注入工法による地盤改良は、削孔内に設置した注入管を用いてセメント系の固化材や水ガラス系の薬液を地盤中に注入して地盤を強化する方法であり、主に地盤の止水性向上、強度増加、空洞部の充填等を目的に行われる。
注入工法で用いられる注入管は、例えば、図13(a),(b)に図示するような、地盤中に形成された削孔イ内に設置された注入外管20と、この注入外管20内に設置された注入内管21とを備えて構成されている。
注入外管20は、管軸方向に間隔をおいて形成された複数の注入材吐出口20aと、この注入材吐出口20aを挟んでその上下両側にそれぞれ取り付けられた外管パッカー22,22とを備えている。また、注入内管21は、先端に注入材吐出口21aとこの注入材吐出口21aを挟んでその上下両側に内管パッカー23,23を備えている。
外管パッカー22は、袋体にセメント系固化材などを充填することにより削孔イの内径より大きい径に形成され、削孔イと注入外管20との間隙(柱状空間)を注入材吐出口20aの上下両側において塞ぐことにより、削孔イと注入外管20との間に管軸方向に連続する柱状の注入材浸透源ロを形成すると共に、削孔イと注入外管20との間隙を注入材が管軸方向に逸送するのを防止する働きをするものである。
内管パッカー23は、エアまたは流体の充填により膨張して、注入外管20と注入内管21との間隙を注入材吐出口20aおよび21aの上下両側で塞ぐことにより、注入外管20と注入内管21との間に注入内管21から注入材浸透源ロに通じる注入材流路を形成する働きをするものである。
このような構成において、削孔イ内に注入外管20を立て込み、続いて注入外管20内に注入内管21を立て込み、当該注入内管21の注入材吐出口21aを外管パッカー22の注入材注入口22aの位置に合わせる。
そして、内管パッカー23内に流体または液体を注入して内管パッカー23を膨張させて注入外管20と注入内管21との間を注入内管21の注入材吐出口21aの上下両側で密閉する。
次に、注入内管21により外管パッカー22内にセメント系固化材を注入して外管パッカー22を膨張させることにより削孔イと注入外管20との間隙を注入材吐出口22aの上下両側において密閉する。
こうすることにより上下外管パッカー22,22間に管軸方向に連続する柱状の注入材浸透源ロを形成することができる。
次に、注入外管20内に注入内管21を立て込み、注入外管20の注入材吐出口20aと注入内管21の注入材吐出口21aが一致する位置で内管パッカー23,23を膨張させて、注入外管20と注入内管21との間隙を注入材吐出口20aおよび21aの上下両側において密閉する。
そして、注入内管21内に注入材を圧送する。そうすると、注入材は注入材吐出口21aから注入外管20と注入内管21間の内管パッカー23,23間に吐出される。さらに、そこから注入外管20の注入材吐出口20aを通って注入材浸透源ロに吐出され、そこから周囲の地盤中に浸透注入(土粒子間浸透)される。
その際、注入外管20内で注入内管21を上下方向に移動させて注入ステージを変えることにより、各注入ステージにおいて土層の性状に応じて適切な注入を行うことができる。
また、外管パッカー22,22間に長大な柱状浸透源ロを形成することができるため、1ステージ当り大きな吐出量の注入速度で注入しても小さい注入圧力で浸透注入できるため、大径の固結体を形成することができる。
ところで、注入工法におけるひとつの理想は、注入材を土粒子間に均等に浸み込ませる土粒子間浸透(浸透注入)にあり、可能な限り時間をかけ、低圧注入によって行うことにより理想に近い土粒子間浸透が可能とされている。
また、注入工法においては、透水係数の小さい微細砂層に注入材を確実に浸透させる必要があり、また、地盤性状の異なる複数の土層からなる地盤に対しては、注入材を均一かつ確実に浸透させる必要がある。
さらに、粗い土層を含む地盤の場合は、外管パッカー22,22間に長大な柱状の注入材浸透源ロを設けても、注入材浸透源ロ内に吐出されたゲル化時間の長い浸透性のすぐれた注入材は粗い層を通して注入範囲外に逸送したり、あるいは外管パッカー22を乗り越えて上下の柱状空間に流入したりしないことが求められる。また、長大な注入材浸透源ロが孔壁の崩壊によって閉塞したり注入外管の注入材吐出口が目詰まりしたりしないことが求められる。
しかし、多くの地盤は、透水係数や間隙率の異なる複数の地層が不規則に積層されて構成されており、このうち特に砂質層や砂礫層は透水係数と間隙率が共に大きいのに対して粘性土層やシルト層の透水係数と間隙率は共に小さい。
このような地盤に対して注入工法による地盤改良を実施しても、注入材が地盤全体に均等に注入されないことが多く、特に、砂質層や砂礫層を間に含む地盤ではこれらの地層で注入材が逸走してしまい、このため多くの注入材が無駄になり、しかも注入材を地盤全体に均一に浸透注入させることは非常に困難であった。
また、地盤性状の異なる複数の地層からなる地盤に注入材を注入する際、地層の変化に対応して注入速度と注入量をコントロールすることは実際上難しく、このため、ある層では注入材が多量に拡がり、またある層では僅かしか浸透されない等の注入のむらが起こり、注入材を地盤全体に均一に浸透させることはきわめて困難であった。
また、特に粗い土層を含む地盤の場合は、外管パッカー22,22間に長大な柱状の注入材浸透源ロを設けても、注入材浸透源ロ内に吐出されたゲル化時間の長い浸透性のすぐれた注入材は、注入対象範囲外に逸送したり、外管パッカー22を乗り越えて上下の柱状空間に流入したりしないことが求められる。
これを浸透性の良い注入材が外管パッカー22を乗り越えないようにするには、外管パッカー22を管軸方向に長くすればよいが、外管パッカー22を長くすると注入材浸透源ロは短くなってしまい、注入材浸透源ロを短くすると、注入材を低圧下で土粒子間浸透させるには、毎分吐出量を少なくする必要があるため、同一ゲルタイムでは形成される固結体の径が小さくなり、また注入時間が長くなり、施工能率が低下してしまうとい課題があった。
また、そのため、毎分の吐出量を多くすると、注入材浸透源ロが短いため、注入圧が高くなり脈状注入になるという課題があった。さらに、固結体の径が小さいと注入間隔を狭くする必要があるため、削孔イの数が多くなり経済的な問題があった。
しかし、大径の固結体を形成するにはゲル時間の長い注入液を長時間連続注入しなくてはならず、拘束圧の小さな地表面近くでは注入液が地表に漏出してしまい、所定の注入ステージにおいて広範囲に均一に注入できないという課題があった。
また、柱状浸透源を長大にするには、外管パッカー長を短くせざるを得ず、短くすると外管パッカーを乗り越えて次の注入ステージの柱状空間を充填してしまうという問題があった。
また、注入工法は、可能な限り時間をかけ低圧注入によって行うのが注入材を度粒子間に均等に浸透させることができて理想とされているため、相当な時間と手間がかかってしまい、施工効率の面から理想的とはいえないのが現状であった。
このためにも大きな柱状浸透源を用いて大きな吐出量で低圧注入することが望ましいが、注入材浸透源を長大にするほど削孔壁が崩壊して吐出口が詰まったり、浸透孔壁(柱状空間)に対する注入管の開口率が小さくなってしまい、注入材浸透源の全長に注入材が行き渡らなくなる。
このため、孔壁の崩壊を防ぎ、かつ注入材浸透源の柱状空間を保持すると同時に、柱状空間全長に対する高い開口率を有する注入管装置が要求されるという問題があった。
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、注入材の逸走を阻止し、かつ長大な柱状空間を保持して注入材を対象地盤内に無駄なく、低圧で土粒子間浸透せしめて均一かつ確実に注入して大径の固結体を容易に形成することができる地盤改良装置および地盤改良工法を提供する。
請求項1記載の地盤改良装置(図1〜図5)は、削孔内に設置された注入外管と当該注入外管内に設置された注入内管とを備え、前記注入外管は当該注入外管と削孔壁間の空間内に連通する懸濁性注入材または瞬結性注入材の吐出口と当該吐出口を挟んでその上下両側に取り付けられた複数の外管パッカーとからなる懸濁性注入材または瞬結性注入材の注入部と、前記注入外管に設けられた複数の浸透性注入材吐出口を有する浸透性注入材注入部とを備え、前記上下外管パッカーは懸濁性注入材の細粒分または瞬結性注入材のゲルを透過可能な麻布、織布、不織布、透水性合成樹脂または網材からなる透水性の柱状袋体と当該柱状袋体内に充填された懸濁性注入材または瞬結性注入材とから形成され、かつ当該上下外管パッカー間の間隔は上下外管パッカーの管軸方向の長さの1/2より狭い間隔に形成され、前記上下外管パッカー内の懸濁性注入材または瞬結性注入材は、前記注入内管と前記注入外管に柱状袋体に連通して形成された注入材吐出口を介して、懸濁性注入材の細粒分または瞬結性注入材のゲルが柱状袋体を透過して外管パッカーの周囲に外管パッカー周囲の土と共に固化して土中パッカーを形成するように充填され、さらに前記土中パッカーの周囲に前記注入内管および前記上下パッカー間の吐出口を介して懸濁性注入材または瞬結性注入材が前記土中パッカー周囲の土と共に固化して大径土中パッカーを形成するように注入されてなることを特徴とするものである。
本発明は、注入外管周囲の地表面近く、或は透水性の大きい土層付近に大径土中パッカーを形成することで、当該大径土中パッカーの下方に後から注入される浸透性注入材が注入外管の周囲を地表面側に逸送するのを防止し、或いは透水性の大きい土層から浸透性注入材が注入範囲外に逸走するのを防止するようにしたものである。
また、大径土中パッカーの下方に管軸方向に長い柱状注入源を確保することにより、削孔間隔を大きくとり、大きな吐出量でかつ低圧で土粒子間浸透(浸透注入)により大径固結体(地盤改良体)を容易にかつ確実に形成できるようにしたものである。
本発明によれば、懸濁性注入材の細粒分または瞬結性注入材のゲルを透過可能な織布、不織布または網材からなる透水性の柱状袋体に懸濁性注入材または瞬結性注入材(以下「粗詰め注入材」という)、例えばセメント系の固化材を充填することにより削孔径より大きい径の外管パッカーを形成し、この外管パッカーの周囲に柱状袋体に充填された懸濁性注入材の細粒分または瞬結性注入材のゲルが袋体を透過して、外管パッカー周囲の土と共に固化して大きな土中パッカーを形成し、さらに懸濁性注入材または瞬結性注入材の吐出口(以下「粗詰め注入材吐出口」という)から土中パッカー周囲の地盤中に粗詰め注入材を注入することにより、粗詰め注入材と土とからなるさらに大きな大径土中パッカーを形成するため、結果として注入外管周囲の地表面近くに相当大きな土中パッカーを形成することができる。
その際、特に上下外管パッカー間の間隔が、外管パッカーの管軸方向の長さより狭く設定されていることで、粗詰め注入材吐出口が位置している上下外管パッカーと削孔壁と注入外管で囲まれた空間内に柱状袋体を透過した固化材の一部(細粒部分或いは瞬結性注入材のゲル)が上部外管パッカーの下面や下部外管パッカーの上面から流れ込み、上記空間内で固化することにより孔壁保護体を形成することができる。
当該孔壁保護体は、土を含まず固化材の細粒部分或いは瞬結性注入材のゲルのみが固化したものであることから土中パッカー、あるいは懸濁液そのものの固結物より強度がかなり小さく、このため粗詰め注入材吐出口から粗詰め注入材を注入する際の注入圧によって容易に砕かれる。
そのため、上下の土中パッカー間からその外側の地盤中に粗詰め注入材が注入され、更に大きな土中パッカーが形成される。
したがって、注入外管の粗詰め注入材吐出口が開口している孔壁の崩壊を防止することができ、また粗詰め注入材吐出口が削孔内のスライムや孔壁の崩壊等によって目詰まり等を起すこともないので、必要量の粗詰め材注入材を周囲の地盤中に確実に注入することができる。
通常、粗詰め注入材吐出口に近接して設けられた柱状袋体の中に固化材を注入して外管パッカーを形成しようとすると、袋体の膨張によって周囲の土が押しのけられ、その土が粗詰め注入材吐出口に接する空間に回りこんで粗詰め注入材吐出口が塞がれてしまい、その後の粗詰め注入材の注入が困難であるという課題があった。
本発明によれば、上下外管パッカー間の削孔内に柱状袋体を透過した固化材の一部(細粒部分或いは瞬結性注入材のゲル)からなる孔壁保護体が形成されることで、上記のような問題は起こらない。
なお、この場合の上下外管パッカー間の間隔L1は、外管パッカーの管軸方向の長さL3の1/2以下とするのが望ましい(図9参照)。また、柱状袋体は、例えば麻布、織布、不織布、透水性合成樹脂、網材などの透水機能を有するものを素材とする袋体が適している。
また、粗詰め注入材としては、瞬結性注入材とセメント系やベントナイト系の懸濁型注入材があり、対象地盤の性状、土質に応じて適宜使い分けることができる。
また、瞬結性注入材としては、例えば、固結性に優れた水ガラス系溶液型グラウト材やゲル化時間の短い懸濁型注入材が適している。さらに、粗詰め注入材注入部より下方の浸透性注入材注入部における削孔と注入外管との間隙内に網体、織布、不織布、透水性合成樹脂被膜、各種ドレーン材等の透水性を有する材料からなる柱状浸透導水部材を設置することにより孔壁の崩壊を防止することができる。
この柱状浸透導水部材は、孔壁の崩壊を保護するのみならず、崩壊した場合でも、柱状空間を形成して注入材吐出口から吐出された注入材を注入外管の注入部の全長にわたって誘導し、柱状浸透を可能にさせる構造のものが望ましい。
そのためには、厚みのある透水性材料、あるいは注入圧によって注入材が誘導されるためのある厚さの空間を形成し得る構造であることが望ましい。更に好ましくは、削孔壁に対する開口率が大きいものであることが望ましい。上記における柱状浸透導水部材の材料の厚み、或いは空間の大きさは0.5cm〜3cm程度が望ましい。
このような柱状浸透導水部材は、粗詰め注入材が粗い土層を通って柱状浸透導水部材の柱状空間に回ってきても、また隣接した注入孔からゲル化しかかった注入液が浸入してきても、柱状浸透導水部材が覆っている注入外管の浸透性注入材吐出口を柱状浸透導水部材が遮断して注入空間を保護する効果を有する。
なお、粗詰め注入材吐出口と当該粗詰め注入材吐出口を上下に挟む一対の上下外管パッカーは、注入外管の管軸方向の任意の位置に少なくとも一ケ所あればよい。例えば、地表面近くの最上部でもよいし、粗い土層の位置に設けてもよい。また、浸透性注入材吐出口は注入外管の管軸方向の任意の位置に少なくとも一ヶ所、あるいは複数ヶ所に設けることができる。
また、柱状浸透導水部材を設置することにより浸透性注入材吐出口が削孔内のスライム等で目詰まり等を起すこともないので、必要量の浸透性注入材を周囲の地盤中に確実に浸透注入させることができる。
なお、浸透性注入材としては、例えば浸透性、強度および耐久性に優れたシリカコロイド系、シリカゾル系、有機系水ガラス、無機系水ガラス等の溶液型シリカグラウトの他に無機系懸濁型注入材などが適している。
なお、図2において、注入外管内に挿入された注入内管の上下一対の内管パッカーを、粗詰め注入材吐出口とその上下の外管パッカーの注入材吐出口を跨ぐように設置することにより、外管パッカーの袋体に粗詰め注入材を注入して膨張させることと、地盤中に粗詰め注入材を注入することを同時に行うことができる。
また、その際、粗詰め注入材吐出口の逆止弁の抵抗圧を、外管パッカー内の注入材吐出口の逆止弁の抵抗圧より大きくしておけば、外管パッカーの膨張を先行させることができる。
この場合の注入材吐出口の逆止弁の抵抗圧は、逆止弁としてのゴムスリーブの弾性力を大小調整するか、あるいは注入材吐出口の開口面積を大小調整するか等の方法によって調整することができる。
請求項2記載の地盤改良装置は、請求項1記載の地盤改良装置において、上下外管パッカー内の懸濁性注入材または瞬結性注入材は、懸濁性注入材または瞬結性注入材の注入部における注入外管と上下外管パッカーと削孔壁とからなる空間内に懸濁性注入材の細粒分または瞬結性注入材のゲルが柱状袋体を透過して固化することにより孔壁保護体を形成するように充填され、かつ前記注入内管および前記上下外管パッカー間の吐出口を介して懸濁性注入材または瞬結性注入材が、その注入圧で前記孔壁保護体を破り、土中パッカー周囲の土と共に固化して大径土中パッカーを形成するように注入されてなることを特徴とするものである(図2〜図4参照)。
通常、粗詰め注入材吐出口に近接して設けられた柱状袋体の中に懸濁型の固化材を注入して外管パッカーを形成しようとすると、袋体の膨張によって周囲の土が押しのけられ、その土が粗詰め注入材吐出口に接する空間に回りこんで粗詰め注入材吐出口が塞がれてしまい、その後の粗詰め注入材の注入が困難である。
本発明によれば、上下外管パッカー間の削孔内に柱状袋体を透過した固化材の一部(細粒部分)からなる孔壁保護体が形成されることで、上記のような問題は起こらない。
なお、この場合の上下外管パッカー間の間隔L1は、外管パッカーの管軸方向の長さL3の1/2以下とし(図9参照)、かつ浸透性注入材注入部の外管パッカー間の間隔L2よりも狭くするのが望ましい(図2参照)。
また、柱状袋体は、例えば麻布、織布、不織布、透水性合成樹脂、網材などの透水機能を有するものが適している。
請求項3記載の地盤改良装置は、請求項1または2記載の地盤改良装置において、浸透性注入材注入部における浸透性注入材の吐出口を挟んでその上下両側またはその片側に外管パッカーが取り付けられ、当該外管パッカーは懸濁性注入材の細粒分または瞬結性注入材のゲルを透過可能な麻布、織布、不織布、透水性合成樹脂または網材からなる透水性の柱状袋体と当該柱状袋体に充填された懸濁性注入材または瞬結性注入材とから形成されてなることを特徴とするものである(図1〜図4参照)。
一般に、浸透性注入材の柱状注入源が管軸方向に長くなるにつれて浸透性注入材の注入圧が低下し、また浸透性注入材の注入圧に場所によりばらつきが生じやすい。このため、浸透性注入材が注入ステージ全体に均一に注入されないおそれがある。
本発明によれば、各浸透性注入材吐出口の上下両側、或いは少なくとも上側に外管パッカーを取り付けて、また土層が複雑な場合は管軸方向に連続する浸透性注入材の柱状浸透源を複数に仕切ることで、浸透性注入材の注入圧を一定に保持することができ、これにより大きな吐出量でかつ低圧で注入材を広範囲に均一に浸透注入させることができる。
請求項4記載の地盤改良装置は、請求項1〜3のいずれかひとつに記載の地盤改良装置において、浸透性注入材注入部における注入外管には孔壁との間の空間内に柱状浸透導水部材が取り付けられ、かつ注入外管の浸透性注入材吐出口に逆止弁が取り付けられていることを特徴とするものである。
本発明によれば、浸透性注入材注入部の削孔内に透水性の柱状浸透導水部材を設置することにより、柱状注入源を長くとっても孔壁は崩壊しにくく、かつたとえ孔壁が崩壊しても管軸方向に大きな柱状注入源を保持でき、大きな吐出量で低圧注入が可能であり、しかも注入孔間隔を大きくとり、広範囲の浸透注入が可能になる。
柱状浸透導水部材には、例えば網体、織布、不織布、透水性合成樹脂、各種ドレーン材等の透水性を有する材料を用いて前述したように形成されたものを筒状或いは内部に空間を有するかご状または帯状のものを用いることができる(図7〜図11参照)。
請求項5記載の地盤改良装置は、請求項4記載の地盤改良装置において、柱状浸透導水部材は透水性膨縮性チューブ或いは網状体管体であり、浸透性注入材注入部における注入外管の外周に取り付けられ、かつ浸透性注入材吐出口に逆止弁が取り付けられていることを特徴とするものである(図6参照)。
本発明によれば、浸透性注入材の注入圧で膨張する膨縮性チューブによって孔壁の崩壊および崩壊に伴う浸透性注入材吐出口の目詰り等を防止することができる。また、削孔径を小さくできる等の効果がある。
さらに、柱状浸透導水部材は、逆止弁が取り付けられた1個または複数の浸透性注入材吐出口を覆うことにより柱状浸透源となる空間を形成しているので、浸透性注入材の注入中に注入が完了した他の注入ステージで周囲の地盤中に注入された注入材や地下水が浸透性注入材吐出口から注入外管内に逆流するおそれがない。
また、隣接する複数の削孔間において、ある削孔において地盤中に注入された注入材が他の削孔内に立て込まれた注入外管内に逆流したり、柱状空間を埋めてしまうことがあるが、このような事態を防止することかできる。
さらに、同一削孔内において、注入材が外管パッカーを乗り越えて他の注入ステージに逸送し、浸透性注入材吐出口から注入外管内に逆流したり、あるいは柱状空間を埋めてしまうおそれがあるが、そのような現象を防止することができる。
本発明の実施形態によれば、柱状浸透源を長大にしても、その区間の注入外管壁面に上記柱状浸透導水部材が設けられ、かつ各浸透性注入材吐出口に注入材の逆流を防止する逆止弁が取り付けられていることで、上記するような問題は起こらない。
また、柱状浸透導水部材と孔壁間の空間に他の注入材吐出口から注入されたゲル化しかかった浸透性注入材、あるいは粗詰め注入材が回り込んできても柱状浸透導水部材の存在によって遮断されることで、浸透性注入材注入部の柱状浸透源は確保され、浸透性注入材は柱状浸透導水部材が形成する空間を通って柱状空間全体に広がるため、注入材を周囲の地盤中に確実に注入することができる。
さらに、柱状導水部材は全体が透水性であるため、注入外管の浸透性注入材吐出口の数が少なくても、たとえ一個でも注入ステージの全長において浸透性注入材を周囲の地盤中に均一に浸透注入させることができる。
請求項6記載の地盤改良装置は、請求項4記載の地盤改良装置において、柱状浸透導水部材は帯状浸透導水部材であって、浸透性注入材注入部における注入外管の外周に注入外管の管軸方向に螺旋状に取り付けられ、かつ注入外管の浸透性注入材吐出口に逆止弁が取り付けられていることを特徴とするものである(図7参照)。
本発明によれば、注入外管の全外周面を柱状浸透導水部材によって覆うより柱状空間の開口率が大きいため、注入材浸透源が大きく、このため大きな注入速度でも低圧注入により浸透注入を行うことができる。
また、隣接する帯状導水部材間の導水溝には、周辺土砂のアーチアクションよって空間が確保されるため、大きな注入材浸透源を得ることができる。また、帯状導水部材の使用量も少なくてすむ。
このため、注入外管にたとえ1個の浸透性注入材吐出口が形成されている場合であっても、当該浸透性注入材吐出口から吐出された注入材は、注入外管の表面を帯状導水部材および導水溝に導かれるため、周囲の地盤中に広く均等に浸透注入される。
なお、上記柱状浸透導水部材や帯状導水部材は、例えば織布、不織布、または透水性合成樹脂などの透水性を有する材料、さらには合成樹脂などから例えば0.5cm〜3cm程度の一定の厚さを有して立体網状に形成された立体網状材から形成することができる。
請求項7記載の地盤改良装置は、請求項1〜6のいずれかひとつに記載された複数の地盤改良装置と、注入材の貯蔵タンクと、それぞれ独立した駆動源で作動することにより注入材の貯蔵タンクから各地盤改良装置に注入材をそれぞれ圧送する複数のユニットポンプと、注入材の流量と圧力を検出する流量圧力検出器と、注入材の送液を開始および遮断するバルブと、各ユニットポンプの回転数変則機と、前記ユニットポンプ、流量圧力検出器、バルブおよび回転数変則機を制御する集中管理装置を備えてなることを特徴とするものである(図12参照)。
一般に、沖積層は土層が平面的に積層しており、透水係数は水平方向に大きい。したがって、上層が粗い層からなる地盤や注入材が地表面側に逸送しやすい地盤において大径の固結体を形成するには、上層部に注入材の逸送を阻止するための大きな土中パッカーを形成する必要がある。
本発明によれば、透水性の袋体に固化材を注入して外管パッカーを形成し、さらにその周囲に袋体を透過した固化材と土とからなる土中パッカーを形成してから、上層部の複数の粗詰め注入材吐出口から周囲の地盤中に粗詰め注入材を同時注入することにより、同時に地下水を所定の方向に押しやって粗詰め注入材に置き換えることができ、また地盤の上層部に均等に連続した大径土中パッカーを形成することができる。
また、粗詰め注入材の注入により上層部に大径土中パッカーを形成し終えたら、注入内管昇降機を作動して注入内管を次の注入ステージに対応した注入材吐出口にセットし、そして浸透性注入材吐出口から周囲の地盤中に浸透性注入材を同時注入することにより浸透性注入材と周囲の土とからなる大径固結体を水平方向に連続して形成することができる。
また、複数の浸透性注入材吐出口から浸透性注入材を同時注入することにより、浸透性注入材を長大な柱状空間から水平方向に浸透させることにより、浸透性注入材は低圧で層流注入されるため、複数の浸透性注入材吐出口から吐出される注入材は、一定の方向に互いに妨げられることなく地下水を押しのけながら土粒子間浸透して均質な固結体を形成することができる。
以上の施工方法によって浸透性注入材を逸送させることなく、低圧で土粒子間浸透させることにより大径の固結体を連続して自動的に形成することができる。
そして、所定の注入層における注入が完了したら、注入ステージ管理装置は、集中管理装置からの指示により次の注入ステージに注入内管を移動するように注入内管昇降機に指示する。
また、各注入材吐出口における浸透性注入材の注入圧力、注入速度、注入量は圧力流量計測器からの情報を集中管理装置が受け、それに基づいて各注入装置に指示して各ユニットポンプの注入材吐出口を制御し、あるいは注入材貯蔵タンクにおける注入材の製造や導管を通してユニットポンプへの送液を管理する。
また、集中管理装置は、流量圧力検出器からの情報に基づき、ある注入地点における注入が完了したら注入ステージ管理装置に指示して次の注入ステージに移行するように内管昇降機に指示したり、あるいはバルブの開閉を行って別の注入内管に導管を通して注入材を送液する。
請求項8記載の地盤改良装工法は、請求項1〜6のいずれかひとつに記載された地盤改良装置を用いた地盤改良工法において、削孔内に注入外管を、当該注入外管内に注入内管をそれぞれ立て込み、前記注入内管によって柱状袋体に懸濁性注入材または瞬結性注入材を充填することにより懸濁性注入材または瞬結性注入材の吐出口の上下両側に外管パッカーを形成すると共に、当該外管パッカーの周囲に柱状袋体を透過した懸濁性注入材の細粒分または瞬結性注入材のゲルと外管パッカー周囲の土とからなる土中パッカーを形成し、さらに上下外管パッカー間の孔壁と注入外管との空間内に前記柱状袋体を透過した懸濁性注入材の細粒分または瞬結性注入材のゲルからなる孔壁保護体を形成し、次に、前記注入内管より上下外管パッカー間の注入材吐出口を介して、懸濁性注入材または瞬結性注入材をその吐出圧で前記孔壁保護体を破って地盤中に注入することにより、前記土中パッカーの周囲に懸濁性注入材または瞬結性注入材と土中パッカー周囲の土とからなる大径土中パッカーを形成し、次に、前記注入内管を用いて浸透性注入材注入部における浸浸透性注入材吐出口から周囲の地盤中に浸透性注入材を注入することにより前記大径土中パッカーの下方に浸透性注入材と土とからなる大径固結体を形成することを特徴とするものである(図2〜図12参照)。
上記において、ケーシングによって削孔し、ケーシング内に注入外管を挿入し、ケーシングを引き抜いて注入外管を地盤中に設置するが、ケーシングを引き抜く際に削孔内にシールグラウトを充填して注入外管を地盤中に固定することができる。
請求項9記載の地盤改良工法は、請求項7に記載された地盤改良装置を用いた地盤改良工法において、前記地盤改良装置を複数の注入地点に所定間隔をおいて配置し、流量圧力検出器から集中管理装置に送信される各注入地点における注入材の流量および/または圧力データの信号に基づいて、各注入地点における注入状況を前記集中管理装置で一括監視しながら、注入材の貯蔵タンクから各注入地点に注入材を各ユニットポンプの作動によりそれぞれ任意の注入速度、注入圧力、注入量で圧送し、かつ複数の注入地点に同時に注入することを特徴とするものである(図12参照)。
請求項10記載の地盤改良工法は、請求項8または9記載の地盤改良工法において、懸濁性注入材または瞬結性注入材の吐出口の上下に位置する外管パッカーの柱状袋体内に懸濁性注入材または瞬結性注入材を充填する工程と、地盤中に前記上下外管パッカー間の吐出口から懸濁性注入材または瞬結性注入材を注入する工程は、注入外管内に注入内管を上下内管パッカーの位置が懸濁性注入材または瞬結性注入材の吐出口と上下外管パッカーの吐出口を挟むように挿入して同時に行うことを特徴とするものである(図10(b)参照)。
請求項11記載の地盤改良工法は、請求項8または9記載の地盤改良工法において、請求項8または9記載の地盤改良工法において、浸透性注入材注入部における浸透性注入材の吐出口の上下両側、或いは少なくとも上側には柱状袋体に懸濁性注入材または瞬結性注入材を充填することにより外管パッカーを形成することを特徴とするものである(図2〜図12参照)。
請求項12記載の地盤改良工法は、請求項8または9記載の地盤改良工法において、浸透性注入材注入部における注入外管には、削孔壁との間の空間内に柱状浸透導水部材を設置し、かつ浸透性注入材吐出口に逆止弁を取り付けることを特徴とするものである(図2、3、図6〜図12参照)。
請求項13記載の地盤改良工法は、請求項8または9記載の地盤改良工法において、浸透性注入材注入部における注入外管に、柱状浸透導水部材を螺旋状に設置し、かつ浸透性注入材吐出口に逆止弁を取り付けることを特徴とするものである(図7参照)。
請求項14記載の地盤改良工法は、請求項12記載の地盤改良工法において、柱状浸透導水部材は透水性膨縮性チューブであって、かつ浸透性注入材吐出口に逆止弁を取り付けることを特徴とするものである(図6参照)。
本発明は、柱状浸透導水部材としての透水性膨縮性チューブが浸透性注入材注入部を覆っているため、削孔壁と注入外管との間の空間をスリーブグラウトによって充填しても柱状空間を保持することができる。このため、削孔壁が崩壊しやすい地盤でも孔壁を安定させることができる。
請求項15記載の地盤改良工法は、請求項8〜12のいずれかひとつに記載の地盤改良工法において、注入外管と削孔壁間の空間にシールグラウトが充填されてなることを特徴とするものである。
請求項16記載の地盤改良工法は、請求項15記載の地盤改良工法において、柱状浸透導水部材は浸透性注入材注入部の注入外管において所定の注入ステージ毎に区切られて設けられていることを特徴とするものである(図8(b)参照)。
地質が複雑な土層が積層している場合、浸透性注入材導水部の区間を注入ステージ毎の浸透性注入材吐出口を覆うようにいくつかの柱状浸透導水部材を区切って設ければ、各導水部の間はシール材によって区切られているので、各区分毎に柱状浸透空間が形成される。このため、所定のステージ毎にその土層に最適の柱状浸透を行うことができる。
かりに、柱状導水部が全長に渡って外管表面に分布していたら、1ケ所から注入された浸透性注入材が全長に渡って地盤中に注入されるので、浸透性の大きな土層に集中されて注入されることになるからである。
本発明によれば、注入管周囲の地表面近くに大径土中パッカーを形成することにより、当該大径土中パッカーの下方に後から注入される浸透性注入材が注入管の周囲を主に地表面側に逸送するのを防止することができ、これにより対象地盤中に浸透性注入材を均一にかつ確実に浸透注入 (土粒子間浸透)させることができる。
また、大径土中パッカーの下方に管軸方向に長い柱状注入源を確保することが可能なため、削孔間隔を大きくとり、大きな吐出量でかつ低圧で土粒子間浸透(浸透注入)により大径固結体(地盤改良体)を容易かつ確実に形成することができる等の効果がある。
さらに、砂礫層や砂質層などの透水性地層を含む地盤を地盤改良する場合でも、地盤中に注入した注入材が砂礫層や砂質層などの透水性地層から逸送するのを防止して、各地層内に注入材を確実に注入でき、地盤を強化することができる。
また、外管パッカー長を短くしても土中に大きな土中パッカーを形成することができ、かつ粗い土層への注入材の逸送を防止することが可能なことにより、外管パッカー間に長大な柱状浸透源を形成することができ、これにより1ステージ当たり大きな吐出量の注入速度で注入しても少ない注入圧力で浸透注入できるため大きな固結体を形成することができ、注入効果と経済的ですぐれた効果を期待できる。
図1〜図5は、本発明の地盤改良装置および地盤改良工法の一実施形態を示す概念図である。図において、符号1は削孔イ内に立て込まれた注入外管、符号2(図2参照)、符号3(図3参照)および符号4(図4参照)はいずれも注入外管1内に立て込まれる注入内管である。また、符号7は注入外管1に設けられた柱状浸透導水部材である。
注入外管1は、注入外管1の管軸方向の地表面近く、或いはそれより下方の土層付近に設けられた一つまたは複数の粗詰め材注入材注入部5,5と、粗詰め注入材注入部5,5の少なくとも下側に、あるいは粗詰め注入材注入部5,5間に設けられた浸透性注入材注入部6とを備えて構成されている。
粗詰め注入材注入部5は、粗詰め注入材吐出口5aと粗詰め注入材吐出口5aを挟んでその上下両側に取り付けられた一組の外管パッカー5b,5bとから構成され、管軸方向の少なくとも一ヶ所または二箇所以上に所定間隔をおいて設けられている。
各粗詰め注入材吐出口5aには注入材の逆流を防止するための弾力性のあるゴムスリーブ等からなる逆止弁5cが取り付けられている。
浸透性注入材注入部6は、注入外管1の管軸方向に少なくとも粗詰め注入材吐出口5aを挟む一対の外管パッカー5b,5bの少なくとも下方向に、少なくとも一ヶ所或いは所定間隔をおいて設けられた複数の浸透性注入材吐出口6aから構成され、各浸透性注入材吐出口6aには注入材の逆流を防止するための逆止弁6cが取り付けられている。
また、粗詰め注入材吐出口5aを挟む一対の外管パッカー5b,5b以外の外管パッカー6bを管軸方向に一個または複数の浸透性注入材吐出口6aと交互に設けることもできる。
外管パッカー5bと6bはいずれも透水性の柱状袋体の中にセメント系の固化材或は瞬結性注入材を充填することにより削孔イの内径より大きく形成されている。なお、外管パッカー5bおよび6bの柱状袋体は、位置を変更できるように脱着自在に取り付けられている。
また、外管パッカー5b,5b間の間隔L1は、外管パッカー6b,6b間の間隔L2より狭く(図2(a))、外管パッカー5bの長さをL3とすると、L1≦1/2L3であって、ほぼL1=L2×0.05〜0.3の範囲に設定されている。通常、L1=20mm〜300mm程度が望ましい。通常、外管パッカー5bの長さL3は0.3〜2m程度が好ましい。
図2および図5(a)に図示する注入内管2は、外管パッカー5bおよび外管パッカー6bの柱状袋体の中に地上からセメント系の固化材を注入するための注入管であり、先端に注入材吐出口2aと注入材吐出口2aを挟んでその上下両側に一組の内管パッカー2b,2bを備え、内管パッカー2bはエアまたは液体の注入により膨張するように構成されている。
そして、外管パッカー5bと外管パッカー6bの位置で、上下内管パッカー2b,2bを膨張させて注入外管1の内側に密着させ、注入内管2から外管パッカー5bおよび外管パッカー6bの柱状袋体にそれぞれ通じる注入材流路を確保し、そして、注入内管2を介して地上から各パッカーの柱状袋体の中にセメント系の固化材を注入して膨張させることにより削孔イより大きい径の外管パッカー5bと外管パッカー6bを形成することができる。また、この注入内管2は粗詰め注入材注入部5の粗詰め注入材吐出口5aと浸透性注入材吐出部6の浸透性注入材出口6aから懸濁性注入材あるいは浸透性注入材を注入可能なことは勿論である。
図3および図5(b)に図示する注入内管3は、地上から粗詰め注入材注入部5の粗詰め注入材吐出口5aを介して地盤中に二液式注入材を注入するための注入管であり、懸濁性グラウト、浸透性グラウト等の瞬結性注入材を注入することができるが、浸透性注入材を浸透性注入材吐出口6aから注入することができるのは勿論である。
この注入内管3は、A液注入内管3aおよびB液注入内管3bと、その先端部にA液とB液が混合して地盤中に吐出する注入材吐出口3cを備えている。また、注入材吐出口3cの上下両側に内管パッカー3d,3dを備えている。
内管パッカー3dはゴムチューブ等から形成され、注入外管1内において地上からのエアまたは液体の充填により膨張し、注入外管1の内壁に密着して注入外管1と注入内管2間の間隙を注入材吐出口3cの上下両側において密閉し、粗詰め注入材吐出口5aに通じる注入材流路を確保するように構成されている。
そして、粗詰め注入材注入部5の粗詰め注入材吐出口5aの位置で、内管パッカー3d,3dを膨張させて注入外管1の内側に密着させて注入内管3から粗詰め注入材吐出口5aに通じる注入材流路を確保し、その後、注入内管3を介して地上から地盤中に粗詰め注入材を注入することができる。
図4および図5(c)に図示する注入内管4は、浸透性注入材注入部6を介して地上から地盤中に浸透性注入材を注入するための注入管であり、先端に複数の浸透性注入材吐出口4a,4aとこの浸透性注入材吐出口4a,4aを挟んでその上下両側に複数の内管パッカー4b,4bを備えて構成されている。
内管パッカー4bはゴム製チューブ等から形成され、地上からのエアまたは流体の充填により、注入外管1内で膨張して注入外管1の内壁に密着することで、注入外管1と注入内管2との間隙を各注入材吐出口4aの上下両側で密閉することにより浸透性注入材吐出口6aに通じる注入材流路を確保するように構成されている。
そして、浸透性注入材注入部6の浸透性注入材吐出口6aの位置で、内管パッカー4b,4bを膨張させて注入外管1の内側に密着させて注入内管4から浸透性注入材吐出口6aに通じる注入材流路を確保し、その後、注入内管4を介して地上から地盤中に浸透性注入材を複数の注入ステージ或いは複数の浸透性注入材吐出口6aから同時に注入することができる。
柱状浸透導水部材7は、注入外管1の外側に設けられ、浸透性注入材注入部6における削孔イの孔壁と注入外管1との間隙内にあって、削孔イの孔壁崩壊を防止するのみならず、浸透性注入材吐出口6aから吐出した浸透性注入材を、柱状浸透導水部材7を通って柱状浸透空間に誘導し、かつ柱状浸透空間から地盤中への土粒子間浸透を可能にする。
また、浸透性注入材吐出口6aが削孔イ内のスライム等で目詰まり等を起しても、また削孔壁が崩壊して柱状浸透空間が遮断されても、柱状浸透源を保持するための部材であり、例えば網体、織布、不織布、透水性合成樹脂、各種ドレーン材等の透水性を有する材料から形成されている。
その結果、必要量の浸透性注入材を柱状浸透空間から周囲の地盤中に浸透注入させることができる。
このような構成において、次に本発明の地盤改良工法について説明する。
(1)最初に、地盤改良対象地盤に対してボーリング等で事前調査を行い、透水性地層の有無、種類、位置、厚さ等、必要なデータを収集する。そして、調査結果に基づいて、粗詰め注入材注入部5と浸透性注入材注入部6の位置(深さ)、数、L1、L2等をそれぞれ決定し、これらの情報に従って外管パッカー5bおよび6bの柱状袋体を取り付ける。また、浸透性注入材注入部6の各外管パッカー6bの柱状袋体間に柱状浸透導水部材7を取り付ける。
(2)次に、削孔イ内に注入外管1を立て込み、注入外管1内に注入内管2を立て込む。
そして、注入内管2を介し、地上から各外管パッカー5bおよび6bの柱状袋体の中に固化材をそれぞれ注入することにより柱状袋体を膨張させて、削孔イより大きい径の外管パッカー5bと6bを形成する。
また、各外管パッカー5b,6bの外周部にパッカーを透過した固化材の一部と周囲の土とからなる土中パッカーA1を形成する。さらに、粗詰め注入材注入部5の外管パッカー5b,5b間に外管パッカー5bを透過した固化材の一部からなる孔壁保護体8を形成する。孔壁保護体8は、主に固化材微粒子が固化したものであり、土中パッカーA1に比べて強度ははるかに劣るものである。
(3)次に、注入外管1から注入内管2を引き抜き、注入外管1内に注入内管3を立て込む。そして、注入内管3を介し、地上から粗詰め注入材注入部5に懸濁性注入材或いは瞬結性注入材を注入する。瞬結性注入材は二液式注入材であり、注入内管3aにA液、注入内管3bにB液をそれぞれ注入する。
そうすると、A液とB液は注入内管3aと注入内管3bの先端部で混合し、注入材吐出口3cを通り粗詰め注入材吐出口5aから孔壁保護体8を砕いて地盤中に吐出される。
そして、周囲の土と共に固化して土中パッカーA1の周囲にさらに大きな土中パッカーA2を形成する。したがって、粗詰め注入材注入部5の外周には外管パッカー5bとその周囲に土中パッカーA1とA2とから二重に形成された土中パッカーとからなる大径土中パッカーが形成される。
(4)次に、注入外管1から注入内管3を引き抜き、注入外管1内に注入内管4を立て込む。そして、当該注入内管4を介し、地上から浸透性注入材注入部6に浸透性注入材を注入する。そうすると、浸透性注入材は浸透性注入材吐出口6aから周囲の地盤中に浸透注入され、周囲の土と共に固化して大径固結体Bが形成される。
この場合、浸透性注入材注入部6の外管パッカー6b,6b間の間隔L2が粗詰め注入材注入部5の外管パッカー5b,5b間の間隔L1よりかなり広く、このため浸透性注入材注入部6には注入外管1の管軸方向に長大な柱状注入源が形成され、これにより低圧注入であっても大容量の浸透性注入材を広範囲の地盤中に均一に注入することができる。
また、浸透性注入材注入部6の上方には事前に大径土中パッカーが形成されていることにより、浸透性注入材が注入外管1の上方に逸送してしまうようなことはなく、地層全体に対して無駄なく確実に浸透注入させることができる。
また、この実施形態によれば、浸透性注入材注入部6を挟んで管軸方向の地表面側とその反対側の地中内の両方に大径固結体パッカーを形成することにより、後から注入される浸透性注入材が地表面側と地中側の両方向に逸送するのを防止することができる。なお、粗詰め注入材注入部5と浸透性注入材部6を注入外管1の管軸方向に交互に設置してもよい。
なお、上記において、粗詰め注入材注入部5は地上部に近く、粗詰め注入材吐出口5aは、その上下を外管パッカー5bを挟んで一ヶ所だけでよい。
図6(a),(b)は、本発明の他の実施形態を示し、図1〜図5の実施形態において、浸透性注入材注入部6に柱状浸透導水部材7として膨縮性チューブ9を用いている。
また、各浸透性注入材吐出口6aに注入材の逆流を防止する逆止弁10が取り付けられている。
膨縮性チューブ9は、注入外管1の上下外管パッカー6b,6b間の表面を覆うように取り付けられ、その上下両端部は注入外管1に密閉された状態に固着されている。また、膨縮性チューブ9は、ゴム製チューブ等の伸縮自在なチューブから形成され、全体に複数の浸透性注入材吐出口9aが形成されている。
浸透性注入材吐出口9aは膨縮性チューブ9の周方向または軸方向に長いスリット状に形成されていてもよい。逆止弁10はゴムスリーブ等の弾性材から形成されている。
このような構成において、注入外管1内に立て込まれた注入内管4によって地上から浸透性注入材注入部6に浸透性注入材を注入すると、浸透性注入材は逆止弁10を押し広げ、浸透性注入材吐出口6aから膨縮性チューブ9内に吐出される。
さらに、その吐出圧によって膨縮性チューブ9は膨張して削孔イの孔壁に密着する。そして、当該注入ステージの全長において膨縮性チューブ9の浸透性注入材吐出口9aから周囲の地盤中に浸透性注入材が浸透注入される。
この実施形態によれば、削孔イの孔壁がたとえ崩壊したとしても、膨張した膨縮性チューブ9によって削孔イの孔壁を保護しつつ周囲の地盤中に浸透性注入材を確実に浸透注入させることができる。
なお、本発明における柱状浸透導水部材は、削孔1内にあって削孔壁に密着しているわけではないので、浸透性注入材の注入中に注入が完了した他の注入ステージで周囲の地盤中に注入された浸透性注入材や地下水が浸透性注入材吐出口6aから注入外管1内に逆流することが考えられる。
また、隣接する複数の削孔イ,イ間において、ある削孔イにおいて地盤中に注入された浸透性注入材が他の削孔イ内に立て込まれた注入外管1内に逆流することが考えられる。
さらに、同一削孔イ内において、浸透性注入材が外管パッカーを乗り越えて他の注入ステージに逸送し、浸透性注入材吐出口6aから注入外管1内に逆流することが考えられる。
しかし、本発明の上記柱状浸透導水部材9は、各浸透性注入材吐出口6aを覆っており、各浸透性注入材吐出口6aに注入材の逆流を防止する逆止弁10が取り次げられていることで、上記するような問題は起こらない。
また、柱状浸透導水部材9の外側の空間が懸濁性注入材やゲル化しかかった注入材が回り込んできても、また注入された注入材がゲル化しても導水部材9がそれを遮断して浸透性注入材吐出口6aから吐出された注入材は導水部材の隙間を通って柱状に広がって柱状浸透源を形成して周囲の地盤中に注入される。
また、膨縮性チューブ9の場合、全体に複数の浸透性注入材吐出口9aが設けられることで、注入外管1の浸透性注入材吐出口6aの数が少なくても注入ステージの全長において浸透性注入材を周囲の地盤中に均一に浸透注入させることができる。そして、削孔イ中に設置する際には、削孔イの削孔径を小さくできるため、施工が容易でコスト削減を図ることができる。
図7(a)〜(c)は、同じく本発明の他の実施形態を示し、図1〜図5の実施形態において、浸透性注入材注入部6に柱状浸透導水部材として帯状導水部材11が注入外管1の管軸方向に螺旋状に取り付けられている。
帯状導水部材11は、例えば織布、不織布、または透水性合成樹脂などの透水性を有する材料、さらには合成樹脂などから一定の厚さを有する立体網状に形成された立体網状材から一定の幅を有する帯状に形成されている。
また、帯状導水部材11は、注入外管1の上下外管パッカー6b,6b間に注入外管1の管軸方向に螺旋状に巻き付けて取り付けられ、隣接する帯状導水部材11,11間に帯状導水部材11とほぼ同一幅、一定深さの導水溝12が管軸方向に螺旋状に連続して形成されている。
なお、帯状導水部材11は、注入外管1の浸透性注入材吐出口6aの上を覆うように取り付けられていてもよく、あるいは導水路12内に浸透性注入材吐出口6aが露出するように取り付けられていてもよい。
このような構成により、浸透性注入材注入部6における注入外管1の全外周面を筒状の導水部材によって全面を覆うよりは柱状空間の開口率が大きくなるので、注入材浸透源が大きくなり、大きな注入速度であっても低圧注入により浸透注入を行うことができる。
勿論、本発明によって筒状の網状体、或いはかご状に編んだ筒状体を導水部材として用いることができる。
また、隣接する帯状導水部材11,11間の導水溝12は、周辺土砂のアーチアクションよって空間が確保されるため大きな注入材浸透源を得ることができる。また、帯状導水部材11の使用量も少なくてすむ。
このため、長い柱状空間の注入外管1に、たとえ1個の浸透性注入材吐出口6aが形成されている場合であっても、当該浸透性注入材吐出口6aから吐出された注入材は帯状導水部材11および導水路12に導かれ、周囲の地盤中に広く均等に浸透注入される。
図8〜図11は、本発明の地盤改良装置および地盤改良工法の他の実施形態を示す概念図であり、図において、特に注入外管1は、その地表面近くに粗詰め注入材注入部5を備え、その下方に複数の浸透性注入材吐出口6aを管軸方向に所定間隔おきに有する浸透性注入材注入部6を備えている。
また、外管パッカー5b,5b間の間隙L1は、外管パッカー5bの管軸方向の長さL3のほぼ1/2以下に設定されている(図9参照)。
この実施形態によれば、注入外管1周囲の地表面近くに大径土中パッカーA2を形成することで、当該大径土中パッカーA2の下方に後から注入される浸透性注入材が注入外管1の周囲を地表面側に逸送するのを防止することができ、これにより浸透性注入材の無駄を無くして大径土中パッカーA2の下方の地盤中に浸透性注入材を確実に浸透注入させることができる。
また、大径土中パッカーA2の下方に管軸方向に長い柱状注入源を確保することができるため、削孔イの間隔を大きくとり、大きな吐出量でかつ低圧で土粒子間浸透(浸透注入)により大径固結体(地盤改良体)を容易かつ確実に形成することができる。
また、図8(b)は、ケーシングで削孔し、ケーシング内に本注入管装置を挿入後、セメントベントナイト等のシールグラウト材23を充填しながら引き抜き、注入外管1を地盤中に設置し、その後、外管パッカー5b,5bを膨張させ、かつ粗詰め注入材を注入して大きな外管パッカーを形成して後、柱状浸透導水部材7を介して浸透性注入材吐出口6aから注入内管2を通してシールグラウト材23を破って注入する。
特に、地盤が透水性の異なるA,B,C,D層からなっている場合は、柱状浸透導水部材7を分断して各土層に対応するように注入外管1に設ける。各柱状浸透導水部材7,7間はシールグラウト材23によって遮断されているので、土層ごとに確実に柱状浸透が行われる。
また、各柱状浸透導水部材7にはシールグラウト材23は入り込まないので、透水性を保持しているため、土層ごとに確実な柱状浸透が行われる。
図12は、本発明の他の実施形態を示し、粗詰め注入材と浸透性注入材を、それぞれ地盤の複数地点に同時注入することが可能なように構成された地盤改良装置および地盤改良工法を示したものである。
図において、地盤の複数の地点に複数の削孔イが所定間隔をおいて形成され、各削孔イ内に図7に図示する地盤改良装置の注入外管1が立て込まれ、各注入外管1内に注入内管2が立て込まれている。
各注入内管2には粗詰め注入材と浸透性注入材が貯蔵された注入材貯蔵タンク13が導管14を介してそれぞれ接続され、また、各注入内管2には注入内管2を昇降させて注入ステージを変えるための注入内管昇降装置15と注入内管2の注入ステージを管理するための注入ステージ管理装置16がそれぞれ取り付けられている。
各導管14には貯蔵タンク13から各注入内管2に粗詰め注入材と浸透性注入材を圧送するためのユニットポンプ17、粗詰め注入材および浸透性注入材の流量と圧力を検出するための流量圧力検出器18、さらに粗詰め注入材および浸透性注入材の圧送を開始および遮断するためのバルブ19がそれぞれ接続されている。
各ユニットポンプ17は、インバータ等の回転数変速機20を備え、かつモータ等の独立した駆動源21によって個々に作動するように構成され、また、各ユニットポンプ17、回転数変速機20、流量圧力検出器18およびバルブ19は、それぞれ集中管理装置22に接続され、すべて集中管理装置22によって個々に制御されている。
このような構成において、流量圧力検出器18からの流量/およびまたは圧力データの信号が集中管理装置22に送信されると、貯蔵タンク13内の粗詰め注入材と浸透性注入材がそれぞれ各ユニットポンプ17の作動により任意の注入速度、注入圧力あるいは注入量で各注入内管1に圧送される。
そして、複数の注入地点において、粗詰め注入材が各注入外管1の粗詰め注入材吐出口5aから周囲の地盤中に同時に注入され、また浸透性注入材が各注入外管1の浸透性注入材吐出口6aから周囲の地盤中に同時に注入される。
その際、各注入地点における注入内管2は、集中管理装置22からの信号による指示によって注入内管昇降装置15が作動することにより、粗詰め注入材注入部5から浸透性注入材注入部6に注入ステージが移動する。
また、ユニットポンプ17は通常、5〜100台を1セットとして多連装注入装置を構成し、1セット中でこれらのユニットポンプ17を横、縦あるいは三次元として配置することができる。これらユニットポンプ17はいずれもそれぞれがモータ等の駆動源21で作動させることができる。
また、それぞれの駆動源21は集中管理装置22で制御されるインバータ等の回転数変速機20によって作動させることができる。
したがって、この実施形態によれば、多数のユニットポンプ17で構成しながら全体として容量が小さい、コンパクトな、一体化した1セットの注入装置としてまとめることができる。
このため、一セットの多連装装置はユニットポンプ17としてプランジャポンプを用いると、吐出量が50HZで1〜30リットル/分で、例えば10台を用いた場合、集中管理室22からの指示でインバータにより所定の注入ポイントに最適の注入速度、注入圧力を保持しながら、多数の吐出口(例えば、50個の吐出口)からの全体の注入を集中管理室22によって、全吐出量が(1〜30)×10=5〜300リットル/分の範囲で一括管理され、低圧、低吐出量による粒子間浸透が可能となり、しかも急速施工による工期の短縮が可能となる。