JP2011105548A - セラミックス多孔体、セラミックス多孔体の製造方法、セラミックス濾過膜 - Google Patents

セラミックス多孔体、セラミックス多孔体の製造方法、セラミックス濾過膜 Download PDF

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Isao Osawa
功 大澤
Ryusuke Nakai
龍資 中井
Yoshimichi Kiyozumi
嘉道 清住
Yasuhisa Hasegawa
泰久 長谷川
Takako Nagase
多加子 長瀬
Takamasa Hanaoka
隆昌 花岡
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Abstract

【課題】濾過精度が高くかつ濾過抵抗が低いセラミックス濾過膜に好適に用いることができるセラミックス多孔体であって、上記従来に比して製造が容易なセラミックス多孔体を提供する。
【解決手段】所望の平均孔径に調整された細孔を有する細孔層10と、前記細孔より大きな平均孔径を有する孔である支持層孔を有するとともに前記細孔層を支持する支持層30と、前記細孔の平均孔径以上であって支持層孔の平均孔径以下の平均孔径の孔である中間層孔を有するとともに前記細孔層と前記支持層の間に設けられた中間層20を有するセラミックス多孔体において、前記支持層30には、前記支持層孔の平均孔径より大きな径を有する厚み方向に延設された孔である孔路31が形成されていることを特徴とするセラミックス多孔体。
【選択図】図2

Description

本発明は、セラミックス多孔体に係り、詳しくは濾材として最適なセラミックス多孔体に関する。また、係るセラミックス多孔体を用いたセラミックス濾過膜、およびセラミックス多孔体の製造方法に係る。
固液分離、液体分離、気液分離、気体分離のために濾過膜が広く使用されている。特にセラミックス多孔体により濾過膜を形成したセラミックス濾過膜は、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)、逆浸透膜(RO膜)、浸透気化膜(PV膜)、蒸気濾過膜(VP膜)のいずれにも使用されている。セラミックス多孔体は、セラミックス材料の材質や孔径を変えることにより所望の孔径を得ることが容易であり、孔径精度も高いため、濾過膜として使用すると、孔径が精確で分離精度の高い濾過膜を得ることができるからである。また材質がセラミックスであるため、耐摩耗性、耐薬品性に優れているため、広い用途に使用されている。
例えば、特許文献1はPV膜として使用した例であり、特許文献2および特許文献3はPV膜およびRO膜として使用した例である。
かかるセラミックス濾過膜において、濾過機能を有する濾過層をごく薄く形成し濾過抵抗を低減させるともに、この濾過層を支持する支持層を形成してセラミックス濾過膜の形状を安定させ、かつ強度を確保することが一般的である。セラミックスは剛体である為、濾過層がごく薄くても、目開きによる濾過精度の低下は発生しない。また、セラミックスは耐摩耗性に優れるため、ごく薄い濾過層であっても磨耗による欠損の可能性も低いためである。この場合、支持層はセラミックス濾過膜の強度を保てればよいのであるから、支持層を粗構造として濾過抵抗を小さくすることにより、濾過流量を確保することができる。しかし単純に支持層を粗構造とすると、隣接して形成される濾過層も影響を受けて粗面化し、濾過精度が低下するおそれがある。そこで、特許文献3においては、支持層と濾過層の間に、支持層と濾過層の中間的な径を持つ細孔を有する無機多孔質膜を設けて係る問題を抑制している。更に、この無機多孔質膜の細孔を、膜厚方向に配向しかつ貫通する一様な開口径の細孔とすることにより濾過抵抗を低減する技術が提示されている。
特開平6−99044号公報 特開平10−57784号公報 特開2006−263566号公報
ところが、一般に多層膜を形成するには層ごとに形成工程が必要となり、製造が煩雑となる。特許文献3においても、まず、支持体(支持層)を形成した後に、PLD法によって無機多孔質膜である中間層を形成し、更にその後、濾過層である薄膜層を形成している(〔0061〕〜〔0067〕)。また、PLD法による中間層の形成工程は、真空室内にて温度・ガス圧等を管理した状態でパルスレーザをターゲットに照射する(〔0066〕)という煩雑な工程であり、製造が容易ではない。
本発明は、係る状況を鑑みて成されたものであり、濾過精度が高くかつ濾過抵抗が低いセラミックス濾過膜に好適に用いることができるセラミックス多孔体であって、上記従来に比して製造が容易なセラミックス多孔体を提供することにある。また、かかるセラミックス多孔体を用いたセラミックス濾過膜およびセラミックス多孔体の製造方法を提供することにある。
本発明に係るセラミックス多孔体は、所望の平均孔径に調整された細孔を有する細孔層と、前記細孔より大きな平均孔径を有する孔である支持層孔を有するとともに前記細孔層を支持する支持層と、前記細孔の平均孔径以上であって支持層孔の平均孔径以下の平均孔径の孔である中間層孔を有するとともに前記細孔層と前記支持層の間に設けられた中間層を有するセラミックス多孔体である。更に、前記支持層には、前記支持層孔の平均孔径より大きな径を有する厚み方向に延設された孔である孔路が形成されていることを特徴とする。
上記構成によると、細孔の平均孔径以上であって支持層孔の平均孔径以下の平均孔径の孔である中間層孔を有するとともに細孔層と支持層の間に設けられた中間層を有するため、支持層が粗構造であっても細孔層に直接影響を与えることがない。従って、細孔層が粗面化することがなく、濾過膜として使用する際に、高い濾過精度を保つことが可能となる。
また、支持層には、支持層孔の平均孔径より大きな径を有する厚み方向に延設された孔である孔路が形成されているため、濾過膜として使用する場合には、孔路を濾過物の流路として使用することが可能となる。この孔路は支持層孔の平均孔径より大きな径を有するため、濾過抵抗が非常に小さいため流量が大きくなるためである。また、孔路は厚み方向に延設された孔であるため、濾過抵抗の低減効果が非常に大きい。
本発明に係るセラミックス多孔体は、前記支持層がアルミナ多孔質体で形成されていることが好ましい。
上記構成によると、アルミナはセラミックス材料として一般的な素材であるため、入手容易かつ安定的な素材によって支持層を製造しうる。
本発明に係るセラミックス多孔体は、前記支持層の厚み方向に垂直な面における断面であって、孔路の面積率が最大になる断面における孔路の面積率が、5.0%以上60%以下であることが好ましい。
上記構成によると、支持層の厚み方向に垂直な断面であって、孔路の面積率が最大になる断面における孔路の面積率が、5.0%以上であるため、濾過抵抗が小さくなる。また、支持層の厚み方向に垂直な断面であって、孔路の面積率が最大になる断面における孔路の面積率が60%以下であるため、細孔層を支持するための強度が確保できる。
本発明に係るセラミックス多孔体は、前記細孔層がゼオライトにより形成されていることが好ましい。
上記構成によると、細孔層がゼオライトにより形成されているため、セラミックス多孔体を蒸気濾過膜(VP膜)として使用することが可能となる。ゼオライトはアルミとケイ素の酸化物であり、アルミとケイ素の比率によって、様々な環状の結晶型を取ることが知られている。従って、所望の環径を有する結晶型のゼオライトを選択することにより、所望の大きさ以下の分子のみ透過させ、より大きい分子は透過させない「分子篩い」として機能する膜を形成することが可能である。そのため、蒸気濾過膜(VP膜)として使用することができる。
本発明に係るセラミックス多孔体は、前記細孔層の厚みが1.0μm以上10μm以下であることが好ましい。
上記構成によると、細孔層の厚みが1.0μm以上であるため、欠陥のないゼオライト層を容易に形成できる。また、細孔層の厚みが10μm以下であるため、濾過抵抗を小さくすることができる。
本発明に係るセラミックス多孔体は、前記中間層の有する中間層孔の孔径であって、前記細孔層に接する部分の平均孔径が、0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
上記構成によると、中間層の有する中間層孔の孔径であって、細孔層に接する部分の平均孔径が、0.01μm以上であるため、濾過抵抗を小さくすることができる。また、中間層の有する中間層孔の孔径であって、細孔層に接する部分の平均孔径が、1.0μm以下であるため、細孔層が粗面化されることを抑制できる。
なお、中間層の有する中間層孔の孔径であって、細孔層に接する部分の平均孔径が0.01μm以上1.0μm以下であるから、中間層の有する中間層孔の孔径が全て0.01μm以上1.0μm以下である必要はない。例えば、中間層の孔径が一様でなく、細孔層に接する部分から細孔層から遠い部分に向って、孔径が漸増し、細孔層から遠い部分の平均孔径が1.0μmを超えている場合であっても上記要件に該当し、より濾過抵抗を低減できる点で好ましい。すなわち、中間層の細孔層と接する部分の平均孔径が、中間層の支持層と接する部分の平均孔径よりも小さい構成が好ましい。また、中間層が更に多層からなっており、細孔層に接する部分を除く層が0.01μm未満の平均孔径を有す場合や、1.0μmを超える平均孔径を有す場合も同様に上記要件に該当する。
本発明に係るセラミックス多孔体は、前記細孔層が外周面に形成された管状形状であることが好ましい。
上記構成によると、細孔層が外周面に形成された管状形状であるため、外周面から、内周面に濾過を行う中空糸膜としてセラミックス多孔体を使用することができる。中空糸膜は、体積あたりの濾過面積が広いため、小規模のモジュールで高い濾過量を得ることができるため使用用途が広い。
本発明に係るセラミックス多孔体の製造方法は、水に非可溶性の樹脂材料を水に可溶性の溶媒に溶解させた樹脂溶液に粒子状のセラミックス原料を分散させて混成した混成セラミックス原料を、所望の形状に成形しつつ水溶液中に押し出す押出成形工程を有する。また、押し出された混成セラミックス原料を水溶液中に放置することにより、前記混成セラミックス原料から前記水に可溶性の溶媒を水溶液中に溶出させるとともに、前記粒子状のセラミックス原料を分散させた状態で、前記水溶液に非可溶性の樹脂材料を析出させる析出工程を有する。更に、析出した前記樹脂材料を焼成することによりセラミックス多孔体を得る焼成工程を有するセラミックス多孔体の製造方法である。ここで、前記析出工程における、前記混成セラミックス原料から前記水に可溶性の溶媒を水溶液中に溶出させる速度を制御することにより、前記孔路を形成させることを特徴とする。
上記構成によると、析出工程における、混成セラミックス原料から水に可溶性の溶媒を水溶液中に溶出させる速度を制御することにより、孔路を形成させるため、特段に複雑な工程を追加することなく、孔路を形成することが可能となる。従って、濾過精度が高くかつ濾過抵抗が低いセラミックス濾過膜に好適に用いることができるセラミックス多孔体を、従来に比して容易に製造することができる。
本発明に係るセラミックス多孔体の製造方法は、前記混成セラミックス原料から前記水に可溶性の溶媒を水溶液中に溶出させる速度の前記制御は、前記混成セラミックス原料の粘度を管理することにより行われることが好ましい。
上記構成によると、混成セラミックス原料から水に可溶性の溶媒を水溶液中に溶出させる速度の制御は、混成セラミックス原料の粘度を管理することにより行われるため、特段に複雑な工程を追加することなく、孔路を形成することが可能となる。例えば、樹脂材料、水に可溶性の溶媒、および粒子状のセラミックス原料のいずれか少なくとも1つの混成比率や原料を変化させることにより、混成セラミックス原料の粘度は容易に変化させることが可能である。
本発明に係るセラミックス多孔体の製造方法は、前記粘度の管理は前記粒子状のセラミックス原料の粒径を調整することにより行われることを特徴とすることが好ましい。
上記構成によると、粘度の管理は前記粒子状のセラミックス原料の粒径を調整することにより行われるため、特段に複雑な工程を追加することなく、孔路を形成することが可能となる。つまり、混合セラミックス原料の粒径を調整することのみで粘度が変化するのであるから、混成する水に可溶性の溶媒、樹脂材料および粒子状のセラミックス原料の混成比率や原料等をいずれも変化させる必要はないため、公知のセラミックス多孔体の製造方法を応用することができる。
本発明に係るセラミックス濾過膜は、本発明に係るセラミックス多孔体、または、本発明に係るセラミックス多孔体の製造方法により製造されたセラミックス多孔体を用いたセラミックス濾過膜である。
本発明に係るセラミックス多孔体、および、本発明に係るセラミックス多孔体の製造方法により製造されたセラミックス多孔体は、濾過精度が高くかつ濾過抵抗が低く、更に上記従来に比して製造が容易なセラミックス多孔体であるため、濾過膜として好適に用いることができる。
本発明によれば、濾過精度が高くかつ濾過抵抗が低いセラミックス濾過膜に好適に用いることができるセラミックス多孔体であって、上記従来に比して製造が容易なセラミックス多孔体を提供することができる。
本発明に係るセラミックス多孔体の一実施形態を説明する図面であって、セラミックス多孔体をVP膜として用いた例を説明する斜視図である。 本発明に係るセラミックス多孔体の一実施形態を説明する図面であって、(a)はセラミックス多孔体の全体写真であり、(b)は断面の拡大写真であり、(c)は更に外周面近傍の断面拡大写真である。 本発明に係るセラミックス多孔体の一実施形態を説明する図面であって、図2(b)におけるA−A面による断面図である。 本発明に係るセラミックス多孔体の一実施形態を説明する図面であって、孔路形成過程を説明するための断面図である。 本発明に係るセラミックス多孔体の一実施形態を説明する図面であって、実施例1におけるセラミックス多孔体の断面図である。 本発明に係るセラミックス多孔体の一実施形態を説明する図面であって、実施例2におけるセラミックス多孔体の断面図である。 本発明に係るセラミックス多孔体の一実施形態を説明する図面であって、比較例におけるセラミックス多孔体の断面図である。
以下、本発明を具体化したセラミックス多孔体の一実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図1に示すように、セラミックス多孔体は、細孔層が外周面12に形成された管状形状のセラミックス濾過膜として使用できるように形成した。細孔層が外周面12に形成された管状形状は、細孔層を濾過層として使用することにより、外周面12から、内周面に濾過を行う中空糸膜として使用することができる。中空糸膜は、体積あたりの濾過面積が広いため、小規模のモジュールで高い濾過量を得ることができるため使用用途が広い。
具体的には、このセラミックス多孔体は、例えば、気体状態のエチルアルコール(CO)と水(HO)とを分離するセラミックスVP膜として使用される。水分子は透過するがエチルアルコールは透過しない細孔層によってセラミックス多孔体の外周面12が形成されているため、外周面12を内周面32より高圧に保つことにより、水分子のみを外周面12から内周面32に透過させ、透過した水を排除することにより、エチルアルコールを濃縮することができる。
図2(a)〜(c)に示すように、セラミックス多孔体は、所望の平均孔径に調整された細孔を有する細孔層10を有している。この細孔層はゼオライトにより形成されているため、セラミックス多孔体を蒸気濾過膜(VP膜)として使用することが可能となる。ゼオライトはアルミとケイ素の酸化物であり、アルミとケイ素の比率によって、様々な環状の結晶型を取ることが知られている。従って、所望の環径を有する結晶型のゼオライトを選択することにより、所望の大きさ以下の分子のみ透過させ、より大きい分子は透過させない「分子篩い」として機能する膜を形成することが可能である。そのため、蒸気濾過膜(VP膜)として使用することができる。本実施形態においては、A型ゼオライトが細孔層10に用いられている。A型ゼオライトの環の細孔の大きさは0.41nm程度であり、水分子の径0.25nmより大きく、エチルアルコール分子の径より小さいためである。
この細孔層10の厚みは図2(c)に示すように、約1μmである。一般に細孔層10の厚みは特に限定されないが、厚みが1.0μmに満たない場合は欠陥のないゼオライト層を形成することが困難となり、濾過精度が低下しやすい。一方、厚みが10μmを超えた場合は、濾過抵抗が大きくなり、濾過流量が低下する。従って、細孔層10の厚みが1.0μm以上であるとともに10μm以下であることが好ましい。
図2(b)に示すように、細孔層10の径方向において内方(以下、単に、「内方」という)には中間層20が備えられている。この中間層20はアルミナにより形成された多孔質の層である。中間層20の有する孔である中間層孔の平均孔径は、更に内方に設けられている支持層30の有する孔である支持層孔の平均孔径より小さく、0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。支持層孔の平均孔径が0.01μm未満であれば、濾過抵抗が大きくなることが懸念されるからである。また、支持層孔の平均孔径が1.0μmを超えると、上述した細孔層10の厚みとの差が小さいため、細孔層10が粗面化し、
細孔層10に欠陥が生ずるおそれがある。
中間層20より更に内方には、細孔より大きな平均孔径を有する孔である支持層孔を有する支持層30が形成されている。この支持層30によって、中間層20を介して、細孔層10が支持されている。この支持層30も、セラミックス材料として一般的な素材であるアルミナを用いて形成されているため、入手容易かつ安定的な素材によっての支持層を製造できる。この支持層30には支持層孔より更に大きな孔径を有する孔路31が形成されている。孔路31は径方向、即ち、支持層30の厚み方向に延設された形状を有している。従って、このセラミックス多孔体をセラミックス濾過膜として使用する場合には、濾過物が内部を通るための流路として孔路31が機能する。この孔路31は支持層孔の平均孔径より大きな径を有するため、濾過抵抗が非常に小さく、濾過物の流量を大きくすることができる。また、上述のように、孔路は厚み方向に延設された孔であるため、濾過抵抗の低減効果が非常に大きい。
この孔路31を支持層30の厚み方向に垂直な断面であって、孔路の面積率が最大になる断面、つまり図2(b)におけるA−A線(面)による断面が、図3である。この図3に示す、支持層30の厚み方向に垂直な断面であって、孔路の面積率が最大になる断面における孔路31の面積率(以下、「最大面積率」と呼ぶ)が、5.0%以上であることが濾過抵抗低減の観点より好ましい。一方、最大面積率が60%以下であることが、細孔層10を支持するための強度確保の観点より好ましい。
このように、セラミックス多孔体は、細孔層10が外周面12に形成された管状形状であるため、外周面12から、内周面32に濾過を行う中空糸膜として用いることができる。中空糸膜は、体積あたりの濾過面積が広いため、使用規模のモジュールで高い濾過量を得ることができるため使用用途が広い。
このセラミックス多孔体の製造方法を以下に説明する。セラミックス多孔体は、押出成形工程と、析出工程と焼成工程とを経て製造される。押出成形工程とは、水に非可溶性の樹脂材料を水に可溶性の溶媒に溶解させた樹脂溶液に粒子状のセラミックス原料を分散させて混成した混成セラミックス原料を、所望の形状に成形しつつ水溶液中に押し出す工程である。例えば、水に非可溶性の樹脂材料としては、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、芳香族ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、酢酸セルロースが例示される。また、水に可溶性の溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、モルホリン、トリエチルホスフェート、アセトンが例示される。粒子状のセラミックス原料としてはアルミナ、ムライト、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ハイドロキシアパタイト等の他、金属焼結体、あるいは多孔質ガラスが例示される。また、必要に応じてラウリルベンゼンスルホン酸等の分散剤を更に加えても良い。この混成セラミックス原料を水溶液中に押し出すことにより、混成セラミックス原料が管状形状に押し出し形成される。
次に、析出工程とは、押し出された混成セラミックス原料を水溶液中に放置することにより、混成セラミックス原料から水に可溶性の溶媒を水溶液中に溶出させるとともに、粒子状のセラミックス原料を分散させた状態で、水溶液に非可溶性の樹脂材料を析出させる工程である。水溶液は、水に可溶性の溶媒に対しては良溶媒であるが、樹脂材料に対しては貧溶媒であるため、上述したN,N−ジメチルホルムアルデヒド等の水に可溶性の溶媒が水溶液中に溶出する一方で、残留したポリスチレン等の樹脂材料がセラミックス原料を分散させた状態で析出する。
ここで、析出工程における、樹脂材料の析出速度を制御することにより、上述した孔路31を形成させることができる。言い換えると、混成セラミックス原料から水に可溶性の溶媒を水溶液中に溶出させる速度を制御することにより、孔路31を形成させるのである。つまり、特段に複雑な工程を追加することなく、孔路31を形成することが可能となる。従って、孔路31を形成のために別段に工程を設けることなく濾過精度が高くかつ濾過抵抗が低いセラミックス濾過膜に好適に用いることができるセラミックス多孔体を従来に比して容易に製造することができる。
具体的には、混成セラミックス原料から水に可溶性の溶媒を水溶液中に溶出させる速度の制御は、混成セラミックス原料の粘度を管理することにより行われることが好ましい。例えば、混成する樹脂材料、水に可溶性の溶媒および粒子状のセラミックス原料のいずれか少なくとも1つの混成比率や原料を変化させることにより、混成セラミックス原料の粘度は容易に変化させることができ、対応が容易なためである。
粘度の管理の方法としては、粒子状のセラミックス原料の粒径を調整することにより行うことも好ましい。この方法によると混合セラミックス原料の粒径を調整することのみで粘度を変化させるのであるから、混成する水に可溶性の溶媒、樹脂材料および粒子状のセラミックス原料のいずれかの混成比率や原料のいずれをも変化させる必要はないため、従来蓄積された汎用なセラミックス多孔体の製造を応用することが容易となる。
粒子状のセラミックス原料の粒径を調整することによる粘度を調整する方法を以下に説明する。一般に溶液に粒形の固形物が分散している混成物において、固形物の質量が同じであれば、粒径が小さい程、混成物の粘度が大きくなる。これは、同一質量の固形物を小さくするほど総表面積が増えるため、溶液との接触面積が増えることが要因となっている。溶液との接触面積が大きくなれば、混成物が流動する際の固形物と溶液との動摩擦が大きくなり、全体として混成物の粘度が大きくなるためである。
次に、セラミックス混成物の粘度を調節することにより孔路31が形成される理由を、以下に説明する。発明者らの実験による知見より、セラミックス原料の粒径が大きいほど、即ちセラミックス混成物の粘度が小さいほど、孔路31の最大面積率が大きくなることが知られている。係る事実より判断するに、詳細は不明であるが、以下のようなメカニズムであると推察される。
図4に示すように、押出成形工程を経て水中に放置された混成セラミックス原料内の水に可溶性の溶媒は、浸透圧の低い水溶液中に溶け出そうとして混成セラミックス原料外へ、黒矢印で示すように移動する。一方、混成セラミックス原料の水に可溶性の溶媒が抜けた部分は残された水に不溶な樹脂材料が析出し、さらに水に反発して樹脂材料同士が凝集しようとする。ここで、混成セラミックス原料の粘度が大きければ、混成セラミックス材料全体が固く変形しにくく微視的には樹脂材料および含まれるセラミックス原料が移動しにくいため、押し出されたままの分散状態で比較的均等に水に可溶性の溶媒の移動および大きな凝集を伴わない樹脂材料の析出が行われる。一方、混成セラミックス原料の粘度が小さい場合は、混成セラミックス材料全体が軟弱で変形しやすく微視的には樹脂材料および含まれるセラミックス原料が移動しやすいため、最初に水に接触する押出材料の表面付近は比較的押し出されたままの均質な分散状態で樹脂材料が析出するが、押出成型材料の内部になるほど樹脂材料の析出と同時に凝集が進み、不均質となりやすい。具体的には、まず、水溶液と直接接する混成セラミックス原料の表面部分、即ち、外周面12および内周面32近くでは、水に可溶性の溶媒が素早く抜けるために、均質な分散状態のままで樹脂材料の析出が完了する。一方、表面から遠い押出成形材料の内部では、表面よりも水に可溶性の溶媒と水の交換がゆっくり進むため、その間に水に不溶性の樹脂材料同士の凝集が進み、一方で溶媒の抜けた空間に流入した水はそれ同士が集まって大きな塊を形成する。樹脂材料と水の両者の分離は表面から遠いほど進むため、内部ほど大きな孔を厚み方向、即ち径方向に延設させて行く。係る働きにより、厚み方向に延設された孔である孔路31が形成される。
ここで、混成セラミックス原料の表面部分のうち、内周面32方向への水に可溶性の溶媒の移動速度を外周面12方向より小さくすることにより、図4のように、孔路31を外方より内方に集中させることができる。孔路31の形成は、水に可溶性の溶媒の水への分散が遅いほど起こりやすいため、管状構造の場合は外表面より水が拡散する相手の水の量が少なくすればよい。こうすることにより、外周面12に形成される細孔層10と、孔路31を備えた層である支持層30との間に中間層20を形成することができる。この中間層20が形成されるため、孔路31形成の影響が、細孔層10に及ばないため、濾過精度が確保される。なお、内周面32方向への水に可溶性の溶媒の移動速度を外周面12方向より大きくすることは、内周面32に触れる水溶液を流動させること、例えば、押し出し成形時に混成セラミックス原料の円筒形の内部に流す水の量を制御することにより容易に実現できる。
更に、析出工程によって、粒子状のセラミックス原料を分散させた状態で析出した樹脂材料を焼成することによりセラミックス多孔体を得る焼成工程を経て、セラミックス多孔体が得られる。セラミックス原料としてアルミナを使用した場合には、例えば、1480℃において1時間焼成する。焼成工程によって、析出した樹脂材料が蒸散または分解し、残留したセラミックス原料粒子が焼結してセラミックス多孔体が形成される。
こうして形成されたセラミックス多孔体は、望ましくは0.01μm以上1.0μm以下の平均孔径の緻密な孔を持ち、延設された孔である孔路31によって透過抵抗の低い多孔質構造となっているために、そのままでも固液分離、液体分離、気液分離を行う精密濾過膜、限外濾過膜などの濾過膜として利用できる。一方、本発明の目的の一つである、水とアルコールを分けうるPVあるいはPV膜のような分子篩いとして機能しうる濾過膜として使用するためには、セラミックス多孔体の外周面12に所望の孔径を有する細孔層10を形成する。本実施形態においてはアルコール濃縮用のPV膜と使用するため、上述のように、CHA型ゼオライト結晶によって細孔層10を形成する。具体的には、結晶核としてCHA型ゼオライト結晶をセラミックス多孔体の外周面12に予め擦り付けた後、ゼオライト形成原料液中に同セラミックス多孔体を浸漬するとともに所定の条件下におくことにより、セラミックス多孔体の外周面12にCHA型ゼオライトの結晶を成長させて、細孔層10を形成する。
上記実施形態のセラミックス多孔体、セラミックス多孔体の製造方法、およびセラミックス濾過膜によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、細孔の平均孔径以上であって支持層孔の平均孔径以下の平均孔径の孔である中間層孔を有するとともに細孔層10と支持層30との間に設けられた中間層20を有するため、支持層30が粗構造であっても細孔層10に直接影響を与えることがない。従って、細孔層10が粗面化することがなく、濾過膜として使用する際に、高い濾過精度を保つことが可能となる。
(2)上記実施形態では、支持層30には、支持層孔の平均孔径より大きな径を有する厚み方向に延設された孔である孔路31が形成されているため、濾過膜として使用する場合には、孔路31を濾過物の流路として使用することが可能となる。この孔路31は支持層孔の平均孔径より大きな径を有するため、濾過抵抗が非常に小さく流量が大きいためである。また、孔路31は厚み方向に延設された孔であるため、濾過抵抗の低減効果が非常に大きい。
(3)上記実施形態では、支持層30がとしてアルミナにより形成されている。アルミナはセラミックス材料として一般的であり、容易かつ安定的に入手が可能な素材であるため、安価かつ安定的にセラミックス多孔体を製造しうる。
(4)上記実施形態では、支持層30の厚み方向に垂直な断面であって、孔路31の面積率が最大になる断面における孔路の面積率が、5.0%以上であるため、濾過抵抗が小さくなる。また、支持層30の厚み方向に垂直な断面であって、孔路31の面積率が最大になる断面における孔路31の面積率が60%以下であるため、細孔層10を支持するための強度が確保できる。
(5)上記実施形態では、細孔層10がゼオライトにより形成されているため、セラミックス多孔体を蒸気濾過膜(VP膜)として使用することが可能となる。ゼオライトはアルミとケイ素の酸化物であり、アルミとケイ素の比率によって、様々な環状の結晶型を取ることが知られている。従って、所望の環径を有する結晶型のゼオライトを選択することにより、所望の大きさ以下の分子のみ透過させ、より大きい分子は透過させない「分子篩い」として機能する膜を形成することが可能である。そのため、蒸気濾過膜(VP膜)として使用することができる。
(6)上記実施形態では、細孔層10の厚みが1.0μm以上であるため、欠陥のないゼオライト層を容易に形成できる。また、細孔層の厚みが10μm以下であるため、濾過抵抗を小さくすることができる。
(7)上記実施形態では、中間層20の有する中間層孔の孔径であって、細孔層10に接する部分の平均孔径が、0.01μm以上であるため、濾過抵抗を小さくすることができる。また、中間層20の有する中間層孔の孔径であって、細孔層10に接する部分の平均孔径が、1.0μm以下であるため、細孔層10が粗面化されることを抑制できる。
(8)上記実施形態では、細孔層10が外周面12に形成された管状形状であるため、外周面12から、内周面32に濾過を行う中空糸膜としてセラミックス多孔体を使用することができる。中空糸膜は、体積あたりの濾過面積が広いため、使用規模のモジュールで高い濾過量を得ることができるため使用用途が広い。
(9)上記実施形態では、形状安定化工程における、水に不溶性の樹脂材料の凝集する速度を制御することにより、孔路31を形成させるため、特段に複雑な工程を追加することなく、孔路31を形成することが可能となる。従って、濾過精度が高くかつ濾過抵抗が低いセラミックス濾過膜に好適に用いることができるセラミックス多孔体を従来に比して容易に製造することができる。
(10)上記実施形態では、水に不溶性の樹脂材料の凝集する速度の制御は、混成セラミックス原料の粘度を管理することにより行われるため、特段に複雑な工程を追加することなく、孔路31を形成することが可能となる。例えば、混成する水に可溶性の溶媒、樹脂材料および粒子状のセラミックス原料のいずれか少なくとも1つの混成比率や原料を変化させることにより、混成セラミックス原料の粘度は容易に変化させることが可能である。
(11)上記実施形態では、粘度の管理は粒子状のセラミックス原料の粒径を調整することにより行われるため、特段に複雑な工程を追加することなく、孔路31を形成することが可能となる。つまり、混成セラミックス原料の粒径を調整することのみで粘度が変化するのであるから、混成する水に可溶性の溶媒、樹脂材料および粒子状のセラミックス原料の混成比率や原料いずれをも変化させる必要はないため、汎用なセラミックス多孔体の製造を応用することが容易となる。
(12)上記実施形態のセラミックス多孔体は、濾過精度が高くかつ濾過抵抗が低く、更に上記従来に比して製造が容易なセラミックス多孔体であるため、セラミックス濾過膜に好適に用いることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記製造方法においては、粒子状のセラミックス原料の粒径を調整することにより粘度の管理を行っているが他の構成であっても良い。例えば、樹脂材料や水に可溶性の溶媒、セラミックス原料の配合比を変えたり、成分を変えたりすることにより粘度管理しても良い。中間層孔や支持層孔の大きさを変化させずに粘度調整が可能となりうる。また、粒子状のセラミックス原料の粒径の調整と係る粘度管理を併用しても良い。粘度管理幅を大きくしうる。
・上記製造方法において、水に不溶性の樹脂材料の凝集する速度の制御は、混成セラミックス原料の粘度を管理することにより行われるが、他の構成であっても良い。例えば、外周面12に接する水溶液を流動させても良い。また、内周面32に接する水溶液の流動速度を変化させても良い。更には、内周面32および外周面12に接する水溶液の濃度を変化させても良い。他の要因により、粘度の管理が困難な場合であっても、同様の機能を有するセラミックス多孔体を容易に製造することができる。
・上記セラミックス多孔体は、細孔層10が外周面12に形成された管状形状であるが、他の形状であってもよい。体積あたりの濾過面積が広い中空糸膜として使用するためには、管状形状が有利であるが、他の用途に使用するのであれば、形状は限定されない。例えば、平板状に形成しても良い。
・上記セラミックス多孔体の中間層20の有する中間層孔の孔径であって、細孔層に接する部分の平均孔径が0.01μm以上1.0μm以下であるから、中間層の有する中間層孔の孔径が全て0.01μm以上1.0μm以下である必要はない。例えば、中間層の孔径が一様でなく、細孔層に接する部分から細孔層から遠い部分に向って、孔径が漸増し、細孔層から遠い部分の平均孔径が1.0μmを超えていても良い。また、中間層20が更に多層からなっており、細孔層10に接する部分を除く層が0.01μm未満の平均孔径を有す場合や、1.0μmを超える平均孔径を有す場合も同様に上記要件に該当する。孔径が漸増する構成や、中間層20を多層構造とする構成を用いることにより、濾過抵抗を小さくする効果が期待できる。
・上記実施形態において、セラミックス多孔体の中間層20の有する中間層孔の孔径であって、細孔層に接する部分の平均孔径が、0.01μm以上1.0μm以下であるが、他の構成であっても良い。例えば、細孔層10の厚みや性質を変えることにより細孔層10が粗面化されることが防止されるのであれば、細孔層に接する部分の平均孔径が1.0μmを超える平均孔径としても良いし、濾過抵抗が特に問題とならないのであれば、0.01μm未満としても良い。
・上記実施形態において、細孔層10の厚みを1.0μm以上10μm以下としているが、他の構成であっても良い。濾過膜として欠陥のないゼオライト層を形成できるのであれば、細孔層10の厚みが1.0μm未満であっても良いし、濾過抵抗が特に問題とならないのであれば、細孔層10の厚みが10μmを超えても良い。
・上記実施形態において、細孔層10はゼオライトにより形成されているが、他の構成であっても良い。セラミックス多孔体を蒸気濾過膜(VP膜)として使用するためには「分子篩い」として機能するゼオライト膜を細孔層10とすることが有効であるが、他の用途に使用するのであれば、他の部材による膜を形成してもよい。細孔層10の部材を必要に応じて変化させ、所望の孔径を持つセラミックス多孔体を形成することにより、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)、逆浸透膜(RO膜)、浸透気化膜(PV膜)等の多彩な濾過膜としてセラミックス多孔体を使用することができる。この場合において、上述したように細孔層10の厚みが1.0μm以上10μm以下でなくても良い。
・上記製造方法において、焼結して形成されたセラミックス多孔体の細孔層10を形成する工程を有しているが、他の構成であっても良い。例えば、セラミックス多孔体を精密濾過膜(MF膜)や限外濾過膜(UF膜)として使用する場合に、焼成後の外周面12を形成する層の孔径が、目的とする孔径と一致するのであれば、細孔層10を形成するために別段の工程を設ける必要がない。係る工程を割愛することにより、製造コストが削減できる。
・上記実施形態において、支持層30の厚み方向に垂直な面における断面であって、孔路31の最大径部分を通る平面における断面(図2(b)におけるA−A断面)に対する孔路31の面積率が、5.0%以上60%以下であるが他の構成であってもよい。用途によって濾過抵抗の許容範囲内となるのであれば、同面積率が5.0%未満であってもよい。強度を大きくすることができる。反対に、細孔層10を支持するための強度が確保できるのであれば、同面積率が60%を超えても良い。濾過抵抗を一層小さくすることができる。
・上記実施形態において、支持層30および中間層20がアルミナ多孔質体で形成されているが、他の構成であっても良い。一方または双方を他の部材で形成することにより、特殊な用途に使用できる可能性を有する。
粒子状のセラミックス原料として平均粒径0.20μmのαアルミナである大明化学工業株式会社製TM−5Dを、水に可溶性の溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを、水に非可溶性の樹脂材料としてポリスチレンを、分散助剤としてラウリルベンゼンスルホン酸を用いて、セラミックス多孔体を製造した。
まず、60wt%のTM−5Dに、35wt%のN,N−ジメチルホルムアミドを加え、ボールミルにて一晩撹拌することによりN,N−ジメチルホルムアミド中にTM−5Dを十分に分散させる。
次に、5wt%のポリスチレンおよび0.2wt%のラウリルベンゼンスルホン酸を加えて更に、攪拌しセラミックス混成物を作成した。
このセラミックス混成物を水中に押し出し成形することにより、管状のセラミックス混成物を形成した。このとき管状のセラミックス混成物の内周面に流速 40m/分で水を流すことにより、内周面からのN,N−ジメチルホルムアミドの溶出を促すとともに、セラミックス混成物の押し出しに寄与する。
押し出し成形された管状のセラミックス混成物を水中に数時間(1〜24時間)以上放置し、N,N−ジメチルホルムアミドを十分に溶出させ、粒子状のセラミックス原料を分散させた状態で、樹脂材料を析出させる。
形状を安定化させたセラミックス混成物を、4時間かけて徐々に昇温し、1480℃に達した後に更に1時間焼成してポリスチレンを蒸散あるいは分解させ、残留した粒子状のセラミックス原料を焼結させる。その結果、外径2mmφ、膜厚0.2mm、気孔率40%のセラミックス多孔体を得た。
焼結させたセラミックス多孔体を冷却した後、セラミックス多孔体の外表面に、種結晶となるCHA型ゼオライト結晶をまんべんなく十分に擦りつける。
一方、以下に示すA液、B液を各々別々に作成し、各々を十分に撹拌する。
A液:
水酸化カリウム 5wt%
50%硝酸アルミニウム 9wt%
純水 59wt%
B液:
10%硝酸ストロンチウム 13wt%
触媒化成工業株式会社製 カタロイドSI−30 14wt%
A液とB液とを混合した後、CHA型ゼオライト結晶を擦りつけたセラミックス多孔体を浸漬して密閉し、140℃にて21時間過熱する。係る工程によって、擦りつけられたCHA型ゼオライト結晶を核として、セラミックス多孔体の外表面にCHA型ゼオライトの結晶が晶析し、CHA型ゼオライトによる細孔層が形成される。
細孔層が形成されたセラミックス多孔体を冷却し、乾燥させることにより、VP膜として機能するセラミックス多孔体を得た。
粒子状のセラミックス原料として平均粒径1.0μmのαアルミナである和光純薬工業株式会社製α−アルミナ1μを用いた以外は実施例1と同様の工程を経てVP膜として機能するセラミックス多孔体を得た。
〔比較例〕
粒子状のセラミックス原料として平均粒径0.1μmのαアルミナである大明化学工業株式会社製TM−10を用いた以外は実施例1と同様の工程を経てVP膜として機能するセラミックス多孔体を得た。
〔断面構造比較〕
実施例1,2および比較例のセラミックス多孔体の断面構造を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、目視観察した。結果を実施例1の断面写真を図5に、実施例2の断面写真を図6に、比較例の断面写真を図7に各々示す。
〔透過流束・分離係数〕
実施例1,2および比較例のセラミックス多孔体の管状の一方端を封じ他端を真空ポンプにて2〜3kPaに減圧した状態で、75℃に加熱した90wt%エタノール水溶液中に60分間浸した。係る状態において、真空ポンプにて吸引された気体を液体窒素冷却管によって冷却して凝結させ、エタノール水溶液を回収した。回収したエタノール水溶液の重量から測定1時間あたり膜面積1mあたりにセラミックス多孔体を透過したエタノール水溶液を算出した。
また、このエタノール水溶液を液体クロマトグラフィーを用いて成分比較し、エタノールと水の組成比を得た。更に、以下の式(1)および式(2)により透過流束Qおよび分離係数αを求めた。
透過流束Q=(回収された液の重量)/{(濾過膜フィルターの管表面面積)×(回収時間)}(単位:kg/hr・m)・・・(1)
分離係数α={(供給液のエタノールの重量比率=90%)×(回収液中の水の重量比率)}/{(供給液の水の重量比率=10%)×(回収液中のエタノールの重量比率)}・・・(2)
即ち、透過流束Qが大きいほど、単位面積あたりの濾過速度が速いことを示し、分離係数αが大きいほど、濾過精度が高いことが示される。
結果を表1に示す。なお、表1には粒子状のセラミックス原料であるαアルミナの平均粒径も併せて示した。
〔評価〕
図5〜7を比較すると、実施例1,2の支持層30には孔路31が確認できるが、比較例には確認できない。また、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例2の方が孔路31を明確に確認でき、数も多くなっている。このことより、αアルミナの平均粒径が大きいほど、即ち、セラミックス原料混成物の粘度が小さいほど孔路31が形成されやすいことが、推察される。
透過流束Qを比較すると、実施例1においては、比較例の1.5倍、実施例2においては、3倍の透過流束であったことが判る。かかる結果より、孔路31が形成されることにより、濾過速度が大きくなると考えられる。
一方、分離係数αを比較すると、実施例1では比較例より大きくなっているものの、実施例2では低下している。このことより、αアルミナの平均粒径をあまり大きくすると、濾過精度が低下すると考えられる。原因は明らかではないが、αアルミナの平均粒径を大きくしすぎることにより中間層20の中間層孔も大きくなり、その影響により細孔層10が粗面化し、濾過精度が低下したものと推定される。
本発明は、濾材として最適なセラミックス多孔体に関するものであるため、産業上広く利用することが可能である。
10…細孔層、12…外周面、20…中間層、30…支持層、31…孔路、32…内周面。

Claims (11)

  1. 所望の平均孔径に調整された細孔を有する細孔層と、
    前記細孔より大きな平均孔径を有する孔である支持層孔を有するとともに前記細孔層を支持する支持層と、
    前記細孔の平均孔径以上であって支持層孔の平均孔径以下の平均孔径の孔である中間層孔を有するとともに前記細孔層と前記支持層の間に設けられた中間層を有するセラミックス多孔体において、
    前記支持層には、前記支持層孔の平均孔径より大きな径を有する厚み方向に延設された孔である孔路が形成されていることを特徴とするセラミックス多孔体。
  2. 前記支持層がアルミナ多孔質体で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス多孔体。
  3. 前記支持層の厚み方向に垂直な断面であって、前記孔路の面積率が最大になる断面における前記孔路の面積率が、5.0%以上60%以下である請求項1または請求項2に記載のセラミックス多孔体。
  4. 前記細孔層がゼオライトにより形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックス多孔体。
  5. 前記細孔層の厚みが1.0μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミックス多孔体。
  6. 前記中間層の有する中間層孔の孔径であって、前記細孔層に接する部分の平均孔径が、0.01μm以上1.0μm以下であることを特徴とする請求項5に記載のセラミックス多孔体。
  7. 前記細孔層が外周面に形成された管状形状であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のセラミックス多孔体。
  8. 水に非可溶性の樹脂材料を水に可溶性の溶媒に溶解させた樹脂溶液に粒子状のセラミックス原料を分散させて混成した混成セラミックス原料を、所望の形状に成形しつつ水溶液中に押し出す押出成形工程と、
    押し出された混成セラミックス原料を水溶液中に放置することにより、前記混成セラミックス原料から前記水に可溶性の溶媒を水溶液中に溶出させるとともに、前記粒子状のセラミックス原料を分散させた状態で、前記水溶液に非可溶性の樹脂材料を析出させる析出工程と、
    析出した前記樹脂材料を焼成することによりセラミックス多孔体を得る焼成工程を有するセラミックス多孔体の製造方法において、
    前記析出工程における、前記混成セラミックス原料から前記水に可溶性の溶媒を水溶液中に溶出させる速度を制御することにより、前記孔路を形成させることを特徴とする
    請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラミックス多孔体の製造方法。
  9. 前記混成セラミックス原料から前記水に可溶性の溶媒を水溶液中に溶出させる速度の前記制御は、前記混成セラミックス原料の粘度を管理することにより行われることを特徴とする
    請求項8に記載のセラミックス多孔体の製造方法。
  10. 前記粘度の管理は前記粒子状のセラミックス原料の粒径を調整することにより行われることを特徴とする
    請求項9に記載のセラミックス多孔体の製造方法。
  11. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のセラミックス多孔体、または、請求項8〜10のいずれか1項に記載のセラミックス多孔体の製造方法により製造されたセラミックス多孔体を用いた濾過膜。
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