JP2011099047A - シリコンフタロシアニン色素を含有する着色剤組成物及び該シリコンフタロシアニン色素を含有する電子写真用トナー - Google Patents

シリコンフタロシアニン色素を含有する着色剤組成物及び該シリコンフタロシアニン色素を含有する電子写真用トナー Download PDF

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Abstract

【課題】高い明度を有し、耐光性、耐熱性に代表される使用環境の変動に対しての高い堅牢性を有するシリコンフタロシアニン色素を含有する着色剤組成物を提供する。また、このシリコンフタロシアニン色素及び結着樹脂を含有し、高い色再現性を有する電子写真用トナーを提供する。
【解決手段】中心金属にシリコンを有するシリコンフタロシアニン色素を含有する着色剤組成物。シリコンにはN−置換カルバモイルオキシ基、N−置換スルファモイルオキシ基などが結合している。この色素を用いたインクは鮮やかな色調を示し、耐光性、耐水性、耐熱湿性の面で優れていることが分かる。また、この色素を含有するトナーは、現像剤の耐光性、耐オゾン性の色素残存及び色素変化が良好なのでモニター画像の色再現性が高く、長期にわたって保存ができる画像を提供することが可能である。
【選択図】なし

Description

本発明はシリコンフタロシアニン色素を含有することを特徴とする着色剤組成物及び、該シリコンフタロシアニン色素を含有する電子写真用トナーに関する。
色素の色相は、色素によって着色した物体の色目、風合い等に大きな影響を与え、視覚に与える効果が大きい。従って、古くから色素の吸収スペクトルに関する研究がなされている。
近年における画像記録材料として、カラー画像が主流となり、色素の使用用途も多様化してきた。具体的には、染料や顔料としてインクジェット方式の記録材料、印刷インク等、染料として感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料等に盛んに利用されている。また、撮影機器では、CCDなどの撮像素子において、または、ディスプレイではLCDやPDPにおいて、カラー画像を記録、再現するためにカラーフィルターに染料や顔料として使用されている。更には染料として毛髪の染色にも使用されている。
これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を再現、あるいは記録するために、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の着色剤(染料や顔料)が使用されている。しかしながら、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、且つ様々な使用条件、環境条件等に耐えることができ、色相が良く堅牢な着色剤が無いのが現状であり、改善が強く望まれている。
従来から、フタロシアニン化合物は、青色〜緑色顔料して広く用いられてきている。
現在では、フタロシアニン化合物は鮮明な色相と高い着色力を有していて、耐光性、耐薬品性に優れていると言う特長を生かし、例えば合成樹脂の着色、印刷インク、昇華型感熱転写材料用色素、インクジェット用インク、カラーフィルター用色素等、種々の分野で用いられるようになってきている(例えば、特許文献1参照)。
また、フタロシアニン化合物は、置換基や中心金属の有無、種類並びに中心金属に結合する軸配位子の有無や、種類、または化合物自体の結晶形の違いなどによりその性質を大きく変化させる特性があり、この特性を生かし多種多様な用途に用いられている。
フタロシアニン化合物の代表的な顔料としては中心金属にCu、Znを有するフタロシアニン化合物が挙げられる。
中心金属にシリコンを有するシリコンフタロシアニン(SiPc)化合物も挙げられるが、当該シリコンフタロシアニン化合物は、これまで、電子写真感光体や、情報記録媒体用の材料として多くの検討がなされてきた(例えば、特許文献2及び3参照)。
しかしながら、当該シリコンフタロシアニン化合物を着色材用の顔料として利用する検討はこれまでほとんどなされていなかった。
特開平5−239368号公報 特開2003−171572号公報 特開2007−334342号公報
本発明の目的は、高い明度を有し、耐光性、耐熱性に代表される使用環境の変動に対しての高い堅牢性を有するシリコンフタロシアニン色素を含有する着色剤組成物を提供することである。また、このシリコンフタロシアニン色素及び結着樹脂を含有し、高い色再現性を有する電子写真用トナーを提供することである。
本発明者らは、鋭意、研究を重ねた結果、シリコンフタロシアニン色素の軸配位子を最適化することによって前記課題を解決して目的を達成するにいたった。本発明の目的は以下の手段により達成される。
1.下記一般式(1)で表されるシリコンフタロシアニン色素を含有することを特徴とする着色剤組成物。
Figure 2011099047
(式中、Xは−ORを表す。Rは−C(=O)NR、−SONRまたは、−C(=O)−(L)−NR、−SON−(L)−Rを表す。R、Rは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、−C(=O)NR、−SONR、−C(=O)R、−SOを表しR〜Rは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基を表す。Lは置換又は無置換の、メチレン基、エチレン基、フェニレン基を表す。RとR、RとRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに環構造を形成してもよい。Y〜Yは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基又はその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルホ基又はその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基又はその塩、リン酸アミド又はリン酸エステル構造を含む基を表す。nは1〜4を表す。複数のY〜Yは同一でも異なっていてもよい。)
2.前記一般式(1)で表されるシリコンフタロシアニン色素が固体分散法にて分散含有されていることを特徴とする前記1に記載の着色剤組成物。
3.少なくとも結着樹脂と下記一般式(1)で表されるシリコンフタロシアニン色素を含有することを特徴とする電子写真用トナー。
Figure 2011099047
(式中、Xは−ORを表す。Rは−C(=O)NR、−SONRまたは、−C(=O)−(L)−NR、−SON−(L)−Rを表す。R、Rは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、−C(=O)NR、−SONR、−C(=O)R、−SOを表しR〜Rは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基を表す。Lは置換又は無置換の、メチレン基、エチレン基、フェニレン基を表す。RとR、RとRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに環構造を形成してもよい。Y〜Yは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基又はその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルホ基又はその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基又はその塩、リン酸アミド又はリン酸エステル構造を含む基を表す。nは1〜4を表す。複数のY〜Yは同一でも異なっていてもよい。)
本発明により、高い明度を有し、耐光性、耐熱性に代表される使用環境の変動に対しての高い堅牢性を有するシリコンフタロシアニン色素を含有する着色剤組成物を提供することができた。また、このシリコンフタロシアニン色素を含有し、高い色再現性を有する電子写真用トナーを提供することができた。
二成分系現像方式の画像形成が可能なタンデム型フルカラー画像形成装置の一例を示す概略図である。 非磁性一成分系現像方式の画像形成が可能な4サイクル型フルカラー画像形成装置の概略図である。 現像装置(トナーカートリッジ)の一例を示す概略図である。 ベルトと加熱ローラを用いたベルト定着方式の定着装置の一例を示す概略図である。
以下に、本発明を詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明は、一般式(1)で表されるシリコンフタロシアニン色素を含有する着色剤組成物及び該シリコンフタロシアニン色素及び結着樹脂を含有する電子写真用トナーに係る。
本発明の一般式(1)で表されるシリコンフタロシアニン色素に関して以下詳細に説明する。
《一般式(1)で表される化合物》
本発明のシリコンフタロシアニン色素は下記一般式(1)で表される。
Figure 2011099047
一般式(1)において、軸配位子Xは−ORを表す。Rは−C(=O)NR、−SONRまたは、−C(=O)−(L)NR、−SON−(L)−Rを、表す。R、Rは水素原子、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等)、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)、アリール基(フェニル基、ナフチル基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、−C(=O)NR、−SONR、−C(=O)R、−SOを表し、さらに上記の基によって置換されていてもよい。
〜Rは上記R、Rと同義であり、置換基の有無についても同様である。
前記一般式(1)中のRとR、RとRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに環構造を形成してもよい。
Rとしては−SONR、−SON−(L)−Rが好ましく、R、Rとしては水素原子、アルキル基、アリール基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜6のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子及び炭素数1〜4の直鎖アルキル基であり、メチル基、エチル基が最も好ましい。
前記一般式(1)においてLは置換又は無置換の、メチレン基、エチレン基、フェニレン基を表す。
前記一般式(1)において、Y〜Yは水素原子、ハロゲン原子(フッ素原子、クロル原子、臭素原子、又は沃素原子等)、アルキル基(アラルキル基、シクロアルキル基、および活性メチン基等を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基又はその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリール、又はヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、(アルキル、アリール、又はヘテロ環)チオ基、(アルキル、アリール、又はヘテロ環)スルホニル基、(アルキル又はアリール)スルフィニル基、スルホ基又はその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基又はその塩、リン酸アミド又はリン酸エステル構造を含む基が挙げられ、これらは更に上記によって置換されていてもよい。
〜Yとして好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、アルキルチオ基、アリールチオ基であり、より好ましくは水素原子、クロル原子、アルコキシ基、ニトロ基であり、最も好ましくは水素原子、塩素原子、メチル基、メトキシ基、tert−ブチル基、tert−ブトキシ基である。
前記一般式(1)中、nは1〜4を表し、複数のY〜Yは同一でも異なっていてもよい。
以下に、本発明の一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明の化合物はこれによってなんら限定される物ではない。
Figure 2011099047
Figure 2011099047
Figure 2011099047
Figure 2011099047
Figure 2011099047
Figure 2011099047
Figure 2011099047
Figure 2011099047
本発明の組成物における、一般式(1)で表される化合物は従来公知の方法で合成することできる。
例えば、所望の環構造或いは置換基を有するフタロニトリル又はイソインドリン類縁化合物と4塩化ケイ素をキノリン中もしくは強塩基と高沸点溶媒中で反応させて、ジクロロシリコンフタロシアニン、ジヒドロキシシリコンフタロシアニンを得た後に、軸配位子たる、酸化合物、エステル化合物、酸ハライドと必要であれば酸性または塩基性条件下で反応させることにより、合成をすることができる。
以下に一般式(1)で表される化合物の合成例を示す。
《合成例》
1.ジクロロシリコンフタロシアニンの合成
1,3−ジイミノイソインドリン43.5gおよび四塩化ケイ素73.5gをキノリン500ml中に添加し、窒素雰囲気下、210〜220℃で1時間反応させた。生成物を180℃で熱ろ過し、キノリン、アセトンの順で洗浄した。次いで、アセトン300ml中で加熱還流した後、結晶をろ別し、乾燥してジクロロシリコンフタロシアニン38.7gを得た。
2.化合物C−5の合成
上記1.で得たジクロロシリコンフタロシアニン5.0gをジエチレングリコールジメチルエーテル200mlに添加し、さらにN,N−ジエチルグリシンナトリウム塩6.0gを加えて、窒素雰囲気化160〜170℃で4時間反応させた。冷却後生成物をろ過し、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、メタノールの順で洗浄した。次いで、メタノール100ml中で懸濁洗浄して再度濾過し、乾燥して化合物C−5を2.62g得た。
3.化合物C−32の合成
上記2の化合物C−5の合成において、N,N−ジエチルグリシンナトリウム塩6.0gをN−メチルスルファミン酸4.0gに変更した以外は同様に行い、化合物C−32を2.98g得た。
本発明は、着色剤組成物に前記一般式(1)で表される色素が含有されていることを特徴とする。
本発明の着色組成物とは、前記一般式(1)で表される色素が含有されているものであれば何れでもよいが、例えば、本発明の色素を含有する可視光線吸収フィルター、インク、光記録媒体、カラーフィルター及び電子写真用トナーが挙げられる。
さらに、前記一般式(1)で表される色素が、固体分散法により分散され着色剤組成物に含有されていることが好ましい。これは、固体分散されて含有されていることにより、拡散性、ブリードが抑えられ、色素の耐光性、耐熱性が改善されるためである。
(色素固体分散物の作製方法)
本発明において好ましい固体分散物の作製方法について説明する。
本発明において色素固体分散物は、例えば色素を酢酸エチル、トルエンなどの水非混和性有機溶剤中に溶解(或いは分散)し、水中で乳化分散後、有機溶剤を除去する液中乾燥法により得ることができる。また色素が固体で分散できる場合には上記液中乾燥法でなくとも界面活性剤を加えた水中に固体の色素を乳化分散させてもよい。乳化分散機は限定されるものではないが、例えば超音波分散機、高速攪拌型分散機が用いられる。
また、本発明の着色剤組成物においてはその用途に応じて、界面活性剤、樹脂(ポリマー)を始めとする添加剤が各用途において最適な組成物となるように添加されることが好ましい。
その際の各添加剤については以下の目的用途の項においてさらに詳細に説明する。
次に、本発明のシリコンフタロシアニン色素を用いたインク、光記録媒体、カラーフィルター及び電子写真用トナーについて詳細に説明する。
《インク》
本発明の色素を含有するインクは、インクジェット記録液として画像記録に用いられ、本発明の色素を1種類のみ使用したものであっても、2種類以上の色素を併用したものであってもよく、また本発明外の色素、顔料と併用したものであってもよい。
本発明の色素を含有するインクジェット記録液は水系溶媒、油系溶媒、固体(相変化)溶媒等の種々の溶媒系を用いることができ、特に水系溶媒を用いたとき本発明の効果を発揮する。水系溶媒は、水(例えば、イオン交換水が好ましい)と水溶性有機溶媒を一般に使用する。
水溶性有機溶媒の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
上記のような水系溶媒は、本発明の色素がその溶媒系に可溶であればそのまま溶解して用いることができる。
一方、本発明の色素がその溶媒系にそのままでは不溶である場合、色素を種々の分散機(例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテーターミル、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、ジェットミル、オングミル等)を用いて微粒子化するか、あるいは可溶である有機溶媒に色素を溶解した後に、高分子分散剤や界面活性剤とともにその溶媒系に分散させることができる。さらに、そのままでは不溶の液体または半溶融状物である場合、そのままか、あるいは可溶である有機溶媒に溶解して、高分子分散剤や界面活性剤とともにその溶媒系に分散させることができる。
本発明の色素がその溶媒系に不溶である場合には、微粒子化させてその溶媒系に分散させることが好ましく、平均粒子経が150nm以下の微粒子に分散されていることがさらに好ましい。
前記平均粒子経とは体積平均粒子径のことであり、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の投影面積(少なくとも100粒子以上に対して求める)の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して求められる。体積平均粒子径とその標準偏差を求め、標準偏差を体積平均粒子径で割ることで変動係数を求めることができる。あるいは、体積平均粒子径とその標準偏差は動的光散乱法を利用して求めることもできる。
また、本発明の化合物の分散微粒子化物を油溶性ポリマーと共に微粒子分散物として水系溶媒に分散させることが好ましい。
このようなインクジェット記録液用に使用される水系溶媒の具体的調製法については、例えば、特開平5−148436号、同5−295312号、同7−97541号、同7−82515号、同7−118584号の各公報等に記載の方法を参照することができる。
次に、油溶性ポリマーについて説明する。前記油溶性ポリマーとしては特に制限はなく、目的に応じて上記の分散剤群から適宜選択することができるが、ビニルポリマーが好適に挙げられる。該ビニルポリマーとしては、従来公知のものが挙げられ、水不溶性型、水分散(自己乳化)型、水溶性型のいずれのものであってもよいが、着色微粒子の製造容易性、分散安定性等の点で水分散型のものが好ましい。
前記水分散型のビニルポリマーとしては、イオン解離型のもの、非イオン性分散性基含有型のもの、あるいはこれらの混合型のもののいずれであってもよい。
前記イオン解離型のビニルポリマーとしては、三級アミノ基等のカチオン性の解離性基を含有するビニルポリマーや、カルボン酸、スルホン酸等のアニオン性の解離性基を含有するビニルポリマーが挙げられる。前記非イオン性分散性基含有型のビニルポリマーとしては、ポリエチレンオキシ鎖等の非イオン性分散性基を含有するビニルポリマーが挙げられる。これらの中でも、着色微粒子の分散安定性の点で、アニオン性の解離性基を含有するイオン解離型のビニルポリマー、非イオン性分散性基含有型のビニルポリマー、混合型のビニルポリマーが好ましい。
前記ビニルポリマーを形成するモノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。即ち、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ビニルエステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、オレフィン類、ビニルエーテル類等が挙げられる。その他のモノマーとして、クロトン酸ブチル、クロトン酸ヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジブチル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、ビニリデンクロライド、メチレンマロンニトリル、ビニリデン、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
また、解離性基を有するモノマーとしては、アニオン性の解離性基を有するモノマー、カチオン性の解離性基を有するモノマーが挙げられる。
前記アニオン性の解離性基を有するモノマーとしては、例えば、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリルアミドアルキルスルホン酸、メタクリルアミドアルキルスルホン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸がより好ましい。
前記カチオン性の解離性基を有するモノマーとしては、例えば、ジアルキルアミノエチルメタクリレート、ジアルキルアミノエチルアタクリレート等の3級アミノ基を有するモノマーが挙げられる。
また、非イオン性分散性基を含有するモノマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとカルボン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとスルホン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとリン酸モノマーとのエステル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとイソシアネート基含有モノマーから形成されるビニル基含有ウレタン、ポリビニルアルコール構造を含有するマクロモノマー等が挙げられる。前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのエチレンオキシ部の繰り返し数としては、8〜50が好ましく、10〜30がより好ましい。前記ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルのアルキル基の炭素原子数としては1〜20が好ましく、1〜12がより好ましい。
これらのモノマーは1種単独で使用されてビニルポリマーが形成されていてもよいし、2種以上が併用されてビニルポリマーが形成されていてもよく、前記ビニルポリマーの目的(Tg調節、溶解性改良、分散物安定性等)に応じて適宜選択することができる。
本発明に使用される油系溶媒は有機溶媒を使用する。油系溶媒の例としては、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、炭化水素類、アミド類等が挙げられる。
上記のような油系溶媒は本発明の化合物を樹脂状分散剤や結合剤を併用して分散(または溶解)させて用いることもでき、粘度調整等の観点から分散剤と併用して用いられることがより好ましい。
このようなインクジェット記録液に使用される油系溶媒の具体的調製法については、特開平3−231975号、同5−508883号の各公報に記載の方法を参照することができる。
本発明に使用される固体(相変化)溶媒は溶媒として室温で固体であり、かつインクジェット記録液の加熱噴射時には溶融した液体状である相変化溶媒を使用する。
このような相変化溶媒としては、天然ワックス(例えば、密ロウ、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、鯨ロウ、カンデリラワックス、ラノリン、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等)、ポリエチレンワックス誘導体、塩素化炭化水素、有機酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、チグリン酸、2−アセトナフトンベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸等)、有機酸エステル(例えば、上記した有機酸のグリセリン、ジエチレングリコール、エチレングリコール等のアルコールとのエステル等)、アルコール(例えば、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、ドデセノール、ミリシルアルコール、テトラセノール、ヘキサデセノール、エイコセノール、ドコセノール、ピネングリコール、ヒノキオール、ブチンジオール、ノナンジオール、イソフタリルアルコール、メシセリン、テレアフタリルアルコール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ドコサンジオール、テトラコサンジオール、テレビネオール、フェニルグリセリン、エイコサンジオール、オクタンジオール、フェニルプロピレングリコール、ビスフェノールA、パラアルファクミルフェノール等)、ケトン(例えば、ベンゾイルアセトン、ジアセトベンゼン、ベンゾフェノン、トリコサノン、ヘプタコサノン、ヘプタトリアコンタノン、ヘントリアコンタノン、ヘプタトリアコンタノン、ステアロン、ラウロン、ジアニソール等)、アミド(例えば、オレイン酸アミド、ラウリル酸アミド、ステアリン酸アミド、リシノール酸アミド、パルミチン酸アミド、テトラヒドロフラン酸アミド、エルカ酸アミド、ミリスチン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N′−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N′−メチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビスベヘン酸アミド、N,N′−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ブチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N′−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N′−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N′−システアリルセバシン酸アミド、N,N′−ジステアリルテレフタル酸アミド、N,N′−ジステアリルイソフタル酸アミド、フェナセチン、トルアミド、アセトアミド、オレイン酸2量体/エチレンジアミン/ステアリン酸(1:2:2のモル比)のような2量体酸とジアミンと脂肪酸の反応生成物テトラアミド等)、スルホンアミド(例えば、パラトルエンスルホンアミド、エチルベンゼンスルホンアミド、ブチルベンゼンスルホンアミド等)、シリコーン類(例えば、シリコーンSH6018(東レシリコーン)、シリコーンKR215、216、220(信越シリコーン)等)、クマロン類(例えば、エスクロンG−90(新日鐵化学)等)、コレステロール脂肪酸エステル(例えば、ステアリン酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、ベヘン酸コレステロール、ラウリン酸コレステロール、メリシン酸コレステロール等)、糖類脂肪酸エステル(ステアリン酸サッカロース、パルミチン酸サッカロース、ベヘン酸サッカロース、ラウリン酸サッカロース、メリシン酸サッカロース、ステアリン酸ラクトース、パルミチン酸ラクトース、ミリスチン酸ラクトース、ベヘン酸ラクトース、ラウリン酸ラクトース、メリシン酸ラクトース等)が挙げられる。
固体(相変化)溶媒の固体−液体相変化における相変化温度は、60〜200℃であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましい。
上記のような固体(相変化)溶媒は、加熱した溶融状態の溶媒に本発明の色素をそのまま溶解させて用いることができ、また樹脂状分散剤や結合剤を併用して分散または溶解させて用いることもできる。
このような相変化溶媒の具体的調製法については、特開平5−186723号、同7−70490号の各公報に記載の方法を参照することができる。
上記したような水系、油系、固体(相変化)溶媒を使用し、本発明の色素を溶解あるいは分散した本発明に係るインクジェット記録液は、その飛翔時の粘度として4×10−2Pa・s以下が好ましく、3×10−2Pa・s以下であることがより好ましい。
また、本発明に係るインクジェット記録液はその飛翔時の表面張力として2×10−4〜10−3N/cmが好ましく、3×10−4〜8×10−4N/cmであることがより好ましい。
本発明の色素は、インクジェット記録液の0.1〜25質量%の範囲で使用されることが好ましく、0.5〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
本発明に使用される樹脂型分散剤としては、分子量1,000〜1,000,000の高分子化合物が好ましく、これらは使用される場合にはインクジェット記録液中に0.1〜50質量%含有されることが好ましい。
本発明に係るインクには吐出安定性、プリントヘッドやインクカートリッジ適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を添加することもできる。
本発明に係るインクはその使用する記録方式に関して特に制約はないが、特にオンデマンド方式のインクジェットプリンタ用のインクジェット記録液として好ましく使用することができる。オンデマンド型方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)、放電方式(例えば、スパークジェット型等)等を具体的な例として挙げることができる。
《光記録媒体》
次に、本発明に係る光記録媒体(光情報記録媒体)及び光情報記録方法について詳細に説明する。
本発明に係る光情報記録媒体に用いられる色素は、本発明の色素を1種類のみ使用したものであっても、2種類以上の本発明の色素を併用したものであってもよく、また本発明外の色素と併用したものであってもよい。また、記録層中の本発明の色素の含有量は、記録層全体の乾燥質量に対し30〜100質量%が好ましく、60〜100質量%がさらに好ましく、90〜100質量%が最も好ましい。さらに本発明に係る記録層には、本発明の効果に影響を与えない範囲で従来の光情報記録媒体に用いることのできる色素を本発明における色素と併用してもよい。
本発明に係る光情報記録媒体には種々の構成のものが含まれる。本発明に係る光情報記録媒体は、一定のトラックピッチのプレグルーブが形成された円盤状基板上に記録層、光反射層及び保護層をこの順に有する構成、あるいは該基板上に光反射層、記録層及び保護層をこの順に有する構成であることが好ましい。また、一定のトラックピッチのプレグルーブが形成された透明な円盤状基板上に記録層及び光反射層が設けられてなる二枚の積層体が、それぞれの記録層が内側となるように接合された構成も好ましい。
本発明に係る光情報記録媒体は、より高い記録密度を達成するためにCD−RやDVD−Rに比べて、より狭いトラックピッチのプレグルーブが形成された基板を用いることが可能である。本発明の光情報記録媒体の場合、該トラックピッチは0.2〜0.8μmの範囲にあることが好ましく、さらに0.2〜0.5μmの範囲にあることが好ましく、特に0.2〜0.4μmの範囲にあることが好ましい。プレグルーブの深さは0.01〜0.18μmの範囲にあることが好ましく、さらに0.01〜0.15μmの範囲にあることが好ましく、特に0.02〜0.15μmの範囲にあることが好ましい。隣接するプレグルーブの幅は0.05〜0.4μmの範囲にあることが好ましく、さらに0.08〜0.3μmの範囲にあることが好ましく、特に0.1〜0.25μmの範囲にあることが好ましい。
本発明に係る光情報記録媒体として、円盤状の基板上に記録層、光反射層及び保護層をこの順に有する構成のものを例にとって、以下にその製造方法を説明する。
本発明に係る光情報記録媒体の基板は、記録・再生に用いるレーザ光の波長領域(350〜900nm)において実質的に透明(透過率が80%以上)であることが必要とされ、従来の光情報記録媒体の基板として用いられている各種の材料から任意に選択することができる。基板材料としては、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィン及びポリエステル等を挙げることができ、所望によりそれらを併用してもよい。なお、これらの材料はフィルム状としてまたは剛性のある基板として使うことができる。上記材料の中では、耐湿性、寸法安定性及び価格等の点からポリカーボネートが好ましい。
記録層が設けられる側の基板表面には、平面性の改善、接着力の向上及び記録層の変質防止の目的で下塗層が設けられてもよい。下塗層の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N−メチロールアクリルアミド、スチレン−ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の高分子物質、及びシランカップリング剤等の表面改質剤を挙げることができる。下塗層は、上記物質を適当な溶剤に溶解または分散して塗布液を調製した後、この塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート等の塗布法により基板表面に塗布することによって形成することができる。下塗層の層厚は一般に0.005〜20μmの範囲にあり、好ましくは0.01〜10μmの範囲である。
記録層の形成は蒸着、スパッタリング、CVDまたは溶剤塗布等の方法によって行うことができ、その中でも溶剤塗布が好ましい。この場合、前記色素を分散(又は溶解)、さらに所望によってクエンチャー、結合剤等を溶剤に溶解して塗布液を調製し、次いでこの塗布液を基板表面に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することによって行うことができる。
塗布液の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;ジブチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、あるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液中にはさらに酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
結合剤を使用する場合に、結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;及びポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子を挙げることができる。
記録層の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、一般に金属錯体に対して0.01〜50倍量(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1〜5倍量(質量比)の範囲にある。このようにして調製される塗布液中の色素の濃度は、一般に0.01〜10質量%の範囲にあり、好ましくは0.1〜5質量%の範囲にある。
塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。
記録層は単層でも重層でもよい。記録層の層厚は一般に0.01〜0.5μmの範囲にあり、好ましくは0.015〜0.3μmの範囲にあり、より好ましくは0.02〜0.1μmの範囲にある。
なお、光記録媒体を構成する記録層には、他の種類の色素、各種樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、分散剤、酸化防止剤、架橋剤等が含まれていてもよい。記録層は、基板の一面上に形成されていてもよく、基板の両面上に形成されていてもよい。
記録層には記録層の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。上記褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。その具体例としては、特開昭58−175693号、同59−81194号、同60−18387号、同60−19586号、同60−19587号、同60−35054号、同60−36190号、同60−36191号、同60−44554号、同60−44555号、同60−44389号、同60−44390号、同60−54892号、同60−47069号、同63−209995号、特開平4−25492号、特公平1−38680号、及び同6−26028号等の各公報、ドイツ特許350,399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。好ましい一重項酸素クエンチャーの例としては、下記一般式(B)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 2011099047
式中、Raは置換基を有していてもよいアルキル基を表し、Qはアニオンを表す。Raは置換されていてもよい炭素原子数1〜8のアルキル基が一般的であり、無置換の炭素原子数1〜6のアルキル基が好ましい。アルキル基の置換基としては、ハロゲン原子(例えば、F、Cl)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ、プロピオニルオキシ)、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、アルケニル基(例えば、ビニル)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル)を挙げることができる。これらの中で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基が好ましい。Qのアニオンの好ましい例としては、ClO 、AsF 、BF 、及びSbF を挙げることができる。
一般式(B)で表される化合物の例を表1に示す。
Figure 2011099047
前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、本発明に係る金属錯体の量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは0.5〜45質量%の範囲、さらに好ましくは0.5〜40質量%の範囲、特に好ましくは1〜25質量%の範囲である。
記録層に隣接して、情報の再生時における反射率の向上の目的で光反射層を設けることが好ましい。光反射層の材料である光反射性物質はレーザ光に対する反射率が高い物質であり、その例としては、Mg、Se、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Te、Pb、Po、Sn、Bi等の金属及び半金属あるいはステンレス鋼を挙げることができる。
これらの物質は単独で用いてもよいし、あるいは二種以上の組み合わせで、または合金として用いてもよい。これらのうちで好ましいものは、Cr、Ni、Pt、Cu、Ag、Au、Al及びステンレス鋼である。特に好ましくはAu金属、Ag金属、Al金属或いはこれらの合金であり、最も好ましくはAg金属、Al金属あるいはそれらの合金である。
光反射層は、例えば、上記光反射性物質を蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングすることにより基板もしくは記録層の上に形成することができる。光反射層の層厚は一般的には0.01〜0.3μmの範囲にあり、0.05〜0.2μmの範囲にあることが好ましい。
光反射層もしくは記録層の上には、記録層等を物理的及び化学的に保護する目的で保護層を設けることが好ましい。なお、DVD−R型の光情報記録媒体を製造する場合と同様の形態、即ち二枚の基板を用いて記録層を内側に貼り合わせる構成をとる場合は、必ずしも保護層の付設は必要ではない。
保護層に用いられる材料の例としては、Zn−SiO、ZnS、SiO、SiO、MgF、SnO、Si等の無機物質、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、UV硬化性樹脂等の有機物質を挙げることができる。保護層は、例えばプラスチックの押出加工で得られたフィルムを、接着剤を介して反射層上にラミネートすることによって形成することができる。あるいは真空蒸着、スパッタリング、塗布等の方法により設けてもよい。
また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の場合には、これらを適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を塗布し、乾燥することによっても形成することができる。UV硬化性樹脂の場合には、そのまま、もしくは適当な溶剤に溶解して塗布液を調製した後、この塗布液を塗布し、UV光を照射して硬化させることによっても形成することができる。これらの塗布液中には、さらに帯電防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤等の各種添加剤を目的に応じて添加してもよい。保護層の層厚は一般には0.1μm〜1mmの範囲にある。
以上の工程によって、基板上に記録層、光反射層そして保護層、あるいは基板上に光反射層、記録層そして保護層が設けられた積層体を製造することができる。
本発明に係る光情報記録方法は、上記光情報記録媒体を用いて、例えば、次のように行われる。まず光情報記録媒体を定線速度(DVD−Rフォーマットの場合は3.84m/秒)または定角速度にて回転させながら、基板側あるいは保護層側から半導体レーザ光等の記録用の光を照射する。この光の照射により、記録層がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的あるいは化学的変化(例えば、ピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより、情報が記録されると考えられる。
本発明においては、記録光として300〜900nmの範囲の発振波長を有する半導体レーザ光が用いられる。本発明に係る光情報記録媒体の記録、再生を行う光源としては、固体レーザ、ガスレーザ、色素レーザ、半導体レーザ等が挙げられる。本発明に係る金属錯体は特に高い記録感度を有していることから、635nmや650nmの半導体レーザや532nmのYAG高調波レーザ等を用いた記録、再生に適している。一方、400〜410nmの範囲の発振波長を有する青紫色半導体レーザ光、中心発振波長850nmまたは820nmの赤外半導体レーザ光を、光導波路素子を使って半分の波長にした、中心発振波長がそれぞれ425nmまたは410nmの青紫色SHGレーザ光も好ましい光源として挙げることができる。特に記録密度の点で青紫色半導体レーザ光を用いることが好ましい。上記のように記録された情報の再生は、光情報記録媒体を上記と同一の定線速度で回転させながら半導体レーザ光を基板側あるいは保護層側から照射して、その反射光を検出することによって行うことができる。
《カラーフィルター》
本発明の色素をカラーフィルター用途に用いるにあたり、本発明の色素を樹脂ワニスへ分散させる場合には、二本ロールミル、三本ロールミル、サンドミル、ニーダー等の各種分散手段を使用できる。
本発明において、樹脂ワニスとしては従来公知のカラーフィルター用着色組成物に使用されるワニスが用いられる。また、分散媒体としては樹脂ワニスに適切な溶剤あるいは水系媒体が使用される。また、必要に応じて従来公知の添加剤、例えば、分散助剤、平滑化剤及び密着化剤等が添加使用される。
樹脂ワニスとしては、感光性の樹脂ワニスと非感光性樹脂ワニスが使用される。感光性樹脂ワニスとしては、例えば、紫外線硬化性インキ、電子線硬化性インキ等に用いられる感光性樹脂ワニスであり、非感光性樹脂ワニスとしては、例えば、凸版インキ、平版インキ、凹版グラビヤインキ、孔版スクリーンインキ等の印刷インキに使用するワニス、電着塗装に使用するワニス、電子印刷や静電印刷の現像剤に使用するワニス、熱転写リボンに使用するワニス等のいずれもが使用できる。
感光性樹脂ワニスの例としては、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリメタクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂等、及び不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂等のワニスであり、さらに反応性希釈剤としてモノマーが加えられたワニスが挙げられる。本発明の色素と上記のワニスにベンゾインエーテル、ベンゾフェノン等の光重合開始剤を加え、従来公知の方法により煉肉することにより、感光性着色組成物とすることができる。また、上記の光重合開始剤に代えて熱重合開始剤を使用して熱重合性着色組成物とすることができる。
上記の感光性着色組成物を用いてカラーフィルターのパターンを形成する場合には、透明基板上に該感光性着色組成物をスピンコート、低速回転コーターやロールコーターやナイフコーター等を用いて全面コーティングを行うか、あるいは各種の印刷方法による全面印刷またはパターンよりやや大きな部分印刷を行い、予備乾燥後フォトマスクを密着させ、超高圧水銀灯を使用して露光を行ってパターンを焼き付けする。次いで、現像及び洗浄を行い、必要に応じポストベークを行うことによりカラーフィルターのパターンを形成することができる。
非感光性の樹脂のワニスの例としては、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、カゼイン、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の水溶性塩、水溶性アミノアルキッド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂等が挙げられ、単独あるいは組み合わせて使用される。
上記の非感光性着色組成物を用いてカラーフィルターのパターンを形成する場合には、透明基板上に該非感光性着色組成物、例えば、カラーフィルター用印刷インキを用いて上記した各種の印刷方法にて直接基板に着色パターンを印刷する方法、カラーフィルター用水性電着塗装組成物を用いて電着塗装により基板に着色パターンを形成させる方法、電子印刷方法や静電印刷方法を用いたり、あるいは転写性基材に上記の方式等で一旦着色パターンを形成させてからカラーフィルター用基板に転写する方法等が挙げられる。次いで、常法に従い必要に応じてベーキングを行ったり、表面の平滑化のための研磨を行ったり、表面の保護のためのトップコーティングを行う。また、常法に従いブラックマトリックスを形成させ、RGBカラーフィルターを得る。
《トナー》
本発明に係る電子写真用トナーは、一般式(1)で表したシリコンフタロシアニン色素を有する着色剤を用いたトナーとすることにより、耐光性、耐オゾンガス性に優れ従来のトナー画像や印刷インクを用いた画像よりも広く安定した色再現性を発現することが可能になった。特に、近年ではコンピュータ画面に表示した画像をプリントアウトするケースが多いが、従来のカラー印刷の色域はコンピュータのディスプレイの色域よりもはるかに狭かったため、ディスプレイ上の画像とプリント出力したものとの色合いに大きな差があらわれた。しかしながら、本発明に係る電子写真用トナーを用いることにより、従来よりもコンピュータのディスプレイの色域に近いプリント画像が得られる様になる。この様に、本発明に係る電子写真用トナーは、プリント画像における色域の拡大に大きく貢献しているものといえる。
(併用色素)
本発明に係る電子写真用トナーは、後述する複合樹脂粒子と、着色剤粒子とを塩析/融着して得られる。
本発明に係る電子写真用トナーを構成する着色剤(複合樹脂粒子との塩析/融着に供される着色剤粒子)としては、本発明の色素の他に各種の無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
磁性トナーとして使用する際には、前記マグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
有機顔料及び染料としても従来公知のものを用いることができる。具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
また、染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。
本発明に係る電子写真用トナーを構成する着色剤(着色剤粒子)は、表面改質されていてもよい。表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を好ましく用いることができる。シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。チタンカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクト」と称する商品名で市販されているTTS、9S、38S、41B、46B、55、138S、238S等、日本曹達社製の市販品A−1、B−1、TOT、TST、TAA、TAT、TLA、TOG、TBSTA、A−10、TBT、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA−400、TTS、TOA−30、TSDMA、TTAB、TTOP等が挙げられる。アルミニウムカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクトAL−M」等が挙げられる。
これらの表面改質剤の添加量は、着色剤に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜5質量%とされる。
着色剤粒子の表面改質法としては、着色剤粒子の分散液中に表面改質剤を添加し、この系を加熱して反応させる方法を挙げることができる。
表面改質された着色剤粒子は、濾過により採取され、同一の溶媒による洗浄処理と濾過処理が繰り返された後、乾燥処理される。
本発明に係る電子写真用トナーの好ましい形態の一つとしては色材が油溶性染料であることが挙げられる。油溶性染料は通常カルボン酸やスルホン酸等の水溶性基を有さない有機溶剤に可溶で水に不溶な染料であるが、水溶性染料を長鎖の塩基と造塩することにより油溶性を示す染料も含まれる。例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料と長鎖アミンとの造塩染料が知られている。
以下に限定されるものではないが、例えば、オリエント化学工業株式会社製のValifast Yellow 4120、Valifast Yellow 3150、Valifast Yellow 3108、Valifast Yellow 2310N、Valifast Yellow 1101、Valifast Red 3320、Valifast Red 3304、Valifast Red 1306、Valifast Blue 2610、Valifast Blue 2606、Valifast Blue 1603、Oil Yellow GG−S、Oil Yellow 3G、Oil Yellow 129、Oil Yellow 107、Oil Yellow 105、Oil Scarlet 308、Oil Red RR、Oil Red OG、Oil Red 5B、Oil Pink 312、Oil Blue BOS、Oil Blue 613、Oil Blue 2N、Oil Black BY、Oil Black BS、Oil Black 860、Oil Black 5970、Oil Black 5906、Oil Black 5905、日本化薬株式会社製のKayaset Yellow SF−G、Kayaset Yellow K−CL、Kayaset Yellow GN、Kayaset Yellow A−G、Kayaset Yellow 2G、Kayaset Red SF−4G、Kayaset Red K−BL、Kayaset Red A−BR、Kayaset Magenta 312、Kayaset Blue K−FL、有本化学工業株式会社製のFS Yellow 1015、FS Magenta 1404、FS Cyan 1522、FS Blue 1504、C.I.Solvent Yellow 88、83、82、79、56、29、19、16、14、04、03、02、01、C.I.Solvent Red 84:1、C.I.Solvent Red 84、218、132、73、72、51、43、27、24、18、01、C.I.Solvent Blue 70、67、44、40、35、11、02、01、C.I.Solvent Black 43、70、34、29、27、22、7、3、C.I.Solvent Violet 3、C.I.Solvent Green 3及び7、Plast Yellow DY352、Plast Red 8375、三井化学社製MS Yellw HD−180、MS Red G、MS Magenta HM−1450H、MS Blue HM−1384、住友化学社製ES Red 3001、ES Red 3002、ES Red 3003、TS Red 305、ES Yellow 1001、ES Yellow 1002、TS Yellow 118、ES Orange 2001、ES Blue 6001、TS Turq Blue 618、Bayer社製MACROLEX Yellow 6G、Ceres Blue GNNEOPAN Yellow O75、Ceres Blue GN、MACROLEX Red Violet R等が挙げられる。
油溶性染料として分散染料を用いることができ、以下に限定されるものではないが、例えば、C.I.ディスパーズイエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、204、224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;C.I.ディスパーズレッド54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;C.I.ディスパーズバイオレット33;C.I.ディスパーズブルー56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368並びにC.I.ディスパーズグリーン6:1及び9等が挙げられる。
その他、油溶性染料として、フェノール、ナフトール類、ピラゾロン、ピラゾロトリアゾールなどの環状メチレン化合物、開鎖メチレン化合物などのカプラーから誘導されるアゾメチン色素、インドアニリン色素なども好ましく用いられる。
(着色剤含有量)
本発明に係る電子写真用トナーは一般式(1)で表されるシリコンフタロシアニン色素を含有する着色剤の含有量が結着樹脂に対して2〜20質量%の範囲が好ましく、更に着色剤が3〜15質量%含有されることで、十分な濃度が得られ、樹脂による着色剤の保護能を発現することができる。
また、着色剤の保存性を向上させるために画像安定化剤として例えば特開平8−29934公報の10〜13頁に記載及び引用されている化合物を添加してもよく、市販されているフェノール系、アミン系、硫黄系、リン系の化合物なども挙げられる。同様の目的で紫外線吸収剤として例えば有機系紫外線吸収剤や無機系紫外線吸収剤を添加してもよい。有機系紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、フェニルサルシレート、4−t−ブチルフェニルサルシレート、2,5−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸n−ヘキサデシルエステル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンゾエート等のヒドロキシベンゾエート系化合物等を挙げられる。無機系紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、硫酸バリウム等を挙げることが出来るが、有機系紫外線吸収剤の方が好ましく、紫外線吸収剤としては、50%透過率での波長が350〜420nmが好ましく、より好ましくは360nm〜400nmであり、350nmより低波長では、紫外線遮断能が弱く、420nmより高波長では着色が強くなり好ましくない。添加量については特に制限はないが、色素に対して10〜200質量%の範囲が好ましく、50〜150質量%がより好ましい。また、これらを併用して用いることも好ましい。
(シラノール化合物)
本発明に係る電子写真用トナー中には下記一般式(2)で表されるシラノール化合物を含有していることが好ましい。
一般式(2)
(Rs)Si(OH)
前記一般式(2)において、Rsは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基又はシロキシ基を表し、m及びnは各々1〜3の整数を表しm+n=4である。mが2又は3の時、Rsは同じであっても異なっていてもよい。
前記一般式(2)において、Rsで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、n−オクチル基等が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。複素環基としてはピリジル基、ピリミジル基、キノリル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−オクトキシ基等が挙げられる。これらは更に前述の一般式(1)のR〜Rで挙げられた置換基によって置換されていてもよい。Rsとして好ましくは水素原子、炭素数1から12のアルキル基、アリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、シロキシ基であり、シロキシ基の場合はオリゴマーであり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基である。
本発明に係る有機シラノール化合物は、当該分野の知識を有するものが、公知の方法に従って容易に合成し得ることができ、また市販品として入手することもできる。例えば特開昭63−22759号公報、同63−316789号、同63−5093号、特開平3−157388号、同平6−256355号、同平8−143581号、同2002−20390号などが参考文献として挙げられる。
以下に、本発明に係る一般式(2)で表される化合物の具体的な構造を示すが、置換基の置換位置による構造異性体についてはその一例が示してあるだけで、これにより限定されない。
Figure 2011099047
Figure 2011099047
前記一般式(2)で表されるシラノール化合物の含有量は、特に限定はないが電子写真用トナーに対し、好ましくは100〜500ppmであり、更に好ましくは100〜350ppmである。本発明に係る有機シラノール化合物の含有量が100ppm以上とすることにより、本発明の目的効果を発揮することができ、また500ppm以下とすることにより、静電荷像現像用トナーが柔らかくなりすぎず、トナー保存性の劣化や定着率の低下、あるいは臭気が問題にならないので好ましい。
前記一般式(2)で表されるシラノール化合物の製造工程における添加量は、電子写真用トナーに対して100〜350ppmであることが好ましく、添加量をこの範囲とすることにより、トナー中の離型剤(ワックス)の分散性向上に効果を発揮することができ、かつ減圧乾燥後のトナー中での有機シラノール化合物の残留量を、本発明で規定する範囲に設定することができるが、これに限定されない。
前記一般式(2)で表されるシラノール化合物の電子写真用トナーへの添加方法としては、例えば下記の重合性単量体を水系媒体中で重合して樹脂を製造する工程を含む重合法トナーの場合には、シラノール化合物を着色剤分散液の調製時に添加する方法が好ましいが、その他に樹脂粒子調製時に重合性単量体に添加する方法も挙げることができる。重合法トナーの製法が、下記の多段重合法である場合には、離型剤の添加と同時に添加する方法も挙げられる。
本発明において、有機シラノール化合物の定量方法は、ヘッドスペース方式のガスクロマトグラフにより、内部標準法等の通常のガスクロマトグラフで使用される検出方法を使用して測定する。この方法は、トナーを開閉容器中に封入し、複写機等の熱定着時程度に加温し、容器中に揮発成分が充満した状態で速やかに容器中のガスをガスクロマトグラフに注入して揮発成分量を測定するとともに、MS(質量分析)も行うものである。
以下に、ヘッドスペースガスクロマトグラフによる測定法を詳細に説明する。
〈ヘッドスペースガスクロマトグラフ測定方法〉
1.試料の採取
20mlヘッドスペース用バイアルに0.8gの試料を採取する。試料量は、0.01gまで秤量する(単位質量あたりの面積を算出するのに必要)。専用クリンパーを用いて、バイアルをセプタムを用いてシールする。
2.試料の加温
170℃の恒温槽に試料を立てた状態で入れ、30分間加温する。
3.ガスクロマトグラフ分離条件の設定
質量比で15%になるようにシリコンオイルSE−30でコーティングした担体を内径3mm、長さ3mのカラムに充填したものを分離カラムとして用いる。該分離カラムをガスクロマトグラフに装着し、Heをキャリアとして、50ml/分で流す。分離カラムの温度を40℃にし、15℃/分で260℃まで昇温させながら測定する。260℃到達後5分間保持する。
4.試料の導入
バイアルビンを恒温槽から取り出し、直ちにガスタイトシリンジで試料から発生したガス1mlを採取し、これを上記分離カラムに注入する。
5.計算
内部基準物質として使用した有機シラノール化合物により、予め検量線を作製し、それぞれ各成分の濃度を求める。
6.機材
(1)ヘッドスペース条件
ヘッドスペース装置
ヒューレットパッカード社製HP7694「Head Space Sampler」
温度条件
トランスファーライン:200℃
ループ温度:200℃
サンプル量:0.8g/20mlバイアル
(2)GC/MS条件
GC:ヒューレットパッカード社製HP5890
MS:ヒューレットパッカード社製HP5971
カラム:HP−624 30m×0.25mm
オーブン温度:40℃(3min)−15℃/min−260℃
測定モード:SIM
本発明に係る電子写真用トナーは、重合性単量体を水系媒体中で重合する製造方法(重合法)が好ましいが、この製造方法は、重合性単量体を懸濁重合法により重合して樹脂粒子を調製し、あるいは、必要な添加剤の乳化液を加えた液中(水系媒体中)にて単量体を乳化重合、あるいはミニエマルジョン重合を行って微粒の樹脂粒子を調製し、必要に応じて荷電制御性樹脂粒子を添加した後、有機溶媒、塩類などの凝集剤等を添加して当該樹脂粒子を凝集、融着する方法で製造するものである。
〈懸濁重合法〉
本発明に係る電子写真用トナーを製造する方法の一例としては、重合性単量体中に荷電制御性樹脂を溶解させ、着色剤や必要に応じて離型剤、さらに重合開始剤等の各種構成材料を添加し、ホモジナイザー、サンドミル、サンドグラインダー、超音波分散機などで重合性単量体に各種構成材料を溶解あるいは分散させる。この各種構成材料が溶解あるいは分散された重合性単量体を分散安定剤を含有した水系媒体中にホモミキサーやホモジナイザーなどを使用しトナーとしての所望の大きさの油滴に分散させる。その後、攪拌機構が後述の攪拌翼である反応装置(攪拌装置)へ移し、加熱することで重合反応を進行させる。反応終了後、分散安定剤を除去し、濾過、洗浄し、さらに乾燥することで本発明のトナーを調製する。なお、本発明でいうところの「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものを示す。
〈乳化重合法〉
また、本発明に係る電子写真用トナーを製造するその他の方法として好ましくは、樹脂粒子を水系媒体中で塩析/融着させて調製する方法である。この方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号、同6−329947号、同9−15904号に示す方法等を挙げることができる。すなわち、樹脂粒子と着色剤などの構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および着色剤等より構成される微粒子を複数以上塩析、凝集、融着させる方法、特に水中に、これらを、乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明に係る電子写真用トナーを形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時にアルコールなど水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
本発明に係る電子写真用トナーの製造方法においては、重合性単量体に結晶性物質を溶かした後、重合性単量体を重合させる工程を経て形成した複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる方法が好ましく用いられる。重合性単量体に結晶性物質を溶かすとき、結晶性物質を溶解させて溶かしても、溶融して溶かしてもよい。
また、本発明に係る電子写真用トナーの製造方法としては、多段重合法によって得られる複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる工程が好ましく用いられる。ここで、多段重合法について以下に説明する。
(多段重合法により得られる複合樹脂粒子の製造方法)
多段重合法を用いる場合、本発明に係る電子写真用トナーの製造方法は、以下に示す工程より構成されることが好ましい。
1:多段重合工程
2:複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させてトナー粒子を得る塩析/融着工程
3:トナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去する濾過・洗浄工程
4:洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程、
5:乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程
から構成される。
以下、各工程について、詳細に説明する。
〔多段重合工程〕
多段重合工程とは、オフセット発生防止したトナーを得るべく樹脂粒子の分子量分布を拡大させるために行う重合方法である。すなわち、1つの樹脂粒子において異なる分子量分布を有する相を形成するために重合反応を多段階に分けて行うものであって、得られた樹脂粒子がその粒子の中心より表層に向かって分子量勾配を形成させる様に意図して行うものである。例えば、はじめに高分子量の樹脂粒子分散液を得た後、新たに重合性単量体と連鎖移動剤を加えることによって低分子量の表層を形成する方法が採られている。
本発明においては、製造の安定性および得られるトナーの破砕強度の観点から三段重合以上の多段重合法を採用することが好ましい。以下に、多段重合法の代表例である二段重合法および三段重合法について説明する。この様な多段階重合反応によって得られたトナーでは破砕強度の観点から表層程低分子量のものが好ましい。
〈二段重合法〉
二段重合法は、結晶性物質を含有する高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
この方法を具体的に説明すると、先ず、結晶性物質を単量体に溶解させて単量体溶液を調製し、この単量体溶液を水系媒体(例えば、界面活性剤水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第一段重合)することにより、結晶性物質を含む高分子量の樹脂粒子の分散液を調製するものである。
次いで、この樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第二段重合)を行うことにより、樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する方法である。
〈三段重合法〉
三段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)、結晶性物質を含有する中間層及び低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。本発明に係る電子写真用トナーでは上記の様な複合樹脂粒子として存在するものである。
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第一段重合)により得られた樹脂粒子の分散液を、水系媒体(例えば、界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、上記水系媒体中に、結晶性物質を単量体に溶解させてなる単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)することにより、樹脂粒子(核粒子)の表面に、結晶性物質を含有する樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層(中間層)を形成して、複合樹脂粒子(高分子量樹脂−中間分子量樹脂)の分散液を調製する。
次いで、得られた複合樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、複合樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第三段重合)することにより、複合樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する。上記方法において、中間層を組み入れることにより、結晶性物質を微細かつ均一に分散することができ好ましい。
本発明に係る電子写真用トナーの製造方法の1態様においては、重合性単量体を水系媒体中で重合することが1つの特徴である。すなわち、結晶性物質を含有する樹脂粒子(核粒子)または被覆層(中間層)を形成する際に、結晶性物質を単量体に溶解させ、得られる単量体溶液を水系媒体中で油滴分散させ、この系に重合開始剤を添加して重合処理することにより、ラテックス粒子として得る方法である。
用いられる水系媒体とは、水50質量%〜100質量%と水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等を例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
結晶性物質を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するために好適な重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、結晶性物質を単量体に溶解した単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、油滴内でラジカル重合させる方法(以下、本発明では「ミニエマルジョン法」という。)を挙げることができ、本発明の効果をより発揮することができ好ましい。なお、上記方法において、水溶性重合開始剤に代えて、あるいは水溶性重合開始剤と共に、油溶性重合開始剤を用いてもよい。
機械的に油滴を形成するミニエマルジョン法によれば、通常の乳化重合法とは異なり、油相に溶解させた結晶性物質の脱離が少なく、形成される樹脂粒子または被覆層内に十分な量の結晶性物質を導入することができる。
ここで、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、例えば、高速回転するロータを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エムテクニック(株)製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10nm〜1000nmが好ましく、更に好ましくは50nm〜1000nmであり、特に好ましくは30nm〜300nmである。
分散粒子径に分布を持たせることで、トナー粒子中における結晶性物質の相分離構造、すなわちフェレ水平径、形状係数及びこれらの変動係数を制御してもよい。
なお、結晶性物質を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するための他の重合法として、乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法などの公知の方法を採用することもできる。また、これらの重合法は、複合樹脂粒子を構成する樹脂粒子(核粒子)または被覆層であって、結晶性物質を含有しないものを得るためにも採用することができる。
この重合工程で得られる複合樹脂粒子の粒子径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される質量平均粒径で10〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
また、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は48℃〜74℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは52℃〜64℃である。
また、複合樹脂粒子の軟化点は95℃〜140℃の範囲が好ましい。
本発明に係る電子写真用トナーは、樹脂および着色粒子の表面に、塩析/融着法によって樹脂粒子を融着させて樹脂層を形成させて得られるものであるが、このことについて以下に説明する。
〔塩析/融着工程〕
この塩析/融着工程は、前記多段重合工程によって得られた複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、不定形(非球形)のトナー粒子を得る工程である。
本発明において、塩析/融着とは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。塩析と融着とを同時に行わせるためには、複合樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において粒子(複合樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させることが好ましい。
この塩析/融着工程では、複合樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10nm〜1000nm程度の微粒子)を塩析/融着させてもよい。また、着色剤粒子は、表面改質されていてもよく、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができる。
〔熟成工程〕
熟成工程は、塩析/融着工程に後続する工程であり、樹脂粒子の融着後も温度を結晶性物質の融点近傍、好ましくは融点±20℃に保ち、一定の強度で攪拌を継続することにより、結晶性物質を相分離させる工程である。この工程において結晶性物質のフェレ水平径、形状係数及びこれらの変動係数を制御することが可能である。
また、本発明においては、凝集剤に用いる2価(3価)の金属元素と後述する凝集停止剤として加える1価の金属元素の合計値が350〜35000ppmであることが好ましい。トナー中の金属イオン残存量の測定は、蛍光X線分析装置「システム3270型」〔理学電気工業(株)製〕を用いて、凝集剤として用いられる金属塩の金属種(例えば、塩化カルシウムに由来するカルシウム等)から発する蛍光X線強度を測定することによって求めることができる。具体的な測定法としては、凝集剤金属塩の含有割合が既知のトナーを複数用意し、各トナー5gをペレット化し、凝集剤金属塩の含有割合(質量ppm)と、当該金属塩の金属種からの蛍光X線強度(ピーク強度)との関係(検量線)を測定する。次いで、凝集剤金属塩の含有割合を測定すべきトナー(試料)を同様にペレット化し、凝集剤金属塩の金属種からの蛍光X線強度を測定し、含有割合すなわち「トナー中の金属イオン残存量」を求めることができる。
〔濾過・洗浄工程〕
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
〔乾燥工程〕
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程であるが、本発明においては、減圧乾燥処理する工程であることが好ましい。
この工程で使用される減圧乾燥機としては、例えば、減圧スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。具体的には、減圧可能な静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機或いは攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
減圧乾燥時の条件は、乾燥温度がトナーに用いた樹脂のTg以下であればよく、減圧度、乾燥時間等は特に限定されず、適宜設定することができる。
なお、減圧乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサ、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
本発明に係る電子写真用トナーは、着色剤の不存在下において複合樹脂粒子を形成し、当該複合樹脂粒子の分散液に着色剤粒子の分散液を加え、当該複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させることにより調製されることが好ましい。
このように、複合樹脂粒子の調製を着色剤の存在しない系で行うことにより、複合樹脂粒子を得るための重合反応が阻害されることない。このため、本発明に係る電子写真用トナーによれば、優れた耐オフセット性が損なわれることはなく、トナーの蓄積による定着装置の汚染や画像汚れを発生させることはない。
また、複合樹脂粒子を得るための重合反応が確実に行われる結果、得られるトナー粒子中に単量体やオリゴマーが残留するようなことはなく、当該トナーを使用する画像形成方法の熱定着工程において、異臭を発生させることはない。
更に、得られるトナー粒子の表面特性は均質であり、帯電量分布もシャープとなるため、鮮鋭性に優れた画像を長期にわたり形成することができる。このようなトナー粒子間における組成・分子量・表面特性が均質であるトナーによれば、接触加熱方式による定着工程を含む画像形成方法において、画像支持体に対する良好な接着性(高い定着強度)を維持しながら、耐オフセット性および巻き付き防止特性の向上を図ることができ、適度の光沢を有する画像が得られる。
次に、トナー製造工程で用いられる各構成因子について、詳細に説明する。
(重合性単量体)
本発明に用いられる結着樹脂(バインダー)を造るための重合性単量体としては、疎水性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋性単量体が用いられる。また、下記するごとく酸性極性基を有する単量体又は塩基性極性基を有するモノマーを少なくとも1種類含有するのが望ましい。
(1)疎水性単量体
単量体成分を構成する疎水性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
具体的には、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加してもよい。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、(a)カルボキシル基(−COOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物及び(b)スルホン基(−SOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
(a)の−COO基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、およびこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
(b)の−SOH基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としてはスルホン化スチレン、そのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、そのNa塩等を挙げることができる。
(4)塩基性極性基を有するモノマー
塩基性極性基を有するモノマーとしては、(i)アミン基或いは4級アンモニウム基を有する炭素原子数1〜12、好ましくは2〜8、特に好ましくは2の脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(ii)(メタ)アクリル酸アミド或いは随意N上で炭素原子数1〜18のアルキル基でモノ又はジ置換された(メタ)アクリル酸アミド、(iii)Nを環員として有する複素環基で置換されたビニル化合物及び(iv)N,N−ジアリル−アルキルアミン或いはその四級アンモニウム塩を例示することができる。中でも、(i)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが塩基性極性基を有するモノマーとして好ましい。
(i)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、上記4化合物の四級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
(ii)の(メタ)アクリル酸アミド或いはN上で随意モノ又はジアルキル置換された(メタ)アクリル酸アミドとしては、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等を挙げることができる。
(iii)のNを環員として有する複素環基で置換されたビニル化合物としては、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、ビニル−N−エチルピリジニウムクロリド等を挙げることができる。
(iv)のN,N−ジアリル−アルキルアミンの例としては、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
(重合開始剤)
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は、水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(例えば、4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。更に、上記ラジカル性重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いることにより、重合活性が上昇し、重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が達成でき好ましい。
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択してもよいが例えば50℃から90℃の範囲が用いられる。但し、常温開始の重合開始剤、例えば過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いる事で、室温またはそれ以上の温度で重合する事も可能である。
(界面活性剤)
前述の重合性単量体を使用して、特にミニエマルジョン重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行うことが好ましい。この際に使用することのできる界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適な化合物の例として挙げることができる。
イオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等をあげることができる。
本発明において、これら界面活性剤は、主に乳化重合時の乳化剤として使用されるが、他の工程または他の目的で使用してもよい。
(樹脂粒子、トナーの分子量分布)
本発明に係る電子写真用トナーは、ピークまたは肩が100,000〜1,000,000、および1,000〜50,000に存在することが好ましく、さらにピークまたは肩が100,000〜1,000,000、25,000〜150,000及び1,000〜50,000に存在することがさらに好ましい。
樹脂粒子の分子量は、100,000〜1,000,000の領域にピークもしくは肩を有する高分子量成分と、1,000から50,000未満の領域にピークもしくは肩を有する低分子量成分の両成分を少なくとも含有する樹脂が好ましい。さらに好ましくは、ピーク分子量で15,000〜100,000の部分にピーク又は肩を有する中間分子量体の樹脂を使用することが好ましい。
トナーあるいは樹脂の分子量測定方法は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定がよい。すなわち、測定試料0.5〜5mg、より具体的には1mgに対してTHFを1.0ml加え、室温にてマグネチックスターラーなどを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。ついで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。
GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1.0mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSKguard columnの組合せなどを挙げることができる。又、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)、あるいはUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
(凝集剤)
本発明で用いられる凝集剤は、金属塩の中から選択されるものが好ましい。
金属塩としては、一価の金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩、二価の金属、例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩、マンガン、銅等の二価の金属塩、鉄、アルミニウム等の三価の金属塩等が挙げられる。
これら金属塩の具体的な例を以下に示す。一価の金属の金属塩の具体例として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、二価の金属の金属塩として塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられる。三価の金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化鉄等が挙げられる。これらは、目的に応じて適宜選択される。一般的には一価の金属塩より二価の金属塩のほうが、臨界凝集濃度(凝析値或いは凝析点)が小さく、更に三価の金属塩の臨界凝集濃度は小さい。
本発明で言う臨界凝集濃度とは、水性分散液中の分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加し、凝集が起こる点の濃度を示している。この臨界凝集濃度は、ラテックス自身及び分散剤により大きく変化する。例えば、岡村誠三他著高分子化学17,601(1960)等に記述されており、これらの記載に従えば、その値を知ることが出来る。又、別の方法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ電位を測定し、ζ電位が変化し出す点の塩濃度を臨界凝集濃度とすることも可能である。
本発明では、金属塩を用いて臨界凝集濃度以上の濃度になるように重合体微粒子分散液を処理する。この時、当然の事ながら、金属塩を直接加えるか、水溶液として加えるかは、その目的に応じて任意に選択される。水溶液として加える場合には、重合体粒子分散液の容量と金属塩水溶液の総容量に対し、添加した金属塩が重合体粒子の臨界凝集濃度以上になる必要がある。
本発明における凝集剤たる金属塩の濃度は、臨界凝集濃度以上であればよいが、好ましくは臨界凝集濃度の1.2倍以上、更に好ましくは1.5倍以上添加される。
(離型剤)
本発明に係るトナーは、離型剤を内包した樹脂粒子を水系媒体中に於いて融着させたトナーであることが好ましい。この様に樹脂粒子中に離型剤を内包させた樹脂粒子を着色剤粒子と水系媒体中で塩析/融着させることで、微細に離型剤が分散されたトナーを得ることができる。
本発明に係る電子写真用トナーでは、離型剤として、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等が好ましく、特に好ましくは、下記一般式(3)で表されるエステル系化合物である。
一般式(3)
−(OCO−R
式中、nは1〜4の整数、好ましくは2〜4、さらに好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。R、Rは、各々置換基を有してもよい炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜40、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜5がよい。Rは、炭素数1〜40、好ましくは16〜30、さらに好ましくは18〜26がよい。
次に代表的な化合物の例を以下に示す。
Figure 2011099047
Figure 2011099047
前記一般式(3)の化合物の添加量は、トナー全体に対し1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%、さらに好ましくは3〜15質量%である。
本発明に係る電子写真用トナーでは、ミニエマルジョン重合法により樹脂粒子中に上記離型剤を内包させ、トナー粒子とともに塩析、融着させて調製することが好ましい。
(荷電制御剤)
トナーは、着色剤、離型剤以外にトナー用材料として種々の機能を付与することのできる材料を添加することができる。具体的には、荷電制御剤等が挙げられる。これらの成分は前述の塩析/融着段階で樹脂粒子と着色剤粒子と同時に添加し、トナー中に包含する方法、樹脂粒子自体に添加する方法等種々の方法で添加することができる。
荷電制御剤は、種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
(外添剤)
本発明に係る電子写真用トナーには、流動性の改良やクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものでは無く、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
外添剤として使用できる無機微粒子としては、従来公知のものを挙げることができる。具体的には、シリカ微粒子、チタン微粒子、アルミナ微粒子等を好ましく用いることができる。これら無機微粒子は疎水性であることが好ましい。
シリカ微粒子の具体例としては、日本アエロジル(株)製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト(株)製のHVK−2150、H−200、キャボット(株)製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
チタン微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品T−805、T−604、テイカ(株)製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン(株)製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産(株)製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
アルミナ微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品RFY−C、C−604、石原産業(株)製の市販品TTO−55等が挙げられる。
外添剤として使用できる有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の微粒子を挙げることができる。かかる有機微粒子の構成材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体などを挙げることができる。
外添剤として使用できる滑剤としては、高級脂肪酸の金属塩を挙げることができる。かかる高級脂肪酸の金属塩の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩;オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸銅、オレイン酸マグネシウム等のオレイン酸金属塩;パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸金属塩;リノール酸亜鉛、リノール酸カルシウム等のリノール酸金属塩;リシノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウムなどのリシノール酸金属塩等が挙げられる。
外添剤の添加量としては、トナーに対して0.1〜5質量%程度であることが好ましい。
〔外添剤の添加工程〕
この工程は、乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程である。
外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサ、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。
(トナー粒子)
本発明に係るトナーの粒径は、個数平均粒径で3〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは3〜8μmとされる。この粒径は、トナーの製造方法において、凝集剤(塩析剤)の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
個数平均粒径が3〜10μmであることにより、定着工程において、飛翔して加熱部材に付着しオフセットを発生させる付着力の大きいトナー微粒子が少なくなり、また、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
トナーの個数平均粒径は、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー、SLAD1100(島津製作所社製レーザ回折式粒径測定装置)等を用いて測定することができる。
本発明においては、コールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機社製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおけるアパーチャーとしては、100μmのものを用いて、2μm以上(例えば2〜40μm)のトナーの体積分布を測定して粒度分布および平均粒径を算出した。
〈トナー粒子の好ましい形状係数の範囲〉
本発明に係る電子写真用トナーの形状係数は、1.0〜1.6のものが65個数%以上、好ましくは1.2〜1.6のものが65個数%以上、特に好ましくは1.2〜1.6のものが70個数%以上のものである。
本発明に係るトナーの形状係数は、下記式により示されるものであり、トナー粒子の丸さの度合いを示す。
形状係数=((最大径/2)×π)/投影面積
ここに、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個のトナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定したものである。
本発明に係るトナーとしては、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおいて、最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーであることが好ましい。
相対度数(m1)と相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることにより、トナー粒子の粒度分布の分散が狭くなるので、当該トナーを画像形成工程に用いることにより選択現像の発生を確実に抑制することができる。
本発明において、前記の個数基準の粒度分布を示すヒストグラムは、自然対数lnD(D:個々のトナー粒子の粒径)を0.23間隔で複数の階級(0〜0.23:0.23〜0.46:0.46〜0.69:0.69〜0.92:0.92〜1.15:1.15〜1.38:1.38〜1.61:1.61〜1.84:1.84〜2.07:2.07〜2.30:2.30〜2.53:2.53〜2.76・・・)に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムであり、このヒストグラムは、下記の条件に従って、コールターマルチサイザーにより測定されたサンプルの粒径データを、I/Oユニットを介してコンピュータに転送し、当該コンピュータにおいて、粒度分布分析プログラムにより作成されたものである。
〔測定条件〕
1:アパーチャー:100μm
2:サンプル調製法:電解液〔ISOTON R−11(コールターサイエンティフィックジャパン社製)〕50〜100mlに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて攪拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
また、本発明に係る電子写真用トナーは、体積基準におけるメディアン径(D50v)を3μm以上8μm以下とすることが好ましい。体積基準メディアン径を上記範囲とすることにより、たとえば、1200dpi(dpi;1インチ(2.54cm)あたりのドット数)レベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することも可能である。
本発明に係る電子写真用トナーは、写真画像の色再現を忠実に行える様にすることが課題の1つであるが、体積基準メディアン径を上記範囲の小径レベルのものにすることにより、写真画像を構成するドット画像が微小化され印刷画像と同等以上の高精細写真画像が得られる。特に、オンデマンド印刷と呼ばれる数百部から数千部レベルでプリント注文を受ける印刷分野では、高精細な写真画像の入った高画質プリントを迅速にユーザへ納品できる。
なお、トナーの体積基準メディアン径(D50v径)は、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5〜10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを2500個に設定して測定する。なお、マルチサイザー3のアパーチャー径は50μmのものを使用する。
本発明に係る電子写真用トナーは、その体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が2%以上21%以下のものが好ましく、5%以上15%以下のものがより好ましい。
体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)は、トナー粒子の粒度分布における分散度を体積基準で表したもので、以下の式によって定義される。
CV値(%)=(個数粒度分布における標準偏差)/(個数粒度分布におけるメディアン径(D50v))×100
このCV値の値が小さい程、粒度分布がシャープであることを示し、それだけトナー粒子の大きさがそろっていることを意味する。すなわち、大きさの揃ったトナーが得られることになるので、デジタル画像形成で求められる微細なドット画像や細線をより高精度に再現することが可能である。また、写真画像をプリントするにあたり、大きさの揃った小径トナーを用いることにより、印刷インクで作製された画像レベルあるいはそれ以上の高画質の写真画像を作成することができる。
本発明に係る電子写真用トナーは、その軟化点温度(Tsp)が70℃以上110℃以下となるものが好ましく、70℃以上100℃以下となるものがより好ましい。本発明に係る電子写真用トナーに使用される着色剤は、熱の影響を受けてもスペクトルが変化することのない安定した性質を有するものであるが、軟化点を前記範囲とすることで定着時にトナーに加わる熱の影響をより低減させることができる。したがって、着色剤に負担をかけずに画像形成が行えるので、より広く安定した色再現性を発現させることが期待される。
また、トナーの軟化点を前記範囲とすることにより、従来技術よりも低い温度でトナー画像定着が行える様になり、電力消費の低減を実現した環境に優しい画像形成を可能にする。
なお、トナーの軟化点は、たとえば、以下の方法を単独で、あるいは、組み合わせることにより制御が可能である。すなわち、
(1)樹脂形成に用いる単量体の種類や組成比を調節する。
(2)連鎖移動剤の種類や添加量により樹脂の分子量を調節する。
(3)ワックス等の種類や添加量を調節する。
また、トナーの軟化点温度の測定方法は、具体的には「フローテスターCFT−500(島津製作所社製)」を用い、高さ10mmの円柱形状に成形し、昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーより1.96×10Paの圧力を加え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出すようにし、これにより当該フローテスターのプランジャー降下量−温度間の曲線(軟化流動曲線)を描き、最初に流出する温度を溶融開始温度、降下量5mmに対する温度を軟化点温度とするものが挙げられる。
次に、本発明に係るトナーの製造方法について説明する。
本発明に係る電子写真用トナーは、少なくとも結着樹脂と一般式(1)で表されるシリコンフタロシアニン色素を含有する着色剤より構成されるものであり、好ましくは、一般式(2)で表されるシラノール化合物を含有してなる粒子(以下、着色粒子ともいう)を含有することである。本発明に係る電子写真用トナーに含有される着色粒子は、特に限定されるものではなく、従来のトナー製造方法により作製することが可能である。すなわち、混練、粉砕、分級工程を経てトナーを作製するいわゆる粉砕法によるトナー製造方法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合トナーの製造方法(たとえば、乳化重合法、懸濁重合法、ポリエステル伸長法等)を適用することにより作製可能である。
なお、粉砕法により本発明に係る電子写真用トナーを製造する場合、混練物の温度を130℃以下に維持した状態で作製を行うことが好ましい。これは、混練物に加える温度が130℃を超えると、混練物に加えられた熱の作用で混練物中における着色剤の凝集状態に変動を来し均一な凝集状態を維持できなくなるおそれがあるためである。仮に、凝集状態にバラツキが発生すると、作製されたトナーの色調にバラツキが生じることになり、色濁りの原因となることが懸念される。
(現像剤)
本発明に係る電子写真用トナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
また、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
次に、本発明に係る電子写真用トナーを用いた画像形成方法について説明する。最初に、本発明に係る電子写真用トナーを二成分系現像剤として用いる場合の画像形成方法について説明する。
図1は、本発明に係る電子写真用トナーを二成分系現像剤とした時に使用可能な画像形成装置の一例を示す概略図である。
図1において、1Y、1M、1C、1Kは感光体、4Y、4M、4C、4Kは現像装置、5Y、5M、5C、5Kは1次転写手段としての1次転写ロール、5Aは2次転写手段としての2次転写ロール、6Y、6M、6C、6Kはクリーニング装置、7は中間転写体ユニット、24は熱ロール式定着装置、70は中間転写体を示す。
この画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、複数組の画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、転写部としての無端ベルト状中間転写体ユニット7と、記録部材Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21及び定着手段としての熱ロール式定着装置24とを有する。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1Y、該感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、1次転写手段としての1次転写ロール5Y、クリーニング手段6Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1M、該感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、1次転写手段としての1次転写ロール5M、クリーニング手段6Mを有する。また、更に別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1C、該感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、1次転写手段としての1次転写ロール5C、クリーニング手段6Cを有する。また、更に他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Kは、第1の感光体としてのドラム状の感光体1K、該感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、1次転写手段としての1次転写ロール5K、クリーニング手段6Kを有する。
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のロールにより巻回され、回動可能に支持された中間転写エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
画像形成部10Y、10M、10C、10Kより形成された各色の画像は、1次転写ロール5Y、5M、5C、5Kにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材として用紙等の記録部材Pは、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ロール22A、22B、22C、22D、レジストロール23を経て、2次転写手段としての2次転写ロール5Aに搬送され、記録部材P上にカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された記録部材Pは、熱ロール式定着装置24により定着処理され、排紙ロール25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
一方、2次転写ロール5Aにより記録部材Pにカラー画像を転写した後、記録部材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6Aにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、1次転写ロール5Kは常時、感光体1Kに圧接している。他の1次転写ロール5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに圧接する。
2次転写ロール5Aは、ここを記録部材Pが通過して2次転写が行われるときにのみ、無端ベルト状中間転写体70に圧接する。
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とを有する。
画像形成部10Y、10M、10C、10Kは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Kの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ロール71、72、73、74、76を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、1次転写ロール5Y、5M、5C、5K及びクリーニング手段6Aとからなる。
筐体8の引き出し操作により、画像形成部10Y、10M、10C、10Kと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とは、一体となって、本体Aから引き出される。
このように感光体1Y、1M、1C、1K上に帯電、露光、現像によりトナー像を形成し、無端ベルト状中間転写体70上で各色のトナー像を重ね合わせ、一括して記録部材Pに転写し、定着装置24で加圧及び加熱により固定して定着する。トナー像を記録部材Pに転移させた後の感光体1Y、1M、1C、1Kは、クリーニング装置6Aで転写時に感光体に残されたトナーを清掃した後、上記の帯電、露光、現像のサイクルに入り、次の像形成が行われる。
次に、本発明に係る電子写真用トナーを非磁性一成分系現像剤として用いた場合の画像形成方法について説明する。図2は、非磁性一成分系現像剤を使用するフルカラー画像形成装置の一例である。なお、図2に示す画像形成装置100は、前述の現像装置20が搭載可能な画像形成装置の代表的なものである。図2の画像形成装置は、回転駆動される静電潜像担持体(以下、感光体ドラムともいう)1の周囲に、感光体ドラム1表面を所定電位に均一帯電させる帯電ブラシ2、感光体ドラム1上の残留トナーを除去するクリーナ6が設けられている。
レーザ走査光学系3は、帯電ブラシ2により均一帯電された感光体ドラム1上を走査露光し、感光体ドラム1上に静電潜像を形成する。レーザ走査光学系3は、レーザダイオード、ポリゴンミラー、fθ光学素子を内蔵し、その制御部にはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック毎の印字データがホストコンピュータから転送される。そして、上記各色毎の印字データに基づいて、レーザビームが順次出力され、感光体ドラム1上を走査露光して、各色毎の静電潜像を形成する。
現像装置4を収納する現像装置ユニット40は、静電潜像が形成された感光体ドラム1に各色トナーを供給して現像を行う。現像装置ユニット40には、支軸33の周囲にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各非磁性1成分トナーをそれぞれ収納した4つの現像装置4Y、4M、4C、4Bkが装着され、支軸33を中心に回転して、各現像装置4が感光体ドラム1と対向する位置に導かれる。
現像装置ユニット40は、レーザ走査光学系3により感光体ドラム1上に各色の静電潜像が形成される毎に、支軸33を中心に回転し、対応する色のトナーを収容した現像装置4を感光体ドラム1に対向する位置に導く。そして、各現像装置4Y、4M、4C、4Bkより感光体ドラム1上に、帯電された各色トナーを順次供給して現像を行う。
図2の画像形成装置は、現像装置ユニット40より感光体ドラム1の回転方向下流側に無端状の中間転写ベルト7が設けられ、感光体ドラム1と同期して回転駆動する。中間転写ベルト7は、1次転写ローラ5により押圧された部位で感光体ドラム1と接触し、感光体ドラム1上に形成されたトナー画像を転写する。また、中間転写ベルト7を支持する支持ローラ72と対向して、2次転写ローラ73が回転可能に設けられ、支持ローラ72と2次転写ローラ73との対向する部位で、中間転写ベルト7上のトナー画像が記録紙等の記録材P上に押圧転写される。
なお、フルカラー現像装置ユニット40と中間転写ベルト7との間には、中間転写ベルト7上の残留トナーを除去するクリーナ8が中間転写ベルト7に対して接離可能に設けられている。
記録材Pを中間転写ベルト7に導く給紙手段60は、記録材Pを収容する給紙トレイ61と、給紙トレイ61に収容した記録材Pを1枚ずつ給紙する給紙ローラ62、給紙した記録材Pを2次転写部位に送るタイミングローラ63より構成される。
トナー画像が押圧転写された記録材Pは、エアーサクションベルト等で構成された搬送手段66により定着装置24に搬送され、定着装置24で転写されたトナー画像が記録材P上に定着される。定着後、記録材Pは垂直搬送路80を搬送され、装置本体100の上面に排出される。
図2の画像形成装置は、交換可能な現像装置4を装填して画像形成を行うものである。図3(a)に示す現像装置4は、通常、トナーカートリッジとも呼ばれ、現像ローラ等の部品が配置された内部に所定量のトナーも収納されているものである。トナーカートリッジの形態で供給される現像装置は、画像形成装置内の所定位置に装填後、収納されている現像剤を感光体ドラムに供給して現像を行い、所定枚数の画像形成を行って現像剤がなくなると、装置より取り外し、新しいトナーカートリッジを装填する。
また、図3(b)は、現像装置4の断面構成の一例に示す概略図である。以下、現像装置4をトナーカートリッジ4ともいう。トナーカートリッジ4は、現像ローラ41に隣接してバッファ室42を、バッファ室42に隣接してホッパ43等を有する。
現像ローラ41は、導電性の円柱基体と、基体の外周にシリコーンゴム等の硬度の高い物質を用いて形成した弾性層を有する。
バッファ室42にはトナー規制部材であるブレード44が現像ローラ41に圧接させた状態で配置されている。ブレード44は、現像ローラ41上のトナーの帯電量及び付着量を規制するものである。また、現像ローラ41の回転方向に対してブレード41の下流側に、現像ローラ41上のトナー帯電量・付着量の規制を補助するための補助ブレード45をさらに設けることも可能である。
現像ローラ41には供給ローラ46が押圧されている。供給ローラ46は、図示しないモータにより現像ローラ41と同一方向(図中反時計回り方向)に回転駆動する。供給ローラ46は、導電性の円柱基体と基体の外周にウレタンフォームなどで形成された発泡層を有する。
ホッパ43には一成分現像剤であるトナーTが収容されている。また、ホッパ43にはトナーを攪拌する回転体47が設けられている。回転体47には、フィルム状の搬送羽根が取付けられており、回転体47の矢印方向への回転によりトナーを搬送する。搬送羽根により搬送されたトナーは、ホッパ43とバッファ室42を隔てる隔壁に設けられた通路48を介してバッファ室42に供給される。なお、搬送羽根の形状は、回転体47の回転に伴い羽根の回転方向前方でトナーを搬送しながら撓むとともに、通路48の左側端部に到達すると真っ直ぐの状態に戻るようになっている。このように羽根はその形状を湾曲状態を経て真っ直ぐに戻るようにすることでトナーを通路48に供給している。
また、通路48には通路48を閉鎖する弁321が設けられている。この弁はフィルム状の部材で、一端が隔壁の通路48右側面上側に固定され、トナーがホッパ43から通路48に供給されると、トナーからの押圧力により右側に押されて通路48を開けるようになっている。その結果、バッファ室42内にトナーが供給される。
また、弁321の他端には規制部材322が取り付けられている。規制部材322と供給ローラ46は、弁321が通路48を閉鎖した状態でも僅かな隙間を形成する様に配置される。規制部材322は、バッファ室42の底部に溜まるトナー量が過度にならないように調整するもので、現像ローラ41から供給ローラ46に回収されたトナーがバッファ室42の底部に多量に落下しないように調整される。
トナーカートリッジ4では、画像形成時に現像ローラ41が矢印方向に回転駆動するとともに供給ローラ46の回転によりバッファ室42のトナーが現像ローラ41上に供給される。現像ローラ41上に供給されたトナーは、ブレード44、補助ブレード45により帯電、薄層化された後、像担持体との対向領域に搬送され、像担持体上の静電潜像の現像に供される。現像に使用されなかったトナーは、現像ローラ41の回転に伴ってバッファ室42に戻り、供給ローラ46により現像ローラ41から掻き取られ回収される。
本発明に係るトナーは、従来技術における定着時の加熱温度でトナー中の着色剤の結晶構造に変動を来すものではなく、公知の定着装置であれば安定した色再現性を有するトナー画像が得られる。ところで、近年では地球環境への配慮等の視点から画像形成装置のエネルギー消費量を低減化させる動きがある。その中でも定着工程におけるエネルギー消費量の低減化が注目され、現状の定着温度よりも低い温度でトナー画像を定着するいわゆる低温定着対応の技術が採り入れられる様になっている。
すなわち、本発明に係るトナーを低温定着対応のトナーとした時には、定着装置における加熱部材の表面温度を140℃未満に設定することが好ましく、さらに、加熱部材の表面温度を130℃未満に設定することがより好ましくなる。
上記設定温度下では、加熱部材から供給される熱を転写シートに効率よく供給することが求められ、加熱部材あるいは加圧部材のいずれか一方に耐熱性のベルトを用いたいわゆるベルト定着と呼ばれる定着方法が好ましい。
図4に、本発明に係るトナーを定着することが可能なベルト定着方式の定着装置(ベルトと加熱ローラを用いたタイプ)の一例を示す。
図4に示す定着装置24は、ニップ幅を確保するためにベルトと加熱ローラを用いたタイプのもので、定着ローラ240とシームレスベルト241、及びシームレスベルト241を介して定着ローラ240に押圧される圧力パッド(圧力部材)242a、圧力パッド(圧力部材)242b、前記潤滑剤供給部材243とで主要部が構成されている。
定着ローラ240は、金属製のコア(円筒状芯金)240aの周囲に耐熱性弾性体層240b、及び離型層(耐熱性樹脂層)240cより形成され、コア240aの内部には加熱源としてハロゲンランプ244が配置されている。定着ローラ240の表面温度は温度センサ245により計測され、その計測信号に基づいて図示しない温度コントローラによりハロゲンランプ244がフィードバック制御され、定着ローラ240表面が一定温度になるように調整される。シームレスベルト241は、定着ローラ240に対し所定の角度で巻き付けられるように接触し、ニップ部を形成している。
シームレスベルト241の内側には、低摩擦層を表面に有する圧力パッド242がシームレスベルト241を介して定着ローラ240に押圧される状態で配置されている。圧力パッド242は、強いニップ圧がかかる圧力パッド242aと、弱いニップ圧がかかる圧力パッド242bとが設けられ、金属製等のホルダ242cに保持されている。
ホルダ242cには、シームレスベルト241がスムーズに摺動回転するようにベルト走行ガイドが取り付けられている。ベルト走行ガイドはシームレスベルト241内面と摺擦するため摩擦係数が低い部材が望ましく、かつ、シームレスベルト241から熱を奪いにくいように熱伝導の低い部材が好ましい。なお、シームレスベルト241の材質の具体例としては、たとえばポリイミドが挙げられる。
本発明に係る電子写真用トナーにより形成されたトナー画像は、最終的に転写材P上に転写され、定着処理により、転写材上に固定されることにより画像形成が行われる。上記画像形成に使用される転写材Pは、トナー画像を保持する支持体で、通常画像支持体、記録材或いは転写紙とよばれるものである。具体的には薄紙から厚紙までの普通紙や上質紙、アート紙やコート紙等の塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布等の各種転写材を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1《可視光線吸収フィルター》
(可視光線吸収フィルター1Aの作製)
本発明の色素(C−1)の0.5%ジメトキシエタン溶液を調製し、ガラス基板上にバーコーターで塗工、乾燥してコーティングガラスを作製した。このフィルムは、青色を呈しており、本発明の可視光吸収剤(色素)は可視光を吸収することが分かった。
(可視光線吸収フィルター1B)
本発明の色素(C−1)の1.0%テトラヒドロフラン溶液とポリエステル樹脂の20%ジメトキシエタン溶液を2:8(容量比)の割合で混合し、ガラス基板上にバーコーターで塗工、乾燥してコーティングフィルムを作製した。このフィルムは、青色を呈しており、バインダーを含んだ組成物であっても可視光線を有効に吸収することが分かった。
(可視光線吸収フィルター2A〜8Aの作製)
上記の可視光線吸収フィルター1Aの作製において、使用する色素(C−1)から、表2に示す色素に変更した以外は同様にして可視光線吸収フィルター2A〜8Aを作製した。
(可視光線吸収フィルター9Aの作製)
比較化合物1を2mol当量と過塩素酸銅(II)を1mol当量それぞれ溶液中、混合した混合溶液を色素とし、上記の可視光線吸収フィルター1Aの作製において、使用する色素(C−1)から、当該混合溶液色素に変更した以外は同様にして可視光線吸収フィルター9Aを作製した。
(可視光線吸収フィルター10Aの作製)
上記の可視光線吸収フィルター9Aの作製において、混合させる比較化合物1を、比較化合物2に変更した以外は同様にして可視光線吸収フィルター10Aを作製した。
(可視光線吸収フィルター2B〜8Bの作製)
上記の可視光線吸収フィルター1Bの作製において、使用する色素(C−1)から、表2に示す色素に変更した以外は同様にして可視光線吸収フィルター2B〜8Bを作製した。
(可視光線吸収フィルター9Bの作製)
比較化合物1を2mol当量と過塩素酸銅(II)を1mol当量それぞれ溶液中、混合した混合溶液を色素とし、上記の可視光線吸収フィルター1Bの作製において、使用する色素(C−1)から、当該混合溶液色素に変更した以外は同様にして可視光線吸収フィルター9Bを作製した。
(可視光線吸収フィルター10Bの作製)
上記の可視光線吸収フィルター9Bの作製において、混合させる比較化合物1を、比較化合物2に変更した以外は同様にして可視光線吸収フィルター10Bを作製した。
Figure 2011099047
作製した可視光線吸収フィルター1A〜10A及び1B〜10Bについて下記評価を行った。
(耐光性)
スガ試験機株式会社製キセノンウェザーメーターを用いてキセノン光(70000ルックス)を24時間爆射した後のサンプルの未爆射サンプルからの可視領域極大吸収波長における反射スペクトル濃度の低下率%(色素残存率%)を算出し、以下の基準で評価した。
(色素残存率%)=(曝射試料極大吸収波長濃度/未曝射試料極大吸収波長濃度)×100
◎:色素残存率が90%以上
○:色素残存率が80%〜90%未満
△:色素残存率が80%未満
実用上は色素残存率90%以上が好ましい。
(耐湿熱性)
耐湿熱性については、可視光線吸収フィルターを60℃、90%RHの条件化で14日間保存した後、色彩色差計CR−400(コニカミノルタセンシング社製)を用いて、保存前後での色度変化、すなわちΔEab値を測定し、以下の基準で評価した。
A:ΔEabが3.2未満・・・・・・・色度変化がほとんど感じられない
B:ΔEabが3.2〜6.5未満・・・感覚的には同じ色に見える
C:ΔEabが6.5以上・・・・・・・色度変化が明らかに認識される
評価の結果を表2に示す。
Figure 2011099047
表2から、本発明の色素を用いた着色剤組成物は可視光線を有効に吸収し、耐光性、耐湿熱性に優れた可視光線吸収フィルターとして使用できることが分かる。また、さらには、例えば、フィルターNo.5Aと5Bまたは6Aと6Bから明らかなように、本発明の色素はバインダーとの混合物として用いることでより優れた耐光性、耐湿熱性を示し、堅牢性に優れた可視光線吸収フィルターを提供することができる。
実施例2《インク》
(着色微粒子分散物の合成)
油溶性ポリマーとしてポリビニルブチラール(積水化学(株)製BL−S、平均重合度350)15g、色素として本発明の色素(C−2)を8g及び酢酸エチル150gをセパラブルフラスコに入れ、フラスコ内をN置換後、攪拌して上記ポリマー及び染料を完全溶解させた。引き続き、さらにラウリル硫酸ナトリウム3gを含む水溶液150gを滴下して撹拌した後、超音波分散機(UH−150型、株式会社エスエムテー製)を用いて300秒間乳化した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、着色微粒子分散物を調製した。以下、このようにして調製した分散物を着色微粒子分散物と略記する。
(水系インクIJ−1の作製)
上記で調製した着色微粒子分散物をそれぞれ、色素の含有量が仕上がりインクとして、2質量%になる量を秤量し、エチレングリコール15%、グリセリン15%、サーフィノール465(日信化学工業社製)0.3%、残りが純水になるように調製し、さらに2μmのメンブランフィルターによって濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去して水性インクIJ−1を作製した。
(水系インクIJ−2〜IJ−8の作製)
上記IJ−1の作製において、使用する着色微粒子分散物中の色素(C−2)から、表3に示す本発明に係る色素、また比較として下記比較化合物3(銅フタロシアニン化合物)及び比較化合物4に変更した以外は同様にして水系インクIJ−2〜IJ−8を作製した。
Figure 2011099047
(サンプルの作製)
さらに、水系インクIJ−1〜IJ−8を市販のエプソン社製インクジェットプリンタ(PM−800)を用いてフォトジェットペーパー Photolike QP 光沢紙(コニカミノルタ製)にプリントし、それぞれの画像を得た。
(評価)
上記サンプルの作製で得たそれぞれの画像について下記評価を行った。
(色調)
各塗布試料について、10人のモニターによる目視評価で4段階評価を行った。
◎:鮮やかで澄んだ色
○:鮮やかな色
△:くすんだ色
×:汚い色
○以上であることが望ましい。
(耐光性)
スガ試験機株式会社製キセノンウェザーメーターを用いてキセノン光(70000ルックス)を72時間爆射した後のサンプルの未爆射サンプルからの可視領域極大吸収波長における反射スペクトル濃度の低下率%を算出し、以下の基準で評価した。
低下率%(色素残存率%)=(曝射試料極大吸収波長濃度/未曝射試料極大吸収波長濃度)×100
◎:色素残存率が90%以上
○:色素残存率が85%〜90%
△:色素残存率が80〜85%
×:色素残存率が80%未満
(耐水性)
マイクロピペットにて、得られた各プリント上に水を滴下し、1分後、指で擦ってプリントに乱れが生じたか否かを目視にて判定した。
◎:実質的に全く変化が見られない
○:乱れていても画像が識別できる(許容レベル)
×:識別できないほどに画像が乱れたもの
(耐熱湿性)
各サンプルを50℃、80%RHの条件化で30日間保存した後、耐光性同様に色素残存率を算出し、評価した。
◎:色素残存率が90%以上
○:色素残存率が85〜90%未満
△:色素残存率が80〜85%未満
×:色素残存率が80%未満で目視により色が濁って見える
色素残存率は85%以上(◎、○)であることが実用上好ましい。
評価の結果を表3に示す。
Figure 2011099047
表3から明らかなように、本発明の色素を用いたインクは鮮やかな色調を示し、比較例に対して耐光性、耐水性、耐熱湿性の面で優れていることが分かる。
一方、比較の色素を用いたIJ−7及びIJ−8では耐光性、耐水性及び耐熱湿性に劣っており、本発明の色素をインクに用いることで堅牢性に優れ、画像保存性のよいインクを提供することができることがわかった。特に、本発明の色素C−2及びC−29を用いたインクは高い効果を示すことが表より明らかである。
実施例3《光記録媒体》
(光記録媒体1の作製)
直径5インチのグルーブ付きポリカーボネート基板上に、本発明の色素(C−2)を用いて記録層(厚さ90nm)を塗布し、反射層(Ag、厚さ100nm)、保護膜(紫外線硬化アクリル樹脂、厚さ5μm)を定法に従って順次形成し、本発明に係る光記録媒体1を作製した。
(光記録媒体2〜5の作製)
上記光記録媒体1の作製において、使用する色素(C−2)から、表4に示す色素(比較として下記比較化合物5及び比較化合物6を含む)に変更した以外は同様にして光記録媒体2〜5を作製した。ただし光記録媒体3及び5では表5に示した色素と1.0質量%の退色防止剤(B)−6との混合物を記録層として塗布した。
Figure 2011099047
(光記録媒体1〜5の評価)
上記で作製された光記録媒体1〜5ついて下記評価を行った。
(反射率)
光情報記録媒体1〜5の反射率を測定したところ、それぞれ70%以上の良好な値を示した。
(保存性)
これらの試料に658nmの半導体レーザによりパワーを変化させて情報記録し、0.8mWで再生を行った。また、スガ試験機株式会社製キセノンフェードメーターを使用し、15時間の光曝射を行った後に同様の記録再生実験を行い、最低記録パワー及び再生回数を求めた。
評価の結果を表4に示す。
Figure 2011099047
表4から明らかなように、本発明の色素を用いた光記録媒体1〜3はDVD規格を満足する良好な記録、再生を行うことができた。また、本発明の色素以外を用いた比較の光記録媒体4及び5に比べ、保存性に優れていることが分かった。
実施例4《カラーフィルター》
(カラーフィルターCF−1の作製)
RGBカラーフィルターを得るために、下記の方法によりガラス板上に赤色(R)モザイク状パターン、緑色(G)モザイク状パターン及び青色(B)モザイク状パターンを形成した。下記に示す成分を用いて、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)のカラーフィルター用感光性コーティング剤を調製した。使用した感光性ポリイミド樹脂ワニスは、光増感剤を含む感光性ポリイミド樹脂ワニスである。
(カラーフィルター用感光性コーティング剤の成分)
R:
本発明の色素:(C−2) 10部
感光性ポリイミド樹脂ワニス 50部
N−メチル−2−ピロリドン 40部
G:
色材G−1 10部
感光性ポリイミド樹脂ワニス 50部
N−メチル−2−ピロリドン 40部
B:
色材B−1 10部
感光性ポリイミド樹脂ワニス 50部
N−メチル−2−ピロリドン 40部
先ず、シランカップリング剤処理を行ったガラス板をスピンコーターにセットし、上記のRの赤色のカラーフィルター用感光性コーティング剤を最初300rpmで5秒間、次いで2000rpmで5秒間の条件でスピンコートした。次いで80℃で15分間プリベークを行い、モザイク状のパターンを有するフォトマスクを密着させ、超高圧水銀灯を用い900mJ/cmの光量で露光を行った。
次いで専用現像液及び専用リンスで現像及び洗浄を行い、ガラス板上に赤色のモザイク状パターンを形成させた。引き続いて緑色モザイク状パターン及び青色のモザイク状パターンを上記のGの緑色カラーフィルター用感光性コーティング剤及びBの青色のカラーフィルター用感光性コーティング剤を用いて上記の方法に準じて塗布及び焼き付けを行い、次いで常法に従いブラックマトリックスを形成させ、カラーフィルターCF−1を作製した。
(カラーフィルターCF−2〜8の作製)
上記のカラーフィルターCF−1の作製において、赤色に使用する色素(C−2)を、表5に示す色素に変更した以外は同様にしてカラーフィルターCF−2〜8を作製した。
Figure 2011099047
《カラーフィルターの評価》
得られたカラーフィルターCF−1〜8について下記評価を行った。
(色調)
各フィルターについて、10人のモニターによる目視評価で3段階評価を行った。
◎:鮮やかで澄んだ色
○:鮮やかな色
△:くすんだ色
○以上であることが望ましい。
(耐熱性)
パターン像が形成された下塗り層付ガラス基板を、該基板面において接するようにホットプレートにより150℃で3時間加熱した後、加熱前後での色度変化、すなわちΔEabを測定し、以下の基準で評価した。色度の測定には色彩色差計CR−400(コニカミノルタセンシング社製)を用いた。ΔEab値の小さいほうが耐熱性に優れることを示す。
A:ΔEabが3.2未満・・・・・・・色度変化がほとんど感じられない
B:ΔEabが3.2〜6.5未満・・・感覚的には同じ色に見える
C:ΔEabが6.5以上・・・・・・・色度変化が明らかに認識される
(耐光性)
パターン像が形成された下塗り層付ガラス基板に対し、スガ試験機株式会社製キセノンウェザーメーターを用いてキセノン光(70000ルックス)を7日間照射した後、サンプルの未爆射サンプルからの可視領域極大吸収波長における反射スペクトル濃度の低下率%(色素残存率%)を算出し、以下の基準で評価した。
低下率(色素残存率%)=(曝射試料極大吸収波長濃度/未曝射試料極大吸収波長濃度)×100
◎:色素残存率が90%以上
○:色素残存率が80%〜90%未満
△:色素残存率が80%未満
実用上は色素残存率90%以上が好ましい。
評価の結果を表5に示す。
Figure 2011099047
表5より本発明の色素を用いたカラーフィルターCF−1〜6は、比較のカラーフィルターCF−7〜及び8に較べ、耐熱性、耐光性等の堅牢性が著しく向上しており、色調にも優れた性質を有していることが分かり、液晶カラーディスプレイ用等に適用可能なカラーフィルターとして優れた性質を有していた。
実施例5《トナー》
(トナー1の作製)
(混練・粉砕法によるトナーの作製)
下記トナー構成物をヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)に投入し、撹拌羽根の周速を25m/秒に設定して5分間混合処理し、混合物を得た。
(トナー構成物)
ポリエステル樹脂 100質量部
(ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物、テレフタル酸、トリメリット酸の縮合物、重量平均分子量20,000)
本発明の色素(C−2) 6質量部
シラノール化合物 0.05質量部
離型剤(ペンタエリスリトールテトラステアレート) 6質量部
荷電制御剤(ジベンジル酸ホウ素) 1質量部
上記混合物を二軸押出混練機で混練し、次いで、ハンマーミルで粗粉砕した後、ターボミル粉砕機(ターボ工業社製)で粉砕処理し、さらに、コアンダ効果を利用した気流分級機で微粉分級処理を行うことで、体積基準メディアン径が5.5μmの着色粒子1を得た。
次に、上記着色粒子に下記外添剤1を添加して、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行い、トナー1を作製した。
(外添剤1)
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm) 0.6質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径24nm) 0.8質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
(トナー2〜4の作製)
(混練・粉砕法によるトナーの作製)
上記トナー1の作製において、トナー構成物の色素(C−2)から、表7に示す色素に変更した以外は同様にしてトナー2〜4を作製した。
(トナー5の作製)
(乳化重合法によるトナーの作製)
(着色剤微粒子分散液1の調製)
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に投入し、溶解、撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、着色剤として本発明の色素(C−2)、6質量部及びシラノール化合物、0.05質量部を徐々に添加し、「クリアミックスWモーションCLM−0.8(エムテクニック社製)」を用いて分散処理を行い、着色剤微粒子分散液1を調製した。
着色剤微粒子分散液1中の着色剤微粒子1は、体積基準メディアン径が98nmであった。
なお、体積基準メディアン径は、「MICROTRAC UPA−150(HONEYWELL社製)」を用い、下記測定条件下で測定したものである。
サンプル屈折率 1.59
サンプル比重 1.05 (球状粒子換算)
溶媒屈折率 1.33
溶媒粘度 0.797(30℃)、1.002(20℃)
0点調整 測定セルにイオン交換水を投入し調製した。
(コア部用樹脂粒子1の作製)
下記に示す第1段重合、第2段重合及び第3段重合を経て多層構造を有するコア部用樹脂粒子1を作製した。
(a)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に下記(構造式1)に示すアニオン系界面活性剤、4質量部をイオン交換水、3040質量部とともに投入し、界面活性剤水溶液aを調製した。
(構造式1) C1021(OCHCHSONa
上記界面活性剤水溶液中に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、温度を75℃に昇温させた後、下記化合物よりなる単量体混合液aを1時間かけて反応容器中に滴下した。
(単量体混合液a)
スチレン 532質量部
n−ブチルアクリレート 200質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
上記単量体混合液を滴下後、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子を作製した。この樹脂粒子を樹脂粒子A1とする。なお、第1段重合で作製した樹脂粒子A1の重量平均分子量は16,500だった。
(b)第2段重合
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に下記化合物からなる単量体混合液bを投入し、続いて、離型剤としてパラフィンワックス「HNP−57(日本製蝋社製)」93.8質量部を添加し、90℃に加温して溶解させた。この様にして単量体溶液bを調製した。
(単量体混合液b)
スチレン 101.1質量部
n−ブチルアクリレート 62.2質量部
メタクリル酸 12.3質量部
n−オクチルメルカプタン 1.75質量部
一方、前記構造式1で表されるアニオン界面活性剤、3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤水溶液bを調製し、98℃に加熱した。この界面活性剤水溶液中に上記第1段重合で作製した前記樹脂粒子A1を32.8質量部(固形分換算)添加し、さらに、上記パラフィンワックスを含有する単量体溶液bを添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(エムテクニック社製)」で8時間混合分散した。前記混合分散により分散粒子径が340nmの乳化粒子を含有する乳化粒子分散液bを調製した。
次いで、前記乳化粒子分散液bに過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱撹拌を行うことで重合(第2段重合)を行って樹脂粒子を作製した。この樹脂粒子を樹脂粒子A2とする。なお、第2段重合で作製した樹脂粒子A2の重量平均分子量は23,000だった。
(c)第3段重合
上記第2段重合で得られた樹脂粒子A2に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、下記化合物からなる単量体混合液cを1時間かけて滴下した。
(単量体混合液c)
スチレン 293.8質量部
n−ブチルアクリレート 154.1質量部
n−オクチルメルカプタン 7.08質量部
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌を行って重合(第3段重合)を行い、重合終了後、28℃に冷却してコア部用樹脂粒子を作製した。第3段重合で作製したコア部用樹脂粒子の重量平均分子量は26,800であった。
(3)(シェル用樹脂粒子の作製)
上記コア部用樹脂粒子の作製における第1段重合で使用された単量体混合液aを以下の単量体混合液dに変更した以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行ってシェル用樹脂粒子を作製した。
(単量体混合液d)
スチレン 624質量部
2−エチルヘキシルアクリレート 120質量部
メタクリル酸 56質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
(a)コア部の形成
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
コア部用樹脂粒子 420.7質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
着色剤粒子分散液1 200質量部
を投入し、撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整後、5mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを8乃至11に調整した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を撹拌の下で30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温させ、上記粒子の会合を行った。この状態で「マルチサイザー3(コールター社製)」を用いて会合粒子の粒径測定を行い、会合粒子の体積基準メディアン径が5.5μmになった時に、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解させた水溶液を添加して会合を停止させた。
会合停止後、さらに、熟成処理として液温を70℃にして1時間にわたり加熱撹拌を行うことにより融着を継続させてコア部を作製した。
コア部の平均円形度を「FPIA2000(システックス社製)」で測定したところ、0.912だった。
(b)シェルの形成
次に、上記コア部を65℃にして上記シェル用樹脂粒子を96質量部添加し、さらに、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した後、70℃まで昇温させて1時間にわたり撹拌を行った。この様にして、コア部の表面にシェル用樹脂粒子を融着させた後、75℃で20分間熟成処理を行ってシェルを形成させた。
この後、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加してシェル形成を停止した。さらに、8℃/分の速度で30℃に冷却して生成した着色粒子をろ過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥することにより、コア部表面にシェルを有する着色粒子5を作製した。
(c)外添処理
上記で作製した着色粒子5に下記外添剤を添加して、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行い、トナー5を作製した。
(外添剤2)
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm) 0.6質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径24nm) 0.8質量部
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
(トナー6〜20の作製)
上記のトナー5の作製において、使用する色素(C−2)から、表7に示す色素に変更した以外は同様にしてトナー6〜20を作製した。
(現像剤の調製)
上記トナー1〜20の各々に、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が6%の現像剤1〜20を調製した。
《サンプルの評価》
得られた現像剤1〜20について下記評価を行った。
(評価実験)
評価は、図1の二成分系現像方式の画像形成装置に対応する市販の複合プリンタ「bizhub Pro C500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」に、各現像剤を投入した現像装置を装填して行った。
また、図4に示すベルト定着方式の定着装置を上記プリンタに搭載して、評価を行った。なお、前述のベルト定着方式の定着装置における加熱ローラの表面材質、表面温度等の各種条件を以下の様にした。
定着速度:230mm/sec
加熱ローラの表面材質:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
加熱ローラの表面温度:125℃
評価は、上記評価装置に上記で作製したトナーを順番に装填し、常温常湿(20℃、55%RH)の環境下で、以下の項目について評価を行った。
プリントは、常温常湿(25℃、55%RH)環境下にて、画像濃度0.4のハーフトーン画像、白地ベタ画像、画像濃度0.8のべた黒画像、及び、細線画像がそれぞれ1/4等分となるA4サイズのプリントを行った。
(色再現性)
コピー用紙上の混色画像の色再現性を、10人のモニターによる目視評価により下記評価基準に従って評価した。なお、トナー付着量は0.7±0.05(mg/cm)の範囲で評価した。結果を下記表7に示す。
◎:色再現性が特に優れている(鮮やかな色)
○:色再現性に優れている
△:多少の色汚染があるが、実用上問題ないレベルである(若干濁りのある色)
×:色汚染大で画像品質上問題あり(青色に近い、又は濁った青色の印象を受ける)
(耐光性)
コピー用紙上の混色画像をキセノンフェードメーターで7日間照射し、照射前の濃度1近辺の部分における画像の色素残存率({照射後濃度/照射前濃度}×100%)を求め、下記評価基準に従って評価した。色相変化は、10人の被験者により目視にて行い、10点満点で評価を行った。10人の平均点が10〜9点を◎、10人の平均点が9〜8点を○、10人の平均点が8〜7点を△、7点未満を×とした。
(色素残存率の評価基準)
5:残存濃度が90%以上
4:残存濃度が90〜80%未満
3:残存濃度が60〜70%未満
2:残存濃度が70〜60%未満
1:残存濃度が60%以下
画像濃度は反射濃度計(X−Rite310TR)を用いて測定した。
〈耐オゾン性〉
オゾンガス濃度が5ppm(25℃;60%RH)に設定された条件下で各色及び混色した画像を7日間、オゾンガスに曝露した。オゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。曝露開始から一定期間経過ごとに、反射濃度計(X−Rite310TR)を使用して各色及び混色した画像のシアン色素の色素残存率を測定した。尚、前記反射濃度は、0.7、1.0及び1.8の3点で測定した。得られた結果から次式:色素残存率(ROD(%))={暴露後濃度/暴露前濃度}×100%を用いて色素残存率を求めた。更に、上記試験の結果に基づき、下記の判定基準を用いて、記録物に記録された各色の耐オゾン性を5〜1にランク付けた。また混色画像についてはオゾン暴露前後の色相変化を10人の被験者により目視にて行い、10点満点で評価を行った。10人の平均点が10〜9点を◎、10人の平均点が9〜8点を○、10人の平均点が8〜7点を△、7点未満を×とした。
[判定基準]
5:試験開始から7日後のRODが、何れの濃度でも85%以上である
4:試験開始から7日後のRODが、何れか1点の濃度が85%未満になる
3:試験開始から7日後のRODが、何れか2点の濃度が85%未満になる
2:試験開始から7日後のRODが、何れか2点の濃度が80%未満になる
1:試験開始から7日後のRODが、全ての濃度で75%未満になる
本発明のトナーを用いた現像剤の耐光性、耐オゾン性の色素残存及び色素変化の評価結果を下記表6に表す。
Figure 2011099047
表6に示すように、本発明の色素を含有するトナーは、現像剤の耐光性、耐オゾン性の色素残存及び色素変化が良好なのでモニター画像の色再現性が高く、長期にわたって保存ができる画像を提供することが可能であることがわかる。また、トナー製法において、粉砕法よりも乳化重合法で作製したトナー、つまり固体分散法で作製したトナーの方が良好な効果を奏していることがわかる。
1 感光体(感光体ドラム)
4 現像装置(トナーカートリッジ)
6 クリーニング装置
7 中間転写ベルト
10 画像形成部
24 定着装置
240 加熱ローラ
241 加圧ベルト(シームレスベルト)
P 転写材(記録材)

Claims (3)

  1. 下記一般式(1)で表されるシリコンフタロシアニン色素を含有することを特徴とする着色剤組成物。
    Figure 2011099047
    (式中、Xは−ORを表す。Rは−C(=O)NR、−SONRまたは、−C(=O)−(L)−NR、−SON−(L)−Rを表す。R、Rは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、−C(=O)NR、−SONR、−C(=O)R、−SOを表しR〜Rは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基を表す。Lは置換又は無置換の、メチレン基、エチレン基、フェニレン基を表す。RとR、RとRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに環構造を形成してもよい。Y〜Yは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基又はその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルホ基又はその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基又はその塩、リン酸アミド又はリン酸エステル構造を含む基を表す。nは1〜4を表す。複数のY〜Yは同一でも異なっていてもよい。)
  2. 前記一般式(1)で表されるシリコンフタロシアニン色素が固体分散法にて分散含有されていることを特徴とする請求項1に記載の着色剤組成物。
  3. 少なくとも結着樹脂と下記一般式(1)で表されるシリコンフタロシアニン色素を含有することを特徴とする電子写真用トナー。
    Figure 2011099047
    (式中、Xは−ORを表す。Rは−C(=O)NR、−SONRまたは、−C(=O)−(L)−NR、−SON−(L)−Rを表す。R、Rは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、−C(=O)NR、−SONR、−C(=O)R、−SOを表しR〜Rは水素原子、置換又は無置換のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基を表す。Lは置換又は無置換の、メチレン基、エチレン基、フェニレン基を表す。RとR、RとRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、それぞれ互いに環構造を形成してもよい。Y〜Yは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシ基又はその塩、スルホニルカルバモイル基、アシルカルバモイル基、スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、チオカルバモイル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、スルホニルウレイド基、アシルウレイド基、アシルスルファモイルアミノ基、ニトロ基、メルカプト基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルホ基又はその塩、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、スルホニルスルファモイル基又はその塩、リン酸アミド又はリン酸エステル構造を含む基を表す。nは1〜4を表す。複数のY〜Yは同一でも異なっていてもよい。)
JP2009254810A 2009-11-06 2009-11-06 シリコンフタロシアニン色素を含有する着色剤組成物及び該シリコンフタロシアニン色素を含有する電子写真用トナー Pending JP2011099047A (ja)

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KR20210005568A (ko) 2018-04-25 2021-01-14 가와사끼가세이고오교 가부시끼가이샤 광 중합 증감제 조성물

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