JP2011132450A - 成形材料、成形体、及びその製造方法、並びに電気電子機器用筐体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セルロースに含まれる水酸基の水素原子が、
下記A)で置換された基を少なくとも1つ、及び
下記B)で置換された基を少なくとも1つ含むセルロース誘導体と、
化学修飾された結晶性セルロースとを含有する成形材料。
A)炭化水素基:−RA
B)アシル基:−CO−RB(RBは炭化水素基を表す。)
【選択図】なし
Description
しかし、より完全なカーボンニュートラルな材料を目指す観点から、さらなる改良が求められている。
特許文献5には、特定の結晶性セルロースの微粉末と、分散剤と、熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物が記載されている。
しかし、セルロースエーテルエステル及び結晶性セルロースを含む成形材料については、報告がない。
すなわち、上記課題は以下の手段により達成することができる。
下記A)で置換された基を少なくとも1つ、及び
下記B)で置換された基を少なくとも1つ含むセルロース誘導体と、
化学修飾された結晶性セルロースとを含有する成形材料。
A)炭化水素基:−RA
B)アシル基:−CO−RB(RBは炭化水素基を表す。)
[2]前記セルロース誘導体が、更に、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が下記C)で置換された基を少なくとも1つ含む、[1]に記載の成形材料。
C)アルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基(RC1は炭化水素基を表し、RC2は炭素数が2または3のアルキレン基を表す。)
[3]前記C)アルキレンオキシ基とアシル基とを含む基が、下記一般式(3)で表される構造を含む基である、[1]又は[2]に記載の成形材料。
[4]前記RAが炭素数1〜4のアルキル基である、[1]〜[3]のいずれかに記載の成形材料。
[5]前記RAがメチル基又はエチル基である、[1]〜[4]のいずれかに記載の成形材料。
[6]前記RB及びRC1が、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基である、[1]〜[5]のいずれかに記載の成形材料。
[7]前記RB及びRC1が、それぞれ独立に、メチル基、エチル基又はプロピル基である、[1]〜[6]のいずれかに記載の成形材料。
[8]前記RBが、炭素数3〜10の分岐構造を有する炭化水素基である、[1]〜[6]のいずれかに記載の成形材料。
[9]前記アルキレンオキシ基が下記式(1)又は(2)で表される基である、[2]〜[8]のいずれかに記載の成形材料。
[11]前記セルロース誘導体が水に不溶である、[1]〜[10]のいずれかに記載の成形材料。
[12]前記結晶性セルロースが、有機基によって化学修飾されている、[1]〜[11]のいずれか記載の成形材料。
[13]前記結晶性セルロースの結晶化度が40%以下である、[1]〜[12]のいずれかに記載の成形材料。
[14]前記[1]〜[13]のいずれかに記載の成形材料を加熱成形して得られる成形体。
[15]前記[1]〜[13]のいずれかに記載の成形材料を加熱し、成形する工程を含む、成形体の製造方法。
[16]前記[14]に記載の成形体から構成される電気電子機器用筐体。
下記A)で置換された基を少なくとも1つ、及び
下記B)で置換された基を少なくとも1つ含むセルロース誘導体と、
化学修飾された結晶性セルロースとを含有する成形材料。
A)炭化水素基:−RA
B)アシル基:−CO−RB(RBは炭化水素基を表す。)
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の成形材料に含まれるセルロース誘導体は、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が、
下記A)で置換された基を少なくとも1つ、及び
下記B)で置換された基を少なくとも1つ含むセルロース誘導体である。
A)炭化水素基:−RA
B)アシル基:−CO−RB(RBは炭化水素基を表す。)
すなわち、本発明におけるセルロース誘導体は、セルロースエーテルエステルであり、セルロース{(C6H10O5)n}に含まれる水酸基の水素原子の少なくとも一部が、A)炭化水素基:−RA、B)アシル基:−CO−RB(RBは炭化水素基を表す。)により置換されている。
より詳細には、本発明におけるセルロース誘導体は、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を有する。
さらには、セルロースは完全な植物由来成分であるため、カーボンニュートラルであり、環境に対する負荷を大幅に低減することができる。
より具体的な態様としては、例えば以下の態様が挙げられる。
(1)R2、R3及びR6の少なくとも1つが、A)炭化水素基で置換されている繰り返し単位と、R2、R3及びR6の少なくとも1つが、B)アシル基で置換されている繰り返し単位と、から構成されるセルロース誘導体。
(2)ひとつの繰り返し単位のR2、R3及びR6のいずれかがA)炭化水素基、及びB)アシル基で置換されている(すなわち、ひとつの繰り返し単位中に前記A)及びB)の置換基を有する)同種の繰り返し単位から構成されるセルロース誘導体。
(3)置換位置や置換基の種類が異なる繰り返し単位が、ランダムに結合しているセルロース誘導体。
また、セルロース誘導体には、無置換の繰り返し単位(すなわち、前記一般式(A)において、R2、R3及びR6すべてが水素原子である繰り返し単位)を含んでいてもよい。
また、セルロース誘導体は、水素原子、A)炭化水素基、及びB)アシル基以外のその他の置換基を有していても良い。
RAが脂肪族基である場合は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよく、不飽和結合を持っていてもよい。脂肪族基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
RAが芳香族基である場合は、単環、及び縮環のいずれでもよい。RAが芳香族基である場合の好ましい炭素数は6〜18であり、より好ましくは6〜14、さらに好ましくは6〜10である。芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
A)炭化水素基は、得られる成形材料(以下「セルロース樹脂組成物」又は「樹脂組成物」と称する場合がある。)の耐衝撃性が優れることから、脂肪族基であることが好ましく、メルトフローレート等の成形加工性が優れることから、より好ましくはアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜4のアルキル基(低級アルキル基)である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、イソヘプチル基等が挙げられ、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
RBが脂肪族基である場合は、直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよく、不飽和結合を持っていてもよい。脂肪族基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。
RBが芳香族基である場合は、単環、及び縮環のいずれでもよい。芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
RBは、好ましくはアルキル基又はアリール基である。RBは、より好ましくは炭素数1〜12のアルキル基又はアリール基であり、さらに好ましくは炭素数1〜12のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、最も好ましくは炭素数1又は2のアルキル基(すなわち、メチル基又はエチル基)である。
また、RBは、炭素数3〜10の分岐構造を有する炭化水素基であることも好ましく、炭素数3〜10の分岐構造を有するアルキル基であることがより好ましく、炭素数7〜9の分岐構造を有するアルキル基であることが更に好ましい。
RBとしては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、tert−ブチル基、及びイソヘプチル基等が挙げられる。好ましくは、RBはメチル基、エチル基、プロピル基、又は2−エチルヘキシル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、又は2−エチルヘキシル基である。
C)アルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基(RC1は炭化水素基を表し、RC2は炭素数が2又は3のアルキレン基を表す。)
アルキレンオキシ基(−RC2−O−)としては、具体的には下記構造が挙げられる。
また、本発明におけるセルロース誘導体は、アルキレンオキシ基を1つだけ含む前記C)の基(上記一般式(3)においてnが1である基)と、アルキレンオキシ基を2以上含む前記C)の基(上記一般式(3)においてnが2以上である基)とを含んでいてもよい。
前記A)におけるRA、前記B)におけるRB、前記C)におけるRC1及びRC2がさらなる置換基を有する場合、さらなる置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(アルキル基部分の炭素数は好ましくは1〜5)、アルケニル基等が挙げられる。ただし、置換基を含む場合でもRC2の炭素数は2又は3である。なお、RA、RB、及びRC1がアルキル基以外である場合は、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5)を置換基として有することもできる。
なお、「カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を実質的に有さない」とは、本発明におけるセルロース誘導体が全くカルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を有さない場合のみならず、本発明におけるセルロース誘導体が水に不溶な範囲で微量のカルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を有する場合を包含するものとする。例えば、原料であるセルロースにカルボキシル基が含まれる場合があり、これを用いて前記A)〜C)の置換基を導入したセルロース誘導体はカルボキシル基が含まれる場合があるが、これは「カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を実質的に有さないセルロース誘導体」に含まれるものとする。
この場合、カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩の好ましい含有量としては、セルロース誘導体に対して1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
アセチルメチルセルロース、アセチルエチルセルロース、アセチルプロピルセルロース、アセチルブチルセルロース、アセチルペンチルセルロース、アセチルヘキシルセルロース、アセチルシクロヘキシルセルロース、アセチルフェニルセルロース、アセチルナフチルセルロース、
B)アシル基(−CO−RB)の置換度DSB(繰り返し単位中、β−グルコース環のセルロース構造の2位、3位及び6位の水酸基に対する−CO−RBの数)は、0.1<DSBであることが好ましく、0.1<DSB<2.0であることがより好ましい。
C)アルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基の置換度DSC(繰り返し単位中、β−グルコース環のセルロース構造の2位、3位及び6位の水酸基に対するC)アルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基の数)は、0<DSCであることが好ましく、0<DSC<1.0であることがより好ましい。0<DSCであることにより、セルロース誘導体の溶融開始温度を低くできるので、熱成形をより容易に行うことができる。
上記のような範囲の置換度とすることにより、機械強度及び成形性等を向上させることができる。
分子量分布(MWD)は1.1〜10.0の範囲が好ましく、1.5〜8.0の範囲がさらに好ましい。この範囲の分子量分布とすることにより、成形性等を向上させることができる。
本発明における、数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)及び分子量分布(MWD)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて行うことができる。具体的には、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めることができる。
本発明におけるセルロース誘導体の製造方法は特に限定されず、セルロースを原料とし、セルロースに対しエーテル化及びエステル化することにより本発明におけるセルロース誘導体を製造することができる。セルロースの原料としては限定的でなく、例えば、綿、リンター、パルプ等が挙げられる。
前記セルロースエーテルとしては、例えば、セルロースに含まれるβ−グルコース環の2位、3位、及び6位の水酸基の水素原子の少なくとも一部が、炭化水素基に置換されたものを用いることができ、具体的には、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、アリルセルロース、ベンジルセルロース等が挙げられる。
また、別の態様として、例えばメチルセルロース、エチルセルロース等のセルロースエーテルにプロピレンオキサイド等によりエーテル化するか、又はセルロースにメチルクロライド、エチルクロライド等のアルキルクロライド/炭素数3のアルキレンオキサイド等を作用させた後、さらに酸クロライド又は酸無水物等を反応させることにより、エステル化する工程を含む方法も挙げられる。
酸クロライドを反応させる方法としては、例えばCellulose 10;283−296,2003に記載の方法を用いることができる。
炭化水素基とヒドロキシエチル基を有するセルロースエーテルとしては、具体的には、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルアリルセルロース、ヒドロキシエチルベンジルセルロース等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロースである。
炭化水素基とヒドロキシプロピル基を有するセルロースエーテルとしては、具体的には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルアリルセルロース、ヒドロキシプロピルベンジルセルロース等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースである。
なお、前述したとおり、本発明におけるセルロース誘導体は置換基としてカルボン酸を有さないことが好ましいため、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸等のジカルボン酸等、セルロースと反応させてカルボキシル基が生じる化合物を用いないことが好ましい。
本発明の成形材料は化学修飾された結晶性セルロースを含有する。
化学修飾された結晶性セルロースを本発明における特定のセルロース誘導体と混ぜて成形材料とすることで、特定のセルロース誘導体を単独で用いた場合よりも、寸法安定性を向上させることができる。更に環境適応性が高いという利点がある。
本発明における特定のセルロース誘導体は、エーテル構造とエステル構造を含む。そのため、従来のセルロースエステルなどに対して、側鎖構造が異なり、他材料との親和性が大きく異なる。さらに、本発明における特定のセルロース誘導体は、微粉末を分散させるときに重要なパラーメータである、温度印加させて機械混練(剪断)させた時の分散性の指標となる、粘度―温度特性が従来のセルロースエステルとは異なるため化学修飾された結晶性セルロースの分散性に優れる。そのため、化学修飾された結晶性セルロースは、本発明における特定のセルロース誘導体に対する分散性に優れ、化学修飾された結晶性セルロースの成形材料中での凝集を抑え、両者は良好に混練することができ、特定のセルロース誘導体を単独で用いた場合に対して剛性、曲げ強度、耐熱性といった性能を下げずに、寸法安定性及び環境適応性に優れた成形材料及び成形体が得られる。
結晶性セルロースとは、セルロースの結晶部分の割合が10質量%を越えるものをいう。このような結晶性セルロースは、それ自体が剛性、弾性率、耐衝撃性に優れた特性を有する。ここで、結晶性セルロースの結晶部分とは、X線回折においてバックグラウンドを生じる非晶質部分に対して、ブラッグ散乱のピークを生じる部分を言う。
ここに言う平均粒子径は、レーザー粒度回折散乱装置により得られる粒径分布における粒径を言い、粒子一つごとの粒径を意味する。平均粒子径が20μm以上の粒子の含有量は、この粒径分布により求める。
結晶性セルロースの原料は、木材(針葉樹、広葉樹)、コットンリンター、麦藁、葦、竹などの天然セルロースやレーヨン、セロファンの再生セルロースを主成分とするパルプが挙げられる。そして、これらのパルプをそのまま湿式粉砕、乾式粉砕させたものや、パルプを酸加水分解またはアルカリ酸化分解などの機械的、化学的処理を行ってセルロースのスラリーとし、その後、凍結乾燥法、噴霧乾燥法、棚段式乾燥法、ドラム乾燥法、ベルト乾燥法、流動床乾燥法、マイクロウェーブ乾燥法、蒸発乾燥法等によって乾燥して得られたものが、粒子調整前の結晶性セルロース原料である。
結晶性セルロースの水酸基を化学修飾することにより、耐熱性を高め、熱分解温度の向上、変色防止、線熱膨張係数の低下、吸湿性の低減を図ることができる。
この化学修飾により水酸基に導入される置換基には特に制限はないが、有機基によって化学装飾されていることが好ましい。有機基としては、炭素数1〜7の基である脂肪族エステル基であることが好ましく、炭素数1〜4の基であることがより好ましい。例えば、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、iso−ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基等の1種又は2種以上が挙げられる。好ましくは、プロパノイル基である。
結晶性セルロースの繊維化の方法としては特に制限されるものではなく、セルロースアセテート等で採用されている乾式紡糸法やレーヨン等で採用されている湿式紡糸法、ナイロン等で採用されている溶融紡糸法等のいずれの公知の製法を採用しても良い。また、得られた繊維の結晶化度を上げるために、繊維化した後、公知の装置を用いて延伸工程を通しても良い。
分散剤を用いることにより、分散剤が結晶性セルロースとセルロース誘導体との相溶性を増し、結晶性セルロースが成形材料中に良好に分散される。これにより、結晶性セルロースとセルロース誘導体のそれぞれの長所を同時に発揮することが可能となり、成形材料から得られる成形品の剛性、弾性率、耐衝撃性、表面物性が向上する。
本発明に用いられる分散剤としては、成形材料中でセルロース粒子を均一に分散できるものであれば、特に制限無いが、結晶性セルロース粒子とセルロース誘導体の両者に親和性を有していることが好ましい。このような分散剤としては、たとえば、界面活性剤、表面処理剤等を使用することができる。
本発明の成形材料は、上記で説明したセルロース誘導体と化学修飾された結晶性セルロースとを含有しており、任意に相溶化剤を含有する。また必要に応じてその他の添加剤を含有することができる。
本発明の成形材料に含まれる成分の含有割合は、特に限定されない。好ましくはセルロース誘導体を50〜99.9質量%、より好ましくは60〜95質量%、さらに好ましくは70〜90質量%含有する。
化学修飾された結晶性セルロースの含有量は、耐衝撃性、成形加工性及び寸法安定性の向上の観点から、成形材料に対して0.01〜30質量%が好ましく、更に好ましくは0.1〜20質量%である。0.01質量%以上であれば化学修飾された結晶性セルロースの添加の効果を得ることができ、30質量%以下であればセルロース誘導体の耐衝撃性、成形性、剛性、曲げ強度、耐熱性等の低下を抑えることができるため好ましい。
本発明の成形材料は、更に酸化防止剤を含有することが好ましい。これによって、上記化学修飾された結晶性セルロースを抑制できるため、セルロース誘導体への添加量が少量であっても十分な効果を発揮することができ。したがって、特定のセルロース誘導体が有する耐衝撃性、成形性、剛性、曲げ強度、耐熱性等の低下を抑え、寸法安定性を付与することができる。
化学修飾された結晶性セルロース以外のフィラーとしては、公知のものを使用できる。フィラーの形状は、繊維状、板状、粒状、粉末状等いずれでもよい。また、無機物でも有機物でもよい。
具体的には、無機フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維および硼素繊維等の繊維状の無機フィラーや;ガラスフレーク、非膨潤性雲母、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、タルク、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土等の板状や粒状の無機フィラーが挙げられる。
難燃剤は、特に限定されず、常用のものを用いることができる。例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン含有難燃剤、ケイ素含有難燃剤、窒素化合物系難燃剤、無機系難燃剤等が挙げられる。これらの中でも、樹脂との複合時や成形加工時に熱分解してハロゲン化水素が発生して加工機械や金型を腐食させたり、作業環境を悪化させたりすることがなく、また、焼却廃棄時にハロゲンが気散したり、分解してダイオキシン類等の有害物質の発生等によって環境に悪影響を与える可能性が少ないことから、リン含有難燃剤およびケイ素含有難燃剤が好ましい。
これらのリン含有難燃剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのケイ素含有難燃剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他の成分としては、例えば、前記セルロース誘導体及び前記化学修飾された結晶性セルロース以外のポリマー、可塑剤、安定剤(紫外線吸収剤など)、離型剤(脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーン)、帯電防止剤、難燃助剤、加工助剤、ドリップ防止剤、抗菌剤、防カビ剤等が挙げられる。さらに、染料や顔料を含む着色剤などを添加することもできる。
また、各種アクリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩(いわゆるアイオノマー)、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体(例えば、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体)、ジエン系ゴム(例えば、1,4−ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン)、ジエンとビニル単量体との共重合体(例えば、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエンにスチレンをグラフト共重合させたもの、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)、ポリイソブチレン、イソブチレンとブタジエンまたはイソプレンとの共重合体、ブチルゴム、天然ゴム、チオコールゴム、多硫化ゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ポリエーテルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、その他ポリウレタン系やポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
これらのポリマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明の成形体の製造方法は、前記成形材料を加熱し、成形する工程を含む。
成形方法としては、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形等が挙げられる。
加熱温度は、通常160〜300℃であり、好ましくは180〜260℃である。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた5Lの三ツ口フラスコにヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メトローズ90SH−100;信越化学製)60g、N,N−ジメチルアセトアミド2100mLを量り取り、室温で攪拌した。反応系が透明になり完溶したことを確認した後、アセチルクロライド101mLをゆっくりと滴下し、系の温度を80℃〜90℃に昇温した。このまま3時間攪拌した後、反応系の温度を室温まで冷却した。反応溶液を水10Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量の水で3回洗浄を行った。得られた白色固体を100℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体(C−1)(アセトキシプロピルメチルアセチルセルロース)を白色粉体として得た。
合成例1におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メトローズ90SH−100;信越化学製)をヒドロキシエチルメチルセルロース(商品名マーポローズME−250T;松本油脂製)、メチルセルロース(商品名マーポローズM−4000:松本油脂製株式会社製)、エチルセルロース(商品名エトセル300CP:ダウケミカル製)に変更した以外は合成例1と同様にしてアセトキシエチルメチルアセチルセルロース(C−2)、メチルアセチルセルロース(C−3)、エチルアセチルセルロース(C−4)を得た。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた3Lの三ツ口フラスコにメチルセルロース(和光純薬製:メチル置換度1.8)80g、ピリジン1500mLを量り取り、室温で攪拌した。ここに水冷下、2−エチルヘキサノイルクロリド173mLをゆっくりと滴下し、さらに60℃で6時間攪拌した。反応後、室温に戻し、氷冷下、メタノール200mLを加えてクエンチした。反応溶液を水12Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノール溶媒で3回洗浄を行った。得られた白色固体を100℃で6時間真空乾燥することによりメチルセルロース−2−エチルヘキサノエート(C−5)を得た。
合成例5におけるメチルセルロース(和光純薬製:メチル置換度1.8)に変えて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メトローズ90SH−100;信越化学製)、及び2−エチルヘキサノイルクロリドに変えてバレロイルクロライドを用いた以外、合成例5と同様にして、バレロキシプロピルブバレロイルセルロース(C−6)を得た。
合成例6におけるヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名メトローズ90SH−100;信越化学製)をヒドロキシブチルメチルセルロース(メトローズSM4000:信越化学製)を用いた以外、合成例6と同様にしてバレロキシブチルメチルバレロイルセルロース(C−7)を得た。
得られたセルロース誘導体について、数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)、を測定した。これらの測定方法は以下の通りである。
[分子量及び分子量分布]
数平均分子量(Mn)、質量平均分子量(Mw)の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いた。具体的には、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ポリスチレンゲルを使用し、標準単分散ポリスチレンの構成曲線から予め求められた換算分子量較正曲線を用いて求めた。GPC装置は、HLC−8220GPC(東ソー社製)を使用した。
セルロース誘導体(C−1〜C−7、H−1)、結晶性セルロース、酸化防止剤、修飾剤を表2に示す配合割合(質量%)で混合し、成形材料を作製した。この成形材料を二軸混練押出機(テクノベル(株)製、Ultranano)に供給しペレットを作製し、ついで得られたペレットを、射出成形機(ファナック(株)Roboshot S−2000i、自動射出成形機)に供給して、4×10×80mmの多目的試験片(衝撃試験片および曲げ試験片)を成形した。
・結晶性セルロース:セオラス PH−102、旭化成ケミカルズ(株)、平均粒子径50μm
・酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤、イルガノックス1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)
・修飾剤:無水プロピオン酸、和光純薬(株)
得られた成形材料及び多目的試験片を用いて、以下の項目について評価した。評価結果等を表2に示す。
ISO178に準拠して、射出成形にて成形した試験片を23℃±2℃、50%±5%RHで48時間以上調整した後、インストロン(東洋精機製、ストログラフV50)によって支点間距離64mm、試験速度2mm/minで曲げ弾性率を測定した。測定は3回測定の平均値である。
ISO178に準拠して、射出成形にて成形した試験片を23℃±2℃、50%±5%RHで48時間以上調整した後、インストロン(東洋精機製、ストログラフV50)によって支点間距離64mm、試験速度2mm/minで曲げ試験をおこない、試験中の最大応力を曲げ強度とした。測定は3回測定の平均値である。
ISO179に準拠して、射出成形にて成形した試験片に入射角45±0.5°、先端0.25±0.05mmのノッチを形成し、23℃±2℃、50%±5%RHで48時間以上静置した後、シャルピー衝撃試験機((株)東洋精機製作所製)によってエッジワイズにて衝撃強度を測定した。測定は3回測定の平均値である。
ISO75に準拠して、試験片の中央に一定の曲げ荷重(1.8MPa)を加え(フラットワイズ方向)、等速度で昇温させ、中央部のひずみが0.34mmに達したときの温度(℃)を測定した。熱変形温度測定装置は、(株)東洋精機製作所製HDTテスタ6M−2を用いた。測定は3回測定の平均値である。
結晶化度は、広角X線回折測定により評価した。2θ=5〜40°まで0.05°ステップで測定をおこなった。次いで、測定プロファイルから非晶ハローと結晶回折ピーク部分に波形分離をおこなった。波形分離後の非晶ハロ−のピーク強度と結晶回折の2θ=15°付近のピーク強度比から結晶化度を算出した。
分散性の指標として、光学顕微鏡(ニコン LV100)を用いて評価をした。ミクロトームで2μmに薄切し1000倍で観察した。判定は以下の基準に従った。
○:凝集物が観察されない
△:わずかに凝集物が観察される
×:凝集物が多数観察される
JIS K 7209に準拠して、試験片を50℃で24時間乾燥させた後、重量測定をおこない、23℃の恒温水槽に試料を24時間浸漬し、含水以外の水分を取り除き、浸漬前後の寸法変化(長さ、幅、厚み)を測定した。長さの寸法変化率(%)は{(浸漬後の長さ/浸漬前の長さ―1)×100}、幅の寸法変化率(%)は{(浸漬後の幅/浸漬前の幅―1)×100}、厚みの寸法変化率(%)は{(浸漬後の厚み/浸漬前の厚み―1)×100}で求めた。今回は長さ方向の寸法変化率を寸法安定性として、<0.3%を○、0.3〜0.5%を△、>0.5%を×として表2に示した。
成形性評価は、射出成形機での成形適性を示しており、成形搬送性および射出性ともに優れている成形材料を○、いずれか一方に課題がある成形材料を△、両方に課題がある成形材料を×とした。評価結果を表2に示す。
結晶化度の異なる結晶性セルロースは、遊星ボールミルで300rpmで10〜120分処理することにより作製した。
また、実施例4〜12と比較例1〜2を比較すると、成形性及び寸法安定性に優れることがわかる。また、物性のバランスも良好であることがわかる。
以上の結果から、本発明の要件を満たすことにより良好な物性バランスを有しつつ、成形性および寸法安定性に優れた成形材料を実現できることが明らかである。
Claims (16)
- セルロースに含まれる水酸基の水素原子が、
下記A)で置換された基を少なくとも1つ、及び
下記B)で置換された基を少なくとも1つ含むセルロース誘導体と、
化学修飾された結晶性セルロースとを含有する成形材料。
A)炭化水素基:−RA
B)アシル基:−CO−RB(RBは炭化水素基を表す。) - 前記セルロース誘導体が、更に、セルロースに含まれる水酸基の水素原子が下記C)で置換された基を少なくとも1つ含む、請求項1に記載の成形材料。
C)アルキレンオキシ基:−RC2−O−とアシル基:−CO−RC1とを含む基(RC1は炭化水素基を表し、RC2は炭素数が2または3のアルキレン基を表す。) - 前記RAが炭素数1〜4のアルキル基である、請求項1〜3のいずれかに記載の成形材料。
- 前記RAがメチル基又はエチル基である、請求項1〜4のいずれかに記載の成形材料。
- 前記RB及びRC1が、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基である、請求項1〜5のいずれかに記載の成形材料。
- 前記RB及びRC1が、それぞれ独立に、メチル基、エチル基又はプロピル基である、請求項1〜6のいずれかに記載の成形材料。
- 前記RBが、炭素数3〜10の分岐構造を有する炭化水素基である、請求項1〜6のいずれかに記載の成形材料。
- 前記セルロース誘導体が、カルボキシル基、スルホン酸基、及びこれらの塩を実質的に有さない、請求項1〜9のいずれかに記載の成形材料。
- 前記セルロース誘導体が水に不溶である、請求項1〜10のいずれかに記載の成形材料。
- 前記結晶性セルロースが、有機基によって化学修飾されている、請求項1〜11のいずれか記載の成形材料。
- 前記結晶性セルロースの結晶化度が40%以下である、請求項1〜12のいずれかに記載の成形材料。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の成形材料を加熱成形して得られる成形体。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の成形材料を加熱し、成形する工程を含む、成形体の製造方法。
- 請求項14に記載の成形体から構成される電気電子機器用筐体。
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