JP2011182650A - 有害又は有毒渦鞭毛藻類検出用プローブ及びマイクロアレイ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、有害又は有毒渦鞭毛藻類に由来する核酸の塩基配列のうちの少なくとも一部の塩基配列にハイブリダイズし得る塩基配列を含む、有害又は有毒渦鞭毛藻類検出用オリゴヌクレオチドプローブ、及び当該オリゴヌクレオチドプローブが基盤に配置された、有害又は有毒渦鞭毛藻類検出用マイクロアレイである。
【選択図】なし
Description
今後さらに、熱帯又は亜熱帯に分布する有害又は有毒プランクトンの顕在化、分布域の拡大、あるいはバラスト水による他海域からの移入などが予測され、その結果、食用魚介類の高毒化や、人体への健康被害の拡大が懸念される。
このような理由、特に水産食品の安全性確保の面から、海洋食料を生産する対象海域での有害又は有毒渦鞭毛藻類の出現状況を知る迅速な方法の確立を早急に進める必要性がある。
しかしながら、有害又は有毒渦鞭毛藻類は、種間でその形態が酷似しており、鎧板配列等の形態的特徴の差や、遊泳法等で見分ける場合において、重きを置く形態形質が同定者によって異なり、主観的な判断を下されることがあった。また、形態形質が環境条件等によって変化しやすい、形態的特徴に基づく分類基準が十分統一されていないなど、客観的な分類が明確ではない等の問題もあった。さらに、実際の海水サンプル中には、複数種が同時に出現し、目視に頼る従来法では、正確な種同定、細胞密度の算出が難しく、現場モニタリング実施の大きな障害であった。
しかしながら、これらの分子生物学的手法は、従来の顕微鏡下での目視調査と比較して客観性は向上したものの、簡便性、迅速性及び再現性の面で、さらに改善の必要性があった。
DNAチップ法を利用した有害又は有毒プランクトンにおける研究については、これまでに若干の報告があるのみであるが(非特許文献12〜14参照)、いずれもAlexandrium属の検出に特化したDNAチップであり、多種類の有毒渦鞭毛藻類を区別することができない。また、これらのDNAチップは熱帯性又は亜熱帯性の有害又は有毒プランクトンの検出プローブと、温帯性の有毒又は有害プランクトンの検出プローブとの両方を搭載したチップではないため、これらを同時に検出できず、海洋状況における温暖化の指標となる熱帯性プランクトンのモニタリングを行うことができないものであった。
本発明のプローブにおいて、前記少なくとも一部の塩基配列としては、例えば、前記藻類の染色体DNA中の大サブユニットリボソームRNA遺伝子の塩基配列や、前記藻類の染色体DNA中の大サブユニットリボソームRNA遺伝子のD1領域又はD2領域の塩基配列が挙げられる。
本発明のプローブにおいて、有害又は有毒渦鞭毛藻類としては、例えば、Alexandrium属、Dinophysis属、Gambierdiscus属、Gymnodinium属、Karenia属、Ostreopsis属、Pfiesteria属、Prorocentrum属、Protoceratium属、Protoperidinium属及びPyrodinium属からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
(a) 配列番号4、7、8、10〜16、20、22、27、29、31〜35、39〜47及び50〜58に示される塩基配列からなるDNA
(b) 上記(a)のDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ有害又は有毒渦鞭毛藻類に由来する核酸の塩基配列のうちの少なくとも一部の塩基配列を検出し得る機能を有するDNA
(3)複数の貫通孔を有し、それら貫通孔にゲルが保持されているマイクロアレイであって、前記ゲルに上記(1)に記載のオリゴヌクレオチドプローブが保持されている、有害又は有毒渦鞭毛藻類検出用マイクロアレイ。
所定の海域から海水を採取して被検体とし、当該被検体中の生物に由来する核酸を抽出する工程、及び
前記抽出した核酸を上記(1)に記載のオリゴヌクレオチドプローブ又は上記(2)若しくは(3)記載のマイクロアレイに接触させる工程
を含む、前記方法。
本発明の検出方法において、前記被検体としては、例えば、所定の複数の海域から海水を採取して得られた複数の被験体が挙げられる。
(6)上記(4)に記載の検出方法により得られた前記複数の被験体ごとの検出結果を比較解析し、当該解析結果を指標として海洋状況に対する地球温暖化の影響を推測することを特徴とする、海洋モニタリング方法。
上記(6)のモニタリング方法としては、例えば、前記複数の被験体ごとに、所定の有害又は有毒渦鞭毛藻類が検出されたか否かを比較することを含む方法が挙げられる。ここで、当該所定の有害又は有毒渦鞭毛藻類としては、例えば、Pyrodinium属及び/又はGambierdiscus属が挙げられる。
また、本発明のマイクロアレイ等を用いれば、熱帯又は亜熱帯に分布する有害又は有毒種の検出プローブを含むことにより、海洋状況における温暖化の指標である熱帯性プランクトンのモニタリングを迅速かつ正確に行うことができ、海洋環境に対する温暖化の影響把握が容易に可能となるため、本発明は極めて実用性に優れたものである。
21 多孔板
31 中空繊維
41 板状物
1.本発明の概要
本発明者は、前述した課題、すなわち迅速に多種類の有害又は有毒渦鞭毛藻類を検出することができ、また海洋状況のモニタリングを行うことが可能なオリゴヌクレオチドプローブ及びマイクロアレイ等の開発を行うにあたり、鋭意研究を行った結果、有害又は有毒渦鞭毛藻類の染色体DNA中の大サブユニットリボソームRNA遺伝子(LSU rRNA,28S rRNA)に着目し、特に当該遺伝子中のD1及びD2領域について前記渦鞭毛藻類の各々の種間で比較検討を行ったところ、各々の種に特異的な塩基配列が存在することを見出した。そこで、この特異的な配列を含む核酸断片(オリゴヌクレオチドプローブ)及びそれらが配置されたDNAマイクロアレイを用いることにより、迅速に多種類の有害又は有毒渦鞭毛藻類を特異的に検出可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
以上のように、本発明は、各種有害又は有毒渦鞭毛藻類の染色体DNA、具体的にはLSU rRNAのD1及びD2領域の塩基配列に着目することにより完成されたものであり、当該塩基配列又はその一部にハイブリダイズする塩基配列を有するオリゴヌクレオチドプローブが配置されたマイクロアレイに関するものである。すなわち、本発明は、各種有害又は有毒渦鞭毛藻類を迅速かつ特異的に検出することが可能なオリゴヌクレオチドプローブが配置されたマイクロアレイである。
2.有害又は有毒渦鞭毛藻類検出用オリゴヌクレオチドプローブ
本発明においてプローブとして使用されるオリゴヌクレオチドは、有害又は有毒渦鞭毛藻類に由来する核酸の塩基配列のうちの少なくとも一部の塩基配列とハイブリダイズすることができるものである。ここで、当該核酸は、DNA(染色体DNAやプラスミドDNA等)及びRNA(mRNA等)のいずれでもよく限定はされないが、染色体DNAであることが好ましい。具体的には、本発明においてプローブとして使用されるオリゴヌクレオチドは、前記渦鞭毛藻類の染色体DNA中の大サブユニットリボソームRNA遺伝子(LSU rRNA,28S rRNA)の塩基配列とハイブリダイズすることができるものであることが好ましく、より好ましくは、当該LSU rRNAのD1領域又はD2領域の塩基配列とハイブリダイズすることができるものである。すなわち、本発明のプローブは、ノーザンブロッティングやマイクロアレイ等の発現解析において、上記特定の領域中の少なくとも一部の塩基配列に対して相補的となるように設計され、ハイブリダイゼーションを行ったときにハイブリダイズすることができるものを意味する。
本発明のプローブ(特にマイクロアレイ用のプローブ)は、検出目的となる各種の前記渦鞭毛藻類に特異的な塩基配列となるような領域を選択してその領域の塩基配列を設計することが好ましい。一般的に、プローブの設計の際には、特異的な領域を選択することに加え、Tmがそろっていて、二次構造を形成しにくいものである必要があり、遺伝子等を検出目的とする場合はそのmRNAの3'末端からの距離が比較的近いものである必要がある。
本発明において、検出対象となる有害又は有毒渦鞭毛藻類としては、限定はされないが、Alexandrium属、Dinophysis属、Gambierdiscus属、Gymnodinium属、Karenia属、Ostreopsis属、Pfiesteria属、Prorocentrum属、Protoceratium属、Protoperidinium属及びPyrodinium属等の渦鞭毛藻類が挙げられ、これらうちの少なくとも1種、好ましくは2種以上を検出対象とすることが好ましい。また、例えば、海洋状況に対する地球温暖化の影響を推測する際には、Pyrodinium属及びGambierdiscus属を検出対象とすることが好ましい。
本発明のプローブの設計の際には、プローブの融解温度(Tm)を確認しておくことが好ましい。Tmとは、任意の核酸鎖の50%がその相補鎖とハイブリッド形成する温度を意味し、鋳型DNA又はRNAとプローブとが二本鎖を形成してハイブリダイズするためには、ハイブリダイゼーションの温度を最適化する必要がある。一方、この温度を下げすぎると非特異的な反応が起こりやすくなるため、温度は可能な限り高いことが望ましい。従って、設計しようとする核酸断片のTmはハイブリダイゼーションを行う上で重要な因子である。Tmの確認には、公知のプローブ設計用ソフトウエアを利用することができ、本発明で利用可能なソフトウエアとしては、例えばProbe Quest(登録商標;ダイナコム社)などが挙げられる。またTmの確認は、ソフトウエアを使わずに自ら計算することによっても行うことができる。その場合には、最近接塩基対法(Nearest Neighbor Method)、Wallance法、GC%法等に基づく計算式を利用することができる。本発明のプローブにおいては、限定はされないが、平均Tmが約35〜70℃あるいは45〜60℃であることが好ましい。なお、プローブとして特異的なハイブリダイズが可能な条件としては、その他にもGC含量等があり、その条件は当業者に周知である。
本発明のプローブとしては、具体的には、以下の(a)又は(b)のDNAの塩基配列を含むものが好ましく挙げられる。
(a) 配列番号4、7、8、10〜16、20、22、27、29、31〜35、39〜47及び50〜58に示される塩基配列からなるDNA
(b) 上記(a)のDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ有害又は有毒渦鞭毛藻類に由来する核酸の塩基配列のうちの少なくとも一部の塩基配列を検出し得る機能を有するDNA
また、上記(b)のDNAは、上記(a)の各種DNA若しくはそれと相補的な塩基配列からなるDNA、又はこれらを断片化したものをプローブとして用い、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、及びサザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法を実施し、cDNAライブラリーやゲノムライブラリーから得ることができる。ライブラリーは、公知の方法で作製されたものを利用してもよいし、市販のcDNAライブラリーやゲノムライブラリーを利用してもよく、限定はされない。ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、前記と同様のものを参照することができる。上記(b)のDNAに関し、「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄時の条件であって、バッファーの塩濃度が24〜390mM、温度が40〜65℃、好ましくは塩濃度が48.8〜195mM、温度が45〜60℃の条件を意味する。具体的には、例えば97.5mMで50℃等の条件を挙げることができる。さらに、このような塩濃度や温度等の条件に加えて、プローブ濃度、プローブの長さ、反応時間などの諸条件も考慮し、上記(b)のDNAを得るための条件を適宜設定することができる。ハイブリダイズするDNAとしては、上記(a)のDNAの塩基配列に対して少なくとも60%以上の相同性を有する塩基配列であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。
本発明において、検出目的となる前記各種渦鞭毛藻類が有する核酸の塩基配列は、当該塩基配列そのものである必要はなく、塩基配列の一部が欠失、置換、挿入等により変異が生じたものであってもよい。したがって、検出目的の核酸の塩基配列(例えば前記D1及びD2領域の塩基配列)は、当該塩基配列に相補的な配列と、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつそれぞれの塩基配列に由来する機能や活性を有する変異型遺伝子も対象とすることができ、プローブは、このような変異型遺伝子の塩基配列を基礎として設計することもできる。ここで「ストリンジェントな条件」は、前記と同様の条件を適用することができる。
3.有害又は有毒渦鞭毛藻類検出用マイクロアレイ
上述した本発明のプローブは、支持体となる基盤に複数配置される。プローブが配置された基盤は一般的にDNAチップ又はDNAマイクロアレイと称される。支持体となる基盤の形態としては、平板(ガラス板、樹脂板、シリコン板等)、棒状、ビーズ等のいずれの形態のものも使用できる。支持体として、平板を使用する場合は、その平板上に、所定の間隔もって、所定のプローブを種類毎に固定することができる(スポッティング法等;Science 270, 467-470 (1995)等参照)。また、平板上の特定の位置で、所定のプローブを種類毎に逐次合成していくこともできる(フォトリソグラフィー法等;Science 251, 767-773 (1991)等参照)。他の好ましい支持体の形態としては、中空繊維を使用するものが挙げられる。支持体として中空繊維を使用する場合は、所定のプローブを種類毎に各中空繊維に固定し、すべての中空繊維を集束させ固定した後、繊維の長手方向で切断を繰り返すことにより得られるマイクロアレイ(以下「繊維型マイクロアレイ」と言う)が好ましく例示できる。このマクロアレイは、貫通孔基板に核酸を固定化したタイプのものと説明することもでき、いわゆる「貫通孔型マイクロアレイ」とも言われる(特許第3510882号公報等参照)。
以下、「貫通孔型マイクロアレイ」の一形態である繊維型マイクロアレイに関して詳細に説明する。このマイクロアレイは、例えば、下記(i)〜(iv)の工程を経て作製することができる。
(i) 複数本の中空繊維を、中空繊維の長手方向が同一方向となるように3次元に配列して配列体を製造する工程
(ii) 前記配列体を包埋し、ブロック体を製造する工程
(iii) オリゴヌクレオチドプローブを含むゲル前駆体重合性溶液を前記ブロック体の各中空繊維の中空部に導入して重合反応を行い、プローブを含むゲル状物を中空部に保持させる工程
(iv) 中空繊維の長手方向と交差する方向で切断して、ブロック体を薄片化する工程
中空繊維は、その長手方向の長さが同一となるように3次元に配列される(工程(i))。配列方法としては、例えば、粘着シート等のシート状物に複数本の中空繊維を所定の間隔をもって平行に配置し、シート状とした後、このシートを螺旋状に巻き取る方法(特開平11-108928号公報参照)や、複数の孔が所定の間隔をもって設けられた多孔板2枚を孔部が一致するように重ね合わせ、それらの孔部に中空繊維を通過させ、その後2枚の多孔板の間隔を開いて仮固定し、2枚の多孔板間における中空繊維の周辺に硬化性樹脂原料を充満させて硬化させる方法(特開2001-133453号公報参照)などが挙げられる。後者の方法に用いる配列固定治具については、図3に示す該略図が参照される。
製造された配列体はその配列が乱れないように包埋される(工程(ii))。包埋の方法としては、ポリウレタン樹脂及びエポキシ樹脂等を繊維間の隙間に流し込む方法のほか、繊維どうしを熱融着により接着する方法等が好ましく挙げられる。
ゲル前駆体重合性溶液とは、ゲル形成重合性モノマー等の反応性物質を含有する溶液であって、該モノマー等を重合、架橋させることにより該溶液がゲル状物となることが可能な溶液をいう。そのようなモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ビニルピロリドン、メチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。この場合、溶液には重合開始剤等が含まれていてもよい。
中空繊維内にプローブを固定した後、中空繊維の長手方向と交差する方向(好ましくは直交する方向)で、ブロック体を切断して薄片化する(工程(iv))。このようにして得られた薄片は、DNAマイクロアレイとして使用できる。当該アレイの厚みは、0.01mm〜1mm程度であることが好ましい。ブロック体の切断は、例えば、ミクロトーム及びレーザー等により行うことができる。
上述した繊維型マイクロアレイとしては、例えば、三菱レイヨン社製DNAチップ(Genopal TM)等が好ましく挙げられる。
また、マイクロアレイに配置されるプローブの種類の数は、1つのマイクロアレイ上(中)に1000種類以下、好ましくは500種類以下、さらに好ましくは250種類以下が好ましい。このように配置されたプローブ数(種類)をある程度制限することにより、目的の渦鞭毛藻類をより高感度で検出することが可能となる。なお、プローブの種類は塩基配列によって区別される。従って、通常、同じ遺伝子に由来のプローブであっても塩基配列が1個でも異なれば別の種類として特定する。
なお、本明細書においては、DNAマイクロアレイ及びDNAチップ等の名称については、それぞれ区別はせず、同義語であるとする。
4.有害又は有毒渦鞭毛藻類の検出方法
本発明の有害又は有毒渦鞭毛藻類の検出方法は、下記の工程を含む方法である。
(i) 所定の海域から海水を採取して被検体とし、当該被検体中の生物に由来する核酸を抽出する工程(抽出工程)
(ii) 上記抽出した核酸を、前述した本発明のオリゴヌクレオチドプローブ(前記2.項)又は本発明のマイクロアレイ(前記3.項)に接触させる工程(検出工程)
(1) 工程(i)について
本工程(抽出工程)では、所定の海域から海水を採取して被検体とし、当該被検体中の生物に由来する核酸を抽出するが、被検体を採取する海域は特に限定はされない。採取する海水としては、限定はされないが、具体的には、海洋開発現場海域の海水、養殖場の海水、養殖場の海水、又は病気を発症している魚が生息する海水などが挙げられ、例えば、海洋の環境状況を知ろうとする目的で、その海域の海水を採取してもよい。また、当該被検体は、1つの海域から採取して得られた被験体であってもよいし、複数の海域から採取して得られた複数の被験体であってもよいが、複数の海域からサンプルを採取する場合は、例えば、複数の海域についての比較検討を行う、又は海域の状況ごとに海域のグループ分けを行うなど、多様化した様式の海洋モニタリングが可能である。
5'-ACCCGCTGAATTTAAGCATA-3' (配列番号1)
リバースプライマー D2C:
5'-CCTTGGTCCGTGTTTCAAGA-3' (配列番号2)
本工程(検出工程)では、工程(i)で得た核酸又はその増幅断片を、本発明のオリゴヌクレオチドプローブ又は本発明のマイクロアレイに接触させるが、具体的には、当該核酸等を含むハイブリダイゼーション溶液を調製し、当該溶液中の核酸等を、マイクロアレイに搭載されたオリゴヌクレオチドプローブに結合(ハイブリダイズ)させる。ハイブリダイゼーション溶液は、SDSやSSC等の緩衝液を用いて、常法に従い、適宜調製することができる。
ハイブリダイゼーション反応は、ハイブリダイゼーション溶液中の核酸等が、マイクロアレイに搭載されたオリゴヌクレオチドプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るよう、反応条件(緩衝液の種類、pH、温度等)を適宜設定して行うことができる。なお、ここで言う「ストリンジェントな条件」とは、類似配列によるクロスハイブリダイゼーションを生じにくい、あるいは類似配列によってクロスハイブリダイゼーションした核酸を解離させる条件のことをいい、具体的には、ハイブリダイゼーション反応時又はハイブリダイゼーション後のマイクロアレイの洗浄条件を意味する。
また、ハイブリダイゼーション後のマイクロアレイの洗浄条件としては、洗浄液組成は、0.12M Tris・HCl/0.12M NaCl/0.05% Tween-20であることが好ましく、洗浄時の温度は、35〜80℃あるいは40〜65℃が好ましく、より好ましくは45〜60℃である。より具体的には、塩(ナトリウム)濃度が48〜780mMであり、温度が37〜80℃である条件が好ましく、より好ましくは塩濃度が97.5〜390mMであり、温度が45〜60℃である条件である。
このように、検出強度の測定により検出目的の有害又は有毒渦鞭毛藻類由来の核酸の検出を行い、その後は定法に従い、当該検出結果を指標として、各種当該渦鞭毛藻類の存在量などを測定することができる。
5.海洋モニタリング方法
本発明の海洋モニタリング方法は、上記本発明の検出方法を用いて得られた検出結果を解析し、この解析結果を指標として海洋の状況を推測することを特徴とする方法である。
モニタリングの対象となる、所定の海域の海水から採取した被検体は、1つの海域から採取したものであってもよいし、複数の海域から採取したものであってもよく限定はされないが、複数の海域から採取したものを対象とする場合は、これら複数の被験体ごとの検出結果を比較解析し、その解析結果を指標とすることにより、例えば、海洋状況に対する地球温暖化の影響を推測することもできる。この場合は、複数の被験体ごとに、所定の前記渦鞭毛藻類が検出されたか否かを比較することが好ましく、具体的には、Pyrodinium属及びGambierdiscus属のいずれか又は両方について検出の有無や存在量の程度を比較することが好ましい。
統計的解析の方法としては、例えば、相関解析、階層的クラスタリング及び非階層的クラスタリングなどがある。より具体的には、相関解析時に用いる距離関数として、Pearson correlation、Cosine coefficient 等の手法が挙げられる。また、階層的クラスタリングとしては、UPGMA(unweighted-pair group methodusing arithmetic averages )などの手法が挙げられる。このような解析手法を用い、クラスター解析を行うことにより、各海域のグループ化が可能であり、さらには各海域の類比などを判別することができる。その結果、例えば前述したように、海洋状況に対する地球温暖化の影響を推測することもできる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下のプランクトンのゲノムDNAを、独立行政法人水産総合研究センター瀬戸内海区水産研究所 赤潮環境部有毒プランクトン研究室および赤潮生物研究室で培養株を確立して継代培養したサンプルから抽出した。ゲノムDNA抽出は核酸抽出キット DNeasy Plant Mini Kit(QIGEN社)を用いて行った。
1 Cochlodinium Polykrikoides
2 Heterocapsa pygmaea
3 Heterocapsa triquetra
4 Heterocapsa ildefina
5 Heterocapsa arctica
6 Heterocapsa circularisquama
7 Chattonella ovata
8 Karenia mikimotoi
9 Gymnodinium catenatum
10 Alexandrium affine
11 Alexandrium catenella
12 Alexandrium fraterculus
13 Alexandrium tamiyavanichii
14 Alexandrium tamarense
15 Heterosigma akashiwo
16 Alexandrium minutum
17 Karenia degitata
18 Alexandrium taylori
19 Alexandrium ostenfeldii
引き続き、以下の表1にしたがって、ゲノムDNAを混合し、20種類のサンプルを調整した。表1において「○」印をつけた部分はそのゲノムDNAを1μl混合したことを示し、「×」印をつけた部分は、代わりに滅菌水1μlを混合したことを示す。すなわち、19μlのゲノムDNA混合溶液、20種類を作製した。
次に、これら有害又は有毒渦鞭毛藻類の大サブユニットリボソームRNA(LSU rRNA)遺伝子D1、D2領域の配列を増幅した。
前述の有害又は有毒渦鞭毛藻類混合ゲノムDNAをテンプレートとし、以下の反応液組成及び反応条件でPCRを実施した。テンプレートDNAは、混合した19μlから1μlを用いた。PCR用キットは、QIGEN HotStarTaq Master Mix Kit(QIAGEN社)を用い、GeneAmp9700(アプライドバイオシステムズ社、50μl、9600エミュレーションモード)により行った。プライマーは下記の配列を有するプライマーを用いた。なお、リバースプライマーは5'末端がCy5で蛍光標識化されているものを用いた。
5'-ACCCGCTGAATTTAAGCATA-3' (配列番号1)
リバースプライマー D2C:
5'-Cy5-CCTTGGTCCGTGTTTCAAGA-3' (配列番号2)
2×HotStarTaq Master Mix 25μl
プライマーmix(10μM each) 5μl
テンプレートDNA(ゲノム混合物) 1μl
滅菌水 19μl
合計 50μl
94℃で5分間加熱後、「解離:94℃(30sec)→アニーリング:50℃(60sec)→合成:72℃(30sec)」を1サイクルとして計50サイクル行い、次いで72℃で5分間加熱した後、4℃で冷却した。
上記PCR後の反応液を、QIAGEN PCR MinElute精製キット(QIGEN社)でカラム精製し、22μl、1回で溶出した。約20μlのPCR産物を回収した。
貫通孔型のDNAチップを、特開2007-74950号公報(メチル化DNA及び/又は非メチル化DNAの検出方法)の実施例1に記載の方法と同様の方法で製造を行った。
ただし、搭載させたオリゴヌクレオチドプローブ(キャプチャープローブ)は、下記配列番号3〜23に示す配列情報をもつプローブを用いた。また、図1に、製造したDNAチップの配列図を示した。図中の番号は、配列番号3〜23に示されるプローブの番号を示している。ここで、配列番号3、5、7、17、18、23に示されるプローブは公知配列である。
GGTGTATGTGTGTGTTCCTGTGCTT (配列番号3)
プローブ番号2 No1_1_A.tamarense
TGGGCTGTGGGTGTAATGATTCTTTC (配列番号4)
プローブ番号3 Bac-28F630_A.catenella
GTTTGTGTCCTTGTCCTTGAGGTTG (配列番号5)
プローブ番号4 No4_9_A.catenella
CTTGTCCTTGAGGTTGCTTTCTCCCTT (配列番号6)
プローブ番号5 Atamiy-602_A.tamiyavanichii
TGTGTGCACATATTGTTCTTCAGGA (配列番号7)
GCATGCGTGTATAAGCATTTGTGTGC (配列番号8)
プローブ番号7 No7_3_A.tamiyavanichii
CATGAATGGTATTATTCCTGTGGGGG (配列番号9)
プローブ番号8 No8_6_Afraterculus
GTGTGTGCTAGTTATTTGTGCATGTGCTGAC (配列番号10)
プローブ番号9 No8_9_Afraterculus
GCAATGTTTGTTGCTGTGTGTGCTAG (配列番号11)
プローブ番号10 No13_3_A.affine
TTCTTGAAGCTGGGCCTACCCTACTAGAG (配列番号12)
ACAAGCTAATGGTGACGAAATGGT (配列番号13)
プローブ番号12 GC02_G.catenatum
ACACGCGTGGCACCTTCCTTACAAGC (配列番号14)
プローブ番号13 No17_1_Gcatenatum
CAACAAACAGTTCAACCTTTGTGGGG (配列番号15)
プローブ番号14 No.17_629_Gcatenatum
GTTGCTTCGTGTTGCGTGCTCTGGCG (配列番号16)
プローブ番号15 Ki_and_Han_2006_Chattonella marina
TTACTCTCCTGTTGCTGTTTCTGTC (配列番号17)
CTTGGGTTGATCGTGGGTCCTGACA (配列番号18)
プローブ番号17 Kg01_K.degitata
AGAACTCATTTCTTAACTGATCTCTGC (配列番号19)
プローブ番号18 Kg02_K.degitata
TGCTTCGGGTCTGGAGCTTCGGCTCT (配列番号20)
プローブ番号19 No26_30_Karenia-degitata
CTTAACTGATCTCTGCATGTCTGGTCGC (配列番号21)
プローブ番号20 No33_1_Karenia mikimotoi
GATCTTCTGCTCTGCATGAAGGTTGTTG (配列番号22)
プローブ番号21 Bha-28F618_H.akashiwo
GTATGCTGGTGTCTACTGCTTGCAG (配列番号23)
以下のように各溶液を混合し、ハイブリダイゼーション溶液を調製した。
表1に示した各サンプル番号のサンプル 19μl
滅菌水 80μl
1M Tris/HCl(pH7.5) 18μl
1M NaCl 18μl
0.5% Tween-20 15μl
合計 150μl
150μlのハイブリダイゼーション溶液を、前記DNAチップに接触させ(アプライし)、50℃で16時間ハイブリダイゼーション反応を行った。
ハイブリダイゼーション反応後、以下の手順(a)〜(d)でDNAチップを洗浄した
(a) 滅菌済みの遠心管に0.12M Tris・HCl/0.12M NaCl/0.05% Tween-20を10ml入れ、これを2本用意した。同様に、滅菌済みの遠心管に0.12M Tris・HCl/0.12M NaClを10ml入れ、これを1本用意した。
(b) 0.12M Tris・HCl/0.12M NaCl/0.05% Tween-20溶液が入った2本は50℃に保温し、残りの1本は室温に置いた。
(c) 保温した洗浄液が50℃に温まったところで、チャンバーからDNAチップを取り出して20分間浸漬した。その後、もう1本の洗浄液にDNAチップを取り出して移し入れ、再度20分間浸漬した。
(d) その後、50℃の洗浄液から室温の洗浄液にDNAチップを移した。
上記洗浄後、三菱レイヨン社製の冷却CCD式蛍光検出装置(型番:0060304)を用い、下記検出条件で、各スポットの蛍光強度を測定した。
<検出条件>
中心励起波長 :630nm
蛍光フィルター:Cy5フィルター
露光時間 :1000msec
チップごとに、バックグラウンド値(プローブを搭載していないスポットの上下20%を除いた中央値)を各スポットの蛍光強度から減算し、ハイブリダイゼーションに由来する蛍光強度(以後、シグナル強度と呼ぶ)を算出した。
サンプル番号1〜20のシグナル強度の検出結果(算出結果)を下記の表2に示した。
例えば、サンプル番号15番についての結果を考える。サンプル番号15番は、表1よりA.tamarenseのゲノムDNAを含んでいないので、DNAチップで検出されないはずである。表2の結果を見ると、サンプル15番を用いた時、プローブ番号1番、2番のシグナル強度は他のサンプルと比較して極端に低い値となっており、プローブ番号1番、2番ともに特異的に検出できていると考えられた。
以下同様にして、他のプローブについても特異性を確認することができた。
実施例1で使用した貫通孔型のDNAチップのプローブに、以下のプローブを追加して新規に貫通孔型のDNAチップを作製した。
TTGGTGGGAGTGTTGCACT (配列番号24)
プローブ番号23 90622tamarense2
ACTTGCTTGACAAGAGCTTTGGGC (配列番号25)
プローブ番号24 90622tamarense3
CTGGTGTATGTGTGTGTTCC (配列番号26)
プローブ番号25 90622tamarense4
GCTTGGGGATGCTTCCTTCCTTGGA (配列番号27)
プローブ番号26 90622catenella1
TAACAATGGGTTTTGGCTGCA (配列番号28)
TGTGCCAGTTTTTATGTGGA (配列番号29)
プローブ番号28 90622catenella3
GCATATGCATGTAATGATTTGCATGT (配列番号30)
プローブ番号29 90622catenella4
TCCTTGTCCTTGAGGTTGCTTTCTC (配列番号31)
プローブ番号30 90622fraterculus1
TGCATGTCGATGTGAATTGC (配列番号32)
プローブ番号31 90622fraterculus2
GTGTGTGCTAGTTATTTGTGCATG (配列番号33)
CATGCATGCATGTGTGCTCAGG (配列番号34)
プローブ番号33 90622fraterculus4
TGGGTGTTGTTCGCTGTATGG (配列番号35)
プローブ番号34 90622ostenfeldii1
GAGATTGTTGCGTCCACTTGT (配列番号36)
プローブ番号35 90622ostenfeldii2
GTGTGCCCTCTTGCCAAATG (配列番号37)
プローブ番号36 90622ostenfeldii3
GGGCTCTCCTCCCTGGGCAC (配列番号38)
GATTGTTGTGTGTTAGTGAC (配列番号39)
プローブ番号38 90622bahamense2
AGTGACATAGGTCACCATGCAC (配列番号40)
プローブ番号39 90622bahamense3
ACCTTGACATGTGTGCTGCAAG (配列番号41)
プローブ番号40 90622bahamense4
TGTGCACCTTCTGGAACAACCC (配列番号42)
プローブ番号41 90622mexicanum1
CTTGCTCCTCGCGCCCAGC (配列番号43)
GCTCCTCGCACCCAGCGCTCGGG (配列番号44)
プローブ番号43 90622mexicanum3
CTTGGACGTGCTTGGGCGTGGGAGCTT (配列番号45)
プローブ番号44 90622lima1
CATTCCCTTGCCAATTAATGCAA (配列番号46)
プローブ番号45 90622lima2
CATTCCCTTGCCAACTAATGCAA (配列番号47)
プローブ番号46 90622lima3
TGCAGCTCCCTGCCTACGAGGCA (配列番号48)
AGCGCTCCATGCCTATCAGGCA (配列番号49)
プローブ番号48 90622montis1
CTGTTGCAATGATTTTTTGTATCGTGATGC (配列番号50)
プローブ番号49 90622montis2
GCAAGGCTATTGCAATGATTTTTTGTATAGTGATGC (配列番号51)
プローブ番号50 90622montis3
AGAGCTTGCAATTGCTGAACTGATAAGC (配列番号52)
プローブ番号51 90622Karenia brevis1
GGGACATGGTAATTTGCTTCCGGGC (配列番号53)
GTGTCTGGTCGCACTGCTCCG (配列番号54)
プローブ番号53 90622Karenia brevis3
AATCTTCTGCTTGGCATGAAGGTTGCTA (配列番号55)
プローブ番号54 90622taylory1
GCATGGGTTTAATGTGTAAATTGTATGAGC (配列番号56)
プローブ番号55 90622taylory2
TTAGCTCGCATGTAGAGTGTCTGTGC (配列番号57)
プローブ番号56 90622taylory3
CTGTGCAATGTAACATTGCAAC (配列番号58)
GATGACAAAATGGTTCCATACG (配列番号59)
プローブ番号58 90622 convolutum 2
GACAAAATGGTTCCATACGAC (配列番号60)
プローブ番号59 90622 convolutum 3
GATGACAAAATGGTTCCATACGAC (配列番号61)
プローブ番号60 90622toxicus1
GRAAGTGGAGTGYAAAGTGGGTGGTA (配列番号62)
プローブ番号61 90622toxicus2
TGAGGGAARYGTGAAAAGGACTTTGGA (配列番号63)
プローブ番号62 90622toxicus3
ACTTGCTGAWGDGCAAGCATACAG (配列番号64)
図中の番号1〜21は、実施例1でのプローブ番号(配列番号3〜23に示したプローブの番号)であり、番号22〜62は、本実施例2で列挙したプローブ番号(配列番号24〜64に示したプローブの番号)を示している。
20 Pyrodinium bahamense
21 Prorocentrum mexicanum
22 Prorocentrum lima
23 Karenia brevis
24 Alexandrium taylori
25 Cochlodinium convolutum
26 Gambierdiscus toxicus
27 Coolia montis
28 Ostreopsis siamensis
次に、これら9種類の有毒渦鞭毛藻類の大サブユニットリボソームRNA(LSU rRNA)遺伝子D1、D2領域の配列を増幅した。
1ng/μl ゲノムDNA 1μlをテンプレートとし、以下の反応液組成及び反応条件でPCRを実施した。PCR用キットは、QIGEN HotStarTaq Master Mix Kit(QIAGEN社)を用い、GeneAmp9700(アプライドバイオシステムズ社、50μl、9600エミュレーションモード)により行った。プライマーは下記の配列を有するプライマーを用いた。なお、リバースプライマーは5'末端がCy5で蛍光標識化されているものを用いた。
5'-ACCCGCTGAATTTAAGCATA-3' (配列番号1)
リバースプライマー D2C:
5'-Cy5-CCTTGGTCCGTGTTTCAAGA-3' (配列番号2)
2×HotStarTaq Master Mix 25μl
プライマーmix(10μM each) 5μl
テンプレートDNA(ゲノムDNA) 1μl
滅菌水 19μl
合計 50μl
94℃で5分間加熱後、「解離:94℃(30sec)→アニーリング:68℃(60sec)→合成:72℃(30sec)」を1サイクルとして計50サイクル行い、次いで72℃で5分間加熱した後、4℃で冷却した。
上記PCR後の反応液を、QIAGEN PCR MinElute精製キット(QIGEN社)でカラム精製し、22μl、1回で溶出した。約20μlのPCR産物を回収した。回収したPCR産物を電気泳動したところ、約700〜800bp付近に単一のバンドを認めた。
これら9種類の精製後のPCRをDNAチップにハイブリダイゼーションし、プローブの特異性を確認した。
以下のように各溶液を混合し、ハイブリダイゼーション溶液を調製した。
精製後のPCR産物サンプル 15μl
滅菌水 84μl
1M Tris/HCl(pH7.5) 18μl
1M NaCl 18μl
0.5% Tween-20 15μl
合計 150μl
150μlのハイブリダイゼーション溶液を、前記DNAチップに接触させ(アプライし)、50℃で16時間ハイブリダイゼーション反応を行った。
これらについては、実施例1と同様の方法で実施した。
シグナル強度の検出結果(算出結果)を下記の表3に示した。ここでプローブ番号19、20はKarenia brevisをハイブリダイゼーションしたときに、シグナル強度が上昇しているため、使用すべきプローブではないことが分かった。
また表3の結果から以下のことも分かった。
プローブ番号37、38、39、40の比較では、40番のプローブがもっともシグナル強度が高く、また特異的に検出できていることが明らかとなった。すなわち、Pyrodinium bahamenseの検出には、プローブ番号40番の配列のものが適していることが分かった。
プローブ番号60、61、62の比較では、60、61番のプローブは、Gambierdiscus toxicus以外のものでもシグナル強度が上昇しており、62番のみ使用できることが分かった。すなわち、Gambierdiscus toxicusの検出には、プローブ番号62番の配列のものが適していることが分かった。
プローブ番号57、58、59の比較では、59番のプローブがもっともシグナル強度が高く、また特異的に検出できていることが明らかとなった。すなわち、Cochlodinium convolutumの検出には、プローブ番号59番の配列のものが適していることが分かった。
プローブ番号51、52、53の比較では、51もしくは52番のプローブがもっともシグナル強度が高く、また特異的に検出できていることが明らかとなった。すなわち、Karenia brevisの検出には、プローブ番号51、もしくは52番の配列のものが適していることが分かった。
プローブ番号44、45、46、47の比較では、44番のプローブがもっともシグナル強度が高く、また特異的に検出できていることが明らかとなった。すなわち、Prorocentrum limaの検出には、プローブ番号44番の配列のものが適していることが分かった。
プローブ番号54、55、56、の比較では、55番のプローブがもっともシグナル強度が高く、また特異的に検出できていることが明らかとなった。すなわち、Alexandrium tayloriの検出には、プローブ番号55番の配列のものが適していることが分かった。
より実際的な評価に耐えうるDNAチップとするために、実施例2で製造したDNAチップを用いて、引き続きプローブの評価を実施した。
2009年07月28日の広島湾桟橋海水を1リットル程度とり、これをオートクレーブして滅菌海水を得た。この滅菌海水50mlに、下記の(1)〜(12)及び(N)の組み合わせで、培養細胞を1種につき50細胞ずつ加えて、13種類のサンプルを作製した。その後、これらの溶液50mlを5マイクロのヌクレポアフィルター(直径24mm)上にろ過した。25mM NaOH に、Chelex100 Resin(Bio-Rad社製)が10%(w/vol)になるように懸濁した溶液を作製した。この溶液500μlに、上記のろ過したろ紙を入れ、100℃で10分間加熱した。氷上で冷却後、ボルテックスで混合し、さらに100mM Tris-HCl(pH7.5)を100μl加えてボルテックスで混合した。その後、卓上遠心機で遠心し、沈殿を底に沈ませ、上清をDNA抽出溶液として用いた。このようにして、12種類の混合DNA溶液とネガティブコントロール溶液を準備した。
(1) A.tamarense、A.catenella、A.fraterculus
(2) A.tamarense、A.catenella
(3) A.fraterculus、A.ostenfeldii、H.akashiwo
(4) H.akashiwo、G.catenatum、K.mikimotoi
(5) G.catenatum、K.mikimotoi、K.brevis
(6) K.brevis, C.polykrikoides,H.circularisquama
(7) C.polykrikoides,H.circularisquama,A.affine
(8) A.affine、A.tamiyavanichii、A.taylori
(9) A.tamiyavanichii、A.taylori、C.montis
(10) C.montis、Chattonella ovata、P.bahamense
(11) Chattonella ovata、P.bahamense、P.lima
(12) P.lima、P.mexicanum、A.tamarense
(N) 上記の培養細胞を全く加えていない海水のみ(Negative-Control)
これらすべて26種類のDNA溶液をPCR反応のテンプレートとして1μl使用した。
<検出>,<バックグラウンドの減算>
これらについては、実施例1と同様の方法で実施した。ただし、DNAチップは実施例2で製造したものを用いた。DNAチップでのシグナル強度の検出結果(算出結果)を下記表4に示した。表4中、太い四角で囲んである部分は海水に添加したプランクトンの種類である。また、灰色で示されている部位は、予期せぬクロスハイブリダイゼーションが起こった部位である。添加していないにもかかわらず、シグナル強度が500以上となった場合、クロスハイブリダイゼーションが起こったと判断した。
下記表4の結果と、実施例1、2の結果とを合わせた総合的な判断より、すべてのサンプルでクロスハイブリダイゼーションがなく、特異的に検出ができると考えられた新規なプローブを見出した。これら新規プローブを表5に示した。
Claims (13)
- 有害又は有毒渦鞭毛藻類に由来する核酸の塩基配列のうちの少なくとも一部の塩基配列にハイブリダイズし得る塩基配列を含む、有害又は有毒渦鞭毛藻類検出用オリゴヌクレオチドプローブ。
- 前記少なくとも一部の塩基配列が、前記藻類の染色体DNA中の大サブユニットリボソームRNA遺伝子の塩基配列である、請求項1記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
- 前記少なくとも一部の塩基配列が、前記藻類の染色体DNA中の大サブユニットリボソームRNA遺伝子のD1領域又はD2領域の塩基配列である、請求項1記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
- 有害又は有毒渦鞭毛藻類が、Alexandrium属、Dinophysis属、Gambierdiscus属、Gymnodinium属、Karenia属、Ostreopsis属、Pfiesteria属、Prorocentrum属、Protoceratium属、Protoperidinium属及びPyrodinium属からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
- 下記(a)又は(b)のDNAの塩基配列を含むものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
(a) 配列番号4、7、8、10〜16、20、22、27、29、31〜35、39〜47及び50〜58に示される塩基配列からなるDNA
(b) 上記(a)のDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ有害又は有毒渦鞭毛藻類に由来する核酸の塩基配列のうちの少なくとも一部の塩基配列を検出し得る機能を有するDNA - 請求項1〜5のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブが基盤に配置された、有害又は有毒渦鞭毛藻類検出用マイクロアレイ。
- 複数の貫通孔を有し、それら貫通孔にゲルが保持されているマイクロアレイであって、前記ゲルに請求項1〜5のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブが保持されている、有害又は有毒渦鞭毛藻類検出用マイクロアレイ。
- 有害又は有毒渦鞭毛藻類の検出方法であって、
所定の海域から海水を採取して被検体とし、当該被検体中の生物に由来する核酸を抽出する工程、及び
前記抽出した核酸を請求項1〜5のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブ又は請求項6若しくは7記載のマイクロアレイに接触させる工程
を含む、前記方法。 - 前記被検体が、所定の複数の海域から海水を採取して得られた複数の被験体である、請求項8記載の方法。
- 請求項8又は9記載の方法により得られた検出結果を解析し、当該解析結果を指標として海洋状況を推測することを特徴とする、海洋モニタリング方法。
- 請求項9記載の方法により得られた前記複数の被験体ごとの検出結果を比較解析し、当該解析結果を指標として海洋状況に対する地球温暖化の影響を推測することを特徴とする、海洋モニタリング方法。
- 前記複数の被験体ごとに、所定の有害又は有毒渦鞭毛藻類が検出されたか否かを比較することを含む、請求項11記載の方法。
- 所定の有害又は有毒渦鞭毛藻類が、Pyrodinium属及び/又はGambierdiscus属である、請求項12記載の方法。
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