JP2011148644A - 水素貯蔵材料の水素化方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】MgB2に回転による加速度が90G以上の高エネルギー密度のボールミルによる前処理を施す工程、および得られた前処理MgB2とLiHとを含む混合材料を水素化する工程を含む水素貯蔵材料の水素化方法。
【選択図】なし
Description
また、近年、錯体水素化物によって従来の水素貯蔵合金の2〜3倍の水素を貯蔵し得ることが見出されている。
例えば、非特許文献1には、LiBH4を例えば水素圧1MPa、873K(600℃)の条件で加熱して分解し水素を放出させる脱水素化反応、およびBとLiHとを例えば水素圧35MPa、873Kの条件で加熱してLiBH4を生成させる水素化反応について記載されている。そして、前記の脱水素化反応とその逆反応である水素化反応として以下の反応式が示されそして脱水素化前と脱水素化後の粉末のX線回折パーターンが図示されている。
LiBH4→LiH+B+(3/2)H2
LiH+B+(3/2)H2→LiBH4
2LiH+MgB2+4H2→2LiBH4+MgH2
2NaH+MgB2+4H2→2NaBH4+MgH2
CaH2+MgB2+4H2→Ca(BH4)2+MgH2
従って、本発明の目的は、LiHとMgB2とからより低い水素圧且つより低い温度で水素化して水素を放出可能な水素貯蔵材料を得る水素化方法を提供することである。
本発明において、水素化工程における水素圧は加熱前の室温(25℃)における圧力を意味する。
前記の前処理においては、例えば窒素、Ar、He、Neおよびそれらの組み合わせから選ばれる1つのガス雰囲気下に、通常大気圧にて0.1時間以上、例えば0.1〜24時間の範囲、例えば1〜12時間の範囲の時間ボールミルによる回転加速度が90G以上の高エネルギー密度のボールミルによる粉砕を施し得る。また、前記の前処理は、外部から加熱することなく、ボールミル、例えば遊星型ボールミルを用いて、ボールミル内にMgB2とステンレスボール又はセラミックボールなどの高剛性ボールを入れて回転による加速度が90G以上、例えば90〜200Gの高エネルギー密度のボールミルによる粉砕前処理を好適に施し得る。
前記の水素化は、例えば前記の前処理を施したMgB2とLiHとを1:2のモル比で任意の混合処理、例えばボールミル中で例えば窒素、Ar、He、Neおよびそれらの組み合わせから選ばれる1つのガス雰囲気下に、通常大気圧にて0.1時間以上、例えば0.1〜24時間の範囲の時間混合処理を行った後、混合物を任意の容器中、例えば耐圧容器中で0.1〜5MPaの範囲、例えば1〜3MPa、特に1〜1.5MPaの範囲の水素圧、400℃未満の温度、例えば300〜375℃の範囲の温度で好適に行い得る。
2LiH+MgB2+4H2→2LiBH4+MgH2
この水素化による工程でMgH2およびLiBH4が生成していることは、後述の実施例の欄に詳述される水素化による生成物についてのXRD分析結果を示すグラフにおいて、MgH2に基く2θ=28(deg)に明確なピークおよびLiBH4に基くピークが見られることによって確認され得る。
そして、本発明においてLiHとともに混合して水素化に用いるMgB2の結晶子は、サイズが20nm以下、例えば1〜20nmであり、歪が0.25%以上、例えば0.25〜1.5%であり得る。
前記の触媒としては、Mn、Fe、Co、Ni、Pt、Pd、Rh、Li、Na、Mg、K、Ir、Nd、La、Ca、V、Ti、Cr、Cu、Zn、Al、Si、Ru、Mo、W、Ta、Zr、Hf、Agから選ばれた1種もしくは2種以上の金属またはその化合物、例えばハロゲン化物、特に塩化物であることが好ましい。触媒は単独で用いてもよく又は担体に担持させて用いてもよい。前記触媒をMgB2およびLiHに加えることによって水素化反応および/又は脱水素反応を促進させ得る。前記触媒の量は水素貯蔵材料中のLiおよびMgの合計および/又は両成分のいずれかに対して0.01〜10モル%、特に0.1〜10モル%であることが好ましい。
1.水素放出量(%)
測定法:マス分析により真空中で加熱することにより水素を脱離させ、その発生量を測定した。
水素放出量は、水素貯蔵材料に対する放出された水素発生量の割合(質量%)を示す。
2.水素化率(%)
LiBH4、MgH2およびTiCl3(2:1:0.03、モル比)からなる水素貯蔵材料の水素放出量に対する割合(%)を示す。
3.反応容器
試験に使用した反応容器は、ステンレス製円筒型耐圧容器(21mL)である。
4.MgB2結晶子サイズの測定
結晶子サイズ測定法:シェラーの式により算出
シェラーの式 ε=Kλ/βcosθに代入することで算出
ε:結晶子サイズ、K:シェラー定数、λ:波長、β:XRDピークの半値 幅、θ:回折角
測定装置:粉末X線回折(XRD)RIGAKU社製RINT−TTR3
5.MgB2結晶子の歪(%)の測定
歪測定法:ホールの式により算出
ホールの式 βcosθ=2ηsinθ+λ/εに代入することで算出
η:歪、ε:結晶子サイズ、β:XRDピークの半値幅
θ:回折角、λ:波長
測定装置:粉末X線回折(XRD)RIGAKU社製RINT−TTR3
LiBH4およびMgH2と触媒TiCl3とを組成比2:1:0.03(モル比)で混合して水素貯蔵材料を調製し、水素放出量を測定した。
その結果、水素放出量は4.24wt%であった。
以下の各例において、水素化の割合とは、この4.24wt%に対する割合(%)を意味する。
Ar雰囲気のグローブボックス中(O2濃度:1ppm以下)にてMgB2を0.5g秤量した。ボールミル容器へ秤量したMgB2と直径3.96mmステンレスボールを20個充填した。遊星型ボールミル粉砕機(フリッチュ社製:premium line P−7型)を使用し、Ar雰囲気中、回転数1000rpm(90G)にて1時間MgB2の前処理を行った。
前処理したMgB2とLiHとTiCl3(触媒)とを、2:1:0.03の割合(モル比)で合計0.5gとなるように秤量した。ボールミル容器へ秤量した試料と直径3.96mmステンレスボール20個を充填した。Ar雰囲気中、回転数400rpm(40G)にて1時間ボールミル混合処理を行った。
混合後の試料をステンレス製円筒型耐圧容器に0.2g充填し、1MPa水素中、363℃にて100時間水素化処理を行った。
得られた水素貯蔵材料について、XRD分析にて水素化確認のための生成物同定およびTPD−MS分析により水素放出量を求めた。
その結果、水素放出量は2.53wt%であり、水素化率は59%であった。
得られた結果を他の結果とまとめて図1〜図5に示す。
前処理の時間を1時間から3時間に変えた他は実施例1と同様にして、MgB2の前処理を行った。
この前処理MgB2を用いた他は実施例1と同様にして、水素化処理を行った。
得られた水素貯蔵材料について測定を行ったところ、水素放出量は3.24wt%であり、水素化率は76%であった。
XRD分析結果、水素化率および水素放出量を他の結果とまとめて図1〜図5に示す。
前処理の時間を1時間から6時間に変えた他は実施例1と同様にして、MgB2の前処理を行った。
この前処理MgB2を用いた他は実施例1と同様にして、水素化処理を行った。
得られた水素貯蔵材料について測定を行ったところ、水素放出量は3.42wt%であり、水素化の割合は80%であった。
XRD分析結果、水素化率および水素放出量を他の結果とまとめて図1〜図5に示す。
前処理を行わないでMgB2とLiHとTiCl3とを同じ回転数(400rpm、40G)でボールミル混合処理を1時間行った後、水素化処理を行った他は実施例1と同様にして、水素貯蔵材料を得た。
得られた水素貯蔵材料について測定を行ったところ、水素放出量は1.25wt%であり、水素化の割合は29%であった。
得られた結果を他の結果とまとめて図1〜図5に示す。
前処理を行わないでMgB2とLiHとTiCl3とを同じ回転数(400rpm、40G)でボールミル混合処理を24時間行った後、水素化処理を行った他は実施例1と同様にして、水素貯蔵材料を得た。
得られた水素貯蔵材料について測定を行ったところ、水素放出量は0.92wt%であり、水素化率は21%であった。
得られた結果を他の結果とまとめて図2〜図5に示す。
前処理を行わないでMgB2およびLiHのみを同じ回転数(400rpm、40G)でボールミル混合処理を1時間行った後、水素化処理を行った他は実施例1と同様にして、水素貯蔵材料を得た。
得られた水素貯蔵材料について測定を行ったところ、水素放出量は1.10wt%であり、水素化率は26%であった。
得られた結果を他の結果とまとめて図2、図4および図5に示す。
LiBH4の水素放出(条件:2℃/分にて室温から450℃まで昇温)した後の反応:LiBH4→LiH+B+3/2H2の生成物(LiH+B)を1時間同じ回転数(400rpm、40G)でボールミル混合処理を行った後、水素化処理を行った他は実施例1と同様にして水素貯蔵材料を得た。得られた水素貯蔵材料について測定を行ったところ、水素放出量は0wt%であり、水素化率は0%であった。
LiBH4とMgH2との2:1の混合物(触媒なし)から水素放出(条件:2℃/分にて室温から450℃まで昇温)した後の反応:2LiBH4+MgH2+→2LiH+Mg+B+4H2の生成物(2LiH+Mg+2B)を1時間同じ回転数(400rpm、40G)でボールミル混合処理を行った後、水素化処理を行った他は実施例1と同様にして水素貯蔵材料を得た。得られた水素貯蔵材料について測定を行ったところ、水素放出量は0wt%であり、水素化率は0%であった。
また、図2から、ボールミルによる処理の程度に関して、ボールミル加速度が40Gではボールミル処理による効果が得られていないが、90Gでは効果が得られていることがわかる。
さらに、図5から、各比較例において水素化に用いたMgB2の結晶子には歪がみ入っていないことがわかる。つまり、MgB2の結晶子に歪が入ることによりLiHとの混合物を水素化後の水素貯蔵材料の水素放出量が増加していることがわかる。
Claims (3)
- MgB2に回転による加速度が90G以上の高エネルギー密度のボールミルによる前処理を施す工程、および得られた前処理MgB2とLiHとを含む混合材料を水素化する工程を含む水素貯蔵材料の水素化方法。
- 前記処理を窒素、Ar、He、Neおよびそれらの組み合わせから選ばれる1つのガス雰囲気下に0.1時間以上施す請求項1に記載の方法。
- 前記前処理を外部から加熱することなく施す請求項1又は2に記載の方法。
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