JP2011098317A - 微生物による有機物の酸化方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】縦方向に設置して上部を排出側とした流路、流路内に多数の小孔を穿設した仕切板を所定の間隔で上下に配置して仕切板と流路の側壁とで形成した区分室、区分室と連通させた被処理水の供給路、区分室の下に供給口を臨ませ50〜500m/hrの空塔速度で空気又は酸素を供給する気体供給装置とからなり、微生物を固定させた担体を存在させた区分室に供給した被処理水を乱流状態にして有機物を酸化させる
【選択図】図1
Description
この境膜と外側の乱流部分の境界層は、判然と区別される境界面があるわけではないが、境界層の流れは境界面に沿って流れると推測されている。担体や固体の表面と流体との間における物質の移動は分子拡散によって行なわれると考えられているから、物質は流内で多少乱れの影響を受けながら境膜を経て移動することになる。
境膜内では、流れに対し直角方向での流体の運動がないため、その物質の移動速度の抵抗は境膜の厚さによって影響を受け、流体本体よりもはるかに大きい抵抗を示すことも古くから実験事実として知られている。
特許文献2に開示された方法では、上部が解放されていて液体が間仕切りの一方で上昇し他方で下降する形式の単純な循環方式が採用されている。担体は流体と一緒に同じ方向に同じ速度で流動させられるから、両者の間には速度差が生れず界面でのズレ、すなわち境膜に強い影響を及ぼすような剪断力は殆ど働かない。
したがって、境膜内での分子拡散速度が律速となり、系全体の物質移動速度が制限されることになる。
この欠点を補うため、酸素を最大で180m/hrの空塔速度で吹込み、溶存酸素濃度を上げることによって酸素の移動速度を上げているが、担体は流体とほぼ同じ速度で移動してしまうため、効果は限定的なものとならざるを得ない。
しかし、この方法でも、曝気槽容積は数分の一程度に縮小されているが、この方法における多段曝気塔では、沈殿槽で汚泥を分離し易くすることが優先され、空気の吹き込み量は抑えられている。たとえばMLSS3340mg/l、開孔率0.32%、空塔速度10.8m/hrとなっている。そのため固液界面には大きな剪断力が働かず、界面に存在する境膜によって物質移動速度はやはり分子拡散律速であることが分った。
第二の技術的手段は、被処理水の供給口を区分室の側壁又は区分室の下方に臨ませることであり、第三の技術的手段は、流路断面の差し渡し長さと上下の仕切板の対面間の間隔比を0.5〜15.0としたことであり、第四の技術的手段は、仕切板の開孔率を2〜20%としたことである。
また、第五の技術的手段は、微生物を固定させた担体を入れた区分室を多段に設け、被処理水が下段側から順次区分室を通過することである。
そのとき、仕切板の下側から空気や酸素を吹き込むと、被処理水は、従来の上下開放式の流路における流動とは全く異なった流動状態に置かれることになる。
本発明では、吹き込む空気又は酸素の空塔速度を50〜500m/hrとしているから、被処理水に上昇流、下降流、更には旋回流などの複雑で強い流動が不規則に発生して乱流状態となる。区分室内における担体や固体は、被処理水の乱流に伴って複雑な動きを余儀なくされ、また激しい回転が生じることになる。その結果、担体や固体と被処理水との間における流速に差が生じ、固液界面では剪断力が働くことになる。そのため、境膜は常に新しい液に更新されて境膜による物質移動の制限が緩和され、気液界面での物質移動(水への酸素の溶解)と固液界面の物質移動(微生物への有機物・酸素の供給)とが同時に促進されていると推測される。したがって、微生物本来の呼吸反応速度で有機物の分解反応が進み、飛躍的に処理量が増大するのである。
空塔速度は、空気を吹き込む場合は50〜500m/hrの範囲が適切であるが、強い乱流を得るには70〜400m/hrの範囲が好ましく、さらに担体の投入率(区分室内における静止状態で担体の占める割合)を高くし長期安定して除去率を維持するには200〜380m/hrの範囲が好ましい。
空塔速度が50m/hrより小さい場合には、偏流が生じ、存在させた担体の一部が流動しない場合があり、時間の経過とともにブロックを形成する。この傾向は担体の量が多くなるにつれて起こりやすくなる。また、500m/hrより大きい場合には、発泡現象が生じる場合があり好ましくない。
空塔速度が500m/hrより小さい場合でも発泡が発生する場合もあるが、その場合には、消泡剤を用いるか、断面積を拡大して空塔速度を若干小さくすることによって消泡することは可能である。
流路の側壁の形状は、特に限定するものではない。円筒、四角筒など任意の断面形状の筒でよい。
また、仕切板は、全面に空気と水と浮遊汚泥が通過する均一に分布した孔を有したものであれば、特に限定するものではない。仕切板の間隔Lは、上下の仕切板の間で激しい流動を起こさせるため、可能な限り短い方がよい。間隔Lは重要な因子である。長すぎると担体が下部に偏在する。円筒形の流路の場合はその直径をDとし、非円筒形の場合は断面の差し渡し長さの平均値をDとして、L/D=0.5〜15.0の範囲で選択することが好ましい。
仕切板の開孔率、すなわち「(小孔の総面積)÷(仕切板の断面積)×100」を2〜20%としておくと、適正な気泡を形成することができる。
なお、空気の吹き出しを偏らせないためには、仕切板を水平に配置しておくことが望ましいし、仕切板の小孔に微生物が詰まるのを防止するために、仕切板を抗菌性の材質で形成しておくことも望ましい。
担体に使用できる物質は限定されないが、ゲル状のポリビニルアルコール、合成ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレングリコールなどの汎用樹脂を好適に使用できる。
更に負荷量を増すと、酸素供給が限界に達し、反応量が一定になる。しかし、空気を酸素に切り換えて同じ量を吹き込むと、負荷量に見合う反応は完結する(図4、5参照)。
以上の事実より、本発明の処理能力は反応完結滞留時間のみで決定されることが明らかとなった。
区分室内で激しい攪拌をしていても、浮遊汚泥の凝集が起こり汚泥は沈降する。上澄水は白濁しているが、砂濾過で透明になる。
従来法では、沈降分離に重点をおいて、攪拌を穏やかにしてきたが、常識を破り、強烈な
攪拌をしても、固液分離に致命的な欠点が出ることはなかった。
そのため、処理設備の据付け面積を大幅に小さくできる利点もある。
また、予め担体に微生物を培養しておけば、供給する有機物の量に見合う汚泥が、担体内に、あるいは浮遊汚泥として短時間に生成し、有機物を完全に分解させられるから、MLSS(汚泥濃度)などの汚泥管理が全く不必要になり、省人化が可能となる。
内径56mm、高さ345mm、容積860mlの上向きに設置した曝気塔(流路)1の上下に、孔径3mm、開孔率4%の仕切り板2、3を取付けて区分室4を形成する。この区分室4に微生物を培養した多孔質高分子架橋体の担体5、5を86ml(10%)投入し、仕切板3の下から吹き込む空気6の吹込量を、5
l/min(122m/hr)、10 l/min(244m/hr)、15 l/min(366m/hr)、20 l/min(487m/hr)の4段階とし、これに比較例として30
1/min(731m/hr)を加え(カッコ内は空塔速度)、各段階で区分室4に供給する人工下水(日本下水道協会の下水道試験方法による。溶解している物質はグルコース、ペプトン、各種ミネラルである。)7の濃度を変化させて、滞留時間が4時間になるように217
ml/hrで供給し、担体負荷率を2〜26 kgTOC/m3担体・hrの高負荷にして、0.2μで濾過した処理水のTOCを測定した。
その結果、(a)5 l/minは担体負荷率約6
kgTOC/m3担体・hr、(b)10 l/minは約15kgTOC/m3担体・hr、(c)15 l/minは約20 kgTOC/m3担体・hrまで、それぞれ90%の除去率で安定して反応が完結している。(d)20
l/min以上では、発泡現象が生じ不安定になったが、消泡剤を添加した(e)20 l/minは26kgTOC/m3 担体・hrまで処理できた。しかし、比較例である(f)30 l/min では泡を消すことができなかった。そのため、(f)については限界負荷率(除去率が急に低下しはじめる担体負荷率)を測定していない(図4、5参照)。
この実施例では、人工下水7を下段の仕切板3の下側から供給しているが、区分室4の横から供給するようにしても同じ結果が得られた。
なお、図4の(g)について、実施例5として後述する。
内径56mm、高さ203mm、容積500mlの曝気塔の上下に孔径3mm、開孔率4%の仕切板を取付け、この区分室に微生物を培養した多孔質高分子架橋体の担体を50ml投入し、仕切板の下から、15
l/minの空気を吹込み、TOC180 mg/lの人工下水を流量を198 ml/hrから4560 ml/hrまで変化して供給した。人工下水の各流量とも、4時間以上継続して供給した後、処理水を0.2μ、0.8μの濾紙で濾過し、未濾過のものを含めてTOCを測定した。片対数目盛のグラフの横軸に滞留時間、縦軸にTOCを採り、測定結果をプロットした結果、0.2μで濾過した処理水の場合、滞留時間の増加に従って、処理水のTOCはほぼ直線的に低下し、その後滞留時間が増加しても、処理水のTOCが原水濃度の約15%(27mg/l)のまま変化しないで直線となった。この2本の直線の交点の滞留時間は1.8時間であった(図7参照)。
実施例2と同じ装置で、人工下水の濃度をTOC227mg/l、550mg/l、1314mg/lに変化させて、同じ方法で処理をした結果、処理水のTOCはいずれも実施例2と同じ勾配で減少し、2本の直線の交点での滞留時間は1.8時間であった(図7参照)。
実施例2と同じ装置で、担体の投入率を10%、20%、50%に変えて、同じ方法で処理した結果、処理水のTOCは、担体の投入率が増すほど減少勾配は急になり、2直線の交点の滞留時間も、それぞれ1.8時間、1.6時間、1.2時間となった(図6参照)。これは両対数目盛の横軸に投入率、縦軸に滞留時間を採ってプロットすると直線になる(図8参照)。
実施例1と同じ装置を用い、空気の代わりに純酸素を5 l/minで吹き込み、同様の方法で負荷量を変化させた結果、空気では除去率が70%以下に落ちた担体負荷率11kgTOC/m3担体・hrであっても、除去率90%で全く安定していた(図4、5参照)。
なお、図3は従来の曝気塔を示したものであり、この図における符号12は、返送汚泥流路である。
Claims (6)
- 微生物を固定させた担体を存在させた流路に有機物を含有する被処理水の供給路及び気体の供給路を連結し、微生物によって被処理水の有機物を酸化させるようにした装置において、縦方向に設置して上部を排出側とした流路、流路内に多数の小孔を穿設した仕切板を所定の間隔で上下に配置して仕切板と流路の側壁とで形成した区分室、区分室と連通させた被処理水の供給路、区分室の下に供給口を臨ませ50〜500m/hrの空塔速度で空気又は酸素を供給する気体供給装置とからなり、微生物を固定させた担体を存在させた区分室に供給した被処理水を乱流状態にして有機物を酸化させる有機物酸化装置。
- 被処理水の供給路を区分室の側壁又は区分室の下方に臨ませた請求項1に記載の有機物酸化装置。
- 流路断面の差し渡し長さと上下の仕切板の対面間の間隔の比を0.5〜15.0とした請求項1又は2に記載の有機物酸化装置。
- 仕切板の開孔率を2〜20%とした請求項1、2又は3に記載の有機物酸化装置。
- 微生物を固定させた担体を入れた区分室を多段に設け、被処理水が下段側から順次区分室を通過するようにした請求項1、2、3又は4に記載の有機物酸化装置。
- 微生物を固定させた担体を存在させた流路内に有機物を含有する被処理水と気体とを供給し、微生物によって被処理水の有機物を酸化する方法において、縦方向に設置して上部を排出側とした流路内に、多数の小孔を穿設した仕切板を所定の間隔で上下に配置して区分室を形成し、区分室内に微生物を固定させた担体を存在させた状態で区分室に被処理水を供給し、区分室の下から空気又は酸素を50〜500m/hrの空塔速度で供給して区分室内の被処理水を乱流状態にさせる有機物の酸化方法。
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