JP2011132642A - 繊維材料及び繊維 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロースに含まれる水酸基の水素原子が、下記A)で置換された基を少なくとも1つ、及び下記B)で置換された基を少なくとも1つ含むセルロース誘導体を含有する繊維材料。
A)炭化水素基:−RA
B)アシル基:−CO−RB(RBは炭化水素基を表す。)
【選択図】なし
Description
一方、セルロース系繊維は、合成繊維と比べて自然環境中での生分解性が高く、また吸水性が高い、肌触りがよい、など様々な利点を有するため、衣料用途など多方面に幅広く利用されている。しかし合成繊維に比べ、繊維強度、繊維伸度の点で劣るという欠点を有する。
一方、植物由来のセルロース系繊維は、元々、植物が大気中の二酸化炭素と水とを原料として光合成反応によって生成したものである。そのため、植物由来のセルロース系繊維を焼却して二酸化炭素が発生しても、その二酸化炭素は元々、大気中にあった二酸化炭素に相当するものであるから、大気中の二酸化炭素の収支はプラスマイナスゼロとなり、結局、大気中のCO2の総量を増加させない、という考え方がある。このような考えから、植物由来のセルロース系繊維は、いわゆる「カーボンニュートラル」な材料といえる。従って、石油由来の繊維の使用を低減し、カーボンニュートラルな材料を用いることは、近年、急務となっている地球温暖化の防止に対し、非常に貢献度が高い。
しかし、より完全なカーボンニュートラルな材料を目指す観点から、さらなる改良が求められている。
すなわち、上記課題は以下の手段により達成することができる。
[1]
セルロースに含まれる水酸基の水素原子が、
下記A)で置換された基を少なくとも1つ、及び
下記B)で置換された基を少なくとも1つ含むセルロース誘導体を含有する繊維材料。
A)炭化水素基:−RA
B)アシル基:−CO−RB(RBは炭化水素基を表す。)
[2]
前記セルロース誘導体が、更に、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が下記C)で置換された基を少なくとも1つ含む、[1]に記載の繊維材料。
C)アルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基(RC1は炭化水素基を表し、RC2は炭素数が2又は3のアルキレン基を表す。)
[3]
前記C)アルキレンオキシ基とアシル基とを含む基が、下記一般式(3)で表される構造を含む基である、[1]又は[2]に記載の繊維材料。
[4]
前記RAが炭素数1〜4のアルキル基である、[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維材料。
[5]
前記RAがメチル基又はエチル基である、[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維材料。
[6]
前記RB及びRC1が、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基である、[1]〜[5]のいずれかに記載の繊維材料。
[7]
前記RB及びRC1が、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、又はプロピル基である、[1]〜[6]のいずれかに記載の繊維材料。
[8]
前記RBが、炭素数3〜10の分岐構造を有する炭化水素基である、[1]〜[6]のいずれかに記載の繊維材料。
[9]
前記アルキレンオキシ基が下記式(1)又は(2)で表される基である、[2]〜[8]のいずれかに記載の繊維材料。
前記セルロース誘導体が、カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を実質的に有さない、[1]〜[9]のいずれかに記載の繊維材料。
[11]
前記セルロース誘導体が水に不溶である、[1]〜[10]のいずれかに記載の繊維材料。
[12]
更に、可塑剤を含む[1]〜[11]のいずれかに記載の繊維材料。
[13]
[1]〜[12]のいずれかに記載の繊維材料を紡糸して得られる繊維。
[14]
形状が、糸状、綿状、布状又は不織布状である[13]に記載の繊維。
下記A)で置換された基を少なくとも1つ、及び
下記B)で置換された基を少なくとも1つ含むセルロース誘導体を含有する繊維材料に関する。
A)炭化水素基:−RA
B)アシル基:−CO−RB(RBは炭化水素基を表す。)
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の繊維材料に含まれるセルロース誘導体は、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が、
下記A)で置換された基を少なくとも1つ、及び
下記B)で置換された基を少なくとも1つ含むセルロース誘導体である。
A)炭化水素基:−RA
B)アシル基:−CO−RB(RBは炭化水素基を表す。)
すなわち、本発明におけるセルロース誘導体は、セルロースエーテルエステルであり、セルロース{(C6H10O5)n}に含まれる水酸基の水素原子の少なくとも一部が、A)炭化水素基:−RA、B)アシル基:−CO−RB(RBは炭化水素基を表す。)により置換されている。
より詳細には、本発明におけるセルロース誘導体は、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を有する。
更には、セルロースは完全な植物由来成分であるため、カーボンニュートラルであり、環境に対する負荷を大幅に低減することができる。
より具体的な態様としては、例えば以下の態様が挙げられる。
(1)R2、R3及びR6の少なくとも1つが、A)炭化水素基で置換されている繰り返し単位と、R2、R3及びR6の少なくとも1つが、B)アシル基で置換されている繰り返し単位と、から構成されるセルロース誘導体。
(2)ひとつの繰り返し単位のR2、R3及びR6のいずれかがA)炭化水素基、及びB)アシル基で置換されている(すなわち、ひとつの繰り返し単位中に前記A)及びB)の置換基を有する)同種の繰り返し単位から構成されるセルロース誘導体。
(3)置換位置や置換基の種類が異なる繰り返し単位が、ランダムに結合しているセルロース誘導体。
また、セルロース誘導体には、無置換の繰り返し単位(すなわち、前記一般式(A)において、R2、R3及びR6すべてが水素原子である繰り返し単位)を含んでいてもよい。
また、セルロース誘導体は、水素原子、A)炭化水素基、及びB)アシル基以外のその他の置換基を有していても良い。
RAが脂肪族基である場合は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよく、不飽和結合を持っていてもよい。脂肪族基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
RAが芳香族基である場合は、単環、及び縮環のいずれでもよい。RAが芳香族基である場合の好ましい炭素数は6〜18であり、より好ましくは6〜14、更に好ましくは6〜10である。芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
A)炭化水素基は、得られる繊維の繊維強度が優れることから、脂肪族基であることが好ましく、紡糸性や製糸性が優れることから、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(低級アルキル基)である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、イソヘプチル基等が挙げられ、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
RBが脂肪族基である場合は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよく、不飽和結合を持っていてもよい。脂肪族基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
RBが芳香族基である場合は、単環、及び縮環のいずれでもよい。芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
RBは、好ましくはアルキル基又はアリール基である。RBは、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基であり、更に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくは炭素数1又は2のアルキル基(すなわち、メチル基又はエチル基)である。
また、RBは、炭素数3〜10の分岐構造を有する炭化水素基であることも好ましく、炭素数3〜10の分岐構造を有するアルキル基であることがより好ましく、炭素数7〜9の分岐構造を有するアルキル基であることが更に好ましい。
RBとしては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、及びイソヘプチル基等が挙げられる。好ましくは、RBはメチル基、エチル基、プロピル基、又は2−エチルヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、又は2−エチルヘキシル基である。
C)アルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基(RC1は炭化水素基を表し、RC2は炭素数が2又は3のアルキレン基を表す。)
アルキレンオキシ基(−RC2−O−)としては、具体的には下記構造が挙げられる。
また、本発明におけるセルロース誘導体は、アルキレンオキシ基を1つだけ含む前記C)の基(上記一般式(3)においてnが1である基)と、アルキレンオキシ基を2以上含む前記C)の基(上記一般式(3)においてnが2以上である基)とを含んでいてもよい。
なお、「カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を実質的に有さない」とは、本発明におけるセルロース誘導体が全くカルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を有さない場合のみならず、本発明におけるセルロース誘導体が水に不溶な範囲で微量のカルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を有する場合を包含するものとする。例えば、原料であるセルロースにカルボキシル基が含まれる場合があり、これを用いて前記A)〜C)の置換基を導入したセルロース誘導体はカルボキシル基が含まれる場合があるが、これは「カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を実質的に有さないセルロース誘導体」に含まれるものとする。
この場合、カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩の好ましい含有量としては、セルロース誘導体に対して1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
アセチルメチルセルロース、アセチルエチルセルロース、アセチルプロピルセルロース、アセチルブチルセルロース、アセチルペンチルセルロース、アセチルヘキシルセルロース、アセチルシクロヘキシルセルロース、アセチルフェニルセルロース、アセチルナフチルセルロース、
B)アシル基(−CO−RB)の置換度DSB(繰り返し単位中、β−グルコース環のセルロース構造の2位、3位及び6位の水酸基に対する−CO−RBの数)は、0.1<DSBであることが好ましく、0.1<DSB<2.0であることがより好ましい。
C)アルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基の置換度DSC(繰り返し単位中、β−グルコース環のセルロース構造の2位、3位及び6位の水酸基に対するC)アルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基の数)は、0<DSCであることが好ましく、0<DSC<1.0であることがより好ましい。0<DSCであることにより、セルロース誘導体の溶融開始温度を低くできるので、紡糸をより容易に行うことができる。
上記のような範囲の置換度とすることにより、繊維強度及び紡糸性等を向上させることができる。
分子量分布(MWD)は1.1〜10.0の範囲が好ましく、1.5〜8.0の範囲が更に好ましい。この範囲の分子量分布とすることにより、紡糸性や製糸性等を向上させることができる。
本発明における、数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行うことができる。具体的には、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めることができる。
本発明におけるセルロース誘導体の製造方法は特に限定されず、セルロースを原料とし、セルロースに対しエーテル化及びエステル化することにより本発明におけるセルロース誘導体を製造することができる。セルロースの原料としては限定的でなく、例えば、綿、リンター、パルプ等が挙げられる。
前記セルロースエーテルとしては、例えば、セルロースに含まれるβ−グルコース環の2位、3位、及び6位の水酸基の水素原子の少なくとも一部が、炭化水素基に置換されたものを用いることができ、具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、アリルセルロース、ベンジルセルロース等が挙げられる。
また、別の態様として、例えばメチルセルロース、エチルセルロース等のセルロースエーテルにプロピレンオキサイド等によりエーテル化するか、又はセルロースにメチルクロライド、エチルクロライド等のアルキルクロライド/炭素数3のアルキレンオキサイド等を作用させた後、更に酸クロライド又は酸無水物等を反応させることにより、エステル化する工程を含む方法も挙げられる。
酸クロライドを反応させる方法としては、例えばCellulose 10;283−296,2003に記載の方法を用いることができる。
炭化水素基とヒドロキシエチル基を有するセルロースエーテルとしては、具体的には、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルアリルセルロース、ヒドロキシエチルベンジルセルロース等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースである。
炭化水素基とヒドロキシプロピル基を有するセルロースエーテルとしては、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルアリルセルロース、ヒドロキシプロピルベンジルセルロース等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースである。
なお、前述したとおり、本発明におけるセルロース誘導体は置換基としてカルボン酸を有さないことが好ましいため、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸等のジカルボン酸等、セルロースと反応させてカルボキシル基が生じる化合物を用いないことが好ましい。
本発明の繊維材料は可塑剤を含有してもよい。
可塑剤を含有することで、繊維材料の熱流動性が良好となり、溶融紡糸時の生産性の向上に寄与し、紡糸性をより良好にすることができる。
本発明で使用する可塑剤としては、本発明におけるセルロース誘導体に混和するものであれば、一般にポリマーの紡糸時に可塑剤として用いられる公知のものを特に制限なく用いることができ、例えばポリエステル系可塑剤、グリセリン系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤、ポリアルキレングリコール系可塑剤及びエポキシ系可塑剤などを挙げることができる。これらの可塑剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の繊維材料は、上記で説明したセルロース誘導体を含有している。また必要に応じて可塑剤を含有することができ、更にその他の添加剤を含有することができる。
本発明の繊維材料に含まれる成分の含有割合は、特に限定されない。好ましくはセルロース誘導体を50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85〜98質量%含有する。
フィラーとしては、公知のものを使用できる。フィラーの形状は、繊維状、板状、粒状、粉末状等いずれでもよい。また、無機物でも有機物でもよい。
具体的には、無機フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等の繊維状の無機フィラーや;ガラスフレーク、非膨潤性雲母、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土等の板状や粒状の無機フィラーが挙げられる。
難燃剤は、特に限定されず、常用のものを用いることができる。例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、窒素化合物系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。これらの中でも、樹脂との複合時や紡糸時に熱分解してハロゲン化水素が発生して加工機械や金型を腐食させたり、作業環境を悪化させたりすることがなく、また、焼却廃棄時にハロゲンが気散したり、分解してダイオキシン類等の有害物質の発生等によって環境に悪影響を与える可能性が少ないことから、リン含有難燃剤及びケイ素含有難燃剤が好ましい。
これらのリン含有難燃剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのケイ素含有難燃剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他の成分としては、例えば、前記セルロース誘導体以外のポリマー、安定剤(紫外線吸収剤など)、離型剤(脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーン)、帯電防止剤、難燃助剤、加工助剤、ドリップ防止剤、抗菌剤、防カビ剤等が挙げられる。更に、染料や顔料を含む着色剤などを添加することもできる。
また、各種アクリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、ジエン系ゴム(例えば、1,4−ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体(例えば、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合させたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエン又はイソプレンとの共重合体、ブチルゴム、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、その他ポリウレタン系やポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
これらのポリマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明の繊維は、前記セルロース誘導体を含む繊維材料を紡糸及び製糸することにより得られる。より具体的には、前記セルロース誘導体、又は、前記セルロース誘導体及び必要に応じて各種添加剤等を含む繊維材料を加熱し、各種の紡糸方法により紡糸する工程を含む製造方法によって得られる。
また、強度を保つ点から1dtex以上が好ましく、ソフトな風合いを得る観点から40dtex以下であることが好ましい。
<合成例1:アセトキシプロピルメチルアセチルセルロース(C−1)の合成>
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた5Lの三ツ口フラスコにヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メトローズ90SH−100;信越化学製)60g、N,N−ジメチルアセトアミド2100mLを量り取り、室温で攪拌した。反応系が透明になり完溶したことを確認した後、アセチルクロライド101mLをゆっくりと滴下し、系の温度を80〜90℃に昇温した。このまま3時間攪拌した後、反応系の温度を室温まで冷却した。反応溶液を水10Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量の水で3回洗浄を行った。得られた白色固体を100℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体(C−1)(アセトキシプロピルメチルアセチルセルロース)を白色粉体として得た。
合成例1におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メトローズ90SH−100;信越化学製)をヒドロキシエチルメチルセルロース(商品名マーポローズME−250T;松本油脂製)、メチルセルロース(商品名マーポローズM−4000:松本油脂製株式会社製)、エチルセルロース(商品名エトセル300CP:ダウケミカル製)に変更した以外は合成例1と同様にしてアセトキシエチルメチルアセチルセルロース(C−2)、メチルアセチルセルロース(C−3)、エチルアセチルセルロース(C−4)を得た。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた3Lの三ツ口フラスコにメチルセルロース(和光純薬製:メチル置換度1.8)80g、ピリジン1500mLを量り取り、室温で攪拌した。ここに水冷下、2−エチルヘキサノイルクロリド173mLをゆっくりと滴下し、更に60℃で6時間攪拌した。反応後、室温に戻し、氷冷下、メタノール200mLを加えてクエンチした。反応溶液を水12Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノール溶媒で3回洗浄を行った。得られた白色固体を100℃で6時間真空乾燥することによりメチルセルロース−2−エチルヘキサノエート(C−5)を得た。
合成例5におけるメチルセルロース(和光純薬製:メチル置換度1.8)に変えて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メトローズ90SH−100;信越化学製)、及び2−エチルヘキサノイルクロリドに変えてバレロイルクロライドを用いた以外、合成例5と同様にして、バレロキシプロピルブバレロイルセルロース(C−6)を得た。
合成例6におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メトローズ90SH−100;信越化学製)をヒドロキシブチルメチルセルロース(メトローズSM4000:信越化学製)を用いた以外、合成例6と同様にしてバレロキシブチルメチルバレロイルセルロース(C−7)を得た。
得られたセルロース誘導体について、数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、を測定した。これらの測定方法は以下の通りである。
[分子量及び分子量分布]
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いた。具体的には、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めた。GPC装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)を使用した。
100℃、12時間の真空乾燥により絶乾状態とした合成例1で得られたセルロース系ポリマー(C−1)88質量%と可塑剤(アジピン酸ジオクチル)12質量%とを混練機を用いて200℃で混練し、ペレット状の組成物を得た。
この組成物を、単軸型溶融紡糸機を用いてメルター温度230℃にて溶融させ、紡糸温度230度とした溶融紡糸パックへ導入して、吐出量6.3g/分の条件で、0.23mmφ−0.30mmLの口金孔を6ホール有する口金より紡出させた。紡出糸条を25℃のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束した後、450m/分で回転する第1ゴデットローラーにて引き取り、第1ゴデットローラーと同じ速度で回転する第2ゴデットローラーを介して、巻き取り張力が0.1cN/dtexとなる速度で回転するワインダーにて巻き取った。製糸性は極めて良好であり、糸切れは全く認められなかった(評価○)。
得られた繊維は、強度が1.5cN/dtex、伸度が29%、単糸繊度が22dtexであった。
得られた繊維を筒編み機(丸善産業(株)製筒編み機MR1型、27ゲージ)にて、編み地の作製を試みたところ、編み立て性は良好であり、ソフトな風合いを有する編み地が得られた(評価○)。
実施例1の製造例において、用いるセルロース系ポリマーを(C−1)から(C−2)に変更し、ペレット状の組成物を得た。
また同様に溶融紡糸を行い、製糸性は極めて良好であり、糸切れは全く認められなかった(評価○)。得られた繊維は、強度が1.4cN/dtex、伸度が25%、単糸繊度が24dtexであった。
得られた繊維を筒編み機(丸善産業(株)製筒編み機MR1型、27ゲージ)にて、編み地の作製を試みたところ、編み立て性は良好であり、ソフトな風合いを有する編み地が得られた(評価○)。
実施例1の製造例において、用いるセルロース系ポリマーを(C−1)から(C−3)に変更し、ペレット状の組成物を得た。
また同様に溶融紡糸を行い、製糸性は極めて良好であり、糸切れは全く認められなかった(評価○)。得られた繊維は、強度が1.1cN/dtex、伸度が30%、単糸繊度が21dtexであった。
得られた繊維を筒編み機(丸善産業(株)製筒編み機MR1型、27ゲージ)にて、編み地の作製を試みたところ、編み立て性は良好であり、ソフトな風合いを有する編み地が得られた(評価○)。
実施例1の製造例において、用いるセルロース系ポリマーを(C−1)から(C−4)に変更し、ペレット状の組成物を得た。
また同様に溶融紡糸を行い、製糸性は極めて良好であり、糸切れは全く認められなかった(評価○)。得られた繊維は、強度が1.2cN/dtex、伸度が30%、単糸繊度が22dtexであった。
得られた繊維を筒編み機(丸善産業(株)製筒編み機MR1型、27ゲージ)にて、編み地の作製を試みたところ、編み立て性は良好であり、ソフトな風合いを有する編み地が得られた(評価○)。
実施例1の製造例において、用いるセルロース系ポリマーを(C−1)から(C−5)に変更し、ペレット状の組成物を得た。
また同様に溶融紡糸を行い、製糸性は極めて良好であり、糸切れは全く認められなかった(評価○)。得られた繊維は、強度が1.0cN/dtex、伸度が39%、単糸繊度が20dtexであった。
得られた繊維を筒編み機(丸善産業(株)製筒編み機MR1型、27ゲージ)にて、編み地の作製を試みたところ、編み立て性は良好であり、非常にソフトな風合いを有する編み地が得られた(評価○)。
実施例1の製造例において、用いるセルロース系ポリマーを(C−1)から(C−6)に変更し、ペレット状の組成物を得た。
また同様に溶融紡糸を行い、製糸性は良好であったが、糸切れが度々発生した(評価△)。得られた繊維は、強度が1.0cN/dtex、伸度が24%、単糸繊度が22dtexであった。
得られた繊維を筒編み機(丸善産業(株)製筒編み機MR1型、27ゲージ)にて、編み地の作製を試みたところ、編み立て性は良好、ソフトな風合いだが多少のごわつきを有する編み地が得られた(評価△)。
実施例1の製造例において、用いるセルロース系ポリマーを(C−1)から(C−7)に変更し、ペレット状の組成物を得た。
また同様に溶融紡糸を行い、製糸性は良好であったが、糸切れが度々発生した(評価△)。得られた繊維は、強度が1.0cN/dtex、伸度が21%、単糸繊度が20dtexであった。
得られた繊維を筒編み機(丸善産業(株)製筒編み機MR1型、27ゲージ)にて、編み地の作製を試みたところ、編み立て性は良好、ソフトな風合いだが多少のごわつきを有する編み地が得られた(評価△)。
実施例1の製造例において、可塑剤を使用せずにセルロース系ポリマー(C−5)のみを100質量%とした以外は同様にして、ペレット状のセルロース誘導体を得た。
また同様に溶融紡糸を行い、製糸性は良好であったが、糸切れが度々発生した(評価△)。得られた繊維は強度が1.1cN/dtex、伸度が35%、単糸繊度が21dtexであった。
得られた繊維を筒編み機(丸善産業(株)製筒編み機MR1型、27ゲージ)にて、編み地の作製を試みたところ、編み立て性はやや難があったが、ソフトな風合いを有する編み地が得られた(評価○)。
実施例1の製造例において、用いるセルロース系ポリマーを(C−1)から(H−1)に変更し、ペレット状の組成物を得た。
また同様に溶融紡糸を行い、製糸性は極めて良好であり、糸切れは全く認められなかった(評価○)。得られた繊維は、強度が0.8cN/dtex、伸度が18%、単糸繊度が21.0dtexであった。
得られた繊維を筒編み機(丸善産業(株)製筒編み機MR1型、27ゲージ)にて、編み地の作製を試みたところ、編み立て性は良好であったが、硬めでごわついた風合いを有した編み地が得られた(評価×)。
オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度20cm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重の示す点の応力を繊維の強度(cN/dtex)とした。また破断時の伸度を繊維の伸度(%)とした。
(単糸繊度)
溶融紡糸により得られたマルチフィラメントの繊度を口金ホール数で除した値である。
(製糸性)
溶融紡糸法による繊維化を行うにあたり、糸切れなく安定して製糸が可能なものを○、走行糸条が安定せず、糸切れが頻繁に発生するようなものを×、糸切れがたびたび発生するものを△とした。
(風合い)
得られた繊維を用いて27ゲージの丸編みを作製し、官能調査によって風合いを評価した。ソフトな風合いを有している高品質のものを○、ヌメリ感があったり、ごわつき、着色などが見られる低品質のものを×、その中間的なものを△とした。
以上の結果から、本発明の要件を満たすことにより、セルロースが本来有する風合いを損なうことなく、繊維強度及び繊維伸度に優れ、かつ、紡糸及び製糸性に優れた繊維材料を実現できることが明らかである。
Claims (14)
- セルロースに含まれる水酸基の水素原子が、
下記A)で置換された基を少なくとも1つ、及び
下記B)で置換された基を少なくとも1つ含むセルロース誘導体を含有する繊維材料。
A)炭化水素基:−RA
B)アシル基:−CO−RB(RBは炭化水素基を表す。) - 前記セルロース誘導体が、更に、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が下記C)で置換された基を少なくとも1つ含む、請求項1に記載の繊維材料。
C)アルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基(RC1は炭化水素基を表し、RC2は炭素数が2または3のアルキレン基を表す。) - 前記RAが炭素数1〜4のアルキル基である、請求項1〜3のいずれかに記載の繊維材料。
- 前記RAがメチル基又はエチル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の繊維材料。
- 前記RB及びRC1が、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基である、請求項1〜5のいずれかに記載の繊維材料。
- 前記RB及びRC1が、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、又はプロピル基である、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維材料。
- 前記RBが、炭素数3〜10の分岐構造を有する炭化水素基である、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維材料。
- 前記セルロース誘導体が、カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を実質的に有さない、請求項1〜9のいずれかに記載の繊維材料。
- 前記セルロース誘導体が水に不溶である、請求項1〜10のいずれかに記載の繊維材料。
- 更に、可塑剤を含む請求項1〜11のいずれかに記載の繊維材料。
- 請求項1〜12のいずれかに記載の繊維材料を紡糸して得られる繊維。
- 形状が、糸状、綿状、布状又は不織布状である請求項13に記載の繊維。
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