JP2011177612A - 排ガス浄化フィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】低圧力損失であり、かつ耐熱性に優れた排ガス浄化フィルタを提供すること。
【解決手段】排ガス浄化フィルタ1は、多孔質の隔壁3と、その隔壁3に囲まれた多数のセル4とを有する基材2を備え、入口セル41の下流側端部及び出口セル42の上流側端部を封止材5によって封止してなる。基材2は、入口セル41の断面積の総和をS1、出口セル42の断面積の総和をS2とした場合に、S1>S2の関係を満たす。入口セル41は、その入口セル41を囲む隔壁3を隔てて他の入口セル41及び出口セル42に隣接するよう配置されている。隔壁3は、入口セル41と出口セル42とを隔てる第1隔壁31と、入口セル41同士を隔てる第2隔壁32とを有する。排ガス浄化フィルタ1における下流側領域11全体の熱容量C1に対して、その下流側領域11内の第2隔壁32部分の熱容量の総和C2の割合は、15〜35%である。
【選択図】図1

Description

本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中の粒子状物質を捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化フィルタに関する。
従来から、ディーゼルエンジン等の内燃機関より排出される排ガス中の粒子状物質(Particulate Matter:以下、PMという)を捕集して排ガスの浄化を行う排ガス浄化フィルタが知られている。
この排ガス浄化フィルタは、格子状に配された多孔質の隔壁とその隔壁に囲まれて軸方向に形成された多数のセルとを有する基材を備えている。そして、排ガスを導入するセルである入口セルの下流側端部及び排ガスを排出するセルである出口セルの上流側端部を封止材によって封止している。
上記排ガス浄化フィルタによる排ガスの浄化は、次のようにして行われる。すなわち、内燃機関より排出された排ガスは、排ガス浄化フィルタの入口セルに導入され、その後、多孔質の隔壁を通過する。このとき、排ガス中のPMが隔壁に存在する多数の細孔に捕集され、排ガスが浄化される。浄化された排ガスは、出口セルから排出される。また、隔壁に捕集されたPMは、定期的に燃焼除去され、これによって隔壁のPM捕集機能を再生している。
ところで、上記排ガス浄化フィルタは、通常、入口セル及び出口セルを同一形状、同一断面積としている。しかしながら、このような構造では、隔壁に捕集されたPMが入口セルに堆積するにつれて圧力損失が大きくなり、内燃機関の性能低下を招いてしまう。また、PMを燃焼除去する際に不燃成分がアッシュとして残留し、このアッシュが入口セルに堆積することによっても圧力損失が大きくなる。また、アッシュは、燃焼除去することが困難であるため、長期間の使用を考えた場合に特に問題となる。
そこで、上記の問題を解決すべく、特許文献1、2には、入口セルの断面積の総和を出口セルの断面積の総和よりも大きくし、かつ、入口セルの数を出口セルの数よりも多くした排ガス浄化フィルタが提案されている。これによれば、入口セルにPMやアッシュが堆積しても、入口セルにおける排ガス流通断面積(排ガスが流通する断面積)や排ガス濾過面積(排ガスが通過する隔壁の表面積)を確保することができ、圧力損失の増大を抑制することができる。
国際公開第2007/134897号 国際公開第2004/024294号
しかしながら、上記特許文献1に開示された構造では、入口セル同士が隣接している箇所が多く存在する。すなわち、入口セル同士を隔てる隔壁が多く存在する。入口セルにはPMが堆積することから、入口セル同士を隔てる隔壁は、その両側の表面にPMが堆積することになる。そのため、PMを燃焼する際には、入口セル同士を隔てる隔壁に大きな熱が発生し、短時間での急激な温度上昇を招いてしまう。これにより、大きな熱応力が発生し、クラック等が生じやすくなる。
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、低圧力損失であり、かつ耐熱性に優れた排ガス浄化フィルタを提供しようとするものである。
本発明は、格子状に配された多孔質の隔壁と、該隔壁に囲まれて軸方向に形成された多数のセルとを有する基材を備え、排ガスを導入する上記セルである入口セルの下流側端部及び排ガスを排出する上記セルである出口セルの上流側端部を封止材によって封止してなる排ガス浄化フィルタであって、
上記基材は、軸方向に直交する断面において、上記入口セルの断面積の総和をS1、上記出口セルの断面積の総和をS2とした場合に、S1>S2の関係を満たし、
上記入口セルは、該入口セルを囲む上記隔壁を隔てて他の上記入口セル及び上記出口セルに隣接するよう配置されており、
上記隔壁は、上記入口セルと上記出口セルとを隔てる第1隔壁と、上記入口セル同士を隔てる第2隔壁とを有し、
上記排ガス浄化フィルタにおける下流側端面から上流側へ20mmの距離までの下流側領域全体の熱容量C1に対して、該下流側領域内の上記第2隔壁部分の熱容量の総和C2の割合が15〜35%であることを特徴とする排ガス浄化フィルタにある(請求項1)。
本発明の排ガス浄化フィルタにおいて、上記基材は、上記隔壁に捕集された排ガス中のPMや燃料に起因して生成するアッシュが堆積する上記入口セルの断面積の総和S1を上記出口セルの断面積の総和S2よりも大きくしている。そのため、上記入口セルにおいてPMが一時的に堆積しても、また燃焼除去が困難なアッシュが継続的に堆積しても、上記入口セルにおける排ガス流通断面積や排ガス濾過面積を確保することができ、圧力損失の増大を抑制することができる。これにより、圧力損失を全体として低く抑えることができる。
また、上記排ガス浄化フィルタにおける上記下流側領域全体の熱容量C1に対して、該下流側領域内の上記第2隔壁部分の熱容量の総和C2の割合を15〜35%としている。
ここで、上記排ガス浄化フィルタの上記下流側領域は、排ガス中のPMが堆積しやすい領域である。また、上記入口セル同士を隔てる上記第2隔壁は、両側の表面にPMが堆積するため、片側の表面にPMが堆積する上記第1隔壁に比べてPM燃焼時に大きな熱が発生する。
すなわち、本発明では、排ガス中のPMが堆積しやすい上記下流側領域において、PM燃焼時に大きな熱が発生する上記第2隔壁部分の熱容量の割合を上記特定の範囲としている。そのため、圧力損失に大きな影響を与えることなく、上記下流側領域内の上記第2隔壁部分の熱容量を十分に確保することができる。そして、PM燃焼時において上記第2隔壁部分に大きな熱が発生しても、それに伴う急激な温度上昇を効果的に抑制することができ、熱応力によるクラック等の発生を防止することができる。これにより、低圧力損失を維持しながら、優れた耐熱性を得ることができる。
このように、本発明によれば、低圧力損失であり、かつ耐熱性に優れた排ガス浄化フィルタを提供することができる。
実施例1における、排ガス浄化フィルタを示す斜視図。 実施例1における、入口セル及び出口セルの配置を示す説明図。 図2のA−A線矢視断面図。 実施例3における、入口セル及び出口セルの配置を示す説明図。 実施例3における、入口セル及び出口セルの配置を示す説明図。 図4のB−B線矢視断面図、図5のC−C線矢視断面図。 従来における、入口セル及び出口セルの配置を示す説明図。 図7のD−D線矢視断面図。
本発明において、上記入口セルの断面積の総和S1と上記出口セルの断面積の総和S2とは、S1>S2の関係を満たしている。
上記の関係がS1≦S2の場合には、上記入口セルにPMやアッシュが堆積した際に、圧力損失が大きくなるおそれがある。
また、上記入口セルの断面積の総和S1は、上記出口セルの断面積の総和S2の1.1〜2.2倍であることがより好ましい。
この場合には、上記入口セルにPMやアッシュが堆積した際の圧力損失の増大を抑制するという本発明の効果をより一層発揮することができる。
また、上記入口セルは、該入口セルを囲む上記隔壁を隔てて他の上記入口セル及び上記出口セルに隣接するよう配置されている。
ここで、「隔壁を隔てて」とは、隔壁の厚み方向に隔てていることを表している。以下も同様である。
また、上記排ガス浄化フィルタにおける上記下流側領域全体の熱容量C1に対して、該下流側領域内の上記第2隔壁部分の熱容量の総和C2の割合が15〜35%である。
ここで熱容量の対象となっているのは、上記排ガス浄化フィルタの上記下流側領域である。そして、上記排ガス浄化フィルタから上記下流側領域を取り出したとき、上記隔壁(第1隔壁、第2隔壁)及び上記封止材の熱容量の総和、すなわち上記下流側領域全体の熱容量をC1、そのうちの上記第2隔壁部分の熱容量の総和をC2としている。
上記の割合が15%未満の場合には、PM燃焼時の急激な温度上昇を抑制する効果を十分に得ることができないおそれがある。一方、35%を超える場合には、圧力損失が大きくなるおそれがある。
また、上記下流側領域全体の熱容量C1に対して、該下流側領域内の上記第2隔壁部分の熱容量の総和C2の割合が15〜25%であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、PM燃焼時の急激な温度上昇を抑制する効果をより一層十分に得ることができる。
また、上記出口セルは、該出口セルを囲む上記隔壁を隔てて上記入口セルのみに隣接するよう配置されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記出口セルが上記入口セルのみに囲まれる構成となるため、上記出口セル同士を隔てる上記隔壁が存在しないことになる。上記出口セル同士を隔てる上記隔壁は、実質的にPMを捕集する機能を果たさないため、このような上記隔壁が存在しないことは、PM捕集性能を確保する上で非常に有効である。
また、上記入口セルは、断面が八角形状であり、上記出口セルは、断面が四角形状であり、上記入口セルの周囲には、該入口セルの各辺部を構成する上記隔壁を隔てて他の上記入口セルと上記出口セルとが交互に合計4つずつ配置されており、上記出口セルの周囲には、該出口セルの各辺部を構成する上記隔壁を隔てて上記入口セルのみが合計4つ配置されている構成とすることができる(請求項4)。
この場合には、上記入口セル及び上記出口セルの断面積の総和に関するS1>S2という関係を比較的容易に実現することができる構成となる。そして、上記排ガス浄化フィルタの上記下流側領域全体の熱容量C1に対する該下流側領域内の上記第2隔壁部分の熱容量の総和C2の割合を15〜35%とすることにより、低圧力損失、高耐熱性という本発明の効果を十分に得ることができる。
また、上記入口セル及び上記出口セルは、軸方向に直交する断面において、上記入口セル又は上記出口セルの中心を軸とする90°回転対称性を有するよう配置されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記入口セル及び上記出口セルを規則正しく配置することにより、上記排ガス浄化フィルタ全体のアイソスタティック強度を向上させることができる。
また、上記入口セルは、断面が六角形状であり、上記出口セルは、断面が円形状であり、上記入口セルの周囲には、該入口セルの各辺部を構成する上記隔壁を隔てて他の上記入口セルと上記出口セルとが交互に合計3つずつ配置されており、上記出口セルの周囲には、該出口セルを囲む上記隔壁を隔てて周方向に上記入口セルのみが合計6つ配置されている構成とすることができる(請求項6)。
この場合には、上記入口セル及び上記出口セルの断面積の総和に関するS1>S2という関係を比較的容易に実現することができる構成となる。そして、上記排ガス浄化フィルタの上記下流側領域全体の熱容量C1に対する該下流側領域内の上記第2隔壁部分の熱容量の総和C2の割合を15〜35%とすることにより、低圧力損失、高耐熱性という本発明の効果を十分に得ることができる。
また、上記入口セル及び上記出口セルは、共に断面が六角形状であり、上記入口セルの周囲には、該入口セルの各辺部を構成する上記隔壁を隔てて他の上記入口セルと上記出口セルとが交互に合計3つずつ配置されており、上記出口セルの周囲には、該出口セルの各辺部を構成する上記隔壁を隔てて上記入口セルのみが合計6つ配置されている構成とすることができる(請求項7)。
この場合には、上記入口セル及び上記出口セルの断面積の総和に関するS1>S2という関係を比較的容易に実現することができる構成となる。そして、上記排ガス浄化フィルタの上記下流側領域全体の熱容量C1に対する該下流側領域内の上記第2隔壁部分の熱容量の総和C2の割合を15〜35%とすることにより、低圧力損失、高耐熱性という本発明の効果を十分に得ることができる。
また、上記入口セル及び上記出口セルは、軸方向に直交する断面において、上記入口セル又は上記出口セルの中心を軸とする60°回転対称性を有するよう配置されていることが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記入口セル及び上記出口セルを規則正しく配置することにより、上記排ガス浄化フィルタ全体のアイソスタティック強度を向上させることができる。
また、上記セルは、断面が多角形状である場合に、その内角部に所定の曲率を有するR面が形成されていることが好ましい(請求項9)。
この場合には、上記排ガス浄化フィルタ全体のアイソスタティック強度を向上させることができる。
また、上記排ガス浄化フィルタは、コーディエライトを主成分とするセラミックよりなることが好ましい。
この場合には、熱膨張係数の低いコーディエライトを用いることにより、耐熱衝撃性に優れたものとなり、耐熱性の向上を図ることができる。また、コーディエライトは、安価であり、製造コストを抑えることができる。
また、上記排ガス浄化フィルタ(基材)は、円柱状、角柱状等、一般的に用いられている形状を採用することができる。
(実施例1)
本発明の実施例にかかる排ガス浄化フィルタについて、図を用いて説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1は、図1〜図3に示すごとく、格子状に配された多孔質の隔壁3と、その隔壁3に囲まれて軸方向に形成された多数のセル4とを有する基材2を備え、排ガスGを導入するセル4である入口セル41の下流側端部412及び排ガスGを排出するセル4である出口セル42の上流側端部421を封止材5によって封止してなる。
基材2は、軸方向に直交する断面において、入口セル41の断面積の総和をS1、出口セル42の断面積の総和をS2とした場合に、S1>S2の関係を満たす。
入口セル41は、その入口セル41を囲む隔壁3を隔てて他の入口セル41及び出口セル42に隣接するよう配置されており、隔壁3は、入口セル41と出口セル42とを隔てる第1隔壁31と、入口セル41同士を隔てる第2隔壁32とを有する。
そして、排ガス浄化フィルタ1における下流側端面102から上流側へ20mmの距離までの下流側領域11全体の熱容量C1に対して、その下流側領域11内の第2隔壁32部分の熱容量の総和C2の割合が15〜35%である。
以下、これを詳説する。
本例の排ガス浄化フィルタ1は、図1に示すごとく、格子状(ハニカム状)に配された多孔質の隔壁3と、その隔壁3に囲まれて軸方向に形成された多数のセル4とを有する基材2を備えている。
基材2は、コーディエライトを主成分とするセラミックより構成されており、円柱状を呈している。
また、図3に示すごとく、基材2のセル4は、排ガスGを導入する入口セル41と、排ガスGを排出する出口セル42とを有する。入口セル41の下流側端部412及び出口セル42の上流側端部421には、封止材5が配設されており、セル4の一方の端部を封止している。また、入口セル41の上流側端部411及び出口セル42の下流側端部422は開口しており、排ガスGを導入及び排出することができるよう構成されている。
また、隔壁3には、その隔壁3を通過する排ガスG中のPMを捕集するための細孔が多数形成されている。
また、図2に示すごとく、基材2を軸方向上流側から見ると、入口セル41は、その入口セル41を囲む隔壁3を隔てて他の入口セル41及び出口セル42に隣接するよう配置されている。本例では、入口セル41は、断面が八角形状であり、入口セル41の周囲には、その入口セル41の各辺部を構成する隔壁3を隔てて他の入口セル41と出口セル42とが交互に合計4つずつ配置されている。
また、同図に示すごとく、出口セル42は、その出口セル42を囲む隔壁3を隔てて入口セル41のみに隣接するよう配置されている。すなわち、出口セル42が入口セル41のみに囲まれている。本例では、出口セル42は、断面が四角形状であり、出口セル42の周囲には、その出口セル42の各辺部を構成する隔壁3を隔てて入口セル41のみが合計4つ配置されている。
また、同図に示すごとく、入口セル41及び出口セル42は、隙間を形成することなく、規則正しく配置されている。本例では、入口セル41及び出口セル42は、軸方向に直交する断面において、入口セル41(出口セル42)の中心を軸とする90°回転対称性を有するよう配置されている。
また、基材2における軸方向に直交する断面において、入口セル41の断面積の総和をS1、出口セル42の断面積の総和をS2とした場合に、S1>S2の関係を満たす。
また、同図に示すごとく、隔壁3は、入口セル41と出口セル42とを隔てる第1隔壁31と、入口セル41同士を隔てる第2隔壁32とを有する。本例では、第1隔壁31の厚みW1が0.3mm、第2隔壁32の厚みW2が0.51mmである。なお、第1隔壁31の厚みW1、第2隔壁32の厚みW2とは、各隔壁の最も薄い部分の厚みである。
そして、図3に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1において、その下流側端面102から上流側へ20mmの距離までの領域を下流側領域11とした場合、下流側領域11全体の熱容量C1に対して、その下流側領域11内の第2隔壁32部分の熱容量の総和C2の割合が15〜35%である。
また、上記構成の排ガス浄化フィルタ1を製造するに当たっては、製造方法そのものは、従来と同様の公知の方法を採用することができる。
すなわち、基材2となるコーディエライト原料を準備し、隔壁3の形状に対応するスリットが形成された押出成形金型を用いてハニカム状の成形体として押出成形する。そして、その成形体を所定の長さに切断し、乾燥・焼成する。また、この乾燥・焼成の後又は前の工程において、封止材5となるコーディエライト原料をセル4の封止すべき場所に配設し、これも乾燥・焼成する。これにより、排ガス浄化フィルタ1を得る。
次に、本例の排ガス浄化フィルタ1における作用効果について説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1において、基材2は、隔壁3に捕集された排ガスG中のPMや燃料に起因して生成するアッシュが堆積する入口セル41の断面積の総和S1を出口セル42の断面積の総和S2よりも大きくしている。そのため、入口セル41においてPMが一時的に堆積しても、また燃焼除去が困難なアッシュが継続的に堆積しても、入口セル41における排ガス流通断面積や排ガス濾過面積を確保することができ、圧力損失の増大を抑制することができる。これにより、圧力損失を全体として低く抑えることができる。
また、排ガス浄化フィルタ1における下流側領域11全体の熱容量C1に対して、その下流側領域11内の第2隔壁32部分の熱容量の総和C2の割合を15〜35%としている。
ここで、排ガス浄化フィルタ1の下流側領域11は、排ガスG中のPMが堆積しやすい領域である。また、入口セル41同士を隔てる第2隔壁32は、両側の表面にPMが堆積するため、片側の表面にPMが堆積する第1隔壁31に比べてPM燃焼時に大きな熱が発生する。
すなわち、本例では、排ガスG中のPMが堆積しやすい下流側領域11において、PM燃焼時に大きな熱が発生する第2隔壁32部分の熱容量の割合を上記特定の範囲としている。そのため、圧力損失に大きな影響を与えることなく、下流側領域11内の第2隔壁32部分の熱容量を十分に確保することができる。そして、PM燃焼時において第2隔壁32部分に大きな熱が発生しても、それに伴う急激な温度上昇を効果的に抑制することができ、熱応力によるクラック等の発生を防止することができる。これにより、低圧力損失を維持しながら、優れた耐熱性を得ることができる。
また、本例では、入口セル41は、断面が八角形状であり、出口セル42は、断面が四角形状であり、入口セル41の周囲には、その入口セル41の各辺部を構成する隔壁3を隔てて他の入口セル41と出口セル42とが交互に合計4つずつ配置されており、出口セル42の周囲には、その出口セル42の各辺部を構成する隔壁3を隔てて入口セル41のみが合計4つ配置されている構成である。そのため、入口セル41及び出口セル42の断面積の総和に関するS1>S2という関係を比較的容易に実現することができる構成となる。そして、排ガス浄化フィルタ1の下流側領域11全体の熱容量C1に対する下流側領域11内の第2隔壁32部分の熱容量の総和C2の割合を15〜35%とすることにより、低圧力損失、高耐熱性という本例の効果を十分に得ることができる。
また、入口セル41及び出口セル42は、軸方向に直交する断面において、入口セル41(出口セル42)の中心を軸とする90°回転対称性を有するよう配置されている。このように入口セル41及び出口セル42を規則正しく配置することにより、排ガス浄化フィルタ1全体のアイソスタティック強度を向上させることができる。
また、出口セル42は、その出口セル42を囲む隔壁3を隔てて入口セル41のみに隣接するよう配置されている。そのため、出口セル42が入口セル41のみに囲まれる構成となるため、出口セル42同士を隔てる隔壁3が存在しないことになる。出口セル42同士を隔てる隔壁は、実質的にPMを捕集する機能を果たさないため、このような隔壁が存在しないことは、高いPM捕集性能を確保する上で非常に有効である。
このように、本例によれば、低圧力損失であり、かつ耐熱性に優れた排ガス浄化フィルタ1を提供することができる。
(実施例2)
本例は、表1に示すごとく、排ガス浄化フィルタにおける特性(圧力損失、SML(Soot Mass Limit))について評価したものである。
本例では、表1、表2に示すごとく、従来の基本構造を有する排ガス浄化フィルタ(基本品1、2)を準備した。
この基本品1、2の排ガス浄化フィルタ91は、図7、図8に示すごとく、入口セル41と出口セル42とが同一形状、同一断面積である。具体的には、入口セル41及び出口セル42は、共に断面が正方形状であり、縦横方向に交互に配置されている。すなわち、入口セル41と出口セル42とを隔てる隔壁3(第1隔壁31)しかなく、入口セル41同士を隔てる隔壁3(第2隔壁32)は存在しない。なお、基本品1はセル密度が300cpsi、基本品2はセル密度が200cpsiである。
そして、表1に示すごとく、上記基本品1を基準とし、第1隔壁の厚みW1(=0.30mm)、セル密度(=300cpsi)を変えずに構造を変化させた、実施例1の図2と同様の構造の排ガス浄化フィルタを複数準備した。
本例では、同表に示すごとく、第1のグループとして、入口セルの断面積の総和S1と出口セルの断面積の総和S2との比(以下、断面積比S1/S2という)が1.32〜1.36の範囲であり、後述する熱容量割合が15〜35%の範囲内である本発明品の排ガス浄化フィルタ(試料E11、E12)、熱容量割合が15〜35%の範囲外である比較品の排ガス浄化フィルタ(試料C11〜C14)を準備した。
また、同表に示すごとく、第2のグループとして、断面積比S1/S2が1.69〜1.78の範囲であり、熱容量割合が15〜35%の範囲内である本発明品の排ガス浄化フィルタ(試料E21、E22)、熱容量割合が15〜35%の範囲外である比較品の排ガス浄化フィルタ(試料C21〜C24)を準備した。
さらに、表2に示すごとく、上記基本品2を基準とし、第1隔壁の厚みW1(=0.30mm)、セル密度(=200cpsi)を変えずに構造を変化させ、実施例1の図2と同様の構造の排ガス浄化フィルタを複数準備した。
本例では、同表に示すごとく、第3のグループとして、断面積比S1/S2が1.28〜1.30の範囲であり、熱容量割合が15〜35%の範囲内である本発明品の排ガス浄化フィルタ(試料E31、E32)、熱容量割合が15〜35%の範囲外である比較品の排ガス浄化フィルタ(試料C31〜C34)を準備した。
また、同表に示すごとく、第4のグループとして、断面積比S1/S2が1.67〜1.74の範囲であり、熱容量割合が15〜35%の範囲内である本発明品の排ガス浄化フィルタ(試料E41、E42)、熱容量割合が15〜35%の範囲外である比較品の排ガス浄化フィルタ(試料C41〜C44)を準備した。
また、基本品、本発明品及び比較品における第1隔壁の厚みW1(mm)、第2隔壁の厚みW2(mm)、セル密度(cpsi)、基材(隔壁)の気孔率(%)、封止材の気孔率(%)、入口セルの断面積の総和S1と出口セルの断面積の総和S2との比S1/S2、封止材の長さ(mm)、熱容量割合(%)については、表1、表2に示すとおりである。
なお、セル密度とは、基材の軸方向に直交する断面における単位平方インチ当たりのセル数のことである。
また、熱容量割合とは、排ガス浄化フィルタにおける下流側領域全体の熱容量をC1、その下流側領域内の第2隔壁部分の熱容量の総和をC2とした場合に、熱容量C1に対する熱容量C2の割合のことである。
Figure 2011177612
Figure 2011177612
次いで、上記各試料における特性(圧力損失、SML)について評価を行った。
圧力損失は、ディーゼルエンジンの排気管に排ガス浄化フィルタを設置し、2000L/分の流量の排ガスを通過させ、通過前後の圧力差を測定することにより求めた。
SML(Soot Mass Limit)は、後述するDTI(Drop To Idle)試験にて排ガス浄化フィルタ内の最高温度が1000℃に到達するPM量を測定することにより求めた。
SMLを求めるためのDTI試験とは、具体的には、ディーゼルエンジンの排気管に排ガス浄化フィルタを設置し、2000L/分の流量の排ガスを流し、所定のPM量を堆積させる。次いで、排ガス浄化フィルタの上流側端面付近の排ガス温度を650℃まで昇温した後、アイドリング状態までエンジン回転数を落とす。次いで、排ガス浄化フィルタ内に設置してある複数の熱電対にて排ガス浄化フィルタ内の温度を測定する。そして、堆積させるPM量を増やしながら上記の作業を繰り返し、排ガス浄化フィルタ内の最高温度が1000℃に到達するPM量を測定した。
このSMLの値(PM量の値)が大きければ大きいほど、PMの堆積量が多くなってもPM燃焼時の温度上昇が小さく、耐熱性に優れていることがいえる。
次いで、圧力損失の評価は、基本品の圧力損失(14.8kPa)を基準とした。すなわち、第1及び第2グループの本発明品E11、E12、E21、E22については基本品1の圧力損失(14.8kPa)を、第3及び第4グループの本発明品E11、E12、E21、E22については基本品2の圧力損失(17.0kPa)を基準とした。そして、基準となる基本品の圧力損失の値よりも5%以上減少したものを合格(○)とし、それ以外のものを不合格(×)とした。
また、SMLの評価は、基本品を単純に構造変化させたものを基準とした。すなわち、第1グループの本発明品E11、E12については比較品C11を、第2グループの本発明品E21、E22については比較品C21を、第3グループの本発明品E31、E32については比較品C31を、第4グループの本発明品E41、E42については比較品41を基準とした。そして、基準となる比較品のSMLの値よりも25%以上増加したものを合格(○)とし、それ以外のものを不合格(×)とした。
また、総合評価として、圧力損失及びSMLの両方が合格であったものを総合的に合格(○)、いずれかが不合格であったものを総合的に不合格(×)とした。
なお、基本品1、2、比較品C11、C21、C31、C41については、圧力損失又はSMLの基準となっているため、総合評価の対象から外している。
Figure 2011177612
Figure 2011177612
上記特性(圧力損失、SML)の評価及び総合評価の結果を表3、表4に示す。
表3、表4に示すごとく、本発明品E11、E12、E21、E22、E31、E32、E41、E42は、圧力損失、SMLのいずれも基準を満たし、それぞれ合格(○)の評価であった。よって、総合評価において、総合的に合格(○)の評価であった。
一方、同表に示すごとく、比較品C12〜C14、C22〜C24、C32〜C34、C42〜C44は、圧力損失、SMLのいずれかが基準を満たしておらずに不合格(×)の評価であった。よって、総合評価において、総合的に不合格(×)の評価であった。
以上の結果から、本発明品の排ガス浄化フィルタは、圧力損失を全体として低く抑えることができることがわかった。また、PMの堆積量が多くなってもPM燃焼時の温度上昇が小さく、耐熱性に優れていることがわかった。
(実施例3)
本例は、図4〜図6に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1におけるセル4の構成を変更した例である。
なお、図4、図5は、排ガス浄化フィルタ1の基材2を軸方向上流側から見た図である。また、図6は、排ガス浄化フィルタ1の軸方向の断面を表した図である。
図4に示す例では、入口セル41は、断面が六角形状であり、入口セル41の周囲には、その入口セル41の各辺部を構成する隔壁3を隔てて他の入口セル41と出口セル42とが交互に合計3つずつ配置されている。
また、出口セル42は、断面が円形状であり、出口セル42の周囲には、その出口セル42を囲む隔壁3を隔てて周方向に入口セル41のみが合計6つ配置されている。
図5に示す例では、入口セル41は、断面が六角形状であり、入口セル41の周囲には、その入口セル41の各辺部を構成する隔壁3を隔てて他の入口セル41と出口セル42とが交互に合計3つずつ配置されている。
また、出口セル42は、断面が六角形状であり、出口セル42の周囲には、その出口セル42の各辺部を構成する隔壁3を隔てて入口セル41のみが合計6つ配置されている。
また、図4、図5に示す例では、入口セル41及び出口セル42は、軸方向に直交する断面において、入口セル41(出口セル42)の中心を軸とする60°回転対称性を有するよう配置されている。
また、排ガス浄化フィルタ1の軸方向の断面は、図6に示すごとく、両者共にほぼ同じような構造となる。
その他は、実施例1と同様の構成である。
本例の場合には、入口セル41及び出口セル42の断面積の総和に関するS1>S2という関係を比較的容易に実現することができる構成となる。そして、排ガス浄化フィルタ1の下流側領域11全体の熱容量C1に対する下流側領域11内の第2隔壁32の熱容量の総和C2の割合を10〜40%とすることにより、低圧力損失、高耐熱性という本発明の効果を十分に得ることができる。
また、入口セル41及び出口セル42が規則正しく配置されているため、排ガス浄化フィルタ1全体のアイソスタティック強度を向上させることができる。
その他は、実施例1と同様の作用効果を有する。
また、本例では、図4、図5に示す構造を有する本発明の排ガス浄化フィルタについて、圧力損失及びSMLの値を測定し、その特性を評価した。なお、圧力損失及びSMLの値の測定は、実施例2と同様の方法で行った。
ここで、測定した図4に示す排ガス浄化フィルタは、第1隔壁の厚みW1が0.3mm、第2隔壁の厚みW2が0.38mm、セル密度が300cpsi、基材(隔壁)の気孔率が50%、封止材の気孔率が55%、断面積比S1/S2が1.39、封止材の長さが4mm、熱容量割合が28.5%であった。
また、測定した図5に示す排ガス浄化フィルタは、第1隔壁の厚みW1が0.3mm、第2隔壁の厚みW2が0.38mm、セル密度が300cpsi、基材(隔壁)の気孔率が50%、封止材の気孔率が55%、断面積比S1/S2が1.46、封止材の長さが4mm、熱容量割合が26.5%であった。
圧力損失及びSMLの値を測定した結果、図4に示す排ガス浄化フィルタは、圧力損失が7.8kPa、SMLが6.8g/Lであった。また、図5に示す排ガス浄化フィルタは、圧力損失が7.8kPa、SMLが6.8g/Lであった。
これにより、図4、図5に示す構造を有する本発明の排ガス浄化フィルタは、低圧力損失であり、かつ耐熱性に優れていることが確認できた。
1 排ガス浄化フィルタ
11 下流側領域
2 基材
3 隔壁
31 第1隔壁
32 第2隔壁
4 セル
41 入口セル
42 出口セル
5 封止材

Claims (9)

  1. 格子状に配された多孔質の隔壁と、該隔壁に囲まれて軸方向に形成された多数のセルとを有する基材を備え、排ガスを導入する上記セルである入口セルの下流側端部及び排ガスを排出する上記セルである出口セルの上流側端部を封止材によって封止してなる排ガス浄化フィルタであって、
    上記基材は、軸方向に直交する断面において、上記入口セルの断面積の総和をS1、上記出口セルの断面積の総和をS2とした場合に、S1>S2の関係を満たし、
    上記入口セルは、該入口セルを囲む上記隔壁を隔てて他の上記入口セル及び上記出口セルに隣接するよう配置されており、
    上記隔壁は、上記入口セルと上記出口セルとを隔てる第1隔壁と、上記入口セル同士を隔てる第2隔壁とを有し、
    上記排ガス浄化フィルタにおける下流側端面から上流側へ20mmの距離までの下流側領域全体の熱容量C1に対して、該下流側領域内の上記第2隔壁部分の熱容量の総和C2の割合が15〜35%であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
  2. 請求項1に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記下流側領域全体の熱容量C1に対して、該下流側領域内の上記第2隔壁部分の熱容量の総和C2の割合が15〜25%であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
  3. 請求項1又は2に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記出口セルは、該出口セルを囲む上記隔壁を隔てて上記入口セルのみに隣接するよう配置されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
  4. 請求項3に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記入口セルは、断面が八角形状であり、上記出口セルは、断面が四角形状であり、上記入口セルの周囲には、該入口セルの各辺部を構成する上記隔壁を隔てて他の上記入口セルと上記出口セルとが交互に合計4つずつ配置されており、上記出口セルの周囲には、該出口セルの各辺部を構成する上記隔壁を隔てて上記入口セルのみが合計4つ配置されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
  5. 請求項4に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記入口セル及び上記出口セルは、軸方向に直交する断面において、上記入口セル又は上記出口セルの中心を軸とする90°回転対称性を有するよう配置されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
  6. 請求項3に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記入口セルは、断面が六角形状であり、上記出口セルは、断面が円形状であり、上記入口セルの周囲には、該入口セルの各辺部を構成する上記隔壁を隔てて他の上記入口セルと上記出口セルとが交互に合計3つずつ配置されており、上記出口セルの周囲には、該出口セルを囲む上記隔壁を隔てて周方向に上記入口セルのみが合計6つ配置されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
  7. 請求項3に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記入口セル及び上記出口セルは、共に断面が六角形状であり、上記入口セルの周囲には、該入口セルの各辺部を構成する上記隔壁を隔てて他の上記入口セルと上記出口セルとが交互に合計3つずつ配置されており、上記出口セルの周囲には、該出口セルの各辺部を構成する上記隔壁を隔てて上記入口セルのみが合計6つ配置されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
  8. 請求項6又は7に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記入口セル及び上記出口セルは、軸方向に直交する断面において、上記入口セル又は上記出口セルの中心を軸とする60°回転対称性を有するよう配置されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
  9. 請求項1〜8に記載の排ガス浄化フィルタにおいて、上記セルは、断面が多角形状である場合に、その内角部に所定の曲率を有するR面が形成されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
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