JP2011167117A - 耐熱性リパーゼ遺伝子、耐熱性リパーゼ、耐熱性リパーゼ発現ベクター、組み換え生物、耐熱性リパーゼの発現方法、耐熱性リパーゼの反応方法、および耐熱性組成物 - Google Patents

耐熱性リパーゼ遺伝子、耐熱性リパーゼ、耐熱性リパーゼ発現ベクター、組み換え生物、耐熱性リパーゼの発現方法、耐熱性リパーゼの反応方法、および耐熱性組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性に優れたリパーゼを提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有し、長時間高温環境下(90℃において5分以上)で加熱した場合にも、依然として残存活性を有する、アスペルギルス・オリゼ由来の、耐熱性リパーゼとその遺伝子、およびその発現方法。さらに、該リパーゼを用いる、反応方法と、組成物。
【選択図】図6

Description

本発明は、耐熱性リパーゼ遺伝子、耐熱性リパーゼ、耐熱性リパーゼ発現ベクター、組み換え生物、耐熱性リパーゼの発現方法、耐熱性リパーゼの反応方法、および耐熱性組成物に関する。
リパーゼは、その重要性から主として食品加工関連の酵素として使用されてきた。トリグリセリドからの脂肪酸の製造、化粧品の基材としてのモノグリセリドの製造、水中油型乳化剤としての利用、食品フレーバーの改質、飼料の製造、卵加工品への応用など、リパーゼの用途は様々である。特に、食品加工では、熱をかけて製品を作ることが非常に多く、数多くの耐熱性リパーゼの報告または特許出願がされてきた。リパーゼの供給源としては、Rhodobacter属、Bacillus属などの細菌類や、Rhizopus属、Aspergillus属などの糸状菌が報告されている。
特にアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae:麹菌、ニホンコウジカビとも呼ばれる。以下Aspergillus属は「A.」と略す)は、古来から日本酒や味噌、醤油といった発酵食品の製造に使用されている微生物であり、安全な菌である。そのため、数多くの研究が精力的になされてきた。にもかかわらず、アスペルギルス・オリゼ由来のリパーゼの利用は非常に限られており、麹の製造や発酵エキスの抽出、化粧料などに使用されているだけである。
リパーゼを用いた技術として、たとえば、光合成細菌であるRhodobacter sphaeroides NATのリパーゼを用いて45〜55℃の排水を処理する方法が報告されている(特許文献1)。また、リパーゼに金コロイドとPEG−ポリ(メタクリル酸−2−N,N−ジメチルアミノエチル)を加えてナノリパーゼ複合体を形成することにより、リパーゼに耐熱性を付与する方法が報告されている(特許文献2)。
また、糸状菌であるFusarium heterosporumのリパーゼをアスペルギルス・オリゼで発現させることにより、バイオディーゼルの生産に応用する技術が報告されている(非特許文献1)。また、アスペルギルス・ニガー(A. niger)の耐熱性を有するリパーゼが報告されている(非特許文献2)。また、アスペルギルス・オリゼのリパーゼとしては、ホスホリパーゼA1が報告されている(非特許文献3)。
特開2009−172544号公報 特開2008−092816号公報
Applied Microbiology and Biotechnology 2008年、81巻、4号、P.637−645 Lipids 2000年、35巻、5号、P.495−502 Bioscience Biotechnology and Biochemistry 1999年、63巻、5号、820−826
しかしながら、リパーゼは、加熱による機能の低下が著しい酵素として従来から知られている。具体的には、リパーゼは一般的に、60℃で10分間加熱すると完全に失活してしまう酵素として知られている。
たとえば特許文献1のリパーゼでは、55℃を超える温度で酵素が活性を有するかどうかについては知られていなかった。さらに、特許文献1のリパーゼでは、55℃を超える温度でインキュべートした場合に、リパーゼが活性を保持できるかどうかについても知られていなかった。また、特許文献2のナノリパーゼ複合体では、複合体を形成するためにコストや手間がかかるのが問題であった。さらに、特許文献2のナノリパーゼ複合体では、60℃を超える温度に対して耐熱性があるかどうかも知られていなかった。
また、非特許文献1および非特許文献3のリパーゼでは、耐熱性を有するという性質は知られていなかった。また、非特許文献2のリパーゼは、50℃を超える温度でインキュべートすると、急激に酵素の活性が低下してしまうという問題があった。
このように、従来のリパーゼでは、耐熱性が十分ではなかったため、生成物の収率低下や新しい酵素の再添加の必要性を招き、歩留まりの低さやコスト高の原因となっていた。そこで、長時間高温環境下にさらされても依然として酵素活性を有するような、従来よりも耐熱性に優れたリパーゼを生産する技術が求められている。
本発明はこうした状況に鑑みてなされており、その目的とするところは、耐熱性に優れたリパーゼを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の耐熱性リパーゼ遺伝子は、下記の(a)、(b)または(c)のアミノ酸配列をコードし、90℃において5分以上加熱した場合にも残存活性を有する。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列の部分アミノ酸配列;
(c)(a)または(b)に記載のアミノ酸配列との相同性が48%を上回るアミノ酸配列。
この態様によると、耐熱性に優れたリパーゼを提供することができる。
なお、本発明で「残存活性を有する」とは、加熱後さらにリパーゼ反応に使用しうる程度に活性が残存していることをいい、通常約10%以上、好ましくは約15%以上、さらに好ましくは約20%以上の活性を有していることをいう。
本発明の別の態様は、耐熱性組成物である。この耐熱性組成物は、下記の(a)、(b)または(c)のアミノ酸配列を有し、90℃において5分以上加熱した場合にも残存活性を有する耐熱性リパーゼを含有する。
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列の部分アミノ酸配列;
(c)(a)または(b)に記載のアミノ酸配列との相同性が48%以上であるアミノ酸配列。
この態様によると、耐熱性に優れた耐熱性組成物を提供することができる。
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
本発明によれば、耐熱性に優れたリパーゼを提供することができる。
AO60遺伝子群の系統関係を示す分子系統樹を示す図である。 AO60遺伝子群のアラインメントを示す図である。 薄層クロマトグラフィーによるリパーゼLip60の天然基質に対する反応性を示す図である。 本発明のリパーゼLip60を、バッファーの種類を変えて相対活性を比較した結果を示すグラフである。 本発明のリパーゼLip60の反応温度と相対活性との関係を示すグラフである。 本発明のリパーゼLip60を所定の温度でインキュべートした時間と残存活性との関係を示すグラフである。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
AO60遺伝子は、アスペルギルス・オリゼの1番染色体上に存在する遺伝子であり、配列番号1に示す834塩基のコード領域(277アミノ酸)を有する遺伝子である。しかし、AO60遺伝子の機能、およびAO60遺伝子から作られる配列番号2に示すタンパク質の機能は未知であった。本発明では、機能が未知であったAO090009000060遺伝子(以下「AO60遺伝子」と呼ぶ)から生産されるタンパク質が、リパーゼ活性を有することを明らかにした。そこで、AO60遺伝子から生産されるタンパク質を、リパーゼLip60と命名した。
また、本発明では、リパーゼLip60は、従来知られていた耐熱性リパーゼに比べ、はるかに高い耐熱性を有することを明らかにした。アスペルギルス・オリゼが生産するリパーゼは約190種類存在すると予想されていたが、本発明では、これまでに報告されていない極めて熱に対する安定性が高いリパーゼを見いだした。本発明では、この性質を利用し、耐熱性の高いリパーゼを非常に多く生産することができるベクターおよび組み換え生物を発明した。また、その組み換え生物から効率的に高純度で耐熱性リパーゼを精製する方法を発明した。また、本発明の耐熱性リパーゼを発現させるための方法および反応方法も発明した。また、本発明の耐熱性リパーゼを含有する耐熱性組成物も発明した。
なお、本発明では、特に明記しない限り、AO60遺伝子およびそれと相同性のある遺伝子をまとめて「AO60遺伝子群」と総称し、AO60遺伝子群がコードするリパーゼをまとめて「リパーゼLip60群」と総称する。以下、AO60遺伝子およびリパーゼLip60を中心に説明するが、これらはAO60遺伝子群の他の遺伝子およびリパーゼLip60群の他のリパーゼ、さらに本発明では記載しないこれらと相同性のある遺伝子およびリパーゼに関しても同様に適用可能である。
(リパーゼLip60発現ベクター)
AO60遺伝子群から生産されるリパーゼLip60群は、たとえば野生型のアスペルギルス・オリゼでは、ウェスタンブロッティング法などの手法によって検出することが困難である。つまり、野生型のアスペルギルス・オリゼではAO60遺伝子の発現量が非常に少ないため、野生型のままではリパーゼLip60をリパーゼ反応に効率的に利用することが非常に困難である。
そこで、本発明では、PCR(polymerase chain reaction)などにより増幅したAO60遺伝子群のDNAをベクターに組み込み、それを形質転換によって細胞内に導入し、AO60遺伝子群の発現量を上昇させることにより、高純度のリパーゼLip60群を容易かつ大量に得るシステムを構築した。
AO60遺伝子群のDNAを挿入し、リパーゼLip60群を発現させるためのベクターは、細胞系のベクターであってもよく、また無細胞系のベクターであってもよい。大量にリパーゼLip60群を必要とする場合には、コストの観点から、細胞系を使用してリパーゼLip60群の生産を行うことが好ましい。また、細胞系のベクターの場合、染色体組み込み型であってもよく、染色体に組み込まれないプラスミド型であってもよい。ベクターは、使用する系や生物種によって適宜選択することができる。さらに、AO60遺伝子群の発現量を飛躍的に上昇させるために、ベクターは、高発現量のプロモーターを有することが好ましい。本発明では、核組み込み型で高発現量のプロモーターを有する麹菌用小型化高発現ベクターであり、niaD遺伝子をマーカーに持つpNEN142(大関酒造:特開平9−9968参照)を使用した。pNEN142は、アスペルギルス・オリゼなどの麹菌だけではなく大腸菌にも使用できるシャトルベクターであるため、特に有利である。
まず、ベクターに組み込むためのAO60遺伝子群のDNAを調製する必要がある。たとえば、アスペルギルス・オリゼのAO60遺伝子の場合、AO60遺伝子のコード領域のそれぞれわずかに上流と下流にプライミングする5−ACTCTTTTGAAGCTTAATCGGAATAC−3および5−GCATGTACATATGGGACTATATAC−3というプライマーセットを使用し、PCRを行うことができる。ポリメラーゼとして、たとえばEx Taq(タカラバイオ)を使用し、94℃3分→(98℃10秒→51℃45秒→72℃2分)×30サイクル→72℃4分というサイクルでPCRを行うことができる。また、PCRには、たとえばMolecular Cloning 3rd Ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press)などに記載されている方法も利用することができる。
次に、得られたPCR産物およびベクターをライゲーションする。PCR産物をそのままTベクターなどに組み込むこともできるが、ライゲーションに先立ち、得られたPCR産物およびベクターを制限酵素にて切断し、両末端をベクターに組み込めるような形にするのがより好ましい。制限酵素は、PCR産物とベクターの間でライゲーションが行えるように適宜選択することができる。たとえば上述のプライマーセットを使用する場合、HindIIIとNdeI(タカラバイオまたはTOYOBO)という2つの制限酵素を用いて、PCR産物を上記プライマー中の認識部位において切断し、pNEN142をマルチクローニングサイトにおいて切断することにより、互いに相補的な切断部位を形成することができる。反応条件は、たとえば37℃で8時間とすることができる。
上述のPCR後と制限酵素処理後には、DNAをカラムで精製することが好ましい。このようなカラムとしては、たとえばGFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit(GEヘルスケア)を使用することができる。
また、制限酵素処理後のDNAとベクターとをライゲーションする前に、セルフライゲーションを防止するために脱リン酸化処理を行うのが好ましい。脱リン酸化処理は、たとえばShrimp Alkaline Phosphatase(タカラバイオ)を用いて37℃30分→65℃15分という条件で反応を行うことができる。
次に、制限酵素処理後のPCR産物(AO60遺伝子領域のDNA)と、制限酵素処理後のpNEN142とをライゲーションする。これにより、耐熱性リパーゼ発現ベクター(以下AO60−pNEN142)を得ることができる。ライゲーション反応には、たとえばT4 DNA Ligase(タカラバイオ)を使用することができる。反応条件は、たとえば16℃で3時間とすることができる。また、ライゲーション反応後の産物に対し、エタノール沈殿を行うことが望ましい。エタノール沈殿は、たとえばMolecular Cloning 3rd Ed.などに記載されている方法を利用することができる。
ライゲーションされなかったpNEN142やPCR産物をさらに除去することにより、AO60−pNEN142をより高純度で大量に取得することが好ましい。たとえば、ライゲーション反応産物を大腸菌に形質転換し、培養することにより、高純度なAO60−pNEN142を増幅することができる。具体的には、MicroPulseエレクトロポレーター(BioRad)を用いて大腸菌JM109 Electro−Cells(タカラバイオ)へエレクトロポレーション法により形質転換を行うことができる。反応条件は、たとえば2.5kV、25μF、200Ωとすることができる。
次に、形質転換後の大腸菌を培養し、大腸菌から耐熱性リパーゼ発現ベクター(AO60−pNEN142)を回収する。たとえば、AO60−pNEN142で形質転換された大腸菌JM109 Electro−Cellsを、LB液体培地で37℃において振とう培養した後、アンピシリン入りのLB培地に塗布し、37℃で24時間静置培養することができる。その後、大腸菌からAO60−pNEN142を回収する。たとえば、GFX Micro Plasmid Prep Kit(GEヘルスケア)を用いて、AO60−pNEN142を回収してもよい。なお、アンピシリン入りのLB培地で培養後にポジティブコロニーの選別をより効率的に行うために、コロニーPCR法を使用するのが好ましい。
以上の手順により、従来よりもはるかに高い耐熱性を有するリパーゼLip60群を大量に発現させるための耐熱性リパーゼ発現ベクター(AO60−pNEN142)を簡便かつ効率的に得ることができる。
(形質導入)
細胞系の場合、得られた耐熱性リパーゼ発現ベクター(AO60−pNEN142)を細胞内に形質導入することにより、リパーゼLip60群を大量に発現させることができる。生物種は適宜選択することができるが、生育性や取り扱いやすさの観点から、単細胞である菌類が好ましい。発現量と安全性の観点から、アスペルギルス・オリゼを使用することが特に好ましい。また、形質導入の方法は適宜選択することができるが、たとえばアスペルギルス・オリゼなどの糸状菌の場合には、プロトプラスト−PEG(polyethylene glycol)法を用いるのが好ましい。
アスペルギルス・オリゼへの形質導入にプロトプラスト−PEG法を用いる場合、たとえば以下の方法により形質導入をすることができる。つまり、まずアスペルギルス・オリゼに対し、YatalaseTM(タカラバイオ)を用いて細胞壁溶解処理を行う。具体的には、YPD液体培地200ml中にアスペルギルス・オリゼ(RIB40株:産業技術総合研究所)のniaD遺伝子破壊株であるniaD400株(産業技術総合研究所)を植菌し、100rpm、37℃で20時間振とう培養する。次に、ガラスフィルター17G1(柴田科学)を用いて培養液を濾過する。集まった菌をガラスフィルター17G1内で滅菌水とNaCl溶液(0.8M)を用いて洗浄する。洗浄後の菌を滅菌した薬さじなどで軽く押し、脱水する。次に、菌をチューブへ移し、YatalaseTMの反応液30mlを加え、40℃で3時間振とうさせ反応させる。
YatalaseTMで反応させた後、上述のガラスフィルター17G1を用いて培養液を濾過する。この際、ガラスフィルター17G1を通過した液体をチューブに回収し、3000rpm、4℃で5分間遠心し、上清を捨てる。次に、沈殿にNaCl溶液(0.8M)を加えて懸濁し、再度3000rpm、4℃で5分間遠心し、上清を捨てる。次に、沈殿に溶液1(NaCl 46.75g、1MのCaCl 10ml、1MのTris−HCl 50mlを蒸留水で1000mlに調整したもの)を10ml加えて懸濁し、再度3000rpm、4℃で5分間遠心し、上清を捨てる、という操作を2度行う。次に、沈殿に溶液1を5ml加えて懸濁し、懸濁液1を得る。懸濁液1から40μlを別のチューブに移す。懸濁液40μl分に対し、NaCl溶液(0.8M)を960μl加えて懸濁し、懸濁液2を得る。
次に、懸濁液2から約10μlを分注し、血球検査盤と顕微鏡を用いて菌体量を測定する。その濃度に応じ、懸濁液1に溶液1を加えるか、再度遠心を行って加える溶液の量を前回より少なくするかすることにより、菌濃度が2.5×108/mlの懸濁液3を得る。この懸濁液3に、懸濁液3の全量の1/4の溶液2(PEG4000 40g、1MのCaCl 5ml、1MのTris−HCl 5mlを蒸留水で100mlに調整したもの)を加える。形質転換効率をさらに向上させるために、この後に4℃で約20時間インキュベートするのが好ましい。
次に、懸濁液3から200μlずつ別のチューブに分注し、上述の耐熱性リパーゼ発現ベクター(AO60−pNEN142)の溶液10μlを加えて混合し、氷中で1時間インキュベートする。次に溶液2を1ml加えて懸濁し、室温で20分間インキュベートする。その後、懸濁液を3000rpm、4℃で5分間遠心し、上清を完全に除去する。次に、沈殿にNaCl溶液(0.8M)を10ml加えて懸濁し、再度3000rpm、4℃で5分間遠心し、上清を除去する。沈殿にNaCl溶液(0.8M)を400μl加え、懸濁する。
懸濁液を、CDプレート培地(10×CD 50ml、グルコース10g、NaNO 1.5g、NaCl 23.38g、 Ager粉末 7.5gを滅菌水で500mlにメスアップしたもの。ただし、10×CDは、KCl 10g、 KHPO 5g、 MgSO・7HO 2.5g、 FeSO・7HO 0.1gを滅菌水で500mlにメスアップし、pHを5.5に調整したもの)上に均一に塗布し、30℃で約96時間培養する。得られたコロニーに関し、CDプレート培地を用いて4回継代培養を繰り返し、リパーゼLip60生成菌のコロニーを得る。これにより、従来のリパーゼよりもはるかに耐熱性の高いリパーゼLip60を大量に生産するリパーゼLip60生成菌(組み換え生物)を効率的に得ることができる。
なお、得られたリパーゼLip60生成菌のコロニーから、Ultra Clean Microbial DNA Isolation Kit(Mo Bio Laboratories,Inc.)などを用いてDNAを抽出した後、PCRを行うことにより、目的のDNAを有するどうかを確認するのが好ましい。反応には、たとえばAO60遺伝子の塩基配列上に設計したプライマーを使用してもよい。PCRは、たとえばMolecular Cloning 3rd Ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press)などに記載されている方法を利用することができる。
また、pNEN142のような染色体組み込み型のベクターを使用した場合、AO60遺伝子群が染色体に組み込まれているかどうかをサザンハイブリダイゼーションにより確認してもよい。サザンハイブリダイゼーションには、たとえば、Molecular Cloning 3rd Ed.などに記載されている方法を利用することができる。
(タンパク質の精製)
得られたリパーゼLip60生成菌から、リパーゼLip60の回収を行う。まず、リパーゼLip60の酵素抽出液を回収する。具体的には、たとえば得られたリパーゼLip60生成菌を液体のYPD培地(200ml、pH5.5)を用いて100rpm、30℃で約72時間培養し、アスピレーターとガラスフィルター17G1を用いて菌体とYPD培地とを分離する。これにより、菌体を菌体内酵素抽出液として、YPD培地を菌体外酵素抽出液として回収する。
リパーゼLip60を後述の汚染物質の分解などの用途に用いる場合には、リパーゼLip60生成菌などの組み換え生物の状態で使用することもできるし、上述の菌体内酵素抽出液または菌体外酵素抽出液の少なくとも一方を使用することもできる。また、タンパク質の全活性を飛躍的に高めるために、リパーゼLip60生成菌を24時間より長く培養するのが好ましい。また、タンパク質の全活性をさらに高め、かつ全タンパク質量も増大させるために、リパーゼLip60生成菌を48時間よりも長く培養することがさらに好ましい。
菌体外酵素抽出液からタンパク質を分画するには、硫安分画(塩析)、溶液組成の変化による分離法、ショ糖密度勾配遠心分離法、クロマトグラフィーなどの種々の方法を使用することができる。たとえば硫安分画でタンパク質を分画する場合、まず硫安分画濃度早見表を基準に目的の濃度となる硫酸アンモニウムを計量し、乳鉢で細かくすりつぶす。YPD培養液200mlに20mMの酢酸バッファー(pH5.5)を300ml加え、4℃で撹拌しながらすりつぶした硫酸アンモニウムの粉末を溶け残りが出ないようにゆっくりと加える。その後、4℃で1時間以上インキュべートする。次に、10000rpm、4℃で20分間遠心し、タンパク質を回収する。硫酸アンモニウムの濃度をたとえば1〜30%、30〜60%、60〜85%と濃度を変えて分画を複数回行う場合には、タンパク質沈殿物を回収後、所望の濃度に達するまで、菌体外酵素抽出液に再び硫酸アンモニウムを加える。回収したタンパク質沈殿物に20mMの酢酸バッファー(pH5.5)を40ml加え、酵素液1として回収する。リパーゼLip60の場合、たとえば、60%の硫酸アンモニウム濃度において沈殿させることができる。なお、「蛋白質・酵素の基礎実験法」堀尾武一、山下仁平、編集 南江堂(1987年)や、「タンパク質実験ノート」岡田雅人、宮崎香 編集 羊土社(2005年)などに記載されている方法を使用することもできる。
回収した酵素液1の脱塩処理を行うために、透析を行うことが好ましい。透析は、たとえば以下のように行うことができる。まず20mMの酢酸バッファー(pH5.5)を約12L作成し、最終濃度が約1mMになるように塩化カルシウムを加え、4℃に冷却する。また、透析チューブを切り、蒸留水に約1時間浸すことにより、透析チューブに付着していたグリセロールなど除去する。その後、透析チューブの内部を蒸留水で洗浄し、チューブの一端をストッパーを用いて塞ぐ。次に、ガラス漏斗を使用し、内部に酵素液1を入れ、穏やかに撹拌させながら透析を行う。透析後の酵素液は、酵素液2として回収する。酵素液2をチューブなどに入れ、−80℃で6時間以上置き、完全に凍結させる。その後、容器に空気の流通ができるようにしてから凍結乾燥瓶に入れ、凍結乾燥機にかけ、乾燥させる。
乾燥後の酵素液2からリパーゼLip60を精製するためには、種々の方法を使用することができる。たとえば、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーなどを使用することができる。高い収率で高純度のリパーゼLip60を精製するためには、陰イオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過クロマトグラフィーを使用することがより好ましい。また、「蛋白質・酵素の基礎実験法」堀尾武一、山下仁平、編集 南江堂(1987年)や、「タンパク質実験ノート」岡田雅人、宮崎香 編集 羊土社(2005年)などに記載されている方法を利用することもできる。
リパーゼLip60を精製するために陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する場合、担体としてたとえばTOYOPEARL SuperQ−650M(東ソー)を使用することが好適である。アスペルギルス・オリゼのリパーゼLip60は等電点が4.74である。そのため、具体的にはまず、SuperQ−650Mを20mMの酢酸バッファー(pH5.5)を用いて平衡化する。平衡化されたSuperQ−650Mをカラム(2.5×40cm ガラスエコノカラム:BioRad製)に充填させる。充填後、カラムクロマトグラフィー装置(エコノグラジエントカラム:BioRad製)へカラムおよびアダプターをセットし、20mMの酢酸バッファー(pH5.5)を流速5ml/分で担体であるSuperQ−650Mの3倍量以上流し、担体の洗浄と平衡化を行う。
次に、流速2ml/分で乾燥後の酵素液2を流し、SuperQ−650Mにタンパク質(リパーゼLip60)を吸着させる。その後、20mMの酢酸バッファー(pH5.5)をSuperQ−650Mの3〜5倍量流し、カラム内を洗浄する。その後、流速1ml/分で流出バッファー(50mMの酢酸バッファー(pH5.5)に1Mの硫酸アンモニウムを加えたものを0〜100%の濃度勾配で使用)を流し、5mlずつ80本のチューブにフラクションを回収する。なお、流速2.5ml/分、フラクションは5mlずつ回収、流出バッファーとして、50mMの酢酸バッファー(pH5.5)に0.5Mの硫酸アンモニウムを加えたものを0〜100%の濃度勾配で使用するという条件であれば、より高収率かつ高純度でリパーゼLip60を精製することが可能である。
また、リパーゼLip60を精製するためにゲルろ過クロマトグラフィーを使用する場合、担体としてたとえばSephacryl S−100HR(GEヘルスケア)を使用することが好適である。具体的には、まず、Sephacryl S−100を50mM酢酸バッファー(pH5.0)で洗浄し、平衡化を行う。次に、カラム(1.5cm×100cm ガラスエコノカラム:BioRad製)に充填を行う。まず、ブルーデキストランを含む既知タンパク質分子量マーカー(75000、44000、29000、13700、6500(Da))を分画させ、検量線を作成する。1mlのサンプルが完全に担体内に入ったことを確認してから、流出バッファーを1ml加える。流出バッファーは、50mM酢酸バッファーに0.15M塩化ナトリウムを加えたものを使用してもよい。その後、カラムをポンプに接続して流速1ml/minで流出バッファーを流す。60ml程流出させた後、1mlずつ80本のフラクションを回収する。
陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する場合にもゲルろ過クロマトグラフィーを使用する場合にも、回収後の各フラクションについて、吸光度計を用いて280nmの波長で吸光度の測定を行い、タンパク質量の測定を行う。また、各フラクションに関してリパーゼ活性の測定も行い、回収後のタンパク質と酵素活性の関係を示すグラフを作成することにより、リパーゼLip60が含まれているフラクションを同定する。以上の手順により、精製されたリパーゼLip60を効率的かつ高純度で回収することができる。具体的には、たとえば表1のような収率で高純度なリパーゼLip60を精製することが可能である。
表1は、粗酵素液、60%の硫安分画後、TOYOPEARL SuperQ−650Mで精製後、およびSephacryl S−100HRで精製後のリパーゼLip60の活性や収率をあらわす。TOYOPEARL SuperQ−650Mでは60%の硫安分画よりも比活性の高いリパーゼLip60を高い収率で得ることができる。また、Sephacryl S−100HRでは、TOYOPEARL SuperQ−650Mに比べて収率は低いが、比活性が著しく高く、極めて高純度のリパーゼLip60を得ることができる。
(電気泳動)
精製後のリパーゼLip60の電気泳動には、SDS−PAGE(Sodium Dodecyl Sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis)を使用することができる。たとえば、レディーゲルJ 12.5%(BioRad)を用いて定電圧(200V)で電気泳動を行うことができる。また、SDS−PAGEは、「蛋白質・酵素の基礎実験法」堀尾武一、山下仁平、編集 南江堂(1987年)や、「タンパク質実験ノート」岡田雅人、宮崎香 編集 羊土社(2005年)などに記載されている方法を利用することができる。
(活性染色)
上述のSDS−PAGEの後、特定のバンドがリパーゼであるかどうかを確認するためには、活性染色(ザイモグラム)を行うことができる。活性染色の基質には、たとえば4−methylumbelliferone(シグマ・アルドリッチ)を使用することができる。まずMUF−butyrateを50mM酢酸バッファー(pH5.5)の存在下でEthylene Glycol Monomethyl Ether(和光純薬)の原液で溶解させ、25mMの基質溶液を作製する。SDS−PAGE後のゲルを蒸留水で洗浄し、CBBで染色し、タンパク質のバンドを確認後、50mM酢酸バッファー(pH5.5)にゲルを浸し、そこに基質溶液を最終濃度が100μMとなるように加え、室温で約1時間インキュべートして活性染色を行う。その後、ゲルにUVを照射し発光させる。CBB染色後のタンパク質のバンドと活性染色のバンドとを比較することにより、特定のバンドがリパーゼであるかどうかを確認することができる。また、リパーゼLip60の検出には、ウェスタンブロッティング法を使用することもできる。
(タンパク質の定量)
精製後のリパーゼLip60のタンパク質の定量には、既知のさまざまな方法を用いることができる。たとえば、DCプロテインアッセイキット(BIORAD)を使用することができる。また、「蛋白質・酵素の基礎実験法」堀尾武一、山下仁平、編集 南江堂(1987年)や、「タンパク質実験ノート」岡田雅人、宮崎香 編集 羊土社(2005年)などに記載されている方法を利用することもできる。
なお、公知の種々の方法を用いて無細胞系によりリパーゼLip60の発現および精製を行うこともできる。
(活性)
野生型のアスペルギルス・オリゼでは、リパーゼLip60の発現量は非常に低い。一方、本発明に関するAO60遺伝子を過剰に発現するアスペルギルス・オリゼ(組み換え生物)では、上述の解析で容易に検出可能な程度に、リパーゼLip60の発現量が高くなっている。したがって、AO60−pNEN142によって形質導入されたアスペルギルス・オリゼは、耐熱性を有するリパーゼLip60を大量に生産しうる点で非常に有用である。また、AO60遺伝子が組み込まれたAO60−pNEN142も、アスペルギルス・オリゼに形質転換された場合に、このようにリパーゼLip60を大量に生産しうる点で、同様に非常に有用である。
また、40℃におけるリパーゼLip60の活性の絶対値は、2.3 U/ml(Units/ml)である。これは、通常のリパーゼに劣らない活性である。また、リパーゼLip60は、脂質の加水分解だけではなく、エステル合成反応も行うことができる。具体的には、リパーゼLip60は、たとえば1−モノオレインをオレイン酸に加水分解したり、1,3−ジオレインをオレイン酸および1−モノオレインに加水分解したり、トリオレインを1−モノオレイン、1,3−ジオレインおよびオレイン酸に加水分解したりすることができる。それに加えて、たとえば1,3−ジオレインをトリオレインにエステル合成することもできる。また、リパーゼLip60の反応温度は、25〜70℃が好ましく、30〜55℃がさらに好ましい。また、リパーゼLip60を50〜70℃という高温にて反応させることも可能である。また、リパーゼLip60を反応させる際のpHは、3.0〜7.0であることが好ましい。
(耐熱性)
AO60遺伝子を過剰に発現するアスペルギルス・オリゼから精製したリパーゼLip60は、著しい耐熱性を有する。具体的には、リパーゼLip60は、50℃で20分間インキュべートしても80%以上の残存活性を有し、100℃で20分間インキュべートしても、残存活性がほとんど低下することなく、約60%の残存活性を有する。また、リパーゼLip60は、インキュべートの時間を延ばした場合、50℃では100分を経過しても80%以上の残存活性を有する。リパーゼLip60は、70℃でインキュべートした場合にも、100分を経過しても50℃と同程度の残存活性を有する。また、リパーゼLip60は、90℃で100分間インキュべートした場合にも40%以上の残存活性を有し、100℃で100分間インキュべートした場合にも約30%の残存活性を有する。
なお、本発明で「残存活性を有する」とは、加熱後さらにリパーゼ反応に使用しうる程度に活性が残存していることをいい、通常約10%以上、好ましくは約15%以上、さらに好ましくは約20%以上の活性を有していることをいう。つまり、リパーゼLip60は、100℃で100分間インキュべートした場合にも約30%の残存活性を有するため、加熱後にリパーゼ反応に使用することが十分可能である。
このように、本発明のリパーゼLip60は、PCRに使用され、耐熱性を有する酵素として有名な耐熱性DNAポリメラーゼに匹敵する耐熱性を有する。耐熱性DNAポリメラーゼは、Thermus aquaticusなどの高温下で生育する好熱性細菌より取得される。一方、本発明のリパーゼLip60は、驚くべきことに、耐熱性を有さないと考えられている生物であるアスペルギルス・オリゼから取得することができる。
つまり、本発明では、一般的な培養装置を用いて容易かつ大量にリパーゼLip60を生産することができる。また、得られたリパーゼLip60は、著しい耐熱性を有するとともに、通常の温度で反応させた場合に著しい耐久性をも有する。したがって、リパーゼLip60を従来通りの反応に使用する場合にも、長時間反応させることができるようになる。
また、細胞系を用いてリパーゼLip60を生産する場合、ゲノム中にAO60遺伝子を持たないような菌種も含む、様々な菌種を使用することができる。しかし、アスペルギルス・オリゼを使用することが安全性および生産性の観点から特に好ましい。アスペルギルス・オリゼの株としては、たとえばRIB40株(産業技術総合研究所)などが挙げられる。リパーゼLip60の生産菌であるアスペルギルス・オリゼは、食品加工に古くから利用されているので、非常に安全性の高い菌として認められている。このように、菌自体に汎用性が高く、しかもその菌によって生産されるリパーゼLip60が著しい耐熱性を示すことから、様々な食品加工や食品製造の原料、医薬品、化粧品の分野に応用可能と考えられる。
なお、AO60遺伝子群およびこれらと相同性のある遺伝子の塩基配列をベクターに組み込み、別の種または無細胞系でリパーゼLip60を発現させることにより、これらの用途に使用してもよい。
(分子系統解析)
まず、アスペルギルス・オリゼ自身のゲノム中において、パラロガス遺伝子(同一ゲノム内で、異なる遺伝子座を占める類似した構造と機能をもつ遺伝子。パラローグともいう)の探索を行った。
アスペルギルス・オリゼのリパーゼLip60のアミノ酸配列を問い合わせ配列とし、DOGAN(Database of the Genomes Analyzed at NITE)データベース(http://www.bio.nite.go.jp/dogan/Top)のBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を用い、相同性検索を行った。検索にはTBLASTNプログラムを使用し、その他はデフォルト設定にて検索を行った。
その結果、スコアが最高の配列(AO090003000866遺伝子)でさえ、局所的に低い相同性(38アミノ酸にわたる相同性が34%)が検出されただけで、しかもリパーゼドメインをもつ遺伝子の配列ではないことが明らかとなった。このことから、AO60遺伝子と遺伝子全体にわたり30%以上の相同性を有し、かつリパーゼ活性を有するようなパラロガス遺伝子は、アスペルギルス・オリゼのゲノム中には存在しないと考えられる。
遺伝子ファミリーに属する遺伝子は、類似する機能を担っていることが多いため、互いにある程度高い相同性を有するのが一般的である。しかし、本発明のリパーゼは、後述するように実際にリパーゼとしての活性を有しているにもかかわらず、アスペルギルス・オリゼの種内に存在する約190の遺伝子との間でさえ、遺伝子の大部分の領域においてTBLASTNで検出できる程度の相同性を有さないことが明らかとなった。これは、本発明のリパーゼのアミノ酸配列自体が非常に特殊であることを意味する。
次に、アスペルギルス・オリゼとそれ以外の種との間でアミノ酸配列の比較解析を行った。まず、AO60遺伝子のアミノ酸配列を問い合わせ配列として、米国の国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information:NCBI)のBLAST(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用い、相同性検索を行った。検索にはTBLASTNプログラムを使用し、その他はデフォルト設定(Word size: 3, Matrix: BLOSUM62, Gap Costs: Exitence 11 Extension 1, Compositional adjustments: Conditional compositional score matrix adjustment)にて検索を行った。
その結果、スコアが200よりも大きく、かつE−value(そのライブラリで偶然に同じスコアでヒットする本数の期待値)がe−50よりも小さな配列として、のべ16配列がヒットした。これらはいずれも機能が未知である遺伝子のアミノ酸配列である。また、これらの中には、同じ種の同じ遺伝子のものであると考えられる重複する配列も存在した。したがって、そのような重複する配列は以下の解析から除外した。
その結果、アスペルギルス属の配列として、アスペルギルス・フラバス(A.flavus)のAFLA_054020遺伝子の配列(アミノ酸の配列番号:XP_002383527)と、アスペルギルス・ニガー(A.niger)のAn13g02820遺伝子の配列(XP_001396417)と、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)のAN8500.2遺伝子の配列(XP_681769)とを取得した。
また、アスペルギルス属と同じマユハキタケ科に属するアオカビ属の配列として、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)のPc16g11410遺伝子の配列(アミノ酸の配列番号:XP_002561444)と、ペニシリウム・マルネフェイ(Penicillium marneffei)のPMAA_098440遺伝子の配列(XP_002149421)を、タラロミセス属の配列として、タラロミセス・スティピタトゥス(Talaromyces stipitatus)のTSTA_042730遺伝子の配列(XP_002484751)を、それぞれ取得した。
また、アスペルギルス・オリゼの属する子嚢菌門とは異なる、放線菌門に属するクリベラ・フラビダ(Kribbella flavida)のKfla_1663遺伝子の配列(アミノ酸の配列番号:CP001736)も取得した。また、クリベラ・フラビダ(Kribbella flavida)は、上述のようにアスペルギルス・オリゼとは分類学上、門が異なる。にもかかわらず、Kfla_1663遺伝子は、AO60遺伝子のコード領域のほぼ全体に相当する、8番目のアミノ酸から274番目までの領域において、48%のアミノ酸レベルの相同性(上述のTBLASTNの検出結果に基づく)を有することが明らかとなった。
同様に、NCBIのBLASTPプログラムを使用し、デフォルト設定(Word size: 3, Matrix: BLOSUM62, Gap Costs: Exitence 11 Extension 1, Compositional adjustments: Conditional compositional score matrix adjustment)にて相同性検索を行った。そして、スコアが200よりも大きく、かつE−valueがe−50よりも小さな配列として、上記の配列以外に、ストレプトマイセス(Streptomyces sp.AA4)のLipA遺伝子のアミノ酸配列(ZP_05483211)を取得した。
ストレプトマイセス(Streptomyces sp.AA4)は、アスペルギルス・オリゼや上述の他の生物とは異なり、原核生物である。にもかかわらず、このLipA遺伝子は、AO60遺伝子のコード領域のほぼ全体に相当する21番目のアミノ酸から275番目のアミノ酸までの領域において、59%のアミノ酸レベルの相同性(上述のBLASTPの検出結果に基づく)を有することが明らかとなった。原核生物の系統と真核生物の系統は20億年以上も前に分岐したと考えられている。したがって、そのような非常に遠縁な生物の遺伝子間にこれほど高い相同性があることは驚くべきことである。
図1は、AO60遺伝子群の系統関係を示す分子系統樹を示す図である。解析に使用したのは、AO60遺伝子および上述の8つの遺伝子のアミノ酸配列である。まず上述のアミノ酸配列をClustalX(バージョン2.012)を用いてアラインメントし、近隣結合法(neighbor−joining method:NJ法)を用いて分子系統樹を作成した。分子系統樹の作成には、デフォルトの設定を使用した。アラインメントによって生じた配列のギャップを除去することにより、分子系統樹を作成した。分子系統樹の表示には、Njplot(バージョン2.3)を使用した。
上述のように、アスペルギルス・オリゼの種内にはAO60遺伝子と相同性のあるリパーゼは存在しないことから、これらの8つの遺伝子は、アスペルギルス・オリゼのAO60遺伝子のオルソロガス遺伝子(複数の種間で保存された遺伝子で、共通の祖先遺伝子から派生した遺伝子。オルソローグともいう)であると考えられる。つまり、AO60遺伝子群に属する遺伝子は、それぞれの生物においてアスペルギルス・オリゼのAO60遺伝子と同一または極めて近似した機能を担っており、したがってAO60遺伝子と同様に顕著な耐熱性を有すると考えられる。
上述の系統解析では、AO60遺伝子と相同性のある遺伝子(いずれも機能は未知)が各種から1遺伝子ずつ見つかった。したがって、菌類から原核生物までを含む幅広い種の多くにおいて、AO60遺伝子のオルソロガス遺伝子が原則的に1種に1つずつ存在し、これらの遺伝子から生み出されるリパーゼの多くが、耐熱性を有するものと考えられる。
ここで、NCBIのbl2seqのBLASTP(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を用いてデフォルト設定(Word size: 3, Matrix: BLOSUM62, Gap Costs: Exitence 11 Extension 1, Compositional adjustments: Conditional compositional score matrix adjustment)にてアミノ酸配列の全長をアラインメントした場合、アスペルギルス・オリゼのAO60遺伝子とのアミノ酸配列レベルの相同性(Identity)は、アスペルギルス・フラバスで100%、ペニシリウム・クリソゲナムで72%、アスペルギルス・ニガーで70%、アスペルギルス・ニデュランスで66%、タラロミセス・スティピタトゥスで62%、ペニシリウム・マルネフェイで60%、ストレプトマイセスで59%、クリベラ・フラビダで48%である。
また、上述のとおり、アスペルギルス・オリゼには、相同性検索で検出できる程度にAO60遺伝子と相同性を有するようなパラロガス遺伝子は存在しない。したがって、アミノ酸配列レベルでAO60遺伝子と48%(アスペルギルス・オリゼとクリベラ・フラビダの相同性)を上回る相同性があれば、本発明で生産されるリパーゼLip60と同様にリパーゼ活性および耐熱性を有すると考えられる。また、アミノ酸配列レベルでAO60遺伝子と50%以上の相同性を有することが好ましく、60%以上の相同性を有することがさらに好ましく、70%以上の相同性を有することが最も好ましい。
また、アスペルギルス・オリゼとクリベラ・フラビダとの間のように、48%程度のアミノ酸配列の相同性を有するリパーゼであれば、同様のリパーゼ活性および耐熱性を有すると考えられる。したがって、AO60遺伝子群に属する遺伝子と同程度の相同性を有しさえすれば、生物種は問わない。今後ゲノムの解読が進み、さらに多くの生物種のゲノム配列がデータベースに登録されると考えられるが、本発明で行った相同性検索と同程度の条件で検出されるアミノ酸配列であれば、同様にリパーゼ活性と耐熱性を有すると考えられる。たとえば、アスペルギルス・オリゼとクリベラ・フラビダ間には、上述のように48%の相同性があるが、新たに登録されるAO60遺伝子群の配列には、クリベラ・フラビダとの相同性が同様に48%で、アスペルギルス・オリゼとの遺伝子の大部分の領域にわたる相同性が約30%程度しかないものも予想される。このようなものも、本発明の耐熱性を有するリパーゼLip60群をコードするAO60遺伝子群に含まれる。また、AO60遺伝子群の塩基配列に人工的に改変を加えたものを本発明に使用してもよい。
本発明に関するAO60遺伝子と同様に耐熱性を有するリパーゼは、上述の相同性の基準を満たすことに加えて、またはそれにかえて、リパーゼLip60群のうち少なくともいずれか1つとアミノ酸配列のレベルで約48%以上の相同性を有するリパーゼをコードするDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるタンパク質であってもよい。
ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、配列番号1の塩基配列と相補的な塩基配列を有するDNAまたは配列番号2のアミノ酸配列をコードするDNAの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるDNAをいう。ハイブリダイゼーションの方法としては、例えばMolecular Cloning 3rd Ed.、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987−1997などに記載されている方法を利用することができる。
本明細書でいう「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれであってもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件においては、温度を上げるほど高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。
ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
図2は、AO60遺伝子群のアラインメントを示す図である。AO60遺伝子および上述の8つの遺伝子(それぞれ属名は略して示す)のアミノ酸配列をClustalX(バージョン2.012)を用いてアラインメントし、開始コドンの位置が揃うように微修正したものである。このように、非常に遠縁な種間で、AO60遺伝子群のアミノ酸配列には非常に高い相同性があることが分かる。
また、図2のアラインメントから、本発明によって生産されるリパーゼLip60群は、活性中心付近の網掛けで示した位置(配列番号1のアスペルギルス・オリゼのアミノ酸107〜116に相当)に「X1−X2−D−X3−V−G−H−S−E−G」(ただし、X1はリシン(K)またはグルタミン(Q)、X2はバリン(V)またはイソロイシン(I)、X3はロイシン(L)またはイソロイシン(I))という、種間でほぼ完全に保存された配列を有することが明らかとなった。つまり、リパーゼLip60群と同様のリパーゼ活性を有するためには、これらの配列を活性中心に有していればよい。
なお、活性中心にこのコンセンサス配列を有するリパーゼであれば、仮にリパーゼ全体のアミノ酸配列レベルでの相同性がアスペルギルス・オリゼとクリベラ・フラビダとの間の48%未満であったとしても、耐熱性を有する可能性がある。逆に、このコンセンサス配列の一部に改変が加えられたとしても、耐熱性を保持できる可能性もある。網掛けで示した他の箇所に関しては後述する。
(アミノ酸組成)
AO60遺伝子群に含まれる上述の9つの遺伝子から得られるリパーゼのアミノ酸配列のアミノ酸組成(%)を表2に示す。遺伝子名の後には、アミノ酸配列の長さをそれぞれかっこ書きで示した。非特許文献2に記載のアスペルギルス・ニガーの耐熱性を有するとされるリパーゼ遺伝子のアミノ酸組成も示した。また、耐熱性を有することが知られていない非特許文献3に記載のホスホリパーゼA1遺伝子(NCBIなどにアミノ酸配列がXP_001818694.1の番号で登録されているAO090001000143遺伝子と同一であることが判明した)に関しても、同様の解析を行った。なお、非特許文献2に記載のリパーゼ遺伝子は、塩基配列およびアミノ酸配列が公表されていないため、非特許文献2の表3に記載のアミノ酸組成のデータを使用し、比較を行った(アミノ酸配列の長さは公表されていない)。非特許文献2の列の(8.27)という記載は、アスパラギン(N)とアスパラギン酸(D)の組成の合計が8.27%であることを表す。同様に(18.84)という記載は、グルタミン(Q)とグルタミン酸(E)の組成の合計が18.84%であることを示す。
本解析により、耐熱性を有するとされる非特許文献2リパーゼおよび耐熱性を有することが知られていない非特許文献3のリパーゼと比べ、本発明のリパーゼLip60群のアミノ酸組成には、少なくとも以下の特徴がある。つまり、リパーゼLip60群は、通常の耐熱性リパーゼに比べ、(1)バリン(V)を7.2%以上という高い割合で含む。また、本発明のLip60群は、(2)セリン(S)を6.5%以下という低い割合でしか含まない。また、本発明のLip60群は、(3)ヒスチジン(H)を含む割合がやや低い。
また、リパーゼLip60群では、翻訳後、分子内に特殊な構造が形成される可能性がある。たとえば、リパーゼLip60群は、非特許文献2および非特許文献3よりもそれほどシステイン(C)残基の割合が高いわけではないが、これら従来知られているリパーゼや他の酵素と比較し、2つのシステイン(C)によって形成されるジスルフィド結合が特殊であると考えられる。図2の網掛けの6か所のシステイン(C)残基(配列番号2のアミノ酸配列の27、64、175、178、235、269番目のアミノ酸に相当)は、9種間で完全に保存されている。一方、これら6か所以外には、いずれの種もシステイン(C)残基を有さない。また、175番目と178番目のシステイン(C)は非常に近接しており、これらを中心として略線対称状に、64番目と235番目のシステイン(C)、および27番目と269番目のシステイン(C)がそれぞれ存在する。したがって、リパーゼLip60群の耐熱性には、6つのシステイン(C)が所定の間隔で所定の位置に存在すること、およびシステイン(C)同士のジスルフィド結合によって形成される立体構造が非常に重要であると考えられる。
(グリコシル化)
リパーゼLip60群に対して、翻訳後に修飾を行うことにより、耐熱性をさらに向上させてもよい。このような翻訳後修飾には、たとえばグリコシル化(糖鎖付加)が考えられる。グリコシル化には、アスパラギン(N)残基が修飾される場合(N結合型)と、セリン(S)残基またはトレオニン(T)残基が修飾される場合(O結合型)とが考えられる。
N結合型によってリパーゼLip60群のアミノ酸残基を修飾する場合には、「アスパラギン(N)−X(プロリン以外の任意のアミノ酸)−セリン(S)」または「アスパラギン(N)−X(プロリン以外の任意のアミノ酸)−トレオニン(T)」のいずれか(シークオン配列)のアスパラギン(N)残基を、糖鎖によって修飾してもよい。
リパーゼLip60群では、たとえば図2の網掛けで示した配列番号2のアミノ酸の160〜162番目に相当するアスパラギン(N)−バリン(V)−セリン(S)のうちのアスパラギン(N)または配列番号2のアミノ酸の203〜205番目に相当するアスパラギン(N)−ロイシン(L)−トレオニン(T)のうちのアスパラギン(N)の少なくとも一方を、糖鎖によって修飾してもよい。
リパーゼLip60群のアミノ酸残基を修飾する糖としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、N−アセチルグルコサミン、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルノイラミン酸、キシロースなどのうちの1つ以上であってもよい。
なお、AO60遺伝子群の塩基に人工的な変異を加え、N結合型のグリコシル化のためのシークオン配列、またはO結合型グリコシル化のためのコンセンサス配列を導入してもよい。このような導入は、突然変異導入法(site−directed mutagenesis)によって 塩基置換、塩基の挿入/欠失などの変異を加えることにより行ってもよい。
(耐熱性リパーゼの用途)
本発明の耐熱性のリパーゼLip60群は、トリグリセリドの脂肪酸の位置を自在に入れ替えたり、特定の脂肪酸を分解して無くしたり、また逆に特定の脂肪酸を付加させたりすることにより、油脂の改質に使用することができる。本反応は、たとえば乳化しやすい油、分解されやすい油、および分解されにくい油のように様々な機能を持った油脂の作製に利用できる。具体的には、食品製造・加工業界、廃棄物処理業界、医薬品業界などにおいて幅広く使用することができる。実用化例としては、米ぬか油、大豆油、ひまわり油、やし油などからリパーゼを用いて植物油を精製する植物水中油型乳化剤としての利用、油の物理的前処理、カカオ油などの脂肪酸鎖長の変換、化粧品の基材としてのモノグリセリドの製造、ジグリセリドの製造、化粧料の製造、生ゴミ処理に使用される微生物酵素製剤への配合、外食産業や食品工業などの施設から排出される油含有廃液の処理、乳加工製品のフレーバー改善、家畜用飼料への添加による栄養価の強化や消化性の改善などが挙げられる。また、特に、高温環境下において、または高温環境下におかれた後に、リパーゼ活性を発揮できるような用途に使用されることが好ましい。たとえば、リパーゼLip60群を用いて、50〜70℃において反応を行うことができる。また、たとえばリパーゼLip60群を50℃以上の温度で通算100分間以上加熱した後、リパーゼLip60群をリパーゼ反応に使用することができる。より具体的には、たとえば以下の用途が想定される。
(用途1)
医薬原料(医薬に用途は問わない)を基質として、微小粒子形態又は不溶性表面を有する対象物の形態のナノ酵素複合体の酵素をプロテアーゼとした、ナノリパーゼ複合体を作用させる場合として、例えば、油脂を加水分解して脂肪酸を製造する場合や、エステル合成による界面活性剤の製造を行う場合や、光学分割を行う場合や、油脂・乳化剤等の改質等が挙げられる。
特に、脂肪酸は、現在油脂を約50気圧・250℃前後で分解するという、典型的な多消費型プロセスによって生産されている。従って、リパーゼLip60群により油脂を分解することに対する需要は非常に高い。しかしながら、通常、リパーゼは熱に弱く、60℃、10分で完全に失活し、使用温度は30℃程度が限界という結果も示されている。そこで、リパーゼLip60群を用いることにより、その優れた耐熱性により、極めて効率的に脂肪酸を製造することが可能となる。なお、リパーゼLip60群自体を内服剤、例えば、消化酵素剤の有効成分として含有させ、耐熱性組成物として用いることも可能である。その場合、含有量は、約0.1〜99質量%であることが好ましい。それにより、リパーゼLip60群の優れた安定性により、経口投与を行っても、失活しづらく、分散性も良好であり、所望する脂肪分解効果を効率的に得ることができる。
(用途2)
皮膚の表面物質である基質に対して、リパーゼを作用させる場合に、皮膚外用剤の有効成分として、本発明により製造されたリパーゼLip60群を用いる場合が考えられる。つまり、リパーゼを皮膚外用剤の有効成分として、皮脂等の皮膚表面物質と接触させる場合、美肌効果(化粧品等としての効果)を発揮し得ることが知られているが、このリパーゼの代わりに、リパーゼLip60群を有効成分として含有させ、含有させ、耐熱性組成物として用いることも可能である。その場合、含有量は、約0.1〜99質量%であることが好ましい。リパーゼLip60群は通常のリパーゼよりも活性が長時間持続され、様々な環境でも安定して機能すると考えられる。そのため、薬効が経時的に安定し、塗布の回数が少なくてすむ皮膚外用剤を提供することができる。
(用途3:食品の加工)
食品前駆物質、具体的には、リパーゼで処理することによって最終的な食品とする物質をリパーゼの基質とする場合、従来のリパーゼにかえて本発明により製造されたリパーゼLip60群を作用させることができる。食品加工の工程では、熱をかけて製品を作ることが非常に多い。そのため、リパーゼLip60群を使用すれば、高温環境下でもリパーゼの酵素活性をほとんど失わずに、効率的にリパーゼ処理工程を行うことができる。つまり、リパーゼLip60群を約0.1〜99質量%の割合で含有する耐熱性組成物をリパーゼで処理に使用することにより、加工の途中でリパーゼを追加したりする必要がないため、作業効率がアップし、コストを抑えることもできる。具体的には、麹の製造、発酵エキスの抽出、乳、卵加工品、肉、および日本酒などの酒、味噌、醤油等の発酵食品のフレーバーの改質、保存性の向上、起泡性の改良などのために、これらの食品の前駆物質にナノリパーゼ複合体を作用させることができる。リパーゼLip60群は通常のリパーゼよりも活性が長時間持続し、様々な環境でも安定して機能すると考えられる。そのため、極めて効率的に脂肪の分解を行うことができる。
(用途4:洗剤への配合)
洗濯物や食器などの被洗浄物に、従来のリパーゼにかえて本発明により製造されたリパーゼLip60群を作用させることにより、油汚れを効率的に分解することができる。具体的には、リパーゼLip60群を約0.1〜99質量%の割合で衣料用洗剤などに含有する耐熱性組成物を製造することができる。リパーゼLip60群は通常のリパーゼよりも活性が長時間持続し、様々な環境でも安定して機能すると考えられる。したがって、効率的に油汚れを落とすことが可能となる。
(用途5:汚染物質の分解)
環境負荷物質、例えば、富栄養化が進んでいる汚染領域に、本発明により製造されたリパーゼLip60群を作用させることができる。具体的には、リパーゼLip60群を約0.1〜99質量%の割合で含有する耐熱性組成物を使用することができる。リパーゼLip60群は通常のリパーゼよりも活性が長時間持続し、pHや温度が異なる様々な環境(特に酸性条件下)でも安定して機能すると考えられる。したがって、油脂系の汚染物質の分解を、極めて効率的かつ安価に行うことができる。
(用途6:繊維の処理)
リパーゼによって繊維の表面を処理して肌ざわりや風合いをよくする技術が知られている。従来のリパーゼに代えて、本発明により製造されたリパーゼLip60群を約0.1〜99質量%の割合で含有する耐熱性組成物を用いることができる。それにより、リパーゼLip60群は活性が長時間持続するため、繊維処理を効率的に行うことができる。
(用途7:飼料への配合)
本発明により製造されたリパーゼLip60群を約0.1〜20質量%の割合で含有する耐熱性組成物(配合飼料)を製造することにより、家畜等の生体内でリパーゼLip60群を働かせることができる。リパーゼLip60群は、通常のリパーゼよりも活性が長時間持続することが期待できるため、家畜等の生育をより促進できるようになる。
(有用性)
本発明は、アスペルギルス・オリゼという極めて安全な微生物が生産し、従来知られていなかった著しい耐熱性を有するリパーゼを、大量かつ簡便に生産する技術を提供することにある。本発明によって生産することができるリパーゼは、常温菌であるアスペルギルス・オリゼが生産する酵素でありながら、極めて高い耐熱性(100℃、100分間の加熱処理後にも約30%の残存活性)を有している。アスペルギルス・オリゼのみならず、常温菌由来の酵素ではこのように著しい耐熱性を有するという報告はない。本発明によって生産することができるリパーゼは、耐熱性を有するとされてきた従来のリパーゼに比べてはるかに高い耐熱性を有している。このように熱に対する安定性が優れていることから、特に熱安定組成物の有効成分として、熱処理を行う食品加工などに幅広く利用することができると考えられる。
従来のリパーゼでは、熱による酵素機能の低下が、生成物の収率低下や新しい酵素の再添加の必要性を招き、歩留まりの低さやコスト高の原因となっていた。しかしながら、耐熱性を有するリパーゼLip60群を提供することで、熱による酵素の機能低下が大幅に改善され、酵素の再添加なども大幅に軽減されることから、エネルギー消費も著しく抑制され、歩留まりも大幅に向上させることができる。その結果、環境への負荷が低減でき、コストも抑えられることから、工業的な利用価値は高い。さらには、バイオリアクターの技術を利用することで、リパーゼLip60群の反応効率をより向上させることもできる。
また、アスペルギルス・オリゼは、リパーゼ遺伝子を約190種類保持していることが予想されているが、本発明では機能が分かっていなかったAO60遺伝子がリパーゼ活性を有することを明らかにし、さらに耐熱性ポリメラーゼなどの酵素に匹敵する耐熱性という、従来のリパーゼでは予想できなかった性質を明らかにした。本発明のリパーゼLip60群は、遺伝子工学の技術を利用することで、簡単にクローニングやタンパク質の発現および改変を行うことができるため、非常に汎用性が高い。
(実施例1)
リパーゼLip60生成菌の培養時間とリパーゼLip60の産出量との比較を行った。耐熱性リパーゼ発現ベクター(AO60−pNEN142)を形質導入したリパーゼLip60生成菌(アスペルギルス・オリゼRIB40株のniaD遺伝子破壊株であるniaD400株)を、液体のYPD培地(200ml、pH5.5)で100rpm、30℃で24時間、48時間、72時間、96時間培養した。アスピレーターとガラスフィルター17G1を用いて培養液から菌体とYPD培地とを分離し、YPD培地の培養液(菌体外酵素抽出液)を回収した。菌体外酵素抽出液のタンパク質量、酵素活性値を各培養時間で比較した。Lowry法によるタンパク質量の測定には、DCプロテインアッセイキット(BIORAD)を使用した。
まず牛血清アルブミン(BSA)溶液を使用し、検量線を作成した。濃度がそれぞれ0mg、0.47mg、0.705mg、0.94mg、1.41mgのBSA溶液に関し、750nmの吸光度を測定した。次に、菌体外酵素抽出液の吸光を測定し、検量線を利用して全タンパク質の定量を行った。
酵素の全活性の測定には、合成基質であるpNP−palmitate(シグマ)をイソプロパノールで希釈して0.15%のpNP−palmitate溶液として使用した。反応バッファーは、0.1%のArabic gum(和光純薬)と0.4%のTriton X−100(和光純薬)を加えた50mMの酢酸バッファー(pH5.5)を使用した。酵素反応停止薬として、0.1Mの炭酸ナトリウムを使用した。
まず、試験管に反応バッファーを405μl入れ、そこにpNP−palmitate溶液を45μl加え、十分に混合した。次に、混合液の温度を40℃に保ちつつ、精製したリパーゼLip60を50μl加え、5分間反応させた。その後、0.1Mの炭酸ナトリウムを加えて反応を停止させ、分光光度計を用いて410nmの吸光度(遊離してくるpNPの濃度)を測定した。ユニット計算のために、pNP−palmitateを用いて検量線を作成した。表3に、リパーゼLip60生成菌の培養時間とリパーゼリパーゼLip60の産出量との関係を示す。
表3の全活性(U)を24時間と48時間で比較することにより、リパーゼLip60は24時間まではほとんど生産されず、その後48時間までの間に急激に生産されることが明らかとなった。この全活性は、96時間の培養時に最も値を示した。一方、全タンパク質量(mg)は、72時間において最も高い値を示した。
(実施例2)
薄層クロマトグラフィー (Thin−Layer Chromatgraphy:TLC)を用いて、リパーゼLip60の天然基質(オリーブ油)に対する分解能を調べた。オリーブ油は、オレイン酸を主成分として含むため、オレイン酸と、1−モノオレイン、1,3−ジオレインおよびトリオレインとの間のエステル結合の加水分解能またはその逆の反応であるエステル合成能の指標として有用である。(M)マーカー(1−モノオレイン、1−3ジオレイン、トリオレイン、オレイン酸)、サンプルとして(1)1−モノオレイン、(2)1−モノオレインにリパーゼLip60を加えたもの、(3)1,3−ジオレイン、(4)1,3−ジオレインにリパーゼLip60を加えたもの、(5)オリーブ油、および(6)オリーブ油にリパーゼLip60を加えたものを使用した。
展開溶媒としては、へキサン:ジエチルエーテル:酢酸を70:30:1(V/V/V)で混合したものを使用した。(M)、(1)、(3)および(5)では1−モノオレイン(シグマ)、1,3−ジオレイン(シグマ)、トリオレイン(シグマ)、オレイン酸(シグマ)各5mgを加え、(2)、(4)および(6)ではさらに精製したリパーゼを2μlずつ加えた。さらに乳化剤である1%トリトンX−100を1μl加えた後、蒸留水および最終濃度が50mMとなるように酢酸バッファー(pH5.5)を加え、全量を1mlに調整した。そして、バイオシェイカーを用いて1800rpm、40℃にて1時間反応させた。その後、ジエチルエーテルを400μl加えて撹拌した後、15000rpm、室温にて5分間遠心分離を行った。上層(ジエチルエーテル層)をシリカゲル60F245プレート(メルク)に乗せ、溶媒により展開(30分間)した。その後、プレートを乾燥させ、酢酸:希硫酸混合液95:5(V/V)をプレートに噴霧した後、150℃で熱しスポットを確認した。
図3は、薄層クロマトグラフィーによるリパーゼLip60の天然基質に対する反応性を示す図である。
図3では、左から順に上述の(M)、(1)、(2)、(3)、(4)、(5)および(6)のスポットをあらわす。上下方向は、上から順にトリオレイン、オレイン酸、1,3−ジオレインおよび1−モノオレインのスポットをあらわす。リパーゼLip60を加えていない(1)と比較することにより、リパーゼLip60を加えた(2)では、1−モノオレインの一部がリパーゼLip60によってオレイン酸に加水分解されることが明らかとなった。また、リパーゼLip60を加えていない(3)と比較することにより、リパーゼLip60を加えた(4)では、1,3−ジオレインがオレイン酸および1−モノオレインに加水分解されることも明らかとなった。それに加えて、(4)ではトリオレインのスポットも見られることから、リパーゼLip60は1,3−ジオレインを加水分解するだけではなく、エステル合成反応も行うことが明らかとなった。また、リパーゼLip60を加えていない(5)と比較することにより、リパーゼLip60を加えた(6)では、トリオレインが1−モノオレイン、1,3−ジオレインおよびオレイン酸に加水分解されることも明らかとなった。
(実施例3)
図4は、本発明のリパーゼLip60を、バッファーの種類を変えて相対活性を比較した結果を示すグラフである。最もリパーゼ活性が高かったpH6のリン酸バッファーの活性を100%とし、活性の相対値(%)をあらわした。バッファーとして、それぞれ50mMのクエン酸バッファー(pH3.0、 4.0)、酢酸バッファー(pH4.0、 5.0、 6.0)、リン酸バッファー(pH6.0、 7.0、 8.0)およびTris−HClバッファー(pH8.0、 9.0)を使用した。これらのバッファー中で、精製後のリパーゼを40℃で5分間反応させ、リパーゼ活性を測定した。酵素の活性量の測定方法は、これらのバッファーを除き、実施例1と同じである。したがって、実施例1と重複する部分に関しては、適宜省略する。
リン酸バッファーでは、pH6.0のときに最もリパーゼ活性が高く、7.0、8.0とpHが上がるにつれ、急激に活性が低下した。また、次に高い活性を示した酢酸バッファーでは、pH4.0において約93%、pH5.0において約89%、pH6.0において約98%と、酸性条件の広い範囲で非常に高い安定性を示した。また、クエン酸バッファーでも、pH3.0でpH6のリン酸バッファーに対して約80%、pH4.0で約88%と、安定して高い活性を示した。Tris−HClバッファーでは、pH8.0のときに約55%の活性を示した。
また、総じて、pHが7.0以下のときにリパーゼが高い活性を示した。特にpH3.0〜7.0の範囲では、リパーゼは高い活性を示した。リン酸バッファーではpH8.0のときに活性が見られなかったことから、少なくともpHが7.0よりも大きい場合には、リパーゼの活性はバッファーの種類に依存すると考えられる。
(実施例4)
図5は、本発明のリパーゼLip60の反応温度と相対活性との関係を示すグラフである。精製したリパーゼLip60を20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃および90℃の8段階で反応させ、至適温度を調べた。図5では、最も高い活性を示した40℃における活性量を100%とし、その相対活性に基づいてグラフを作成した。なお、酵素の活性量の測定方法は、反応温度を除き、実施例1と同じである。したがって、実施例1と重複する部分に関しては、適宜省略する。
40℃におけるリパーゼLip60の活性の絶対値は、2.3 Units/mlであった。このことから、リパーゼLip60は通常のリパーゼに劣らない、高いリパーゼ活性を有することが明らかとなった。また、リパーゼLip60は、40℃の次に50℃において高い活性(約96%)を示した。また、リパーゼLip60は、リパーゼLip60は、30℃でも高い活性(約83%)を示し、60℃でもある程度高い活性(54%)を示した。また、リパーゼLip60は、70℃でも約15%の活性を示した。20℃の活性(約45%)と30℃の活性から、リパーゼLip60は25℃においても60℃と同程度の活性(約55%)を示すと考えられる。
したがって、本発明のリパーゼLip60は、少なくとも25〜60℃の反応条件であれば、比較的高い活性を有することが明らかとなった。また、30〜55℃の反応条件であれば、最大活性の約80%以上の高い活性を示すことも明らかとなった。このように、リパーゼLip60は、広い温度範囲において高い活性を有することが明らかとなった。また、リパーゼLip60は、50〜70℃という高温でも反応に使用することができることが明らかとなった。
(実施例5)
図6は、本発明のリパーゼLip60を所定の温度でインキュべートした時間と残存活性との関係を示すグラフである。具体的には、上述のようにして精製したタンパク質を、50℃、70℃、90℃および100℃の定温条件下において、それぞれ20分間、40分間、60分間および100分間インキュべートした。リパーゼLip60の反応温度は、TaKaRa PCR Thermal Cycler Dice(タカラバイオ)を用い、精製後のリパーゼLip60をチューブに100μlずつ入れ、各温度で加熱し、反応後にはサンプルを氷上で冷却した。その後、50mMの酢酸バッファー(pH5.5)中で、40℃で10分間リパーゼ反応を行い、加熱処理をしていないリパーゼLip60の活性を100%とした場合の残存活性を測定した。ネガティブコントロール(n.c.)として、AO60遺伝子を組み込まないpNEN142を形質転換し、液体培養をしたYPD培地の上清を用いた。ネガティブコントロールに関しては、90℃で5分間、15分間、30分間および60分間インキュべートした後、残存活性を測定した。酵素の活性量の測定方法は、実施例1と同じである。したがって、実施例1と重複する部分に関しては、適宜省略する。
まずネガティブコントロールでは、90℃で5分間加熱した場合に完全に失活した。一方、本発明のリパーゼLip60では、50℃で20分間インキュべートしても80%以上の残存活性を示した。また、100℃でインキュべートしても、残存活性がほとんど低下することなく、60%程度の残存活性を示した。
また、インキュべートの時間を延ばした場合にも、リパーゼLip60は、50℃では100分を経過しても80%以上の残存活性を示した。リパーゼLip60を70℃でインキュべートした場合にも、100分を経過しても50℃と同程度の残存活性を示した。また、リパーゼLip60を90℃で100分間インキュべートした場合にも40%以上の活性が残存しており、100℃で100分間インキュべートした場合にも約30%の活性が残存していた。
それぞれの温度で見ると、リパーゼLip60を50℃で加熱した場合には、初めに少し活性が落ちただけで、20分後から100分後まで、ほとんど活性が低下しなかった。具体的には、50℃で加熱した場合には、20分後に約82%、40分後に約80%、60分後に約82%、100分後に約82%の活性を有していた。
また、70℃で加熱した場合にも、初めに少し活性が落ちただけで、20分後から100分後まで、ほとんど活性が低下しなかった。具体的には、70℃で加熱した場合には、20分後に約75%、40分後に約74%、60分後に約80%、100分後に約72%の活性を有していた。
また、90℃で加熱した場合にも、従来の耐熱性リパーゼに比べ、はるかに高い耐熱性を示した。具体的には、90℃で加熱した場合には、20分後に約68%、40分後に約62%、60分後に約52%、100分後に約42%の活性を有していた。
また、100℃で加熱した場合にも、従来の耐熱性リパーゼに比べ、はるかに高い耐熱性を示した。具体的には、100℃で加熱した場合には、20分後に約58%、40分後に約44%、60分後に約36%、100分後に約26%の活性を有していた。
以上、本発明を上述の実施の形態や各実施例を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態や各実施例に限定されるものではなく、実施の形態や各実施例の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態や各実施例における組合せや工程の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態や各実施例も本発明の範囲に含まれうる。

Claims (8)

  1. 下記の(a)、(b)または(c)のアミノ酸配列をコードし、90℃において5分以上加熱した場合にも残存活性を有する耐熱性リパーゼ遺伝子。
    (a)配列番号2に記載のアミノ酸配列;
    (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列の部分アミノ酸配列;
    (c)(a)または(b)に記載のアミノ酸配列との相同性が48%以上であるアミノ酸配列。
  2. 請求項1に記載のアミノ酸配列を有する耐熱性リパーゼ。
  3. 請求項1に記載のアミノ酸配列をコードするDNAを有する耐熱性リパーゼ発現ベクター。
  4. 請求項3に記載の耐熱性リパーゼ発現ベクターを有することを特徴とする組み換え生物。
  5. 請求項3に記載の耐熱性リパーゼ発現ベクターを用いて、細胞系または無細胞系にて耐熱性リパーゼを発現させる耐熱性リパーゼの発現方法。
  6. 請求項2に記載の耐熱性リパーゼを用いて、50〜70℃において反応を行うことを特徴とする耐熱性リパーゼの反応方法。
  7. 請求項2に記載の耐熱性リパーゼを50℃以上の温度で通算100分間以上加熱した後、該耐熱性リパーゼをリパーゼ反応に使用することを特徴とする耐熱性リパーゼの反応方法。
  8. 下記の(a)、(b)または(c)のアミノ酸配列を有し、90℃において5分以上加熱した場合にも残存活性を有する耐熱性リパーゼを含有する耐熱性組成物。
    (a)配列番号2に記載のアミノ酸配列;
    (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列の部分アミノ酸配列;
    (c)(a)または(b)に記載のアミノ酸配列との相同性が48%以上であるアミノ酸配列。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN109266636A (zh) * 2018-09-25 2019-01-25 江苏大学 一种纳米酶及其制备方法和用途

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