JP2011135818A - ヒト子宮筋腫モデル動物の作製方法 - Google Patents

ヒト子宮筋腫モデル動物の作製方法 Download PDF

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卓 武田
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Abstract

【課題】簡便で、かつ安定に移植細胞等が生着可能なヒト子宮筋腫モデル動物を作製する方法及びその方法の提供を目的とする。
【解決手段】
ヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片を、細胞外マトリックス成分を含むゲル状基質と共に、機能的なT細胞及びB細胞を欠失し、かつIL-2Rγ遺伝子を破壊又は欠失した免疫不全非ヒト動物に移植する。
【選択図】なし

Description

本発明は、ヒト子宮筋腫モデル動物の作製方法に関する。
子宮筋腫は、子宮を構成する子宮筋層に発生する良性腫瘍で、生殖年齢女性の約25〜50%に認められる。癌のように転移や周辺組織を破壊する可能性は低いものの、発生部位によっては不正出血症、月経困難症、圧迫症状、不妊症等の原因となることから、罹患女性のQOL(クオリティー・オブ・ライフ:Quality of Life)を著しく低下させてしまうという問題がある。子宮筋腫は、極めてありふれた疾患でありながら、その病態生理や発症機序について不明な点が多く、有効、かつ長期投与の可能な治療薬は未だに開発されていない。
現在行なわれている子宮筋腫の主な治療方法は、手術療法と薬物療法に大別できる(非特許文献1)。
手術療法における標準的な治療方法は、子宮全摘出手術である。この方法は、再発の可能性がない根治療法ではあるが、妊娠を希望する患者に適用できないことや、女性の象徴として重要な臓器である子宮を失うことから患者に与える喪失感や心理的ショックが大きいという問題がある。一方、子宮温存療法として、子宮筋腫核のみを摘出する筋腫核手術がある。この方法は、妊娠を希望する患者にも適用できるという利点があるが、小さな筋腫核を完全に除去できない場合があり、再発の可能性が高いという問題がある。他の子宮温存療法として、子宮動脈塞栓術(uterine artery embolization: UAE)や集束超音波法(focused ultrasound surgery:FUS)が、新たに開発されている。子宮動脈塞栓術は、子宮筋腫に血液供給をする子宮動脈中にゼラチンスポンジ等の塞栓物質を注入し、子宮筋腫を壊死させる治療法である(非特許文献1)。筋腫の成長を阻止し、縮小させることができるため月経過多や筋腫による圧迫は改善されるが、妊娠を希望する患者や塞栓物質に対して重篤なアレルギーを有する患者には適用できず、また、術後に下腹部痛を伴うという問題がある。集束超音波法は、MRIで病巣を確認しながら超音波発信装置から放出される超音波エネルギーにより子宮筋腫を焼却する治療法である(非特許文献1)。侵襲性が極めて低く、副作用をほとんど伴わないという利点を有するが、発生位置や大きさ等により適用可能な筋腫が制限されるという問題がある。
薬物療法で使用される薬剤として、現在我が国で使用が可能なものにGnRHアゴニストがある。GnRHアゴニストは、黄体化ホルモン(LH:Lutenizing Hormone)及び卵胞刺激ホルモン(FSH:Follicle Stimulating Hormone)の分泌を促進するGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン:Gonadotropin-Releasing Hormone)の作動剤である。LHやFSHは、卵巣に作用して、エストロゲンの分泌を促進する。子宮筋腫は、通常、閉経後に縮小することから、エストロゲンの量に依存して増殖することが知られている(非特許文献1)。本剤を投与すると過剰なGnRHの作用によりLHやFSHの分泌が逆に抑制される結果、卵巣からのエストロゲンの分泌が抑制され、子宮筋腫の増殖を抑えることが可能となる。しかし、この薬剤は、卵巣機能欠落症状(更年期症状)や骨量減少(骨粗鬆症)等の副作用を伴い、効果も一過的であること等から、閉経までの逃げ込み療法として使用されているに過ぎない。さらに他の薬剤として、選択的プロゲステロン受容体モジュレーターやアロマターゼ阻害剤が現在臨床治験の段階にある(非特許文献1)が、これらもGnRHアゴニストと同様に、エストロゲンの分泌又は作用の抑制により子宮筋腫細胞増殖を抑制する薬剤であり、卵巣機能欠落症状や骨量減少等の副作用を伴うため長期に亘る使用はできない。
以上のように現在公知の子宮筋腫治療法は、いずれも治療法として十分とは言い難い。それ故、新たな治療方法として、低侵襲性で副作用がないか又は小さく、妊娠可能な状態で子宮を温存し、かつ子宮筋腫を根治できる分子標的薬の開発が求められている。そのような治療薬の開発には、新たな子宮筋腫細胞増殖のシグナル伝達機構の解明が不可欠となっている。
しかし、そのような新規シグナル伝達機構の解明は、遅々として進んでいない。その主な原因として、子宮筋腫では、in vitro実験系で確認された薬剤の有効性を検証するための適当なin vivo実験系が確立されていない点が挙げられる。
子宮筋腫のin vitro実験系としては、子宮筋腫の初代培養細胞、ELT-3細胞、GM10964細胞を用いた実験系が知られている。ELT-3細胞は、Ekerラットより樹立された子宮平滑筋腫細胞株で、エストロゲン受容体(ER)やプロゲステロン受容体(PR)を発現し、かつ、それらのホルモンに対して感受性を示す他、形態的にも、生化学的にも、また遺伝学的にもヒトの子宮筋腫細胞に類似するため子宮筋腫のin vitro実験系細胞株として有用である(Howe SR; Am J Pathol 1995)。GM10964細胞は、ヒト子宮筋腫から樹立された子宮平滑筋腫細胞株で、ERやPRを発現し、またヒトそのものの子宮筋腫細胞という点でもin vitro実験系細胞株として有用である(Carney SA; Lab Invest 2002)。
一方、子宮筋腫のin vivo実験系としては、子宮筋腫発症ラットであるEkerラットが知られるが、このラットは、生後12〜16月で雌個体の約65%に子宮筋腫が発生するため維持管理が煩雑なことや、組織学的には子宮肉腫様の性質を有し、必ずしも子宮筋腫モデルとは言い難い面がある。また、ETL-3細胞をヌードマウスに移植した子宮筋腫モデル動物の開発も試みられているが、生着率が低いという問題がある。
さらに、近年では、ヒト子宮筋腫に対する薬剤の有効性を検証するためのモデル動物として、ヒト子宮筋腫由来の組織を移植したヒト子宮筋腫モデル動物の開発も進められている。例えば、機能的なT細胞及びB細胞を欠失したSCIDマウスにヒト子宮筋腫組織を移植したヒト子宮筋腫モデルマウスが挙げられる(非特許文献2)。しかし、このモデルマウスは、組織移植後2〜3週で移植細胞が変性し始め、4週で核を消失してしまうため、移植組織が生着しないという大きな問題を抱えている。一方、SCIDマウスを用いた類似のヒト子宮筋腫組織移植マウスとして、MemyIモデルが開発されている(非特許文献2)。このモデルマウスは、Adベクターを用いてヒト子宮筋腫由来の組織にVEGF、COX-2を強制発現させて、その組織をSCIDマウスに移植したヒト子宮筋腫モデルマウスである。移植後4週目でも移植細胞の核は消失せず、移植組織の正着が認められることから子宮筋腫のin vivo実験系として有用ではあるが、モデル動物の作製が煩雑という欠点を有する。
鈴木光明、吉村泰典編、産婦人科 専門医にきく最新の臨床 子宮筋腫、2007年、中外医学社 Hassan MH, 2008, 1261963976186_0.');, 199:156.e1-8
本発明は、簡便で、かつ安定して移植細胞等を生着させることのできるヒト子宮筋腫モデル動物作製方法の提供及びその方法によって得られるヒト子宮筋腫モデル動物の提供を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ヒト子宮筋腫組織を細胞外マトリックス成分を含むゲル状基質と共にいわゆる重症複合免疫不全動物に移植するだけで、移植組織片を長期にわたって安定して生着できることを見出した。本発明は、当該知見に基づいてなされたものであり、すなわち以下を提供する。
[1] (1)機能的なT細胞及びB細胞を欠失し、かつIL-2Rγ遺伝子を破壊又は欠失した免疫不全非ヒト動物を宿主動物として準備する工程、(2)摘出後のヒト子宮筋腫からヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片を調製する工程、及び(3)ヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片を、細胞外マトリックス成分を含むゲル状基質と共に前記宿主動物内に移植する工程を含むヒト子宮筋腫モデル動物の作製方法。
[2] 前記(3)の工程でヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片を前記ゲル状基質に浸漬した後に宿主動物に移植する、[1]に記載の作製方法。
[3] 前記(3)の工程でヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片を移植した後、前記ゲル状基質をその移植部位にさらに加える、[1]又は[2]に記載の作製方法。
[4] 前記(3)の工程でヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片を宿主動物の皮下に移植する、[1]〜[3]のいずれかに記載の作製方法。
[5] 前記(1)で宿主動物にエストロゲンを投与する、[1]〜[4]のいずれかに記載の作製方法。
[6] エストロゲンを連続的に投与する、[5]に記載の作製方法。
[7] ヒト子宮筋腫が閉経前女性由来のヒト子宮筋腫である、[1]〜[6]のいずれかに記載の作製方法。
[8] 宿主動物がNOGマウス(登録商標)である、[1]〜[7]のいずれかに記載の作製方法。
[9] ゲル状基質がラミニン、コラーゲンVI及びエンタクチンを含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の作製方法。
[10] ゲル状基質がBDマトリゲルである、[9]に記載の作製方法。
本発明のヒト子宮筋腫モデル動物作製方法によれば、ヒト子宮筋腫組織を非ヒト宿主動物に簡便かつ安定に生着させたヒト子宮筋腫モデル動物を作製することができる。
本発明のヒト子宮筋腫モデル動物作製方法によれば、ヒト子宮筋腫モデル動物を安定に供給することができる。
ヒト子宮筋腫モデル動物作製方法のフローチャートを示す。 (a)本発明の製造方法で得られたヒト子宮筋腫モデルマウスを移植4週後に背面から観察した図である。背面の毛は、剃毛している。図中、黒矢印は、移植したヒト子宮筋腫組織部分を示す。(b)(a)の枠内の拡大図を示す。 移植4週後におけるヒト子宮筋腫モデルマウスの移植部分(図2の黒矢印部分)の薄層切片をHE染色した図である。図中、濃い斑点は、移植片を構成する細胞の核を示す。 移植4週後におけるヒト子宮筋腫モデルマウスの移植部分をHE染色した薄層切片をさらに拡大した図である。図中、全体に広がった斑点部分(一部を黒矢印で示す)は核であり、白抜矢印で示す4つは移植片内の血管断面であり、その血管内にある矢頭部分は血球を示す。 移植4週後におけるヒト子宮筋腫モデルマウスの移植部分の薄層切片を核タンパク質であるKi67に対する抗体で染色した図である。図中、濃い斑点部分は、移植片を構成する細胞の核を示す。 移植4週後におけるヒト子宮筋腫モデルマウスの移植部分の薄層切片を抗ER(エストロゲン受容体)抗体で染色した図である。 移植4週後におけるヒト子宮筋腫モデルマウスの移植部分の薄層切片を抗PR(プロゲステロン受容体)抗体で染色した図である。 移植4週後におけるヒト子宮筋腫モデルマウスの移植部分の薄層切片を抗SMA(平滑筋アクチン)抗体で染色した図である。
<ヒト子宮筋腫モデル動物作製方法>
本発明のヒト子宮筋腫モデル動物作製方法のフローを図1に示す。本発明の作製方法は、この図に示すように「宿主動物準備工程」(001)、「ヒト子宮筋腫細胞等調製工程」(002)及び「移植工程」(003)を含む。なお、図1では、宿主動物準備工程(001)がヒト子宮筋腫細胞等調製工程(002)に先行する場合を示しているが、これら2つの工程の順序は、本発明では特に制限しない。例えば、ヒト子宮筋腫細胞等調製工程が宿主動物準備工程よりも先に行われてもよいし、宿主動物準備工程とヒト子宮筋腫細胞等調製工程とを同時平行して行うこともできる。以下、それぞれの工程について具体的に説明をする。
1.宿主動物準備工程
本実施形態の第1の工程は、宿主動物準備工程(001)である。免疫不全非ヒト動物を宿主動物として本発明に利用可能なように準備する、すなわち事前調整することを特徴とする。
本発明で用いる「免疫不全非ヒト動物」は、機能的なT細胞及びB細胞を欠失し、かつIL-2Rγ遺伝子を破壊又は欠失したいわゆる重症複合免疫不全非ヒト動物である。
「機能的なT細胞及びB細胞」とは、正常な機能を有するT細胞及びB細胞を意味し、「機能的なT細胞及びB細胞を欠失し」た動物とは、正常な機能を有するT細胞及びB細胞がその個体中に存在しないことをいう。
「IL-2Rγ遺伝子」は、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9及びIL-15の受容体成分の一つであるIL-2Rγ鎖をコードする遺伝子である(Sugamura K, 1996, Annu Rev Immunol., 14: 179-205)。「IL-2Rγ遺伝子を破壊又は欠失した」動物とは、このIL-2Rγ遺伝子が自然発生的な突然変異、相同組換えによる遺伝子ノックアウト(KO)手法、紫外線照射等の物理的手法又は突然変異誘発剤処理等の化学的手法によって、正常な機能を有するIL-2Rγ鎖を発現できない動物又はIL-2Rγ遺伝子それ自体がゲノム等から失われている動物をいう。
「非ヒト動物」とは、ヒト以外の動物、好ましくはヒト以外の哺乳動物である。哺乳動物の種類は、特に限定はしないが、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ又はウシが挙げられる。後述するように、マウスは、上記遺伝的性質を有する系統が既に知られている他、大きな飼育スペースを要さず、また、全ゲノム配列をはじめとする多数の遺伝学的情報が集積され、それらの情報検索も可能なため特に有用である。本発明で用いる非ヒト動物は、原則として雌個体を使用する。これは、子宮筋腫細胞の増殖がエストロゲンに依存することから、内因性のエストロゲン濃度の高い個体、すなわち雌個体の方がヒト子宮筋腫細胞又はヒト子宮筋腫組織片の生着率が高いと考えられるためである。
本発明で用いる宿主動物は、上記遺伝的性質を有する非ヒト動物を交配等による当該分野で公知の技術によって作製してもよく、また上記遺伝的性質を有する既存の動物系統を用いてもよい。既存の動物系統としては、例えば、NOGマウス(登録商標)(正式名:NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Sug/Jic)(特許第3753321号)(財団法人実験動物中央研究所)を利用することができる。宿主動物は、以降の操作を行なう1週間以上前から一定の環境下に置いて予備飼育しておくことが望ましい。移動や新しい環境によるストレスを軽減させるためである。
本発明で用いる宿主動物は、後述する移植工程前にエストロゲンを投与することが好ましい。前述のように、エストロゲンは、子宮筋腫細胞の増殖に関与することから、高エストロゲン状態の個体の方がヒト子宮筋腫細胞又はヒト子宮筋腫組織片の生着率が高いと考えられるためである。エストロゲンの投与量は、投与する宿主動物種、個体の大きさ、年齢及び一日あたりの投与回数を考慮して当該分野で公知の投与量に基づいて適宜定めればよい。例えば、マウスの場合、約10〜40μg/日、好ましくは約15〜35μg/日、より好ましくは約20〜30μg/日となるように投与すればよい。投与方法は、特に限定はしない。例えば、経口投与、組織内投与(例えば、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与)、局所投与(例えば、経皮投与)又は経直腸的投与が挙げられる。組織内投与の場合、注射で投与することもできる。注射の場合、注入部位は特に限定しない。例えば、静脈内、動脈内、肝臓内、筋肉内、関節内、骨髄内、髄腔内、心室内、経皮、皮下、皮内、腹腔内、鼻腔内、腸内又は舌下等が挙げられる。好ましくは静脈内注射又は動脈内注射等の血管内への注射である。エストロゲンの投与は、移植工程2週間〜3日前より宿主動物に対して行なっておくことが好ましい。また、エストロゲンの投与は、初回投与から移植工程前まで連続的に行なうことが好ましい。宿主動物の高エストロゲン状態を維持するためである。したがって、注射で投与する場合には、体内のエストロゲン濃度が投与前の値に戻る前に定期的に投与することが望ましい。この他、連続的な組織内投与として、徐放性エストロゲン剤(例えば、エストロゲンペレット)を、例えば、皮下又は腹腔内に投与する方法も挙げられる。この方法は、一度投与すれば除放期間内であれば再度の投与をする必要がないため便利である。徐放性エストロゲン剤を投与する場合には、一日当たりの除放量が宿主動物の一日あたりの投与量範囲内となるように留意する。また、徐放性エストロゲン剤の皮下又は腹腔内投与は、当該分野で公知の方法に従って行なえばよい。例えば、「図解・実験動物技術集I:アドスリー」に記載の方法に従って行なうことができる。
2.ヒト子宮筋腫細胞等調製工程
本実施形態の第2の工程は、ヒト子宮筋腫細胞等調製工程(002)である。本工程は、宿主動物への移植用として、検体から摘出した後のヒト子宮筋腫からヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片を調製することを特徴とする。
本発明で「ヒト子宮筋腫細胞」とは、ヒト子宮筋腫に由来する単一細胞又は複数の細胞の集団(例えば、細胞塊)であって、細胞培養を介したヒト子宮筋腫細胞をいう。一方、本発明で「ヒト子宮筋腫組織片」とは、ヒト子宮筋腫を解剖用バサミ若しくは剪刀等の器具又はミクロトームのような装置を用いて物理的に断片化した組織片をいう。組織片の大きさは、特に制限はなく、宿主動物の種類及び/又は大きさによって適宜定めればよい。例えば、ブタ以上の大型の宿主動物であれば、約1mm3〜約20mm3程度あればよく、ウサギやイヌのような中型の宿主動物であれば、約1mm3〜約10mm3程度あればよい。またマウスやラットのような小型の宿主動物であれば、約0.5mm3〜約5mm3程度、好ましくは約1mm3〜約3mm3程度あればよい。また、組織片の形状も限定はしない。略立方形であれば、移植時にピンセット等で掴みやすいので便利である。
本発明では、ヒト子宮筋腫細胞、ヒト子宮筋腫組織片又はそれらの組合せのいずれも使用することができる。ヒト子宮筋腫細胞は、凍結保存によって必要な時に利用できるという入手の点において好ましく、ヒト子宮筋腫組織片は、調製が簡便で、子宮筋腫という組織構造を維持した状態で移植できる点において好ましい。
使用するヒト子宮筋腫は、インフォームドコンセントにより合意を得た検体、すなわち子宮筋腫を有する女性患者から摘出された後の子宮筋腫部分又は子宮筋腫を含む子宮の該筋腫部分である。ヒト子宮筋腫は、ヒト子宮筋腫組織片として使用する場合、また、ヒト子宮筋腫細胞の初代培養用として使用する場合、摘出後低温下(約4℃前後)に置いた状態で48時間以内、好ましくは24時間以内、より好ましくは4時間以内のものを使用することが好ましい。
使用するヒト子宮筋腫の種類は、特に制限はしない。例えば、筋層内筋腫、漿膜下筋腫(有茎漿膜下筋腫を含む)又は粘膜下筋腫(有茎粘膜下筋腫を含む)のいずれの筋腫由来の細胞又は組織片も用いることができる。また、ヒト子宮筋腫の状態も、特に制限するものではないが、好ましくは、閉経前の女性由来の筋腫がよい。閉経後の子宮筋腫は、組織学的に変性している可能性があるためである。また、検体の年齢も特に制限はしない。
ヒト子宮筋腫からヒト子宮筋腫細胞を初代培養する場合、細胞培養方法は、当該分野で公知の技術を用いることができる。例えば、Matsuo H, et al., 1997, J Clin Endocrinol Metab 82:293-299.に従って行なえばよい。初代培養細胞は、−80℃等の極低温下で長期間保存することもできる。継代培養細胞を使用する場合、初代細胞からの継代数が5回以下、好ましくは3回以下であることが好ましい。
なお、本明細書では、特に断りのない限り、以降「ヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片」をまとめて、「ヒト子宮筋腫細胞等」とする。
3.移植工程
本実施形態の第3の工程は、移植工程である。本工程は、ヒト子宮筋腫細胞等をゲル状基質と共に前記宿主動物内に移植することを特徴とする。
本明細書で「ゲル状基質」とは、細胞外マトリクス成分を含み、常温(約10℃〜40℃)においてゲル化し、哺乳動物の細胞基底膜に類似する生物活性を有する可溶化物質を言う。「細胞外マトリクス」(Extra Cellular Matrix:ECM)とは、多細胞生物において各細胞の周辺及び細胞間に存在し、細胞接着や増殖因子の提供及び細胞間の充填に寄与するタンパク質等の複合体である。
「細胞外マトリクス成分」とは、細胞外マトリクスを構成するタンパク質、プロテオグリカン及びヒアルロン酸等をいう。細胞外マトリクス成分は、生物種によってその成分構成が異なるが、本発明の細胞外マトリクス成分は、脊椎動物由来、好ましくは哺乳動物由来の細胞外マトリクス成分である。具体的には、例えば、タンパク質であれば、ラミニン、コラーゲンVI、エンタクチン、フィブロネクチン、エラスチンの他、各種増殖因子、例えば、EGF(上皮細胞増殖因子:Epidermal Growth Factor)、FGF(線維芽細胞増殖因子:Fibroblast Growth Factor)、IGF(インシュリン様増殖因子:Insulin-like growth factor)、NGF(神経増殖因子:Nerve Growth Factor)、TGF-β(トランスフォーミング増殖因子β:Transforming Growth Factor β)が挙げられる。また、プロテオグリカンであれば、例えば、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(例えば、シンデカン、グリピカン、パールカン)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(例えば、アグリカン、バーシカン)及びデルマタン硫酸プロテオグリカン(例えば、ビグリカン、デコリン)が挙げられる。本発明のゲル状基質は、細胞外マトリクス成分としてこれらのタンパク質、プロテオグリカン及び/又はヒアルロン酸を任意の組合せで含むことができる。特に、ラミニン、コラーゲンVI及びエンタクチンは、本発明のゲル状基質の主要成分として含有されていることが好ましい。
ゲル状基質は、ライフサイエンス関連の各メーカーにおいて、細胞外又は細胞間マトリクス成分から成る細胞培養用ゲル状基質として市販されており、本発明では、それらを利用することもできる。そのような市販の細胞培養基質としては、例えば、BDマトリゲル(BD Matrigel Basement Membrane Matrix;BD Biosciences社)、Geltrex マトリックス(Geltrix Membrane Matrix;Invitrogen社)、EGCELL(登録商標)マトリックス(AGCテクノグラス社)が挙げられる。このうち、BDマトリゲルは、特に有用である。
3−1.麻酔
「移植工程」では、まず、前記宿主動物準備工程で事前調整した宿主動物に麻酔を行う。麻酔は、当該分野で公知の方法に従って行えばよい。麻酔薬は、例えば、ペントバルビタール、ケタミン、プロボフォール、プロカイン、ブピバカイン、セボフルラン、イソフルランを使用することができる。麻酔薬と併用して麻酔前投与剤を投与してもよい。麻酔前投与剤としては、例えば、キシラジン、メデトミジン、ジアゼパム、ドキサプラム、アセプロマジン、ブトルファノールを使用することができる。麻酔薬及び麻酔前投与薬の投与量は、投与する宿主動物の種、個体の大きさ、年齢、健康状態、必要な麻酔時間、麻酔方法、併用適合性等を考慮して当該分野で公知の投与量に基づいて適宜定めればよい。麻酔時間は、本工程の開始から完了までに必要な時間以上であることが好ましい。例えば、対象とする宿主動物種にもよるが、通常は30分〜1時間あれば足りる。また、麻酔方法は、原則として、使用する麻酔薬に適した方法を用いる。全身麻酔又は局所麻酔のいずれでもよいが、全身麻酔が好ましい。投与方法は、注射(皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、脊髄内を含む)、吸引等、使用する麻酔薬に適した方法を使用する。静脈内、腹腔内、皮下注射が好ましい。吸引方法の場合には、麻酔器のような適当な装置を使用することも可能である。また、必要に応じていくつかの麻酔を組み合わせて使用することもできる。例えば、ケタミンを注射して全身麻酔を行った後、麻酔状態を継続させるためイソフルランを吸引させてもよい。麻酔処理の一具体例として、雌マウスに全身麻酔で約1時間麻酔をする場合には50mg/kgのペントバルビタールを腹腔内投与すればよい。
3−2.切開
麻酔処理により宿主動物が沈静化し、外部刺激に対する反射が消失したことが確認できれば、次に切開を行なう。切開は、前記ヒト子宮筋腫細胞等調製工程で調製したヒト子宮筋腫細胞等の移植部位に近い部位で行なう。移植部位は、特に制限はしない。例えば、皮下、腹腔内、筋肉内(特に、子宮筋層内)のいずれであってもよい。しかし、移植に要する手間がかからないこと、開腹を要さず、宿主動物への侵襲性が低いこと、及び移植後のヒト子宮筋腫細胞等の成長の推移を外部から観察可能なこと等を考慮すれば、皮下移植が好ましい。切開部は、皮下に移植する場合であれば、例えば、宿主動物の背面部又は側面部が術後の観察が容易なため便利である。また、腹腔内や子宮筋層内に移植する場合であれば、宿主動物の腹部を切開すればよい。切開に当たっては、まず、切開部周辺の体毛を、例えば、剃刀や脱毛クリーム等を用いて除去しておくことが好ましい。移植を円滑に行うためと、術後の細菌感染を防止するためである。次に、解剖ハサミ又は剪刀を用いて宿主動物の切開部を切開する。開口部の大きさは、宿主動物の種類及び大きさ、移植するヒト子宮筋腫細胞等の大きさ、移植部位により変動するが、いずれの場合にも宿主動物への侵襲性を可能な限り低くするため、必要以上に大きくしないことが好ましい。例えば、皮下移植を行なう場合であれば、ヒト子宮筋腫細胞等の挿入が可能な程度の大きさ、すなわち、ヒト子宮筋腫細胞等の幅よりも10%〜50%程度大きな幅の開口部にすればよい。より具体的には、例えば、マウスに約3mm3のヒト子宮筋腫組織片を移植する場合であれば、約4mm幅で切開すればよい。一方、子宮筋層内に移植をする場合であれば、子宮を露出できる程度に皮膚及び腹壁を正中切開すればよい。開腹術の詳細については、当該分野の公知方法に基づいて行うことができる。例えば、「図解・実験動物技術集I:アドスリー」に記載の方法を参照されたい。
また、移植は、1匹の宿主動物に対して一以上の部位に行なうこともできる。複数部位に移植を行なう場合、各移植部位は組織的に同じ部位(例えば、いずれも皮下)であってもよいし、異なる部位(例えば、一方は皮下、他方は腹腔内)であっても構わない。したがって、必要な移植数に応じて、移植部位周辺箇所を必要な数だけ切開すればよい。
3−3.移植
続いて、前記ヒト子宮筋腫細胞等調製工程で調製されたヒト子宮筋腫細胞等を開口部から所定の場所にゲル状基質と共に挿入する。ここでいう「共に」とは、「ヒト子宮筋腫細胞等とゲル状物質が移植部位で共に存在するように」という意味であって、必ずしも同時に挿入することではない。したがって、本工程において、ヒト子宮筋腫細胞等とゲル状基質との宿主動物内への挿入の順序は、特に制限はしない。すなわち、ゲル状基質をヒト子宮筋腫細胞等の挿入前に、それと同時に、挿入後に又はそれらの組合せで挿入することができる。
ヒト子宮筋腫細胞等の挿入前にゲル状基質を宿主動物内に挿入する場合、開口部からシリンジ又はカテーテルを用いて移植部位に注入することができる。注入する量は、宿主動物の種類及び大きさ、並びに移植部位等を勘案して定めればよい。続いて移植部位に挿入するヒト子宮筋腫細胞等は、ピンセット等を用いて移植部位に挿入されたゲル状基質の中に埋め込むように挿入することが好ましい。
ヒト子宮筋腫細胞等とゲル状基質とを宿主動物内に同時に挿入する場合、ヒト子宮筋腫細胞等をゲル状基質に浸漬した後、宿主動物の開口部からピンセット等を用いて移植部位に挿入する方法が挙げられる。本方法は、予めゲル状基質に浸漬させることでゲル状基質をヒト子宮筋腫細胞等全体に付着させることができるので好ましい方法である。浸漬時間は、ヒト子宮筋腫細胞等全体に付着させるのに十分な時間であればよく、通常は30秒〜2分間程度で足りる。また、ゲル状基質にヒト子宮筋腫細胞等を浸漬させたままの状態でシリンジ等を用いて移植部位に挿入してもよい。この方法は、ヒト子宮筋腫細胞等全体にゲル状基質を付着させ、かつ十分量のゲル状基質を同時に挿入できる点で好ましい方法である。
ヒト子宮筋腫細胞等の挿入後にゲル状基質を宿主動物内に挿入する場合、ヒト子宮筋腫細胞等を移植部位に挿入した後、ゲル状基質をシリンジ又はカテーテルを用いて先に移植したヒト子宮筋腫細胞等の周辺部に注入すればよい。
あるいは、前記3つの方法を組み合わせてヒト子宮筋腫細胞等とゲル状基質を挿入することもできる。例えば、ヒト子宮筋腫細胞等をゲル状基質に浸漬させた後、所定の移植部位に挿入し、その後その部位にゲル状基質を挿入してもよい。この方法は、ヒト子宮筋腫細胞等全体にゲル状基質を予め付着させておくことができると同時に、付着のみでは不十分なゲル状基質を追加的に補充することができる点で好ましい方法である。
3−4.閉創
ヒト子宮筋腫細胞等とゲル状基質とを挿入した後は、切開による開口部を閉創する。閉創方法は、開口部の大きさ、ヒト子宮筋腫細胞等の移植部位により適宜定めればよい。例えば、移植部位が皮下で、かつ開口部の大きさが数ミリ幅のような小さな閉創の場合には、医療用アロンアルファ(登録商標)(東亜合成社)のような医療用接着剤で接着すればよい。移植部位が皮下であっても、開口部の大きさが1cmを超える場合には、当該分野で公知に方法により縫合することが好ましい。また、子宮筋層内にヒト子宮筋腫細胞等を挿入した場合であれば、子宮筋層を縫合後、筋肉層と皮膚とを連続縫合することが好ましい。
なお、本工程中は、宿主動物の体温低下を防止するため、適当な温度に加温した環境下で行うことが好ましい。例えば、手術室内を30℃及び手術台を30〜36℃程度に加温しておくことが好ましい。また、ゲル状基質は、20℃以上でゲル化が進行するため、術中、流動性を保持した温度で取り扱うようにする。また、術後は、公知の方法で宿主動物を覚醒させた後、適切な管理の下で飼育すればよい。
4.効果
上記本発明のヒト子宮筋腫モデル動物作製方法で得られたヒト子宮筋腫モデル動物は、後述する実施例で示すように、ヒト子宮筋腫細胞等が移植部位に生着し、かつ移植4週後も組織学的に子宮筋腫の性質を保持していることが明らかとなった。したがって、本発明のヒト子宮筋腫モデル動物作製方法によれば、機能的なT細胞及びB細胞を欠失し、かつIL-2Rγ遺伝子を破壊又は欠失した宿主動物にヒト子宮筋腫細胞等とゲル状基質を共に移植するだけの非常に簡便な方法によって、ヒト子宮筋腫のモデル動物を作製することができる。この方法で得られたモデル動物に、子宮筋腫のin vitro実験系で確認された薬剤を投与し、その薬剤に対する子宮筋腫の感受性を検証することで、子宮筋腫増殖シグナル伝達機構の解明やヒト子宮筋腫に対する新規薬剤の開発を進めることが可能となる。
また、本発明のヒト子宮筋腫モデル動物作製方法によれば、宿主動物の皮下にヒト子宮筋腫細胞等を生着させることが可能である。皮下移植されたヒト子宮筋腫は、皮膚から直接観察することが可能な上、腹数個の筋腫を別個に摘出する場合であっても各筋腫の摘出ごとに開腹手術する必要がないことから、侵襲性が低く、摘出も容易である。それ故、新規薬剤がヒト子宮筋腫に及ぼす経時的な影響も容易に検証することが可能となる。
<実施例1>
ヒト子宮筋腫モデルマウスの作製方法
本発明の方法に従い、ヒト子宮筋腫モデルマウスを作製した。ただし、以下で示す本発明の方法は、一具体例に過ぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
(1)宿主動物調製工程(001)
宿主動物として8〜10週齢のNOGマウス(財団法人実験動物中央研究所)の雌個体を用いた。本マウスは、動物実験施設内に搬入後、移送や環境変化によるマウスのストレスを軽減させるため、1週間予備飼育した。
続いて、前記NOGマウスにエストロゲンの投与を行なった。前記NOGマウスに50mg/kgでペントバルビタール(SIGMA社)を腹腔内投与し、麻酔をかけた。刺激反射の消失後に、後頚部の体毛をカミソリにて剃毛し、剃毛部位を解剖用ハサミで約2mm幅に切開した。開口部から、徐放性エストロゲンペレット(60日徐放型、1.5mg錠)(Innovative Research of America社)を皮下に投与した。その後、医療用アロンアルファ(東亜合成社)を用いて切開創を閉じた。
(2)ヒト子宮筋腫細胞等調製工程(002)
東北大学病院産婦人科においてインフォームドコンセントを得た45歳の子宮筋腫患者から子宮筋腫核手術によって摘出された子宮筋腫を解剖ハサミで適当な大きさ(1〜数cm3程度)に裁断した。裁断後の子宮筋腫を50mlのPBSバッファ中に入れ、4℃で一時保存して、東北大学医学部動物実験施設に移送した。同施設のクリーンベンチ内で、バッファ中の子宮筋腫をさらに約3mm×約3mm×約2mmに解剖用ハサミで裁断し、ヒト子宮筋腫組織片を調製した。本工程は、前記宿主動物調製工程における宿主動物へのエストロゲン投与5日後に行なった。
(3)ヒト子宮筋腫移植工程(003)
エストロゲン投与したNOGマウスに50mg/kgのペントバルビタールを腹腔内投与して麻酔をかけた。刺激反射の消失を確認後、移植部位であるNOGマウス背部の体毛をカミソリで剃毛した。解剖ハサミを用いて移植部位を約4mm幅で2箇所切開した。前記工程で調製したヒト子宮筋腫組織片をBDマトリゲル(BD Matrigel Basement Membrane Matrix;BD Biosciences社)に1分間浸漬した後、前記各開口部から皮下にピンセットで移植した。
(4)ヒト子宮筋腫移植工程(004)
前記工程後、移植部位に0.5 mlのBDマトリゲル(前述)をさらにシリンジ(TERUMO社)で添加した。その後、切開創を医療用アロンアルファ(前述)で閉創した。
<実施例2>
移植組織の組織学的検証
1.薄層切片の調製
実施例1で作製したマウスを東北大学医学部動物実験施設内で常法に従って飼育した。4週間後(図2)、マウスに50mg/kgのペントバルビタールを腹腔内投与して麻酔をかけ、移植部位の組織(図2黒矢印部分)を剪刀で摘出した。
続いて、摘出した組織片を10%ホルマリンで24時間処理して固定した。パラフィン浸透を24時間行い、包理した。ミクロトーム(大和光機 REM-700-AN)を用いて薄切し、切片を作成した。
2.移植4週後における移植組織の組織学的形態(1)
従来の方法でマウスに移植されたヒト子宮筋腫組織は、通常、移植4週後には細胞が脱核して変性してしまう。そこで、本発明で作製したマウスの移植片(ヒト子宮筋腫組織)の細胞が移植4週後でも核を保持しているか、すなわち生着できているか否かを検証した。
前記「1.薄層切片の調製」で調製した移植組織の薄層切片をヘマトキシリン・エオシン(HE)(和光純薬工業)及びマウス抗ヒトKi-67モノクローナル抗体(#M 7240;Dako Cytomation社)を用いて染色した。好塩基性である核は、ヘマトキシリンによって青紫色を呈することから、その存在を確認できる。また、Ki67は、核特異的タンパク質であることから、このタンパク質の抗体染色によって核の存在を確認できる。免疫染色は、ニチレイ免疫染色キット#424022、及びヒストファインSAB-PO(M)キットを用いて、それぞれ添付のプロトコルに従って行った。
(結果)図3〜5に結果を示す。図3及び4は、移植組織の薄層切片をHE染色した結果である。これらの図では、核をHEで染色された小さな黒い斑点として確認することができた。また、図5は、移植組織の薄層切片を抗ヒトKi67抗体で染色した結果である。ヒトKi67の染色により、核の存在と同時に、その核がヒト細胞の核であることが明らかとなった。これらの結果から、移植したヒト子宮筋腫組織は、移植4週後であっても、移植部位に安定に生着していることが判明した。また、図4では、核のみならず移植組織の血管及びその内部に血球も確認できた。この結果から、移植組織内では血流も保持され、かつ血液が供給されていることも明らかとなった。
3.移植4週後における移植組織の組織学的形態(2)
マウスに移植されたヒト子宮筋腫組織が、移植4週後であっても子宮筋腫としての性質を保持しているか否かを検証した。
前記「1.薄層切片の調製」で調製した移植組織の薄層切片を抗エストロゲン受容体(ER)抗体(Mouse X Estrogen receptor 2nd Gen Predilute #08-1149;ニチレイ社)、抗プロゲステロン受容体(PR)抗体(マウス抗プロゲステロン受容体モノクローナル抗体#MAB429;Millipore社)及び抗SMA(平滑筋アクチン)抗体(マウス抗ヒト平滑筋アクチン(SMA)抗体#M0851;Dako Cytomation社)を用いてそれぞれ染色した。免疫染色は、ニチレイ免疫染色キット#424022、及びヒストファインSAB-PO(M)キットを用いて、それぞれ添付のプロトコルに従って行った。
(結果)図6〜8に結果を示す。図6、7及び8は、それぞれ移植組織の薄層切片を前記抗ER抗体、抗PR抗体及び抗SMA抗体で染色した結果である。これらの結果から、移植組織は、皮下組織では発現していないER及びPRを発現し、かつ子宮筋と同様の平滑筋の性質を有していることが明らかとなった。これは、移植組織が移植4週後も子宮筋腫の特徴を保持していることを示している。
したがって、本発明の作製方法で作製されたヒト子宮筋腫モデル動物は、ヒト子宮筋腫のモデル動物として有用であることが明らかとなった。

Claims (10)

  1. (1)機能的なT細胞及びB細胞を欠失し、かつIL-2Rγ遺伝子を破壊又は欠失した免疫不全非ヒト動物を宿主動物として準備する工程、
    (2)摘出後のヒト子宮筋腫からヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片を調製する工程、及び
    (3)ヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片を、細胞外マトリックス成分を含むゲル状基質と共に前記宿主動物内に移植する工程
    を含むヒト子宮筋腫モデル動物の作製方法。
  2. 前記(3)の工程でヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片を前記ゲル状基質に浸漬した後に宿主動物に移植する、請求項1に記載の作製方法。
  3. 前記(3)の工程でヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片を移植した後、前記ゲル状基質をその移植部位にさらに加える、請求項1又は2に記載の作製方法。
  4. 前記(3)の工程でヒト子宮筋腫細胞及び/又はヒト子宮筋腫組織片を宿主動物の皮下に移植する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の作製方法。
  5. 前記(1)の工程で宿主動物にエストロゲンを投与する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の作製方法。
  6. エストロゲンを連続的に投与する、請求項5に記載の作製方法。
  7. ヒト子宮筋腫が閉経前女性由来のヒト子宮筋腫である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の作製方法。
  8. 宿主動物がNOGマウス(登録商標)である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の作製方法。
  9. ゲル状基質がラミニン、コラーゲンVI及びエンタクチンを含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の作製方法。
  10. ゲル状基質がBDマトリゲルである、請求項9に記載の作製方法。
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