JP2011117903A - 環境試料の分析前処理方法及び環境試料の分析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】作業を迅速かつ簡便に行うことができ、処理後の試料の分析において、公定法と同等の分析結果を得ることができる環境試料の前処理方法を提供する。また、該環境試料の分析前処理方法を用いて前処理した試料を用いてなる環境試料の分析方法を提供する。
【解決手段】液状試料を容器に収容し、前記液状試料内にラジカルを発生させる工程を有する環境試料の分析前処理方法。
【選択図】なし
【解決手段】液状試料を容器に収容し、前記液状試料内にラジカルを発生させる工程を有する環境試料の分析前処理方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、作業を迅速かつ簡便に行うことができ、処理後の試料の分析において、公定法と同等の分析結果を得ることができる環境試料の前処理方法に関する。また、本発明は、該環境試料の分析前処理方法を用いて前処理した試料を用いてなる環境試料の分析方法に関する。
近年の環境意識の高まりとともに、環境汚染物質の分析の重要性が認識され、法律で環境分析の対象とされていない場所においても、自主的に又は社会的要請で環境分析を行うことが必要とされるようになってきた。
汚染土壌等の環境試料の分析は、土壌汚染対策法等で定められている、いわゆる公定法と呼ばれる作業方法に準じて行われている(非特許文献1〜10)。公定法では、多様な試料に対して正確な分析値を得るために、複雑な作業が詳細に定められている。
環境試料の分析方法は、大別すると、試料を採取する工程、試料の前処理工程、装置での分析工程に分けられ、なかでも試料の採取は容易な作業であり、装置での分析も近年の技術進歩で自動化が進み、比較的容易な作業となっている。一方、試料の前処理は、多様な試料を分析装置に適合させるために行われる作業であるが、公定法においては、分析対象以外の、試料に含まれる有機物、懸濁物、金属錯体等を分解するために高濃度の強酸を試料に添加し、長時間加熱する等、時間とコストと労力を要する作業であり、作業環境及び周辺装置が必要となる。このため、迅速かつ簡便に行うことができ、公定法と同等の分析結果を得ることができる環境試料の分析方法が求められていた。
環境試料の分析方法は、大別すると、試料を採取する工程、試料の前処理工程、装置での分析工程に分けられ、なかでも試料の採取は容易な作業であり、装置での分析も近年の技術進歩で自動化が進み、比較的容易な作業となっている。一方、試料の前処理は、多様な試料を分析装置に適合させるために行われる作業であるが、公定法においては、分析対象以外の、試料に含まれる有機物、懸濁物、金属錯体等を分解するために高濃度の強酸を試料に添加し、長時間加熱する等、時間とコストと労力を要する作業であり、作業環境及び周辺装置が必要となる。このため、迅速かつ簡便に行うことができ、公定法と同等の分析結果を得ることができる環境試料の分析方法が求められていた。
平成15年環境省告示第13号
平成15年環境省告示第17号
平成15年環境省告示第18号
平成15年環境省告示第19号
日本工業規格 JIS K0102 55.3
日本工業規格 JIS K0102 61.2
日本工業規格 JIS K0102 54.3
日本工業規格 JIS K0102 67.2
日本工業規格 JIS K70102 65.2.4
日本工業規格 JIS K0102 66.1.1
本発明は、作業を迅速かつ簡便に行うことができ、処理後の試料の分析において、公定法と同等の分析結果を得ることができる環境試料の前処理方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該環境試料の分析前処理方法を用いて前処理した試料を用いてなる環境試料の分析方法を提供することを目的とする。
本発明は、液状試料を容器に収容し、上記液状試料内にラジカルを発生させる工程を有する環境試料の分析前処理方法である。
以下に本発明を詳述する。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、環境試料の分析前処理方法として、液状試料内にラジカルを発生させる方法を用いれば、公定法よりも迅速かつ簡便でありながら、公定法と同等の分析結果を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の環境試料の分析前処理方法において、処理対象とすることができる上記環境試料は特に限定されず、例えば、水、土壌、土壌抽出水、底質、鉱さい(鉄鋼スラグ)、煤塵、汚泥、工場排水、スラグ、廃棄物等が挙げられる。
本発明の環境試料の分析前処理方法において、上記環境試料は、公定法に従って、乾燥、振とう、ろ過等の操作を行った後、前処理に供される。
本発明の環境試料の分析前処理方法において、上記環境試料は、公定法に従って、乾燥、振とう、ろ過等の操作を行った後、前処理に供される。
本発明の環境試料の分析前処理方法では、上記環境試料は液状試料の状態で用いる。上記環境試料を液状試料にするための媒体としては特に限定されないが、水を用いることが好ましい。
上記液状試料内にラジカルを発生させる方法は特に限定されず、例えば、液状試料への過酸化水素、オゾン等の無機化過酸化物や有機過酸化物等の添加、酸化チタン等の固体触媒の添加、紫外線等の光の照射、微細気泡存在下での超音波等の音波の照射、水中プラズマ等の電圧の印加、及び、これらを組み合わせた方法が挙げられる。
なかでも、取り扱いが簡便で、安全であることから、水中プラズマを用いることが好ましい。
なかでも、取り扱いが簡便で、安全であることから、水中プラズマを用いることが好ましい。
上記水中プラズマによってラジカルを発生させる方法のうち、代表的な例としては、容器に設置された電極に高周波又はパルス状電圧を印加することにより、液状試料内に気泡を発生させる、或いは、予め容器に微細気泡を導入する。そして、この気泡内にプラズマを生成させ、気泡中に発生したプラズマによりOHラジカルを発生させる方法が挙げられる。パルス状電圧の印加は、ラジカルの発生量が多くなる場合が多く、公定法とほぼ同等の分析値を得ることができるのでより好ましい。本発明の環境試料の分析前処理方法では、上記液状試料内に発生した上記OHラジカルにより、分析対象以外の、有機物、懸濁物、金属錯体等を分解することができる。
上記電極が設置された容器は特に限定されないが、例えば、図1に示す構成のもの等を用いることができる。
図1は、正負電極が設置された容器の上面の模式図(a)及び側面の断面の模式図(b)である。図1に示した容器3には、電極(負極)1と電極(正極)2が設置されており、液状試料4を収容することができる。
図1は、正負電極が設置された容器の上面の模式図(a)及び側面の断面の模式図(b)である。図1に示した容器3には、電極(負極)1と電極(正極)2が設置されており、液状試料4を収容することができる。
上記電極を構成する材料は特に限定されず、例えば、鉄、銅、ステンレス、タングステン、白金、カーボン、誘電体(MgO、TiO2、SrTiO3)等や、これらを複合化したもの等が挙げられる。
また、上記容器は特に限定されないが、セラミックス製のもの等を用いることができる。
また、上記容器は特に限定されないが、セラミックス製のもの等を用いることができる。
上記正負電極に印加する電圧パルスのパルス電圧は特に限定されないが、好ましい下限は0.2kV、好ましい上限は200kVである。上記パルス電圧が1kV未満であると、水中プラズマの発生が起こりにくく、環境試料の分解性能が低下し、分析前処理が困難になることがある。上記パルス電圧が200kVを超えると、装置が高価かつ大型となるため、導入コスト、運用コストが高価となり、経済的に見合わない場合がある。
上記パルス電圧のより好ましい下限は1kV、より好ましい上限は100kVである。
上記パルス電圧のより好ましい下限は1kV、より好ましい上限は100kVである。
上記電圧パルスのパルス幅は特に限定されないが、好ましい下限は0.01μs、好ましい上限は100μsである。上記パルス幅が0.01μs未満であると、試料でのラジカル発生量が低下して、時間当たりの分析前処理量が少なくなり、長時間の処理が必要となることがある。上記パルス幅が100μsを超えると、装置が高価かつ大型となるため、
導入コスト、運用コストが高価となり、経済的に見合わない場合がある。上記パルス幅のより好ましい下限は1μs、より好ましい上限は50μsである。
導入コスト、運用コストが高価となり、経済的に見合わない場合がある。上記パルス幅のより好ましい下限は1μs、より好ましい上限は50μsである。
上記電圧パルスの周波数は特に限定されないが、好ましい下限は0.0001MHz、好ましい上限は20MHzである。上記周波数が0.0001MHz未満であると、試料内のラジカル発生量が低下して、時間当たりの分析前処理量が少なくなり、長時間の処理が必要となることがある。上記周波数が20MHzを超えると、装置が複雑かつ高価となるため、経済的に見合わない場合がある。上記周波数のより好ましい下限は、0.001MHz、より好ましい上限は10MHzである。
本発明の分析前処理方法を用いて前処理した試料を用いてなる環境試料の分析方法もまた、本発明の1つである。
本発明の環境試料の分析方法において、分析対象となる物質としては、例えば、鉛、カドミウム、ヒ素、亜鉛、銅、クロム、セレン、水銀、ニッケル、スズ、アンチモン、テルル、ビスマス等が挙げられる。
本発明によれば、作業を迅速かつ簡便に行うことができ、処理後の試料の分析において、公定法と同等の分析結果を得ることができる環境試料の前処理方法を提供することができる。また、本発明によれば、該環境試料の分析前処理方法を用いて前処理した試料を用いてなる環境試料の分析方法を提供することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(実施例1〜5)
(液状試料の調製)
表1に記載した環境試料を風乾した後、50gをポリ容器に分取し、水500mlを添加し、環境省告示第18号に従って、抽出液(液状試料)を調製した。なお、表1中、「土壌A」、「土壌B」、及び、「土壌C」は土壌汚染現場、「鉄鋼スラグ」は製鉄所、「汚泥」は廃水処理施設にて採取したものであり、「土壌A」、「土壌B」、「土壌C」、及び、「鉄鋼スラグ」は風乾に1日間、「汚泥」は風乾に3日間費やした。
(液状試料の調製)
表1に記載した環境試料を風乾した後、50gをポリ容器に分取し、水500mlを添加し、環境省告示第18号に従って、抽出液(液状試料)を調製した。なお、表1中、「土壌A」、「土壌B」、及び、「土壌C」は土壌汚染現場、「鉄鋼スラグ」は製鉄所、「汚泥」は廃水処理施設にて採取したものであり、「土壌A」、「土壌B」、「土壌C」、及び、「鉄鋼スラグ」は風乾に1日間、「汚泥」は風乾に3日間費やした。
調製した液状試料を20ml分取し、図1に記載した構成の容器に収容した。図1における容器3としてはセラミックス製の容器を用い、負極1及び正極2にはステンレス製の電極を用い、電極間距離を0.5mmとした。更に、容器にパルス電源(積水化学工業社製、「SD100mini」)を接続した。
表1に記載したパルス電圧、パルス幅、周波数の電圧パルスを表1に記載した処理時間をかけて印加した。次いで、鉛分析器(Hach社製、「HAS−1000」)で容器内の液状試料の鉛濃度を測定した。結果を表2に示す。
表1に記載したパルス電圧、パルス幅、周波数の電圧パルスを表1に記載した処理時間をかけて印加した。次いで、鉛分析器(Hach社製、「HAS−1000」)で容器内の液状試料の鉛濃度を測定した。結果を表2に示す。
(比較例1〜5)
酸を大気中に放出しないための酸ミストトラップ付きの化学実験室用ドラフト、及び、ホットプレートを準備し、実施例と同様にして調製した液状試料について、公定法(JIS
K0102)に従って、硝酸を用いた加熱酸分解による分析前処理を行った。全ての試料について、酸が適量揮発し、加熱酸分解が終了したと判断できるまでに約60分必要であった。次いで、加熱酸分解による分析前処理を行った試料を、電気加熱式原子吸光装置(日立ハイテク社製、「Z−5000」)を使用して分析した。結果を表3に示す。
酸を大気中に放出しないための酸ミストトラップ付きの化学実験室用ドラフト、及び、ホットプレートを準備し、実施例と同様にして調製した液状試料について、公定法(JIS
K0102)に従って、硝酸を用いた加熱酸分解による分析前処理を行った。全ての試料について、酸が適量揮発し、加熱酸分解が終了したと判断できるまでに約60分必要であった。次いで、加熱酸分解による分析前処理を行った試料を、電気加熱式原子吸光装置(日立ハイテク社製、「Z−5000」)を使用して分析した。結果を表3に示す。
(比較例6〜10)
実施例1〜5と同様にして調製した液状試料について、電圧パルスを印加せずに実施例でも使用した鉛分析器(Hach社製、「HAS−1000」)を用いて容器内の液状試料の鉛濃度を測定した。結果を表4に示す。
実施例1〜5と同様にして調製した液状試料について、電圧パルスを印加せずに実施例でも使用した鉛分析器(Hach社製、「HAS−1000」)を用いて容器内の液状試料の鉛濃度を測定した。結果を表4に示す。
(参考例)
比較例1〜5では、公定法に従って、分析に電気加熱式原子吸光装置を用いた。これに対して、実施例1〜5では別の装置(鉛分析器)にて分析を実施した。これは、本発明の環境試料の前処理方法を用いる実施例1〜5では強酸による分解を行わないため、試料によっては原子吸光装置での測定を阻害することがあるためである。分析装置の違いによって分析の測定値が変わらないことを確認するための参考例として、以下の実験を行った。
1000mg/L(1000ppm)鉛標準液(和光純薬工業社製)を精製水で10万倍希釈して、10ppb鉛溶液を調製した。
得られた10ppb鉛溶液を、鉛分析器(Hach社製、「HAS−1000」)及び電気加熱式原子吸光装置(日立ハイテク社製、「Z−5000」)で分析した。結果を表5に示す。
比較例1〜5では、公定法に従って、分析に電気加熱式原子吸光装置を用いた。これに対して、実施例1〜5では別の装置(鉛分析器)にて分析を実施した。これは、本発明の環境試料の前処理方法を用いる実施例1〜5では強酸による分解を行わないため、試料によっては原子吸光装置での測定を阻害することがあるためである。分析装置の違いによって分析の測定値が変わらないことを確認するための参考例として、以下の実験を行った。
1000mg/L(1000ppm)鉛標準液(和光純薬工業社製)を精製水で10万倍希釈して、10ppb鉛溶液を調製した。
得られた10ppb鉛溶液を、鉛分析器(Hach社製、「HAS−1000」)及び電気加熱式原子吸光装置(日立ハイテク社製、「Z−5000」)で分析した。結果を表5に示す。
本発明によれば、作業を迅速かつ簡便に行うことができ、処理後の試料の分析において、公定法と同等の分析結果を得ることができる環境試料の前処理方法を提供することができる。また、本発明によれば、該環境試料の分析前処理方法を用いて前処理した試料を用いてなる環境試料の分析方法を提供することができる。
1 電極(負極)
2 電極(正極)
3 容器
4 液状試料
2 電極(正極)
3 容器
4 液状試料
Claims (4)
- 液状試料を容器に収容し、前記液状試料内にラジカルを発生させる工程を有することを特徴とする環境試料の分析前処理方法。
- 液状試料を収容する容器は電極が設置されたものであり、前記電極に電圧パルスを印加することにより、前記液状試料内にラジカルを発生させることを特徴とする請求項1記載の環境試料の分析前処理方法。
- 印加する電圧パルスは、パルス電圧が0.2〜200kV、パルス幅が0.01〜100μs、周波数が0.0001〜20MHzであることを特徴とする請求項2記載の環境試料の分析前処理方法。
- 請求項1、2又は3記載の環境試料の分析前処理方法を用いて前処理した試料を用いることを特徴とする環境試料の分析方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009277612A JP2011117903A (ja) | 2009-12-07 | 2009-12-07 | 環境試料の分析前処理方法及び環境試料の分析方法 |
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Citations (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH11123390A (ja) * | 1997-10-22 | 1999-05-11 | Japan Organo Co Ltd | 脱塩装置 |
JP2005013858A (ja) * | 2003-06-25 | 2005-01-20 | Mitsubishi Heavy Ind Ltd | 高電圧パルスを利用した排水処理装置及び該方法 |
JP2006087988A (ja) * | 2004-09-21 | 2006-04-06 | National Institute Of Advanced Industrial & Technology | 光反応管内蔵型光反応装置及びこれを用いる水質モニタリング装置 |
JP2009106910A (ja) * | 2007-11-01 | 2009-05-21 | Mitsuhiro Watanabe | 流体処理装置 |
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2009
- 2009-12-07 JP JP2009277612A patent/JP2011117903A/ja active Pending
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