JP2011117448A - 燃焼器間クロスデトネーション起爆を用いた多燃焼室式パルスデトネーションエンジンの推力調節 - Google Patents

燃焼器間クロスデトネーション起爆を用いた多燃焼室式パルスデトネーションエンジンの推力調節 Download PDF

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Abstract

【課題】燃焼室間クロスデトネーション起爆を利用する、多燃焼室式パルスデトネーションエンジンの飛行エンベロープ中の推力を調節するための方法及び装置を提供する。
【解決手段】複数のデトネーション燃焼室104を燃料と酸化剤との可燃性混合物で満たす。1つのデトネーション燃焼室104内の可燃性混合物を点火源112で点火し、残りのデトネーション燃焼室104を、連結部を介したデトネーション・クロスファイアリングによって点火する。制御装置116で点火源112と、デトネーション燃焼室104への酸化剤及び燃料の供給とを制御することにより、飛行エンベロープ中のエンジン100の推力を調節する。
【選択図】図1

Description

燃焼器間クロスデトネーション起爆を用いて多燃焼室式デトネーションエンジンの推力を調節するための方法及び装置に関する。
パルスデトネーション燃焼器では、燃料と酸化剤との混合物を点火させ、デフラグレーションからデトネーションに遷移させることにより、超音速衝撃波を生じる。超音速衝撃波は、様々な機能の中でもとりわけ、推力の供給に用いられる。このデフラグレーションからデトネーションへの遷移(DDT)は、一般に、開放端部を有する管又はパイプ構造内で生じ、この開放端部を通って排気が流出することで推力が生じる。
デフラグレーションからデトネーションへの遷移プロセスは、管内の燃料−酸化剤混合物が火花又はその他の点火源により点火されたときに開始する。火花から生じる亜音速火炎は、管の長手方向に沿って伝播する際、様々な化学的メカニズムと流体力学的メカニズムにより加速される。火炎が音速に達すると衝撃波が形成され、これらの衝撃波が反射し集束することで「ホットスポット」と局所爆発が生じ、最終的には火炎が超音速デトネーション波に遷移する。
パルスデトネーション燃焼は、様々な実用のエンジンに適用可能である。その用途の一例として、高温デトネーション生成物を出口ノズルから導出することで航空宇宙用推進機関の推力を生成する、パルスデトネーションエンジン(PDE)の開発がある。複数の燃焼室を有するパルスデトネーションエンジンは、「多気筒」構造のパルスデトネーションエンジンと称されることもある。別の例としては、従来のガスタービンエンジン技術とパルスデトネーション(PD)技術の両方による燃焼を用いることで運転効率を最大限に高めた「ハイブリッド」エンジンの開発がある。このようなパルスデトネーションタービンエンジン(PDTE)は、航空機の推進用、又は地上発電システムの発電手段としても利用可能である。
多気筒構造のPDEには、デトネーションの分岐、すなわちクロスファイアリングのコンセプトを用いる。この構造では、1つの管内でのデトネーションは、火花放電やレーザパルスなどの外部点火源により起爆される。とりわけ、デトネーション波が1つの燃焼器内で形成されると、デトネーションによる衝撃波が、クロス管又は連結部を介して別の燃焼器に伝達される。伝達された衝撃波はその後、また別の燃焼器内でのデトネーション起爆を生じる。
デトネーション分岐を用いた多気筒構造において必要な点火源は1つだけであるが、所与の質量流量に対する点火頻度と順次点火パターンが固定されているので、推力調節が困難である。
上記及びその他の理由により、本発明が必要とされている。
燃焼器間クロスデトネーション起爆を利用する多燃焼室式デトネーションエンジンの推力を調節するための方法及び装置を提供する。複数のデトネーション燃焼室が、燃料と酸化剤の可燃性混合物で満たされる。1つのデトネーション燃焼室内の可燃性混合物が点火源で点火され、残りのデトネーション燃焼室は連結部を介したデトネーション・クロスファイアリングにより点火される。制御装置で点火とデトネーション燃焼室の運転条件とを制御することにより、飛行エンベロープ中のエンジンの推力を調節する。
添付図面に概略的に示す、本発明の例示的実施形態を考察することにより、本発明の特性及び更に多様な特徴の理解が深まるであろう。対応するパーツは、同様の参照符号で示されている。
本発明の例示的実施形態による多燃焼室式パルスデトネーションエンジンである。 本発明の例示的実施形態による多燃焼室構造である。 本発明の別の例示的実施形態による多燃焼室構造の断面図である。 図3に示す多燃焼室構造の点火順序の例示的実施形態である。 図3に示す多燃焼室構造の点火順序の別の例示的実施形態である。 図3に示す多燃焼室構造の点火順序のまた別の例示的実施形態である。 本発明の例示的実施形態による当量比と充填率を示すグラフである。 本発明の例示的実施形態による当量比と充填率を示すグラフである。 本発明の例示的実施形態による当量比と充填率を示すグラフである。 本発明の例示的実施形態による当量比と充填率を示すグラフである。 本発明の別の例示的実施形態による多燃焼室構造を示す断面図である。 図8に示す多燃焼室構造の点火順序の例示的実施形態である。 本発明の例示的実施形態による可変長連結部である。 本発明の例示的実施形態による可変形状出口ノズルである。 本発明の例示的実施形態による可変形状出口ノズルである。
本明細書において「パルスデトネーション燃焼器」(PDC)とは、装置内でのデトネーション又は準デトネーションの一連の反復により、圧力上昇と速度増加の両方をもたらす、あらゆる装置又はシステムを意味すると理解されたい。「準デトネーション」とは、デフラグレーション波で生じる圧力上昇と速度増加よりも大きい圧力上昇と速度増加が生じる、超音速乱流燃焼プロセスである。PDCは、エンジン全体の燃焼器と考えられる。PDCを環状筒形に構成することもでき、その場合は、1つ以上のパルスデトネーション管束(PDB)の配列体を備え、パルスデトネーション管束の管それぞれが、1つ以上のパルスデトネーション燃焼室(PDCC)を備え得る。PDCCは、管又はパイプ状のことが多いが、その他の形状であってもよい。代替的に、PDC全体を、完全な環状構造や回転デトネーション型構造など、また別の構造にしてもよい。PDCを、パルスデトネーションタービンエンジン(PDTE)用やパルスデトネーションエンジン(PDE)用の燃焼器とすることもできる。
PDCCの実施形態は、例えば燃料/空気混合物などの燃料/酸化剤混合物を点火する手段とデトネーション室とを含み、デトネーション室内では、点火プロセスで生じた圧力波面が合わさってデトネーション波又は準デトネーションが発生する。デトネーション又は準デトネーションはそれぞれ、火花放電又はレーザパルスなどの外部点火、或いは、衝撃波の集束、自動点火などの気体力学プロセス、或いは、その他のデトネーション(すなわちクロスファイア)のいずれかによって起爆される。本明細書において、デトネーションとは、デトネーション又は準デトネーションのいずれかを意味すると理解されたい。パルスデトネーションは、例えばデトネーション管、衝撃波管、デトネーション空洞共振器をはじめとする、数多の種類のデトネーション室で可能である。
パルスデトネーション燃焼器は、例えば航空エンジン、ミサイル、ロケットなどに用いられる。本明細書において「エンジン」とは、推力及び/又は動力を生じるために使用するあらゆる装置を意味する。
添付図面を参照しながら本発明の実施形態をより詳細に説明するが、これにより本発明の技術的範囲を限定することはない。
図1に、本発明の実施形態によるエンジン100を示す。図示のように、エンジン100は、圧縮段102と複数のPDCC104とを内蔵している。PDCC104には、PDCC104から排気を放出するノズル110が結合されている。図示の実施形態において、PDCC104はそれぞれ、個別のノズル110に結合されている。しかし、単一のノズル、プレナム及び/又はマニホルド構造によってもPDCC104から排気を放出することが考えられるので、本発明の実施形態がこの具体的実施形態に限定されるわけではない。
PDCC104と圧縮段102の間には、複数の吸気弁106から成る吸気システム108がある。吸気システム108は、圧縮段102からの流れを吸気弁106に送るプレナム又はマニホルド構造を含み得る。吸気弁106は、周知の又は従来的に用いられている吸気弁構造であってよく、PDCC吸気弁構造及びシステムは周知なので、これらの構造及びシステムを取り巻く詳細について、本明細書では詳細に論述しない。すなわち、弁構造がエンジン100の所望の動作パラメータの範囲内で機能し得る限り、本発明の技術的範囲から逸脱することなく、あらゆる周知の弁構造を用いることができる。また、吸気弁の使用は、あくまでも例証目的によるもので、弁を使用しない実施形態も可能である。なお、以下の説明では「空気」を酸化剤とすることが多いが、この点で本発明の実施形態が限定されることはなく、「空気」の使用が、酸化剤をこれに限定するものではない。酸素など、その他の酸化剤も使用できる。
本発明の例示的実施形態において、図1及び図2に示すように、PDCC104はそれぞれ、個別の吸気弁106と燃料弁114とに結合される。こうすることで、エンジン100の制御とPDCC104の点火の柔軟性を最大限に高めることができる。本発明の別の例示的実施形態(図示せず)において、吸気弁106は、これらの吸気弁が1つ以上の、例えば2つのPDCC104に結合されており、各吸気弁106が1つ以上のPDC104に動作可能に結合された構造を有する。このような実施形態において、弁106は、この弁106に結合されるPDCC104のいずれか1つ又は全部に、同時に吸気流を供給できる。本発明の実施形態は、その他あらゆる適宜の構成の吸気弁を含む。点火源112は、少なくとも1つのPDCCに設置される。点火源は、いかなる周知の種類の点火源であってもよいが、この点で本発明が限定されることはない。
例示的実施形態において、PDCC104の動作は制御システム116により制御され、制御システム116は、いかなる周知のコンピュータ又はマイクロコントローラベースの制御システムであってもよい。制御システム116は、以下により詳細に説明するように、吸気弁106と燃料弁114と点火源112との動作を制御する。
図2では、図1のPDCC104が非対称に図示されており、PDC104はそれぞれ、自身に結合された吸気弁106を有する。この実施形態では、6つの筒形のPDCC104が環状に配置された状態で図示されている。しかし、本発明がこのPDCC104の個数又は構成に限定されることはなく、本発明の様々な実施形態において、あらゆる個数及び/又は物理的構成のPDCC104を使用できる。
図3を参照すると、PDCC104は、燃焼器間クロスデトネーション又はクロスファイア・デトネーションが可能なように構成されている。PDCC104は、連結部118を介して別のPDCC104に結合される。連結部118内に矢印で示すように、連結部は、1つのPDCCから次のPDCCへとデトネーションを導く導管の役割を果たす。図示の例示的実施形態では、外部点火源112を用いて、1つのPDCC104内でデトネーションを起爆する。点火源112は、火花放電、レーザパルス又はその他あらゆる周知の種類の点火源であってよい。こうして得られたPDCC104内のデトネーションは、連結部118を介して別のPDCC104内のデトネーションを起爆する。図3には近接又は隣接するPDCC104どうしを連結する連結部118を示すが、連結部118を、特定の用途又は機能に適した任意の構造でPDCC104を連結するように構成できる。例えば、非順次で点火が行われるように連結部118をPDCC104に連結してもよい。また、その他のPDCC104のいずれにおいても、クロスファイア・デトネーションに加えて外部点火源を使用しても、外部点火のために外部点火源を使用してもよい。図3に示す実施形態において、燃料は、燃料マニホルド120から燃料弁114を介してPDCC104に供給される。しかし、この点で本発明が限定されることはなく、あらゆる適宜の構造を用いて燃料を供給することができる。
上述の構成は、順次点火パターンを例証している。しかし、PDCC104の構造は、二重対向式(dual opposed)又は三重点火式(tri-fire)などの複数のPDCCの同時点火も含むが、これらに限定されることなく、その他の特定の点火パターン用の構造であってもよい。例えば、点火源を2つ以上のPDCC104に設置して、又は複数の点火源112と単一のPDC104とを設置して、ロバスト性を高めることができる。PDCC104を、あらゆる適宜の幾何学パターンで構成することができる。
本発明の実施形態によると、エンジン100のPDCC104からの推力は、制御システム116により制御される。本発明の実施形態では、点火パターンの繰返し率(例えば頻度)、スキップ点火、当量比(Phi)、充填率(FF)、可変連結部、可変出口ノズル面積、及び吸気質量流量の変化を含むがこれらに限定されない技術から、1つ以上の技術を選択して用い、飛行エンベロープ中(例えばエンジンが動作している間)のPDCCの推力を調節する。これらの実施形態を、クロスファイア順次デトネーション起爆に関して説明しているが、これらの実施形態を、あらゆる燃焼器間クロスデトネーション起爆点火パターンに対しても同様に、良好に適用できる。また、図面では並列構造の燃焼器を示しているが、あくまでも説明の便宜上にすぎない。
図4に、図3に示した各PDCC104のPDCCサイクル周期と、PDCC104の点火パターン繰返し周期を示す。図4に示す「棒」グラフはそれぞれ、単一のPDCC104の点火サイクルを表し、棒のいちばん左側の部分はサイクルの充填部分を、隣の部分はサイクルのデトネーション部分を、続いてサイクルのブロウダウン部分とパージ部分を示している。これら4つの段階でPDCCの1つの点火サイクルを構成している。なお、図4に示す棒のそれぞれの部分又は区画の長さは、点火サイクル各々の段階の持続時間に比例することを意図したものではなく、あくまでも視覚的補助として示されている。また、サイクルのパージ部分は、弁の動作に応じて、ブロウダウン部分の最後又はサイクルの充填部分の前のいずれであってもよいことに留意されたい。図4には、本発明の実施形態の説明の便宜上、3つの点火パターンのサイクル122、124及び126のみを示す。
最適なクロスファイア・デトネーションは、PDCCサイクル周期が点火パターンの繰返し率と等しいときに生じる。充填率によってタイミングサイクルが決まるとともに、所与の動作条件における最大点火頻度が定まるので、所与の質量流量に対する最適なタイミングが固定される。図5〜6に、以下に更に詳細に述べる本発明の実施形態に従ったPDCC104の点火頻度又は点火パターン繰返し周期の変動を示す。
本発明の実施形態によると、点火パターン繰返し率の変更を、点火パターンサイクル間に遅延を含めること、例えば1つの点火パターンサイクル全体又は1つの点火パターンサイクルの一部をスキップすることにより行う。図5に示す例示的実施形態では、制御システム116で点火源112、吸気弁106、燃料弁114を制御して、点火パターンサイクル124全体をスキップする。このことは、点火パターンサイクル124の間は点火しないように点火源112を制御することで可能である。また、吸気弁106と燃料弁114の両方を制御して、これらの弁がPDCC104の点火パターンサイクル124全体にわたって閉弁するようにしても、これが可能である。具体的には、この点火パターンサイクル全体にわたって、酸化剤又は燃料をPDCC104に全く供給せず、このサイクルの間はPDCC104でデトネーションが全く起こらないようにする。このことは、この点火パターンサイクル全体にわたって燃料弁114を閉弁して、PDCC104内のデトネーションを防ぐことのみによっても可能である。
PDCC104の1つの点火パターンサイクル全体をスキップすることにより、推力の50パーセント(50%)が下降又は低下する。本発明の実施形態は、PDCC104の1つの点火パターンサイクル全体をスキップすることに限定されない。1つの点火パターンサイクルの一部のみをスキップすることによって、下降率を小さくすることもできる。これについては、以下で更に詳細に説明する。更に、点火パターンサイクル間に任意の適当な遅延を挿入してもよい。換言すると、所望の推力を得るために、任意の適当な点火パターン繰返し周期を用いることができる。例えば、PDCサイクル周期2回分の遅延(例えば、PDCC1、2、3、4、5、6の点火、待機、待機、PDCC1、2、3、4、5、6の点火)を適用できる。これにより、6/8すなわち75%の推力を調節できる。
図6に、1つの点火パターンサイクルの一部をスキップすることによって、より細かな推力調節を行う実施形態を示す。この実施形態によると、制御システム116で燃料弁114を制御して、PDCC104の1つの点火パターンサイクル中、例えば点火パターンサイクル124中は、1つ以上のPDCC104内の燃料弁114を閉じたままにする。こうして、1つ以上のPDC104内でデトネーションが生じないようにする(例えばスキップ点火)。図6に示す例では、制御システム116は、最後の2つのPDCC104内の燃料弁114を制御して、点火パターンサイクル中はこれらの燃料弁を閉じたままにする。したがって、最後の2つのPDCC104は、この点火パターンサイクル中にデトネーションを生じることがないので、約30パーセント(30%)の推力が低下する。しかし、本発明の実施形態は、クラスター最後のPDCC104内のデトネーションを抑制することだけに限定されない。所望の用途及び動作に応じて、任意のPDCC104内のデトネーションを制御システム116で制御できる。適宜の構造のPDCC104の任意の燃料弁114を適宜制御することにより推力を増加又は低下させることで、所望の推力が得られるように、制御システム116を構成できる。
図5及び6に関して説明した実施形態を組み合わせることで、所望のように推力を調節できる。本発明の多様な実施形態において、点火頻度の変更を、上述のデトネーション防止又はスキップ点火と併せて行っても、その代替として行ってもよい。詳細には、制御システム116は、各点火パターンサイクル中に点火パターン繰返し率又は頻度を変化させるとともに、特定のPDCC104におけるデトネーションを防止することにより、エンジン100の推力を所望のように調節できる。
本発明のまた他の実施形態によると、吸気弁106及び/又は燃料弁114を制御して、PDCC104における充填率及び/又は当量比を変化させることによっても、推力調節が可能である。
周知のように、PDCCの「当量比」とは、燃料−酸化剤比に対する燃料−酸化剤比の化学量論的比である。したがって、当量比が1の場合、所与の条件において、PDCCの燃料−酸化剤比が化学量論的燃料−酸化剤比と等しいことを意味する。この状態を図7Aに示す。図7B及び7Cに示すように、当量比が1未満の場合は燃料−酸化剤比が「希薄」であり、当量比が1を超える場合は燃料−酸化剤比が「過濃」である。エンジン100のPDCC104による推力出力の調節は、充填段階で燃料−酸化剤比又は当量比を変化させることにより可能である。更なる実施形態においては、PDCCの長さ方向全体で当量比を制御する。このような実施形態において、例えば、混合気をPDCCのヘッド端で過濃とし、PDCCの全長にわたって希薄とすることにより、排出物質を減少させて効率を高めることができる。本明細書において、空間的当量比又は空間分布は、物理的にPDCC内部の当量比を意味することとする。
PDCCの充填率(FF)は、周知のように、PDCCの容積に対する混合気の体積である。FFが1のときは、PDCC全体が燃料−酸化物混合物で満たされていることを示す。FFが1未満のときは、PDCCが燃料不足であることを意味する。例えば、PDCC104の吸気弁106と燃料弁114とを制御して、充填段階でPDCC104の50%が燃料−酸化剤混合物で満たされるようにすると、FFは1未満となる。
図7A〜7Dの縦軸が「Phi」として示されているが、これらのグラフの目的から、これが当量比であることに留意されたい。図7A〜7Cに、当量比が変動するがFFは1である本発明の実施形態を示す。図7Dには、当量比が1であり、FFが1未満である例示的実施形態を示す。
図7Aに、所与の条件においてPDCC104内の燃料−酸化剤比が化学量論的燃料−酸化剤比と同一になる、当量比が1の場合を示す。この実施形態においては、1つ以上のPDCC104の当量比を1未満に変更することにより、推力を調節する。図7Bには、特定のPDCCが当量比1未満の希薄状態で動作していることを意味する、当量比が0.8の場合を示す。制御システム116は、PDCC104に供給される燃料の量を減少させるようにPDCC104の燃料弁114を制御することにより、PDCC104の当量比を低下させる。当量比が1未満の燃料−酸化剤混合物をPDCに充填することにより、PDCCから生じる推力が低下する。換言すると、燃料濃度を低下させることによって推力が低下する。エンジン100全体の推力の調節は、1つ以上のPDCC104の当量比を変化させることで可能である。
図7Dに示すように、当量比を1に維持する一方でFFを1未満に低下させることにより、推力を調節する。例えば、PDCC104の充填段階において、PDCの充填率が50パーセントとなるように、制御システム116で吸気弁106と燃料弁114を制御する。その結果、FFは50パーセント又は1未満となる。FFの低下に伴い、PDCC104に供給される燃料の量が減少するので、推力が低下する。制御システム116で吸気弁と燃料弁とを制御して所望のFFを得ることにより、推力を調節する。1つ以上のPDCC104のFFを変化させることにより、エンジン100全体の推力を調節できる。
本発明の別の実施形態においては、デトネーションを生じさせない燃料−酸化剤混合物でPDCC104を満たすことにより、PDCC104の推力を調節する。そのためには、燃料−酸化剤混合物が非常に希薄(当量比1未満)で所定の閾値を下回るように、PDCC104の吸気弁106と燃料弁114とを制御する。燃料−酸化剤が閾値を下回るとデトネーションが生じなくなるので、PDCC104から生じる推力は低下する。デトネーションの抑制は、PDCC104の充填率が閾値FFを下回るように、充填段階でPDCC104の吸気弁106と燃料弁114を制御することによっても可能である。FFが閾値を下回るとデトネーションが生じなくなるので、PDCC104から生じる推力は低下する。デトネーションが1つ以上のPDCC104で生じないように当量比及び/又はFFを制御することにより、エンジン全体の推力を調節できる。
図8に、本発明の例示的実施形態による、別の多PDCC構成を示す。この構成において、第1のPDCC104におけるデトネーションは、外部点火源により起爆され、このPDCC104内のデトネーションが、連結部を介して残りの全てのPDCC104におけるデトネーションを起爆する。第1のPDCC104、すなわちマスターPDCC104は、残りのPDCC104、すなわちスレーブPDCC104のそれぞれに連結されているので、全てのPDCCが同時に点火準備完了状態とならなければならない。換言すると、PDCC104は、図9に示すように、同期点火される。第1のPDCC、すなわちマスターPDCCからの衝撃波は、残りのスレーブPDCCに印加される。この構造における推力調節は、本明細書に開示のいずれの技術によっても可能である。
本発明のまた別の例示的実施形態によると、PDCC104どうしを結合する連結部118の長さを変更することにより、推力調節を制御する。連結部118の長さを変更することにより、点火タイミング又は点火頻度が変化し、これによって推力調節が可能になる。連結部118の長さ変更は、いかなる適宜の方法及び構成によっても可能である。例示的実施形態において、連結部118は、図10に示すように「入れ子式伸縮」連結部として構成される。この入れ子式伸縮機能は、液圧又はその他の機械的手段によって実施される。制御システム116で連結部118の長さを制御することにより、エンジンの推力を制御する。当然ながら、本発明の実施形態は、入れ子式伸縮連結部に限定されるわけではなく、可変長連結部118に可能なあらゆる適宜の構造を含む。図3及び8に示すPDCC構造のいずれの場合も、この実施形態による推力調節を単独で行っても、本明細書に開示の他の推力調節技術と組み合わせて行ってもよい。
本発明の別の例示的実施形態では、図11A及び11Bに示すように、PDCC104の出口ノズル120の形状を変更することにより、推力調節が可能である。図11Aにおいて、出口ノズル120は全開であり、これによってPDCC104からの最大推力の出力が可能である。図11Bでは、出口ノズル120が狭められており、これによってPDCC104からの推力出力を低下させる。出口ノズル120を、例えば分割型出口ノズルとして構成することにより、出口ノズルの形状を動的に調節してPDCC104からの推力を調節できるようにしてもよい。PDCC104のそれぞれが可変形状の出口ノズル120を有するように構成しても、複数のPDCC104が可変形状を有する共通の出口ノズル120を有するように構成してもよい。この実施形態においては、分割型出口ノズル120の構成の制御を、液圧式又はその他適宜の手段により行う。制御システム116は、出口ノズル120の形状制御により、エンジンの推力を制御する。当然ながら、本発明の実施形態が分割型出口ノズルに限定されることはなく、可変形状の出口ノズル120に可能なあらゆる適宜の構造を含む。図3及び8に示すPDCC構造のいずれの場合も、この実施形態による推力調節を単独で行っても、その他の推力調節技術と組み合わせて行ってもよい。
なお、上述のいずれの方法、又は上述のいずれの方法と構成の組み合わせを用いても、制御システム116でエンジン100の推力を調節できる。
様々な具体的実施形態に関連して本発明を説明したが、当業者には明らかなように、特許請求の範囲から逸脱することなく本発明に改変を加えることができる。
100 エンジン
102 圧縮段
104 パルスデトネーション燃焼室
106 吸気弁
108 吸気システム
110 ノズル
112 点火源
114 燃料弁
116 制御システム
118 連結部
120 燃料マニホルド
122 点火パターンサイクル
124 点火パターンサイクル
126 点火パターンサイクル

Claims (10)

  1. 少なくとも1つのパルスデトネーション燃焼室が点火源を有する複数のデトネーション燃焼室と;
    複数の連結部であって、該連結部の各々が2つの前記デトネーション燃焼室どうしを連結することにより、前記2つのパルスデトネーション燃焼室間のクロスファイア・デトネーションが可能になる、複数の連結部と;
    前記デトネーション燃焼室に結合された酸化剤供給部と;
    前記デトネーション燃焼室に結合された燃料供給部と;
    前記酸化剤供給部及び前記燃料供給部から前記デトネーション燃焼室への酸化剤及び燃料の供給を制御することにより、飛行エンベロープ中のエンジンの推力を調節する制御装置と、を備えたエンジン。
  2. 1つ以上の前記デトネーション燃焼室に結合された1つ以上の可変形状出口ノズルを更に有し、
    前記制御装置が前記可変形状出口ノズルを制御することにより、前記飛行エンベロープ中のエンジンの推力を調節する、請求項1に記載のエンジン。
  3. 前記連結部が可変長連結部であり、
    前記制御装置が前記可変長連結部の長さを制御することにより、前記飛行エンベロープ中のエンジンの推力を調節する、請求項1に記載のエンジン。
  4. 前記酸化剤供給部が、1つ以上の前記パルスデトネーション燃焼室に結合された1つ以上の吸気弁を有する、請求項1に記載のエンジン。
  5. 前記制御装置が前記点火源の点火を制御することにより、前記パルスデトネーション燃焼室の点火頻度を変化させる、請求項1に記載のエンジン。
  6. 前記制御装置が前記燃料の供給を制御することにより、1つ以上の前記パルスデトネーション燃焼室の点火パターンを変化させる、請求項1に記載のエンジン。
  7. 前記制御装置が前記燃料の供給と前記酸化剤の供給を制御することにより、1つ以上の前記パルスデトネーション燃焼室の当量比又は充填率のいずれかを変化させる、請求項1に記載のエンジン。
  8. 前記制御装置が1つ以上の前記パルスデトネーション燃焼室への前記酸化剤及び前記燃料の供給を制御して、前記当量比が1未満となるように関連の前記パルスデトネーション燃焼室を前記酸化剤及び前記燃料で満たすことにより、前記飛行エンベロープ中のエンジンの推力を低下させる、請求項7に記載のエンジン。
  9. 前記制御装置が1つ以上の前記パルスデトネーション燃焼室への前記酸化剤及び前記燃料の供給を制御して、前記充填率が1未満となるように関連の前記パルスデトネーション燃焼室を前記酸化剤及び前記燃料で満たすことにより、前記飛行エンベロープ中のエンジンの推力を低下させる、請求項7に記載のエンジン。
  10. 前記制御装置が1つ以上の前記パルスデトネーション燃焼室への前記酸化剤及び前記燃料の供給を制御し、
    前記当量比が前記1つ以上のパルスデトネーション燃焼室の長さに応じて変化する、請求項7に記載のエンジン。
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