JP2011147501A - 穿刺針刺入装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬さの異なる生体組織が層をなす部位に穿刺針を刺入する際、術者が穿刺針終端が目的とする生体組織に到達したことを正確に感知でき、安全に刺入できる穿刺針挿入装置を提供する。
【解決手段】穿刺針刺入装置3は、独立な内筒部1と外筒部2から構成され、外筒部2は内筒部1の先端を除く全体を覆い、内筒部1に負荷される切削力は、内筒部刺入力測定装置7で測定される。また術者4は、穿刺針刺入装置3を押し、その刺入操作力は穿刺針刺入力測定装置8にて測定される。穿刺針刺入装置3は、穿刺針刺入補助装置6によっても押され、内筒部刺入力と穿刺針刺入操作力が等しくなるようにフィードバック制御され、内筒部刺入力と外筒部に作用する摩擦力に抗して負荷される外筒部刺入力とが分離され、術者は内筒部1に負荷される切削力を容易に知覚できる。その結果、穿刺針先端が到達している生体組織の硬さを術者は容易に知覚できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、生検、薬液注入、内視鏡手術におけるトロカール穿刺、その他針状器具を生体組織に刺入する穿刺針刺入装置に関するものである。
穿刺針を用いた医療行為は、薬液を投与する注射や病変組織のサンプルをとる生検、血液を採取する採血、内視鏡下手術における手術器具を導入する孔を開けるトロカール穿刺など様々である。穿刺による正常組織への損傷は穿刺経路に限定されるため、非常に低侵襲な外科的治療診断行為であり、しかも、穿刺針しか使用しないので簡便で手術費用を低減することができる。
しかし、目的の生体組織に穿刺針を安全かつ正確に到達させるには多くの困難が伴い、その一つとして、穿刺針の先端が目的の生体組織に正しく到達できたかの判定問題が挙げられる。
硬膜外麻酔を例に取れば、皮膚、筋肉、靭帯などの幾層もの生体組織を通過して、硬膜の手前で刺入を止めなければならない。このとき、硬さの異なる生体組織に到達する度に、穿刺針先端に負荷される切削力が変わるため、熟練した術者はこれを頼りに穿刺針先端がどの生体組織に到達しているかを判定している。しかし、穿刺が深くなっていくにつれて穿刺針側面と生体組織との間に生ずる摩擦力が増大するため、穿刺針先端に負荷される切削力の変化を穿刺針終端で知覚するのが難しくなる。
これに対して、下記特許文献1では、中空または中実の針部と、その側面を全部又は一部を覆い、針部と独立に運動可能な外筒部を備えた二重針のそれぞれに荷重計を設ける穿刺針刺入装置が提案されている。この穿刺針刺入装置によって穿刺針先端に負荷される切削力は中心にある針部に負荷され、また、穿刺針側面と生体組織との間に生ずる摩擦力は外筒部に負荷されるため、針部に備えられた荷重計の値の変化により生体組織の貫通を判定することが可能になる。
特開2004−81852号公報
しかし、上記特許文献1では、荷重計により切削力を計測し、その変化を閾値による状態判定などによる信号処理により生体組織の貫通を判定しているが、生体組織の硬さは患者によって異なるため一律なアルゴリズムとパラメータで穿刺状態を判定することは困難である。また、一般に穿刺針を用いた医療行為では、熟練の術者は穿刺針を穿刺する際の様々な切削力の変化により、生体組織の貫通のみならず異物との接触などを知覚して、穿刺針の微妙な操作を行っていることから、切削力の変化を信号処理して一律な判定をしていては、切削力の変化のもつ様々な情報が術者に伝わらないおそれがあった。
そこで、本発明の目的は、硬さの異なる生体組織が層をなす部位に術者が穿刺針を刺入する際、穿刺針先端が到達している生体組織を知るのに有用な、穿刺針先端に負荷される切削力と、穿刺針の側面と生体組織との間に生ずる摩擦力とを分離することにより、術者が、穿刺針終端が目的とする生体組織に到達したことを正確に感知でき、術者の技能の差にかかわらず、安全に目的とする生体組織までの刺入を可能にするとともに、ロボットハンド等の遠隔操作により穿刺針を操作させる場合でも、穿刺針終端が目的とする生体組織に到達した情報を、ロボットハンド制御システムに正確に伝達できるようにすることにある。
上記の課題を達成するため、本発明の穿刺針刺入装置においては、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、
(1)先端に穿刺針を備えた内筒部と、前記内筒部の側面の少なくとも一部を覆い、前記内筒部と独立に運動可能な外筒部を備えた穿刺針を刺入する穿刺針刺入装置であって、前記穿刺針刺入装置を生体内に刺入する際、前記内筒部に作用する切削力に抗して負荷される内筒部刺入力と、前記外筒部に作用する摩擦力に抗して負荷される外筒部刺入力とを分離する分離手段を設けた。
(2)上記の穿刺針刺入装置において、前記内筒部刺入力に相当する力が、術者あるいはロボットアームからの刺入操作力により付与され、前記外筒部刺入力に相当する力が、前記分離手段からの刺入駆動力により付与されることにより、前記内筒部刺入力と前記外筒部刺入力とが分離されるようにした。
(3)上記の穿刺針刺入装置において、前記内筒部刺入力と、前記刺入操作力とがほぼ近似した値になるように、前記分離手段が前記内筒部と前記外筒部の少なくとも一方に前記刺入駆動力を付与するようにした。
(4)上記の穿刺針刺入装置において、前記刺入の際に前記内筒部に負荷される内筒部刺入力を測定する内筒部刺入力測定装置と、前記刺入操作力を測定する刺入操作力測定装置とを備え、前記内筒部刺入力と前記刺入操作力とがほぼ近似した値になるように、前記刺入駆動力をフィードバック制御するようにした。
(5)上記の穿刺針刺入装置において、前記刺入操作力と前記刺入駆動力が前記外筒部に付与されるようにした。
(6)上記の穿刺針刺入装置において、前記外筒部に前記刺入操作力測定装置を介して前記刺入操作力を付与し、前記外筒部と前記内筒部の間に前記内筒部刺入力測定装置を設けるようにした。
(7)上記の穿刺針刺入装置において、前記外筒部刺入力と、前記刺入駆動力とがほぼ近似した値になるように、前記分離手段が前記内筒部と前記外筒部の少なくとも一方に前記刺入駆動力を付与するようにした。
(8)上記の穿刺針刺入装置において、前記刺入の際に前記外筒部に負荷される外筒部刺入力を測定する外筒部刺入力測定装置と、前記刺入駆動力を測定する刺入駆動力測定装置とを備え、前記外筒部刺入力と前記刺入駆動力とがほぼ近似した値になるように、前記刺入駆動力をフィードバック制御するようにした。
(9)上記の穿刺針刺入装置において、前記刺入操作力と前記刺入駆動力が前記内筒部に付与されるようにした。
(10)上記の穿刺針刺入装置において、前記内筒部に前記刺入駆動力測定装置を介して前記刺入駆動力を付与し、前記内筒部と前記外筒部の間に前記外筒部刺入力測定装置を設けた。
(11)上記の穿刺針刺入装置において、前記刺入操作力が前記内筒部に付与され、前記分離手段が付与する刺入駆動力が前記外筒部に付与され、前記内筒部と前記外筒部の間に生ずる内筒部外筒部間刺入力がほぼゼロになるようにした。
(12)上記の穿刺針刺入装置において、前記刺入の際に前記内筒部と前記外筒部の間に生ずる前記内筒部外筒部間刺入力を測定する内筒部外筒部間刺入力測定装置を備え、前記内筒部外筒部間刺入力がほぼゼロになるように、前記刺入駆動力をフィードバック制御するようにした。
(13)上記の穿刺針刺入装置において、前記内筒部と前記外筒部の間に前記内筒部外筒部間刺入力測定装置を設けた。
(14)上記の穿刺針刺入装置において、前記刺入操作力が前記外筒部に付与され、前記分離手段が付与する刺入駆動力が前記内筒部に付与され、前記内筒部と前記外筒部の間に生ずる前記内筒部外筒部間刺入力が前記刺入操作力と前記刺入駆動力との差にほぼ近似した値になるようにした。
(15)上記の穿刺針刺入装置において、前記刺入の際に前記刺入駆動力を測定する刺入駆動力測定装置と、前記刺入操作力を測定する刺入操作力測定装置と、前記内筒部外筒部間刺入力を測定する内筒部外筒部間刺入力測定装置を備え、前記内筒部外筒部間刺入力が前記刺入操作力と前記刺入駆動力との差にほぼ近似した値になるように、前記刺入駆動力をフィードバック制御するようにした。
(16)上記の穿刺針刺入装置において、前記外筒部に前記刺入操作力測定装置を介して前記刺入操作力を付与し、前記内筒部に前記刺入駆動力測定装置を介して前記刺入駆動力を付与し、前記内筒部と前記外筒部の間に前記内筒部外筒部間刺入力測定装置を設けた。
(17)上記の穿刺針刺入装置において、前記刺入操作力が前記内筒部に付与され、前記刺入駆動力が前記外筒部に付与され、前記内筒部と前記外筒部の間に生ずる内筒部外筒部間相対的位置がほぼ一定を保つようにした。
(18)上記の穿刺針刺入装置において、前記内筒部と前記外筒部の間に生ずる内筒部外筒部間相対的位置を測定する内筒部外筒部相対的位置検出装置を備え、検出された相対的位置が一定を保つよう、フィードバック制御するようにした。
(19)上記の穿刺針刺入装置において、前記内筒部と前記外筒部の相対的位置に比例した前記刺入駆動力を発生させるようにした。
(20)上記の穿刺針刺入装置において、前記内筒部と前記外筒部間の相対的位置に対応して移動する流体圧制御バルブを備え、該流体圧制御バルブにより、前記外筒部を刺入方向あるいは反刺入方向に切り換えて駆動する流体圧アクチュエータとを有するようにした。
(21)上記の穿刺針刺入装置において、前記内筒部と前記外筒部間の相対的位置に比例して正負の電圧を生ずる電気素子と、前記電圧に比例して刺入の正方向と負方向に駆動する電気アクチュエータを有するようにした。
(22)上記の穿刺針刺入装置において、前記刺入操作力が力覚提示装置に付与されるようにした。
(23)上記の穿刺針刺入装置において、該穿刺針刺入装置は、前記内筒部を術者の指により操作し、前記外筒部を術者の手のひらで握る形式とした。
本発明によれば、先端に穿刺針を備えた内筒部と、内筒部の側面の少なくとも一部を覆い、内筒部と独立に運動可能な外筒部を備えた穿刺針刺入装置を生体内に刺入する際、内筒部に負荷される刺入力と、外筒部に負荷される摩擦力とが分離されることから、切削力を正確に知覚あるいは検出することが可能になる。
特に、内筒部に負荷される刺入力と、穿刺針刺入装置に付与される刺入操作力とがほぼ近似した値になるように、外筒部に駆動力を付与すれば、外筒部に負荷される摩擦力が完全に分離され、刺入操作する際、内筒部に負荷される刺入力をほぼそのまま知覚あるいは検出することが可能になり、穿刺針先端が到達している生体組織の硬さを容易に知覚あるいは検出することが可能になる。また、目的とする生体組織に到達するまでに、硬さの異なる生体組織が層をなす部位に穿刺針を穿刺する場合であっても、内筒部に負荷される刺入力をほぼそのまま知覚あるいは検出できるので、何層目を通過しているかの判定が容易になり、正確に目的の生体組織に到達することができる。
第1実施例の全体構成を説明する図 第1実施例の作用を説明するブロック図 第2実施例の全体構成を説明する図 第2実施例の作用を説明するブロック図 第3実施例の全体構成を説明する図 第3実施例の作用を説明するブロック図 第4実施例の全体構成を説明する図 第4実施例の作用を説明するブロック図 第5実施例の全体構成を説明する図 第5実施例の作用を説明するブロック図 第6実施例の全体構成を説明する図 第6実施例のバルブの構成を説明する図 第7実施例の全体構成を説明する図 第7実施例の作用を説明するブロック図 第8実施例の全体構成を説明する図 第9実施例の全体構成を説明する図 第10実施例の全体構成を説明する図 第11実施例の全体構成を説明する図
この発明に係る穿刺針装置の具体例を、以下の第1実施例〜第11実施例を用いて説明する。
なお、第1実施例、第8実施例〜第10実施例は特に上記本発明が講じた技術的手段(1)〜(6)を具体化するもので、同様に第2実施例は特に技術的手段(7)〜(10)を、第3実施例は特に技術的手段(11)〜(13)を、第4実施例は特に技術的手段(14)〜(16)を、第5実施例は特に技術的手段(17)〜(18)を、第6実施例は特に技術的手段(19)、(20)を、第7実施例は特に技術的手段(22)を、第11実施例は特に技術的手段(23)を具体化するものである。
各実施例で使用する穿刺針刺入装置は、穿刺針の刺入方向の駆動力と位置決めを補助する機能を備えたものを前提としており、刺入方向以外の駆動力やモーメント、刺入方向以外の位置決め等は、適宜周知の技術を採用すればよいので、各実施例とも刺入方向の駆動力、位置決めに特化して説明する。各実施例では、医師等の術者が穿刺針装置を操作する場合について説明しているが、ロボットハンド等の遠隔操作により操作してもよいことは明らかである。
(第1実施例)
図1は第1実施例の穿刺針刺入装置3が、術者4と穿刺針刺入補助装置6により生体組織5に刺入されている様子を示す。図2は第1実施例の作用をブロック図で示す。
穿刺針刺入装置3は内筒部1と外筒部2から構成され、内筒部1は先端に穿刺針を備え、外筒部2により穿刺針先端を除く全体を覆われている。内筒部1と外筒部2とは互いに固着されておらず、独立に運動可能となっており、内筒部1の終端は内筒部刺入力測定装置7を介して外筒部2の終端に連結されている。
穿刺針刺入補助装置6は外筒部2の終端に連結され、穿刺針刺入装置3の刺入方向に刺入駆動力を発生する直動アクチュエータである。術者4はグリップ等により穿刺針刺入装置3に刺入操作力を付与し、生体組織5内に刺入させたうえで、内筒部1先端の穿刺針を目的とする生体組織に到達させる。その際の刺入操作力は、刺入操作力測定装置8を介して外筒部2の終端に伝達される。
穿刺針刺入補助装置6は、図2に示されるコンピュータ等を用いた制御系により、内筒部刺入力測定装置7の測定値と、刺入操作力測定装置8の測定値とに基づいて、内筒部刺入力と刺入操作力が等しくあるいは近い値になるように、穿刺針刺入補助装置6の刺入駆動力をフィードバック制御している。
(作用)
前記制御系の作用について説明する。
穿刺針刺入装置3の先端は生体組織5を切り開いているので、その切削力は内筒部1に負荷され、内筒部刺入力測定装置7を介して外筒部2に切削力が伝達される。
一方で穿刺針刺入装置3の側面は生体組織5と接しているので、その摩擦力は外筒部2に負荷される。内筒部1と外筒部2とは連結されているため、外筒部2の終端には、摩擦力に抗する外筒部刺入力と、切削力に抗する内筒部刺入力とが合力として負荷されている。この負荷に対して、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力と術者4が刺入操作力測定装置8を介して付与する刺入操作力が抗している。
そのため、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力を増加すると、術者4が付与する刺入操作力が減少し、一方、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力を減少すると、術者4が付与する刺入操作力が増加する。そこで、内筒部刺入力測定装置7が検出する内筒部刺入力と、刺入操作力測定装置8が検出する刺入操作力とがほぼ近似した値となるよう、穿刺針刺入補助装置6をフィードバック制御することにより、穿刺針刺入補助装置6による刺入駆動力と、外筒部2に負荷される摩擦力に抗する外筒部刺入力とをバランスさせ、内筒部刺入力と刺入操作力を等しくあるいは近い値にすることができる。
すなわち、外筒部2を駆動する穿刺針刺入補助装置6及びその制御系が、外筒部2に負荷される外筒部刺入力と、内筒部1に負荷される内筒部刺入力とを分離する分離手段を構成している。
これにより、内筒部1に負荷される切削力と外筒部2に負荷される摩擦力が分離され、術者4は内筒部1に負荷される切削力を容易に知覚することができる。その結果、穿刺針先端が到達している生体組織の硬さを術者4は容易に知覚することが可能になる。
なお、第1実施例に外筒部2に負荷される外筒部刺入力や、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力を直接測定する装置を追加すれば、さらに高精度、高レスポンスの制御が可能になるが、これは本発明の本質ではない。
(第2実施例)
図3は、第2実施例の穿刺針刺入装置3が術者4と穿刺針刺入補助装置6により生体組織5に刺入されている様子を示す。図4は第2実施例の作用をブロック図で示す。
穿刺針刺入装置3は内筒部1と外筒部2から構成され、内筒部1は先端に穿刺針を備え、外筒部2により穿刺針先端を除く全体を覆われている。内筒部1と外筒部2とは互いに固着されておらず、独立に運動可能となっており、外筒部1の終端は外筒部刺入力測定装置9を介して内筒部1の終端に連結されている。
穿刺針刺入補助装置6は刺入駆動力測定装置10を介して内筒部1の終端に連結され、穿刺針刺入装置3の刺入方向に刺入駆動力を発生する直動アクチュエータである。術者4はグリップ等により穿刺針刺入装置3に刺入操作力を付与し、生体組織5内に刺入させたうえで、内筒部1先端の穿刺針を目的とする生体組織に到達させる。その際の刺入操作力は、直接内筒部1の終端に伝達される。
穿刺針刺入補助装置6は、図4に示されるコンピュータ等を用いた制御系により、外筒部刺入力測定装置9の測定値と、刺入駆動力測定装置10の測定値とに基づいて、外筒部刺入力と刺入駆動力が等しくあるいは近い値になるように、穿刺針刺入補助装置6の刺入駆動力をフィードバック制御している。
(作用)
前記制御系の作用について説明する。
穿刺針刺入装置3の先端は生体組織5を切り開いているので、その切削力は内筒部1に負荷される。一方で穿刺針刺入装置3の側面は生体組織5と接しているので、その摩擦力は外筒部2に負荷される。内筒部と外筒部とは連結されているため、内筒部1の終端には、切削力に抗する内筒部刺入力と、摩擦力に抗する外筒部刺入力とが合力として負荷されている。この負荷に対して、穿刺針刺入補助装置6が刺入駆動力測定装置10を介して発生する刺入駆動力と、術者4が付与する刺入操作力が抗している。
そのため、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力を増加すると、術者4が付与する刺入操作力が減少し、一方、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力を減少すると、術者4が付与する刺入操作力が増加する。そこで、外筒部刺入力測定装置9が検出する外筒部刺入力と、刺入駆動力測定装置10が検出する刺入駆動力とがほぼ近似した値になるよう、穿刺針刺入補助装置6をフィードバック制御することにより、外筒部刺入力と刺入駆動力を等しくあるいは近い値にすることができる。
すなわち、内筒部1を駆動する穿刺針刺入補助装置6及びその制御系が、内筒部1に負荷される内筒部刺入力と、外筒部2に負荷される外筒部刺入力とを分離する分離手段を構成している。
これにより、内筒部1に負荷される切削力と外筒部2に負荷される摩擦力が分離され、術者4は内筒部1に負荷される切削力を容易に知覚することができる。その結果、穿刺針先端が到達している生体組織の硬さを術者4は容易に知覚することが可能になる。
なお、第2実施例に内筒部1に負荷される内筒部刺入力や、術者4が付与する刺入操作力を直接測定する装置を追加すれば、さらに高精度、高レスポンスの制御が可能になるが、これは本発明の本質ではない。
(第3実施例)
図5は、第3実施例の穿刺針刺入装置3が術者4と穿刺針刺入補助装置6により生体組織5に刺入されている様子を示す。図6は第3実施例の作用をブロック図で示す。
穿刺針刺入装置3は内筒部1と外筒部2から構成され、内筒部1は先端に穿刺針を備え、外筒部2により穿刺針先端を除く全体を覆われている。内筒部1と外筒部2とは互いに固着されておらず、独立に運動可能となっており、外筒部1の終端は、内筒部−外筒部間に作用する刺入力(以下、「内筒部外筒部間刺入力」とする。)を測定する内筒部外筒部間刺入力測定装置11を介して、内筒部1の終端に連結されている。
穿刺針刺入補助装置6は外筒部2の終端に直に連結され、穿刺針刺入装置3の刺入方向に刺入駆動力を発生する直動アクチュエータである。術者4はグリップ等により穿刺針刺入装置3に刺入操作力を付与し、生体組織5内に刺入させたうえで、内筒部1先端の穿刺針を目的とする生体組織に到達させる。その際の刺入操作力は、直に内筒部1の終端に伝達される。
穿刺針刺入補助装置6は、図6に示されるコンピュータ等を用いた制御系により、内筒部外筒部間刺入力測定装置11の測定値に基づいて、内筒部外筒部間刺入力がゼロかあるいはゼロに近い値になるように、穿刺針刺入補助装置6の穿刺駆動力をフィードバック制御している。
(作用)
前記制御系の作用について説明する。
穿刺針刺入装置3の先端は生体組織5を切り開いているので、その切削力は内筒部1に負荷される。内筒部1の終端には切削力に抗する内筒部刺入力と内筒部外筒部間刺入力が負荷されている。この負荷に対して、術者4が付与する刺入操作力が抗している。
一方で穿刺針刺入装置3の側面は生体組織5と接しているので、その摩擦力は外筒部2に負荷される。外筒部2の終端には摩擦力に抗する外筒部刺入力が負荷されている。この負荷に対して、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力と内筒部外筒部間刺入力が抗している。
そのため、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力を増加すると、術者4に負荷される内筒部外筒部間刺入力が減少し、一方、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力を減少すると、術者4に負荷される内筒部外筒部間刺入力が増加する。
そこで、内筒部外筒部間刺入力測定装置11が検出する内筒部外筒部間刺入力が、ゼロかあるいはゼロに近い値になるようにフィードバック制御することにより、内筒部外筒部間刺入力が術者4に負荷されるのを妨げることができる。すなわち、外筒部2を駆動する穿刺針刺入補助装置6及びその制御系が、内筒部1に負荷される内筒部刺入力と、外筒部2に負荷される外筒部刺入力とを分離する分離手段を構成している。
これにより、内筒部1に負荷される切削力と外筒部2に負荷される摩擦力が分離され、術者4は内筒部1に負荷される切削力を容易に知覚することができる。その結果、穿刺針先端が到達している生体組織の硬さを術者4は容易に知覚することが可能になる。
なお、第3実施例に内筒部1に負荷される内筒部刺入力や、術者4が付与する刺入操作力、外筒部2が抗する外筒部刺入力、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力を測定する装置を追加すれば、さらに高精度かつ高レスポンスの制御が可能になるが、これは本発明の本質ではない。
(第4実施例)
図7は、第4実施例の穿刺針刺入装置3が術者4と穿刺針刺入補助装置6により生体組織5に刺入されている様子を示す。図8は第4実施例の作用をブロック図で示す。
穿刺針刺入装置3は内筒部1と外筒部2から構成され、内筒部1は先端に穿刺針を備え、外筒部2により穿刺針先端を除く全体を覆われている。内筒部1と外筒部2とは互いに固着されておらず、独立に運動可能となっており、第3実施例と同様に、外筒部1の終端は、内筒部外筒部間刺入力測定装置11を介して内筒部1の終端に連結されている。
穿刺針刺入補助装置6は刺入駆動力測定装置10を介して内筒部1の終端に連結され、穿刺針刺入装置3の刺入方向に刺入駆動力を発生する直動アクチュエータである。術者4はグリップ等により穿刺針刺入装置3に刺入操作力を付与し、生体組織5内に刺入させたうえで、内筒部1先端の穿刺針を目的とする生体組織に到達させる。その際の刺入操作力は、刺入操作力測定装置8を介して外筒部2の終端に伝達される。
穿刺針刺入補助装置6は、図8に示されるコンピュータ等を用いた制御系により、刺入操作力測定装置8の測定値と、刺入駆動力測定装置10の測定値と、内筒部外筒部間刺入力測定装置11の測定値とに基づいて、刺入操作力と刺入駆動力との差と内筒部外筒部間刺入力が等しくあるいは近い値になるように、穿刺針刺入補助装置6の刺入駆動力をフィードバック制御している。
(作用)
前記制御系の作用について説明する。
穿刺針刺入装置3の先端は生体組織5を切り開いているので、その切削力は内筒部1に負荷される。内筒部1の終端には切削力に抗する内筒部刺入力と内筒部外筒部間刺入力が負担されている。この負担に対して、穿刺針刺入補助装置6が刺入駆動力測定装置10を介して発生する刺入駆動力が抗している。一方で穿刺針刺入装置3の側面は生体組織5と接しているので、その摩擦力は外筒部2に負荷される。外筒部2の終端には摩擦力に抗する内筒部刺入力が負担されている。この負担に対して、内筒部外筒部間刺入力測定装置を介して内筒部1の終端に負荷される内筒部外筒部間刺入力と術者4が刺入操作力測定装置8を介して付与する操作刺入力が抗している。
そのため、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力を増加すると、内筒部外筒部間刺入力が増加し、術者4が付与する刺入操作力が減少し、一方、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力を減少すると、内筒部外筒部間刺入力が減少し、術者4が付与する刺入操作力が増加する。
そこで、刺入操作力測定装置8が検出する刺入操作力と刺入駆動力10が検出する刺入駆動力との差と、内筒部外筒部間刺入力測定装置が検出する内筒部外筒部間刺入力とがほぼ近似した値になるように穿刺針刺入補助装置6をフィードバック制御することにより、内筒部刺入力と外筒部刺入力の差を刺入操作力から減じ、その分を刺入駆動力に増すことができる。
すなわち、内筒部1を駆動する穿刺針刺入補助装置6及びその制御系が、内筒部1に負荷される内筒部刺入力を刺入操作力に、外筒部2に負荷される外筒部刺入力を刺入駆動力に分離する分離手段を構成している。
これにより、内筒部1に負荷される切削力と外筒部2に負荷される摩擦力が分離され、術者4は内筒部1に負荷される切削力を容易に知覚することができる。その結果、穿刺針先端が到達している生体組織の硬さを術者4は容易に知覚することが可能になる。
なお、第4実施例に内筒部1に負荷される内筒部刺入力や外筒部2に負荷される外筒部刺入力を測定する装置を追加すれば、さらに高精度かつ高レスポンスの制御が可能になるが、これは本発明の本質ではない。
(第5実施例)
図9は、第5実施例の穿刺針刺入装置3が術者4と穿刺針刺入補助装置6により生体組織5に刺入されている様子を示す。図10は第5実施例の作用をブロック図で示す。
穿刺針刺入装置3は、内筒部1と外筒部2から構成され、内筒部1は先端に穿刺針を備え、外筒部2により穿刺針先端を除く全体を覆われている。内筒部1と外筒部2とは互いに固着されておらず、独立に運動可能となっている。内筒部1の終端と外筒部2の終端との間には、内筒部1と外筒部2の刺入方向における相対的位置を測定する内筒部外筒部相対的位置測定装置12が備わっている。
穿刺針刺入補助装置6は外筒部2の終端に連結され、穿刺針刺入装置3の刺入方向に刺入駆動力を発生して位置決めする直動アクチュエータである。術者4はグリップ等により穿刺針刺入装置3に刺入操作力を付与し、生体組織5内に刺入させたうえで、内筒部1先端の穿刺針を目的とする生体組織に到達させる。その際の刺入操作力は、直接内筒部1の終端に伝達されている。
穿刺針刺入補助装置6は、図10に示されるコンピュータ等を用いた制御系により、内筒部外筒部相対的位置計測装置12の測定値に基づいて、内筒部外筒部相対的位置が一定に保つように、外筒部2の終端の位置をフィードバック制御している。
(作用)
前記制御系の作用について説明する。穿刺針刺入装置3の先端は生体組織5を切り開いているので、その切削力は内筒部1に負荷される。内筒部1の終端には切削力に抗する内筒部刺入力が負荷されている。この負荷に対して、術者4が付与する刺入操作力が抗している。一方で穿刺針刺入装置3の側面は生体組織5と接しているので、その摩擦力は外筒部2に負荷される。外筒部2の終端には摩擦力に抗する外筒部刺入力が負荷されている。この負荷に対して穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力が抗している。
内筒部1を術者4が押し込むと生体組織5が切削され、押し込まれた分だけ内筒部1が外筒部2から突出し、内筒部1と外筒部2の間の相対的位置が変化する。この相対的位置が変わらないようにフィードバック制御することで、内筒部1が常に外筒部2によって覆われた状態を維持し、摩擦力が内筒部1に負荷されるのを妨げることができる。
すなわち、外筒部2を駆動する穿刺針刺入補助装置6及びその制御系が、内筒部1に負荷される内筒部刺入力と、外筒部2に負荷される外筒部刺入力とを分離する分離手段を構成している。
これにより、内筒部1に負荷される切削力と外筒部2に負荷される摩擦力が分離され、術者4は内筒部1に負荷される切削力を容易に知覚することができる。その結果、穿刺針先端が到達している生体組織の硬さを術者4は容易に知覚することが可能になる。
なお、第5実施例に内筒部1が抗する内筒部刺入力や、術者4が付与する刺入操作力、外筒部2が抗する外筒部刺入力、穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力を測定する装置を追加すれば、さらに高精度かつ高レスポンスの制御が可能になるが、これは本発明の本質ではない。
(第6実施例)
図11は、第6実施例の穿刺針刺入装置3が術者4と正方向(刺入方向)流体圧アクチュエータ14と負方向(反刺入方向)流体圧アクチュエータ15により生体組織5に刺入されている様子を示す。図12は第6実施例の流量制御バルブ13周辺の詳細な動作を示す。
穿刺針刺入装置3は、内筒部1と外筒部2から構成され、内筒部1は先端に穿刺針を備え、外筒部2により穿刺針先端を除く全体を覆われている。内筒部1と外筒部2とは互いに固着されておらず、独立に運動可能となっている。内筒部1の終端と外筒部2の終端との間には内筒部1と外筒部2の刺入方向の相対的位置に比例して流体の流量を制御する流量制御バルブ13が備わっている。
正方向流体圧アクチュエータ14と負方向流体圧アクチュエータ15は、外筒部2の終端に連結され、穿刺針刺入装置3の刺入方向に刺入駆動力を増大あるいは減少させて、外筒部2の位置決めするアクチュエータである。術者4はグリップ等により穿刺針刺入装置3に刺入操作力を付与し、生体組織5内に刺入させたうえで、内筒部1先端の穿刺針を目的とする生体組織に到達させる。その際の刺入操作力は、直に内筒部1の終端に伝達されている。
流体制御バルブ13は内筒部1と外筒部2の刺入方向の相対的位置に比例して、正方向流体圧アクチュエータ14と負方向流体圧アクチュエータ15への流体の流入量と流出量を制御している。
(作用)
前記穿刺針刺入装置3の作用について説明する。
穿刺針刺入装置3の先端は生体組織5を切り開いているので、その切削力は内筒部1に負荷される。内筒部1の終端には切削力に抗する内筒部刺入力が負荷されている。この負荷に対して、術者4が付与する刺入操作力が抗している。一方で穿刺針刺入装置3の側面は生体組織5と接しているので、その摩擦力は外筒部2に負荷される。外筒部2の終端には摩擦力に抗する外筒部刺入力が負荷されている。この負荷に対して正方向流体圧アクチュエータ14と負方向流体圧アクチュエータ15とのバランスにより発生する刺入駆動力が抗している。
図12(a)のように、内筒部1と外筒部2の相対的位置がゼロでは流入バルブ16も流出バルブ17も閉じているため平衡が保たれている。内筒部1を術者4が押し込むと生体組織5が切削され、押し込まれた分だけ内筒部1が外筒部2から突出し、内筒部1と外筒部2の間の相対的位置が正方向に変化する。この時流量制御バルブ周辺は図12(b)のようになっており、内筒部1に固着する流入バルブ18が正方向に移動して、流体流入口16から正方向流体圧アクチュエータ流入口20への流路が開放され、相対的位置に比例した流量の流体が正方向流体圧アクチュエータ14に流入され、正方向流体圧アクチュエータは伸長する。
同様に、内筒部1に固着する流出バルブ19が正方向に移動して、負方向流体圧アクチュエータ流出口23から流体流出口17への流路が開放され、相対的位置に比例した流量の流体が負方向流体圧アクチュエータ15から流出され、負方向流体圧アクチュエータは収縮する。
この結果、外筒部2も正方向に移動し、図12(c)のように、内筒部1と外筒部2の相対的位置がゼロになり、流入バルブ16も流出バルブ17も閉じて平衡が保たれる。
術者4が内筒部1を引き出したときの作用も同様である。
このように本実施例によれば、コンピュータ等による高度なフィードバック制御を用いなくても、正方向流体圧アクチュエータ14と負方向流体圧アクチュエータ15とが術者の押し込み操作に応じてバランスをとり、刺入駆動力は内筒部1と外筒部2の相対的位置に比例した一定の値を保つ。この際、比例係数を十分大きくすることで、相対的位置は十分小さくなるので、内筒部1と外筒部2の相対的位置は十分ゼロに近づく。
なお、上記実施例では、流量制御バルブ13や正方向流体圧アクチュエータ14、負方向流体圧アクチュエータ15を使用したが、内筒部1と外筒部2間の相対的位置に比例して電圧を生じる、ポジションセンサ等の電気素子を設け、この電気素子の出力により、モータあるいはソレノイド等の電気アクチュエータを駆動して、内筒部1と外筒部2間の相対的位置が一定となるよう、外筒部2の位置を制御するようにしてもよい。
以上の作用により、内筒部1が常に外筒部2によって覆われた状態を維持し、摩擦力が内筒部1に負荷されるのを妨げることができる。すなわち、外筒部2を駆動する正方向流体圧アクチュエータ14と負方向流体圧アクチュエータ15と流量制御バルブ13とが、内筒部1に負荷されている内筒部刺入力と、外筒部2に負荷されている外筒部刺入力とを分離する分離手段を構成している。
これにより、内筒部1に負荷される切削力と外筒部2に負荷される摩擦力が分離され、術者4は内筒部1に負荷される切削力を容易に知覚することができる。その結果、穿刺針先端が到達している生体組織の硬さを術者4は容易に知覚することが可能になる。
(第7実施例)
図13は第7実施例の穿刺針刺入装置3が遠隔にある術者4の刺入操作量に応じて穿刺針刺入補助装置6により生体組織5に刺入されている様子を示す。図14は第7実施例の作用をブロック図で示す。刺入方向以外については省略する。
穿刺針刺入装置3は内筒部1と外筒部2から構成され、内筒部1は先端に穿刺針を備え、外筒部2により穿刺針先端を除く全体を覆われている。内筒部1と外筒部2とは互いに固着されておらず、独立に運動可能となっており、内筒部1の終端は内筒部刺入力測定装置7を介して外筒部2の終端に連結されている。
穿刺針刺入補助装置6は外筒部2の終端に連結され、穿刺針刺入装置3の刺入方向に位置決めする直動アクチュエータであり、術者4はグリップ等により刺入操作力測定装置8を介して力覚提示装置25に刺入操作量を付与している。なお、力覚提示装置25は術者4の刺入操作量を刺入操作量測定装置で測定し、刺入操作量に応じた力覚を術者4に提示する装置である。
穿刺針刺入補助装置6は、図14下部に示されているコンピュータ等を用いた制御系により、術者4からの操作量に応じて穿刺針刺入装置3の刺入方向の穿刺針刺入量をフィードバック制御している。また、力覚提示装置25は、図14上部に示されているコンピュータ等を用いた制御系により、内筒部刺入力測定装置7の測定値と、刺入操作力測定装置の測定値とに基づいて、内筒部刺入力と刺入操作力が等しくあるいは近い値になるように、力覚提示装置をフィードバック制御している。
(作用)
この制御系の作用について説明する。
術者4が力覚提示装置に刺入操作力を付与して刺入操作量を入力すると、その操作量は刺入操作量測定装置で測定される。測定値は電気的信号に変換され、穿刺針刺入補助装置6の制御系に伝達される。そして、穿刺針刺入補助装置6はその操作量に応じて穿刺針刺入装置3を生体組織5に刺入する。穿刺針刺入装置3の先端は生体組織5を切り開いているので、その切削力は内筒部1に負荷され、内筒部刺入力測定装置7を介して外筒部2に切削力が伝達されている。一方で穿刺針刺入装置3の側面は生体組織5と接しているので、その摩擦力は外筒部2に負荷される。外筒部2の終端には摩擦力に抗する外筒部刺入力が負荷されている。
内筒部1と外筒部2は連結されているため、外筒部2の終端には、摩擦力に抗する外筒部刺入力と、切削力に抗する内筒部刺入力とが合力として負荷されている。この負荷に対して穿刺針刺入補助装置6が発生する刺入駆動力が抗している。
内筒部刺入力測定装置7の測定値は電気信号に変換され、力覚提示装置25の制御系に伝達される。そして、力覚提示装置25はその内筒部刺入力に応じた力覚と刺入操作力測定装置で測定される刺入操作力が等しくなるようにフィードバック制御する。
すなわち、穿刺針刺入装置3を駆動する穿刺針刺入補助装置6と力覚提示装置25及びその制御系が、外筒部2に負荷される外筒部刺入力と、内筒部1に負荷される内筒部刺入力とを分離して術者4に提示する分離手段を構成している。
これにより、内筒部1に負荷される切削力と外筒部2に負荷される摩擦力が分離され、術者4は内筒部1に負荷される切削力を容易に知覚することができる。その結果、穿刺針先端が到達している生体組織の硬さを術者4は容易に知覚することが可能になる。
図14と図15、図16は、それぞれ第1実施例の一部を変更した第8実施例と第9実施例、第10実施例を説明する図である。
第8実施例では外筒部2は外筒部刺入力測定装置9を介して、内筒部1は内筒部刺入力測定装置7を介して穿刺針刺入装置3の終端に連結され、刺入操作力測定装置8は穿刺針刺入装置3の終端に連結されている点で、第1実施例と異なる。これによって、外筒部2に負荷される摩擦力を外筒部刺入力測定装置9が直接的に測定でき、穿刺状態のより詳細な把握や、高精度、高レスポンスの制御が可能になる。
第9実施例では外筒部2は穿刺針刺入力測定装置26を介して、穿刺針刺入装置3の終端に連結され、刺入操作力測定装置8は穿刺針刺入装置3の終端に連結されている点で、第1実施例と異なる。これによって、外筒部2に負荷される摩擦力を内筒部刺入力測定装置7の測定値と穿刺針刺入力測定装置26の測定値の差から間接的に測定でき、穿刺状態のより詳細な把握や、高精度、高レスポンスの制御が実現できる。
第10実施例では外筒部2は外筒部刺入力測定装置9を介して内筒部の終端に連結され、内筒部1の終端は穿刺針刺入力測定装置26を介して、穿刺針刺入装置3の終端に連結され、刺入操作力測定装置8は穿刺針刺入装置3の終端に連結されている点で、第1実施例と異なる。これによって、外筒部2に負荷される摩擦力を外筒部刺入力測定装置9が直接的に測定でき、内筒部1に負荷される切削力を、外筒部刺入力測定装置9の測定値と穿刺針刺入力測定装置26の測定値の差から間接的に測定することが可能となり、穿刺状態のより詳細な把握や、高精、高レスポンスの制御が実現できる。
上記の変更例は、第2実施例から第7実施例についても、同様に適用することができるが、これについては説明を省略する。
図18は第5実施例の一部を変更した第11実施例を説明する図である。
第11実施例では穿刺針刺入装置3が術者4の手のひらで支持され、親指で刺入操作力が付与されている点で第5実施例と異なる。この実施例では、内筒部刺入力と外筒部刺入力が分離され、術者4は、外筒部刺入力の反作用を手のひらで受け止め、内筒部刺入力の調整を親指による刺入操作力の調整に専念することができる。なお、図18では、内筒部刺入力を親指で発生させる例を示しているが、引き金式のものにも適用できる。この実施例では、術者4が、手のひらで受け止める外筒部刺入力の反作用と、親指で発生させる刺入操作力の双方を調整するということで、これまでの実施例と比較して、特別な土台に固定される必要がないため、穿刺方向や位置を自由に動かすことができるという利点がある。
外筒部刺入力の反作用を分離して手のひらで受け止める態様は、第2実施例から第6実施例に関しても適用することができるが、これについては説明を省略する。
上述の各実施例では、術者が穿刺針刺入装置を操作することを前提としているが、近年、こうした穿刺針の刺入を、ロボットアーム等を使用して遠隔装置により実現する医療技術についても研究が進んでいるが、複雑かつ大きく変化する摩擦力が重複されている状態では、刺入操作力の変化から穿刺針先端の組織の変化を検出することは非常に困難である。
このように遠隔装置を使用する場合でも、本発明により内筒部刺入力と外筒部刺入力が分離されることになり、複雑に変化する摩擦力に影響されることなく、穿刺針先端に付加される切削力の変化を繊細に検出することが可能になり、安全で正確な穿刺を実現することができる。
本発明は、腰椎麻酔や硬膜外麻酔、生検、採血、中心動脈穿刺、関節穿刺、内視鏡手術におけるトロカール穿刺等、硬さの異なる生体組織が層をなす部位や、硬さの異なる重要組織が穿刺経路周辺に存在する部位に、術者等が穿刺針を刺入する際に広く利用することができ、内筒部刺入力と外筒部刺入力とが完全に分離されることから、術者や遠隔装置による穿刺針刺入操作の安全性を飛躍的に高めることができる。
1 内筒部
2 外筒部
3 穿刺針刺入装置
4 術者
5 生体組織
6 穿刺針刺入補助装置
7 内筒部刺入力測定装置
8 刺入操作力測定装置
9 外筒部刺入力測定装置
10 刺入駆動力測定装置
11 内筒部外筒部間刺入力測定装置
12 内筒部外筒部間相対的位置測定装置
13 流量制御バルブ
14 正方向流体圧アクチュエータ
15 負方向流体圧アクチュエータ
16 流体流入口
17 流体流出口
18 流入バルブ
19 流出バルブ
20 正方向流体圧アクチュエータ流入口
21 負方向流体圧アクチュエータ流入口
22 正方向流体圧アクチュエータ流出口
23 負方向流体圧アクチュエータ流出口
24 シール
25 力覚提示装置
26 穿刺針刺入力測定装置

Claims (23)

  1. 先端に穿刺針を備えた内筒部と、前記内筒部の側面の少なくとも一部を覆い、前記内筒部と独立に運動可能な外筒部を備えた穿刺針を刺入する穿刺針刺入装置であって、
    前記穿刺針刺入装置を生体内に刺入する際、前記内筒部に作用する切削力に抗して負荷される内筒部刺入力と、前記外筒部に作用する摩擦力に抗して負荷される外筒部刺入力とを分離する分離手段を設けたことを特徴とする穿刺針刺入装置。
  2. 請求項1の穿刺針刺入装置であって、
    前記内筒部刺入力に相当する力が、術者あるいはロボットアームからの刺入操作力により付与され、前記外筒部刺入力に相当する力が、前記分離手段からの刺入駆動力により付与されることにより、前記内筒部刺入力と前記外筒部刺入力が分離されることを特徴とする穿刺針刺入装置。
  3. 請求項2の穿刺針刺入装置であって、
    前記内筒部刺入力と、前記刺入操作力とがほぼ近似した値になるように、前記分離手段が前記内筒部と前記外筒部の少なくとも一方に前記刺入駆動力を付与することを特徴とする穿刺針刺入装置。
  4. 請求項3の穿刺針刺入装置であって、
    前記刺入の際に前記内筒部に負荷される内筒部刺入力を測定する内筒部刺入力測定装置と、前記刺入操作力を測定する刺入操作力測定装置とを備え、前記内筒部刺入力と前記刺入操作力とがほぼ近似した値になるように、前記刺入駆動力をフィードバック制御することを特徴とする穿刺針刺入装置。
  5. 請求項3または4の穿刺針刺入装置であって、前記刺入操作力と前記刺入駆動力が前記外筒部に付与されることを特徴とする穿刺針刺入装置。
  6. 請求項5の穿刺針刺入装置であって、
    前記外筒部に前記刺入操作力測定装置を介して前記刺入操作力を付与し、前記外筒部と前記内筒部の間に前記内筒部刺入力測定装置を設けることを特徴とする穿刺針刺入装置。
  7. 請求項2の穿刺針刺入装置であって、
    前記外筒部刺入力と、前記刺入駆動力とがほぼ近似した値になるように、前記分離手段が前記内筒部と前記外筒部の少なくとも一方に前記刺入駆動力を付与することを特徴とする穿刺針刺入装置。
  8. 請求項7の穿刺針刺入装置であって、
    前記刺入の際に前記外筒部に負荷される外筒部刺入力を測定する外筒部刺入力測定装置と、前記刺入駆動力を測定する刺入駆動力測定装置とを備え、前記外筒部刺入力と前記刺入駆動力とがほぼ近似した値になるように、前記刺入駆動力をフィードバック制御することを特徴とする穿刺針刺入装置。
  9. 請求項7または8の穿刺針刺入装置であって、前記刺入操作力と前記刺入駆動力が前記内筒部に付与されることを特徴とする穿刺針刺入装置。
  10. 請求項9の穿刺針刺入装置であって、
    前記内筒部に前記刺入駆動力測定装置を介して前記刺入駆動力を付与し、前記内筒部と前記外筒部の間に前記外筒部刺入力測定装置を設けることを特徴とする穿刺針刺入装置。
  11. 請求項2の穿刺針刺入装置であって、
    前記刺入操作力が前記内筒部に付与され、前記分離手段が付与する刺入駆動力が前記外筒部に付与され、前記内筒部と前記外筒部の間に生ずる内筒部外筒部間刺入力がほぼゼロになるようにしたことを特徴とする穿刺針刺入装置。
  12. 請求項11の穿刺針刺入装置であって、
    前記刺入の際に前記内筒部と前記外筒部の間に生ずる内筒部外筒部間刺入力を測定する内筒部外筒部間刺入力測定装置を備え、前記内筒部外筒部間刺入力がほぼゼロになるように、前記刺入駆動力をフィードバック制御することを特徴とする穿刺針刺入装置。
  13. 請求項12の穿刺針刺入装置であって、
    前記内筒部と前記外筒部の間に前記内筒部外筒部間刺入力測定装置を設けることを特徴とする穿刺針刺入装置。
  14. 請求項2の穿刺針刺入装置であって、
    前記刺入操作力が前記外筒部に付与され、前記分離手段が付与する刺入駆動力が前記内筒部に付与され、前記内筒部と前記外筒部の間に生ずる前記内筒部外筒部間刺入力が前記刺入操作力と前記刺入駆動力との差にほぼ近似した値になることを特徴とする穿刺針刺入装置。
  15. 請求項14の穿刺針刺入装置であって、
    前記刺入の際に前記刺入駆動力を測定する刺入駆動力測定装置と、前記刺入操作力を測定する刺入操作力測定装置と、前記内筒部外筒部間刺入力を測定する内筒部外筒部間刺入力測定装置を備え、前記内筒部外筒部間刺入力が前記刺入操作力と前記刺入駆動力との差にほぼ近似した値になるように、前記刺入駆動力をフィードバック制御することを特徴とする穿刺針刺入装置。
  16. 請求項15の穿刺針刺入装置であって、
    前記外筒部に前記刺入操作力測定装置を介して前記刺入操作力を付与し、前記内筒部に前記刺入駆動力測定装置を介して前記刺入駆動力を付与し、前記内筒部と前記外筒部の間に前記内筒部外筒部間刺入力測定装置を設けることを特徴とする穿刺針刺入装置。
  17. 請求項2の穿刺針刺入装置であって、
    前記刺入操作力が前記内筒部に付与され、前記刺入駆動力が前記外筒部に付与され、前記内筒部と前記外筒部の間に生ずる内筒部外筒部間相対的位置がほぼ一定を保つことを特徴とする穿刺針刺入装置。
  18. 請求項17の穿刺針刺入装置であって、
    前記内筒部と前記外筒部の間に生ずる内筒部外筒部間相対的位置を測定する内筒部外筒部間相対的位置検出装置を備え、検出された相対的位置が一定を保つようフィードバック制御することを特徴とする穿刺針刺入装置。
  19. 請求項17の穿刺針刺入装置であって、
    前記内筒部と前記外筒部の間に生ずる内筒部外筒部間相対的位置に比例した前記刺入駆動力を発生させることを特徴とする穿刺針刺入装置。
  20. 請求項19の穿刺針刺入装置であって、
    前記内筒部と前記外筒部間の相対的位置に対応して移動する流体圧制御バルブを備え、該流体圧制御バルブにより、前記外筒部を刺入方向あるいは反刺入方向に切り換えて駆動する流体圧アクチュエータとを有することを特徴とする穿刺針刺入装置。
  21. 請求項19の穿刺針刺入装置であって、
    前記内筒部と前記外筒部間の相対的位置に比例して正負の電圧を生ずる電気素子と、前記電圧に比例して刺入の正方向と負方向に駆動する電気アクチュエータを有することを特徴とする穿刺針刺入装置。
  22. 請求項3または4の穿刺針刺入装置であって、
    前記刺入操作力が力覚提示装置に付与されていることを特徴とする穿刺針刺入装置。
  23. 請求項2ないし21の穿刺針刺入装置であって、
    該穿刺針刺入装置は、前記内筒部を術者の指により操作し、前記外筒部を術者の手のひらで握る形式のものである穿刺針刺入装置。
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