くせん断疲労破壊を生じさせることができる。
図1の評価装置の具体的構成を説明する。超音波軸荷重疲労試験に用いられる縦振動コンバータは様々な出力のものがあるのに対して、ねじり振動コンバータ7は、市販されていてアンプ制御できるのものが、調べた範囲では1機種しかなく、選択の余地がなかったため、振幅拡大ホーン8や試験片1の形状を工夫して最適化し、高強度金属材料にせん断疲労を与えるようにした。
振幅拡大ホーン8は、指数関数型であり、ねじり振動コンバータ7に固定する大径側端面の直径は38mm、試験片1を固定する小径側端面の直径は13mmである。なるべく拡大率(小径側のねじり角の大径側のねじり角に対する比)を大きく、かつ20000Hz付近で共振するように設計・調整されている。なお、振幅拡大ホーン8の大径側にはねじり振動コンバータ7に固定するための雄ねじ部が設けられ、小径側には試験片を固定するための雌ねじが空けられている。振幅拡大ホーン8の素材はチタン合金である。ヤング率E、ポアソン比ν、密度ρを実測した結果、それぞれE=1.16×1011Pa、ν=0.27、ρ=4460kg/m3であった。FEM解析ソフト(Marc Mentat 2008 r1)(登録商標)を用い、上記のE 、ν、ρを物性値として、自由ねじり共振の固有値解析を行った。その結果、拡大率は43.1倍になった。
図3に試験片1の模式図を示す。なお、実際の試験片1の一端には、振幅拡大ホーン8の先端に固定するための雄ネジ部が設けられている。試験片1は、両端の円柱形状の肩部1a,1aと、これら両側の肩部1a,1aに続き軸方向に沿う断面形状が円弧曲線1baとなる中細り部1bとでなるダンベル形である。この試験片1の形状,寸法は、肩部1aの長さL1 、中細り部1bの半分の長さである半弦長さL2 、肩部1aの半径R2 、中細り部1bの最小半径R1 ,前記円弧曲線1baの半径をR(いずれも単位はm)で決定される。
試験片の設計にあたっては、任意の半弦長さL2 、肩部半径R2 、最小半径R1 を与え(いずれも単位はm)、共振周波数をf(=20000Hz) ,ヤング率E,ポアソン比ν,密度ρ( 標準熱処理した軸受鋼SUJ2の実測値はE=2.04×1011Pa,ν=0.29 ,ρ=7800kg/m3) とともに(1) 〜(6) 式に代入すれ、理論解としての肩部長さL1 (単位はm )が求まる。RはR1 ,R2 ,L2 から求まる。
試験片の設計にあたっては、任意の半弦長さL2 、肩部半径R2 、最小半径R1 を与え(いずれも単位はm)、共振周波数をf(=20000Hz) ,ヤング率E,ポアソン比ν,密度ρ( 標準熱処理した軸受鋼SUJ2の実測値はE=2.04×1011Pa,ν=0.29 ,ρ=7800kg/m3) とともに(1) 〜(6) 式に代入すれ、理論解としての肩部長さL1 (単位はm )が求まる。RはR1 ,R2 ,L2 から求まる。
ここで、なるべく大きなせん断応力が試験片最小径部の表面に作用するように事前検討したL2 = 0.0065m,R2 =0.0045m ,R1 =0.002mを、上記のf,E,ν,ρとともに(1) 〜(6) 式に代入するとL1 =0.00753mとなる。しかし、標準焼入焼戻した軸受鋼SUJ2でL1 =0.00753mとした試験片を製作したところ共振しなかった。そこで、FEM 解析(有限要素解析)ソフト(Marc Mentat 2008 r1) (登録商標)を用い、上記のf,E,ν,ρを物性値として自由ねじり共振の固有値解析を行った。その結果、L1 =0.00753mでねじり共振する周波数は19076Hzとなり、ねじり振動コンバータ7の加振周波数範囲である20000±500Hzを外れていた。そこで20000Hzでねじり共振するL1 を求めた結果、L1 =0.00677mとなった。標準焼入焼戻した軸受鋼SUJ2でL1=0.00677m とした試験片を製作したところ、20000Hz付近で共振した。図4に、その製作した試験片1の図面を示す(単位はmm)。
図5は、図4の試験片モデルで自由ねじり共振の固有値解析を行って求めたねじり角θと表面のせん断応力τである。図5は端面ねじり角θend が0.01rad の場合であり、このときの試験片最小径部の表面に作用する最大せん断応力τmax は526.18MPa となった。すなわち線形弾性の範疇では、端面ねじり角θend と試験片最小径部の表面に作用する最大せん断応力τmax の関係は(7) 式のようになる。ただし、τmax の単位はMPa,θend の単位はrad(無次元) である。
τmax =52618θend (7)
τmax =52618θend (7)
図4の形状の標準焼入焼戻した軸受鋼SUJ2製の試験片3本用い、アンプ出力P(%)を変えて端面ねじり角θendを測定した。表1に試験片素材の合金成分を示す。硬さは722HV であった。加振中の試験片肩部下端の写真をデジタルマイクロスコープ(キーエンス製VHX-900)にて200 倍で撮影した。それに先立ち、ボール盤で試験片肩部にエメリー研磨(#500 ,#2000)とダイヤモンドラッピング(粒径1μm )を施して鏡面状態にした。試験片1を試験機本体10に取り付けた後、肩部にカラーチェックの現像剤を塗布した。図6は静止時の写真であり、所々に現像剤が塗布されない箇所ができる。それら塗布されない箇所の加振時の挙動を観察した。図6の場合、矢印を付した箇所の挙動に着目した。アンプ出力Pを10%から90%まで5%刻みで変えて1秒間加振し、その間にシャッタースピード1/15sec で写真撮影した。図7はP=50%での加振時に撮影した写真で、範囲2aが図6の着目箇所の軌跡である。アンプ出力P(%)を変えて測定した範囲2aから、図8のように端面ねじり角θend を求めた。その結果、図9のように、3本の試験片ともPとθendの間にはほぼ同一の直線関係が見られ、回帰直線として(8) 式が得られた。(7) 式と(8) 式から、アンプ出力Pと試験片最小径部の表面に作用する最大せん断応力τmax の関係は(9) 式のようになった。(9) 式から、P=90%でτmax =951MPaとなり、高強度な転がり軸受用鋼にねじり疲労を与えられることが十分に見込める。
製作した試験機本体10は、図1と共に前述したパーソナルコンピュータ等からなる制御・データ採取手段3で、アンプ5を制御するようになっている。図15に、超音波ねじり疲労試験機2の試験条件を入力する画面を示す。図16は試験過程の詳細の流れ図であり、試験過程では、入力された試験条件に従って、同図のようにアンプ出力の制御や、連続発振または間欠発振を選択した制御、情報取得(周波数とアンプ状態の取得)、試験の終了等の制御等が行われる。
図15の入力画面例で、計測準備の欄に共振周波数が19.97 と表示されているのは、アンプ出力10%で試験片が19.97kHzで共振したことを示しており、ねらいの20000Hzにほぼ等しい。計測条件の入力欄にアンプ出力を入力すると、あらかじめ初期設定画面に入力しておいた(9)式の直線の傾きと切片から、試験最小径部の表面に作用する最大せん断応力振幅τmax に変換される。同欄では、加振し続ける連続運転か加振と休止を交互に繰り返す間欠運転のどちらかを選択する。
き裂が発生し、ある程度の長さに成長すると、試験片1の共振周波数が低下する。同欄の周波数変動幅に50.00 と入力されているのは、共振周波数が試験時よりも50Hz以上低下したら疲労破壊したとして試験を停止させるためである。なお、この値は可変であり
、試験片材質に応じて適切な値を入力すべきである。図10にねじり疲労破壊した試験片の例を示す。軸方向のせん断き裂が発生し、ある程度の長さにせん断型で進展した後、引張型に遷移して斜め方向に逸れていったことを示している。
、試験片材質に応じて適切な値を入力すべきである。図10にねじり疲労破壊した試験片の例を示す。軸方向のせん断き裂が発生し、ある程度の長さにせん断型で進展した後、引張型に遷移して斜め方向に逸れていったことを示している。
常温大気中と水素侵入下で標準焼入焼戻した軸受鋼SUJ2製の試験片を、加振と休止を交互に繰り返す間欠運転で評価した。試験片節部には、エメリー研磨(#500 、#2000)とダイヤモンドラッピング(粒径1μm )を施した。最大せん断応力振幅の大小によらず、一貫して加振時間は110msec 、休止時間は1100msecとした。試験片は上記の端面ねじり角測定に用いたものと同ロットである。108 回まで損傷が起きなければ試験を打ち切った。
水素侵入下での評価では、試験に先立って試験片にちょうど20h(h=時間)にわたって陰極電解水素チャージを施した。電解液は0.05mol/L の希硫酸水溶液に1.4g/Lのチオ尿素を添加したものを用いた。電流密度は0.2mA/cm2 とした。この水素チャージ条件では約3.5mass-ppm の拡散性水素が侵入する。希硫酸水溶液中で水素チャージすると、薄い腐食生成物に覆われてしまうので、試験片節部に再度ダイヤモンドラッピング(粒径1μm)を施して腐食生成物を除去し、かつ面粗さも改善する必要がある。水素チャージ終了後、ちょうど10分後に常温大気中で試験を開始したが、その合間にダイヤモンドラッピングを施した。
電気化学的水素透過試験(非特許文献2参照)で測定した常温大気中における標準焼入焼戻した軸受鋼SUJ2中の水素の拡散係数は3.76×10-11m2/sec であった。超音波ねじり疲労試験片の最小直径は4mm である。図11に、上述の拡散係数を用いて計算した試験片最小径部の相対水素濃度の経時変化を示す。20hでほぼ芯部まで飽和することを示している。これが水素チャージ時間をちょうど20時間とした根拠である。
その他の陰極電解水素チャージの電解液として、若干の腐食生成物は付着するが、中性で安全な塩化ナトリウム水溶液がある。一般には、3mass%程度の濃度に調整する。ただし、上記の酸性水溶液ほど水素チャージ効率はよくない。塩化ナトリウム水溶液でさらに水素チャージ効率を上げる触媒毒としてチオシアン酸アンモニウムがある。その効能は3g/L が上限である。腐食生成物を嫌う場合には、取り扱いに注意が必要であるが、アルカリ性の水酸化ナトリウム水溶液がある。一般には、濃度を1mol/L 程度に調整する。上述の中性水溶液よりも水素チャージ効率はよくない。水酸化ナトリウム水溶液でさらに水素チャージ効率を上げる触媒毒として硫化ナトリウム九水和物がある。その効能は1g/L が上限である。
以上の様々な水溶液での陰極電解水素チャージに対し、水溶液に浸すだけの浸漬水素チャージがある。そのためのものとしてチオシアン酸アンモニウム水溶液がある。その効能は濃度20mass%が上限である。
図13に、超音波ねじり疲労試験で得られた水素チャージ有無でのせん断応力振幅と負荷回数の関係を示す。図13中の曲線(実線)は日本材料学会の金属材料疲労信頼性評価標準JSMS-SD-6-02の連続低下型曲線モデルにあてはめて求めたS-N 線図(破壊確率50%の疲労強度線図) である。107 回におけるせん断疲労強度は、水素チャージなしでは789MPa、水素チャージありでは559MPaとなり、水素侵入下では明らかにせん断疲労強度は低下した。
表1の軸受鋼SUJ2を素材に用い、図12のように、直径10mmの平行部に、超音波ねじり疲労試験片と同じ最小直径4mmの中細り部を設けたねじり疲労試験片(標準焼入焼戻)を製作した(図中の寸法の単位はmmである)。中細り部を設けたのは、危険体積を略等しくするためである。なお、図12のねじり疲労試験片はR=11.4mmに対し、超音波ねじり疲労試験片はR=9.7mmである。Rを変えた理由は応力集中係数を揃えるためである。ねじり疲労試験に先立ち、表面粗さの影響をなくす目的で、中細り部にエメリー研磨(#500、#2000)とダイヤモンドラッピング(粒径1μm)を施した。ねじり疲労試験は油圧サーボ型ねじり疲労試験機にて、完全両振り、負荷周波数10Hzで行った。その結果、図13中の黒三角プロットのようになり、油圧サーボねじり疲労試験結果の時間強度は、超音波ねじり疲労試験結果のものよりも約15%低くなった。超音波ねじり疲労試験は、従来のねじり疲労試験よりも、せん断疲労強度を高めに評価する傾向がある。したがって、水素チャージなしとありでの107 回におけるせん断疲労限度789MPa、559MPaのそれぞれ85%である671MPa、475MPaを絶対値で議論する場合の目安とすればよい。
ねじり疲労試験では、せん断応力は試験片表面で最大、軸芯でゼロになる。すなわち、応力勾配をもつ疲労試験である。ここで、引張圧縮疲労試験のうち、軸荷重疲労試験では平滑部断面内の垂直応力は均一であり、平滑部直径によらず一定の疲労限度を示すことが知られている。それに対し、応力勾配をもつ回転曲げ疲労試験では、平滑部直径が大きくなるにつれて疲労限度が低下し、軸荷重疲労試験での疲労限度に漸近していく寸法効果を示すことが知られている。引張強度が異なる3鋼種について、軸荷重疲労試験と平滑部直径を種々変えた回転曲げ疲労試験を行い、それぞれの疲労限度を求めた報告がある(非特許文献3)。それによると、鋼種によらず、軸荷重疲労試験での疲労限度は、平滑部直径が4mmの回転曲げ疲労試験での疲労限度の約80%となっている。
引張圧縮疲労試験では、応力勾配をもたない軸荷重疲労試験での疲労限度が安全側の基準になるが、ねじり疲労試験では、平滑部直径をいくら大きくしても応力勾配をもつため基準が存在しない。応力勾配をもつ以上、ねじり疲労試験でも寸法効果は避けられない。そこで、ねじり疲労試験についても引張圧縮疲労試験の基準がそのまま適用できると仮定する。つまり、超音波ねじり疲労試験片の最小直径は4mmなので、水素チャージなしとありでの107 回におけるせん断疲労限度789MPa,559MPaのそれぞれ80%である631MPa,447MPaを絶対値で議論する場合の目安とすればよい。
上記の応力勾配をもつ疲労試験で現れる寸法効果は、応力勾配という力学的要因と、大きな負荷を受ける体積(危険体積)が増減するという統計的要因によってもたらされる。統計的要因という観点から、複数応力水準で複数本の評価を行ってP-S-N 線図を得ればよい。しかしながら、時間的制約から実施が困難な場合が多いであろう。図13で107 回におけるせん断疲労強度を求めるのに日本材料学会の金属材料疲労信頼性評価標準JSMS-SD-6-02を用いた。それには少ないデータ数でP-S-N 線図を得る機能がある。図14は、それによって得た破壊確率10%のP-S-N 線図(破線)であり、水素チャージありとなしでの107 回における10%せん断疲労限度は、それぞれ736,512MPaとなった。それらを絶対値で議論する場合の目安としてもよい。なお、ここでは適当な破壊確率として10%としたが、超音波ねじり疲労試験片の危険体積と実際の転がり軸受の危険体積を比較し、妥当な破壊確率を考慮しても良い。
最も安全に絶対値の議論をするのであれば、上記3つを組み合わせる。すなわち、破壊確率を考慮した上で、超音波ねじり疲労試験は、従来のねじり疲労試験よりも、せん断疲労強度を高めに評価することを補正し、さらに、引張圧縮疲労試験の基準を適用することである。水素チャージなしの場合の107 回における10%せん断疲労限度736MPaの85%である626MPaをさらに80%した501MPaを、水素チャージありの場合の107 回における10%せん断疲労限度512MPaの85%である435MPaをさらに80%した348MPaを議論の目安とすればよい。
図1の制御・データ採取手段3について、整理して図15,図16と共に説明する。この制御・データ採取手段3は、図15に示す試験条件の入力画面を画面表示装置12により表示させる。この入力画面には、試験片材料の材料名の入力欄、コメントの入力欄と、ねじり振動コンバータ7を駆動する条件となる、アンプ出力の入力欄、間欠運転か連続運転かを選択する選択入力欄、間欠運転の場合の1回の加振時間および休止時間の入力欄、試験終了条件の入力欄(試験を終了する負荷回数、および周波数変動幅)と、データ取得条件となる初期サイクル、終了サイクル、サイクル間隔の入力欄とが表示され、またファイル名の入力欄が表示される。図15の入力画面で入力された試験条件の情報は、一つの試験ファイルとして記憶され、入力されたファイル名が付される。なお、図15の入力画面の他に、初期設定の入力画面を画面表示装置12に表示させ、アンプ5で出力する電圧値や物理量の入力、せん断振幅応力係数の入力を促し、入力された値で電圧および物理量の初期設定を行い、前記試験ファイル等に記録するようにしても良い。
図15の入力画面における「発振開始」のボタンが押されると、10%の出力で共振周波数がサーチされる。共振することが確認されたら、「試験情報」のタブの画面に移り、「試験開始」のボタンを押すと試験が開始される。制御・データ採取手段3は、上記のように入力されて試験ファイルと記憶された試験条件に従い、アンプ5および試験片冷却手段9の制御を行い、かつアンプ5からデータを採取する。概略を説明すると、試験開始(R1)の後、振幅出力を定め(R3)、連続運転か間欠運転かの試験条件を判別して(R4)、連続運転の場合はステップR5〜R13の処理を行い、間欠運転の場合はステップR14〜R24の処理を行う。いずれの場合も、加振周波数およびアンプの出力状態を採取し(R6,R18)、その採取したデータで前記試験ファイルを更新する(R12,R22)。試験終了条件を満たすと、超音波出力を停止し(R26)、試験を終了する。
1…試験片
2…水素チャージ手段
3…制御・データ採取手段
4…発振器
5…アンプ
6…フレーム
7…ねじり振動コンバータ
8…振幅拡大ホーン
9…試験片空冷手段
10…試験機本体
2…水素チャージ手段
3…制御・データ採取手段
4…発振器
5…アンプ
6…フレーム
7…ねじり振動コンバータ
8…振幅拡大ホーン
9…試験片空冷手段
10…試験機本体
Claims (18)
- 転がり接触しまたはねじり負荷を受ける機械要素に用いられる金属材料の試験片に水素チャージした後に、この試験片に超音波ねじり振動を与える超音波ねじり疲労試験によって、前記金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性を評価する転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1において、前記金属材料が軸受用鋼である転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1または請求項2において、水素を陰極電解チャージする転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1または請求項2において、水素を水溶液に浸漬してチャージする転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、前記試験片に与えるねじり振動は、正回転方向と逆回転方向のねじりが対称となる振動である完全両振りとする水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記超音波ねじり疲労試験は、交流電力が印加されることで回転中心軸回りの正逆の回転となるねじり振動を発生するねじり振動コンバータと、先端に同心に試験片を取付ける取付部を有し基端でねじり振動コンバータに固定され、基端に与えられた前記振動コンバータのねじり振動の振幅を拡大する振幅拡大ホーンとを用い、前記試験片の形状,寸法を、前記ねじり振動コンバータの駆動による振幅拡大ホーンの振動に共振する形状,寸法とし、前記振動コンバータを超音波領域の周波数で駆動し前記試験片を前記振幅拡大ホーンの振動に共振させてせん断疲労破壊させることによって行う水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項6において、前記振幅拡大ホーンは、前記ねじり振動コンバータの試験中の加振周波数による振動に共振するものである水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項6または請求項7において、前記振幅拡大ホーンは、横断面形状が円形であって、基端部を除く部分の縦断面形状が、指数関数で表される先細り形状である水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1ないし請求項8のいずれか1項において、前記試験片が、両端の円柱形状の肩部と、これら両側の肩部に続き軸方向に沿う断面形状が円弧曲線となる中細り部とでなるダンベル形である水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1ないし請求項9のいずれか1項において、前記試験過程では、前記超音波ねじり疲労試験において前記金属材料の試験片の発熱を抑制するために、試験片を強制空冷する転がり接触金属材料の疲労限面圧の推定方法。
- 請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、超音波ねじり疲労試験において試験片の発熱を抑制するため、負荷と休止を交互に繰り返す転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1ないし請求項11のいずれか1項において、超音波ねじり疲労試験において試験片の発熱が試験結果として問題にならない低負荷域では連続負荷する転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1ないし請求項12のいずれか1項において、転がり接触する要素またはねじり負荷を受ける部品に用いる金属材料製の試験片に水素チャージした後に、超音波ねじり疲労試験によって水素侵入下のせん断疲労特性を評価する転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1ないし請求項13のいずれか1項において、せん断疲労強度の絶対値が必要な場合、せん断応力振幅と負荷回数の関係から任意の破壊確率のP-S-N 線図を求め、それから求まる任意の負荷回数におけるせん断疲労強度を絶対値と見なす転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1ないし請求項14のいずれか1項において、せん断疲労強度の絶対値が必要な場合、S-N 回帰曲線上の任意の負荷回数におけるせん断疲労強度の85%を絶対値と見なす転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1ないし請求項15のいずれか1項において、せん断疲労強度の絶対値が必要な場合、S-N 回帰曲線上の任意の負荷回数におけるせん断疲労強度の80%を絶対値と見なす転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1ないし請求項13のいずれか1項において、せん断疲労強度の絶対値を安全に見積もるため、せん断応力振幅と負荷回数の関係から任意の破壊確率のP-S-N 線図を求め、それから求まる任意の負荷回数におけるせん断疲労強度を絶対値と見なす補正である破壊確率補正と、S-N 回帰曲線上の任意の負荷回数におけるせん断疲労強度の85%を絶対値と見なす補正である過大評価補正と、S-N 回帰曲線上の任意の負荷回数におけるせん断疲労強度の80%を絶対値と見なす補正である寸法効果補正との3つの補正のうち、任意の2つ以上の補正を組み合わせて求まる断疲労強度を絶対値と見なす転がり接触・ねじり負荷作用金属材料の水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
- 請求項1ないし請求項17のいずれか1項において、小径側端面のねじり角の大径側端面のねじり角に対する比である拡大率が43倍以上の振幅拡大ホーンを用いる水素侵入下のせん断疲労特性の評価方法。
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