JP2011179916A - 漏洩監視装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】漏洩時に温度上昇を伴わない微少な配管漏洩を確実に検出することが困難となる場合、周辺機器の運転状況や室温変化によって温度上昇が発生し配管漏洩のみの検出が困難となる場合でも、プラント配管および周辺機器等からの微少な漏洩を確実に検出することができ、漏洩検出の高精度化が図れるようにする。
【解決手段】漏洩液体との接触により膨潤する膨潤性物質で覆われたフォトニック結晶ファイバ4について、その膨潤による後方散乱光の強度減少を検出する光強度検出手段と、この光強度検出手段によって検出された後方散乱光の強度減少に基づいて液体の漏洩を検出する漏洩検出手段と、漏洩位置の同定を行う演算手段とを備える。
【選択図】 図1

Description

本発明はプラント配管等からの液体漏洩を検出する漏洩監視装置に係り、特にフォトニック結晶ファイバの適用により微少な漏洩を確実に検出することができる漏洩監視装置に関するものである。
一般にプラント配管は各設備機器等の間で多種多様かつ複雑に設置されており、プラント配管の漏洩監視が重要となっている。従来では、このようなプラント配管の漏洩監視について、各配管に沿って光ファイバを敷設し、この光ファイバ中を伝搬する光パルスの後方ラマン散乱光の波長が漏洩部の温度上昇によって変動することを利用して、漏洩検出を行う手法が知られている。
図12は、従来例による漏洩監視装置を示す構成図である。この図12に示すように、光ファイバ100が配管104に沿って敷設してあり、この光ファイバ100の中に光パルスを伝播させる光パルス手段101、漏洩部からの後方ラマン散乱光を検出する検出手段102a,102b、後方ラマン散乱光の強度から漏洩を検出する演算手段103から構成される漏洩検出装置が挙げられる(例えば、特許文献1,2参照)。
光ファイバ100の後方ラマン散乱光には、波長が異なる2種類の光が含まれ、その波長は温度によって変動し、その強度比も温度の関数となる。これにより、検出手段102bにおいて後方ラマン散乱光を波長弁別して検出し、演算手段103においてその強度比から温度上昇を求め、配管漏洩を検出する。また、配管漏洩部の位置は、後方ラマン散乱光の伝搬時間から求めている。
特開平10−281923号公報 特開平07−198540号公報
上述した従来の漏洩監視装置においては、漏洩部の温度上昇に基づいて配管漏洩の検出を行うため、温度上昇を伴わない微少な配管漏洩を確実に検出することが困難となる場合があった。また、配管漏洩以外についても、周辺機器の運転状況や室温の変化によって温度上昇が発生するため、配管漏洩のみの確実な検出が困難となる場合があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、プラント配管および周辺機器等からの微少な漏洩についても確実に検出することができ、漏洩検出の高精度化が図れる漏洩監視装置を提供することを目的とする。
本発明では、監視対象からの漏洩液体の発生を監視する漏洩監視装置であって、監視対象に沿って敷設されたフォトニック結晶ファイバと、前記フォトニック結晶ファイバを覆い、前記監視対象からの漏洩液体により膨潤して前記フォトニック結晶ファイバを変形させる膨潤性物質と、前記フォトニック結晶ファイバの一端に光を入射させる光源と、前記フォトニック結晶ファイバからの出射光の強度を検出する光強度検出手段と、前記出射光の強度変化に基づいて前記監視対象からの漏洩を検出する演算手段と、を備えたことを特徴とする漏洩監視装置を提供する。
本発明において、前記出射光は、前記フォトニック結晶ファイバ内で生じた後方散乱光であることが望ましい。
本発明において、前記出射光は、前記フォトニック結晶ファイバの別の一端から出射された伝搬光であることが望ましい。
本発明において、前記出射光を分光して前記光強度検出手段に入射させる分光手段を備えることが望ましい。
本発明において、前記フォトニック結晶ファイバは、側面とクラッドとを連通する孔部を有することが望ましい。
本発明において、孔部から前記フォトニック結晶ファイバ内に進入した漏洩液体を除去する乾燥手段を備えることが望ましい。
本発明において、前記乾燥手段が、前記フォトニック結晶ファイバ内部の空孔内に気体を送る送風手段であることが望ましい。
本発明において、前記乾燥手段が、前記フォトニック結晶ファイバの端部に取り付けられる乾燥剤であることが望ましい。
本発明において、監視対象からの漏洩液体の発生を監視する漏洩監視装置であって、監視対象に沿って敷設されたフォトニック結晶ファイバと、前記フォトニック結晶ファイバを覆い、前記監視対象からの漏洩液体により膨潤して前記フォトニック結晶ファイバを変形させる膨潤性物質と、前記フォトニック結晶ファイバの一端にパルス光を入射させる光源と、前記フォトニック結晶ファイバからの出射光を検出する光検出手段と、前記出射光のパルス時間幅の変化に基づいて前記監視対象からの漏洩を検出する演算手段と、を備えることが望ましい。
本発明において、前記光源がモード同期レーザにより構成されることが望ましい。
本発明において、前記光源が、前記漏洩液体によって吸収される波長を含む光を発生させるように構成されており、前記フォトニック結晶ファイバの前記一端および別の一端の少なくとも何れかから出射する光を分光する第2分光手段を備えることが望ましい。
本発明によれば、フォトニック結晶ファイバの変形が漏洩液体のみにより発生すること、またフォトニック結晶ファイバはコアへのパルス光の閉じ込め効率が高いため、ファイバの変形による伝搬光や後方散乱光の減少を高感度に検出することができることにより、微少な漏洩を確実に検出することが可能である。
また、フォトニック結晶ファイバを覆う膨潤性物質は、保持手段に覆われる、或いは保持手段の内部に埋め込まれるため漏洩液体以外とは完全に接触がなく、微少な漏洩を確実に検出することが可能である。
本発明の第1実施形態による漏洩監視装置を示す構成図。 前記第1実施形態の正常時における後方散乱光の強度と伝搬距離との関係を示す特性図。 前記第1実施形態の漏洩時における後方散乱光の強度と伝搬距離の関係を示す特性図。 本発明の第2実施形態による漏洩監視装置を示す構成図。 前記第2実施形態におけるフォトニック結晶ファイバの保持状態を示す軸方向断面図。 前記第2実施形態におけるフォトニック結晶ファイバの波長分散特性の例を示す特性図。 前記第2実施形態におけるフォトニック結晶ファイバの正常時と漏洩時とにおける後方散乱光のパルス波形を示す特性図。 本発明の第3実施形態による漏洩監視装置を示す構成図。 (a)は前記第3実施形態におけるフォトニック空孔を備えたフォトニック結晶ファイバの構造の例を示す径方向断面図、(b)は(a)の軸直角方向断面図。 (a)は監視対象を示す第3実施形態におけるフォトニック空孔を備えたフォトニック結晶ファイバの構造の例を示す径方向断面図、(b)は(a)の軸直角方向断面図。 前記第3実施形態におけるフォトニック正常時と漏洩時における後方散乱光のスペクトルを示す特性図。 従来例による漏洩監視装置を示す構成図。
以下、本発明に係る漏洩監視装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお以下の実施形態においては、監視対象として、配管、フランジ、弁、ピット、タンク、ポンプ、或いは圧力容器、加圧器、熱交換器などのプラント機器などが挙げられる。
以下の実施形態では代表的に、配管を監視対象とする漏洩監視装置の実施形態について説明する。
[第1実施形態](図1−図3)
図1は本発明の第1実施形態による漏洩監視装置の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態の漏洩監視装置は、パルス光を発する光源1と、光源1からのパルス光を伝送し、漏洩液体によって膨潤する膨潤性物質2により覆われ、監視対象3に沿って設置されるフォトニック結晶ファイバ(Photonic Crystal Fiber:PCF)4とを備えている。
さらに、フォトニック結晶ファイバ4の入射端に設置され、フォトニック結晶ファイバ4の後方散乱光の光強度をパルス光と分離して検出する検出手段5a,5bと、漏洩液体による膨潤性物質2の膨潤によって変化する後方散乱光の光強度を用い、漏洩検出とその位置を特定する演算手段6と、監視対象3の一部または全体を覆い、フォトニック結晶ファイバ4を内部に保持する保持手段7とを備えている。
フォトニック結晶ファイバ4は、紫外域から近赤外域に至る波長の光が伝送可能であるため、光源1はパルス光を発振する固体、気体、液体、半導体などの各種レーザ光源により構成することができる。例えば、光源1として、YVOレーザ、YLFレーザ、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、銅蒸気レーザ、有機色素レーザなどのパルス発振するレーザ光源が挙げられる。或いは、注入電流を時間変調してパルス光を出力するようにしたGaAsや、InGaAsPなどの半導体レーザも適用可能である。さらには、レーザ光の遮断と通過とを機械的に繰り返すチョッパー機構を備えたHe−Neレーザ、He−Cdレーザ、Arレーザ、希土類元素(Yb,Erなど)のファイバレーザなどの連続発振するレーザ光源も適用可能である。
また、膨潤性物質2は、漏洩液体を含むことにより膨潤する物質で構成され、フォトニック結晶ファイバ4を被覆している。フォトニック結晶ファイバ4は、膨潤性物質2によって全長にわたって被覆してもよく、また漏洩監視が必要な部分のみ被覆する構成としてもよい。この膨潤性物質2としては、例えば高膨潤性の樹脂やゴムが挙げられる。
監視対象3は前述したように、配管であるものとして以下説明する。
フォトニック結晶ファイバ4は、ファイバの長手方向に空孔を有するクラッドと固体コア、或いはコアも空孔としたファイバである。フォトニック結晶ファイバ4は純粋石英だけで構成することができ、添加物質が不要であるため耐熱性や耐放射線性に優れ、例えば、原子力プラントのような高温かつ高放射線場において適用する場合に有利である。
さらに、フォトニック結晶ファイバ4は、コアへのパルス光の閉じ込め効率が高いため、長距離の監視が必要な場合にも有利である。フォトニック結晶ファイバ4は、図1に示すように、監視対象3の長手方向に沿って設置され、漏洩液体が膨潤性物質2に接触するように監視対象3の底部に設置される。
なお、フォトニック結晶ファイバ4は底部以外にも、監視対象3の側部や頂部などの任意の位置に設置することができ、さらにフォトニック結晶ファイバ4は、従来の光ファイバに比べて曲げ損失が少ないため、監視対象3の周囲に螺旋状に巻き付けるように設置することもできる。
また、フォトニック結晶ファイバ4の設置本数に制限はない。加えて、フォトニック結晶ファイバ4は、従来の光ファイバに比べてフレネル反射を抑えることができ、またモードフィールド径を大きくすることができるため、低損失のファイバ接続が可能であり、ファイバ同士の融着やコネクタ接続が容易である。
このため、フォトニック結晶ファイバ4は、保守点検や交換が容易にできるように一定長さに分割して監視対象3に敷設されている。
また、検出手段5a,5bはパルス光から後方散乱光を分離して、その光強度を検出する手段である。検出手段5aは後方散乱光を分離する光学素子であり、検出手段5bは後方散乱光の光強度を検出する受光素子により構成されている。
フォトニック結晶ファイバ4に対向する検出手段5aとしては、例えば誘電体膜やクロム等の金属膜のハーフミラーが挙げられ、5aに隣接する検出手段5bとしては、PINフォトダオードやアバランシュフォトダオード、光電管や光電子増倍管などが挙げられる。
また、別の構成例として、フォトニック結晶ファイバ4の出射端に検出手段5bを設置し、フォトニック結晶ファイバ4の伝搬光の光強度を検出する構成としてもよい。
演算手段6は、光源1へ制御信号を送信してタイミング制御を行う一方、検出手段5bが出力する電気信号をデジタルデータへ変換して演算処理を行い、漏洩検出とその位置を特定する。例えば、演算手段6として、赤外通信や無線通信、シリアルやパラレルの有線通信などの通信機能に加え、アナログ・デジタル変換器による入出力機能を備えた汎用パソコン(PC)が挙げられる。
保持手段7は中空管状に構成されて、監視対象3の一部または全体を覆い、フォトニック結晶ファイバ4を監視対象3の底部或いは側部や頂部、或いは螺旋状に保持する一方、膨潤性物質2の膨潤を拘束する。例えば、監視対象3の保温材としても用いられる場合、保温性や保湿性を持つケイ酸カルシウムなどが保持手段7として好適である。
このような場合、ケイ酸カルシウムによって監視対象3を覆い、ケイ酸カルシウムの内部にフォトニック結晶ファイバ4が埋め込まれる。また、膨潤性物質2の膨潤に対する拘束性を高めるため、ケイ酸カルシウムに対して金属板やワイヤを部分的或いは全体的に巻き付けることも可能である。
本実施形態による光源1から発生したパルス光L1は、検出手段5aを透過してフォトニック結晶ファイバ4に、そのフォトニック結晶ファイバ4の一端である入射端4aから入射する。なお、パルス光L1の結合効率を高めるため、光学レンズを用いてパルス光を入射させることもできる。
入射したパルス光L1は、散乱や吸収を受けながらフォトニック結晶ファイバ4の内部を伝搬するが、各部分における散乱光の一部は、パルス光の進行方向とは逆向きに伝搬する後方散乱光L2となる。
そして、後方散乱光L2は、フォトニック結晶ファイバ4の入射端4aから出射し、検出手段5aにおいて反射して検出手段5bにより検出される。演算手段6では、光源1のパルス光の発振時間を基点とし、検出手段5bにより検出された後方散乱光の光強度の時間変化を求める。
図2は、本実施形態の正常時における後方散乱光の強度と伝搬距離との関係を示す特性図であり、縦軸に後方散乱光の強度を示し、横軸に伝播距離を示している。
この図2に、特性線「A1」で示すように、時間に光速を掛けて得られる往復距離を片道である伝搬距離に直すと、パルス光が伝搬するに伴って散乱や吸収により減衰するため、これに比例する後方散乱光も距離が長くなるに従って減衰する。なお、フォトニック結晶ファイバ4の入射端4aと反対側の端部では、ファイバの端面でパルス光L1が反射するため、特性線A1の右端(すなわち、入射端4aと反対側の端部に対応する伝播距離)において高強度の光が観測される。
ここで、監視対象3から漏洩が発生すると、漏洩液体は保持手段7の内部下端に流れ落ちて膨潤性物質2が膨潤する一方、保持手段7によって膨潤性物質2が拘束されるため、フォトニック結晶ファイバ4が径方向に圧縮されて変形する。そして、変形部分では、パルス光の一部がフォトニック結晶ファイバ4のコア以外へ漏れてパルス光が減少し、これにより後方散乱光も減少する。
この結果、演算手段6では図3に特性線A2で示したように、漏洩位置において不連続な光強度の減少(d)を観測することができ、漏洩検出及び漏洩位置の特定が可能となる。ここで、フォトニック結晶ファイバ4の出射端に検出手段5bを設置した場合にも、同様の作用によって漏洩検出が可能である。フォトニック結晶ファイバ4は、コアへのパルス光の閉じ込め効率が高いため、図3に示される光強度の減少(d)を高感度に検出することができ、微少な漏洩検出が可能である。
また、膨潤性物質2は漏洩液体に反応して膨潤するため、確実な漏洩検出が可能である。さらに、フォトニック結晶ファイバ4を覆う膨潤性物質2は、保持手段7に覆われ、或いは保持手段7の内部に埋め込まれるため、漏洩液体以外とは完全に接触がなく、微少な漏洩を確実に検出することが可能である。
本実施形態によれば、フォトニック結晶ファイバ4の変形は漏洩液体のみにより発生し、フォトニック結晶ファイバ4はコアへのパルス光の閉じ込め効率が高いため、ファイバの変形による伝搬光や後方散乱光の減少を高感度に検出することができ、微少な漏洩を確実に検出可能である。
また、フォトニック結晶ファイバ4を覆う膨潤性物質2は、保持手段に覆われ、或いは保持手段の内部に埋め込まれるため、漏洩液体以外とは完全に接触がなく、微少な漏洩を確実に検出可能である。
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態による漏洩監視装置を示す構成図である。なお、前記第1実施形態と同一の構成部分については、図1に示した符号と同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態の漏洩監視装置は、二種類以上の波長の光を含み、漏洩を検出する光源8と、光源8からのパルス光を伝送し、漏洩液体によって膨潤する膨潤性物質2により覆われ、監視対象3に沿って設置されるフォトニック結晶ファイバ4と、フォトニック結晶ファイバ4の出射端に設置され、伝搬後のパルス光の波形を検出する出射側の検出手段9と、漏洩液体による膨潤性物質2の膨潤により変わる伝搬後のパルス光のパルス波形から漏洩を検出する演算手段10と、から構成される。
また、本実施形態においても、監視対象3が配管である場合について説明する。
光源8は、二種類以上の波長の光を含む光源で構成され、例えば、アルゴンレーザ、He−Cdレーザ、銅蒸気レーザ等の複数以上の波長が発振可能なレーザ光源、色素レーザやTi:Sapphireレーザ等の広帯域の波長が発振可能なレーザ光源やファイバレーザ等が挙げられる。
さらに光源8として、色素レーザ、Ti:Sapphireレーザ、ファイバレーザ等によって構成されるモード同期レーザを用いることにより、フォトニック結晶ファイバ4の内部においてスーパーコンティニュウム光が容易に生成でき、超広帯域光源として作用する。
また、光源8は、波長が異なる複数のレーザ光源を組み合わせる、或いは高調波、和周波や差周波の波長の光を発生させる非線形結晶とレーザ光源を組み合わせて構成することもできる。
レーザ光源以外にも、ASE光源(Amplified Spontaneous Emission)やSLD光源(Super Luminescent Diode)等の広帯域光源も光源8として適用できる。
検出手段9は、パルス光の波形を測定する受光素子であり、第1実施形態の検出手段(5b)と同様、PINフォトダオードやアバランシュフォトダオード、光電管や光電子増倍管などで構成される。
演算手段10は、光源8に制御信号を送信してタイミング制御を行う一方、検出手段9が出力する電気信号をデジタルデータへ変換して演算処理を行い、漏洩を検出する。演算手段10は、第1実施形態の演算手段6と同様、例えば、通信機能や入出力機能を備えた汎用PCで構成される。
また、本実施形態では、フォトニック結晶ファイバ4は、監視対象3の断面図である図5に示されるようにV字構造板11a,11bの下端に設置され、拘束ワイヤ12によって膨潤性物質2の膨潤を拘束する構造となっている。
次に、図6および図7を参照して作用を説明する。図6はフォトニック結晶ファイバの波長分散特性の一例を示す特性図である。波長分散特性14は正常時、波長分散特性15は漏洩時の分散特性を示す。
図7はフォトニック結晶ファイバの後方散乱光のパルス波形を示す特性図である。波形13が正常時、波形16が漏洩時の波形を示す。
図6に示すλ及びλの波長を含む光源8のパルス光は、フォトニック結晶ファイバ4の内部を伝搬して出射し、検出手段9により検出される。そして、漏洩が無い時に検出されたパルス波形は、図7に示すように、正常時の波形13として演算手段11の内部に記憶される。なお、記憶される正常時の波形13は、逐次更新してもよい。
ここで監視対象3から漏洩が発生すると、漏洩液体はV字構造板11a,11bの下端に流れ落ちて膨潤性物質2が膨潤する一方、拘束ワイヤ12によって膨潤性物質2が拘束されるため、フォトニック結晶ファイバ4が変形する。
そして、変形部分では、波長分散特性が図6に示すように漏洩が無い時の波長分散特性14から漏洩時の波長分散特性15へ敏感に変化し、λとλの波長における分散の相対差が変わる。
フォトニック結晶ファイバ4は、λとλの波長間に分散差が無いゼロ分散の制御が容易であり、漏洩による変形時には大きな分散差を生じさせることができる。これにより、検出手段9によって検出される漏洩時の波形16は、図7に示されるように正常時の波形13と比べてパルス時間幅が広がることになる。
この結果、演算手段11において、パルス時間幅の変化の有無を測定することにより、漏洩検出が可能となる。パルス時間幅は、波高値の0.135(=e−2)倍、或いは0.5倍など波高値に係数を掛けた場合のパルス時間幅として測定する。
さらに、このパルス時間幅、或いはパルス波形の極大値の時間間隔や個数などを特徴量して、ニューラルネットワークによりパルス時間幅の変化の有無を測定することもできる。
また、正常時の波形13と漏洩時の波形16の相互相関を計算することによっても、パルス時間幅の変化の有無を高精度に測定することもできる。
フォトニック結晶ファイバ4は、変形によって波長分散特性が敏感に変わり、また波長分散特性の制御が容易であることから2つの波長間に大きな分散差を発生させることができるため、パルス時間幅の変化の有無を高感度に検出でき、微少な漏洩検出が可能である。
特に、光源8としてモード同期レーザを用いた場合、非線形効果によりフォトニック結晶ファイバ4の内部にスーパーコンティニュウム光が発生することから波長帯域が広いパルス光となって波長差が大きいλ及びλが得られ、漏洩による変形時に大きな分散差が生じてパルス時間幅の変化の有無を高感度に検出でき、微少な漏洩検出が可能である。
本実施形態によれば、フォトニック結晶ファイバの変形は漏洩液体のみにより発生し、この変形によって波長分散特性が敏感に変わり、また波長分散特性の制御が容易であることからファイバの変形により2つの波長間に大きな分散差を発生させることができるため、パルス時間幅の変化の有無を高感度に検出でき、微少な漏洩検出が可能である。
また、光源としてモード同期レーザを用いた場合、非線形効果によりフォトニック結晶ファイバの内部にスーパーコンティニュウム光を発生できることから波長帯域が広いパルス光となって二つの波長間に大きな波長差が得られて分散差を大きくすることができるため、パルス時間幅の変化の有無を高感度に検出でき、微少な漏洩検出が可能である。
[第3実施形態]
次に、図8を参照して本発明に係る漏洩監視装置の第3実施形態を説明する。なお第1実施形態および第2実施形態と同一の構成については図に同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態は、漏洩液体によって吸収される波長の光を含む光源17と、監視対象3に沿って設置され、クラッドとファイバ表面とが通じる空孔を備えて光源17のパルス光を伝送する複数のフォトニック結晶ファイバ18とを備えている。
また、フォトニック結晶ファイバ18の入射端に設置され、フォトニック結晶ファイバ18の後方散乱光をパルス光と分離する検出手段5aと、分離された後方散乱光を分光する分光手段20とを備えている。
さらに、漏洩液体によるパルス光の吸収によって変化する後方散乱光のスペクトルを用い、漏洩検出とその漏洩位置、漏洩液体の特定を行う演算手段21と、フォトニック結晶ファイバ18の出射端に設置され、フォトニック結晶ファイバ18の内部へ乾燥気体、例えば窒素を送風する送風手段22とを備えている。
なお、本実施形態においても、監視対象3の例を配管として説明する。
光源17は、漏洩液体によって吸収される波長の光を含む光源であり、光源1,8と同様のものを用いることができる。フォトニック結晶ファイバ18は、クラッドとファイバ表面とが通じる空孔19を備えたフォトニック結晶ファイバである。
空孔19は、図9(a)に軸直角断面として示したように、クラッドとファイバ表面とが通じる構造になっている。また、空孔19は、図9(b)に示すように、周方向に沿う配置とし、漏洩を検出する位置のみに設けても、あるいは至る所に設けてもよく、空孔19の個数に制限はない。
なお、本実施形態には、3本のフォトニック結晶ファイバ18が監視対象3に設置されるが、フォトニック結晶ファイバ18に付帯する構成は同一であるため、その内の1本について作用を説明し、他の2本についての図示及び説明は省略する。
分光手段20は、後方散乱光のスペクトルを測定する手段であり、透過型や反射型の回折格子を備えた光検出器により構成される。例えば、回折格子には、グレーティングやプリズムなどを適用することができ、光検出器には検出手段5bやCCDなどを適用することができる。
さらに、光検出器として、アレイタイプの光検出器を用いることによりスペクトルを一括して測定することができる。また、フォトニック結晶ファイバ18の出射端に分光手段20を設置し、フォトニック結晶ファイバ18の伝搬光のスペクトルを測定する構成としてもよい。
演算手段21は、光源17に制御信号を送信してタイミング制御を行う一方、分光手段20が出力する電気信号をデジタルデータへ変換して演算処理を行い、漏洩を検出する。この演算手段21は、演算手段6,10と同様、例えば、通信機能や入出力機能を備えた汎用PCで構成される。
送風手段22は、フォトニック結晶ファイバ18の入射端または出射端に設置され、クラッド或いはコアの空孔内へ乾燥気体を送る手段であり、例えば、ファンやブロアが挙げられる。また、乾燥気体は、漏洩液体を吸収するガス、或いは窒素やアルゴンなどの不活性ガスが適用できる。
また、本実施形態では、フォトニック結晶ファイバ18は、図10(a),(b)に示されるように監視対象3と板23の間に挟み込まれる構造となっている。なお、図10には、3本のフォトニック結晶ファイバ18を表示しているが、それぞれの入射端及び出射端を接続して1本のフォトニック結晶ファイバ18とすることもできる。なお、板23は、監視対象3の全体を覆ってもよく、或いは漏洩監視部分だけを覆う寸法でもよい。また、板23は、拘束ワイヤ12としてもよい。
次に、作用を説明する。
漏洩液体によって吸収される波長の光を含む光源17のパルス光は、フォトニック結晶ファイバ18へ入射して散乱や吸収を受けながら伝搬する一方、各部分からの後方散乱光は、フォトニック結晶ファイバ18の入射端から出射し、検出手段5aにおいて反射して分光手段20により分光される。そして、漏洩が無い時に分光されたスペクトルは、正常時のスペクトル24として演算手段21の内部に記憶される。なお、正常時のスペクトル24は、逐次更新してもよい。
ここで、監視対象3から漏洩が発生すると、漏洩液体は、監視対象3の表面を流れ落ちるまたは噴出して板23の内側表面を流れ落ち、いずれかのフォトニック結晶ファイバ18と接触して空孔19から内部のクラッドへ侵入する。
そして、クラッド内の漏洩液体の侵入部分では屈折率が上がり、パルス光の一部がフォトニック結晶ファイバ18のコア以外へ漏れてパルス光が減少し、これにより後方散乱光が減少する。
さらに、漏洩液体によって吸収される波長成分がパルス光に含まれるため、クラッド内の漏洩液体の侵入部分ではこの波長成分のパルス光が漏洩液体により吸収され、後方散乱光のうち、漏洩液体によって吸収される波長成分が減少する。
フォトニック結晶ファイバ18は、クラッドを構成する空孔の充填物質によってクラッドの屈折率が変わり、コア内へのパルス光の閉じ込め効率を容易に変化させることができる。また、フォトニック結晶ファイバ18では、パルス光の一部がクラッドを構成する空孔へ浸み出すため、空孔内へ侵入した漏洩液体と相互作用する。
これにより、図11に示したように、フォトニック結晶ファイバ18を出射して分光手段20において分光される後方散乱光の漏洩時のスペクトル25は、正常時のスペクトル24と比べてスペクトル全体の強度が減少し、さらに漏洩液体によって吸収される波長成分が減少する。
この結果、演算手段21において、後方散乱光のスペクトルの強度及び分布の変化の有無を測定することにより、漏洩検出が可能となる。他方、漏洩位置については、光源17のパルス光の発振時間を基点して後方散乱光のスペクトル強度や分布が変化した観測時間を求め、この観測時間に光速を掛けて得られる往復距離を半分の片道に直して求める。
後方散乱光のスペクトル強度の変化は、スペクトルのピーク値或いは特定波長の強度変化から判定する。
ここで、フォトニック結晶ファイバ18の出射端に分光手段20を設置した場合にも、同様の作用によって漏洩検出が可能である。
他方、スペクトル分布の変化は、漏洩液体によって吸収される波長の強度変化から測定する。さらには、正常時のスペクトル24と漏洩時のスペクトル25の相互相関を計算することにより、スペクトル分布の変化を測定することもできる。
なお、漏洩検出は、後方散乱光のスペクトルの強度変化だけでも判定可能であるし、スペクトルの分布変化だけでも可能である。
また、両方を組み合わせ、スペクトルの強度と分布の両方が変化した場合に漏洩有りと判定する、或いはどちらかが変化した場合に漏洩有りと判定することによって判定の信頼性を上げることができる。
さらには、吸収波長は物質に固有であることより、漏洩時のスペクトル25において減少している波長成分から漏洩液体を特定することもできる。ここで、フォトニック結晶ファイバ18の出射端に分光手段20を設置した場合にも、同様の作用によって漏洩検出が可能である。
特に、光源17としてモード同期レーザを用いた場合、非線形効果によりフォトニック結晶ファイバ18の内部にスーパーコンティニュウム光が発生することから波長帯域が広いパルス光となって光コムとなり、広範囲のスペクトル分布の変化を測定でき、多種の漏洩液体の漏洩検出が可能となる。
漏洩検出後は、演算手段21からの制御信号によって送風手段22が動作して空孔内へ乾燥気体が送られ、空孔内の漏洩液体が蒸発或いはフォトニック結晶ファイバ18の入射端から押し出されることによって、漏洩が無い正常なフォトニック結晶ファイバ18に戻る。
なお、フォトニック結晶ファイバ18が正常な状態に戻ったかどうかについては、後方散乱光のスペクトルの強度や分布を測定して判定することができる。
本実施形態によれば、フォトニック結晶ファイバ18は、クラッドを構成する空孔の充填物質によってクラッドの屈折率が変わり、コア内へのパルス光の閉じ込め効率を容易に変化させることができるため、クラッドとファイバ表面とが通じる空孔からクラッド内へ漏洩液体を導いて屈折率を変え、パルス光の閉じ込め効率を変化させることによって伝搬光や後方散乱光の減少を高感度に検出することができ、微少な漏洩検出が可能である。
また、フォトニック結晶ファイバ18では、パルス光の一部がクラッドを構成する空孔へ浸み出す一方、空孔内へ侵入した漏洩液体に吸収される波長成分があるため、伝搬光や後方散乱光のスペクトル分布の変化から漏洩液体を高感度に検出することができ、さらに吸収される波長成分から漏洩液体の種類が特定できるため、微少な漏洩が確実に検出可能である。
また、モード同期レーザを適用することによってフォトニック結晶ファイバ18の内部にスーパーコンティニュウム光を発生させることができ、波長帯域が広いパルス光となって広範囲のスペクトル分布の変化を測定することができ、多種の漏洩液体の漏洩検出が可能となる。
さらには、クラッド或いはコアを構成する空孔の内部に侵入した漏洩液体を蒸発させる、或いはフォトニック結晶ファイバ18の入射端や出射端から押し出すことにより、フォトニック結晶ファイバ18を正常な状態に保つことができ、微少な漏洩が確実に検出可能である。
なお、本実施形態において、漏洩検出後に送風手段22によって漏洩液体をフォトニック結晶ファイバ18から除去するものとして説明したが、例えば、フォトニック結晶ファイバ18の入射端ないし出射端に乾燥剤(例えばシリ化ゲル)を取り付けて漏洩液体を除去することも可能である。
1 光源
2 膨潤性物質
3 監視対象
4 フォトニック結晶ファイバ
5a,b 検出手段
6 演算手段
7 保持手段
8 光源
9 出射側の検出手段
10 演算手段
11a,b V字構造板
12 拘束ワイヤ
13 正常時の波形
14 漏洩が無い時の特性
15 漏洩時の特性
16 漏洩時の波形
17 光源
18 フォトニック結晶ファイバ
19 空孔
20 分光手段
21 演算手段
22 送風手段
23 板
24 正常時のスペクトル
25 漏洩時のスペクトル

Claims (11)

  1. 監視対象からの漏洩液体の発生を監視する漏洩監視装置であって、
    監視対象に沿って敷設されたフォトニック結晶ファイバと、
    前記フォトニック結晶ファイバを覆い、前記監視対象からの漏洩液体により膨潤して前記フォトニック結晶ファイバを変形させる膨潤性物質と、
    前記フォトニック結晶ファイバの一端に光を入射させる光源と、
    前記フォトニック結晶ファイバからの出射光の強度を検出する光強度検出手段と、
    前記出射光の強度変化に基づいて前記監視対象からの漏洩を検出する演算手段と、を備えたことを特徴とする漏洩監視装置。
  2. 前記出射光が、前記フォトニック結晶ファイバ内で生じた後方散乱光であることを特徴とする請求項1記載の漏洩監視装置。
  3. 前記出射光が、前記フォトニック結晶ファイバの別の一端から出射された伝搬光であることを特徴とする請求項1記載の漏洩監視装置。
  4. 前記出射光を分光して前記光強度検出手段に入射させる分光手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の漏洩監視装置。
  5. 前記フォトニック結晶ファイバは、側面とクラッドとを連通する孔部を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項記載の漏洩監視装置。
  6. 孔部から前記フォトニック結晶ファイバ内に進入した漏洩液体を除去する乾燥手段を備えることを特徴とする請求項5記載の漏洩監視装置。
  7. 前記乾燥手段が、前記フォトニック結晶ファイバ内部の空孔内に気体を送る送風手段であることを特徴とする請求項6記載の漏洩監視装置。
  8. 前記乾燥手段が、前記フォトニック結晶ファイバの端部に取り付けられる乾燥剤であることを特徴とする請求項6記載の漏洩監視装置。
  9. 監視対象からの漏洩液体の発生を監視する漏洩監視装置であって、
    監視対象に沿って敷設されたフォトニック結晶ファイバと、
    前記フォトニック結晶ファイバを覆い、前記監視対象からの漏洩液体により膨潤して前記フォトニック結晶ファイバを変形させる膨潤性物質と、
    前記フォトニック結晶ファイバの一端にパルス光を入射させる光源と、
    前記フォトニック結晶ファイバからの出射光を検出する光検出手段と、
    前記出射光のパルス時間幅の変化に基づいて前記監視対象からの漏洩を検出する演算手段と、を備えることを特徴とする漏洩監視装置。
  10. 前記光源がモード同期レーザにより構成されることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の漏洩監視装置。
  11. 前記光源が、前記漏洩液体によって吸収される波長を含む光を発生させるように構成されており、前記フォトニック結晶ファイバの前記一端および別の一端の少なくとも何れかから出射する光を分光する第2分光手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1項記載の漏洩監視装置。
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