JP2011167257A - キラル物質の検出装置、キラル物質の検出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易な構成で小型化が容易であり、かつ迅速にキラル物質の定性、定量を行うことが可能なキラル物質の検出装置を提供する。
【解決手段】キラル物質の検出装置10は、生体組織Sに向けて互いに周波数の異なる第1の光ωIRと第2の光ωVISとを照射する光源ユニット12と、第1の光ωIRと第2の光ωVISとが合波した和周波光ωSFを受光する検出器(検出手段)14とを備え、既知のキラル物質の濃度に応じた和周波光の強度データと、溶液の和周波光の強度とを比較し、溶液に溶解しているキラル溶質の濃度を特定する演算手段を更に備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、生体組織に存在するキラリティー(対掌性)を有するキラル物質の定性、定量を行うためのキラル物質の検出装置、およびキラル物質の検出方法等に関する。
キラリティー(対掌性)を有するキラル液体として、例えば、キラル物質であるD−グルコース(糖:デキストロース)がアキラル溶媒である水に溶解している体液が挙げられる。こうした体液に含まれるD−グルコースの定量分析の一例として、血液中の血糖値の測定がある。
近年、糖尿病患者の増加とともに、血糖値の測定によって、糖尿病のごく初期段階での糖代謝の反応を測定することで早期診断に基づく早期治療が可能になっている。こうした血糖値の測定は、従来、指先などから採血を行い、血中のグルコースに対する酵素活性を測ることで行っていた。しかし、このような血糖値の測定方法は、指先などから血液を採取して測定しなければならず、採血に手間と痛みを伴うことや、血液を付着させる測定チップが必要なことから、採血を必要としない非侵襲型の血糖値の測定方法が望まれている。
そこで、例えば、皮膚に近赤外光を照射し、その光吸収量からグルコースの濃度を求める方法が検討されている(例えば、特許文献1、2を参照)。具体的には、予めグルコース濃度と照射する光の波長と光の吸収量との関係を示す検量線を作成しておき、モノクロメーター等を用いてある波長域を走査し、その波長域の各波長に対する吸収量を求め、当該波長及び吸収量と検量線とを比較することでグルコース濃度を算出する。
特許3931638号公報 特許3994588号公報
しかしながら、上述した各特許文献に記載された血液中に含まれるグルコース濃度(血糖値)の測定装置には次のような課題があった。
第1に、分光分析測定法は分子吸光の原理を用いているため、皮膚における血中グルコース相当での濃度における感度が低い。
第2に、分光分析測定法は、グルコースによる吸光度が大きくなる波長域を選択しても、皮膚の主成分である水、たんぱく質、脂質、グルコースのすべてに対する吸光度を測定することになり、水、たんぱく質、脂質による吸光度が大きくなる波長域を1000nm〜2000nmの広い範囲に渡って選択した上で、主成分分析を用いて、もっとも皮膚主成分の吸収係数の温度変化にフィッティングする皮膚の主成分の量を推定する中でグルコースの濃度の定量をする必要があった。
このように、従来の血液中に含まれるグルコース濃度(血糖値)の測定装置では、皮膚の主成分における血糖相応のグルコース濃度を定量する精度を確保しつつ、装置を小型化し、且つ、測定時間を大幅に短縮することが困難であるという課題があった。
本発明は、こうした課題に鑑みて成されたものであり、本発明の一態様は簡易な構成で小型化が容易であり、かつ迅速にキラル物質の定性、定量を行うことが可能なキラル物質の検出装置を提供するものである。
また、実施が容易な工程で、迅速にキラル物質の定性、定量を行うことが可能なキラル物質の検出方法を提供するものである。
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は次のようなキラル物質の検出装置、およびキラル物質の検出方法を提供した。
すなわち、本発明のキラル物質の検出装置は、アキラル溶媒にキラル溶質が溶解している溶液に含まれる、キラル溶質の定性、定量を行うキラル物質の検出装置であって、
アキラル溶媒にキラル溶質が溶解している溶液に含まれる、キラル溶質の定性および/または定量を行うキラル物質の検出装置であって、
前記溶液を含む生体組織に向けて、赤外域の周波数をもつ第1の光と、可視光域の周波数をもつ第2の光とを、前記生体組織を構成する真皮層で合波させるように入射する光源ユニットと、前記第1の光と前記第2の光との和周波光の強度を検出する検出手段と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
前記第1の光と前記第2の光との合波点は前記真皮層に設定されるのが好ましい。
既知のキラル物質の濃度に応じた和周波光の強度データと、前記溶液の前記和周波光の強度とを比較し、前記溶液に溶解しているキラル溶質の濃度を特定する演算手段を更に備えるのが好ましい。
前記第1の光、前記第2の光、前記和周波光の偏光は、順に、S−P−P、P−S−P、またはP−P−Sの組み合わせとなるようにされることが好ましい。
あらかじめ前記溶液を含む生体組織内での前記和周波光を前記検出手段に向けて反射させる光学反射面または、光学散乱層を挿入しておいても良い。
あらかじめ前記溶液を含む生体組織内での前記和周波光を前記検出手段に向けて反射させる光学反射面または光学散乱層の表面側に、既知のキラル物質が既知の濃度であるマーカを挿入しておいても良い。
前記検出手段は、前記和周波光が前記生体組織の内部で後方散乱した和周波光の散乱光を検出することが好ましい。
前記溶液は、前記アキラル溶媒として水、前記キラル溶質として糖を含む体液であればよい。
本発明のキラル物質の検出方法は、アキラル溶媒にキラル溶質が溶解しているキラル溶液に含まれる、キラル溶質の定性および/または定量を行うキラル物質の検出方法であって、
前記溶液を含む生体組織に向けて、赤外域の周波数をもつ第1の光と、可視光域の周波数をもつ第2の光とを、前記生体組織を構成する真皮層で合波するように照射させ、前記第1の光の周波数と第2の光の周波数との和周波光を発生させる和周波発生工程と、前記和周波光の強度を検出する検出工程と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
キラル物質の和周波光のピークを探す状況下での前記和周波発生工程では、前記第2の光の周波数を固定しつつ、前記第1の光の周波数を赤外域の範囲内で連続的または段階的に変化させ、前記検出工程では、前記第1の光の周波数変化に応じた前記和周波光の強度変化を検出することが好ましい。
あらかじめキラル物質を特定してある場合は、前記第1の光の周波数をキラル物質の和周波光のピークに固定しても良い。
前記第1の光と前記第2の光との合波点は、前記生体組織を構成する表皮層と前記真皮層との界面から、前記第1の光と前記第2の光とのコヒーレンス長だけ前記真皮層に入った位置に設定されることが好ましい。
本発明のキラル物質の検出装置を示す構成図である。 真皮層に設定した合波点での和周波光発生の様子を示す模式図である。 和周波光発生時のエネルギー状態を示す模式図である。 生体組織でのキラル液体の様子を示す模式図である。 第1の光を赤外域で変化させて測定したD−グルコース水溶液の和周波光のピークを示すグラフである。 生体組織に挿入される光学体の様子を示す模式図である。
以下、図面を参照して、本発明に係るキラル物質の検出装置、およびキラル物質の検出方法の一実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
なお、以下に示す実施形態中で、キラル液体、溶液という表記は、例えば動物の生体組織に存在する体液を含み、キラル物質という表記は、例えば、体液中に溶解しているD−グルコース(糖:デキストロース)を含むものとする。また、アキラル溶媒という表記は、体液の主成分である水分を含むものとする。
図1は本発明に係るキラル物質の検出装置の一例である血糖値測定装置を示す概略構成図である。
キラル物質の検出装置(以下、血糖値測定装置と称することがある)10は、例えば、人間の生体組織(皮膚)を満たす体液(溶液)に含まれているD−グルコース(糖)の濃度(血糖値)を、皮膚の外側から非侵襲にて測定する装置である。血糖値測定装置10は、生体組織(例えば掌)に接触させて、生体組織の内部に光を照射し、かつ受光するプローブ(探触子)11と、このプローブ11から互いに周波数の異なる第1の光ωIRと第2の光ωVISとを照射させる光源ユニット12とを備えている。また、光強度算出部21、比較演算部22、比較データ記憶部23、および表示部24等からなる制御ユニット20を備えている。
プローブ11は、例えば手で取り回し可能な小型軽量の筐体内に、光源ユニット12で発生させた第1の光ωIRと第2の光ωVISとをそれぞれ出射させる出射端12a,12bと、この第1の光ωIRと第2の光ωVISとが生体組織の内部に設定された合波点Pで合波して和周波光ωSFとなり、その後方散乱光を受光する検出器(検出手段)14とを備えている。
人間の生体組織(皮膚)Sの表層部分は、外側から順に表皮層S1、真皮層S2、および皮下組織S3の順に構造の異なる組織から皮膚を構成する。表皮層S1(epidermis)は外胚葉性の重層扁平上皮により構成され、真皮層S2、および皮下組織S3とともに皮膚を構成する。表皮層S1は、更に基底層、有棘層、顆粒層、角質層に分けることができる。
真皮層S2(dermis)は、表皮層と皮下組織の間の乳頭層と真皮網状層から構成される皮膚の層で、繊維性結合組織から構成される。真皮はコラーゲン、弾性繊維、細胞外マトリックスから構成される。
皮下組織S3は皮膚の最も内側にある層で、大部分が皮下脂肪からなる。
こうした生体組織(皮膚)Sのうち、真皮層S2の体液(キラル溶液)に含まれるキラル物質、即ちD−グルコース(糖)の濃度を測定する。周知の通り、キラル物質とはキラリティがある物質、即ち、結合の組み換えなしには分子をそれ自身の鏡像に重ね合わせることができない(対掌性)構造を持つものであり、D−グルコースはその一例である。一方、アキラル溶媒とは、キラリティがない液体であり、水は代表的なものである。そして、こうしたキラル物質(キラル溶質)をアキラル溶媒に溶解したキラル液体の一例として、体液、D−グルコース水溶液が挙げられる。こうした体液中のD−グルコース濃度を測定することにより、血糖値を知ることができる。
光源ユニット12は、例えば、レーザー光源31、変調器32、および第1の光ωIRや第2の光ωVISの光路上に形成された複数のミラー33、プリズム34、ハーフミラー35等からなる。レーザー光源31は、モードロックのNd−YAGレーザー装置であればよく、例えば、1064nmの基本波と、532nmの第二高調波とを出力する。1064nmの基本波と532nmの第二高調波は、ポンプ光として変調器32に入力される。
変調器32は、例えば、光パラメトリック発振/増幅システム(Optical Parametiric Generatoor:OPG/Applifer:OPA)であり、光軸と非線形光学結晶の結晶軸の角度とを変えることによって、例えば、波長が3.2〜3.7μmの範囲の赤外光を出力することができる。これによって、変調器32からは、赤外域で任意の周波数をもつ第1の光ωIRが出射される。
一方、レーザー光源31から出力された532nmの第二高調波は、ハーフミラー35によってその一部が分岐し、所定の光路を経て、可視光域の周波数をもつ第2の光ωVISとして出射される。なお、こうした第2の光ω2の光路をミラー33やプリズム34などによって延長することにより、変調器32から出力される第1の光ωIRと、第2の光ωVISとを同じタイミングで出射させることができる。
このように、レーザー光源31から出力された第1の光ωIRと第2の光ωVISとは、例えば光ファイバ等を介してプローブ11に伝播され、プローブ11の出射端12a,12bから、それぞれ所定の角度で出射される。
第1の光ωIRは、例えば生体組織Sの広がり面に対して、例えば50°の角度で入射させればよく、また、第2の光ωVISは、生体組織Sの広がり面に対して、例えば45°の角度で入射させればよい。あるいは、第1の光ωIRと第2の光ωVISとは、互いに5°の角度で交差するように生体組織Sに対して入射させればよい。
これら第1の光ωIRと第2の光ωVISとは、生体組織を構成する表皮層S1と真皮層S2との界面から、第1の光ωIRと第2の光ωVISとのコヒーレンス長だけ真皮層S2に入った位置を合波点Pとして、互いに交わるように照射される。そして、この合波点Pにおいて、第1の光ωIRの周波数と、第2の光ωVISの周波数との和周波となる和周波光ωSFが形成される。そして、形成された和周波光ωSFは、真皮層S2の内部で後方散乱する。そして、散乱した和周波光ωSFの一部が表皮層S1を介して生体組織Sの外部に出射される。
図2に示すように、第1の光ωIRと第2の光ωVISとが互いに異なる角度から合波すると、ωIR+ωVIS=ωSFの周波数で示される和周波光ωSFが生じる。ωIRが試料の分子振動と一致すると共鳴的に増大することを利用して,振動分光を行うことができる。和周波光では、赤外活性モードおよびラマン活性モードが両方観測される。赤外活性モードは双極子モーメントが変化する場合、ラマン活性モードは分極率モーメントが変化する場合に許容される。
図3に示すように、和周波光においてこの両モードが許容になる理由は、|g>から|a>への遷移が赤外吸収過程に相当し、|a>から|b>への遷移と|b>から|g>への緩和がラマン散乱過程に相当するためである。分子振動の振動数は赤外域に相当するが、,赤外光と可視光を用いたSFG分光では、検出する和周波光が可視光域になるため、赤外光の検出器に比べて感度を高くできる可視光域の光検出器を用いることができる。
こうした第1の光ωIRと第2の光ωVISとの合波による和周波光ωSFの生成条件として、和周波光ωSFは非対称な構造のみから発生することがあげられる。このため、鏡像対称性の欠如したキラル分子、例えはD−グルコース分子は、和周波の発生が許容される。こうした和周波の発生において有用なパラメータとして、2つの入射光と和周波光との偏光方向が挙げられる。
それぞれの光に対してP偏光またはS偏光のどちらかを採用すると、これらは合計8組の組合せが可能である。それぞれの組合せごとによるスペクトルの相違を解析することにより、分子の対称性や配向特性を調べることも可能である。例えば、対称中心を持つ媒質では、和周波光の発生は禁制となり、反転対称性を欠いたキラリティ構造やその表面・界面からのみ、和周波光が発生する。図2に示す構成では、第1の光ωIR、第2の光ωVIS、および和周波光である和周波光ωSFが、順に、S−P−P、P−S−P、またはP−P−Sの組み合わせとなる時にのみ、キラル液体、例えば糖を含む体液からの和周波光ωSFの発生が許容される。
なお、図6(a)に示すように、溶液(体液)を含む生体組織(皮膚)Sのうち、真皮層S2に和周波光ωSFを検出器(検出手段)に向けて反射させる光学反射面または光学散乱層である光学体Mを挿入おいても良い。
この光学体Mは、例えば、図6(b)に示すように、真皮層S2に挿入されたマーカであればよい。マーカの一例としては、例えば、保護膜41,42の間にグルコース浸透性部43とグルコース無反応基準部44とを形成し、更に、一方の保護膜42に光学反射部45を備えたものであればよい。
図4は、生体組織(皮膚)Sを構成する真皮層S2に含まれる溶液(体液、細胞間液)の様子を示した模式図である。図4中でキラル物質(糖)のバルク水溶液(体液)は太い矢印線で示す。また、真皮層S2と皮下組織S3との界面近傍にある界面の水溶液(体液)は細い矢印線で示す。
図4によれば、バルク水溶液による和周波光と、界面近傍の水溶液による和周波光との光強度を比較すると、バルク水溶液の和周波光の光強度が十分強い。その理由は、真皮層S2の界面近傍では、分子1層分のみ作用するのに対して、キラル物質が溶解しているバルク水溶液は分子量が遥かに多く、第1の光ωIRと第2の光ωVISとが合波されるコヒーレント長の距離の間隔で和周波光ωSFが発生するからである。また、真皮層S2の界面近傍の水による和周波光は、偏光の種類を選択することで禁制にすることもできる。
このように、第1の光ωIRと第2の光ωVISとの合波による和周波光の発生の特徴として、測定対象となる分子の鏡像対称性に敏感であり、鏡像対称性が破れた界面、例えば、真皮層S2の界面近傍に存在する溶液(体液)の1原子分ないし数原子分の厚みのキラル物質(糖)の検出が可能である。こうした表面選択性によって、特定の界面近傍に限定してキラル物質の特定が可能となる。
以上のような原理によって、生体組織(皮膚)Sを構成する真皮層S2に所定の深さで設定した合波点Pで発生し、真皮層S2の中を後方散乱して表皮層S1を介して生体組織Sの外部に出射された和周波光ωSFは、検出器(検出手段)14に入射してその強度が検出される。検出器14は、例えば、光電増倍管であればよく、入射した和周波光ωSFは光強度に応じて光量信号を出力する。出力された光量信号は、制御ユニット20に入力される。
光強度算出部21は、制御ユニット20に入力された検出器14からの光量信号に基づき、実際の和周波光の光強度を算出する。比較データ記憶部23は、キラル物質(糖)の濃度に応じて予め形成した和周波光の強度データ(検量線)を格納するメモリである。比較演算部(演算手段)22は、制御ユニット20に入力された光量信号と、比較データ記憶部23から読み出した既知の強度データ(検量線)とを比較し、溶液(キラル液体:体液)に含まれているキラル物質(糖)の濃度、即ち血糖値を特定する。表示部24は、例えばモニタからなり、比較演算部(演算手段)22で特定された血糖値の数値を表示する。
以上のような構成のキラル物質の検出装置(血糖値測定装置)を用いた、本発明のキラル物質の検出方法について、図1を参照しつつ説明する。
以下の実施形態では、一例として人間の生体組織(皮膚)を満たす体液(溶液)に含まれているD−グルコース(糖)の濃度(血糖値)を、皮膚の外側から非侵襲にて測定する方法を挙げる。D−グルコース(キラル物質)の濃度測定にあたっては、まず、プローブ11の出入射面11aを、生体組織S(皮膚)、例えば人間の掌の親指下部に押し当てる。
次に、この生体組織S(皮膚)に向けてプローブ11の出射端12a,12bからそれぞれ第1の光ωIRと第2の光ωVISとを入射させる。具体的には、レーザー光源31から、一定の周波数に固定された第2の光ωVIS、例えば532nmの第二高調波(可視光)を生体組織Sに対して45°の角度から入射させる。同時に、レーザー光源31から、周波数を赤外域の範囲内で連続的ないし段階的に変化させた第1の光ωIRを生体組織Sに対して50°の角度から入射させる。第1の光ωIRは、例えば、1064nmの基本波と532nmの第二高調波をポンプ光として変調器32に入力し、波長が3.2〜3.7μmの赤外域内で連続的ないし段階的に変化させればよい。
なお、こうした第1の光ωIR、第2の光ωVISのうち、いずれか一方は測定対象となるキラル物質、即ち本実施形態ではD−グルコース(糖)の分子振動に共鳴する周波数の光とし、もう一方の光と、和周波光ωSFは、体液を構成する水(アキラル溶媒)に最も吸収されにくい周波数となる組み合わせを選択するのが好ましい。
また、第1の光ωIRと第2の光ωVISとの合波点Pは、生体組織Sを構成する表皮層S1と真皮層S2との界面から、第1の光ωIRと第2の光ωVISとのコヒーレンス長だけ真皮層S2に入った位置に設定するのが好ましい。そして、この合波点Pにおいて、赤外光である第1の光ωIRと可視光である第2の光ωVISとが合波し、和周波光ωSFが生じる(和周波発生工程)。合波点Pで発生する和周波光ωSFの周波数ωSFは、第1の光の周波数をωIR、第2の光の周波数をωVISとすると、ωSF=ωIR+ωVISで示される。そして、この和周波光ωSFは、真皮層S2内で後方散乱し、その一部が表皮層S1から出射される。
この時、生体組織Sを構成する真皮層S2に存在する溶液(体液、細胞間液)に含まれているD−グルコース(キラル溶質)の濃度に応じて、発生する和周波光ωSFの光強度が増減する。具体的には、D−グルコースの濃度が高まるにつれて発生する和周波光の光強度が増す。この和周波光が後方散乱した散乱光の一部の光強度を測定することによって、D−グルコースの濃度を測定(定量分析)することができる。
また、D−グルコースによって生じる和周波光ωSFの光強度は、第1の光ωIRの周波数を赤外域の範囲内で変化させた際に、特定の周波数、例えば2880cm−1付近でピークに達する。このピークの波形を検出することによって、溶液(体液、細胞間液)Sに他のキラル溶質が溶解している場合でも、D−グルコースの存在を検出する(定性分析)ことができる。
一例として、図5に、第1の光ωIRの周波数を2700〜3100cm−1の範囲で変化させた際の、D−グルコース水溶液の和周波光ωSFのピークを測定したグラフを示す。偏光の組み合わせは、第1の光:P、第2の光:S、和周波光:Pとし、第1の光の強度は50.9μJ/pulse(2880cm−1)、第2の光の強度は24.9μJ/pulseとした。
生体組織Sから出射した和周波光ωSFは、検出器(検出手段)14に入射し、その光強度に応じて和周波光ωSFの光量信号が出力される(検出工程)。和周波光ωSFの光量信号が入力された比較演算部(演算手段)22では、比較データ記憶部23からD−グルコースの濃度を変化させて形成した検量線を参照する。
例えば、D−グルコースのピークとなる第1の光ωIRの周波数が2880cm−1付近での、和周波光ωSFの光強度とD−グルコースの濃度との関係を示す検量線が参照される。そして、この検量線と和周波光ωSFの光強度から、真皮層S2に存在する溶液(体液、細胞間液)に含まれるD−グルコースの濃度を算出する。そして、算出されたD−グルコースの濃度を血糖値として表示部24に出力する。
以上のように、本発明に係るキラル物質の検出装置、およびキラル物質の検出方法によれば、赤外域の周波数の第1の光ωIRと、可視光域の第2の光ωVISとを、キラル液体である溶液、例えば体液を含む生体組織の内部で合波させることによって、この生体組織に含まれている(溶解している)キラル物質、例えばD−グルコースの濃度に応じた強度の和周波光ωSFを得ることができる。この和周波光の強度を検出することで、キラル物質の濃度、例えば血糖値を生体組織に対して非侵襲で、迅速、かつ容易に測定することが可能になる。また、こうした検出装置は、赤外光と可視光の2種類の光を照射できる光源と、合波させた和周波光ωSFを検出する光センサだけで構成可能であるため、キラル物質の検出装置を小型軽量化することが可能になる。
また、第1の光ωIRと第2の光ωVISとの合波による和周波光ωSFの発生は、測定対象となる分子の鏡像対称性に敏感であり、鏡像対称性が破れた界面だけを選択的に、かつ高感度で検出が可能であるため、特定の界面近傍のキラル物質、例えばD−グルコースを1分子層分の厚みで観測することができる。
また、共鳴効果によって特定の電子状態、振動状態も測定が可能である。更に、被測定対象となるキラル液体は、例えば、生体組織やこれに含まれる体液など、赤外光や可視光が透過可能であるなら測定可能であり、測定対象物の制約が極めて少なく、幅広いキラル物質の定量、定性に適用可能である。
上述した実施形態においては、第1の光ωIRと第2の光ωVISは連続した照射光としたが、これら第1の光ωIRや第2の光ωVISを短時間パルス光としてもよい。そして、測定対象を成す複数の層、例えば、生体組織(皮膚)を構成する表皮層、真皮層、および皮下組織における伝搬光路長分布のモデルと、短時間パルス光の時間分解波形のモデルとをそれぞれ記憶する。
そして、短時間パルス光を照射した時刻以降の和周波光ωSFの強度を測定して、対応する時間における短時間パルス光の伝搬光路長モデルと時間分解波形のモデルとを参照して、例えば、真皮層の光吸収係数を算出し、この光吸収係数に基づいて、真皮層における測定目的の成分、例えばD−グルコースの濃度を算出する構成であってもよい。
このような第1の光ωIRと第2の光ωVISを短時間パルス光として、時間分解波形を用いて和周波光ωSFの強度から目的成分であるキラル物質の濃度を測定することにより、生体組織(皮膚)を構成する表皮層、真皮層、および皮下組織のうち、真皮層以外の層によるノイズの影響を軽減して、特定の深さにある層、即ち真皮層に存在するD−グルコースの濃度だけを選択的に、かつ正確に測定することも可能になる。
10…キラル物質の検出装置(検出装置)、11…プローブ、12…光源ユニット、14…検出器(検出手段)、31…レーザー光源、32…変調器、ωIR…第1の光(赤外光)、ωVIS…第2の光(可視光)、ωSF…和周波光、P…合波点、S…生体組織。

Claims (9)

  1. アキラル溶媒にキラル溶質が溶解している溶液に含まれる、キラル溶質の定性および/または定量を行うキラル物質の検出装置であって、
    前記溶液を含む生体組織に向けて、赤外域の周波数をもつ第1の光と、可視光域の周波数をもつ第2の光とを、前記生体組織を構成する真皮層で合波させるように入射する光源ユニットと、
    前記第1の光と前記第2の光との和周波光の強度を検出する検出手段と、
    を少なくとも備えたことを特徴とするキラル物質の検出装置。
  2. 既知のキラル物質の濃度に応じた和周波光の強度データと、前記溶液の前記和周波光の強度とを比較し、前記溶液に溶解しているキラル溶質の濃度を特定する演算手段を更に備えたことを特徴とする請求項1記載のキラル物質の検出装置。
  3. 前記第1の光、前記第2の光、前記和周波光の偏光は、順に、S−P−P、P−S−P、またはP−P−Sの組み合わせとなるようにされることを特徴とする請求項1または2記載のキラル物質の検出装置。
  4. 前記検出手段は、前記和周波光が前記生体組織の内部で後方散乱した和周波光の散乱光を検出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のキラル物質の検出装置。
  5. 前記第1の光、および前記第2の光は、パルス光であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載のキラル物質の検出装置。
  6. 前記溶液は、前記アキラル溶媒として水、前記キラル溶質として糖を含む体液であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項記載のキラル物質の検出装置。
  7. アキラル溶媒にキラル溶質が溶解しているキラル溶液に含まれる、キラル溶質の定性および/または定量を行うキラル物質の検出方法であって、
    前記溶液を含む生体組織に向けて、赤外域の周波数をもつ第1の光と、可視光域の周波数をもつ第2の光とを、前記生体組織を構成する真皮層で合波するように照射させ、前記第1の光の周波数と第2の光の周波数との和周波光を発生させる和周波発生工程と、
    前記和周波光の強度を検出する検出工程と、を少なくとも備えたことを特徴とするキラル物質の検出方法。
  8. 前記和周波発生工程では、前記第2の光の周波数を固定しつつ、前記第1の光の周波数を赤外域の範囲内で連続的または段階的に変化させ、
    前記検出工程では、前記第1の光の周波数変化に応じた前記和周波光の強度変化を検出することを特徴とする請求項7記載のキラル物質の検出方法。
  9. 前記第1の光と前記第2の光との合波点は、前記生体組織を構成する表皮層と前記真皮層との界面から、前記第1の光と前記第2の光とのコヒーレンス長だけ前記真皮層に入った位置に設定されることを特徴とする請求項7または8記載のキラル物質の検出方法。
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