従来、光ディスク装置に搭載された光ピックアップは、光記録媒体に情報を記録する、または、光記録媒体から情報を再生するために用いられる。光記録媒体(光ディスク)としては、コンパクトディスク(Compact Disc、略称CD)、デジタルバーサタイルディスク(Digital Versatile Disc、略称DVD)、およびブルーレイディスク(Blu-lay Disc;登録商標、略称BD)などが挙げられる。
CDの記録/再生には、780nm近傍の赤外波長域のレーザ光が用いられる。DVDの記録/再生には、CDの記録/再生に用いられるレーザ光の波長よりも短い波長のレーザ光、具体的には650nm近傍の赤色波長域のレーザ光が用いられる。BDの記録/再生には、DVDの記録/再生に用いられるレーザ光の波長よりもさらに短い波長のレーザ光、具体的には405nm近傍の青紫色波長域のレーザ光が用いられる。このため、複数種類の光ディスクを読み書きすることが可能な光ディスク装置、すなわち光ピックアップが必要とされている。このような光ピックアップでは、発振波長の異なる複数の半導体レーザが、光源として用いられている。
ところが、複数の半導体レーザを用いる光ピックアップでは、装置内に複数の光路を有するために光学系が複雑になり、部品点数の増加や調整尤度の低下による、生産性の低下などが起こりやすくなる。そこで、光ピックアップの部品点数を減らし、かつ調整を容易とする、ホログラムレーザが極めて有用とされている(例えば、特許文献1〜4参照)。ホログラムレーザは、単一もしくは複数の半導体レーザ光源、受光素子、並びに、光ディスクからの反射光を受光素子に導くホログラム素子などが、単一パッケージに一体化されて構成されている。
次に、従来のホログラムレーザの構成を、図8に示す第1の従来例と図9に示す第2の従来例とを例示して説明する。なお、説明の便宜上、図8および図9の図面視における上下左右方向を、ホログラムレーザの上下左右方向として説明する。
図8は、第1の従来例を示すものであり、従来のホログラムレーザ100の構成を示す断面図である。図8に示すように、ホログラムレーザ100は、半導体レーザ101、受光素子102、ステム103、キャップ104、サブマウント105、モニタフォトダイオード106、およびホログラム素子107を備えている。
ステム103は、キャップ104によって形成されるパッケージ内部の実装面(以下、単に実装面とする)に、半導体レーザ101および受光素子102の台座となるステムブロック部103bが形成されている。ステムブロック部103bは、直方体の形状を有している。また、ステム103は、上記実装面の反対側の面に、外部と接続可能なステムリード103aが、下方向に突き出すように形成されている。
キャップ104は、平らな底面を持つキャップ型の形状を有しており、底面が上方に位置してステム103との間に内部空間を形成するように、ステム103に固定される。キャップ104の底面には開口部が形成されており、この開口部を覆うように、キャップガラス104aが内側に設けられている。
半導体レーザ101は、ステムブロック部103bの側面(ステム103の実装面と垂直な面)に固定されたサブマウント105に実装されている。そして、半導体レーザ101は、レーザ光の出射方向が、ステム103の実装面に対し垂直であって上方向となるように配置されている。すなわち、半導体レーザ101の出射レーザ軸は、ステム103の実装面に対し垂直になっている。サブマウント105は、半導体レーザ101の出射部の位置を調整するためのものである。
受光素子102は、受光面が上側に向くように、ステムブロック部103bの上面(ステム103の搭載面と平行な上側の面)に実装されている。モニタフォトダイオード106は、受光面が上側に向くように、ステム103の実装面に搭載されている。
ホログラム素子107は、キャップ104の開口部を覆うように、キャップ104の上に固定されている。そして、ホログラム素子107の上面には、ホログラムパターン107aが形成されている。ホログラムパターン107aは、半導体レーザ101から出射されるレーザ光(光L101)をその出射方向のまま透過させるとともに、外部から入射される光(光L102)を受光素子102に導くように回折させるパターンを持つ。
このように、半導体レーザ101、受光素子102、およびモニタフォトダイオード106は、ステム103およびキャップ104により形成されるパッケージの内部空間に配置されている。半導体レーザ101からホログラム素子107に向かう光L101、および、ホログラム素子107から受光素子102に向かう光L102は、キャップ104のキャップガラス104aを透過する。
上記構成を有するホログラムレーザ100では、半導体レーザ101からの光L101が、キャップガラス104a、ホログラム素子107、およびホログラムパターン107aを透過して出射され、例えば光ピックアップに備えられた光学系を介して光ディスクに照射される。そして、光L101が上記光ディスクに反射して生じた光L102が、上記光学系を介して進み、ホログラムレーザ100に入射する。そして、上記入射した光L102は、ホログラム素子107上のホログラムパターン107aにより回折され、ホログラム素子107およびキャップガラス104aを透過して、受光素子102へと導かれ受光される。これにより、信号処理が可能となっている。
ここで、ホログラムパターン107aでの回折角は、ホログラムパターン107aのピッチが小さいほど、また、光の波長が長いほど大きくなる。しかし、ピッチが小さくなると、製造の難易度が高くなることから生産性に欠ける。このため、ホログラムパターン107aの回折角には制限が発生し、半導体レーザ101および受光素子102は距離的制約を持つ。特に波長の短いBD用半導体レーザなどでは、より距離的制約が厳しくなる。
また、光ディスクへ向かう光L101は、大部分がホログラムパターン107aをその出射方向のまま透過する一方、一部が回折してしまうため、光パワーロス(光強度の損失)が発生する。そこで、これらを考慮した図9に示すホログラムレーザ110が提案されている。
図9は、第2の従来例を示すものであり、従来のホログラムレーザ110の構成を示す断面図である。図9に示すように、ホログラムレーザ110は、図8のホログラムレーザ100の構成のうちホログラム素子107を除いた構成に加えて、ホログラム素子111、およびプリズム112を備えている。
ホログラム素子111は、キャップ104の開口部を覆うように、キャップ104の上に固定されている。そして、ホログラム素子111の上面には、ホログラムパターン111a・111bがそれぞれ形成されている。ホログラムパターン111aは、半導体レーザ101から出射されるレーザ光(光L103)をその出射方向のまま透過させるとともに、プリズム112からの光(光L106)を受光素子102に導くように回折させるパターンを持つ。ホログラムパターン111bは、プリズム112からの光(光L105)を受光素子102に導くように回折させるパターンを持つ。
プリズム112は、ホログラム素子111の上に固定されている。プリズム112は、特定波長の光に対し偏光方向依存性を有しており、光分離面112aおよび反射面112bを内部に有している。光分離面112aは、反射方向と垂直な偏光(P偏光)を持つある波長の光に対しては全透過し、反射方向と平行な偏光(S偏光)を持つある波長の光に対しては全反射する(90°曲げる)。光分離面112aは、半導体レーザ101からの光L103の光路、および、光ディスクからの光L104の光路を横切るように設けられている。反射面112bは、光分離面112aから進んできた光を全反射する(90°曲げる)。
上記構成を有するホログラムレーザ110では、半導体レーザ101からの光L103が、キャップガラス104a、ホログラム素子111、ホログラムパターン111a、およびプリズム112(光分離面112a含む)を透過して出射され、例えば光ピックアップに備えられた光学系を介して光ディスクに照射される。このとき、半導体レーザ101は、構造上、ステムブロック部103bとの接触面に対して垂直な方向の偏光特性を有する。よって、半導体レーザ101からの光L103は、プリズム112の反射方向に対して垂直な偏光特性となり、全透過する。
そして、光L103が上記光ディスクに反射して生じた光L104が、上記光学系を介して進み、ホログラムレーザ110に入射する。ここで、光ディスクに光を集光する際は、光ディスクの偏光特性を無視するため円偏光にすることが多く、ホログラムレーザ110と光ディスクとの間には1/4波長板が挿入されていることから、光ディスクからの反射光はS偏光であることが多い。この場合、S偏光の光L105のみが、プリズム112の光分離面112aおよび反射面112bにおいて全反射され、ホログラム素子111上のホログラムパターン111bにより回折されて、ホログラム素子111およびキャップガラス104aを透過して、受光素子102へと導かれ受光される。
このようなプリズム112の特性を利用することで、図9に示すホログラムレーザ110では、光のロス無く、また、図8に示すホログラムレーザ100が有する半導体レーザ101と受光素子102との距離的制約を無視して、光ディスクからの反射光を受光素子102に導くことが可能となっている。
また、特定波長以外の光に対しては、プリズム112は機能せず、常に全透過する。それゆえ、半導体レーザ101が複数波長のレーザ光を発生することが可能で、かつ受光素子102が複数波長の光を検出可能な場合、光ディスクからの特定波長の反射光を光分離面112aおよび反射面112bで反射させホログラムパターン111bに導くとともに、それ以外の波長の光を光分離面112aで透過させホログラムパターン111aに導き、各ホログラムパターン111a・111bでそれぞれ回折することによって受光素子102の同一位置に落射させる。これにより、図9に示すホログラムレーザ110では、複数波長の信号処理を単一パッケージで行うことが可能となっている。
しかしながら、従来のホログラムレーザ110では、半導体レーザ101と受光素子102とが、互いに直交する異なる面にそれぞれ実装されている。このため、半導体レーザ101および受光素子102をステムブロック部103bに接着するダイボンド工程、並びに、半導体レーザ101とステムリード103aとの間および受光素子102とステムリード103aとの間を金線でつなぐワイヤボンド工程での作業を、ステム103の向きを変えて(図横方向から)行う必要があり、大きく生産性が低下するという問題がある。
また、半導体レーザ101は、高出力化すればするほど、長い共振器が必要となるため長くなる。それゆえ、半導体レーザ101がステムブロック部103bにダイボンドされる構成では、半導体レーザ101の高出力化に伴い、より高い(図9の上下方向)ステムブロック部103bが必要となる。この結果、ステムブロック部103bは低いほど製造が容易であり安価になるが、ステムブロック部103bが高くなることによって、ステム103の製造が複雑になり、ステム103が高価になる。さらには、高さ方向のパッケージ寸法を増加させる。
なお、例えば特許文献4に記載のように、半導体レーザおよび受光素子が基板の同一面に実装され、半導体レーザから出射するレーザ光を反射ミラーによって上方に反射させる構成もある。但し、この構成では、基板すなわちパッケージの短手方向に沿って、半導体レーザの出射方向が配置されるため、半導体レーザの高出力化に伴って、短手方向のパッケージの寸法が増加する。
また、ホログラムレーザを光ピックアップに搭載する時は、パッケージの短手方向が光ピックアップの厚み方向になるように装着されるため、パッケージの短手方向の長さが、光ピックアップの薄型化に影響を与える。よって、上記特許文献4に記載の構成によれば、半導体レーザの高出力化に伴って、光ピックアップの薄型化に支障をきたす。このように、半導体レーザの配置はパッケージ寸法に制限を与える。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、部品実装時の生産性向上を図るとともに、高出力の半導体レーザを用いる場合であっても小型化(薄型化)を実現することができるレーザ装置、および光ピックアップを提供することにある。
本発明のレーザ装置は、上記課題を解決するために、光記録媒体に向けて光を出射し、該光記録媒体から反射される光を受光するレーザ装置であって、基台と、上記基台の一方の面に配置され、上記基台の一方の面に対し平行な方向に光を出射する半導体レーザと、上記基台の一方の面に配置され、上記半導体レーザから出射される光を、上記基台の一方の面に対し垂直かつ離れる方向に反射させる立ち上げミラーと、上記立ち上げミラーから上記光記録媒体に至る光路中に配置され、上記立ち上げミラーから反射される光を偏光方向に応じて透過させるとともに、上記光記録媒体から反射される光を偏光方向に応じて分離させる光学部品と、上記基台の一方の面に配置され、上記光学部品から分離される光を受光する受光素子と、少なくとも上記半導体レーザ、上記立ち上げミラー、および上記受光素子を内包するように上記基台の一方の面に配置され、上記立ち上げミラーから上記光学部品に進む光、および、上記光学部品から上記受光素子に進む光が通る開口部が形成されたキャップとを備え、上記光学部品は、上記キャップの開口部を覆うように配置され、上記半導体レーザから出射される光が上記光学部品を透過するように偏光方向を変換する偏光変換手段が、上記半導体レーザから上記光学部品へ至る光路中、または、上記光学部品内に配置されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、偏光変換部材が設けられていることにより、半導体レーザから出射される光を、偏光方向に関係なく、光学部品を透過させることが可能となる。またこれにより、半導体レーザの出射光を立ち上げミラーにより反射させる構成とし、光学部品の偏光方向に応じて光を分離する特性を維持しながら、半導体レーザを受光素子と同一面に配置することが可能となる。したがって、半導体レーザおよび受光素子を基台に実装するときの生産性向上を図ることが可能となる。
なお、従来では、半導体レーザは、その出射光が光学部品を透過する偏光方向となるように、その出射方向に制限があった。しかも、半導体レーザは高出力化に伴い長くなる(出射方向に沿って長くなる)ため、パッケージ寸法は半導体レーザの配置に依存して制限されていた。
これに対し、上記の構成によれば、立ち上げミラーおよび偏光変換手段によって、半導体レーザの出射方向を基台の一方の面に対し平行な方向とすることが可能となるので、基台の一方の面に対し垂直な方向のパッケージ寸法を小さくすることが可能となる。また、基台の一方の面に対し平行な方向においても、半導体レーザの出射方向の自由度が高くなっている。よって、高出力の半導体レーザを用いる場合であっても、小型化(薄型化)を実現することが可能となる。
また、本発明のレーザ装置は、上記基台の一方の面は、長円型の形状を有しており、上記半導体レーザは、上記基台の一方の面の長手方向に沿って光を出射するように配置されていることが好ましい。
レーザ装置は、例えば光ピックアップに構成されたとき、パッケージの短手方向が光ピックアップの厚み方向となる。よって、上記の構成によれば、半導体レーザの出射方向をパッケージの長手方向とすることによって、高出力の半導体レーザを用いる場合であっても、光ピックアップ構成時の薄型化に寄与することが可能となる。
また、本発明のレーザ装置は、上記偏光変換手段は、上記立ち上げミラーの反射面に配置された1/4波長板であることが好ましい。
また、本発明のレーザ装置は、上記偏光変換手段は、上記キャップの開口部を覆うように上記キャップの内側の面に配置された1/2波長板であることが好ましい。
また、本発明のレーザ装置は、上記光学部品は、上記偏光方向に応じて分離された光を上記受光素子に落射させるホログラム素子を含み、上記偏光変換手段は、上記ホログラム素子に配置された1/2波長板であることが好ましい。
また、本発明のレーザ装置は、上記半導体レーザは、複数の波長の光を出射することが好ましい。
また、本発明のレーザ装置は、上記光学部品は、P偏光の光を透過し、かつS偏光の光を回折する偏光ホログラム素子を含むことが好ましい。
また、本発明のレーザ装置は、上記光学部品は、P偏光の光を透過し、かつS偏光の光を90°曲げるプリズムを含むことが好ましい。
本発明の光ピックアップは、上記課題を解決するために、半導体レーザおよび受光素子を含む上記レーザ装置と、上記半導体レーザから出射される光を光記録媒体に導くとともに、該光記録媒体から反射される光を上記受光素子に導く光学系とを備えることを特徴としている。
上記の構成によれば、上記レーザ装置を備えることで、薄型化した光ピックアップを実現することが可能となる。
以上のように、本発明のレーザ装置は、基台と、上記基台の一方の面に配置され、上記基台の一方の面に対し平行な方向に光を出射する半導体レーザと、上記基台の一方の面に配置され、上記半導体レーザから出射される光を、上記基台の一方の面に対し垂直かつ離れる方向に反射させる立ち上げミラーと、上記立ち上げミラーから上記光記録媒体に至る光路中に配置され、上記立ち上げミラーから反射される光を偏光方向に応じて透過させるとともに、上記光記録媒体から反射される光を偏光方向に応じて分離させる光学部品と、上記基台の一方の面に配置され、上記光学部品から分離される光を受光する受光素子と、少なくとも上記半導体レーザ、上記立ち上げミラー、および上記受光素子を内包するように上記基台の一方の面に配置され、上記立ち上げミラーから上記光学部品に進む光、および、上記光学部品から上記受光素子に進む光が通る開口部が形成されたキャップとを備え、上記光学部品は、上記キャップの開口部を覆うように配置され、上記半導体レーザから出射される光が上記光学部品を透過するように偏光方向を変換する偏光変換手段が、上記半導体レーザから上記光学部品へ至る光路中、または、上記光学部品内に配置されている構成である。
それゆえ、偏光変換部材が設けられていることにより、半導体レーザから出射される光を、偏光方向に関係なく、光学部品を透過させることが可能となる。またこれにより、半導体レーザの出射光を立ち上げミラーにより反射させる構成とし、光学部品の偏光方向に応じて光を分離する特性を維持しながら、半導体レーザを受光素子と同一面に配置することが可能となる。したがって、半導体レーザおよび受光素子を基台に実装するときの生産性向上を図ることができるという効果を奏する。
また、立ち上げミラーおよび偏光変換手段によって、半導体レーザの出射方向を基台の一方の面に対し平行な方向とすることが可能となるので、基台の一方の面に対し垂直な方向のパッケージ寸法を小さくすることが可能となる。また、基台の一方の面に対し平行な方向においても、半導体レーザの出射方向の自由度が高くなっている。よって、高出力の半導体レーザを用いる場合であっても、小型化(薄型化)を実現することができるという効果を奏する。
また、本発明の光ピックアップは、半導体レーザおよび受光素子を含む上記レーザ装置と、上記半導体レーザから出射される光を光記録媒体に導くとともに、該光記録媒体から反射される光を上記受光素子に導く光学系とを備える構成である。
それゆえ、上記レーザ装置を備えることで、薄型化した光ピックアップを実現することができるという効果を奏する。
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
本実施の形態では、CD,DVD,BDなどの光ディスク(光記録媒体)に向けて光を出射し、その光ディスクから反射される光を受光するホログラムレーザ(レーザ装置)について説明する。以下では、まず、本発明の元となる比較例について説明し、その後、本発明の実施例について順番に説明する。
なお、以下では、説明の便宜上、図2の図面視における上下左右方向を、ホログラムレーザの上下左右方向として説明し、図3の図面視における上下方向および左右方向を、ホログラムレーザの短手方向および長手方向として説明する。また、本明細書において、「平行」「垂直」「90°」とは、厳密に平行,垂直,90°であることを示すのではなく、実質的に平行,垂直,90°とみなせる範囲(略平行,略垂直,略90°)を示している。
(1−1)比較例
図2は、本発明の比較例におけるホログラムレーザ1の構成を示す断面図である。図3は、図2のホログラムレーザ1におけるステム13上の構成を示す平面図である。
図2,3に示すように、ホログラムレーザ1は、半導体レーザ11、受光素子12、ステム13、キャップ14、サブマウント15、モニタフォトダイオード16、立ち上げミラー17、ホログラム素子18、およびプリズム19を備えている。
ステム13は、キャップ14によって形成されるパッケージ内部の実装面(以下、単に実装面とする)に、半導体レーザ11および受光素子12の台座となるステムブロック部13bが形成されている。ステムブロック部13bは、直方体の形状を有しているが、これに限らない。また、ステム13は、上記実装面の反対側の面に、外部と接続可能なステムリード13aが、下方向に突き出すように形成されている。
ステム13の実装面は、図3に示すように長円型(小判型や、角が丸い長方形とも言う)の形状を有している。ステム13の実装面の外郭は、図3の図面視でのホログラムレーザ1の外郭を形成する。ステム13は、例えば、金や銅、鉄、鉄の基台に銅を乗せた物などからなるが、ステム13はヒートシンクとしての機能も有しているので、特に金や銅などの放熱性のよい材料からなることが好ましい。
キャップ14は、平らな底面を持つキャップ型の形状を有しており、底面が上方に位置してステム13との間に内部空間を形成するように、ステム13に固定される。キャップ14の底面には開口部が形成されており、必要に応じ、この開口部を覆うように(閉じるように)、キャップガラス14aが内側に設けられて、真空ないしは不活性ガス封入のための密閉機能を果たす。
半導体レーザ11は、チップ形状を有しており、ステム13の実装面に固定されたサブマウント15に実装されている。そして、半導体レーザ11は、レーザ光の出射方向が、ステム13の実装面に対し平行であって、該実装面の長手方向に沿った方向となるように配置されている。すなわち、半導体レーザ11の出射レーザ軸は、ステム13の実装面に対し平行になり、かつ該実装面の長手方向に沿っている。サブマウント15は、半導体レーザ11の出射部の位置を調整するためのものであり、その高さは適宜変更が可能である。また、サブマウント15を設けずに、半導体レーザ101がステム13上に直接ダイボンドされる構成としてもよい。
半導体レーザ11としては、例えば、780nm近傍の赤外波長域のレーザ光を発するCD用半導体レーザや、650nm近傍の赤色波長域のレーザ光を発するDVD用半導体レーザ、405nm近傍の青紫色波長域のレーザ光を発するBD用半導体レーザなどが用いられる。また、半導体レーザ11としては、CD用、DVD用、およびBD用などの複数の波長のレーザ光を発するものであってもよい。
受光素子12は、受光面が上側に向くように、ステムブロック部13bの上面(ステム13の実装面と平行な上側の面)に実装されている。受光素子12は、例えばフォトダイオードであり、光ディスクからの反射光を受光し、その光強度に対応する電流に変換して反射光の検出信号を得る。なお、受光面には、半導体レーザ11が出射する波長のレーザ光に応じて、少なくとも1つの受光領域が設けられていればよい。
モニタフォトダイオード16は、半導体レーザ11のチップ後面から発せられるレーザ光の強度をモニタすることで、半導体レーザ11のチップ前面に発せられるレーザ光の強度を制御するものである。モニタフォトダイオード16は、半導体レーザ11の共振器の延長上であって、かつ受光面が上側に向くように、ステム103の実装面に実装されている。半導体レーザ11は前面だけではなく、後面からもレーザ光を発しており、その前面と後面との出力比はほぼ一定である。そのため、後面の出力を測定することで、前面の出力を推測することが可能となっている。なお、モニタフォトダイオード16は必ずしも設置する必要はなく、例えば、ホログラムレーザ1を光ピックアップに実装する際に、より確実な前面のモニタを設置する場合は、モニタフォトダイオード16を設置する必要はない。
立ち上げミラー17は、半導体レーザ11から出射されるレーザ光を、反射面において、ステム103の実装面に対し垂直かつ上方向(離れる方向)に反射させる。すなわち、立ち上げミラー17は、図2に示すように、半導体レーザ11から出射されるレーザ光の光軸を上側に90°曲げる。立ち上げミラー17は、ステム13の実装面に実装されている。
ホログラム素子18は、キャップ14の開口部を覆うように、キャップ14の上に固定されている。そして、ホログラム素子18の上面には、ホログラムパターン18aが形成されている。ホログラムパターン18aは、プリズム19からの光(光L2)を受光素子12に導くように回折させるパターンを持つ。また、ホログラム素子18は、半導体レーザ101から出射されるレーザ光(光L1)をその出射方向のまま透過させる。
プリズム19は、ホログラム素子18の上に固定されている。プリズム19は、特定波長の光に対し偏光方向依存性を有しており、光分離面19aおよび反射面19bを内部に有している。光分離面19aは、反射方向と垂直な偏光(P偏光)を持つある波長の光に対しては全透過し、反射方向と平行な偏光(S偏光)を持つある波長の光に対しては全反射する(90°曲げる)。光分離面19aは、半導体レーザ11からの光L1の光路、および、光ディスクからの光L2の光路を横切るように設けられている。反射面19bは、光分離面19aから進んできた光を全反射する(90°曲げる)。
このように、半導体レーザ11、受光素子12、モニタフォトダイオード16、および立ち上げミラー17は、ステム13およびキャップ14により形成されるパッケージの内部空間に配置されている。すなわち、半導体レーザ11、受光素子12、モニタフォトダイオード16、および立ち上げミラー17は、ステム13およびキャップ14により内包されている。立ち上げミラー17からホログラム素子18に向かう光L1、および、ホログラム素子18から受光素子12に向かう光L2は、キャップ104のキャップガラス104aを透過する。
上記構成を有するホログラムレーザ1では、半導体レーザ11からの光L1が、キャップガラス14a、ホログラム素子18、およびプリズム19(光分離面19a含む)を透過して出射され、例えば光ピックアップに備えられた光学系を介して光ディスクに照射される。
しかしながら、ホログラムレーザ1の構造の場合、半導体レーザ11から出射されるP偏光のレーザ光は、立ち上げミラー17で反射されることによって、S偏光のレーザ光としてプリズム19に入射する。このため、レーザ光はプリズム19により全反射してしまい、光ディスクに到達しない。
この対策として、半導体レーザ11を、パッケージの短手方向(図3の上下方向)にレーザ光を出射するように配置するという方法もある。しかし、ホログラムレーザ1を光ピックアップに搭載する時は、パッケージの短手方向が光ピックアップの厚み方向になるように装着されるため、上記の方法による配置の場合、短手方向のパッケージの寸法が増加してしまい、光ピックアップの薄型化が困難となる。
次に、上記比較例のホログラムレーザ1の問題点を解消した、本発明の各実施例について説明する。なお、各実施例において説明すること以外の構成は、比較例と同じである。また、説明の便宜上、比較例の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
(1−2)実施例1
図1は、本発明における第1の実施例を示すものであり、ホログラムレーザ10の構成を示す断面図である。
図1に示すように、ホログラムレーザ10は、図2のホログラムレーザ1の構成に加えて、1/4波長板17aを備えている。1/4波長板17aは、立ち上げミラー17の反射面に配置されており、例えば1/4波長板の機能を備えた誘電体膜などを、立ち上げミラー17の反射面に蒸着もしくは接着することによって形成される。すなわち、立ち上げミラー17に1/4波長板機能が付加されている。
ホログラムレーザ10では、半導体レーザ11から出射された光L11は、立ち上げミラー17上の1/4波長板17aにより円偏光になってから、立ち上げミラー17に入射する。そして、立ち上げミラー17の反射面にて反射後、再度1/4波長板17aにより偏光方向が90°回転したP偏光の光L11となって、プリズム19に入射する。よって、半導体レーザ11から出射される光を、偏光方向に関係なく、プリズム19を透過させることが可能となる。
また、1/4波長板17aにより半導体レーザ11から出射される光をプリズム19を透過させることが可能であるので、半導体レーザ11の出射光を立ち上げミラー17により反射させる構成とし、プリズム19の偏光方向に応じて光を分離する特性を維持しながら、半導体レーザ11を受光素子12と同一面に配置することが可能なる。したがって、半導体レーザ11および受光素子12をステム13に実装するときの生産性向上を図ることが可能となる。
なお、従来では、半導体レーザは、出射光が光学部品を透過する偏光方向となるように、その出射方向に制限があった。しかも、半導体レーザは高出力化に伴い長くなる(出射方向に沿って長くなる)ため、パッケージ寸法は半導体レーザの配置に依存して制限されていた。
これに対し、ホログラムレーザ10の構成によれば、立ち上げミラー17および1/4波長板17aによって、半導体レーザ11の出射方向をステム13の実装面に対し平行な方向とすることが可能となるので、ステム13の実装面に対し垂直な方向のパッケージ寸法を小さくすることが可能となる。また、ステム13の実装面に対し平行な方向においても、半導体レーザ11の出射方向の自由度が高くなっている。よって、高出力の半導体レーザ11を用いる場合であっても、小型化を実現することが可能となる。
また、ホログラムレーザ10では、特に、半導体レーザ11は、ステム13の実装面の長手方向に沿って光を出射するように配置されている。よって、実装面の短手方向の寸法を抑えることができ、ひいてはパッケージの短手方向の寸法を抑えることができる。この結果、ホログラムレーザ10を光ピックアップに搭載する際にパッケージの短手方向を光ピックアップの厚み方向になるように装着する場合、高出力の半導体レーザを用いる場合であっても、光ピックアップ構成時の薄型化に寄与することが可能となる。
以上、第1の実施例について説明したが、必ずしもプリズム19を備えていなくてもよい。つまりは、光ディスクから反射される光L12を、波長に応じて分離するとともに、受光素子12の所定の位置に落射させる光学部品を備えていればよく、例えば、ホログラム素子18として、ホログラム素子18の機能に加えて、P偏光を透過かつS偏光を回折する機能を持つ偏光ホログラム素子を用いれば、プリズム19を使わなくても、高効率で受光素子12に光を導くことが可能となる。
また、ホログラムレーザ10では、1/4波長板17aによって、半導体レーザ11から出射される光L11が光学部品を透過するように偏光方向を変換したが、1/4波長板17aに限るものではなく、上記偏光方向を変換する機能を有する偏光変換手段が、半導体レーザ11から光学部品へ至る光路中に配置されていればよい。
(1−3)実施例2
図4は、本発明に係る第2の実施例を示すものであり、ホログラムレーザ20の構成を示す断面図である。
図4に示すように、ホログラムレーザ20は、図2のホログラムレーザ1の構成のうちキャップガラス14aを除いた構成に加えて、1/2波長板14bを備えている。1/2波長板14bは、キャップガラス14aの代わりに配置されている。すなわち、1/2波長板14bは、1/2波長板機能が付加されたキャップガラス14aと同等の機能を有する。
よって、ホログラムレーザ20では、半導体レーザ11から出射された光L11は、1/2波長板14bにより90゜の偏光が与えられ、P偏光の光L11となって、プリズム19に入射する。したがって、半導体レーザ11から出射される光を、偏光方向に関係なく、プリズム19を透過させることが可能となる。
(1−4)実施例3
図5は、本発明に係る第3の実施例を示すものであり、ホログラムレーザ30の構成を示す断面図である。
図5に示すように、ホログラムレーザ30は、図2のホログラムレーザ1の構成に加えて、1/2波長板18bを備えている。1/2波長板18bは、ホログラム素子18の下面(キャップ14と対向する側の面)に配置されており、例えば1/2波長板の機能を備えた誘電体膜などを、ホログラム素子18の下面に蒸着もしくは接着することによって形成される。
よって、ホログラムレーザ30では、半導体レーザ11から出射された光L11は、1/2波長板18bにより90゜の偏光が与えられ、P偏光の光L11となって、プリズム19に入射する。したがって、半導体レーザ11から出射される光を、偏光方向に関係なく、プリズム19を透過させることが可能となる。
また、1/2波長板18bのように、半導体レーザ11から出射される光L11が光学部品を透過するように偏光方向を変換する偏光変換手段は、ホログラム素子18を含む光学部品内に配置されていてもよい。
(1−5)実施例4
図6は、本発明に係る第4の実施例を示すものであり、ホログラムレーザ40の構成を示す断面図である。
図6に示すように、ホログラムレーザ40は、図2のホログラムレーザ1の構成に加えて、1/2波長板18cを備えている。1/2波長板18cは、ホログラム素子18の上面(プリズム19と対向する側の面)に配置されており、例えば1/2波長板の機能を備えた誘電体膜などを、ホログラム素子18の上面に蒸着もしくは接着することによって形成される。
よって、ホログラムレーザ40では、半導体レーザ11から出射された光L11は、1/2波長板18cにより90゜の偏光が与えられ、P偏光の光L11となって、プリズム19に入射する。したがって、半導体レーザ11から出射される光を、偏光方向に関係なく、プリズム19を透過させることが可能となる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
本実施の形態では、前記実施の形態1で説明した実施例1〜4のホログラムレーザを備える光ピックアップについて説明する。
図7は、本実施の形態の光ピックアップ50の一構成例を示す断面図である。
図7に示すように、光ピックアップ50は、ホログラムレーザ10、ホログラムレーザ10からの拡散光を平行光とするためのコリメータレンズ51、ホログラムレーザ10からの直線偏光の光を光ディスク54の偏光依存性を無視できる円偏光にするための1/4波長板52、および、光ディスク54にホログラムレーザ10からの光を集光するための対物レンズ53を備え、パッケージングされたものである。
コリメータレンズ51は固定されていても構わないが、軸摺動機能を持たせることが望ましい。これにより、光ディスク54の樹脂厚による収差を補正することが可能となる。
ホログラムレーザ10の構成によれば、立ち上げミラー17および1/4波長板17aによって、半導体レーザ11の出射方向をステム13の実装面に対し平行な方向とすることが可能となるので、ステム13の実装面に対し垂直な方向のパッケージ寸法を小さくすることが可能となる。また、ステム13の実装面に対し平行な方向においても、半導体レーザ11の出射方向の自由度が高くなっている。よって、高出力の半導体レーザ11を用いる場合であっても、小型化を実現することが可能となる。
また、ホログラムレーザ10では、特に、半導体レーザ11は、ステム13の実装面の長手方向に沿って光を出射するように配置されている。よって、実装面の短手方向の寸法を抑えることができ、ひいてはパッケージの短手方向の寸法を抑えることができる。この結果、ホログラムレーザ10を光ピックアップ50に搭載する際にパッケージの短手方向を光ピックアップ50の厚み方向になるように装着する場合、高出力の半導体レーザ11を用いる場合であっても、光ピックアップ構成時の薄型化に寄与することが可能となる。
よって、ホログラムレーザ10を備えることで、薄型化した光ピックアップ50を実現することが可能となる。また勿論、光ピックアップ50では、ホログラムレーザ10に替えて、ホログラムレーザ20,30,40のうち何れかを備えてもよい。何れを備える場合であっても、上述の効果を同様に奏する。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。