JP2011127387A - スライド型防潮壁 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係るスライド型防潮壁は、互いに複数の開口部を設けてある一組の壁体からなり、両開口部が互いに連通した状態で一方の壁体を他方の壁体に浮設しておく。浸水時には前記浮設の解除によって一方の壁体が下方に落下し、壁体の本体部分によって開口部が互いに閉塞され、防潮機能が発揮される。
【選択図】図1
Description
防潮堤が恒久的に設置される構造物である場合、見通しや風通しが悪くなり周辺の景観や環境に影響を与える懸念が生じることから、浸水が予測される時にのみ防潮機能を達成することが可能な防潮堤の提供が望まれている。
(1)跳ね上げ式の防潮壁では、数十cm程度の壁体を構築するに留まるため、数m規模の浸水には対応できない。
(2)高さが数m程度の壁体を備える跳ね上げ式の防潮壁を構築するには、出力の大きい駆動装置を使用する必要が生じるため、設備自体が大がかりとなり、施工費用が高くなってしまう。
(3)駆動装置等の定期的なメンテナンスが必要となり、保守費用コストが必要となってしまう。
また、本願の第2発明は、前記一方の壁体は浸水側に配した壁体であり、該一方の壁体は、開口部が互いに連通した状態で他方の壁体に浮設しておき、前記浮設の解除によって、前記一方の壁体が下方に落下し、前記開口部を互いに閉塞し合うことを特徴とする、前記第1発明に記載のスライド型防潮壁を提供するものである。
また、本願の第3発明は前記一方の壁体に設けた開口部の背面側外周に凹溝を設け、該一方の壁体の落下後に、前記凹溝と前記他方の壁体の開口部の縁部とが当接することを特徴とする、前記第2発明に記載のスライド型防潮壁を提供するものである。
(1)通常時には、各壁体に設けた開口部が互いに連通してある状態を維持するため、通風性、景観性に悪影響を与えない。
(2)浸水時には、一方の壁体の浮設を解除する作業のみで、早期且つ簡易に防潮機能を発揮することができる。
(3)浸水の解消後には、一方の壁体を元の位置に戻す作業のみで通常時への復帰が可能であり、再利用が容易である。
(4)外部動力が不要であり、施工コストや保守費用を節減することができる。
(5)浸水時には、前記背面壁の外周縁部と前面壁の背面側に設けた凹部とが前記水圧によって密に当接するため、壁体の止水性能が向上する。
(6)開口部の数や配置形態を変更することによって、通風性や景観性を簡易に制御できる。
図1は、本発明における防潮壁の概略斜視図であり、図2は防潮壁の側断面を示す概略図である。各図とも(a)は通常時の状態を示し、(b)は浸水時の状態を示す。
本実施例における防潮壁は、背面壁1及び前面壁2からなる一組の壁体を少なくとも含む。その他、本実施例における防潮壁は、前記前面壁2の天端に設けた把持具3と、前記一組の壁体を両側から支持するガイドフレーム4と、前記一組の壁体を所定の位置で連結するための支持ピン5と、前記一組の壁体の下方に設けた固定壁6とによって構成する(図1)。
一組の壁体は、浸水時にのみ防潮機能を発揮するための構造体である。
一組の壁体は、平面方向に重ね合わせた二枚の壁体によって構成する。
本実施例では、前記二枚の壁体のうち、陸上構造物側の壁体を背面壁1、浸水側の壁体を前面壁2と定義する。
背面壁1は前面壁2の摺動長さL3分だけ上方に遷移した位置に支持板7によって固定しておき、前面壁2は、背面壁1に重ねつつ上下方向に摺動自在に配置する(図2)。
背面壁1及び前面壁2は、ともに複数の開口部11,21を有する(図1)。
各開口部の形状は、円形、多角形など、種々の形状を採用することができる。本実施例では長方形状の開口部を設ける。
各開口部の配置形態は、通風性や景観性を配慮しつつ、壁体の前面又は一部に対して、長手状、千鳥状など、種々の配置形態を採用することができる。本実施例では、開口部を均等に千鳥状に配置してなる。
したがって、前記開口部の縦方向の長さをL1、開口部同士の間隔をL2、前面壁の摺動長さをL3とした場合、下記の式を満たすよう構成することが望ましい(図2)。
式1:L2>L1
式2:L3=L1+(L2−L1)/2
前面壁2の背面側の開口部の外周縁部には凹溝22を設ける(図2)。前記凹溝22を設けることにより、前面壁2が下方に落下した際には背面壁1の開口部11の前面側の外周縁部が凹溝22と対向する位置となる。浸水により前面壁は水圧を受けるため、該外周縁部は凹溝22に密に当接し、前面壁と背面壁との間の止水性を高めることができる。
把持具3は、前面壁2の引き上げを支援するための部材である。
把持具3は前面壁2の天端に設け、当該把持具3を介し人力又は外部動力を用いて該前面壁2を上方に持ち上げ易くすることができる。
ガイドフレーム4は、前記一組の壁体の両側に設け、該一組の壁体を上方から摺動させて所定の位置に収納するための部材である。
ガイドフレーム4は、H鋼などの周知の部材によって形成することができる。
支持ピン5は、背面壁1に対して前面壁2を所定の位置に位置決めするための部材である。
支持ピン5は、前記前面壁2の開口部21と背面壁1の開口部11とが互いに連通してなる空間に横断するように差し込むことで、前面壁2を所定の位置で浮設・支持する。
固定壁6は、景観性や通風性に影響を与えない高さまで設置される常設の構造物である。固定壁6は、配置した土台(図示せず)を介するか、或いは直接杭やアンカー等によって地面に固定し、浸水時の水圧に抵抗可能に構成する。
なお、本発明の防潮壁において、固定壁6は必須の部材ではない。固定壁6を省略する場合には一組の壁体自体を地面に固定するよう構成すれば足りる。
次に、本実施例に係る防潮壁の使用方法について説明する。
(1)通常時
通常時は、背面壁1の開口部11と前面壁2の開口部21とが連通する位置まで前面壁2を上方に持ち上げ、該前面壁2が浮いた状態のまま両開口部11,21を横断するように支持ピン5を差し込み、固定する(図1(a)、図2(a))。
津波や高潮などにより浸水が確認された場合には、開口部11,21に差し込んである支持ピン5を取り外す。支持ピン5を取り外すと、浮設していた前面壁2が重力によって下方へと落下する。このとき、背面壁1の開口部11は前面壁2の本体部分によって閉塞され、前面壁2の開口部21は背面壁1の本体部によって閉塞される(図1(b)、図2(b))。
浸水が進むと、前面壁2は水圧を受け背面側に押し込まれる。このとき、前記背面壁1の外周縁部と前面壁2の背面側に設けた凹部22とが前記水圧によって密に当接するため、背面壁1と前面壁2との間の止水性能が向上することとなる。
浸水が解消した際には、把持具3を介して前面壁2を上方に持ち上げ、該前面2壁が浮いた状態のまま前記開口部11,21に支持ピン5を再度差しこんで前面壁2を浮設・固定し、通常状態へと復帰させる(図1(a)、図2(a))。
2 背面壁
3 把持具
4 ガイドフレーム
5 支持ピン
6 固定壁
7 支持板
11,21 開口部
Claims (3)
- 互いに複数の開口部を設けてある一組の壁体からなり、
壁体間において前記開口部を連通させた状態から、一方の壁体を摺動することにより該開口部を閉塞するよう構成した、スライド型防潮壁。 - 前記一方の壁体は浸水側に配した壁体であり、該一方の壁体は、開口部が互いに連通した状態で他方の壁体に浮設しておき、前記浮設の解除によって、前記一方の壁体が下方に落下し、前記開口部を互いに閉塞し合うことを特徴とする、請求項1に記載のスライド型防潮壁。
- 前記一方の壁体に設けた開口部の背面側外周に凹溝を設け、該一方の壁体の落下後に、前記凹溝と前記他方の壁体の開口部の縁部とが当接することを特徴とする、請求項2に記載のスライド型防潮壁。
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2009
- 2009-12-21 JP JP2009288956A patent/JP5235012B2/ja not_active Expired - Fee Related
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