以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づいて説明する。
(1)第1実施形態
初めに、第1実施形態に係る無線通信システムについての説明を進める。
(1−1)無線通信システムの全体構成
初めに、図1を参照して、第1実施形態の無線通信システム1の全体構成について説明する。ここに、図1は、第1実施形態の無線通信システム1の全体構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る無線通信システム1は、eNB(eNodeB)100aと、eNB100bと、UE(User Equipment)300aと、UE300bと、UE300cと、GPS衛星500とを備えている。尚、図1に示すeNBの数、UEの数及びGPS衛星の数は一例であって、eNBの数、UEの数およびGPS衛星の数が図1に示す個数に限定されることはない。また、以下では、説明の便宜上、eNB100a及びeNB100bを区別することなく説明する場合には、“eNB100”と称して説明を進める。同様に、UE300a、UE300b及びUE300cを区別することなく説明する場合には、“UE300”と称して説明を進める。
eNB100は、セル半径が概ね数kmから十数kmないしは数十kmとなるセル150をカバーする無線基地局である。例えば、図1に示す例では、eNB100aは、セル150aをカバーする無線基地局であり、eNB100bは、セル150bをカバーする無線基地局である。eNB100は、自身がカバーするセル150中に位置するUE300との間で無線通信を行う。つまり、eNB100は、自身がカバーするセル150中に位置するUE300との間で通信コネクションを確立すると共に、UE300に対してデータの送受信を行う。また、各eNB100がカバーするセル150は、その一部が他のセル150の一部又は全部と重なるように構成されていてもよいし、その全部が他のセル150と重ならないように構成されていてもよい。図1に示す例では、セル150aが、当該セル150aに隣接するセル150bと重ならない例が示されている。
UE300は、自身がその内部に位置するセル150に対応するeNB100との間でコネクションを確立すると共に、データの送受信を行う移動端末である。UE300は、eNB100(更には、eNB100の上位に接続される不図示の上位局等)を介して、各種サービスないしはアプリケーション(例えば、メールサービスや、音声通話サービスや、WEB閲覧サービスや、パケット通信サービス等)を利用することができる。このようなUE300として、例えば携帯電話や、PDA(Personal Digital Assistant)や、その他無線通信機能を有する各種情報機器等が一例としてあげられる。つまり、第1実施形態に係る無線通信システム1は、例えば携帯電話システムや移動体通信システム等が一例としてあげられる。
GPS衛星500は、高精度原子時計に基づく時間情報や当該GPS衛星の軌道情報を含むGPSデータを送信している。第1実施形態に係る無線通信システム1では、GPSデータは、eNB100によって受信される。このため、eNB100は、受信したGPSデータに基づいて、自局の位置を特定することができる。尚、図1では、図面の簡略化のために1つのGPS衛星500のみが図示されている。しかしながら、実際には、測位方法(自局の位置の特定方法)によっては3つないしは4つ以上のGPS衛星500からGPSデータを受信する必要がある。このため、無線通信システム1は、実際には、少なくとも3つないしは4つ以上のGPS衛星500を備えていることが好ましい。
尚、上述の説明では、セル半径が概ね数kmから十数kmないしは数十kmとなるセル(いわゆる、マクロセル)150をカバーするeNB100が例示されているが、eNB100に加えて又は代えて、セル半径が概ね数百mから1kmとなるセル(いわゆる、マイクロセル)をカバーする無線基地局や、セル半径が概ね数mから十数mないしは数十mとなるセル(いわゆる、フェムトセル)をカバーする無線基地局を配置してもよい。また、セル半径が上述したサイズ以外のセルをカバーする各種無線基地局を配置してもよい。
(1−2)ブロック図
続いて、図2及び図3を参照して、第1実施形態に係る無線通信システム1が備えるeNB100及びUE300の夫々の基本構成について説明する。
(1−2−1)eNBのブロック図
初めに、図2を参照して、第1実施形態に係るeNB100の基本構成について説明する。ここに、図2は、第1実施形態に係るeNB100の基本構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、eNB100は、その要部に着目すれば、無線送受信処理部101と、GPS制御部102と、制御部103と、メモリ104とを備えている。
無線送受信処理部101は、制御部103等において生成されたデータをUE300に対して送信する。また、無線送受信処理部101は、UE300から送信されるデータを受信する。このため、無線送受信処理部101は、例えば、データの符号化(例えば、畳込み符号やターボ符号等の誤り訂正符号化)処理又は復号化処理等を含むベースバンド処理を行うベースバンド処理回路や、QPSK変調や16QAM変調等の変調処理を行う変調回路や、復調処理を行う復調回路や、送信電力又は受信電力を調整するRF回路や、電波を送信又は受信するアンテナ等を含む。
GPS制御部102は、上述した「第1取得手段」の一実施例であって、一又は複数のGPS衛星500(より具体的には、例えば3つないしは4つのGPS衛星500)から送信されるGPSデータを受信する。尚、GPSデータは、上述した「位置情報」の一実施例である。加えて、GPS制御部102は、受信したGPSデータに基づいて、eNB100自身の地理的な位置(例えば、緯度及び経度)を特定する。特定されたeNB100自身の位置を示す位置データは、GPS制御部102から制御部103へと転送される。
制御部103は、eNB100全体の動作を制御する。制御部103としては、例えば所定のファームウェアに基づいて動作するCPU(Central Processor Unit)等が一例としてあげられる。
制御部103は、その内部に構成される論理的な又は機能的な処理ブロックとして、GPS制御部102により特定された位置データに基づいて、eNB100が使用するべきセルIDを特定するマトリクス管理部110を備えている。また、マトリクス管理部110は、その内部に構成される論理的な又は機能的な処理ブロックとして、上述した「第2取得手段」の一実施例である候補マトリクス選択部111と、上述した「特定手段」の一実施例であるブロック位置算出処理部112と、上述した「特定手段」の一実施例であるセルID変換処理部113とを備えている。このような処理ブロックは、例えば制御部103の動作を規定するファームウェアの一部のプログラムの動作として実現されてもよいし、或いはファームウェアから独立したプログラムの動作として実現されてもよい。或いは、候補マトリクス選択部111、ブロック位置算出処理部112及びセルID変換処理部113は、制御部103とは独立した1つの回路として実現されてもよい。
候補マトリクス選択部111は、セルIDを一意に特定するために使用される後述のマトリクス160を指定する。指定されたマトリクス160は、候補マトリクス選択部111からブロック位置算出処理部112に通知される。尚、後述するようにマトリクス160は複数のブロック170を含んでいる。このため、以下の説明では、マトリクス160を“ブロックマトリクス160”と称して説明を進める。
ブロック位置算出処理部112は、GPS制御部102により特定された位置データを、候補マトリクス選択部112により指定されたブロックマトリクス160上の位置に変換する。具体的には、ブロック位置算出処理部112は、候補マトリクス選択部111により指定されたブロックマトリクス160に含まれる複数のブロック170のうち、GPS制御部102により特定された位置データに対応する1つのブロック170を特定する。特定された1つのブロック170は、ブロック位置算出処理部112からセルID変換処理部113に対して通知される。
セルID変換処理部113は、候補マトリクス選択部111により指定されたブロックマトリクス160及びブロック位置算出処理部112により特定された1つのブロック170に基づいて、eNB100が使用するべきセルIDを特定する。
尚、候補マトリクス選択部111、ブロック位置算出処理部112及びセルID変換処理部113の夫々のより詳細な動作は、後述する動作例において詳述する。
メモリ104は、eNB100内部で使用するデータを一時的に格納する記憶領域を含んでいる。また、メモリ104は、eNB100としての動作を行うためのプログラム(即ち、ファームウェア)が格納される記憶領域等を含んでいてもよい。このようなメモリ104としては、例えばRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリや、その他の各種記録媒体が一例としてあげられる。
(1−2−2)UEのブロック図
続いて、図3を参照して、第1実施形態に係るUE300の基本構成について説明する。ここに、図3は、第1実施形態に係るUE300の基本構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、UE300は、その要部に着目すれば、無線送受信処理部301と、制御部303と、メモリ304とを備えている。
無線送受信処理部301は、上述した無線送受信処理部101と同様の構成を有しており、制御部303等において生成されたデータをeNB100に対して送信すると共に、eNB100から送信されるデータを受信する。このため、無線送受信処理部301は、上述した無線送受信処理部101と同様に、例えば、ベースバンド処理回路や、変調回路や、復調回路や、RF回路や、アンテナ等を含む。
制御部303は、UE300全体の動作を制御する。制御部303としては、例えば所定のファームウェアに基づいて動作するCPU等が一例としてあげられる。
メモリ304は、UE300内部で使用するデータを一時的に格納する記憶領域を含んでいる。また、メモリ304は、UE300としての動作を行うためのプログラム(即ち、ファームウェア)が格納される記憶領域等を含んでいてもよい。このようなメモリ304としては、例えばRAM(Random Access Memory)等の半導体メモリや、その他の各種記録媒体が一例としてあげられる。
(1−3)動作説明
続いて、図4を参照して、第1実施形態に係る無線通信システム1が備えるeNB100の動作(セルIDの特定動作)について説明する。ここに、図4は、第1実施形態に係る無線通信システム1が備えるeNB100の動作の流れの一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、まず、eNB100が備えるGPS制御部102は、GPS衛星500から送信されるGPSデータ(例えば、高精度原子時計に基づく時間情報や当該GPS衛星の軌道情報等)を受信する(ステップS11)。その結果、GPS制御部102は、受信したGPSデータに基づいて、eNB100の位置データを特定する。尚、以下の説明では、eNB100の緯度(度分秒)及び経度(度分秒)が位置データに含まれる例について説明を進める。但し、位置データがこれに限定されるものではなく、eNB100の地理的な位置を特定することができるデータであればどのようなデータであってもよい。特定された位置データは、GPS制御部102から制御部103へと転送される。
続いて、eNB100が備える候補マトリクス選択部111は、続く処理において使用されるブロックマトリクス160を指定する(ステップS12)。指定されたブロックマトリクス160は、候補マトリクス選択部111からブロック位置算出処理部112に通知される。
ここで、図5を参照して、ブロックマトリクス160についてより詳細に説明する。ここに、図5は、ブロックマトリクス160の一例を示す平面図である。
図5に示すように、ブロックマトリクス160は、N(但し、Nは1以上の整数)行×M(但し、Mは1以上の整数)列のマトリクス状に配列された複数のブロック170(具体的には、N×M個のブロック170)を備えている。尚、図5では、6行×6列のマトリクス状に配列された36個のブロック170を備えるブロックマトリクス160を一例として示している。
各ブロック170は、所定の領域(言い換えれば、所定の地理的な領域)を示している。このため、各ブロック170の大きさ(例えば、図5中縦方向の大きさ及び図5中横方向の大きさ)は、所定の地理的な距離に対応付けられている。例えば、eNB100の位置データが緯度及び経度を含み且つ1秒が約30.9mに対応していることを考慮すれば、1つのブロックの縦方向の大きさ及び横方向の大きさは、30.9m(或いは、30.9mのK(但し、Kは2以上の整数)倍)の距離に対応付けられていてもよい。このように構成すれば、異なる緯度及び経度に位置する複数のeNB100の夫々を、互いに区別しながら1つのブロック170に適切に対応付けることができる。但し、各ブロック170の大きさがその他の距離に対応付けられていてもよいことは言うまでもない。
各ブロック170には、固有のセルIDが対応付けられている。具体的には、図5に示す例では、ブロックマトリクス160の開始位置となる一番左上のブロック170からブロックマトリクス160の終了位置となる一番右下のブロック170に至るまでに、初期値を1とするセルIDが1ずつインクリメントされながら各ブロック170に順次対応付けられている。より具体的には、図5に示す例では、X(但し、Xは、1≦X≦6を満たす整数)行Y(但し、Yは、1≦Y≦6を満たす整数)列目のブロック170には、「6×(X−1)+Y」にて特定されるセルIDが対応付けられている。尚、ブロック170の数に限らず、図5に示す例と同様の態様で各ブロック170に固有のセルIDが割り当てられることは言うまでもない。
ブロックマトリクス160は、後述するセルIDの特定動作の際には、図5に示すように同一のブロックマトリクス160が上下左右に配列されるように使用される。つまり、複数のeNB100が地理的に広がる面上に配置されることを考慮して、同一のブロックマトリクス160が上下左右に広がる面上に配列されるように使用される。これにより、複数のeNB100が配置される面がどのような大きさないしは形状であっても、ブロックマトリクス160(或いは、ブロックマトリクス160に含まれる複数のブロック170)と複数のeNB100との対応付けを適切に行うことができる。
このようなブロックマトリクス160を指定するには、少なくともブロックマトリクス160中に含まれる複数のブロック170の行数(つまり、N)及び列数(つまり、M)、各ブロック170の大きさ、並びにセルIDの初期値(開始番号)を特定する必要がある。このため、第1実施形態においては、ブロックマトリクス160中に含まれる複数のブロック170の行数及び列数は、例えばオペレータ等によって予め決定されていることが好ましい。また、各ブロック170の大きさもまた、例えばオペレータ等によって予め決定されていることが好ましい。加えて、セルIDの初期値(開始番号)もまた、例えばオペレータ等によって予め決定されていることが好ましい。予め決定されていることが好ましいこれらの数値は、eNB100の動作用のパラメータとしてメモリ104等に格納されていることが好ましい。例えば、図5に示すブロックマトリクス160であれば、ブロックマトリクス160中に含まれる複数のブロック170の行数を示す「6」及びブロックマトリクス160中に含まれる列数を示す「6」、各ブロック170の大きさを示す「30.9m」及びセルIDの初期値(開始番号)を示す「1」が、動作用のパラメータとしてメモリ104等に格納されていることが好ましい。従って、候補マトリクス選択部111は、これらのパラメータを取得することで、ブロックマトリクス160を指定することが好ましい。
加えて、これらのパラメータは、隣接する又は近接する複数のeNB100間での同一のセルIDの重複使用を避けるという観点から適切に設定されることが好ましい。一例として、一のeNB100aのセル150a及び当該一のeNB100aに隣接する若しくは近接する一若しくは複数の他のeNB100bのセル150bの夫々が、1つのブロックマトリクス160によってカバーされるように、これらのパラメータが設定されていることが好ましい。
尚、ブロックマトリクス160を特定するために必要なパラメータを取得することでブロックマトリクス160を指定することに代えて、ブロックマトリクス160そのものを直接取得するように構成してもよい。この場合には、ブロックマトリクス160そのものをメモリ104に格納することによってメモリ104の使用量が増大するものの、ブロックマトリクス160の詳細な構成を演算によって指定しなくてもよい。このため、制御部103における処理負荷の低減を図ることができる。
再び図4において、続いて、eNB100が備えるブロック位置算出処理部112は、位置データに含まれる緯度及び経度によって特定されるeNB100の位置(中心位置)に対応するブロックマトリクス160上のブロック170を算出する(ステップS13)。算出されたeNB100の位置に対応するブロック170を示す情報は、ブロック位置算出処理部112からセルID変換処理部113に対して通知される。
第1実施形態では、eNB100の位置を示す位置データ中に含まれる緯度を、ブロックマトリクス160に含まれる複数のブロック170の行数で除算することで得られる剰余から、eNB100の位置に対応するブロックマトリクス160上の特定のブロック170の行番号を算出することが好ましい。より具体的には、ブロック位置算出処理部112は、まず、剰余とブロック170の行数との対応付けを設定する。或いは、剰余とブロック170の行数との対応付けの設定が例えばオペレータ等によって予め行われており、剰余とブロック170の行数との対応付けの設定がメモリ104等に格納されていてもよい。例えば、図5に示す例で言えば、剰余が「0」の場合に行番号「1」が対応し、剰余が「1」の場合に行番号「2」が対応し、剰余が「2」の場合に行番号「3」が対応し、剰余が「3」の場合に行番号「4」が対応し、剰余が「4」の場合に行番号「5」が対応し、剰余が「5」の場合に行番号「6」が対応しているという設定が行われているとする。ここで、eNB100の位置を示す位置データ中に含まれる緯度(より具体的には、緯度から一意に導かれるパラメータ)を、ブロックマトリクス160に含まれる複数のブロック170の行数「6」で除算した剰余が4であったとする。この場合、eNB100の位置に対応するブロックマトリクス160上のブロック170の行番号は、「4」であると算出される。
同様に、第1実施形態では、eNB100の位置を示す位置データ中に含まれる経度を、ブロックマトリクス160に含まれる複数のブロック170の列数で除算することで得られる剰余から、eNB100の位置に対応するブロックマトリクス160上のブロック170の列番号を算出することが好ましい。つまり、経度の場合も、緯度の場合と同様の態様で、eNB100の位置に対応するブロックマトリクス160上のブロック170の列番号を算出することが好ましい。
続いて、eNB100が備えるセルID変換処理部113は、eNB100のセル150の範囲内に含まれるブロック170を算出する(ステップS14)。具体的には、まず、セルID変換処理部113は、eNB100の動作パラメータとしてメモリ104等に格納されているeNB100のセル150のセル半径を取得する。その後、ステップS13に示す動作によって特定されたeNB100の位置に対応する特定のブロック170を中心とし且つ取得したセル半径を半径となるセルを、ブロックマトリクス160上で特定する。これにより、セルID変換処理部113は、ブロックマトリクス160上におけるセル150を特定することができる。その後、セルID変換処理部113は、ブロックマトリクス160上で特定されたセル150の範囲内に含まれるブロック170を算出することができる。尚、第1実施形態では、ブロックマトリクス160上で特定されたセル150の範囲内に全体が含まれるブロック170を、eNB100のセル150の範囲内に含まれるブロック170として算出することが好ましい。言い換えれば、第1実施形態では、ブロックマトリクス160上で特定されたセル150の範囲内に一部が含まれるブロック170は、eNB100のセル150の範囲内に含まれるブロック170として算出しないことが好ましい。
その後、eNB100が備えるセルID変換処理部113は、ステップS14において算出されたセル150の範囲内に含まれるブロック170に対応付けられたセルIDを、eNB100自身が使用するセルIDとして特定する(ステップS15)。その後、ステップS15において特定されたセルIDを用いて、UE300との間で無線通信を行う。
尚、セル150の範囲内に含まれるブロック170に対応付けられたセルIDを、eNB100自身が使用するセルIDとして特定することを考慮すれば、eNB100のセル150の範囲内に少なくとも1つのブロック170が含まれることが好ましい。従って、ブロックマトリクス160を指定するためのパラメータ(つまり、ブロックマトリクス160中に含まれる複数のブロック170の行数及び列数、各ブロック170の大きさ、並びにセルIDの初期値)は、eNB100のセル150の範囲内に少なくとも1つのブロック170が含まれる状態を実現できるように予め決定されていることが好ましい。
以上説明したセルIDの特定動作について、図6に示す実施例を参照しながらより詳細に説明する。ここに、図6は、セルIDの具体的な特定動作をブロックマトリクス160上で示す平面図である。
図6に示すように、行数及び列数が夫々「12」となるブロックマトリクス160を用いて、セルIDの特定動作を行う例について説明する。また、セルIDの初期値は1であるものとする。従って、X(但し、Xは、1≦X≦12を満たす整数)行Y(但し、Yは、1≦Y≦12を満たす整数)列目のブロック170には、「12×(X−1)+Y」にて特定されるセルIDが対応付けられている。また、図6では、夫々が6角形にて近似されると共に太い実線にて特定されるセル150をカバーする複数のeNB100が、ハニカム構造状に配列される例について説明する。
この場合、中心に位置する1つのeNB100が使用するセルIDは、当該eNB100に隣接する6つのeNB100が使用するセルIDと衝突してはいけない。このため、中心に位置する1つのeNB100のセル150及び当該eNB100に隣接する6つのeNB100の6つのセル150が1つのブロックマトリクス160によってカバーされるように、ブロックマトリクス160中に含まれる複数のブロック170の行数及び列数、各ブロック170の大きさ、並びにセルIDの初期値が予め設定されている。
まず、eNB100aによるセルIDの特定動作について説明する。この場合、eNB100aは、自身の位置に対応するブロック170を算出する。算出の結果、eNB100aの位置に対応するブロック170が、図6中濃い網掛けにて特定される7行7列目のブロック170であると算出されたとする。続いて、eNB100aは、自身のセル150aの範囲内に含まれるブロック170を算出する。例えば、eNB100aのセル150aが、ブロックマトリクス160上で図6に示す範囲で分布しているとする。この場合、eNB100aのセル150aの範囲内に含まれるブロック170として、図6中薄い網掛けにて特定される5行7列目のブロック170、6行6列目のブロック170、6行7列目のブロック170、6行8列目のブロック170、7行6列目のブロック170、7行7列目のブロック170、7行8列目のブロック170及び8行7列目のブロック170が算出される。その結果、eNB100aは、自身が使用するセルIDとして、55、66、67、68、78、79、80及び91を特定する。
続いて、eNB100aに隣接するeNB100bによるセルIDの特定動作について説明する。この場合、eNB100bは、自身の位置に対応するブロック170を算出する。算出の結果、eNB100bの位置に対応するブロック170が、図6中濃い網掛けにて特定される9行10列目のブロック170であると算出されたとする。続いて、eNB100bは、自身のセル150bの範囲内に含まれるブロック170を算出する。例えば、eNB100bのセル150bがブロックマトリクス160上で図6に示す範囲で分布しているとすると、eNB100bのセル150bの範囲内に含まれるブロック170として、図6中薄い網掛けにて特定される7行10列目のブロック170、8行9列目のブロック170、8行10列目のブロック170、8行11列目のブロック170、9行9列目のブロック170、9行10列目のブロック170、9行11列目のブロック170及び10行10列目のブロック170が算出される。その結果、eNB100bは、自身が使用するセルIDとして、82、93、94、95、105、106、107及び118を特定する。このセルIDは、eNB100bに隣接するeNB100aが使用するべきセルIDとは重複していない。
続いて、eNB100bに隣接する一方でeNB100aに隣接しないeNB100cによるセルIDの特定動作について説明する。この場合、eNB100cは、自身の位置に対応するブロック170を算出する。算出の結果、eNB100cの位置に対応するブロック170が、図6中濃い網掛けにて特定される11行2列目のブロック170であると算出されたとする。続いて、eNB100cは、自身のセル150cの範囲内に含まれるブロック170を算出する。例えば、eNB100cのセル150cがブロックマトリクス160上で図6に示す範囲で分布しているとすると、eNB100cのセル150cの範囲内に含まれるブロック170として、図6中薄い網掛けにて特定される9行1列目のブロック170、9行2列目のブロック170、10行1列目のブロック170、10行2列目のブロック170、11行1列目のブロック170、11行2列目のブロック170、12行1列目のブロック170及び12行2列目のブロック170が算出される。その結果、eNB100bは、自身が使用するセルIDとして、97、98、109、110、121、122、133及び134を特定する。このセルIDは、eNB100cに隣接するeNB100bが使用するべきセルIDとは重複していない。
また、説明の簡略化のために詳細な説明を省略するが、eNB100aからeNB100cに限らず、その他のeNB100についても同様に、自身が使用するセルIDとして、隣接するeNB100が使用するセルIDと重複しないセルIDが特定される。
以上説明したように、第1実施形態に係る無線通信システム1が備えるeNB100によれば、GPSデータに基づいて算出される位置データ及び予め設定されるブロックマトリクス160の夫々に基づいて、eNB100自身が使用するべきセルIDを自動的に又は自律的に特定することができる。従って、eNB100が使用するべきセルIDをオペレータが手動で設定する構成と比較して、セルIDの特定に要するコスト(例えば、時間的なコストや費用的なコストや運用的なコスト等)を相対的に低減することができる。
加えて、セルIDの特定の際に用いられるM行×N行のブロック170を含むブロックマトリクス160は、セルIDの重複使用を回避すべきセル範囲をカバーしている。従って、当該ブロックマトリクス160上には、中心となるeNB100のセル範囲に加えて、当該中心となるeNB100との間でのセルIDの重複使用を回避すべき他のeNBのセル範囲が配置される。このため、このようなブロックマトリクス160に基づいて特定されるセルIDは、他のeNB100が使用するセルIDと重複することはなくなる。このため、セルIDの特定に要するコストを低減しつつも、隣接するセル150間での重複がないようにセルIDを適切に特定することができる。
第1実施形態では、セルIDを特定する対象となる1つのeNB100のセル150及び対象eNB100に隣接する一又は複数のeNB100の夫々のセル150が1つのブロックマトリクス160に含まれるように、ブロックマトリクス160が設定されていてもよい。このため、対象となる1つのeNB100に着目すれば、当該対象となるeNB100を中心とすると共に隣接するeNB100のセル150を含む仮想的なブロックマトリクス160上では、対象となるeNB100のセル150の範囲内に含まれるブロック170が、隣接するeNB100のセル150の範囲内に重複して含まれることがなくなる。より具体的には、図6に示すように、eNB100aに着目すれば、eNB100aを中心とする仮想的なブロックマトリクス160aは、1行1列目のブロック170から12行12列目のブロック170までを含むことになる。このブロックマトリクス160aから分かるように、eNB100aのセル150の範囲内に含まれるブロック170(つまり、5行7列目のブロック170、6行6列目のブロック170、6行7列目のブロック170、6行8列目のブロック170、7行6列目のブロック170、7行7列目のブロック170、7行8列目のブロック170及び8行7列目のブロック170)は、eNB100aに隣接する6つのeNB100の夫々のセル150の範囲内に重複して含まれることはない。同様に、図6に示すように、eNB100bに着目すれば、eNB100bを中心とする仮想的なブロックマトリクス160bは、3行5列目のブロック170から2行4列目のブロック170までを含むことになる。このブロックマトリクス160bから分かるように、eNB100bのセル150の範囲内に含まれるブロック170(つまり、7行10列目のブロック170、8行9列目のブロック170、8行10列目のブロック170、8行11列目のブロック170、9行9列目のブロック170、9行10列目のブロック170、9行11列目のブロック170及び10行10列目のブロック170)が、eNB100bに隣接する6つのeNB100の夫々のセル150の範囲内に重複して含まれることはない。同様に、図6に示すように、eNB100cに着目すれば、eNB100cを中心とする仮想的なブロックマトリクス160cは、5行8列目のブロック170から4行7列目のブロック170までを含むことになる。このブロックマトリクス160cから分かるように、eNB100cのセル150の範囲内に含まれるブロック170(つまり、9行1列目のブロック170、9行2列目のブロック170、10行1列目のブロック170、10行2列目のブロック170、11行1列目のブロック170、11行2列目のブロック170、12行1列目のブロック170及び12行2列目のブロック170)が、eNB100cに隣接する6つのeNB100の夫々のセル150の範囲内に重複して含まれることはない。このように、上述したブロックマトリクス160に基づいて特定されるセルIDは、隣接する複数のeNB100が使用するセルIDと重複することはなくなる。このため、セルIDの特定に要するコストを低減しつつも、隣接するセル間での重複がないようにセルIDを適切に特定することができる。
また、eNB100は、位置データにより特定されるeNB100自身の位置及び予め設定されているセル半径を参照すれば、ブロックマトリクス160上でのeNB100自身のセル150を特定することができる。言い換えれば、eNB100は、実際のセル150の大きさや形状等を複雑且つ高度な演算を用いて算出することなく、ブロックマトリクス160上でのeNB100自身のセル150を特定することができる。このため、eNB100は、eNB100のセル150に含まれるブロック170を比較的容易に特定することができる。
また、eNB100は、位置データに含まれる緯度及び経度を除算した剰余を用いて、ブロックマトリクス160上におけるeNB100の位置に対応するブロック170を算出している。このため、ブロックマトリクス160上において、eNB100の位置に対応する1つのブロック170を算出することができる。
更には、上述の如く剰余を用いてeNB100の位置に対応するブロック170を算出しているため、相対的に小さい範囲をカバーする1つのブロックマトリクス160をマトリクス状に配列するように使いまわしたとしても、eNB100の位置に対応する1つのブロック170を算出することができる。仮に緯度及び経度の夫々を直接ブロック170に対応付けようとすれば、当該無線通信システム1が適用される全ての地域に対応付けられた膨大なないしは広大なブロックマトリクス160を用意する必要がある。しかるに、第1実施形態では、上述の如く剰余を用いてeNB100の位置に対応するブロック170を算出しているため、当該無線通信システム1が適用される全地域を、相対的に小さな1つのブロックマトリクス160でカバーすることができる。
(2)第2実施形態
続いて、第2実施形態に係る無線通信システム2について説明を進める。尚、第1実施形態に係る無線通信システム1と同一の構成及び動作については、同一の参照符号を付してその詳細な説明については省略する。
(2−1)無線通信システムの全体構成
初めに、図7を参照して、第2実施形態の無線通信システム2の全体構成について説明する。ここに、図7は、第2実施形態の無線通信システム2の全体構成の一例を示すブロック図である。
図7に示すように、第2実施形態に係る無線通信システム2は、eNB(eNodeB)200aと、eNB200bと、UE(User Equipment)400aと、UE400bと、UE400cと、GPS衛星500とを備えている。つまり、第2実施形態に係る無線通信システム2の全体構成は、図1に示した第1実施形態に係る無線通信システム1の全体構成と概ね同一である。
但し、第2実施形態に係る無線通信システム2では、図7に示すように、eNB200aのセル250aがeNB200bのセル250bと重複する(つまり、eNB200aとeNB200bとが概ね同じ位置に配置される)構成を考慮している。そして、第2実施形態に係る無線通信システム2では、あるeNB200aのセル250aが他のeNB200bのセル250bと重複する場合であっても、セルIDの特定動作を適切に行うことができる。このため、上述した第1実施形態に係る無線通信システム1と比較して、eNB200及びUE400の内部構成及び動作が異なっている。以下、変更点を中心として、第2実施形態についての説明を進める。
(2−2)ブロック図
続いて、図8及び図9を参照して、第2実施形態に係る無線通信システム2が備えるeNB200及びUE400の夫々の基本構成について説明する。
(2−2−1)eNBのブロック図
初めに、図8を参照して、第2実施形態に係るeNB200の基本構成について説明する。ここに、図8は、第2実施形態に係るeNB200の基本構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、eNB200は、第1実施形態に係るeNB100と同様に、その要部に着目すれば、無線送受信処理部101と、GPS制御部102と、制御部203と、メモリ104とを備えている。また、制御部203は、その内部に構成される論理的な又は機能的な処理ブロックとして、第1実施形態に係るeNB100と同様に、マトリクス管理部110を備えている。また、マトリクス管理部110は、その内部に構成される論理的な又は機能的な処理ブロックとして、第1実施形態に係るeNB100と同様に、候補マトリクス選択部111と、ブロック位置算出処理部112と、セルID変換処理部113とを備えている。
第2実施形態に係るeNB200では、制御部203は、その内部に構成される論理的な又は機能的な処理ブロックとして、オーバーラップ制御部210を備えている。また、オーバーラップ制御部210は、その内部に構成される論理的な又は機能的な処理ブロックとして、セルID衝突検知部211と、候補マトリクス再選択処理部212とを備えている。このような処理ブロックは、例えば制御部203の動作を規定するファームウェアの一部のプログラムの動作として実現されてもよいし、或いはファームウェアから独立したプログラムの動作として実現されてもよい。或いは、セルID衝突検知部211及び候補マトリクス再選択処理部212は、制御部203とは独立した1つの回路として実現されてもよい。
セルID衝突検知部211は、上述の「判定手段」の一実施例をであって、UE400から通知される無線品質測定結果を示すメッセージに基づいて、他のeNB200との間でセルIDが衝突しているか否か(言い換えれば、重複しているか否か)を判定する。
候補マトリクス再選択処理部212は、セルID衝突検知部211によってセルIDが衝突していることが検知された場合に、セルIDの特定に使用されるブロックマトリクス160を再度選択するよう候補マトリクス選択部111を制御する。
尚、セルID衝突検知部211及び候補マトリクス再選択処理部212の夫々のより詳細な動作は、後述する動作例において詳述する。
(2−2−2)UEのブロック図
続いて、図9を参照して、第2実施形態に係るUE400の基本構成について説明する。ここに、図9は、第4実施形態に係るUE400の基本構成の一例を示すブロック図である。
図9に示すように、UE400は、第1実施形態に係るUE300と同様に、その要部に着目すれば、無線送受信処理部301と、制御部403と、メモリ304とを備えている。
第2実施形態に係るUE400では、制御部403は、その内部に構成される論理的な又は機能的な処理ブロックとして、測定結果報知処理部410を備えている。このような処理ブロックは、例えば制御部403の動作を規定するファームウェアの一部のプログラムの動作として実現されてもよいし、或いはファームウェアから独立したプログラムの動作として実現されてもよい。或いは、測定結果報知処理部410は、制御部403とは独立した1つの回路として実現されてもよい。
測定結果報知処理部410は、無線品質測定結果を示すメッセージを作成すると共に、無線送受信処理部301を介して当該メッセージをeNB200に対して送信する。
(2−3)第1動作例
続いて、図10を参照して、第2実施形態に係る無線通信システム2が備えるeNB200の第1動作例(セルIDの特定動作)について説明する。ここに、図10は、第2実施形態に係る無線通信システム2が備えるeNB200の第1動作例の流れを示すフローチャートである。
図10に示すように、eNB200は、上述したステップS11からステップS15の動作を行うことで、eNB200自身が使用するセルIDを特定する。その後、eNB200は、ステップS15において特定されたセルIDを用いて、UE300との間で無線通信を行う。
その後、eNB200が備えるセルID衝突検知部211は、UE400から送信されるメッセージに基づいて、他のeNB200との間でセルIDが衝突しているか否かを判定する(ステップS21)。具体的には、UE400が備える測定結果報知処理部410は、定期的に又は非定期的に、無線品質測定結果を示すメッセージ(Measurement Report)をeNB200に対して送信する。このメッセージ内には、UE400の現在の通信先となっているeNB200の基地局ID及び当該eNB200がカバーするセル250のセルIDが含まれている。セルID衝突検知部211は、受信したメッセージ内に含まれているセルIDと自身が使用しているセルIDとが同一であり且つ受信したメッセージ内に含まれている基地局IDと自身の基地局IDとが異なる場合に、他のeNB200との間でセルIDが衝突していると判定する。一方で、セルID衝突検知部211は、メッセージ内に含まれているセルIDと自身が使用しているセルIDとが異なるか又はメッセージ内に含まれている基地局IDと自身の基地局IDとが同一である場合には、他のeNB200との間でセルIDが衝突していないと判定する。
ステップS21における判定の結果、他のeNB200との間でセルIDが衝突していないと判定された場合には(ステップS21:No)、セルIDの特定動作を終了する。或いは、他のeNB200との間でセルIDが衝突しているか否かの検知動作を継続してもよい。
一方で、ステップS21における判定の結果、他のeNB200との間でセルIDが衝突していると判定された場合には(ステップS21:Yes)、続いて、eNB200が備える候補マトリクス再選択処理部212は、セルIDの特定に使用されるブロックマトリクス160を再度選択するよう候補マトリクス選択部111を制御する。その結果、候補マトリクス選択部111は、セルIDを特定するために使用するブロックマトリクス160を、ステップS11において指定されたブロックマトリクス160から、新たなブロックマトリクス160へと変更する(ステップS22)。
このようなブロックマトリクス160の変更を行うため、複数種類のブロックマトリクス160が予め決定されていることが好ましい。より具体的には、例えば、第1の種類のブロックマトリクス160を特定するパラメータと、第2の種類のブロックマトリクス160を特定するパラメータと、・・・、第n(但し、nは2以上の整数)の種類のブロックマトリクス160を特定するパラメータとの夫々が、eNB200の動作用のパラメータとしてメモリ104等に格納されていることが好ましい。また、各ブロックマトリクス160には、異なるセルIDが割り当てられている。より具体的には、第1の種類のブロックマトリクス160に含まれる各ブロック170に割り当てられているセルIDと、第2の種類のブロックマトリクス160に含まれる各ブロック170に割り当てられているセルIDと、・・・、第nの種類のブロックマトリクス160に含まれる各ブロック170に割り当てられているセルIDとは、いずれも異なる。また、ブロックマトリクス160の種類の数(つまり、上述のn)は、セル250の重複を許容する数となることが好ましい。例えば、無線通信システム2においてk個のセル250の重複が許容されている場合には、ブロックマトリクス160の種類の数(つまり、上述のn)は、kとなることが好ましい。これにより、k個のセル250の重複が許容されている場合であっても、k個のセル250の夫々に対して、互いに重複しないセルIDを特定することができる。
その後、候補マトリクス再選択処理部212は、使用するブロックマトリクス160を変更した旨を、ステップS21においてセルIDが衝突していると判定された衝突先のeNB200に対して通知する(ステップS23)。より具体的には、候補マトリクス再選択処理部212は、無線送受信処理部101を介して、変更後のブロックマトリクス160を特定可能な情報を含むメッセージ(例えば、Cell ID Collision Indication)を、衝突先のeNB200に対して送信する。また、候補マトリクス再選択処理部212は、上記メッセージの応答として、無線送受信処理部101を介して、メッセージ(例えば、Cell ID Collision Response)を衝突のeNB200から受信する。
その後、eNB200は、変更後のブロックマトリクス160を用いてステップS13からステップS15の動作を行う。その結果、eNB200は、新たなセルIDを特定する。
以上説明したセルIDの特定動作について、図11に示す実施例を参照しながらより詳細に説明する。ここに、図11は、第1動作例に係るセルIDの具体的な特定動作をブロックマトリクス160上で示す平面図である。
図11(a)に示すように、eNB200aとeNB200bとが同一の位置に配置されているとする。この場合、eNB200aの位置に対応するブロック170とeNB200bの位置に対応するブロック170とが一致してしまう。このため、仮に1つのブロックマトリクス160を用いてセルIDを特定すると、eNB200aが使用するセルIDとeNB200bが使用するセルIDとが一致してしまう。以下、このような状況の下、UE400より無線品質測定結果を示すメッセージに基づいてセルIDが衝突しているとeNB200aが判定した場合の動作について説明する。
UE400より無線品質測定結果を示すメッセージに基づいてセルIDが衝突しているとeNB200aが備えるセルID衝突検知部211により判定された場合には、eNB200aが備える候補マトリクス再選択処理部212は、セルIDを特定するために使用するブロックマトリクス160を、それまでに使用していたブロックマトリクス160a(図11(b)参照)から新たなブロックマトリクス160b(図11(c)参照)へと変更する。
新たなブロックマトリクス160bの各ブロック170bには、それまでに使用していたブロックマトリクス160aの各ブロック170aに割り当てられているセルIDとは異なるセルIDが割り当てられている。図11(b)及び(c)に示す例では、ブロックマトリクス160a中の複数のブロック170aには、「1」から「144」のセルIDが割り当てられており、ブロックマトリクス160b中の複数のブロック170bには、「145」から「288」のセルIDが割り当てられている。
以降は、eNB100aは、ブロックマトリクス160bを用いてセルIDを特定する一方で、eNB100bは、ブロックマトリクス160aを用いてセルIDを特定する。このため、eNB200aとeNB200bとの間でセルIDが衝突することはなくなる。従って、第1動作例によれば、複数のセル250が地理的に重複する場合であっても、各セル250に対して、互いに重複しないセルIDを特定することができる。
更に、第1動作例によれば、ブロックマトリクスを変更したeNB200(以降、説明の簡略化のため、“eNB200a”と称する)は、ブロックマトリクス160を変更した旨を、衝突先のeNB200(以降、説明の簡略化のため、“eNB200b”と称する)に対して通知している。このため、衝突先のeNB200bは、eNB200b自身が使用しているブロックマトリクス160の種類に加えて、eNB200aが使用しているブロックマトリクス160の種類をも認識することができる。仮に、ブロックマトリクス160を変更した旨がNB200aから衝突先のeNB200bに対して通知されなければ、衝突先のeNB200bは、eNB200aが使用しているブロックマトリクス160の種類を認識することができない。このため、仮に新たに他のeNB(例えば、eNB200c)との間でセルIDが衝突しているとeNB200bが判定した場合には、eNB200bは、eNB200b自身が使用しているブロックマトリクス160以外のブロックマトリクス160に変更することになる。しかしながら、変更後のブロックマトリクス160が、eNB200aが使用しているブロックマトリクス160と同一になってしまった場合には、再度eNB200aとeNB200bとの間でセルIDが衝突してしまう。しかるに、第1動作例によれば、仮に新たに他のeNB200cとの間でセルIDが衝突しているとeNB200bが判定した場合には、eNB200bは、eNB200b自身が使用しているブロックマトリクス160及びeNB200aが使用しているブロックマトリクス160以外のブロックマトリクス160に変更することができる。従って、ブロックマトリクス160の変更によってセルIDが再度衝突してしまう事態は殆ど或いは全く生じなくなる。
(2−4)第2動作例
続いて、図12を参照して、第2実施形態に係る無線通信システム2が備えるeNB200の第2動作例(セルIDの特定動作)について説明する。ここに、図12は、第2実施形態に係る無線通信システム2が備えるeNB200の第2動作例の流れを示すフローチャートである。
上述の第1動作例では、2つのeNB200のセル250が重複する場合には、一方のeNB200のみが衝突を検知する(つまり、判定する)場合の例について説明している。しかしながら、2つのeNB200のセル250が重複する場合には、2つのeNB200の双方が同時に衝突を検知することも想定される。このような状況の発生に備え、第2動作例は、2つのeNB200の双方が同時に衝突を検知する場合におけるセルIDの特定する動作を行う。
図12に示すように、eNB200(以降、説明の簡略化のために、“eNB200a”と称する)は、上述したステップS11からステップS15の動作を行うことで、eNB200a自身が使用するセルIDを特定する。その後、eNB200aは、ステップS15において特定されたセルIDを用いて、UE300との間で無線通信を行う。
その後、eNB200aが備えるセルID衝突検知部211は、UE400から送信されるメッセージに基づいて、他のeNB200(以降、説明の簡略化のために、“eNB200b”と称する)との間でセルIDが衝突しているか否かを判定する(ステップS21)。
ステップS21における判定の結果、eNB200aとeNB200bとの間でセルIDが衝突していないと判定された場合には(ステップS21:No)、eNB200aは、セルIDの特定動作を終了する。或いは、eNB200aは、他のeNB200bとの間でセルIDが衝突しているか否かの検知動作を継続してもよい。
一方で、ステップS21における判定の結果、eNB200aとeNB200bとの間でセルIDが衝突していると判定された場合には(ステップS21:Yes)、続いて、eNB200aが備えるセルID衝突検知部211は、無線送受信処理部101を介して、eNB200bに対して、セルIDが衝突している旨を通知するメッセージを送信する(ステップS31)。メッセージの送信は、例えば、eNB200間の通信を規定するX2インタフェース等を用いて行ってもよい。
その後、eNB200aが備えるセルID衝突検知部211は、ステップS31におけるメッセージの送信先であるeNB200bから、セルIDが衝突している旨を通知するメッセージを受信したか否かを判定する(ステップS32)。言い換えれば、eNB200aが備えるセルID衝突検知部211は、ステップS31においてメッセージを送信したeNB200bから、セルIDが衝突している旨を通知するメッセージが送信されているか否かを判定する。つまり、ステップS32では、eNB200a及びeNB200bの夫々によってセルIDの衝突が同時に検知されたか否かが判定される。
ステップS32における判定の結果、セルIDが衝突している旨を通知するメッセージを受信していないと判定された場合には(ステップS32:No)、eNB200aにおいてのみセルIDの衝突が検知され且つeNB200bにおいてはセルIDの衝突が検知されていないと想定される。従って、この場合、eNB200aは、ステップS22及びステップS23に示す動作を行うことで、セルIDを特定するために使用するブロックマトリクス160を変更すると共に(ステップS22)、使用するブロックマトリクス160を変更した旨をeNB200bに対して通知する(ステップS23)。その後、eNB200aは、変更後のブロックマトリクス160を用いてステップS13からステップS15の動作を行う。その結果、eNB200は、新たなセルIDを特定する。
一方、ステップS32における判定の結果、セルIDが衝突している旨を通知するメッセージを受信したと判定された場合には(ステップS32:Yes)、eNB200a及びeNB200bの双方においてセルIDの衝突が同時に検知されたと想定される。この場合、eNB200aが備えるセルID衝突検知部211は、eNB200aの基地局IDが、例えばeNB200bから送信されるメッセージに含まれているeNB200bの基地局IDよりも大きいか否かを判定する(ステップS33)。
ステップS33における判定の結果、eNB200aの基地局IDがeNB200bの基地局IDよりも大きくないと判定された場合には(ステップS33:No)、eNB200aは、ステップS22及びステップS23に示す動作を行うことで、セルIDを特定するために使用するブロックマトリクス160を変更すると共に(ステップS22)、使用するブロックマトリクス160を変更した旨をeNB200bに対して通知する(ステップS23)。その後、eNB200aは、変更後のブロックマトリクス160を用いてステップS13からステップS15の動作を行う。その結果、eNB200は、新たなセルIDを特定する。つまり、eNB200aの基地局IDがeNB200bの基地局IDよりも大きくない場合には、eNB200aは、自身の優先度がeNB200bよりも低いと判断し、ブロックマトリクス160の変更を行う。
一方、ステップS33における判定の結果、eNB200aの基地局IDがeNB200bの基地局IDよりも大きいと判定された場合には(ステップS33:Yes)、eNB200aは、ブロックマトリクス160の変更を行うことなく動作を終了する。この場合には、eNB200b側においてブロックマトリクス160の変更が行われる。つまり、eNB200aの基地局IDがeNB200bの基地局IDよりも大きい場合には、eNB200aは、自身の優先度がeNB200bよりも高いと判断し、ブロックマトリクス160の変更を行わない(言い換えれば、eNB200bにブロックマトリクス160を変更させる)。
このような第2動作例により、複数のeNB200の双方が同時に衝突を検知する場合であっても、複数のeNB200の間で矛盾することなくセルIDを適切に特定することができる。
尚、上述の説明では、ブロックマトリクス160を変更するか否かを決定するための優先度の判定のために、eNB200の基地局IDを用いる例について説明している。しかしながら、基地局IDに限らず、eNB200を一意に識別することができる各種識別番号、パラメータ或いは変数等を用いて、優先度の判定を行ってもよい。
以上説明した第1及び第2実施形態に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
自局の位置を特定するための位置情報を取得する第1取得手段と、一意に識別可能なセル識別子が対応付けられた領域を示すブロックを含み、自局のセル範囲及び自局との間での前記セル識別子の重複使用を回避すべきセル範囲をカバーする領域を示し、複数の前記ブロックを有するマトリクスを取得する第2取得手段と、前記位置情報により特定される自局の位置及び前記マトリクスの夫々に基づいて、自局のセル範囲内に含まれる前記ブロックに対応付けられた前記セル識別子を特定する特定手段とを備えることを特徴とする無線基地局。
(付記2)
前記特定手段は、前記位置情報から特定される自局の位置に対応する一の前記ブロックを特定し、且つ特定された前記一のブロックを中心として自局のセル範囲に含まれる少なくとも一つのブロックに対応付けられたセル識別子を特定することを特徴とする付記1に記載の無線基地局。
(付記3)
前記特定手段は、前記位置情報から特定される自局の位置を示す位置パラメータを前記マトリクスに配列されている複数の前記ブロックの行数及び列数で除算することによって生ずる剰余から、前記一のブロックを特定することを特徴とする付記2に記載の無線基地局。
(付記4)
前記マトリクスは、自局のセル範囲及び自局と隣接する少なくとも一つの他の無線基地局のセル範囲をカバーすることを特徴とする付記1から3のいずれか一項に記載の無線基地局。
(付記5)
自局のセル範囲と重複するセル範囲をカバーする他の無線基地局が存在するか否かを判定する判定手段を更に備え、前記取得手段は、自局のセル範囲と重複するセル範囲をカバーする他の無線基地局が存在すると判定された場合には、夫々に異なる前記セル識別子が割り当てられた複数のマトリクスのうち前記他の無線基地局が使用するマトリクス以外の他のマトリクスを取得し、前記特定手段は、自局のセル範囲と重複するセル範囲をカバーする他の無線基地局が存在すると判定された場合には、前記他のマトリクスに基づいて、前記セル識別子を特定することを特徴とする付記1から4のいずれか一項に記載の無線基地局。
(付記6)
前記他のマトリクスに変更した旨を前記他の無線基地局に対して通知する通知手段を更に備えることを特徴とする付記5に記載の無線基地局。
(付記7)
前記取得手段は、前記他の無線基地局が存在すると判定され且つ前記他の無線基地局の優先度が自局の優先度よりも高い場合には、前記複数のマトリクスのうち前記他の無線基地局が使用するマトリクス以外の他のマトリクスを取得し、前記特定手段は、前記他の無線基地局が存在すると判定され且つ前記他の無線基地局の優先度が自局の優先度よりも高い場合には、前記他のマトリクスに基づいて、前記セル識別子を特定することを特徴とする付記5又は6に記載の無線基地局。
(付記8)
無線基地局におけるセル識別子の特定方法であって、自局の位置を特定するための位置情報を取得する第1取得工程と、一意に識別可能なセル識別子が対応付けられた領域を示すブロックを含み、自局のセル範囲及び自局との間での前記セル識別子の重複使用を回避すべきセル範囲をカバーする領域を示し、複数の前記ブロックを有するマトリクスを取得する第2取得工程と、前記位置情報により特定される自局の位置及び前記マトリクスの夫々に基づいて、自局のセル範囲内に含まれる前記ブロックに対応付けられた前記セル識別子を特定する特定工程とを備えることを特徴とするセル識別子の特定方法。
(付記9)
前記特定工程は、前記位置情報から特定される自局の位置に対応する一の前記ブロックを特定し、且つ特定された前記一のブロックを中心として自局のセル範囲に含まれる少なくとも一つのブロックに対応付けられたセル識別子を特定することを特徴とする付記8に記載のセル識別子の特定方法。
(付記10)
前記特定工程は、前記位置情報から特定される自局の位置を示す位置パラメータを前記マトリクスに配列されている前記複数のブロックの行数及び列数で除算することによって生ずる剰余から、前記一のブロックを特定することを特徴とする付記9に記載のセル識別子の特定方法。
(付記11)
前記マトリクスは、自局のセル範囲及び自局と隣接する少なくとも一つの他の無線基地局のセル範囲をカバーすることを特徴とする付記8から10のいずれか一項に記載のセル識別子の特定方法。
(付記12)
自局のセル範囲と重複するセル範囲をカバーする他の無線基地局が存在するか否かを判定する判定工程を更に備え、前記取得工程は、自局のセル範囲と重複するセル範囲をカバーする他の無線基地局が存在すると判定された場合には、夫々に異なる前記セル識別子が割り当てられた複数のマトリクスのうち前記他の無線基地局が使用するマトリクス以外の他のマトリクスを取得し、前記特定工程は、自局のセル範囲と重複するセル範囲をカバーする他の無線基地局が存在すると判定された場合には、前記他のマトリクスに基づいて、前記セル識別子を特定することを特徴とする付記8から11のいずれか一項に記載のセル識別子の特定方法。
(付記13)
前記他のマトリクスに変更した旨を前記他の無線基地局に対して通知する通知工程を更に備えることを特徴とする付記12に記載のセル識別子の特定方法。
(付記14)
前記取得工程は、前記他の無線基地局が存在すると判定され且つ前記他の無線基地局の優先度が自局の優先度よりも高い場合には、前記複数のマトリクスのうち前記他の無線基地局が使用するマトリクス以外の他のマトリクスを取得し、前記特定工程は、前記他の無線基地局が存在すると判定され且つ前記他の無線基地局の優先度が自局の優先度よりも高い場合には、前記他のマトリクスに基づいて、前記セル識別子を特定することを特徴とする付記12又は13に記載のセル識別子の特定方法。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う無線基地局及びセル識別子の特定方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。