JP2011149177A - 防水シートの接合構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】
下地に複数の防水シートを敷設固定する場合において、隣接する防水シートを重ね合わせて接合しても、重ね合わせ部において実質的に段差がなく、略平坦である防水シートの接合構造を提供することを目的とする。
【解決手段】
隣接する防水シートを重ね合わせその重ね合わせ部6の下地側に下側防水シート3−1の厚みと略同一の深さの凹部4を形成し、その凹部4に下側防水シート3−1の端縁部5−1を納め、その上に隣接する他の防水シート3−2の端縁部5−2を水密に接合した。
【選択図】 図2

Description

本発明は下地の上に敷設された防水シートの接合構造であって、隣接する防水シートを重ね合わせて接合し、その接合部における段差を解消し略平坦とした段差解消性の防水シートの接合構造に関するものである。
一般にビル、マンション、戸建住宅等建築物の屋上、屋根、ベランダ、バルコニーなどの下地に防水シートを敷設することで防水層を形成する場合、複数の防水シートを使用することを要する。この場合、隣接する防水シートのつなぎ目においての漏水を防止するために、隣接シートを40mm以上の幅で重ねて施工する仕様が定められている。この重ね代は公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成19年版(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)によって定められた仕様であって、隣接するシートを重ね合わせる場合の重ね代をこれ以下とすることは実質的にできないために、その重ね代部での段差が問題となる場合があった。すなわち、この重ね代での段差により雨水の流れが妨げられ、水がその重ね合わせた部分に溜まるという問題があった。さらに、住宅のベランダや、歩行目的としたビルや住宅の屋上等の場合には、防水シートの上にさらに、樹脂パネルなどの歩行板を敷設することがあり、前記重ね代の段差により前記歩行板が平坦に敷設できず、ガタついてしまうといった問題が生じていた。
また、防水シートを上記のように重ね合わせずに当接させ、その当接部に増張りシートを接合することでつなぎ目を防水する構造も用いられているが、この場合も増張りシートの厚み分の段差が生じていた。
そこで、防水シートを重ね合わせずに段差なく複数の防水シートを接合する方法として、防水シートの端部が斜面になっている防水シートを使用する方法が提案されている。(特許文献1)。これは、端面が一定の斜面になっているためにその端面同士を合わせることで、複数の防水シートの接合が可能となるものである。しかし、この方法では、防水シートの端面を斜面にする加工が必要であり、さらに端面の接合だけでは下地の動きに対応できずに、接合部分の一部が剥がれるなどして防水性が確保できないといった問題があった。
また、上記の増張りシートを用いる構造において、隣接する防水シートの当接部の下地側に掘り込み部を設け、その掘り込み部に増張りシートを納め、増張りシートの上部に防水シートの当接部を設けることで、隣接する防水シートを略平坦とする構造が提案されている(特許文献2)。
しかし、上記の場合、隣接した防水シートの他に増張りシートを敷設する必要がある。このため、増張シートを施工現場で所定の幅・長さに切断し、あるいはあらかじめ切断したシートを製造し、これを前記掘り込み部に接着剤により接合する必要がある。それにより、増張りシートの切断、接着に係る工数の増加による作業効率の低下、施工時間の増加といった問題があった。
また、増張りシートは隣接する2つの防水シートに接合されるために、上記の公共建築工事標準仕様書によりそれぞれの防水シートに対して、40mm以上の重ね代を要し、その結果増張りシートの幅は80mm以上とすること必要とする。そのために、接合部が大きくなり視覚的に目立ちやすく美観上の問題があった。
特開平07−247642号公報 特開2008−196192号公報
この発明は上記の問題点を解消するためになされたものであり、下地に複数の防水シートを敷設固定する場合において、隣接する防水シートを重ね合わせて接合しても、重ね合わせ部において実質的に段差がなく、略平坦である防水シートの接合構造を提供することであって、充分な防水性を確保でき、且つ施工時間の短縮を図ることができ、更に美観に優れた接合構造を実現することである。
即ち、本発明は上記問題を解決したものであり、請求項1では、下地の上に複数の防水シートを敷設固定した防水シートの接合構造であって、前記下地の上に形成した凹部と、前記凹部に一の防水シートの端縁部を収め、その上にそれと隣接した他の防水シートの端縁部とを重ねて接合した重ね合わせ部とを有することを特徴とする重ね合わせ部の段差を解消した防水シート接合構造。
請求項2では、前記凹部の底部が上下に嵌脱自在な部材により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の重ね合わせ部の段差を解消した防水シート接合構造。
請求項3では、前記凹部の底部が、前記一の防水シートの端縁部との接合面に熱可塑性樹脂被覆層を有する部材により形成されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の重ね合わせ部の段差を解消した防水シート接合構造。
請求項4では、前記下地の上に傾斜層を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重ね合わせ部の段差を解消した防水シート接合構造。
請求項5では、下地の上に凹部を形成し、前記凹部に一の防水シートの端縁部を収め接合し、その上にそれと隣接した他の防水シートの端縁部とを重ねて接合し、隣接する防水シートの重ね合わせ部の段差を解消した防水シート接合工法。
本発明は、隣接する防水シートを重ね合わせて接合して重ね合わせ部を形成しても、下地の上に凹部(以下、端縁収納用凹部と記載)を設けそこに一の防水シートの端部を収め、その上に他の防水シートの端縁部を重ね接合することで、当該重ね合わせ部に実質的に段差を生じず、略平坦な接合構造を得ることができる。これにより防水シートを重ね合わせることで防水性を確保した上で、雨水の滞留部を形成せずに確実に排水することができる。
本発明では、さらに重ね合わせ部において、隣接する防水シートを重ね合わせて接合するために、増張りシートを必須としない接合構造である。このために、増張りシートを使用する場合は、隣接する防水シートと増張りシートをそれぞれ接合するために1つの接合構造で2回のシート接合が必要となるが、本発明の接合構造では隣接する防水シートを重ね合わせて接合させるために1回の接合でよいこととなる。したがって、本発明においては、防水シートの接合回数を減ずることが出来るために、工数の低減、施工時間の短縮を図ることができる。
さらに、公共建築工事標準仕様書では、重ね代は1か所に付き40mm以上とすることが仕様となっており、上記のとおり本発明において重ね代は1か所となるために、その重ね代は40mm以上であればよい。一方、増張りシートを使用する場合は、上記のとおり、接合箇所は2か所となるために、重ね代も2か所分で80mm以上であることを要する。したがって、本発明では増張りシートを使用する接合方法と比べ、重ね合わせ部を小さく目立ちにくくすることでき、美観的に優れ、より確実に雨水の排水が可能となる。
本発明に係る端縁収納用凹部を示す断面図である。 本発明に係る接合構造を示す断面図である。 本発明に係る実施形態1を示す断面図である。 本発明に係る端縁収納用凹部の底部を複数の部材で形成する形態を示す断面図である。 本発明に係る実施形態2を示す断面図である。 本発明に係る実施形態3を示す断面図である。 本発明の実施形態を示す平面図である。 従来技術を示す断面図である (9イ)端縁収納用凹部の底部を形成する嵌脱自在な鋼鈑およびその積層状態を示す断面図である。 (9ロ)端縁収納用凹部の底部を形成する嵌脱自在な鋼鈑の斜視図である。 本発明に係る端縁収納用凹部の底部を形成する鋼鈑の形態の断面図である。 本発明の実施形態を示す断面図である。 本発明に係る実施形態4を示す断面図である。
以下に本発明の実施の形態に係る防水シートの接合構造を図面を参照して説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本発明の防水シートの接合構造における端縁収納部を図1、本発明の接合構造を図2に示した。端縁収納用凹部4は、下地1の上に部材2によって形成されている。そして前記端縁収納用凹部4の側面部4−2の深さが、端縁収納用凹部4に収納される防水シート3−1の端縁部5−1の厚さと略同一であれば、重ね合わせ部6の段差を容易に解消し得る。
本発明の接合構造は、前記端縁収納用凹部4に重ね合わせ部6において下側となる防水シート3−1の端縁部5−1を収め、その上に隣接する防水シート3−2の端縁部5−2を重ねて接合して形成される。
前記端縁収納用凹部4を形成する部材2は、単一の部材であっても良く、複数の部材から構成されていてもよい。さらに部材2は、無機質ボード、合成樹脂製ボード、断熱ボード、木質ボード、金属板等を適時選択することが出来る。単一の部材2により端縁収納用凹部4を形成する場合には、無機質ボード等に削り加工を施すことや、異形押出機を用いて合成樹脂ボードや断熱ボードを成型することで可能となる。しかし、単一の部材から端縁収納用凹部4を形成する方法は上記のような特別な加工を要するため、厚みの異なる複数の部材2を用いて端縁収納用凹部4を形成することが好ましい。
このように図2に示したような本発明に係る防水シートの接合構造は、重ね合わせ部6によって、隣接する防水シート3−1、3−2を水密に接合した上で、端縁部収納用凹部4に下側の防水シート3−1の端縁部5−1を収めることで、防水シート3−2の端縁部5−2を端縁部5−1の上に重ね固定しても、重ね合わせ部6において実質的な段差を生じす、略平坦となるために、雨水を滞留することなく排水することができる。
ここで、上記、部材2を複数用いて端縁収納用凹部4を形成する好適な実施形態1を図3に示す。これによると、下地1の上に無機質ボード2Aを敷設して端縁収納用凹部4を形成した。前記端縁収納用凹部4は、無機質ボード2A−1、2A−2と前記無機質ボードよりも厚みの薄い無機質ボード2A−3によって構成され、無機質ボード2A−3の両端に無機質ボード2A−1と無機質ボード2A−2を配することで構成されている。これによって、防水シート3−1の端縁部5−1の厚みと略同一の深さを有する端縁収納用凹部4が形成される。
さらに、無機質ボード2Aの上には防水シート3−1、3−2が敷設され、前記端縁収納用凹部4には、重ね合わせ部6において下側に配される一の防水シート3−1の端縁部5−1を納め、その上にそれと隣接する防水シート3−2の端縁部5−2を重ね合わせて接合したものである。
前記端縁部5−1と前記端縁部5−2との接合方法は、接着剤による接合、溶剤による接合、熱風溶接機による接合等を使用することが出来る。図3の形態においては、熱風溶接機を用いて前記端縁部の接合を行い、前記端縁部5−2と防水シート3−1との接合部を両方に掛るように液シーラー(図示せず)で端末処理を施した。
無機質ボードの下地への固定方法は特に限定されないが、図3においては、無機質ボード2Aの上に固定用ディスク7を配置しその上からビス8により下地に止めつけることで固定されている。下地に敷設した無機質ボード2Aの固定安定性を考慮すると、無機質ボード2A−1、2A−2、2A−3をそれぞれ1か所以上を固定することが望ましい。
無機質ボード2Aの上に防水シート3を固定する方法として、図3においては、無機質ボード2A−1、2A−2に接着剤(図示せず)を塗布し、防水シート3−1、3−2を接合固定している。また、端縁部収納用凹部4の底部4−1を形成する無機質ボード2A−3への防水シート3−1の端縁部5−1の接合も接着剤を用いて接合している。
このように無機質ボード2Aの上に防水シート3を固定する方法として、接着剤による固定工法以外にも、固定用ディスクをビスにより固定する機械的固定方法が挙げられる。
防水シート3を機械的固定方法により固定する場合は、無機質ボード2Aの上に金属板の表面を樹脂層9で被覆した樹脂被覆固定用金属ディスク7A(図示せず)を配置し、その上からビスにより無機質ボード2A−1、2A−2を下地1に固定し、その上に防水シート3−1、3−2を樹脂被覆固定用金属ディスク7Aの樹脂層9とを熱風溶接機や溶剤や誘導加熱により溶着接合することができる。この場合には帯状の樹脂被覆鋼板を用いることも出来る。
また、前記端縁収納用凹部4の底部4−1を構成する無機質ボード2A−3は他の部分と同様に、無機質ボード2A−3の上に樹脂被覆固定用金属ディスク7Aを配置し、その上からビスにより無機質ボード2A−3を下地1に固定し、この端縁収納用凹部4に重ね合わせ部6において下部に配される防水シート3−1の端縁部5−1を樹脂被覆固定用金属ディスク7Aの樹脂層9とを熱風溶接機や溶剤や誘導加熱によりで溶着接合することができる。この場合にも帯状の樹脂被覆鋼板を用いることもできる。
ここで、端縁収納用凹部4の底部4−1は、図3のような無機質ボード2A−3に限定されるものではなく、金属板、木質板、樹脂板等を用いることができる。ビスにより固定する場合には、当該底部4−1を固定する工数の削減、施工時間の短縮を考慮して、ビス8のねじ部が底部4−1を構成する部材に食い込むことで固定される程度の硬度を有していれば良い。また、同種、異種の複数の部材で当該底部4−1を形成してもよい。
中でも、端縁収納用凹部4の底部4−1の最表面層を熱可塑性樹脂被覆層とすることが好ましく、この場合には、前記底部4−1に防水シート3−1の端縁部5−1を熱風溶接機を用いて溶着により接合することが好ましい。このように熱風溶接機を用いることで前記端縁部5−1を熱風により柔軟な状態にしながら端縁収納用凹部の側面4−2、底面4−1に沿うように圧着し溶着することが可能となり、前記端縁部5−1を密着した状態で端縁収納用凹部4に収めることができる。これによって、前記端縁部5−1に他の防水シート3−2の端縁部5−2を重ねたときに、重ね合わせ部6において簡単に、より段差がなく平坦な状態に仕上げることができる。
前記底部4−1を構成する部材をビス8を用いて下地1に固定する場合には、ビス8を打ち込む際にビス8が前記底部4−1を構成する部材に食い込むために、この部材の上面が沈み込むことがある。また、ビスを強く下地に打ち込むと前記底部4−1を構成する部材の上面の沈み込みが大きくなるため、このような場合には、ビスを打ち込む強さが一定となるように調節することが求められる。
このように、前記底部4−1を構成する部材が沈み込み易い場合には、その沈み込みによる凹凸や、さらに複数のビス8を打ち込む場合にはその沈み込みの程度が一定とならいことがあり(ビス8の打ち込み強度を一定に出来ない場合があるため)、その上に敷設する防水シートにもその凹凸が反映し、その凹凸が目立つといった問題が生じやすくなる。したがって、前記底部4−1は圧縮によっても沈み込みにくい部材で構成することが好ましい。
詳しくは、前記底部4−1は、インパクトドライバ等によりビス8を打ち込み、部材上面の沈み込み量が5mm以下、さらに好ましくは3mm以下の部材が好ましい。この様な部材としては、以下の圧縮試験において、1mm圧縮した時の応力が20N以上であることが好ましく、35N以上であることがより好ましい。具体的には、金属板や樹脂板、無機質ボード、木質板が好ましい。これにより、ビス8の打ち込によって前記底部4−1の沈み込みが目立たないために、防水シートに凹凸が現れず、また前記底部4−1の沈み込みの程度が一定となり、重ね合わせ部をより平坦にすることが出来る。
<圧縮試験>
引張試験機に、直径6.2mmの円筒形のヘッド部が試験片を圧縮するように圧縮試験用の治具を取り付け、試験片を1mm圧縮した時の応力(N)を測定した。
試験速度:10mm/min
さらに、前記底部4−1を構成する部材が、複数の部材で構成される場合には、その最上部の部材のみ上記の剛性の強い、金属板や樹脂板、木質板を使用することもできる。
前記底部4−1を構成する部材が、図4に示すように複数(3枚)の部材10で構成されている場合には、各構成部材10−1、10−2、10−3が嵌脱自在に配置することが好ましい。これにより、底部4−1を構成する複数の部材10を配置する枚数を変えることで端縁収納用凹部4の深さを容易に変更することが出来るために好ましい。
さらに、前記底部4−1を構成する部材10は、その最上位にある部材(10−1)の最表面を熱可塑性樹脂被覆層とすることが好ましい。これにより、防水シート3−1との接着を熱風溶接機を用いて行うことができるために、前述のように端縁部5−1を端縁収納用凹部4に密着して収納可能となり、重ね合わせ部6の平坦性がより得られやすくなる。
上記効果は、前記底部4−1を構成する部材のうち、防水シートに接合される最上部の部材を熱可塑性樹脂被覆層を有する部材とすればよいが、部材の共通化を図り、全体としての工数の削減を行うとの点からすれば、樹脂被覆層を有する部材を最上部以外に使用しても良い。
このような熱可塑性樹脂被覆層を有する部材としては、樹脂被覆層を有する金属板が例示でき、防水シートと熱可塑性樹脂層とを同種の樹脂とすることが接合強度を高めるという点において好ましい。ここで同種の樹脂とは同一の樹脂であることまでは要しない。例えば、防水シートが軟質ポリ塩化ビニル製シートの場合には、前記熱可塑性樹脂被覆層もポリ塩化ビニル製であることが好ましいが、両者の可塑剤の含有量等の組成まで同一にする必要はない。他の例として防水シートがポリオレフィン系エラストマーであれば、前記熱可塑性樹脂被覆層は、それとは密度が異なるポリオレフィン系エラストマーを使用することができる。さらに他の例として防水シートがアクリル系樹脂あれば、前記熱可塑性樹脂被覆層は、それとはアクリル系モノマーの組成比の異なるアクリル系樹脂を使用することができる。
すなわち、ここでいう同種とは、熱風溶接による接合によって十分な接合強度が得られるような意味において同種であって、これらを熱風溶接しその剥離試験において試験片が材料破壊するような組み合わせを使用することが好ましい。
また、防水シートの前記熱可塑性樹脂被覆層が異種の材料であっても、熱風溶接により水密に接合可能であればよい。
前記底部4−1を構成する上下に嵌脱自在な部材とは、上下に積層することで嵌脱自在であればよく、同種の部材の表面と裏面を合わせて上下に積層することで嵌脱自在となる形態がこのましく、図9に示したような、鋼板を成型することで同種の複数の部材を上下に積層し嵌脱可能とする形態が例示できる。図9の嵌脱自在な鋼鈑101は、略長方形板状本体19の長手方向両端縁部が断面視略ハの字型を成すような折り曲げ部20を形成し、略長方形板状本体19の平坦面にビス用の貫通穴17を設けている。この様に、上面側より下面側の幅が広く断面視略ハの字型であるために、上下に嵌脱自在に積層でき、さらに
貫通穴17を合わせるようにすることで、貫通穴17においても嵌脱自在となり、積層した鋼鈑101のずれを防止することができる。また、貫通穴17にビス8を打ち込むこととで、嵌合状態が維持されズレ等のない安定的な前記底部4−1を形成することができる。
このような形態の場合、当該部材101は上下に嵌合可能であり輸送、保管においてコンパクトに収納可能なため好ましい。なお、鋼鈑101は熱可塑性樹脂被覆層18を有している。
図5に好ましい実施形態2を示す。下地1に断熱ボード11を敷設し、その上に無機質ボード2Aを敷設した構造であって、端縁部収納用凹部4の側面部4−2は無機質ボード2A−1、2A−2で形成されている。底面部4−1は、熱可塑性樹脂被覆層18を有する鋼板10Aを3枚積層することで構成し、重ね合わせ部6の下側防水シート3−1のシート端縁部5−1のシート厚さと略同一の深さの端縁部収納用凹部4を成している。
無機質ボード2Aの固定は、無機質ボード2A上に金属製の固定用ディスク7を設置し、ビス8を下地1に打ち込み、断熱ボード11と共に固定した。また、端縁部収納用凹部4の底面部4−1を構成する鋼鈑10Aを3枚重ねた上からビス8を下地1に打ち込み、断熱ボード11と共に固定した。
そして、重ね合わせ部6の下側に位置する防水シート3−1を、接着剤を塗布した無機質ボード2A−1に敷設、圧着し、防水シート3−1を接合固定した。つづいて、熱風溶接機を用いて、端縁部5−1を前記端縁部収納用凹部4に収め、接合固定した。次に隣接する防水シート3−2を同様に接着剤を塗布した無機質ボード2A−2に敷設固定した。そして防水シート3−2の端縁部5−2を防水シート3−1の端縁部5−1の上に重ね、熱風溶接機を用いて端縁部5−1と端縁部5−2を水密に接合した。そして前記端縁部5−2と防水シート3−1との接合部を両方に掛るように液シーラー(図示せず)で端末処理を施した。
このような実施形態により、断熱効果を得たうえで、無機質ボードの敷設により歩行可能な防水層を得ることができるために好ましい。
図6に好ましい実施形態3を示す。これによると、下地1に勾配を有する断熱ボード11−1を用いて傾斜層12を設け、そこに図5と同様にして、無機質ボード2A−1、2A−2と鋼板10Aを用いて端縁部収納用凹部4を形成し、傾斜の下側すなわち水下側に敷設される防水シート3−1の端縁部5−1を端縁部収納用凹部4に収納し、水上側の防水シート3−2の端縁部5−2を重ね接合している。このように、傾斜層を設ける場合には、雨水の流れ方向を考慮して、重ね合わせ部6の下側の防水シート3−1を、水下側に敷設することが好ましい。これにより防水の安全性をより向上することができる。そして前記端縁部5−2と防水シート3−1との接合部を両方に掛るように液シーラー(図示せず)で端末処理を施した。
すなわち勾配を設けて雨水の排水を行う場合においても、本発明の接合構造によれば、防水シートの重ね合わせ部6で略平坦であるために、この部分での雨水の滞留なく排水される。なお、図6では説明の都合から勾配を大きく図示しているが、実際の施工においてその勾配は1/90であった。さらに、傾斜層12は断熱ボード以外の部材で構成しても構わないが、一定の勾配を有する部材を製造しやすいことから断熱ボードで傾斜層12を形成することが好ましい。
また、図6の接合構造で施工した場合の実施形態の平面図を図7に示した。これにより本発明の実施形態ではその防水シートの重ね代は50mmであるが、図8のように増張りシート16を必須とした従来技術では、接合箇所が2つとなるために重ね代は最低でも80mmである。これは前述の通り、公共建築工事標準仕様により重ね代は40mm以上であるためであり、一般に安全に水密性を確保するためには100mm以上とすることを要する。したがって、本発明の実施形態では、重ね代が狭く美観的に優れるとともに、雨水の滞留をより起こしにくくなっている。
図8の従来技術によると、下地の上に増張りシート16の厚み分の掘り込み部を形成し、この掘り込み部に増張りシート16を接合することを要する。そのため、施工の際には増張りシート16を施工現場において掘り込み部に合わせ切断するか、もしくはこれを別途工場などで製造しておく必要がある。さらに、掘り込み部への接着剤等で接合した上で、隣接する2枚の防水シート3を増張りシート16に接合する。この様に、図8の従来技術では、増張りシートを含む防水シートの接合を3回行う必要がある。これに対し、本発明の接合構造によれば、防水シートの接合は端縁部5−1の端縁収納用凹部4の底部4−1との接合と端縁部5−1と端縁部5−2との接合の2回であって、工数削減、施工時間の短縮を図ることができる。
その他の実施形態として、図10に示すような、端縁部収納用凹部4の底部4−1を形成する部材として、鋼鈑を略コの字に成型した部材21−1を使用することも出来る。また、部材21−1の開口部側に抑え部22を設けた21−2や、折り曲げ部20をハの字型に下側が上側より広くなる形態の部材21−3を使用することもできる。また、部材21−1は上端面に、部材21−2、部材22−3は抑え部にビス用の貫通穴17を形成することが好ましい。また、21−1〜21−3の上面には熱可塑性樹脂被覆層18を有している。
この部材21−2を使用した実施形態を図11に示した。これによると、下地に、断熱ボード11を敷設し、その上に部材22−2を載せ、ビス穴17にビス8で断熱ボードと共に下地に固定し、その部材21−2の両端に無機質ボード2A−1、2A−2を敷設し、固定用ディスク7(図示せず)とビス8で固定して、端縁収納用凹部4を形成した。防水シート3−1を無機質ボード2A−1に接着剤により接合し、その端縁部5−1を熱風溶接機で部材21−2の熱可塑性樹脂被覆層18に溶融接合することで、端縁収納用凹部4に収め、防水シート3−2を無機質ボード2A−2に接着剤により接合し、その端縁部5−2を端縁部5−1に重ね合わせ、熱風溶接機で水密に接合した。
また、下地に断熱ボードのような圧縮に対して沈み込み易い部材を敷設し、端縁部収納用凹部4を形成し、底部4−1をビス8によって下地に固定する際に、断熱ボード等に底部4−1が沈み込み易くなる場合がある。特に底部4−1を、金属板、無機質ボード、木質板等の硬く、下面に凹凸がある部材で構成しこれを断熱ボード等に設置した場合には、底部4−1が断熱ボード等に沈み込み易くなる。この様な場合には、断熱ボード等に平坦な中間材を敷設し、その上に前記凹凸がある部材を設置することで、断熱ボード等の沈み込みを防ぐことができる。
この様な断熱ボード等の沈み込みを防止する中間材としては、平坦で圧縮に強い材料であれば用いることが出来るが、適度な柔軟性を有することで、前記凹凸がある部材が中間材に十分に保持固定されるために好ましい。具体的には、上記圧縮試験において、1mm圧縮した時の応力が5N〜100Nが好ましく、10N〜80Nがさらに好ましい。
上記の中間材としては、樹脂製シートや発泡シート、プラスチック製段ボール、紙製段ボール等を使用することができる。
このような実施形態としては、図5、図6のように下地に断熱ボード11、11−1を敷設し、その上に中間材、下面に凹凸がある部材を下から順に敷設しビスにより固定することで、端縁部収納用凹部4の底部4−1を形成する形態が例示できる。
さらに具体的な好ましい実施形態4を図12に示した。これによると、下地1に勾配を有する断熱ボード11−1を用いて傾斜層12を設け、断熱ボード11−1の上に中間材23とその両側に無機質ボード2A−1、2A−2とを敷設し、中間材23の上に嵌脱自在な鋼鈑101を用いて端縁部収納用凹部4を形成し、傾斜の下側すなわち水下側に敷設される防水シート3−1の端縁部5−1を端縁部収納用凹部4に収納し、水上側の防水シート3−2の端縁部5−2を重ね接合されている。そして前記端縁部5−2と防水シート3−1との接合部を両方に掛るように液シーラー(図示せず)で端末処理を施した。
ここで、底部4−1を形成する部材が樹脂被覆金属鋼板等の熱可塑性樹脂被覆層を有する場合であって、その熱可塑性樹脂被覆層を断熱ボードと接するように配する場合には、熱可塑性樹脂被覆層の低分子量成分が断熱材に移行し、断熱材が溶解する場合がある。具体的には、熱可塑性樹脂被覆層が可塑剤を含有した軟質ポリ塩化ビル樹脂層である場合に、可塑剤成分が断熱ボードに移行するおそれがある。このような場合には、断熱ボードと樹脂被覆金属鋼板との間に隔離層を設けることで可塑剤の移行を防止することが出来る。
前記隔離層には、金属板、木質板、樹脂板、樹脂シートをその移行成分に合わせて適宜選択できる。上記のような移行成分が、可塑剤である場合には、金属板や金属薄膜、ポリオレフィン製樹脂シート等が好適に用いられ、施工現場での加工のしやすさから、ポリオレフィン製樹脂シートがより好適に用いられる。さらに、端縁部収納用凹部4の底部4−1をビスにより固定する場合には、上述したように、ビスの打ち込みの際に前記底部4−1が食い込みによってひずむおそれがあり、このような場合には、前記オレフィン製樹脂シートは、圧縮試験において、1mm圧縮した時の応力が20N以上であることが好ましく、35N以上であることがより好ましい。
本発明で用いられる防水シートは、塩化ビニル系防水シート、オレフィン系防水シート、アクリル系防水シート、ゴム系防水シート等が使用できる。塩化ビニル系防水シートが、施工性、シート同士の溶着性、防水シート固定金具との密着性の点から好ましい。さらに本発明に係る接合構造によれば、端縁部収納用凹部4に防水シート3−1の端縁部5−1を収めるために、防水シートは柔軟性を有することが好ましく、この点からも塩化ビニル系防水シートを使用することが好適である。
防水シートの厚さとしては、0.5〜5.0mmのものが使用でき、防水性能の安全性、端縁部収納用凹部4への収まり性を考慮すると1.0〜2.5mmが好ましい。すなわち厚みが厚いと防水シートの経年劣化によっても水密性を保て、防水性能の安全性が高くなるが、端縁部収納用凹部4の底面部4−1、側面部4−2に密着状態で収め難くなる場合があり、防水性能の安全性と端縁部収納用凹部4への収まり性を両立させるとの点から上記範囲とすることがより好ましい。
また本発明の防水シートは、単層でも複層でも使用することが出来る。また、複層の場合は、基材を積層することもできる。基材としては、木綿、麻等の天然繊維、ポリエステル、ポリエチレン、アクリル等の合成繊維、ガラス繊維の織布や不織布を用いることができる。中でも、寸法安定性、加工性の点から、ポリエステル不織布、ガラス不織布、ガラス織布が好ましい。
防水シートが複層である場合には、それぞれの層を別の組成から成る層で構成してもよいし、同一の組成で構成してもよい。また、前記基材は、最下層に積層しても、各層の間に積層することもできる。
防水シート同士を接合する際に、溶剤溶着や熱風溶接が出来るという点から、最上層および最下層が熱可塑性樹脂層で構成されていることが好ましい。例えば、塩化ビニル系防水シートの場合、最上層及び最下層がポリ塩化ビニル樹脂製であってその中間に前記基材を積層したものを好適に使用できる。
下地は、特に制限なく使用できるが、ビル、マンション、戸建住宅等建築物の屋上、屋根、ベランダ、テラス等のコンクリート下地、軽量発泡コンクリート下地、金属下地、木質下地などに適用される。
無機質ボードとしては、石膏ボード、セメントボード、ケイ酸カルシウムボード、樹脂強化板などが挙げられるが、反りが少なく寸法安定性に優れるために、無機質材料を熱硬化性樹脂で固化強化した樹脂強化板がより好ましい。
本発明で用いられる断熱ボードは、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の断熱材が使用でき、強度を考慮するとクラフト紙やアルミ箔が両面に積層された断熱材は好ましい。断熱材の厚さは20、25、50、75、100mmなどがあり、各仕様に合わせて設定する。タテ、ヨコの寸法は規格品(910mm×1820mm、910mm×910mm、30mm×50mmなど)を施工現場に合わせて裁断し使用する。断熱材の厚さは各仕様に合わせて設定するが、厚い断熱材を必要とするときは、搬入、孔開け時の手間、ソリの問題などを考慮すると、厚さの厚い断熱材を1枚で使用するより、厚さの薄いものを複数枚重ねて使用することが好ましい。また、勾配をとる必要がある場合には、勾配のある断熱ボードを使用することが出来る。
本発明において使用される、金属製の固定ディスクや端縁収納用凹部4の底部4−1を構成する鋼鈑の材質としては、ステンレス板や、亜鉛・アルミニウム・マグネシウムメッキまたは亜鉛メッキ等の防錆処理が施された鋼板など、多湿状態でも錆びにくい鋼鈑が好適に使用される。厚みとしては、0.6〜1.5mm程度で、形状は正方形または長方形をした矩形状のプレート状や、円形または楕円形状のディスク状など任意であり、大きさは1辺または外径が50〜100mm程度に形成される。
また、前記底部4−1を構成する鋼鈑は、端縁収納用凹部4の形状に応じたものが好ましく、帯状の鋼鈑をその端縁収納用凹部4の長手方向の長さに切断して使用することが出来る。幅が40mm〜60mm程度で、長さを任意に形成される
また、その鋼鈑の少なくとも上面に熱可塑性樹脂被覆層を積層一体化して構成されることが好ましく、これにより防水シートとの熱風溶接、溶剤溶着による接合が可能となる。さらに、誘導加熱工法によって防水シートと上記鋼鈑との接合を行う場合には、その鋼鈑の少なくとも上面に熱溶着層を積層一体化することができる。この熱溶着層は、熱可塑性樹脂やホットメルト接着剤等があり、ホットメルト接着剤としては、ポリエステル系、ポリアミド系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系のホットメルト接着剤等が挙げられる。
本発明で使用するビスは、材質としては、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等の鋼材などが使用できる。また、防水シート固定ディスク等の上面から頭部がはみ出ないように、固定ビスの頭部形状は皿、平、なべがよく、ドライバーやレンチで掛ける座面の窪み形状は十字穴、六角穴、四角穴が好ましい。
下地に複数の防水シートを敷設する場合に、本発明の接合構造により隣接する防水シートを上下に重ね合わせて接合しても、実質的に段差がない平坦な接合部が得られ、雨水の排水を妨げず、また、美観的にも優れているために、ビル、マンション、戸建住宅等建築物の屋上、屋根、ベランダ、テラス等に敷設される防水シートの接合構造として広く利用することができる。
1 下地
2 端縁収納用凹部を形成する部材
2A 無機質ボード
3 防水シート
3−1 下側に位置する防水シート
3−2 上側に位置する防水シート
4 端縁収納用凹部
4−1 端縁収納用凹部の底部
4−2 端縁収納用凹部の側面部
5 防水シートの端縁部
5−1 下側に位置する防水シートの端縁部
5−2 上側に位置する防水シートの端縁部
6 重ね合わせ部
7 固定用ディスク
7A 熱可塑性樹脂被覆金属ディスク
8 ビス
10 端縁収納用凹部の底部を形成する複数部材
10A 端縁収納用凹部の底部を形成する熱可塑性樹脂被覆層を有する鋼鈑
101 端縁収納用凹部の底部を形成する嵌脱自在な鋼鈑
11 断熱ボード
11−1 勾配を有する断熱ボード
13 排水管
14 谷部
15 雨水の流れ方向(傾斜の方向)
16 従来技術における増張りシート
17 ビス穴
18 熱可塑性樹脂被覆層
19 略長方形板状本体
20 折り曲げ部
21−1〜21−3 端縁収納用凹部の底部を形成する鋼鈑の成型体
22 抑え部
23 中間材

Claims (5)

  1. 下地の上に複数の防水シートを敷設固定した防水シートの接合構造であって、
    前記下地の上に形成した凹部と、
    前記凹部に一の防水シートの端縁部を収め、その上にそれと隣接した他の防水シートの端縁部とを重ねて接合した重ね合わせ部とを有することを特徴とする
    重ね合わせ部の段差を解消した防水シート接合構造。
  2. 前記凹部の底部が上下に嵌脱自在な部材により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の重ね合わせ部の段差を解消した防水シート接合構造。
  3. 前記凹部の底部が、前記一の防水シートの端縁部との接合面に熱可塑性樹脂被覆層を有する部材により形成されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の重ね合わせ部の段差を解消した防水シート接合構造。
  4. 前記下地の上に傾斜層を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重ね合わせ部の段差を解消した防水シート接合構造。
  5. 下地の上に凹部を形成し、
    前記凹部に一の防水シートの端縁部を収め、その上にそれと隣接した他の防水シートの端縁部とを重ねて接合し、
    隣接する防水シートの重ね合わせ部の段差を解消した防水シート接合工法。
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