JP2011107272A - 消音装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】建物の外部で発生する不特定な騒音を有効に低減できるようになる消音装置の提供。
【解決手段】平板状のガラス板6を振動板とする入力用平面スピーカ9Aをマイクロフォンとして使用し、この入力用平面スピーカ9Aで騒音波を受け、平板状のガラス板6を振動板とする出力用平面スピーカ9Bで、騒音波と逆位相の干渉音波を発する。ここで、これらのガラス板6の表面が同一平面を形成するように、入力用平面スピーカ9A及び出力用平面スピーカ9Bを設ける。すると、騒音源からの距離が入力用平面スピーカ9Aと出力用平面スピーカ9Bとでほぼ等しくなるうえ、騒音波を干渉音波で相殺する際に、平面波同士が干渉するようになる。これにより、球面波で相殺する場合と異なり、騒音波の波長の長短や、位置によらず、騒音波を一律に低減することができる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、騒音源で発生した音波である騒音波を消音するにあたり、当該騒音波と逆位相の干渉音波を発生し、この干渉音波を騒音波に干渉させることで、騒音波の振幅を小さくして、騒音の低減を行う消音装置に関する。
従来から、騒音源からの騒音波と逆位相の干渉音波を発生し、この干渉音波で騒音波の振幅を小さくして騒音の低減を図る、いわゆる、ANC(アクティブ・ノイズ・コントロール)式の消音装置が知られている。
すなわち、ANC式の消音装置には、騒音を電気信号に変換するマイクロフォンと、このマイクロフォンからの電気信号を増幅するアンプと、このアンプによって駆動されるスピーカとが設けられている。
このようなANC式の消音装置では、アンプからスピーカへ出力される電気信号の位相を遅らせる等によって、干渉音波を騒音波の逆位相とし、逆位相の干渉音波をスピーカから発生させ、この逆位相の干渉音波で騒音を相殺することによって、騒音の低減を図っている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−72114号公報
前述のような消音装置では、マイクロフォンとスピーカとを離して配置しているので、騒音源からマイクロフォンまでの距離と、騒音源からスピーカまでの距離とが相違し、マイクロフォンで変換した騒音波の電気信号を逆位相にしても、騒音波の波長によっては、スピーカから出力される干渉音波がスピーカの位置では必ずしも騒音波の逆位相にならず、特定の周波数の以外の騒音は、有効に低減することができない。
しかも、スピーカは、その中心から球面状に音波が広がっていく点音源であるので、スピーカから出力される干渉音波は、球面波となり、球面波である干渉音波と平面波と見なせる騒音波とを干渉させると、弱め合う部分と、強め合う部分とが交互に発生し、このため、位置によっては、まったく騒音を低減することができない。
従って、前述のような消音装置では、建物の外部で発生する不特定な騒音を有効に低減することが難しい、という問題がある。
また、前述のような消音装置では、騒音を入力させるマイクロフォンと、干渉音波を出力するスピーカとは、音響特性や電気的特性が著しく相違しているので、マイクロフォンで変換した騒音波の電気信号をそのままアンプで増幅してスピーカから出力した際に、スピーカから出力した干渉音波の波形が騒音の波形から大きく変化する。このため、アンプで信号増幅を行う際に、出力波形を逆位相にする位相補正だけでなく、出力波形の形状補正、すなわち、出力波形のイコライジングをも行わなければならず、これにより、アンプの回路構成が複雑になって、アンプのコストが高くなるうえ、アンプの応答性が損なわれるおそれがある、という問題もある。
そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、不特定な騒音を有効に低減できるようになる消音装置を提供することを目的とするものである。
各請求項にそれぞれ記載された各発明は、前述の目的を達成するためになされたものである。以下に、各発明の特徴点を、図面に示した発明の実施の形態を用いて説明する。
なお、符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
(特徴点)
請求項1記載の発明は、次の点を特徴とする。
すなわち、請求項1に記載の発明は、建物外部の騒音源で発生した音波である騒音波が当該建物の内部に入ってくる際に、当該騒音波と逆位相の干渉音波を発生し、この干渉音波で騒音波の振幅を小さくして騒音の低減を行う消音装置(10)であって、騒音波を受けて電気信号に変換する騒音波変換手段として、平板状に形成された振動板(6,6A,6C)を有する入力用平面スピーカ(9A)と、受信した電気信号を音圧に変換して干渉音波を発生する干渉音波発生手段として、平板状に形成された振動板(6,6A,6C)を有する出力用平面スピーカ(9B)と、前記騒音波変換手段からの電気信号を増幅するとともに当該電気信号の位相を調整することで、前記干渉音波発生手段を駆動する駆動信号を生成するとともに、この駆動信号で前記干渉音波発生手段を駆動することで、騒音波と逆位相の干渉音波を前記干渉音波発生手段から発生させる増幅装置(20, 50)とを備え、前記入力用平面スピーカ(9A)及び前記出力用平面スピーカ(9B)は、それらの振動板(6,6A,6C)の表面が同一平面を形成するように当該建物に設けられていることを特徴とする。
(請求項2)
(特徴点)
請求項2記載の発明は、前述した請求項1に記載の発明において、次の特徴点を備えているものである。
すなわち、請求項2記載の発明は、前記入力用平面スピーカ(9A)及び前記出力用平面スピーカ(9B)として、互いに同一の材質、構造、形状及び寸法を有する同一のものが採用されていることを特徴とする。
(請求項3)
(特徴点)
請求項3記載の発明は、次の点を特徴とする。
すなわち、請求項3に記載の発明は、騒音源で発生した音波である騒音波を消音するにあたり、当該騒音波と逆位相の干渉音波を発生し、この干渉音波を騒音波に干渉させることで、騒音波の振幅を小さくして、騒音の低減を行う消音装置(60)であって、騒音波を受けて電気信号に変換する騒音波変換手段として、平板状に形成された振動板を有する入力用平面スピーカ(9A)と、受信した電気信号を音圧に変換して干渉音波を発生する干渉音波発生手段として、平板状に形成された振動板を有する出力用平面スピーカ(9B)と、前記騒音波変換手段からの電気信号を増幅するとともに当該電気信号の位相を調整することで、前記干渉音波発生手段を駆動する駆動信号を生成するとともに、この駆動信号で前記干渉音波発生手段を駆動することで、騒音波と逆位相の干渉音波を前記干渉音波発生手段から発生させる増幅装置(20)と、前記入力用平面スピーカ(9A)及び前記出力用平面スピーカ(9B)を支持する支持部材(63)とを備え、前記入力用平面スピーカ(9A)及び前記出力用平面スピーカ(9B)は、それらの振動板の表面が同一平面を形成するように前記支持部材(63)に取り付けられていることを特徴とする。
(請求項1,3の効果)
以上のように構成されている本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
すなわち、請求項1又は請求項3に記載の発明によれば、平板状に形成された振動板を有する入力用平面スピーカで騒音波を受けるようにするとともに、同様に、平板状に形成された振動板を有する出力用平面スピーカで干渉音波を発するようにし、且つ、それらの振動板の表面が同一平面を形成するように、入力用平面スピーカ及び出力用平面スピーカを設けたので、離れた位置に存在する騒音源から入力用平面スピーカの振動板までの距離と、騒音源から出力用平面スピーカの振動板までの距離とが同じ距離であると見なすことができる。
このため、入力用平面スピーカで変換した騒音波の電気信号をそのまま増幅して逆位相で出力すれば、騒音波の波長の長短によらず、出力用平面スピーカから出力される干渉音波は、騒音波の逆位相となり、これにより、干渉音波で騒音波を有効に相殺することができる。
しかも、出力用平面スピーカは、その振動板の面積を充分確保すれば、その振動板から放出される干渉音波が平面波と見なせ、また、離れた位置にある騒音源からの騒音波も平面波と見なせるので、干渉音波と騒音波とを干渉させれば、平面波同士を干渉させることができ、このため、干渉音波は、その全体にわたって、山の位置を騒音波の谷の位置に一致させ、且つ、谷の位置を騒音波の山の位置に一致させることができ、位置によらず、騒音を有効に低減することができる。
従って、周波数の異なる様々な騒音が発生しても、出力用平面スピーカから発せられる干渉音波で当該騒音の騒音波が相殺可能となるので、不特定な騒音を有効に低減することでき、これにより、前記目的が達成される。
なお、厳密に言えば、入力用平面スピーカの振動板において騒音波を受ける受音面と、出力用平面スピーカの振動板において干渉音波を室内側へ発する発音面とが互いに反対方向を向いている場合には、受音面と発音面とが同一面を形成するように、振動板の厚さ分だけ、入力用平面スピーカ及び出力用平面スピーカの一方を他方に対してオフセットすべきであるが、騒音が問題となる多くの状況では、騒音波の波長に対して、振動板の厚さ寸法が充分小さく、無視できるので、それらの振動板の表面が同一面を形成する位置にあれば、建物の外部で周波数の異なる様々な騒音が発生しても、当該騒音を充分に低減することができる。
(請求項2の効果)
請求項2記載の発明によれば、上記した請求項1記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項2記載の発明によれば、入力用平面スピーカ及び出力用平面スピーカとして、互いに同一の材質、構造、形状及び寸法を有する同一のものを採用したので、入力用平面スピーカと、出力用平面スピーカとは、音響特性や電気的特性が一致するようになり、入力用平面スピーカで変換した騒音波の電気信号を増幅装置で増幅すれば、出力用平面スピーカから出力した干渉音波の波形は、騒音の波形から大きく変化することがなくなる。このため、増幅装置で信号増幅を行う際に、出力波形を逆位相にする位相補正が行えれば良く、出力波形の形状補正、すなわち、出力波形のイコライジングを行う必要がなくなり、増幅装置の回路構成が単純なものとなるので、そのコストが高くなることを未然に防止できるうえ、増幅装置の良好な応答性を確保することができる。
本発明の第1実施形態を示す側面図である。 前記第1実施形態を示す拡大した平断面図である。 前記第1実施形態に係る増幅装置を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態を示す縦断面図である。 図4のV−V線における示す断面図である。 本発明の第3実施形態を示す縦断面図である。 本発明の第4実施形態を示す斜視図である。 本発明の変形例を示す図3に相当する図である。 本発明の別の変形例を示す斜視図である。
以下に、本発明を実施するための形態である実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[第1実施形態]
図1には、本第1実施形態に係る建物の室内側から見た外壁1が示されている。
図1において、外壁1には、床2から天井3の近傍まで達する高さの窓4が形成されている。そして、窓4の上縁と天井3との間には、天井の端縁部分から下方へ延びる垂壁5が設けられ、この垂壁5によって窓4の上縁と天井3とが相互に連結されている。
窓4は、平板状に形成された複数のガラス板6が開放不可能に取り付けられており、いわゆる嵌め殺し窓となっている。
窓4について更に詳しく説明すると、外壁1の窓4となる開口には、図1に示すように、1枚のガラス板6の幅に応じた間隔で支柱7が配置されている。この支柱7は、床2と垂壁5の下端とを相互に連結するものとなっている。
これらのガラス板6の各々は、四角形状の枠8の中に嵌め込まれている。各枠8は、断面U字形に形成された4本の溝形材8Aを四角形状に組んだものであり、両側に配置された溝形材8Aが支柱7に接合されている。これにより、複数のガラス板6は、外壁1の内側面に沿って図1中左右方向に配列された状態で、外壁1に取り付けられている。
このようなガラス板6は、消音装置10の主要な構成要素である平面スピーカ9の振動板を構成するものとなっている。
すなわち、枠8を形成する4本の溝形材8Aの各々は、図2に示すように、そのU字の開口が枠8の内側に向けられている。
そしてガラス板6は、その周縁部分が対応する溝形材8Aの開口内部に遊嵌され、その周縁部分の表面と溝形材8Aの内面との間に充填されたシリコーンゴム系の接着剤12で枠8に取り付けられている。このように枠8に取り付けられたガラス板6は、シリコーンゴム系の接着剤12の可撓性により、厚さ方向に振動可能となっている。
図1に戻って、ガラス板6の重心位置には、直方体状に形成された駆動ユニット11が設けられている。
駆動ユニット11は、特に図示しないが、複数の電磁駆動部を備え、これらの電磁駆動部でガラス板6を振動させるものである。
すなわち、電磁駆動部は、フィルムの表面に形成された銅の導電膜をエッチングで部分的に除去することにより形成された渦巻き状模様のプリントパターンからなるボイスコイル(図示略)と、このボイスコイルを動作させる磁界を形成する永久磁石であるネオジウム磁石(図示略)とを有するものである。このうち、ボイスコイルは、ガラス板6の表面に貼り付けられている。
プリントパターンからなるボイスコイルとネオジウム磁石とを組み合わせた磁気駆動部は、小さなサイズでも、大きな駆動力を発揮できるものとなっている。
このような磁気駆動部を数個組み合わせたれ駆動ユニット11は、全体のサイズが小型でも、大判のガラス板一枚を駆動するのに充分な駆動力を発生可能となっている。
ここにおいて、ガラス板6及び駆動ユニット11は、平板状の振動板を有する平面スピーカ9を形成するものとなっている。
換言すると、平面スピーカ9は、電気信号に応じてガラス板6を厚さ方向に振動させる駆動ユニット11と、駆動することで音を発生する振動板としてのガラス板6とを有し、電気信号で駆動ユニット11を動作させると、ガラス板6が振動して電気信号に応じた音を発生するものとなっている。
なお、外壁1には、5個の平面スピーカ9が設けられているが、平面スピーカ9の設置個数は、5個に限らず、実施にあたり適宜設定されるものである。
窓4の図1中左方に設けられている間仕切り壁13には、平面スピーカ9を駆動するための増幅装置20が埋め込まれている。
また、間仕切り壁13と、窓4の図1中右方に設けられている間仕切り壁15との間には、筒状に形成されたケーブルダクト14が架け渡されている。
このケーブルダクト14は、間仕切り壁13及び間仕切り壁15の一方から他方へ達するまでの間に、5枚のガラス板6の駆動ユニット11すべてを通るように、ガラス板6の重心位置と同じ高さレベルに配置され、且つ、すべての駆動ユニット11と互いに対向する面同士が接するように設けられている。
5個の駆動ユニット11は、ケーブルダクト14に挿通されている図示しないケーブルによって、増幅装置20と電気的に接続されている。なお、5個の駆動ユニット11は、それぞれ個別に増幅装置20との電気的接続がなされている。
以上において、本発明に基づく消音装置10は、建物外部の騒音源で発生した音波である騒音波が当該建物の内部に入ってくる際に、当該騒音波と逆位相の干渉音波を発生し、この干渉音波で騒音波の振幅を小さくして騒音の低減を行う装置である。
換言すると、消音装置10は、外壁1の外側に存在する騒音源からの騒音波が外壁1を通過する際に、当該騒音波と逆位相の干渉音波を外壁1で発生し、この干渉音波で騒音波の振幅を小さくするものである。
更に詳しく説明すると、消音装置10は、騒音波を受けて電気信号に変換する騒音波変換手段と、この騒音波変換手段からの微弱な電気信号を増幅して、スピーカを駆動可能なレベルの電気信号である駆動信号を生成する駆動信号生成アンプと、この駆動信号生成アンプからの駆動信号を受けて、騒音波と逆位相の干渉音波を発する干渉音波発生手段とを有するものとなっている。
具体的には、騒音波変換手段としては、5個の平面スピーカ9のうち、図1中、中央に配置された平面スピーカ9が採用されている。換言すると、5個の平面スピーカ9のうち中央に配置されているものが、騒音波を受けて電気信号に変換する入力用平面スピーカ9Aとなっている。
一方、干渉音波発生手段としては、図1中、中央に配置されたもの以外の4個の平面スピーカ9が採用されている。換言すると、中央以外の4個の平面スピーカ9が、駆動信号を音圧に変換して干渉音波を発生する出力用平面スピーカ9Bとなっている。
そして、入力用平面スピーカ9A及び出力用平面スピーカ9Bとしては、図1及び図2の如く、互いに同一の材質、構造、形状及び寸法を有する同一の製品が採用されている。
また、入力用平面スピーカ9A及び出力用平面スピーカ9Bは、図2に示すように、それらの振動板であるガラス板6の表面16が同一平面を形成するように当該建物の外壁1に設けられている。
また、駆動信号生成アンプとしては、間仕切り壁13に埋め込まれた増幅装置20が採用されている。
この増幅装置20は、入力用平面スピーカ9Aからの電気信号を増幅するとともに当該電気信号の位相を調整することで、出力用平面スピーカ9Bを駆動する駆動信号を生成するとともに、この駆動信号で出力用平面スピーカ9Bを駆動することで、騒音波と逆位相の干渉音波を出力用平面スピーカ9Bから発生させるものとなっている。
図3には、増幅装置20の一例が示されている。図3において、増幅装置20は、入力された電気信号を構成する周波数の異なる周波数成分のうち、通過させる周波数成分を選別する通過帯域選別手段21と、この通過帯域選別手段21を通過した電気信号を増幅するとともに当該電気信号の位相を調整するパワーアンプ22とを備えたものである。
通過帯域選別手段21は、入力用平面スピーカ9Aから出力された電気信号を内部処理可能なレベルに増幅するオペアンプ等からなるプリアンプ21A と、プリアンプ21A からの電気信号を構成する各周波数成分のうち、最も振幅の大きい周波数成分の周波数を検出する最大振幅周波数検出部21B と、通過帯域が設定変更可変となっているとともに、最大振幅周波数検出部21B が検出した周波数を中心とする周波数帯域を、その通過帯域として設定する通過帯域可変BPF(バンドパスフィルタ)21C とを備えたものとなっている。
このような通過帯域選別手段21によって、入力用平面スピーカ9Aからの電気信号は、最も振幅の大きい周波数成分のみがパワーアンプ22へ送られるようになっている。
パワーアンプ22は、通過帯域選別手段21からの電気信号を出力用平面スピーカ9Bの駆動レベルまで増幅するとともに、増幅の際に、当該電気信号の位相調整動作として、その位相を逆転させる位相反転動作を行うものである。
これにより、増幅装置20は、入力用平面スピーカ9Aから出力された電気信号と逆位相の駆動信号で出力用平面スピーカ9Bを駆動し、この結果、入力用平面スピーカ9Aで受けた騒音波と逆位相の干渉音波を出力用平面スピーカ9Bから出力させるようになっている。
また、パワーアンプ22には、パワーアンプ22の増幅率の設定を変更するために、ゲイン設定器22A が設けられている。このゲイン設定器22A を操作することで、パワーアンプ22は、増幅率を調節することができるようになっている。
このようなゲイン設定器22A を適宜操作することにより、増幅装置20は、増幅装置20がハウリングを起こさない範囲で、最も騒音の消音率が高くなるように、パワーアンプ22の増幅率を設定することが可能となっている。
前述のような本第1実施形態によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、平板状に形成されたガラス板6を振動板として備えた入力用平面スピーカ9Aで騒音波を受けるようにするとともに、同様に、平板状に形成されたガラス板6を振動板として備えた出力用平面スピーカ9Bで干渉音波を発するようにし、且つ、それらのガラス板6の表面が同一平面を形成するように、入力用平面スピーカ9A及び出力用平面スピーカ9Bを設けたので、建物から離れた位置に存在する騒音源から入力用平面スピーカ9Aのガラス板6までの距離と、騒音源から出力用平面スピーカ9Bのガラス板6までの距離とが同じ距離であると見なすことができる。
そして、入力用平面スピーカ9Aで変換した騒音波の電気信号を増幅装置20で増幅する際に、その出力が入力の逆位相となるようにしたので、出力用平面スピーカ9Bから出力される干渉音波が騒音波の逆位相となり、これにより、騒音波の波長の長短によらず、干渉音波で騒音波を有効に相殺することができる。
しかも、出力用平面スピーカ9Bは、窓4のガラス板6を振動板とすることで、その振動板の面積を充分確保したので、その振動板から放出される干渉音波は、騒音波と同様に平面波と見なすことができ、このような干渉音波と騒音波とを干渉させれば、平面波同士の干渉となり、干渉音波は、その全体にわたって、山の位置を騒音波の谷の位置に一致させ、且つ、谷の位置を騒音波の山の位置に一致させることができ、これにより、位置によらず、騒音を有効に低減することができる。
従って、建物の外部で周波数の異なる様々な騒音が発生しても、出力用平面スピーカ9Bから発せられる干渉音波で当該騒音の騒音波が相殺可能となるので、騒音建物の外部で発生する不特定な騒音を有効に低減することできる。
また、入力用平面スピーカ9A及び出力用平面スピーカ9Bとして、互いに同一の材質、構造、形状及び寸法を有する同一のものを採用したので、入力用平面スピーカ9Aと、出力用平面スピーカ9Bとは、音響特性や電気的特性が一致するようになり、入力用平面スピーカ9Aで変換した騒音波の電気信号を増幅装置20で増幅すれば、出力用平面スピーカ9Bから出力した干渉音波の波形は、騒音の波形から大きく変化することがない。
このため、増幅装置20で信号増幅を行う際に、出力波形を逆位相にすれば良く、出力波形の形状補正を行うために、面倒な出力波形のイコライジング処理を行う必要がなくなるので、増幅装置20の回路構成が単純なものとなり、そのコストが高くなることを未然に防止できるうえ、増幅装置20の良好な応答性を確保することができる。
[第2実施形態]
図4には、本発明の第2実施形態が示されている。本第2実施形態は、前記第1実施形態における振動板としてのガラス板6を、外壁1Aの室内側に配置される内装板6Aとしたものである。なお、以下の説明では、既に説明した部位及び部材には、同じ符号を付し、その説明を省略、若しくは、簡略に行う。
外壁1Aは、図4及び図5に示すように、屋外側の側面に張り付けられた複数の外装板31(例えば、防火サイディング)によって外側部分が形成されるとともに、室内側の側面に張り付けられた複数の内装板6A(例えば、石膏ボード)によって内側部分が形成されたものとなっている。
また、外壁1Aには、図4の如く、標準的な成人の腰よりも若干高い位置に窓30が形成されている。この窓30は、図示しないガラス板が内側に嵌め込まれた2枚の障子32が摺動可能に設けられた引き違い窓となっている。
ここで、複数の内装板6Aは、図4及び図5の如く、それぞれの縦横の寸法が統一された同一サイズのものとされ、その裏面の中央に駆動ユニット11が貼り付けられている。
一方、外壁1Aの内部における内装板6Aの裏側には、内装板6Aを支持するための下地縦材33が立設されている。
そして、各内装板6Aには、図示しないゴムブッシュ等の緩衝材が嵌め込まれている、図示しない挿通孔が形成されている。
各内装板6Aは、その挿通孔に内部に嵌め込まれた緩衝材を貫通する木ねじで下地縦材33に取り付けられている。これにより、縦横に配列された複数の内装板6Aの各々は、厚さ方向に振動可能となっている。
これらの内装板6A及び駆動ユニット11により、複数の平面スピーカ9が形成され、これらの平面スピーカ9が外壁1Aの室内側の側面に縦横に配列されている。
この際、これらの平面スピーカ9のうち、床側から数えて二段目の列の中央に配置されたものが騒音波変換手段としての入力用平面スピーカ9Aとされ、これ以外のものは、すべて干渉音波発生手段としての出力用平面スピーカ9Bとなっている。
このような本第2実施形態によっても、前記第1実施形態と同様の作用、効果を達成することができる。
[第3実施形態]
図6には、本発明の第3実施形態が示されている。
本第3実施形態は、前記第2実施形態における外壁1Aの内装板6Aで平面スピーカ9を形成したのを、間仕切り壁40の内装板6Cで平面スピーカ9を形成したものである。
すなわち、間仕切り壁40は、建物の室内空間を仕切る壁であり、図6に示すように、外壁1Aと平行に形成されている。
この間仕切り壁40における外壁1Aの内側面と対向する側面40A は、同一サイズに形成された複数の内装板6Cで形成されている。また、間仕切り壁40における側面40A とは反対側の側面40B は、内装板6Cよりも大きなサイズの内装板41で形成されている。
間仕切り壁40の内部には、内装板6C及び内装板41のそれぞれを支持するために、下地縦材42及び下地縦材43が立設されている。
ここで、複数の内装板6Cは、前記第1実施形態における内装板6Aと同様に、それぞれの縦横の寸法が統一された同一サイズのものとされ、その裏面の中央に駆動ユニット11が貼り付けられている。
また、各内装板6Cには、前述の内装板6Aと同様に、図示しないゴムブッシュ等の緩衝材が嵌め込まれている。そして、各内装板6Cは、その挿通孔に内部に嵌め込まれた緩衝材を貫通する木ねじで下地縦材42に取り付けられている。これにより、各内装板6Cは、厚さ方向に振動可能となっている。
これらの内装板6C及び駆動ユニット11により、複数の平面スピーカ9が形成され、これらの平面スピーカ9は、間仕切り壁40における外壁1Aと対向する側面40A に縦横に配列されている。
なお、外壁1Aにおける室内側の側面は、内装板6Cよりも大きなサイズの内装板44で形成されている。
そして、間仕切り壁40の内装板41及び外壁1Aの内装板44は、それぞれ下地縦材42及び下地縦材33に釘で取り付けられ、厚さ方向の振動が困難となっている。
本第3実施形態は、騒音波の進行方向と干渉音波の進行方向とが互いに逆方向となる点で、前記第1及び前記第2実施形態と相違するが、以上のような本第3実施形態によっても、前記第1及び第2実施形態と同様の作用、効果を達成することができる。
[第4実施形態]
図7には、本発明の第4実施形態が示されている。本第4実施形態は、前記第3実施形態における間仕切り壁40に複数の平面スピーカ9が取り付けられている固定式の消音装置10を、衝立障子61に複数の平面スピーカ9が取り付けられた可搬式の消音装置60としたものである。
すなわち、衝立障子61は、図7に示すように、長方形状に形成された複数の衝立パネル62を備え、これらの衝立パネル62が図示しないヒンジを介して相互に連結されたものである。これにより、衝立障子61は、図7(A)に示すように、平板状に形成された複数の衝立パネル62が互いに重なり合って小さくなった折り畳み状態にすることができる。
ここで、衝立障子61は、折り畳み状態において、図7(B)に示すように、両側に配置されている衝立パネル62を左右に移動することで、展開可能となっている。
そして、衝立障子61は、複数の衝立パネル62を展開していくと、図7(C)に示すように、1枚の平板状のパネル状にすることが可能となっている。
また、1枚の平板状のパネル状となった衝立障子61は、その左右下方の角隅に取り付けられた三角形状の支持脚部62A によって立ち姿勢が維持されるようになっている。
ここで、衝立パネル62の各々は、左右に配置された二本の長い縦材の間に複数の横材が上下方向に並べられた梯子状のフレーム63と、このフレーム63に複数形成されている開口のそれぞれに嵌め込まれた複数の平板スピーカ9とを有するものである。
これら複数の平板スピーカ9のうち、衝立障子61の正面中央、あるいは、正面中央近傍に設けられている一の平板スピーカ9が入力用平面スピーカ9Aとされ、残りすべての平面スピーカ9が出力用平面スピーカ9Bとなっている。
ここにおいて、衝立パネル62のフレーム63は、入力用平面スピーカ9A及び出力用平面スピーカ9Bを支持する支持部材となっている。そして、入力用平面スピーカ9A及び出力用平面スピーカ9Bは、それらの振動板(図示略)の表面が同一平面を形成するようにフレーム63に取り付けられている。
このような本第4実施形態によっても、前記第1実施形態乃至第3実施形態と同様の作用、効果を達成することができる他、次のような効果を付加できる。
すなわち、本第4実施形態によれば、折り畳むことで容易に運搬することが可能となるので、工事現場やイベント会場等、比較的短い期間において臨時に消音を行いたい場合に、現場まで搬送して容易に設置でき、これにより、現場で発生する騒音を有効に低減することができる、という効果を奏する。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲における変形及び改良などをも含むものである。
すなわち、増幅装置としては、騒音波を構成する周波数成分のうち、最も振幅の大きい周波数成分のみを増幅する増幅装置20に限らず、騒音波を変換した電気信号を増幅するとともに逆位相にして出力する簡単な増幅器でもよい。
あるいは、増幅装置としては、干渉音波の位相が騒音波の位相と逆位相となるように、出力信号の位相と入力信号との位相を比較して、出力信号の位相を調節するように形成された増幅装置でもよい。
図8には、出力信号の位相調節を行うように形成された増幅装置の一例(増幅装置50)が示されている。すなわち、増幅装置50には、図8に示されるように、入力用平面スピーカ9Aから出力された電気信号の周波数成分を選別する入力成分選別手段51と、出力用平面スピーカ9Bを駆動する電気信号の周波数成分を選別する出力成分選別手段52と、入力成分選別手段51及び出力成分選別手段52で選別された周波数成分の位相を比較する位相比較回路53と、信号増幅を行う際に、位相比較の結果に基づいて出力信号の位相を遅らせる増幅部54とが設けられている。
入力成分選別手段51は、出力用平面スピーカ9Bを駆動する電気信号を取り込むための整流器52A と、前述した通過帯域選別手段21とを備え、整流器52A を介して取り込んだ電気信号の周波数成分を前述の通過帯域選別手段21で選別するものとなっている。
出力成分選別手段52は、出力用平面スピーカ9Bを駆動する電気信号を取り込むための整流器52A と、前述した通過帯域選別手段21とを備え、整流器52A を介して取り込んだ電気信号の周波数成分を前述の通過帯域選別手段21で選別するものとなっている。
位相比較回路53は、入力成分選別手段51で選別された入力周波数成分を示す入力選別信号と、出力成分選別手段52で選別された出力周波数成分の逆位相の逆送出力選別信号とを比較し、入力選別信号と逆送出力選別信号との位相差を検出し、この位相差に応じた遅延信号を出力するものである。
具体的に説明すると、入力選別信号と逆送出力選別信号との位相差は、0〜180度の範囲で設定されている。
そして、位相比較回路53は、0〜180度の範囲で設定された位相差に対応する遅延信号、例えば、1〜5VDCの範囲でリニアに変化する遅延信号を出力するものとなっている。なお、位相比較回路53は、位相差が0度のときに1Vの遅延信号を出力し、位相差が180度のときに5Vの遅延信号を出力するようになっている。
増幅部54は、入力用平面スピーカ9Aから出力された電気信号を内部処理可能なレベルに増幅するオペアンプ等からなるプリアンプ21A と、プリアンプ21A からの電気信号を遅延させる遅延回路54A と、遅延回路54A からの電気信号を出力用平面スピーカ9Bの駆動レベルに増幅するパワーアンプ22とを備えたものである。
このうち、遅延回路54A は、位相比較回路53からの遅延信号に応じて、プリアンプ21A からの電気信号を遅延させて出力するものとなっている。
具体的には、遅延回路54A は、1〜5VDCの範囲に設定された位相比較回路53からの遅延信号に対して、0〜180度の範囲で出力信号の位相を遅延させるものである。なお、遅延回路54A は、遅延信号が1Vのとき、プリアンプ21A からの電気信号を遅延させずにそのまま出力し、遅延信号が5Vのとき、位相を180度遅らせて、プリアンプ21A からの電気信号を出力するようになっている。
このような増幅装置50によれば、干渉音波の最大振幅周波数成分と、騒音波の最大振幅周波数成分との位相差に応じて、干渉音波の位相を遅延するようにしたので、高調波を多く含む複雑な波形の騒音波が発生している場合でも、干渉音波の最大振幅周波数成分を、確実に、騒音波の最大振幅周波数成分の逆位相にすることができるので、高調波を多く含む複雑な波形の騒音に対しても有効に消音を行うことができる。
なお、増幅装置20における信号反転処理の部分は、アナログ回路及びデジタル回路のいずれで構成してもよいが、デジタル回路で構成する場合には、出力側のA/D変換回路とパワーアンプとの間に設けられるフィルターを省略し、A/D変換回路から出力されるPAM信号で直接パワーアンプを駆動し、フィルターを介することによる位相の遅れを回避できるようにしてもよい。
また、固定式の消音装置10における平面スピーカの設置部位は、外壁や間仕切り壁等の壁に限らず、天井や床でもよく、平面スピーカの具体的な設置部位は、実施にあたり適宜選択することができる。
さらに、可搬式の消音装置60としては、それ自体では移動することが不可能となっているものに限らず、図9に示すように、トラック等の自動車64に衝立障子61が取り付けられた自走式のものでもよい。
6 振動板としてのガラス板
6A, 6C 振動板としての内装板
9A 入力用平面スピーカ
9B 出力用平面スピーカ
10, 60 消音装置
20, 50 増幅装置
63 支持部材としてのフレーム

Claims (3)

  1. 建物外部の騒音源で発生した音波である騒音波が当該建物の内部に入ってくる際に、当該騒音波と逆位相の干渉音波を発生し、この干渉音波で騒音波の振幅を小さくして騒音の低減を行う消音装置であって、
    騒音波を受けて電気信号に変換する騒音波変換手段として、平板状に形成された振動板を有する入力用平面スピーカと、
    受信した電気信号を音圧に変換して干渉音波を発生する干渉音波発生手段として、平板状に形成された振動板を有する出力用平面スピーカと、
    前記騒音波変換手段からの電気信号を増幅するとともに当該電気信号の位相を調整することで、前記干渉音波発生手段を駆動する駆動信号を生成するとともに、この駆動信号で前記干渉音波発生手段を駆動することで、騒音波と逆位相の干渉音波を前記干渉音波発生手段から発生させる増幅装置とを備え、
    前記入力用平面スピーカ及び前記出力用平面スピーカは、それらの振動板の表面が同一平面を形成するように当該建物に設けられていることを特徴とする消音装置。
  2. 前記入力用平面スピーカ及び前記出力用平面スピーカとして、互いに同一の材質、構造、形状及び寸法を有する同一のものが採用されていることを特徴とする請求項1記載の消音装置。
  3. 騒音源で発生した音波である騒音波を消音するにあたり、当該騒音波と逆位相の干渉音波を発生し、この干渉音波を騒音波に干渉させることで、騒音波の振幅を小さくして、騒音の低減を行う消音装置であって、
    騒音波を受けて電気信号に変換する騒音波変換手段として、平板状に形成された振動板を有する入力用平面スピーカと、
    受信した電気信号を音圧に変換して干渉音波を発生する干渉音波発生手段として、平板状に形成された振動板を有する出力用平面スピーカと、
    前記騒音波変換手段からの電気信号を増幅するとともに当該電気信号の位相を調整することで、前記干渉音波発生手段を駆動する駆動信号を生成するとともに、この駆動信号で前記干渉音波発生手段を駆動することで、騒音波と逆位相の干渉音波を前記干渉音波発生手段から発生させる増幅装置と、
    前記入力用平面スピーカ及び前記出力用平面スピーカを支持する支持部材とを備え、
    前記入力用平面スピーカ及び前記出力用平面スピーカは、それらの振動板の表面が同一平面を形成するように前記支持部材に取り付けられていることを特徴とする消音装置。
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