JP2011161482A - インプラント部材用Co−Cr系合金単結晶とその製造方法およびインプラント部材 - Google Patents

インプラント部材用Co−Cr系合金単結晶とその製造方法およびインプラント部材 Download PDF

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Abstract

【課題】生体との適合性に優れると共に、その使用部位、方向に応じた最適な強度、耐食性、耐摩耗性などの諸特性を十分に発揮することができるインプラント部材用Co−Cr系合金を提供する。
【解決手段】ブリッジマン法を用いたインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法であって、所定の組成のCo−Cr系合金を1500〜2050℃の温度で溶融し、温度勾配0.5℃/mm以上の条件の下、成長速度1.0〜500mm/hで結晶成長を行う。さらに、特定の方向に沿った面欠陥状マルテンサイト相を導入する。
【選択図】図11

Description

本発明は、インプラント部材用Co−Cr系合金単結晶とその製造方法および前記合金単結晶を用いたインプラント部材とインプラント用医療器具に関する。
医療分野において、人工股関節、人工膝関節、ボーンプレート、人工歯根等の生体インプラント材料として、Co−Cr系合金、特にCo−Cr−Mo合金が広く用いられている。このCo−Cr系合金は、単純鋳造法、粉末冶金法、鍛造法などにより製造され、種々の組織制御、結晶粒微細化等が行われている(特許文献1〜4、非特許文献1)。
特開2004−269994号公報 特開2006−265633号公報 特開2008−1942号公報 特開2008−69394号公報
千葉晶彦著 「Co−Cr−Mo合金」、日本バイオマテリアル学会発行、バイオマテリアル23−2号(2005年)107〜113頁
しかしながら、これらインプラント材料には、生体との適合性に加え、その使用部位、方向に応じた強度、耐食性、耐摩耗性などの諸特性が要求されるが、従来の製造方法によるCo−Cr系合金ではこれらの諸特性が十分とは言えず、例えば次世代人工股関節用インプラントとして期待されているメタルオンメタル等の新規デバイス開発用材料としても十分とは言えなかった。
このため、生体との適合性に優れると共に、その使用部位、方向に応じた最適な強度、耐食性、耐摩耗性などの諸特性を十分に発揮することができるインプラント部材用Co−Cr系合金が求められていた。
本発明者は鋭意研究を行った結果、上記の課題を解決することができる技術を見出し、本発明を完成するに至った。以下、本発明について詳しく説明する。
前記した通り、従来の製造方法によるCo−Cr系合金では、強度、耐食性、耐摩耗性などの諸特性が十分とは言えず、その使用部位、方向に応じた最適なインプラント材料を提供することが不十分であると言う問題点を有しながら、現在まで使用されている。
この問題の大きな要因は、従来の製造方法を用いて作製されたCo−Cr系合金が、多結晶合金であったことにある。即ち、多結晶合金は、単に粒界割れを引き起こす可能性があるなどの特性上の問題点があると共に、塑性変形の挙動が複雑であり、詳細な解明が困難であるため、開発を加速化することが難しかった。一方、単結晶をインプラント材料として用いるためには十分な大きさの特性の優れた合金単結晶を作製することが要求されるが、今日まで、このような要求に耐え得る合金単結晶の作製には未だ誰も成功していなかった。
本発明者は、このようなインプラント部材用のCo−Cr系合金単結晶の作製につき種々の方法につき実験、検討を行った結果、ブリッジマン法を採用し、さらに成長条件を最適化することにより、インプラント材料として用いるために十分な大きさの特性の優れた合金単結晶が得られることを見出した。
即ち、請求項1に記載の発明は、
ブリッジマン法を用いたインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法であって、
所定の組成のCo−Cr系合金を1500〜2050℃の温度で溶融し、
温度勾配0.5℃/mm以上の条件の下、
成長速度1.0〜500mm/hで結晶成長を行う
ことを特徴とするインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法である。
上記の条件の下で製造することにより、結晶粒を著しく粗大化させた優れた特性のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶を製造することができる。
本請求項の発明により得られるCo−Cr系合金は単結晶であるため、多結晶の場合と異なり、粒界割れを引き起こす恐れがなく、インプラント部材として使用した際の破壊進展を十分に抑制することができる。
また、単結晶であるため、前記の通り、当該分野で遅れていた塑性変形の挙動の詳細を容易に解明することができ、開発を加速化させることができる。
本請求項の発明において、「所定の組成のCo−Cr系合金」としては、従来より知られている、例えばASTM規定の生体インプラント用コバルト合金、即ち、ASTM F75に規定されるCo−Cr−Mo合金やCo−Ni−Cr−Mo合金(ASTM F562)、Co−Cr−W−Ni合金(ASTM F90)、Co−Cr−Ni−Mo−Fe合金(ASTM F1058)などを挙げることができる。
上記の製造方法は、従来の多結晶合金の製造プロセスの変更のみであり、新たな添加元素を用いる必要はなく、従来の合金組成を用いることができるため、新たな生体適合試験を行ったり、厚生労働省の薬事認可などを新たに得ることなく生体に用いることができるインプラント部材を提供することができる可能性がある。
本発明者は、ブリッジマン法の外、フローティングゾーン法など種々の製造法について検討と実験を試みた結果、ブリッジマン法を採用し、成長条件を最適化することにより、インプラント部材として用いることができる大きさの極めて優れた特性の合金単結晶が製造できることを見出した。
母材の溶融温度は、1500〜2050℃であることが好ましい。1500℃未満であると、母材を構成する各金属元素の溶融が不十分となり、所望する単結晶が得られない恐れがある。一方、2050℃を上回ると、坩堝との反応が促進され、もしくは坩堝が融解し、介在物のない良質な単結晶の育成が阻害される。前記温度範囲の中でも1500〜1650℃であることが好ましい。
そして、このような温度範囲において、初期温度を母材の融点より約50℃以上高い1550℃以上にしておくことが、濃度偏析のない、均質組成な単結晶を得るために好ましい。
温度勾配が小さすぎると組成的過冷が生じ、平滑な固液界面が得られなくなることから単結晶化しない恐れがある。
また、成長速度が遅すぎると、坩堝との反応が促進され、介在物のない清浄な単結晶の育成が阻害される。しかし、逆に成長速度が速すぎると、固液界面にて十分な組成平衡に達しないため、平滑な固液界面が得られず、単結晶の育成が阻害される恐れがある。
そして、一般的に、一定の成長速度の条件下では温度勾配が大きい方が、一定の温度勾配の条件下では成長速度が遅い方が大きな単結晶を得ることができる。
このため、上記の諸点を考慮して、温度勾配および成長速度を制御する必要があり、種々の実験の結果、本請求項の発明に記載する温度勾配と成長速度に従って製造することにより、適切なインプラント部材用合金単結晶を製造することができることを見出した。
ブリッジマン装置としては、垂直式(縦型)が好ましいが、水平式(横型)でもよい。また、溶融液を保持する容器(坩堝)としては、アルミナ製やジルコニア製を用いることが好ましい。
また、ブリッジマン装置内の雰囲気としては、各金属元素の酸化を防止するために、不活性雰囲気であることが好ましい。
請求項2に記載の発明は、
Co−Cr系合金単結晶に対して特定の方向に沿った面欠陥状マルテンサイト相を導入することを特徴とするインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法である。
面欠陥状マルテンサイト相(以下「M相」と言う)は、ある程度の厚さを持つ、層状の平面的な欠陥構造をなし、塑性挙動に強い結晶学的異方性を有しているため、単結晶に特定の方向に沿ったM相を導入し、内部組織制御することにより、M相と応力負荷による変形との相互作用を利用して適切なインプラント部材を提供することができる。
即ち、本請求項の発明は、M相がCo−Cr系母相との間で強い変形不連続性を有していることに着目してなされたものである。
具体的には、合金単結晶に特定の方向に沿ったM相を予め導入しておき、その後、結晶からの切出しとインプラント部材として使用する場合のM相の配置方向を工夫し、応力負荷による変形が所定の角度で特定の方向に沿ったM相を横切るように制御(結晶方位制御)することにより、応力負荷に対して大きな強度を得ることが可能となり、M相が導入されていない単純単結晶の場合に比べてはるかに大きな強度を有するインプラント部材を提供することが可能となる。
特定の方向に沿ったM相は、単結晶育成時に導入が可能であり、また、荷重負荷により単結晶に塑性変形を加えることによっても、その導入、方位制御が可能である。
このような技術は、単結晶であるために成し得る技術であって、今までに類例のない技術により、飛躍的な高強度化に成功したものである。
なお、本請求項の発明における「特定の方向」としては、単一の方向に限定されず、複数の方向であってもよい。
上記のような適切な単結晶の方位制御は、強度のみならず、耐摩耗性、耐食性の向上をも可能にすることが予想される。これは結晶面の違いは、表面の原子充填率を変化させるためである。なお、本単結晶による強化手法は、従来知られている炭化物(カーバイド)析出による強化などとも併用できると考えられる。
請求項3に記載の発明は、
ブリッジマン法を用いて、Co−Cr系合金単結晶の結晶成長を行う
ことを特徴とする請求項2に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法である。
ブリッジマン法を用いてCo−Cr系合金単結晶の結晶成長を行なうことにより、前記の通り、インプラント部材として用いることができる極めて特性の優れた合金単結晶を製造することができる。このため、特定の方向に沿った面欠陥状マルテンサイト相を導入する場合のCo−Cr系合金単結晶の結晶成長法としては、ブリッジマン法を用いることが好ましい。
請求項4に記載の発明は、
所定の組成のCo−Cr系合金を1500〜2050℃の温度で溶融し、
温度勾配0.5℃/mm以上の条件の下、
成長速度1.0〜500mm/hで結晶成長を行う
ことを特徴とする請求項3に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法である。
ブリッジマン法を用いてCo−Cr系合金単結晶の結晶成長を行う場合、前記の通り本請求項の条件の下で行うことが好ましい。
請求項5に記載の発明は、
アルミナ製坩堝またはジルコニア製坩堝を用いることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法である。
本発明者は、ブリッジマン装置における坩堝として、アルミナ(Al)製坩堝を用いることにより、M相をより効果的に導入できることを見出した。
即ち、アルミナ製坩堝を用い、単結晶成長条件を制御することにより、微量の粒状のAlが、結晶成長初期の部分において、インプラント部材用Co−Cr系合金単結晶中に混入する。AlはM相の導入を促進する作用を有しており、特に、一定以上のAlが混入されている場合には、M相がAl粒子を中心として4方向の{111}面に沿って形成されることが分かった。一方、結晶成長の中・後半部においては、Alの混入は抑制され、結果として一方向制御されたM相の導入が可能となる。
M相の形成が一方向の場合には、使用時に最も荷重負荷がM相界面の法線方向に掛かるように、単結晶の切出しおよび切り出された単結晶のインプラント用医療器具への固定を行うことにより、特定方向に極めて高強度で、特定方向に加工が容易であるインプラント用医療器具を提供することができる。
一方、M相が4方向に形成されている場合には、圧縮や引張りの方向が4方向に形成されたM相界面と必ず交差するため、高強度のインプラント用医療器具を容易に提供することができる。また、圧縮力や引張力の方向とM相界面あるいはM相界面の法線方向との調整を厳密に行わなくても高強度のインプラント用医療器具を容易に提供することができる。
このように、Al製坩堝を用いることにより、高強度のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶あるいはインプラント用医療器具を効率的に提供することができる。
一方、ジルコニア(ZrO)の場合は、Alと比較してCo−Cr合金との反応をより抑えるため、M相を一方向性に制御した単結晶を育成するという観点からは、ブリッジマン装置における坩堝として、ZrO製坩堝を用いることも好ましい。
請求項6に記載の発明は、
インプラント部材用Co−Cr系合金単結晶に対して時効処理を施すことを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法である。
本発明者は、時効処理を施すことによっても、合金単結晶中に4方向のM相を形成することができ、応力負荷に対する強度を向上させることができることを見出した。
好ましい時効処理は、750〜900℃で2〜50時間保持して熱処理し、その後、氷水中などに急冷を行う熱処理であり、特に温度は800℃程度が好ましい。
なお、この時効処理は、温度が一定の場合、保持時間が長くなるにつれて、M相の形成量が多くなり、応力負荷に対する強度が向上し、加工硬化率も上昇する。
請求項7に記載の発明は、
請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法により製造されたインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の前記面欠陥状マルテンサイト相が形成されている方向を確認した後、
インプラント部材として使用する時に最も荷重負荷が大きくなる方向が前記相の法線方向に近接するように、前記インプラント部材用Co−Cr系合金単結晶を切出すことを特徴とするインプラント用Co−Cr系合金単結晶の製造方法である。
前記した通り、インプラント部材として使用時に最も荷重負荷が大きくなる方向がM相界面の法線方向と一致するように合金単結晶を切出して使用することにより、応力負荷に対して最も大きな強度を得ることができる。
このため、使用時に最も荷重負荷が大きくなる方向がM相界面の法線方向にできるだけ近接するように、好ましくは、一致するように合金単結晶を切出すことにより、高強度のインプラント部材を得ることができる。
具体的には、例えば、人工股関節の骨頭、人工膝関節のベースプレートの荷重支持方向、人工歯根の咀嚼方向に対し、[111]結晶方位(M相界面の法線方向)が平行となるように合金単結晶を切出してインプラント部材を作製した場合、このCo−Cr系合金単結晶における[111]方位は、本来的性質として強度が高く、かつ変形が必ずM相と垂直に交差するように生じるため、最も大きな強度と共に、耐摩耗特性、材料信頼性に優れ、ひいては耐食性も向上したCo−Cr系合金単結晶インプラント部材を提供することができる。即ち、結晶方位を制御した生体用方位制御単結晶インプラント部材を提供することができる。
請求項8に記載の発明は、
請求項1に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法を用いて製造されていることを特徴とするインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶である。
前記した通り、ブリッジマン法に基づき、所定の温度勾配および成長速度の下で製造されたCo−Cr系合金単結晶は、粒界割れを引き起こす恐れがなく、インプラント部材として使用した際の破壊進展を十分に抑制することができると共に、単結晶であるため、塑性変形の挙動の詳細を容易に解明することができる。
請求項9に記載の発明は、
特定の方向に沿った面欠陥状マルテンサイト相が導入されていることを特徴とするインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶である。
結晶学的異方性を有するM相が特定の方向に沿って導入されて、内部組織制御されているため、前記の通り、M相と応力負荷による変形との相互作用を利用することができ、高強度のインプラント部材用として好適なCo−Cr系合金単結晶を提供することができる。
請求項10に記載の発明は、
前記面欠陥状マルテンサイト相が4方向に導入されていることを特徴とする請求項9に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶である。
前記の通り、M相が4方向に導入されたCo−Cr系合金単結晶では、圧縮や引張りの方向が4方向に形成されたM相界面と種々の角度をなすため、高強度のインプラント用医療器具を提供するために好適なCo−Cr系合金単結晶を容易に提供することができる。
請求項11に記載の発明は、
請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶が用いられていることを特徴とするインプラント部材である。
特定の方向に沿った面欠陥状マルテンサイト相が導入されたインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶が用いられているため、前記の通り、高強度のインプラント部材を提供することができる。
請求項12に記載の発明は、
特定の方向に沿った面欠陥状マルテンサイト相が導入されたインプラント用Co―Cr系合金単結晶を用いたインプラント用医療器具であって、
使用する時に最も荷重負荷が大きくなる方向が前記面欠陥状マルテンサイト相の法線方向に近接するように、前記インプラント用Co―Cr系合金単結晶が配置されている
ことを特徴とするインプラント用医療器具である。
使用時に最も荷重負荷が大きくなる方向がM相界面の法線方向と近接するように合金単結晶が配置されているため、高強度のインプラント用医療器具を提供することができる。
このような合金単結晶を用いたインプラント用医療器具は、特に、摺動部を中心としたインプラント用医療器具の革新的な力学特性の向上をもたらすことができる。
本発明により、生体との適合性に優れると共に、その使用部位、方向に応じて最適な強度、耐食性、耐摩耗性などの諸特性を発揮することができるインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶を提供することができる。
実施例において得られたCo−Cr−Mo合金単結晶の外観を示す図である。 実施例において得られたCo−Cr−Mo合金単結晶における成長方向断面より撮影したラウエ写真を示す図である。 実施例において得られたCo−Cr−Mo合金単結晶のCo、Cr、Mo組成を示す図である。 実施例において得られたCo−Cr−Mo合金単結晶のSi、Al組成を示す図である。 実施例において得られたCo−Cr−Mo合金単結晶の内部組織を示すTEM写真である。 実施例において得られたCo−Cr−Mo合金単結晶におけるAlの有無による表面組織の変化を示す図である。 実施例において得られたCo−Cr−Mo合金単結晶のγ単相材を[−149]方位圧縮した時に現れる変形組織を示す図である。 実施例において得られたCo−Cr−Mo合金単結晶のAlが存在する試験片を[−149]方位圧縮した時に現れる変形組織を示す図である。 実施例において得られたCo−Cr−Mo合金単結晶のAlが存在する試験片を[−149]方位圧縮した時の内部TEM写真である。 [−149]方向を荷重軸方位として有する試験片に1%圧縮を行った際の強度を示す図である。 荷重軸方位の違いによる応力の差を示す図である。 荷重軸方位の違いによる応力の差を示す図である。 時効処理におけるM相の組織変化、ならびに各試料の変形組織を示す図である。 時効処理による応力の向上を示す図である。 時効処理による熱処理時間と降伏応力との関係を示す図である。 本発明に係るCo−Cr系合金のインプラント材料への適用について説明する図である。
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本実施例は、Co−Cr−Mo合金単結晶に関する例である。
1.インプラント部材用Co−Cr−Mo合金単結晶の製造
最初に、インプラント部材用Co−Cr−Mo合金単結晶の製造につき説明する。
(1)母合金の準備
先ず、母合金として、ASTM F75 規格(Co−27〜30Cr−5〜7Mo(質量%))に適合するCo−27Cr−6Mo(質量%)の鋳造材(サイズ:直径約18mm×長さ約25cm、ヨネダアドキャスト社製)を準備した。
この母合金を、ワイヤ放電加工機(CONT HS−300、ブラザー工業株式会社製)を用いて、直径12mm×長さ5cmの丸棒に切り分け、さらにこの丸棒に対して、アセトン、エタノールの順に、それぞれ5〜10分間の超音波洗浄を施した。
(2)ブリッジマン装置による合金単結晶の作製
次に、この丸棒3本をアルミナ製坩堝に入れ、ブリッジマン装置(NEV−DS2、日新技研社製)にセットした。
次に、ブリッジマン装置中の高周波炉を用いて、アルゴン雰囲気下、先ず1時間かけて850℃まで昇温し、さらに2時間かけて1600℃まで昇温し、丸棒3本を溶解した。
次に、ブリッジマン装置内の温度勾配約2.5℃/mmの下で、5.00mm/hの結晶成長速度となるように、坩堝をブリッジマン装置付属の金尺の目盛りで130mmから310mmまで下降させることにより、結晶を成長させ、最終的に、直径13mm×長さ約120mmのCo−Cr−Mo合金単結晶を作製した。得られた合金単結晶の外観を図1に示す。
2.合金単結晶の表面組織観察および組成分析
上記の方法により作製された合金単結晶を用い、以下の手順により表面組織を観察すると共に、組成分析を行った。
(1)試験体の準備
得られた合金単結晶より、結晶成長方向を法線方向とするような厚さ2mmの円盤状試料を切出し、400〜2000番のエメリー研磨紙により機械研磨を行った後、さらに粒径3μmのDPペースト(ダイヤモンドペースト)を用いた回転研磨を約3分間行って表面を鏡面状態に仕上げた。
次に、表面の加工層を除去するため、硫酸/メタノールの9:1(体積比率)混合溶液を用いて、温度−10〜−15℃、電圧8.5Vの条件下で約1分間の電解研磨を行った。その後、同じ溶液を用いて、温度−10〜−15℃、電圧4.5Vの条件下で3分間の電解腐食を行った。
(2)表面組織観察
上記試験体に対し、ノマルスキー型微分干渉式光学顕微鏡(オリンパス株式会社製)(以下、「光学顕微鏡」という)を用いて、結晶の微細組織を観察した。
(3)結晶成長方向の確認
次に、背面ラウエ法(管球電圧−21.5kV、電流6.5mA、露光時間3分)により、単結晶の結晶成長方向を確認した。
図2に得られたラウエ写真を示す。図2より、この合金単結晶が[−10 12 17]軸方向に成長していることが分かる。
(4)組成分析
その後、この単結晶より、結晶成長方向に平行に、薄い板状の試料を切出し、電界放射走査型電子顕微鏡(Field Emission type−Scanning Electron Microscopy:FE−SEM、日本電子社製 JEM−6500F)によるEDX(Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:エネルギー分散型X線分析装置)(以下、「SEM−EDX」という)によって、結晶の組成分析(面分析)を行った。
CoとCrとMoの成長方向の組成分析を、図3に示す。図3において、縦軸は各構成元素の濃度(質量%)であり、横軸は下端(成長開始)からの距離(cm)であり、○はCo、△はCr、◇はMoである。また、実線はCoであり、破線はCrであり、一点鎖線はMoである。
図3より、得られた単結晶においては、上端(成長方向の先端)の約1cmを除き、各組成元素の濃度が一様であり、母合金の組成と殆どズレを生じることなく、安定した組成の結晶が成長していることが分かる。なお、上端の約1cmにおいて、各組成元素の濃度が乱れているのは、ブリッジマンプロセスにおけるゾーンリファイニングの効果として、最終凝固部にMoが偏析するためと推測される。
また、図4に単結晶におけるAlとSiの濃度を示す。図4において、縦軸は構成元素の濃度(質量%)であり、横軸は下端からの距離(cm)であり、□はAl、×はSiである。また、実線はSiであり、破線はAlである。
図4に示すように、Alの濃度は、下端から3cmを超えたあたりまで、約0.4質量%を示す。これは育成プロセス初期に坩堝とAlの反応が促進されるためと推測される。但し、成長が下端から4cmを超えたのちには、Al濃度はほぼ0質量%にまで急速に低下している。
一方、Siの濃度は、下端から9cm辺りまでは約0.6質量%で安定しているが、それ以降では先端に近づくにつれて、1質量%程度まで上昇している。これは、Mo同様、ブリッジマンプロセスにおけるゾーンリファイニングの効果と推測される。
3.M相の結晶方位および組織形態の同定
次に、得られた合金単結晶中にM相が形成されていることを確認し、その結晶方位および組織形態の同定を行った。
具体的には、硫酸/メタノールの9:1(体積比率)混合溶液を用いて、温度−10〜−15℃、電圧1.7V、電流0.01Aの条件下で3分間の電解腐食を行い、その後、試験体に対する光学顕微鏡観察および透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEOL−TEM3010)(以下、「TEM」という)観察により行った。
得られた内部組織を撮影した写真(Alなし)の一例を図5に示す。図2に示したように、X線ラウエ法による解析では、本結晶は面心立方構造(fcc)を有する単相単結晶と同定されるが、図5より、本実施例において作製したCo−Cr−Mo単結晶の内部には、特定の(111)面に沿ったM相が形成されていることが分かる。
次に、前記したように、結晶の成長過程においてAlの濃度が変化するが、この原因となる単結晶育成初期でのAlの形成、これに伴う単結晶の内部組織の大きな変化について説明する。
図6は、得られた単結晶において、Alの有無による表面組織の変化を撮影した写真であり、(a)は濃度分析においてAlの濃度が低い、すなわちAlが析出していない箇所における表面組織であり、(b)はAlの濃度が高い、すなわちAlが析出している箇所における表面組織である。
図6に示すように、結晶内部にアルミナ(Al)が析出した部分では、Alの周囲でM相の形成が促進され、その周りに4方向の{111}面に沿ってM相が形成されていることが分かった。これに対して、Alの析出がない部分では、図5に示すように、γ母相中の1つの(111)面にのみ、M相が面欠陥状に形成されていた。
図5、図6に示す結果より、単結晶成長時、析出するアルミナ量(Al濃度)を制御することにより、結晶内部におけるM相の分布を制御できることが分かる。
4.合金単結晶の力学特性評価
次に、得られた単結晶の上部のγ単相領域と下部のAl析出物を含む領域のそれぞれから角柱試験片を作製し、圧縮試験による力学特性評価を行った。
(1)試験片の作製
上記により得られた単結晶から前記の背面ラウエ法を用いて結晶方位の同定を行い、[−149]、[1−94]、[111]方向をそれぞれ荷重軸方位として有する約2.0mm×約2.0mm×約5.0mmの角柱試験片を放電加工により切出した。
その後、1000〜2000番のエメリー研磨紙による機械研磨および粒径3μmのDPペーストを用いた回転研磨を3分間行って表面を鏡面状態に仕上げ、さらにアセトン、エタノールを順番に用いて超音波洗浄を各々5〜10分間行った。
その後、硫酸/メタノールの9:1(体積比率)混合溶液を用いて、温度−10〜−15℃、電圧1.7V、電流0.01Aの条件下で3分間の電解腐食を行い、未変形状態のM相の存在を確認した。
その後、再度DPペーストを用いた回転研磨を行って表面を鏡面状態に戻し、同じ混合溶液にて温度−10〜−15℃、電圧3.5V、電流0.05Aの条件下で3分間の電解研磨を行った。
(2)圧縮試験
圧縮試験は、オートグラフ(島津製作所社製)により、室温、真空中でひずみ速度1.67×10−4−1で各試験片を1%変形させ、その時の強度(降伏応力)を測定した。また、圧縮前後の応力誘起マルテンサイト並びに変形微細組織を、光学顕微鏡並びにTEMにて観察した。
なお、TEM観察用の薄膜試料は、各試験片から放電加工機にて厚さ650μm×直径3mmの薄い円盤状に切出した後、1000〜2000番のエメリー研磨紙で厚さ60μmまで研磨し、硫酸/メタノールの9:1(体積比率)混合溶液中でツインジェット式電解研磨機(温度0℃、電圧12V)を用いて作製した。
(3)試験結果
(a)変形組織結果について
γ単相材(Alなし)を[−149]方位圧縮した時に現れる変形組織を図7に示す。図7より、1%変形の圧縮により、(111)面に沿った選択的な変形が生じていることが分かる。ここで、この(111)面とは、図5に示した、単結晶中に元々存在しているM相の晶癖面と同一面であることが、着目すべき点である。
一方、図8にAlが存在する試験片に同様の圧縮を行った時に現れる変形組織を示し、図9に変形試料におけるTEM写真を示す。
図8より分かるように、図7に示したAlなしのγ単相材と異なり、Alが存在する試験片、すなわちその結果として結晶中に元々から4種のM相が存在する試験片中では、複数の{111}面上での変形モードが同時に活動しており、また図9から、この変形は{111}面を晶癖面とするM相が、応力負荷により新たに形成、即ち、応力誘起M相変態により、M相の量、幅(面欠陥に垂直方向の厚さ)が増加することにより進行していることが確認できる。
これらの結果より、応力負荷により形成される(変形を担う主因となる)応力誘起M相が形成される面は、元々単結晶中に存在するM相の影響を強く受けることが分かる。従って、元々単結晶中に存在するM相の幾何学を制御することにより、この単結晶の変形挙動を制御できる可能性があることが、本結果より推察できる。
(b)圧縮試験結果
図10に[−149]方向を荷重軸方位として有する試験片に1%圧縮を行った際の強度を示す。図10において、左側は成長した状態かつAlの微細な粒子が含まれていないγ単相の場合であり、右が同じくAlが含まれる場合である。
図10に示すように、Al即ちM相の多少により降伏応力に大きな差が生じており、M相の存在が変形挙動に強い影響を与えていることが分かる。
次に、図11および図12に荷重軸方位の違いによる応力の差を示す。図11、図12における左側は[−149]方位、図11における右側は[1−94]方位、図12における右側は[111]方位を荷重軸方位として有する試験片における測定値である。また、各図の左右に示された長方形は、各試験片における、荷重負荷により生じる滑り力(荷重負荷による応力誘起M相形成に必要な、{111}面上での<112>方向に対する最大せん断応力)と、元々結晶中に存在するM相の交差の状態を示す。これらの長方形内における太線は結晶中に元々存在するM相であり、白い矢印が滑り力の方向である。
図11より、左側のせん断方向がM相の方向と一致している[−149]方位の場合より、右側のせん断方向がM相を横切っている[1−94]方位の場合の方が、強度が約2倍に上昇していることが分かる。
本Co−Cr単結晶は、abc軸の等価な立方晶系(面心立方晶)に属するため、結晶幾何学的には[−149]方位と[1−94]方位は等価であり、従って本来は同一の強度を示すことになる。しかし上記の結果、即ち、せん断方向がM相を横切っている[1−94]方位の場合の方が、強度が約2倍に上昇するという事実は、正に、単結晶内のM相とせん断方向(荷重軸の方位)を制御することにより、結晶学的には同一の方位であっても強度の著しい増大が図れることを実証している。
さらに、図12に示すように、左側のせん断方向がM相の方向と一致している[−149]方位の場合に比べ、右側の[111]方位、すなわち荷重負荷軸方位が、結晶中に存在するM相界面の法線方向と一致する場合、その強度には約5倍もの上昇が実現される。
これは、荷重軸[111]方位においては、荷重負荷によりせん断変形が生じる際に、いずれの方向にせん断が生じても、必ずM相と大きな角度を持って交差するためであり、かつまた本来的に、荷重負荷力と、荷重負荷により生じる{111}面上における<112>方向へのせん断力(応力誘起M相形成に必要なせん断力)との比率である、Schmid Factor(図中SFと表記)も非常に小さな値を持つためである。
上記のことは、本単結晶においてM相とせん断変形との相互作用を結晶学的に制御することにより、降伏応力が大幅に上昇することを実証している。
5.時効処理
次に、γ単相材にM相を多数形成させる方法として行った時効処理の効果を確認した。
(1)試験体の作製
上記により得られた単結晶のAlのないγ単相部分より、約11.0mm×約5.0mm×約2.0mmの板を放電加工により切出し、アセトン、およびエタノールで十分に洗浄した後、石英管との反応を防ぐためにTa箔で保護し石英管に入れた。なお、石英管はガスバーナでの加工により作製した。
次に、石英管を10−5Paのオーダの高真空にして内部の空気を完全に排出した後、高純度Arガス雰囲気中で封入処理を行った。次に、箱形電気炉内で800℃にて、それぞれ、2時間、15時間及び40時間の加熱した後、氷水中にて焼入れを行い、時効処理を施した。このとき、石英管は氷水への急水冷と同時に粉砕した。その後、前記と同様の表面処理を行い、同様の圧縮試験を行い、力学的特性を評価した。
(2)組織観察
図13に時効処理におけるM相の組織を示す。また、1%変形した際の組織を併せて示す。
図13の上段に示す3枚の写真から、熱処理時間が長いほどM相の数が増加し、さらにその進展方向が、特定の一方向から、複数方向(4方向)へと増加していることが分かる。また、下段に示す3枚の写真から、増加したM相は、圧縮による(111)面上でのせん断変形方向と交差するため、強度が向上することが期待され、次の圧縮試験によりこのことが確認された。
(3)圧縮試験
時効処理による応力の向上を図14に示す。図14において、左側は時効処理を施していないAs−grown材の内、Alの微細な粒子が含まれていないγ単相の場合であり、右側は前記γ単相As−grown材に800℃で15時間の時効処理を施した場合である。なお、中央は、時効処理を施していないAs−grown材の内、Alが含まれている場合である。
図14より、Alの含まれていないAs−grown材の降伏応力は166MPaであるのに対して、15時間時効材の降伏応力は280MPaであり、時効処理により、降伏応力が大幅に上昇していることが分かる。また、加工硬化率も熱処理により著しく増大している。ここで、Alが含まれているAs−grown材の降伏応力は239MPaであり、15時間の時効処理を施した場合の方がAlが存在する場合の効果よりも大きな効果を示していることが分かる。
次に、図15に熱処理時間と降伏応力との関係を示す。図15において、縦軸は降伏応力(MPa)であり、左から順に、As−grown材、2h時効材、15h時効材、40h時効材である。
図15より、熱処理時間が長いほど降伏応力が高くなることが分かる。また、図13および図15より熱処理時間が長く、M相の数と方向が増加するほど、降伏応力が高くなることが分かる。
6.インプラント材料への適用について
上記に説明したように、本発明に係るCo−Cr系合金単結晶は、M相とせん断変形との交差を幾何学的に制御することにより、強度を制御することができる。インプラント医療器具に使用する場合には、器具の各部に作用する力の方向、力の大きさは概ね定まっている。例えば、形状が比較的簡単かつ相互に動く箇所がない人工歯根であれば、実質的に押圧力のみが作用し(引張り力は事実上無視できる)、その作用する方向は顎の上下方向、即ち植込みの軸方向であり、また歯の種類、即ち歯の位置による応力の相違は少ない。一方、人工股関節や人工膝関節であれば、これも実質的には股や膝の関節方向に押圧力が作用し、関節の相互に動き合う箇所が応力的に最も厳しくなる。
このため、これらのインプラント医療器具を設計する場合には、強度が高い部材を選定すると共に、最大荷重負荷方向が部材のM相界面の法線方向にできるだけ近接、最も好ましくは一致するように設計する必要がある。
これを図16を用いて説明する。図16において、10は人工股関節であり、11はCo−Crカップであり、12はCo−Cr骨頭であり、13はステムであり、20は人工膝関節であり、21は大腿骨インプラントであり、22は脛骨インプラントである。そして、単結晶インプラントの[111]方向が矢印の方向に一致するように設計されており、これにより最大荷重に対して効果的なインプラント部材を作製することができる。
以上、本発明の実施の態様を示したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
本発明は、インプラント用医療部材に、例えば人工股関節、人工膝関節、ボーンプレート、人工歯根等の生体に埋め込まれて長年使用される医療部材に利用可能である。
10 人工股関節
11 Co−Crカップ
12 Co−Cr骨頭
13 ステム
20 人工膝関節
21 大腿骨インプラント
22 脛骨インプラント

Claims (12)

  1. ブリッジマン法を用いたインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法であって、
    所定の組成のCo−Cr系合金を1500〜2050℃の温度で溶融し、
    温度勾配0.5℃/mm以上の条件の下、
    成長速度1.0〜500mm/hで結晶成長を行う
    ことを特徴とするインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法。
  2. Co−Cr系合金単結晶に対して特定の方向に沿った面欠陥状マルテンサイト相を導入することを特徴とするインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法。
  3. ブリッジマン法を用いて、Co−Cr系合金単結晶の結晶成長を行う
    ことを特徴とする請求項2に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法。
  4. 所定の組成のCo−Cr系合金を1500〜2050℃の温度で溶融し、
    温度勾配0.5℃/mm以上の条件の下、
    成長速度1.0〜500mm/hで結晶成長を行う
    ことを特徴とする請求項3に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法。
  5. アルミナ製坩堝またはジルコニア製坩堝を用いることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法。
  6. インプラント部材用Co−Cr系合金単結晶に対して時効処理を施すことを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法。
  7. 請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法により製造されたインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の前記面欠陥状マルテンサイト相が形成されている方向を確認した後、
    インプラント部材として使用する時に最も荷重負荷が大きくなる方向が前記相の法線方向に近接するように、前記インプラント部材用Co−Cr系合金単結晶を切出すことを特徴とするインプラント用Co−Cr系合金単結晶の製造方法。
  8. 請求項1に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶の製造方法を用いて製造されていることを特徴とするインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶。
  9. 特定の方向に沿った面欠陥状マルテンサイト相が導入されていることを特徴とするインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶。
  10. 前記面欠陥状マルテンサイト相が4方向に導入されていることを特徴とする請求項9に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶。
  11. 請求項8ないし請求項10のいずれか1項に記載のインプラント部材用Co−Cr系合金単結晶が用いられていることを特徴とするインプラント部材。
  12. 特定の方向に沿った面欠陥状マルテンサイト相が導入されたインプラント用Co―Cr系合金単結晶を用いたインプラント用医療器具であって、
    使用する時に最も荷重負荷が大きくなる方向が前記面欠陥状マルテンサイト相の法線方向に近接するように、前記インプラント用Co―Cr系合金単結晶が配置されている
    ことを特徴とするインプラント用医療器具。
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