JP2011094353A - 耐火目地構造及びこの耐火目地構造を有する外壁 - Google Patents

耐火目地構造及びこの耐火目地構造を有する外壁 Download PDF

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Abstract

【課題】水分の気化熱を利用して耐火性能を高めた目地構造を提案する。
【解決手段】構造物の外壁を構成する2つの壁体の対向端部の内側部の間に架設された連結金物12と、構造物外方の火災から連結金物を保護するために、上記目地空間のうち外側部を除く部分である奥部内に少なくとも充填された保水部材22とを具備し、上記連結金物は、一方の壁体から他方の壁体へ突出する取付板部14bと、この取付板部から目地空間の奥部に突入し、他方壁体の対向端面に固定した埋込み板部14aとを有し、上記保水部材22は、一定の温度以下では水を殆ど放出せず、一定温度以上で放出する材料で形成されており、かつ連結金物の表面のうち目地空間6に露出する部分の全部を覆合するように構成した。
【選択図】図2

Description

本発明は、耐火目地構造及びこの耐火目地構造を有する外壁に関する。
従来、建物の外壁パネルの目地として、目地の外端を防水用のシーリング材で塞ぎ、このシーリング材の裏側(目地底)にシーリング材の3面接着を防ぐためのバックアップ材を設け、さらに残りの部分にロックウールなどの耐火材を充填したものが知られている(特許文献1)。また外壁パネルの各対向端面にチャンネル状の枠板を取り付け、この枠板を金具でつなぐ連結具が知られている(特許文献2)。
さらに建物の外壁に限らないが、構造物を構成する2つの壁材の連結部分を耐火被覆材で覆うことが従来から行われている(特許文献3)。
また火焔が目地を貫通することを防止するために、対向する壁材の端面の一方に熱膨張製耐火材(熱膨張性黒鉛など)を取り付け、火災になるとこの熱膨張性耐火材が膨張して目地を閉鎖するものが知られている(特許文献4)。
特開平08−049387号 特開平07−180241号 特開2005−188232 特許第3790468号 特開平11−315605号
村上知弘 「汗濡れ損防止用再利用可能高分子ゲル吸水シート」2006年1月21日
建物の外壁には、建築基準法によりパネル材をつなぐ金具の建物内側での温度上昇が火災時に所定時間内に一定値以下に抑制されることが求められる。建物の内壁に多く用いられる特許文献2の連結具は、目地の内側から外側へ延びているため、金属の熱伝導性の良さから簡単に規定の温度を超えてしまう。そこで出願人は、建物の外壁に多く用いられる、建物の内側から目地構造の半ばまで挿入されるL字形の連結金具を用いて、外壁パネルを連結し、耐火性能を試験した。
屋内火災を想定した結果では、所定の耐火性能(遮炎性)を満足することが確認された。しかしながら、屋外火災を想定した試験では、試験開始から25分程度で建物内側の金具部分の温度が180K上昇し、十分な遮熱性が得られないことが判った。このため、現状では金具部分に吹き付けロックウール等の耐火材による被覆が要求されている。
目地空間内に端部を差し込むタイプのL字形の連結金具では、屋外火災の場合には、その端部が火元に近い位置にあるために温度が上昇し易い。特許文献1のロックウールのように熱伝導を抑制する素材を目地空間内に充填すれば、L字形金具の温度上昇をある程度抑えられるが、上述の耐火基準を満たすには至らない。
この問題に対処する一つの方法は、目地空間内に入らないような連結金具の形状を採用することである。しかしながら、施工法によっては、壁体の連結手段としてL字形の連結金具を使用したい場合がある。例えばL字形の連結金具の端部を支点として、壁体が面内方向へ回転運動するロッキング構造(特許文献5参照)とする場合や後述のスライド構造を採用する場合である。
この問題に対処する他の方法は、連結具の金具部分をロックウール等の耐火材で直接被覆することである(特許文献3参照)。これにより屋外火災に対する外壁裏面側の温度上昇はある程度抑えられる。しかしながら、耐火被覆作業をするにはコストと時間と手間がかかる。
故にロックウールなどの耐火被覆材とは異なる着想で経済的に目地の耐火性能を向上することが要望されている。
本発明の第1の目的は、水分の気化熱を利用して耐火性能を高めた目地構造を提案することである。
本発明の第2の目的は、水分を含む材料を目地空間の奥部に建物内側から挿入される金具の周囲に設け、金具の温度上昇を抑制させた目地構造を提案することである。
本発明の第3の目的は、目地空間内の保水量を十分大きくすることが可能な形状を有する目地構造を提案することである。
第1の手段は、
構造物の外壁を構成するために垂直方向又は水平方向に連ねた少なくとも2枚のパネル材などの壁体の対向端部の間に形成した耐火目地構造であって、
両壁体の対向端面と、
上記壁体の対向端部のうち構造物内側部の間に架設された連結金具と、
構造物外方の火災から連結金具を保護するために、上記目地空間のうち外側部を除く部分である奥部内に少なくとも充填された保水部材と、を具備し、
上記連結金具は、一方の壁体から他方の壁体へ突出する取付板部と、この取付板部から目地空間の奥部に突入し、他方壁体の対向端面に固定した埋込み板部とを有し、
上記保水部材は、一定の温度以下では水を殆ど放出せず、一定温度以上で放出する材料で形成されており、かつ連結金具の表面のうち目地空間に露出する部分を覆合するように構成している。
本手段は、目地空間内に水分を包含し、火災のときにその水分が蒸発することで連結金具の温度上昇を遅らせることを目的としている。連結金具は図2に示す如く建物の内側から目地空間の奥部に一部(埋込み板部)を挿入させてあり、目地空間の外端には達していない。連結金具が建物の外側まで露出していると、温度上昇が早いからである。なお、上記両壁体の対向端面の間に、目地空間の外端を閉塞するシーリング材を形成してもよい。また保水部材は、少なくとも目地空間の奥部に充填されているが、目地空間の略全体(シーリング材を除く部分)に充填させてもよい。
「目地空間の奥部」は、少なくとも目地空間の外側部を除く部分であり、連結金具の埋込み板部を挿入するスペースとして用いられる。その挿入長さは、短いほど熱の伝導が少なくなるが、上側の壁体取り付け精度の確保や、壁体の荷重を埋込み板部で支えるためには目地空間の厚さの半分以上とすることが望ましい。好適な図示例では、目地空間のうち内側の7割程度を埋込み板部の収納スペースとしている。
「保水部材」は、一定温度以上で水を放出し、一定温度以下で水の放出を停止する機能を有する。水を含浸させた布の如きは常温でも徐々に水分が蒸発し、火災が起きたときには乾燥してしまうおそれがあるので、保水部材には含まれない。保水部材の好適な例は、感温吸排水性ポリマーであり、これは一定の温度(感温点)を境に相転移を生じ、膨潤相から乾燥相への移行に伴い、ポリマーの収縮力で包含水を強制的に排出する。感温点以下では水の放出を停止し、逆に吸水性を示す。詳しい説明は後述する。他の好適例は、一定の反応温度以上で脱水反応を生ずる二水石膏、水酸化アルミニウム、水酸化マンガンなどであり、これらも反応温度以下では殆ど水を生成しない。「水の放出を停止する」といっても、一定の温度以上の状態と比べて水の放出量が僅少であれば足りる。なお、図示例では、一方の壁体の端面と他方壁体に固定した埋込み板部との間に保水部材を設けている。保水部材を連結金具の表面のうち目地空間に露出する部分の全部に覆合することは、目地空間の閉塞性の維持と、異物の侵入を防止できる点で好ましい。
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
上記両壁体の何れか一方の対向端面の内側部分に収納凹部を形成し、この収納凹部と目地空間とに上記保水部材を充填している。
本手段では、図6に示す如く壁体の対向端面に収納凹部を形成することで保水部材の収納容積を大きくしている。図示例では2つの対向端面の一方(上側端面)に設けているが、双方の端面に設けてもよい。
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
上記保水部材を、上記目地空間の奥部に形成し、保水部材外方の目地空間部分を、少なくとも輻射熱を遮る閉塞部材で塞いでいる。
本手段では、図3に示すように保水部材のすぐ外側にある部材を、少なくとも輻射熱を遮る閉塞部材とすることを提案している。図示例の部材はシーリング材のバックアップ部材を兼ねている。目地空間の奥部に保水部材を設けた構成と相まって、保水部材及び連結金具の温度上昇を遅らせることができる。
第4の手段は、第3の手段を有し、かつ上記閉塞部材10を熱膨張性耐火材料で形成している。
本手段では、閉塞部材として熱膨張性耐火材を利用して、図10に矢示するように火災の熱で閉塞部材が膨張する構成とすることを提案している。これにより、断熱性能をさらに高めることができる。
第5の手段は、第1の手段から第4の手段のいずれかを有し、かつ
上記保水部材を袋入りの感温吸排水性ポリマーで形成するとともに、連結金具の表面のうち目地空間に臨む部分を、感熱により発泡する発泡被覆層で覆い、かつこの発泡被覆層の発泡開始温度を感温吸排水性ポリマーの感温点より高く設定することで、水分の蒸発により保水部材が収縮して生じた空隙を、発泡被覆層の膨張代として利用するように構成している。
本手段では、保水部材による気化熱の利用と発泡被覆材の耐火作用とを併用することを提案している(図7及び図8参照)。発泡被覆材のみで一定の耐火性能を実現する場合に比べて比較的高価な発泡被覆材の使用量を少なくすることができる。発泡被覆材が発泡する感熱温度は、感温吸排水性ポリマーの感温点より高く設定されている。この構成によれば、図8に示すように保水部材が収縮して生じた空間に発泡材が膨張することができ、省スペース化が図られる。
第6の手段は、第1の手段から第5の手段の何れかに記載の目地構造を壁体の対向端面の間に形成した外壁であり、各壁体をALC版などの熱伝導率の低い材料で形成している。
本手段では、先の手段で述べた目地構造を含む外壁を提案している(図1参照)。外壁パネルの熱伝導性を低くすることで、連結金具の外面を保水部材で覆った本発明の特長が活かされるからである。
第1の手段に係る発明によれば次の効果を奏する。
○保水部材中の水分が気化することで熱を奪うので耐火性能が向上する。
○目地構造を発泡被覆材で覆うのみの耐火措置と比べてコストが安い。
第2の手段に係る発明によれば、両壁体の一方に収納凹部を設けたから、保水部材の容積を大きくすることができる。
第3の手段に係る発明によれば、保水部材を目地空間の奥部に設け、かつ保水部材の前方に輻射熱を遮る閉塞部材を設けたから、輻射による熱伝導を低減できる。
第4の手段に係る発明によれば、閉塞部材を熱膨張性耐火材料で形成したから、炎が目地を破って外壁の内方へ侵入することを防ぐ。
第5の手段に係る発明によれば、感温吸排水性ポリマーと発泡被覆層とを併用したから、発泡被覆剤の使用量を低減するとともにコンパクトな構成とすることができる。
第6の手段に係る発明によれば、壁体の熱伝導性が低いので、壁体を通じて連結金具が高温となることがない。
本発明の第1の実施形態に係る耐火目地構造を含む外壁を、耐火目地構造を半分切り欠いて表した正面図である。 図1の耐火目地構造をII−II方向から見た断面図である。 図2の耐火目地構造の拡大断面図である。 図1の耐火目地構造をIV−IV方向から見た断面図である。 本発明の耐火目地構造の設計の説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る耐火目地構造を側方から見た断面図である。 図6の耐火目地構造を半分切り欠いた正面図である。 本発明の第3の実施形態に係る耐火目地構造の側方から見た断面図である。 図8の耐火目地構造の作用説明図である。 本発明の第4の実施形態に係る耐火目地構造の作用説明図である。 本発明の耐火目地構造の実施例の側面図である。 本発明の耐火目地構造の他の実施例の一部切欠き正面図である。
図1から図5は、本発明の第1の実施形態に係る耐火目地構造を含む外壁を示している。図1において、Wは、外壁であり、腰壁S及びパネル材Pである第1、第2の壁体と、耐火目地構造2とで構成されている。パネル材はALC版のように軽量で断熱性の高い素材で形成することが好ましい。図2に示すように、耐火目地構造を構成する2つの壁材の対向端部の外側部分は、後述の保水部材に対して斜め上方及び斜め下方から輻射熱が当たることを遮る役目を有する。
耐火目地構造2は、図2に示す両壁体の端面4U,4Lと、シーリング材8と、バックアップ材10と、連結金具12と、図1に示すスペーサ20と、保水部材22とで構成されている。両壁体の端面4U,4Lの間の空隙を目地空間6というものとし、さらに図3に示す如く目地空間のうち外側部6aを除く部分を目地空間の奥部6bというものとする。
シーリング材8は、目地に雨水や汚れが侵入することを防止するために目地空間6の外端を気密或いは水密に塞ぐ材料である。
バックアップ材10は、一般的にはシーリング材に変色などの悪影響を及ぼさずかつこれと接着しない合成樹脂又はゴム製の部材であり、シーリング材8を建物の内側から支えている。本実施形態のバックアップ材は、外方からの輻射熱を遮る閉塞部材を兼ねている。シーリング材及びバックアップ材は目地空間6の外側部を占めている。
連結金具12は、両壁体の端部に沿ってこれら壁体の巾方向全体に亘って取り付けられている。図示例においては、連結金具は、図3に示す如く、断面L字形の第1の金具14と、イナズマ形の第2の金具(イナズマ金具)16とで構成されている。
上記第1の金具14は、一枚の板材を断面L字形に屈折してなるが、金具の一部を目地空間6に挿入させて2つの壁材の間に架設するものであれば、どのような形状でも構わない。図示の第1の金具14は、垂直な取付板部14bの下端から水平な埋込み板部14aを突出してなり、その取付板部14bを上側の壁体の内面に沿わせるとともに、埋込み板部14aを、下側の壁体の端面4Lに当接させ、図示しない固定具によりこの端面に固定している。
この第1の金具14の埋込み板部14aは、図3に示すように上記目地空間の奥部6bにのみ配置されており、埋込み板部14aの先端と目地空間の外端とには距離をとっている。埋込み板部の先端が目地空間の外端に達していると、火災時に第1の金具14が火災からの輻射に直接さらされてしまい、温度上昇が早まるからである。好適な図示例では、10cmの厚さの外壁に対して3cm程度の距離を目地空間6の外端と埋込み板部14aの先端との間にとっている。
上記第2の金具16は、上半部を上側の壁体の内面にボルト・ナットなどで固定し、かつ第2の金具の下半部と上側の壁体の内面との間に第1の金具14の取付板部14bを摺動可能に挟んでいる。これにより上側の壁体が下側の壁体に対して面内方向の揺動可能に構成している。但し、この揺動を必要としないときには、連結金具を第1の金具のみで形成してもよい。
スペーサ20は、図4に示す如く外壁の中央部に埋込み板部14aと上側の壁体の端面4Uとの間に挿入した板材である。このスペーサを中心として、上側の壁体が図1に矢示するように面内方向へ揺動することが可能である。
保水部材22は、従来公知の感温吸排水性ポリマー24を収納袋26に入れて構成する。この保水部材22は、図3に示す第1の金具14のうち目地空間に露出する輪郭全体を覆うように設置する。これにより水分が蒸発するまでは第1の金具14の温度を水の沸点以下に抑制することができる。又保水部材は、第1の金具14の奥行き方向の長さほぼ全体に亘って設けることが望ましい。図示例では、図1に示すようにスペーサ20の両側にそれぞれ1対の保水部材22を設けているが、その構造は適宜変更することができる。図面では省略しているが、保水部材と上側の壁体の端面4Uとの間には、わずかに隙間をとり、壁体の揺動を妨げないように構成するとよい。
上記感温吸排水性ポリマー24は、次の特徴を有する(非特許文献1)。
(イ)高分子網目が3次元的に架橋され、その中に水を含む物質であり、温度変化により収縮相から膨潤相へ体積が数十倍から数百倍に変化する性質を有する。
(ロ)上記の体積変化は急激に生じ、ポリマーの収縮力で迅速に水を排出する。
(ハ)相転移温度(感温点という)以下では、吸水性能を有する。
(ニ)感温点はイオン化比により容易に変化させることができる。
(ホ)上記の相変化は可逆的であり、何度でも吸排水を繰り返すことができる。
上記(イ)の性質によれば、ポリマー自体の体積に比べて非常に多量の水を包含することが可能であり、限られた目地空間に所要量の水を蓄えるためには好都合である。また(ロ)の性質によれば、火の回りが比較的早くても連結金具が所定温度に達する前に水を放出することができる。他方、(ハ)の性質によれば、感温点以下では水の保持力が強い。(ニ)の性質によれば、感温点の設定が容易であるという利点がある。例えば夏季の日射側の外壁での目地空間の内部温度を想定し、それより高く感温点を設定することが望ましい。
上記感温吸排水性ポリマーの具体的組成としては、例えばN−イソプロピルアクリルアミド等のN−アルキルアクリルアミドを主成分モノマーとして重合架橋させた樹脂等が知られている。
上記収納袋26は、少なくとも感温吸排水性ポリマー24が包含する水を保存する機能を有する。通常時には内部の水分が逃散しないように気密性がよい素材で形成し、火災により内部の圧力が一定に達したときには、内部の水蒸気を放出するように形成することができる。
上記構成によれば、保水部材22の感温排水性ポリマー24は、感温点以下で水を蒸発させずに保持している。保水部材22は、図3のように目地空間の奥部6bにあり、シーリング材8及びバックアップ材10が夏季の日射から保水部材を保護する。これにより、長期間保水部材内の水を保持することができる。またバックアップ材10は、火災の輻射熱を遮断する。熱の伝導により目地空間の奥部6bの温度が上昇すると、まず保水部材22内の水分が蒸発し、周囲から気化熱を奪う。保水部材22は、第1の金具14の外表面のほぼ全体を覆っているので、保水部材の水がほぼ全て蒸発しない限り、第1の金具14の温度は水の沸点より高くならない。これにより第1の金具14が所定の温度に到達する時間を遅らせることができる。
図5を用いて保水部材22の水量を設定する手順を説明する。建築基準法では、所定の加熱条件で外壁Wのパネルを加熱して、パネル材の取付金具の内側の部分の温度上昇が180K以下(外壁全体での温度上昇が平均140K以下)である状態を維持できる時間が建築基準法で要求される所定の時間以上でなければならない。そこで図5に示すように耐火目地構造2のうち感温吸排水性ポリマーで形成する保水部材22を平板状の長方体とし、受熱面である一方の側面と向かい合うように受熱面よりも大面積の放射面Rを想定する。そして放射面から感温吸排水性ポリマーが所定の時間(計算例として1時間)の間に受け取る熱量を水の気化熱及び温度上昇で相殺するものとし、そのために必要な水量を計算する。バックアップ材などは無視する。
まず、水の蒸発熱を2259kJ/kg、水の比熱を4.184kJ/kg℃とする。水1kgを20℃から100℃に要する熱量は、4.184×(100−20)×1=334.72kJ(=Q)である。次に水1kgを蒸発させるのに必要な熱量は2259×1=2259kJ(=Q)である。従って、20℃の水1kgが蒸発するまでに消費する熱量は、Q+Q=334.72+2259=2593.72kJ(=Q)である。
図5に示す感温吸排水性ポリマーに入射する熱量は、次式で与えられる。但し、σはステファン・ボルツマン定数5.67×10−11(kw/m24)であり、εは放射率(=1.0)であり、φは形態係数であり、Tは放射面温度(K)であり、Tは受熱面温度(K)であり、TはISO−834加熱曲線温度(炉内温度)である。
[数式1]I=σε(T −T )=5.67×10−11×1.0×0.967×(T −293
60分間の受熱量は321348.1kw/m・sとなる。感温吸排水性ポリマーの高さを0.02m、長さを3mとして、受熱面積を0.06mと設定する。感温吸排水性ポリマーの受熱量は321348.1×0.06=19280.9 kw・s=kJ(=Q)である。
これにより1時間分の放射熱を水の潜熱及び顕熱によって吸収しようとすれば、必要な水分量は、Q/Q=19280.9/2593.7=7.43kg、体積は0.00743mとなる。受熱面の面積は0.06m2であるから、感温吸排水性ポリマーの奥行きは、0.00743m/0.06m2=0.12mとなる。
パネル材の厚さは一般に10cmから15cm程度であり、従って壁の厚さが13cm以上あれば奥行き12cmの感温吸排水性ポリマーを目地空間に備えることは可能である。壁厚がそれ以下である場合には、感温吸排水性ポリマーの前に遮光材を設けて受光量を制限するか、或いは下記の如く目地空間の奥部の容積を大きくするなどの措置をとればよい。
以下本発明の他の実施形態を説明する。これらの実施形態において、第1の実施形態と同じ構成については同一の符号を用いることで説明を省略する。
図6及び図7は、本発明の第2の実施形態を示している。この実施形態では、上側の壁体の端面4Uの内側から上側の壁体の内面下部に亘る部分を切り欠いて、収納凹部30を形成している。収納凹部30を形成することで目地空間の奥部6bが拡大し、保水部材の容積を大きくすることができる。上側の壁体をスペーサ20で揺動可能に支持しているときには、スペーサの設置個所を除いて収納凹部30を設ける。
図8及び図9は、本発明の第3の実施形態を示している。この実施形態では、第1の金具14の表面のうち目地空間に露出する部分に発泡閉塞材を塗布して、発泡被覆層32を構成している。この発泡被覆層は、水の沸点より高い温度で発泡するように設け、保水部材22が水分の蒸発により縮退してできたスペースを埋めるように形成する。発泡被覆層は、合成樹脂エマルジョン系の材料やエポシキ樹脂系の材料で形成することができる。前者の例としてエスケー化研(株)の「SKタイカーコート」(登録商標)や日本ペイント(株)の「タイカリット」(登録商標)を用いることができる。
図10は、本発明の第4の実施形態の作用説明図である。本実施形態は、バックアップ材10を熱膨張性耐火材で形成している。初期状態(膨張前の状態)の構成は、図3と同じであるので省略する。図10に示すように火災の熱で表面のシーリング材8が消失するとともに、バックアップ材が一定温度に達すると、バックアップ材10が膨張する。熱膨張性耐火材料としては、熱膨張性黒鉛を用いることができる。熱膨張性黒鉛は、膨張開始温度が低くかつ膨張率が高いという特性を有し、公知の膨張開始温度が130〜150℃の熱膨張性黒鉛や膨張開始温度が190℃以下の熱膨張性黒鉛を好適に用いることができる。
本実施形態では熱膨張性耐火材は最初から壁材の端面4L、4Uに接しているので、熱膨張性耐火材は目地空間の内方及び外方に膨張する。熱膨張性耐火材の発泡開始温度は180℃程度であることが望ましい。この温度は水の沸点を超えているので、保水部材22の水は蒸発しており、保水部材が後退して生じた空間へ熱膨張性耐火材が膨張する。熱膨張性耐火材の分量を多くすると、熱膨張性耐火材料の一部が目地空間に収まりきらずに壁の外方にはみ出す。熱膨張性耐火材料が目地空間から脱落しないように、その一部を接着などにより壁材の端面に固定することが好適である。熱膨張性黒鉛は、膨張して断熱層を形成する。熱膨張性黒鉛の一部が外方へ突出することにより埋込み板部より外方に存する断熱層の領域が長くなる。
本発明の第5の実施形態として、保水部材の感温吸排水性ポリマーを、含水無機物に置き換えることができる。外観上の構成は第1の実施形態と変わらないために前述の図面(特に図6及び図7)を援用する。
好適な含水無機物は、水酸化アルミニウム、二水石膏、水酸化マグネシウム、或いはホウ酸などである。これらの含水無機物の利点は、長期間に亘って放水機能を喪失しにくいことである。具体的な適用態様としては、水酸化ナトリウムの含水無機物を袋などの容器に入れたり、或いはロックウールに含浸させた素材(この素材を圧縮させたもの)を、目地空間の奥部6b内に充填すればよい。含水無機物を保水材料として使用するメリットは、長期間に亘って放水機能を保つことができるということである。これらの含水無機物は、加熱により脱水反応を生じ、水を放出する。
2Al(OH)(s)→Al+3H
水酸化アルミニウム分子の比重は2.42g/cm、その分子量は78である。水の分子量は18であるので、1cmの水酸化アルミニウムから2.42×(0.5×3×18/78)=0.837gの水分が放出される。十分な量の水酸化アルミニウムを目地空間に収納するために、図6及び図7に示す収納凹部30を目地空間の端面に形成することが好適である。
水酸化アルミニウムは、単体(粉末)として用いられた場合には、150℃程度で脱水反応を生ずる。前述のように金具の温度上昇を180℃以下に抑制しようとするとき、金属の始めの温度を10℃として190℃より低い温度で吸熱反応を発現すればよいから、十分な余裕がある。また通常の水酸化アルミニウムは、1〜70μm程度であり、粒径が大きいほど反応温度が低くなる。耐火被覆などの建材に混ぜ込むときには10μm程度が普通であるが、本発明の用途では10μm以上の粒径とするとよい。
二水石膏(CaSO・2HO)の反応温度は160℃〜170℃である。二水石膏と水酸化アルミニウムとを混合して成型品としてもよい。
[実施例1]
第1の実施例として、図11に示すように、各壁体をパネル材Pとしてそれぞれ第1の金具14を介して梁Bに固定し、各パネル材の間に耐火目地構造2を形成することができる。
[実施例2]
第2の実施例として、本発明を適用する対象の壁を、ロッキング機能を有する前述の壁構造に代えて、図12に示すようにスライド構造とすることができる。具体的には、2枚の壁の接続部の下面及び内面に連結金具12を設ける。この連結金具は、先に実施形態と同じようにL字形の第1の金具14とイナズマ形の第2の金具とからなり、下側のパネル材(図示せず)に対して上側のパネル材が左右方向にスライド可能に形成する。そして第1の金具14の水平板部と各壁下端面との間には、保水部材22を設置している。図12では、シーリング部材及びバックアップ材の作図を省略して、目地部分の断面図としている。上記連結金具12は、先の実施形態のように各壁の全長に亘って通しで設けられたものではなく、隣接する壁の接続部分に設ければ足りる。連結金具の設置個所以外の目地空間内には、ロックウール36を充填させればよい。
なお、本明細書に記載された各実施形態及び実施例は、限定的なものと解されるべきではなく、本願特許請求の範囲に記載された発明は、その性質に反しない限り、他の形態により実施することが可能である。
2…耐火目地構造 4U,4L…端面 6…目地空間 6a…外側部 6b…奥部
8…シーリング材 10…閉塞部材(バックアップ材) 12…連結金具
14…第1の金具 14a…埋込み板部 14b…取付板部
16…第2の金具 18… 20…スペーサ 22…保水部材
24…感温吸排水性ポリマー 26…収納袋
30…収納凹部 32…発泡被覆層 36…ロックウール R…放射面
B…梁 W…外壁 S…腰壁 P…パネル材

Claims (6)

  1. 構造物の外壁を構成するために垂直方向又は水平方向に連ねた少なくとも2枚のパネル材などの壁体の対向端部の間に形成した耐火目地構造であって、
    両壁体の対向端面と、
    上記壁体の対向端部のうち構造物内側部の間に架設された連結金具と、
    構造物外方の火災から連結金具を保護するために、上記目地空間のうち外側部を除く部分である奥部内に少なくとも充填された保水部材と、を具備し、
    上記連結金具は、一方の壁体から他方の壁体へ突出する取付板部と、この取付板部から目地空間の奥部に突入し、他方壁体の対向端面に固定した埋込み板部とを有し、
    上記保水部材は、一定の温度以下では水を殆ど放出せず、一定温度以上で放出する材料で形成されており、かつ連結金具の表面のうち目地空間に露出する部分を覆合するように構成したことを特徴とする、耐火目地構造。
  2. 上記両壁体の何れか一方の対向端面の内側部分に収納凹部を形成し、この収納凹部と目地空間とに上記保水部材を充填したことを特徴とする、請求項1記載の耐火目地構造。
  3. 上記保水部材を、上記目地空間の奥部に形成し、保水部材外方の目地空間部分を、少なくとも輻射熱を遮る閉塞部材で塞いだことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の耐火目地構造。
  4. 上記閉塞部材10を熱膨張性耐火材料で形成したことを特徴とする、請求項3記載の耐火目地構造。
  5. 上記保水部材を袋入りの感温吸排水性ポリマーで形成するとともに、連結金具の表面のうち目地空間に臨む部分を、感熱により発泡する発泡被覆層で覆い、かつこの発泡被覆層の発泡開始温度を感温吸排水性ポリマーの感温点より高く設定することで、水分の蒸発により保水部材が収縮して生じた空隙を、発泡被覆層の膨張代として利用するように構成したことを特徴とする、請求項1から請求項4の何れかに記載の耐火目地構造。
  6. 上記請求項1から請求項5の何れかに記載の耐火目地構造を壁体の対向端面の間に形成した外壁であり、各壁体をALC版などの熱伝導率の低い材料で形成したことを特徴とする、耐火目地構造を有する外壁。
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