JP2011094213A - 溶媒分散性粒子および分散液 - Google Patents

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Abstract

【課題】強磁性を示すにもかかわらず、水などの極性の高い溶媒に対して高い分散性を有する溶媒分散性粒子、およびかかる粒子を極性溶媒に分散してなる分散液を提供すること。
【解決手段】図1(i)に示す溶媒分散性粒子1(本発明の溶媒分散性粒子)は、2種以上の金属成分を含み、原子配列が規則構造を有する組成の多成分合金粒子10と、この多成分合金粒子10の表面を被覆する表面修飾子mとを有するものである。表面修飾子mは、その1分子中に、多成分合金粒子10中の金属元素aと相互作用する官能基Xと、金属元素bと相互作用する官能基Yと、極性溶媒に親和性を有する官能基Zとを、それぞれ1つ以上有するものである。溶媒分散性粒子1は、多成分合金粒子10が強磁性を示すにもかかわらず、表面修飾子mが高密度に結合しているため、水などの極性溶媒に分散した場合にも粒子の凝集が確実に防止される。
【選択図】図1

Description

本発明は、溶媒分散性粒子および分散液に関するものである。さらに詳しくは、水など極性溶媒への分散性に優れ、生化学や医療分野への応用が期待される強磁性規則合金ナノ結晶粒子、およびこの粒子を極性溶媒に分散してなる分散液に関するものである。
FePtなどの合金粒子では、その原子配列が不規則な相と規則的な相とを有するが、規則構造を有する場合には比較的大きな磁気異方性を示し、粒子径が10nm以下のサイズになっても、その磁気特性が失われないことから、その性質を利用して高密度磁気記録媒体への応用が考えられている(以下、このような特性の粒子を「規則合金ナノ粒子」という。)。
一方、このような合金粒子の磁気的特性を、近年、生化学、医療、診断薬(磁気ビーズ)等の分野に応用することが期待されている。これらの分野へ応用するためには、規則合金ナノ粒子が、極性溶媒、特に水に均一に分散し得ることが必要とされる。この要件が満たされることによって、規則合金ナノ粒子およびその分散液は、生体適合性を有するものとなる。
FePtなどの合金ナノ結晶粒子を液相合成法で作製する場合、粒子の原子配列は、通常、不規則構造(fcc相)を有し、粒子の磁気異方性は比較的小さい(超常磁性)が、これに熱処理を施すことで、FeとPtとを交互に積層させた規則構造(fct相)に転移する。その結果、規則合金ナノ粒子には、大きな磁気異方性(強磁性)が発現する。
通常、この熱処理には500℃以上の温度を必要とするため、粒子同士の融合が起きてしまい、粒子サイズが増大するという問題点がある。この問題の解決策の1つとして、SiOのような金属酸化物で粒子を被覆して熱処理を行う方法が知られている。この方法では、500℃以上の熱処理を行っても粒子同士の融合を抑制しつつ、粒子の原子配列を規則構造へと転移することができる。しかしながら、被覆層同士の融合が起きてしまうため、粒子を溶媒へ分散させるためには被覆層を除去しなければならない。被覆層が除去された粒子は、強い自発磁化を有しているため、磁気的な凝集が起きる。超音波を用いてもこの凝集を解消することは難しいため、不規則構造の粒子と同様の方法で溶媒に均一分散させることは非常に困難である。
かかる課題に対し、特許文献1では、熱処理後のコアシェル粒子の被覆層を水酸化ナトリウム水溶液中で溶解しつつ、粒子表面に陽イオン性界面活性剤を結合させる方法により、粒子の凝集を防ぐことが提案されている。この方法は、アルカリ溶液(水酸化ナトリウム水溶液)相と有機溶媒(クロロホルム)相の2つの相に分離した系において行われ、アルカリ溶液相において金属酸化物の被覆層を溶解した後、次いで有機溶媒相において、被覆層が剥離した裸の粒子表面に陽イオン性界面活性剤を結合させる方法である。これにより、有機溶媒相は、表面に陽イオン性界面活性剤が結合した規則合金ナノ粒子を含むものとなる。
WO2006/070572号公報
しかしながら、上記方法で得られた規則合金ナノ粒子は、陽イオン性界面活性剤の疎水性基が溶媒側を向いて配向した構造であるため、アルカリ溶液と分離する無極性あるいは極性の極めて低い有機溶媒に対して分散性を有するものの、水など極性の高い溶媒に対する分散性を有しない。
また、上記方法では、被覆層の溶解と陽イオン性界面活性剤の結合がそれぞれ異なる相で行われるが、アルカリ溶液相において被覆層が剥離されると、裸の粒子(表面に界面活性剤等の修飾子が付着していない規則合金ナノ粒子)同士はより接近し易くなるため、より強い磁気的引力が生じ、有機溶媒相に移動する前に直ちに凝集してしまう。
本発明の目的は、強磁性を示すにもかかわらず、水など極性の高い溶媒に対して高い分散性を有する溶媒分散性粒子、およびかかる粒子を極性溶媒に分散してなる分散液を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜(13)の本発明により達成される。
(1) 2種以上の金属成分で構成された多成分合金粒子に表面修飾子を結合させてなる溶媒分散性粒子であって、
前記多成分合金粒子は、前記金属成分の原子が規則的に配列し、強磁性を示すものであり、
前記表面修飾子は、その1分子中に、前記2種以上の金属成分のうちの1種と相互作用する官能基Xと、別の1種と相互作用する官能基Yと、極性溶媒に親和性を有する官能基Zとを、それぞれ1つ以上を有するものであることを特徴とする溶媒分散性粒子。
これにより、強磁性を示すにもかかわらず、極性溶媒に対して高い分散性を有する溶媒分散性粒子が得られる。
(2) 前記多成分合金粒子は、前記金属成分として、長周期型周期表の第4周期に属するCu以外の遷移金属元素から選択される少なくとも1種の元素群Aと、白金族および長周期型周期表の第11族に属する遷移金属元素から選択される少なくとも1種の元素群Bとを含む合金粒子である上記(1)に記載の溶媒分散性粒子。
このような合金粒子は、その原子配列が規則構造をとることによって、粒径をnmオーダーまで小さくしても、強磁性を保持することができる。
(3) 前記元素群Aは、FeまたはCoを含んでおり、前記元素群Bは、PtまたはPdを含んでいる上記(2)に記載の溶媒分散性粒子。
これらの元素群Aとこれらの元素群Bが交互に積層した規則構造をとった場合、磁化容易軸方向に強い磁気異方性を示すため、粒子径が10nm以下でも高い保磁力を有することができる。
(4) 前記官能基Xは、前記元素群Aと相互作用する官能基であり、前記官能基Yは、前記元素群Bと相互作用する官能基である上記(2)または(3)に記載の溶媒分散性粒子。
これにより、表面修飾子は2箇所の結合を介して多成分合金粒子の表面に強固に固定される。その結果、多成分合金粒子から表面修飾子が外れてしまうのをより防止することができる。すなわち、2つの結合のうちの1つが外れてしまっても、依然として残る1つの結合を介して表面修飾子が固定されているため、確率的に表面修飾子が外れるおそれが低下する。
また、1分子中の官能基のうち、2つの官能基(官能基Xおよび官能基Y)が多成分合金粒子の表面と相互作用すると、残る官能基Zは、必然的に多成分合金粒子の溶媒側に向くよう配向する確率が高くなる。その結果、表面が官能基Zで確実に覆われることとなり、より分散性の高い溶媒分散性粒子が得られる。
(5) 前記官能基Xの前記元素群Aに対する相互作用および前記官能基Yの前記元素群Bに対する相互作用は、それぞれ、共有結合、イオン結合および配位結合のいずれかである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
これらの結合は、界面活性剤等の吸着原理である静電的相互作用や、分子間力等の相互作用に比べて結合強度が高いため、多成分合金粒子と表面修飾子との結合状態を長期にわたって維持することができる。すなわち、外的要因によっても表面修飾子が外れ難くなり、溶媒分散性粒子の分散性が向上する。
(6) 前記官能基Xは、硬い塩基になり得る官能基であり、前記官能基Yは、軟らかい塩基になり得る官能基である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
これにより、官能基Xは多成分合金粒子中の1種の金属成分と安定的かつ選択的な相互作用を生じ、官能基Yは別の1種の金属成分と安定的かつ選択的な相互作用を生じる。その結果、表面修飾子は、多成分合金粒子の表面を覆うように規則的かつ高密度に結合することができる。
(7) 前記官能基Zは、極性を有する官能基である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
官能基Zは、溶媒側に位置しているため、官能基Zとして上記のような官能基を用いることにより、溶媒分散性粒子に極性溶媒に対する優れた分散性が付与される。
(8) 前記表面修飾子の1分子において、前記官能基Xと前記官能基Yとの間の炭素数は1〜4である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
これにより、官能基Xと官能基Yとの距離と、多成分合金粒子における元素aの原子と元素bの原子との距離との関係が最適化され、表面修飾子は規則構造を有する多成分合金粒子の表面に対して、官能基Xと官能基Yの双方が相互作用し得る構造となる。
(9) 前記表面修飾子は、その分子の少なくとも一方の端部にカルボキシル基を有するものである上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
カルボキシル基は、官能基Xまたは官能基Yにも官能基Zにもなり得るため、カルボキシル基が粒子側に向いても溶媒側に向いても、表面修飾子として最適な配向状態となる。すなわち、カルボキシル基が分子鎖の端部に位置していることにより、官能基Zを溶媒側に確実に配置することができる。
(10) 前記多成分合金粒子の平均粒径は、1〜30nmである上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
これにより、十分な磁気特性を確保しつつ、各多成分合金粒子の質量が十分に小さいものとなるため、各種用途において、多成分合金粒子の優れた磁気特性が発揮されるとともに、分散液中において長期にわたる分散状態を維持することができる。
(11) 前記多成分合金粒子の保磁力は、1kOe以上である上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
これにより、上記のような高い保磁力を有する多成分合金粒子を含む場合でも、極性溶媒に対して良好な分散性を有する溶媒分散性粒子が得られる。
(12) 上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の溶媒分散性粒子を極性溶媒に分散してなることを特徴とする分散液。
これにより、強磁性を示す溶媒分散性粒子を含むにもかかわらず、生体適合性を有し、生化学や医療分野への応用が可能な分散液が得られる。
(13) 前記極性溶媒は、水である上記(12)に記載の分散液。
これにより、例えば血中に投与されたとしても、血液と分離することなく親和性を示すものとなるため、体内において血液と同様に振る舞うことができ、生体への悪影響を最小限に抑制し得る溶媒分散性粒子が得られる。
本発明によれば、多成分合金粒子に対して表面修飾子を高密度で導入することができるので、多成分合金粒子が強磁性を示すにもかかわらず、凝集することなく、水などの極性の高い溶媒への分散性に優れた強磁性規則合金ナノ結晶粒子(溶媒分散性粒子)を提供することができる。
また、本発明によれば、上記溶媒分散性粒子を極性の高い溶媒に分散することにより、生体適合性を有し、生化学や医療分野への応用が可能な分散液を提供することができる。
本発明の溶媒分散性粒子における多成分合金粒子と表面修飾子との結合状態を模式的に示す図である。 容器内に貯留された処理液に被覆粒子を接触させる様子を模式的に示す図である。 熱処理前の被覆粒子、熱処理後の被覆粒子および本発明の溶媒分散性粒子のXRDパターンである。 熱処理後の被覆粒子および本発明の溶媒分散性粒子のTEM観察像である。 熱処理後の被覆粒子および本発明の溶媒分散性粒子のH−M曲線である。
以下、本発明の溶媒分散性粒子および分散液を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の溶媒分散性粒子は、原子配列が規則構造を有する多成分合金粒子(2種以上の金属成分で構成された粒子)と、この粒子の表面を被覆する表面修飾子とを有するものである。
このような溶媒分散性粒子は、多成分合金粒子が強磁性を示すにもかかわらず、その表面が高密度の表面修飾子で覆われているため、水などの極性溶媒に分散した場合でも粒子の凝集が防止される。このため、本発明の溶媒分散性粒子は、極性溶媒に分散可能な強磁性粒子という特徴を利用して、生化学や医療分野への応用が可能な分散液を提供することができる。
以下、溶媒分散性粒子および分散液の構成について、順次説明する。
[多成分合金粒子]
本発明の溶媒分散性粒子における多成分合金粒子としては、2種以上の金属成分を含み、原子配列が規則構造を有する組成の粒子であれば、特に限定されないが、例えば、長周期型周期表の第4周期に属するCu以外の遷移金属元素から選択される少なくとも1種の元素群Aと、白金族および長周期型周期表の第11族に属する遷移金属元素から選択される少なくとも1種の元素群Bとを含む合金粒子が挙げられる。このような合金粒子は、その原子配列が規則構造をとることによって、粒径をnmオーダーまで小さくしても、強磁性を保持することができる。
元素群Aに属する元素の具体例としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiが挙げられる。これらの元素は、1種または2種以上で元素群Aを構成する。また、上記元素の中でも、Fe、CoおよびNiから選択される少なくとも1種が好ましく、FeおよびCoから選択される少なくとも1種がより好ましい。これらの元素は、いずれも単体で強磁性を示すことから、多成分合金粒子の磁気特性を考慮した場合、有用な元素である。
一方、元素群Bに属する元素の具体例としては、白金族に属する元素としてRu、Rh、Pd、Os、IrおよびPtが挙げられ、長周期型周期表の第11族に属する遷移金属元素としてCu、AgおよびAuが挙げられる。これらの元素は、1種または2種以上で元素群Bを構成する。また、上記元素の中でも、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtから選択される少なくとも1種が好ましく、PdおよびPtから選択される少なくとも1種がより好ましい。
特に、FePd合金、FePt合金、CoPd合金、CoPt合金等の粒子は、原子配列が規則構造をとった場合、磁化容易軸方向に強い磁気異方性を示すため、粒子径が10nm以下でも数kOeもの高い保磁力を有することができる。そのため、これらの粒子は高密度磁気記録媒体や磁気抵抗効果素子はもちろん、生化学、医療分野などに用いられる磁性体合金粒子としても好適である。
ここで、元素群Aおよび元素群Bを含む合金粒子は、通常の液相合成法によって合成した場合、その原子配列が面心立方構造(fcc構造)をとる。この構造では、元素群Aに属する元素と元素群Bに属する元素とが不規則に配列しており、磁気異方性は比較的小さい。ところが、このような多成分合金粒子に熱処理を施すと、原子配列が規則化され、元素群Aに属する元素からなる層と元素群Bに属する元素からなる層が交互に積層した規則的なL1型面心正方構造(fct構造)に転移する。このような規則構造では、磁化容易軸方向に大きな磁気異方性を示し、この磁気異方性は、粒子径を10nm以下に小さくしても失われることがない。このため、上述したような多成分合金粒子であれば、高い保磁力を有するnmオーダーの磁性体合金粒子が得られる。
なお、本発明に用いられる多成分合金粒子としては、熱処理を経て形成されたものに限らず、規則構造を有し、強磁性を発現するものであれば、いかなる方法で製造されたものでもよい。
このような多成分合金粒子の平均粒径は、溶媒への分散性の観点から、1〜30nm程度であるのが好ましい。さらに好ましい粒径は目的によって異なり、磁気記録媒体に用いる場合は5〜10nm程度、生化学・医療分野に用いる場合は、用途にもよるが10〜20nm程度であるのが好ましい。多成分合金粒子の粒径が前記範囲内であれば、十分な磁気特性を確保しつつ、各粒子の質量が十分に小さいものとなるため、各種用途において、粒子の優れた磁気特性が発揮されるとともに、分散液中において長期にわたる分散状態を維持することができる。
なお、多成分合金粒子の粒径が前記下限値を下回った場合、粒径が小さ過ぎるために、各粒子における磁気特性が不十分になる。一方、多成分合金粒子の粒径が前記上限値を上回った場合、分散液中において沈降が生じ易くなり、均一な分散性を有する溶媒分散性粒子を製造することが困難になるおそれがある。
また、多成分合金粒子の保磁力は、磁気記録媒体に用いる場合は3kOe(2.39×10A/m)以上であるのが好ましく、5kOe(3.98×10A/m)以上であるのがより好ましい。一方、生化学や医療分野に用いる場合は、1kOe(7.96×10A/m)以上であるのが好ましい。このような保磁力を有する多成分合金粒子は、上述したような用途において、より優れた磁気特性を発揮することとなり、溶媒分散性粒子の有用性が高められる。すなわち、本発明によれば、上記のような高い保磁力を有する多成分合金粒子を含む場合でも、極性溶媒に対して良好な分散性を有する溶媒分散性粒子が得られる。
[表面修飾子]
本発明の溶媒分散性粒子における表面修飾子は、上述した多成分合金粒子の表面を被覆するよう結合している。このような表面修飾子は、その1分子中に、多成分合金粒子中の2種以上の各金属成分のうち、1種と相互作用する官能基Xと、別の1種と相互作用する官能基Yと、極性溶媒に親和性を有する官能基Zとを、それぞれ1つ以上有するものである。
ここで、上記相互作用としては、共有結合、イオン結合、および配位結合等の、多成分合金粒子の表面に結合、吸着する作用が挙げられる。これらの結合は、界面活性剤等の吸着原理である静電的相互作用や、分子間力等の相互作用に比べて結合強度が高いため、多成分合金粒子と表面修飾子との結合状態を長期にわたって維持することができる。すなわち、外的要因によっても表面修飾子が外れ難くなり、溶媒分散性粒子の分散性が向上する。
なお、極性溶媒とは、高い比誘電率をもつ極性分子(永久双極子を有する分子)を含む液体を指し、水、メタノール、酢酸、アセトンなどを例示することができる。
以下、官能基X、官能基Yおよび官能基Zについて説明する。なお、ここでは多成分合金粒子の一例として、元素群Aに属する元素aと、元素群Bに属する元素bとを金属成分として有する2成分合金粒子を挙げて説明する。なお、官能基Zは、タンパク質などの特異物質と結合する機能を兼ねる場合もあり、さらには、官能基Xまたは官能基Yと同じ種類の官能基が官能基Zになる場合もある。
このような各官能基を有する表面修飾子を多成分合金粒子の表面に導入することにより、官能基Xは元素aと結合し、官能基Yは元素bと結合する。また、残基として、極性溶媒親和性を有する官能基Zが存在することになるため、表面修飾子が導入された多成分合金粒子、すなわち溶媒分散性粒子は、極性溶媒に良好に分散することとなる。
官能基Xとしては、硬い塩基になり得る官能基が挙げられ、具体的には、第一アミノ基、第二アミノ基、カルボキシル基および脱プロトン化物、ヒドロキシ基および脱プロトン化物、エーテル基、ホスフィンオキシド基、さらにはホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸基、スルホン酸基、β―ジケトン基等が挙げられる。なお、硬い塩基は、HSAB則(hard and soft acids and based rule)に基づいて分類される塩基であって、相対的に分極し難く、電気陰性度が大きく、硬い酸と安定な化合物を形成し得るものである。一方、HSAB則によれば、金属イオンを酸として取り扱うことができ、その硬さ・軟らかさは、金属のイオン化傾向に対応すると考えられる。このため、官能基Xは、元素群Aと元素群Bのうち、よりイオン化傾向が大きく、硬い酸に相当する元素群Aに属する元素aと安定的かつ選択的な相互作用を生じることとなる。
一方、官能基Yとしては、軟らかい塩基になり得る官能基が挙げられ、具体的には、芳香族アミノ基、ピリジル基、アミド基、メルカプト基およびその脱プロトン化物、スルフィド基、ホスフィン基、亜リン酸エステル基、チオフェン基、エテン基、アルキル基、シアノ基、チオシアノ基、スルホキシド基、スルホン基等が挙げられる。なお、軟らかい塩基は、HSAB則に基づいて分類される塩基であって、相対的に分極し易く、電気陰性度が小さく、軟らかい酸と安定な化合物を形成し得る。このため、官能基Yは、元素群Aと元素群Bのうち、よりイオン化傾向が小さく、軟らかい酸に相当する元素群Bに属する元素bと安定的かつ選択的な相互作用を生じることとなる。
なお、硬い塩基および軟らかい塩基の分類は、上述したように相対的なものであり、官能基の組み合わせによっては、同じ官能基であっても、硬い塩基に分類される場合もあれば、軟らかい塩基に分類される場合もある。
また、官能基Zとしては、極性溶媒に対して親和性を有する官能基、すなわち極性を有する官能基が挙げられ、具体的には、−COO、−NH 、−SO 、−PO 2−、−R、−O、−O−、エチレングリコール基等が挙げられる。このような官能基Zは、極性溶媒に対して特に高い親和性を有し、溶媒分散性粒子に極性溶媒に対する優れた分散性を付与する。
なお、以上のような各官能基は、1つの分子鎖に結合し、表面修飾子を構成している。この分子鎖の形態は、直鎖状、分岐状、環状等のいずれであってもよい。
ところで、このように官能基Xが元素aと相互作用し、官能基Yが元素bと相互作用することにより、表面修飾子は2箇所の結合を介して多成分合金粒子の表面に強固に固定される。その結果、多成分合金粒子から表面修飾子が外れてしまうのを確実に防止することができる。すなわち、2つの結合のうちの1つが外れてしまっても、依然として残る1箇所の結合を介して表面修飾子が固定されているため、確率的に表面修飾子が外れるおそれが低下する。
また、1分子中の官能基のうち、2つの官能基(官能基Xおよび官能基Y)が多成分合金粒子の表面と相互作用すると、残る官能基Zは、必然的に溶媒側に向くよう配向する確率が高くなる。その結果、表面が官能基Zで確実に覆われることとなり、より分散性の高い溶媒分散性粒子が得られる。
ここで、規則構造をとっている多成分合金粒子は、前述したように元素aの層と元素bの層とが交互に積層した構造を有しているため、粒子表面では、元素aと元素bとが交互に並んだ構造をとり易いと考えられる。このため、元素aと元素bとが隣接または近接している確率が高くなり、これらの元素aおよび元素bに対して1つの分子の官能基Xと官能基Yとが結合する確率が高くなる。
換言すれば、多成分合金粒子の原子配列が、不規則構造(fcc構造)を有している場合には、粒子表面において、元素aと元素bとが必ずしも隣接または近接しているとは限らないため、元素aに対して官能基Xが相互作用したとしても、元素bが元素aから離れているために官能基Yが元素bに届かなくなる可能性も出てくる。この場合、結合箇所は1つであり、表面修飾子の固定が不十分となるため、表面修飾子が外れてしまうおそれがある。
これに対し、多成分合金粒子が規則構造(fct構造)を有している場合、前述したように、表面修飾子と多成分結合粒子の表面との間に結合が2箇所形成される確率が高くなる。このため、表面修飾子は多成分合金粒子の表面により強固に固定されることとなる。
ここで、本発明の溶媒分散性粒子における多成分合金粒子と表面修飾子との結合状態を模式的に示す図を図1に示す。
図1では、溶媒分散性粒子1において、4つの表面修飾子mと、それらが結合する元素aの原子および元素bの原子の配置例を示している。図1の(ii)は、不規則構造を有する多成分合金粒子11の表面に表面修飾子mが導入された例であるが、この例に示すように、1つの結合sで結合した表面修飾子mが存在する。この場合、表面修飾子mの固定が不十分となる。
一方、図1(i)は、規則構造を有する多成分合金粒子10の表面に表面修飾子mが導入された例であるが、この例に示すように、元素aと元素bとが規則的に並んでいると、その配列に応じて表面修飾子mが規則的に並ぶため、必然的に、官能基Xと元素aの原子および官能基Yと元素bの原子が接近することとなり、結合sが2箇所に形成される可能性が高くなる。その結果、規則構造を有する多成分合金粒子10の表面を覆うように隙間なく高密度に表面修飾子mが結合し、溶媒分散性粒子1の表面には、官能基Zが隙間なく高密度に配されることとなる。このような溶媒分散性粒子1は、極性溶媒に対して特に優れた分散性を示すとともに、粒子間距離を確実に保持することができるため、その凝集を防止し得るものとなる。
また、表面修飾子と多成分合金粒子との結合性の観点から、本発明者は、官能基Xと官能基Yとの間の炭素数について最適な範囲を見出した。この炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1〜2であることがさらに好ましい。官能基Xと官能基Yとの間の炭素数がこの範囲内であれば、官能基Xと官能基Yとの距離と、多成分合金粒子における元素aの原子と元素bの原子との距離との関係が最適化され、表面修飾子は規則構造を有する多成分合金粒子の表面に対して、官能基Xと官能基Yの双方が相互作用し得る構造となる。
なお、炭素数が前記上限値を上回る場合には、官能基Xと官能基Yとが離れ過ぎてしまい、複数の表面修飾子同士が立体障害となって干渉し易くなるため、結合の形成が妨げられたり、表面修飾子の導入密度が低下するおそれがある。また、官能基の種類によっては、例えば官能基Yと官能基Zが同じ種類の官能基である場合もあり、その場合には官能基Yを特定できないことから数えられる炭素数が2つになることもあるが、その場合には、少ない方を上記炭素数とすればよい。また、上記では、表面修飾子の主鎖(分子鎖)が炭素鎖である場合を前提に、炭素数について規定したが、官能基Xと官能基Yとの間の主鎖が炭素以外の原子(例えば、硫黄原子など)を含む場合には、その原子数も含めて、前記炭素数と同様の範囲であるのが好ましい。
なお、前述したように官能基Zは、官能基Xや官能基Yと同じ種類である場合もあるが、そのような官能基の例としてはカルボキシル基が挙げられる。このカルボキシル基は、分子鎖(表面修飾子)の少なくとも一方の端部に位置しているのが好ましい。前述したように、カルボキシル基は、官能基Xまたは官能基Yにも官能基Zにもなり得るため、カルボキシル基が粒子側に向いても溶媒側に向いても、表面修飾子として最適な配向状態となる。すなわち、カルボキシル基が分子鎖の端部に位置していることにより、官能基Zを溶媒側に確実に配置することができる。
以上のような官能基X、官能基Yおよび官能基Zを有する表面修飾子としては、特に限定されないが、2−メルカプトコハク酸、2,3−ジメルカプトコハク酸、(S)−2−メルカプトグルタル酸、(S)−4−アミノ−6−メルカプトヘキサン酸、5−メルカプトサリチル酸、2,4−ジアミノ安息香酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、ホモシステイン、カルボシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸等が挙げられる。
[溶媒分散性粒子の製造方法]
次いで、上述したような溶媒分散性粒子の製造方法について説明する。
かかる製造方法は、[1]液相合成法によって多成分合金粒子を得る第1の工程と、[2]多成分合金粒子の表面を覆うシェル(仮被膜)を形成し、コアシェル粒子(被覆粒子)を得る第2の工程と、[3]コアシェル粒子に熱処理を施すことにより、多成分合金粒子中の原子配列を規則化する第3の工程と、[4]コアシェル粒子に対して、シェルの除去と、多成分合金粒子表面への表面修飾子の結合とを、同一液相内で同時に行う第4の工程とを有する。
以下、各工程について順次説明する。
[1]まず、液相合成法を用いて多成分合金粒子を製造する。粒子を製造する方法については特に制限はなく、公知の方法、例えば逆ミセル法やポリオール還元法、熱分解法などを採用することができる。
[2]次に、多成分合金粒子の表面を覆うようにシェルを形成する。このシェルを形成することにより、後述する第2の工程において多成分合金粒子に熱処理を施す際に、粒子同士が融着してしまうのを防止することができる。なお、このシェルは、熱処理から多成分合金粒子を保護するとともに、後述する工程において除去されるため、耐熱被膜および仮被膜としての機能を有するものである。
シェルの形成方法としては特に制限はないが、非特許文献1(Q. Yan et al., Adv. Mater. 2006, 18, 2569-2573)や非特許文献2(D. C. Lee et al., Appl. Phys. Chem. B2006, 110, 11160-11166)に記載された公知の方法を用いることができる。なかでも、粒子の製造方法として逆ミセル法を用いる場合は、非特許文献1に記載された方法を適用すれば、逆ミセルを用いて粒子を合成しつつシェルの形成を行うことが可能なため、溶媒分散性粒子の製造プロセスを簡略化することができる。この方法について説明する。
まず、溶媒としてイソオクタンなどの無極性溶媒、界面活性剤としてポリエチレングリコールなどの非イオン性界面活性剤を用意し、これらを混合した混合液を用意する。
次いで、この混合液に、元素群Aから選択される少なくとも1種の金属塩の水溶液を加え、逆ミセル溶液を得る。また上記混合液を別途用意し、この混合液に、元素群Bから選択される少なくとも1種の金属塩の水溶液を加え、逆ミセル溶液を調製する。
逆ミセルの大きさの指標として用いられるW値(=[水(mol)]/[界面活性剤(mol)])は、反応で得られる多成分合金粒子の粒子径と相関があり、Wを変えることによって、粒子径を制御することができる。本発明では、Wは1〜5が好ましい。
次いで、それぞれの逆ミセル溶液を混合し、アルコールを少量(溶媒量の1〜2%程度)加えることで反応溶液を調製する。反応溶液にヒドラジンなどの還元剤を加え、3時間程度撹拌すると、逆ミセル中に多成分合金ナノ結晶が生成する(第1の工程)。
その後、反応溶液にオルトケイ酸テトラエチルなどシェルの原料を加えることによって、逆ミセル中で多成分合金粒子を覆うようにシェルを形成し、コアシェル粒子が得られる(第2の工程)。
反応終了後、反応溶液をエタノールなどで十分洗浄したのち、遠心分離など、公知の手段によって固液分離処理する。これにより、多成分合金粒子を金属酸化物のシェルで被覆したコアシェル粒子を回収することができる。
なお、シェルの構成材料は、反応溶液に添加する原料に応じて決まるが、例えばケイ素アルコキシドを用いた場合には、SiOのシェルが形成される。このような金属酸化物を生成するための原料としては、該当する金属アルコキシドの他に、該当する金属のハロゲン化物、カルボン酸塩、金属アミド等が挙げられる。また、アパタイト類を生成するための原料としては、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム等とリン酸が挙げられる。
このような原料を用いることにより、SiO、TiO、Al、MgO、ZrO、CeO、ZnOのような酸化物や、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイトのようなアパタイト類などで構成されたシェルが得られる。酸化物は、化学的安定性が高く、高温での熱処理においても変質・劣化したり、多成分合金粒子と反応し難いことから、シェルの構成材料として好適である。特に、SiOは被覆方法が簡便であり、アルカリ溶液で溶解し得ることから、シェルとして好適である。一方、アパタイト類、特にハイドロキシアパタイトは、比較的弱い酸溶液でも溶解し得ることから、後述する工程においてシェルを除去する際に、短時間で容易に作業を行うことができる。
なお、シェルとしては、溶融温度が多成分合金粒子の規則化温度よりも高く、酸またはアルカリ等で分解(溶解)可能なものが好ましいので、かかる観点からシェルの原料を適宜選択するのが好ましい。
また、シェルとして金属酸化物を用いる場合、この金属酸化物として、Feよりイオン化傾向の大きい金属の酸化物を用いるのが好ましい。これにより、後述する工程においてシェルを液相プロセスにて除去する際に、イオン化傾向の小さい多成分合金粒子を侵すことなく、シェルを確実に除去することができる。
このようなシェルの平均厚さは、好ましくは1〜50nm程度とされ、より好ましくは5〜20nm程度とされる。シェルの厚さを前記範囲内とすることにより、後述する第2の工程において、多成分合金粒子同士の間で、シェルが必要かつ十分な厚さの隔壁となるため、粒子同士が融着するのを確実に防止することができる。
[3]次に、得られたコアシェル粒子に熱処理を施す。これにより、多成分合金粒子中の原子配列を規則化して、規則構造の粒子を得る(第3の工程)。
ここで、コアシェル粒子に熱処理を施す際には、無機塩の粒子とコアシェル粒子とを混合した状態で行うのが好ましい。これにより、コアシェル粒子が容器等の壁面に焼き付くのを防止することができる。
熱処理の条件は、特に限定されないものの、例えば550〜700℃で0.5〜12時間程度とされる。また、熱処理の雰囲気は、不活性雰囲気、還元雰囲気であるのが好ましく、還元雰囲気であるのがより好ましい。
無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等が挙げられる。これらの無機塩は、水溶性が比較的高く、かつ安価であるため、無機塩を除去する際に、水洗するだけで除去することができるので有用である。
また、用いる無機塩の粒子は、あらかじめボールミルや乳鉢等で細かく粉砕されたものが好ましい。これにより、コアシェル粒子同士の隙間を無機塩の粒子が隙間なく埋めることができ、コアシェル粒子の焼き付きをより確実に防止することができる。
無機塩の平均粒径は、特に限定されないが、多成分合金粒子の平均粒径の0.5〜5倍程度であるのが好ましく、0.7〜3倍程度であるのがより好ましい。
熱処理後、反応物を水等の洗浄液で数回洗浄することにより、原子配列が規則構造に転移した多成分合金粒子を有するコアシェル粒子が得られる。
以上のようにして熱処理が施されると、多成分合金粒子中の原子配列が規則化し、強磁性を発現する。
[4]次に、熱処理を施したコアシェル粒子を処理液に接触させる。これにより、シェルと表面修飾子とを置換する。
図2は、容器内に貯留された処理液6にコアシェル粒子7を接触させる様子を模式的に示す図である。図2に示すコアシェル粒子7は、多成分合金粒子71と、その表面を覆うシェル72とを有している。
図2(I)に示す処理液6は、前述した表面修飾子mを含み、シェル72を溶解し得る液体である。このような処理液6にコアシェル粒子7を接触させると、シェル72が溶解する(図2(II)参照)。シェル72が溶解すると、多成分合金粒子71が裸の状態で露出するが、この露出面には、直ちに処理液6中の表面修飾子mが相互作用により結合する。この際の結合は、前述したような共有結合、イオン結合および配位結合等の相互作用によるものであり、静電的相互作用や分子間力(ファンデルワールス力)等に比べて結合強度が比較的高く、かつ短時間で結合が行われる。したがって、多成分合金粒子71が露出すると同時に、表面修飾子mの結合が行われ、図2(III)に示すように、多成分合金粒子71の表面が表面修飾子mで被覆されてなる溶媒分散性粒子1が得られることとなる(第4の工程)。
このように1つの処理液(同一液相)6内で、シェル72の除去と表面修飾子mの結合とを同時に行うことにより、シェル72が溶解した後に、多成分合金粒子71同士がその磁気的引力により凝集してしまうのを防止して、多成分合金粒子71の分散性を確保することができる。
換言すれば、規則構造を有する多成分合金粒子71は、磁気的引力(磁気特性)が大きいため、液中で移動し易く、シェル72の溶解とともに多成分合金粒子71が凝集し始めてしまうが、本発明では、多成分合金粒子71の周囲に表面修飾子mが溶解、分散しているため、シェル72が溶解すると直ちに多成分合金粒子71の表面に表面修飾子mが結合する。これにより、多成分合金粒子71同士の間に、十分な物理的距離が確保される。その結果、多成分合金粒子71の凝集を防止することができる。
なお、シェルの除去と表面修飾子の結合とに時間差がある場合には、シェルの除去とともに粒子の凝集が始まる。一旦凝集してしまうと、凝集物に外力を加えても、再び分離状態に戻すことは困難である。
また、シェルの除去と表面修飾子の結合とを異なる液相内で順次行う場合も同様である。2つの液相のうち、一方の液相でシェルの除去をした後、他方の液相で表面修飾子の結合を行う場合には、液相間を粒子が移動するのにある程度の時間を伴うため、時間差がある場合と同様、粒子の凝集が避けられない。
このようにして多成分合金粒子が凝集してしまうと、その凝集体を覆うように表面修飾子が結合するが、このような凝集体は分散性が小さく、前述したような応用に適さないものとなる。
処理液には、前述したように、表面修飾子を含み、シェルを溶解し得るものであれば特に限定されないが、例えば、表面修飾子を添加した酸溶液またはアルカリ溶液が好ましく用いられる。酸溶液またはアルカリ溶液は、前述した金属酸化物またはアパタイト類を確実に溶解するとともに、多成分合金粒子への影響が少ないことから、処理液として好適である。
酸溶液としては、特に限定されないが、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等が挙げられる。一方、アルカリ溶液としては、特に限定されないが、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液等が挙げられる。
また、処理液中の表面修飾子の濃度は、特に限定されないが、好ましくは2〜20質量%程度、より好ましくは5〜10質量%程度とされる。
なお、コアシェル粒子と処理液との割合は、多成分合金粒子と表面修飾子との割合が質量比で1:10〜1:100となるような割合とするのが好ましい。
接触させる処理液の温度は、表面修飾子の分解温度未満(例えば70℃未満)であるのが好ましい。また、処理液の温度制御には、ホットプレート等を用い、ホットプレート上に載置した処理液中にコアシェル粒子を浸漬し、撹拌するようにすれば、本工程を効率よく簡単に行うことができる。また、撹拌の際、超音波または振動を付与することにより、塩析効果に伴う粒子の凝集を解消することができる。
なお、処理液の接触時間は、処理液の濃度に応じて決定され、特に限定されないものの、5〜200時間程度であるのが好ましく、10〜100時間程度であるのがより好ましい。
また、本発明において用いる表面修飾子は、上述した処理液に溶解するものが好ましい。これにより、表面修飾子の各分子が処理液中の隅々に均一に分散することとなるため、本工程において、シェルを除去した後の裸の粒子と、表面修飾子の分子との接触確率を格段に高めることができる。その結果、粒子の凝集をより確実に防止することができる。
コアシェル粒子を処理液に接触させた後は、必要に応じて、処理液に遠心分離等の固液分離処理を施し、上澄み液を除去する。これにより、シェルの溶解物を除去し、溶媒分散性粒子を回収することができる。
なお、溶解せず残留したシェルを完全に除去するために、希釈した酸溶液またはアルカリ溶液で再び洗浄するようにしてもよい。その後、回収した溶媒分散性粒子を水等の極性溶媒に加え、分散させる。極性溶媒が水の場合には、この分散液に対して透析処理を数回行うことにより分散液中の不純物を除去することができる。一方、極性溶媒が水以外の溶媒である場合には、遠心分離等の固液分離処理を施すことにより不純物を除去することができる。また、粒子は大きな磁化を有しているため、磁気分離を用いて不純物を除去することもできる。
以上の溶媒分散性粒子の製造方法は、1つの処理液(同一液相)内で、シェルの除去と表面修飾子の結合とを同時に行うため、シェルが除去されると直ちに多成分合金粒子の表面に表面修飾子が結合することができる。これにより、多成分合金粒子が凝集しない程度に十分な物理的距離が確保される。
以上のような本発明の溶媒分散性粒子は、前述したように、多成分合金粒子が強磁性を示すにもかかわらず、その表面が高密度の表面修飾子で覆われているため、極性溶媒(特に水)に分散した場合でも粒子の凝集が防止される。このため、本発明の溶媒分散性粒子を極性溶媒に分散してなる分散液(本発明の分散液)は、強磁性を示す溶媒分散性粒子が均一に分散したものとなる。このような分散液は、例えば血中に投与されたとしても、血液と分離することなく親和性を示すものとなるため、体内において血液と同様に振る舞うことができ、生体への悪影響を最小限に抑制し得るものとなる。よって、本発明の分散液は、強磁性粒子を含む分散液という特徴を利用して、生化学や医療分野への応用が可能になる。
溶媒分散性粒子および分散液の用途としては、例えば、核磁気共鳴画像法(MRI)に用いられる造影剤、交流磁場による粒子の発熱を利用した磁気温熱療法に用いられる磁気ビーズ、粒子表面に薬物を担持させた状態で体内に投与するドラッグデリバリーシステム用のキャリヤー等が挙げられる。
以上、本発明の溶媒分散性粒子および分散液の実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、多成分合金粒子が3種の金属成分を含んでいる場合、表面修飾子は、この3種にそれぞれ相互作用する3種の官能基と、極性溶媒に親和性を有する官能基とを有していればよい。
また、本発明の溶媒分散性粒子および分散液には、上記以外のものが添加されていてもよい。
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
溶媒分散性粒子の製造および評価
(実施例1)
<1>FePt/SiOコアシェル粒子の作製
イソオクタン(和光純薬工業製)60mlに非イオン性界面活性剤ポリエチレングリコールヘキサデシルエーテル(Aldrich製)8.528g(=0.0125mol)を混ぜて2つに分けた。このうち一方には塩化白金酸カリウム(KPtCl、和光純薬工業製)41.5mg(=0.10mmol)と水とを加えて白金塩逆ミセル溶液を調製した。もう一方には塩化鉄六水和物(FeCl・6HO、関東化学製)29mg(=0.106mmol)と水とを加えて鉄塩逆ミセル溶液を調製した。Wは5とした。その後、2つの逆ミセル溶液とヘキサノール700μlとを混合し、しばらく撹拌した後、ヒドラジン一水和物(和光純薬工業製)0.4ml(=8mmol)を加えると、反応溶液は透明な黄色から黒色に変化した。3時間撹拌した後にオルト珪酸テトラエチル(TEOS,東京化成工業)60μl(=0.27mmol)を加え、スターラーで60時間撹拌した。生成物はエタノール、アセトンで洗浄した後、エタノールに分散させた。これにより、エタノールに分散したFePt/SiOコアシェル粒子を得た。
<2>熱処理によるFePt/SiOコアシェル粒子の規則化
FePt/SiOコアシェル粒子をエタノールに分散させ、得られた分散液に、乳鉢で粉砕した塩化ナトリウム2gと混ぜ、その後エバポレーターで溶媒を揮発した。混合物はフォーミングガス(N:96.5体積%、H:3.5体積%の混合ガス)雰囲気下で600℃、4時間アニールした。アニール後、混合物を水、アセトンで数回洗浄し、規則構造を有するFePt/SiOコアシェル粒子を得た。
得られた粒子の結晶構造はX線回折(XRD)測定、粒径は透過型電子顕微鏡(TEM)観察、磁気特性は超伝導量子干渉型磁束(SQUID)測定により評価した。得られた粒子の平均サイズは15nmであった。
<3>SiOシェル剥離と表面修飾子導入によるFePt合金粒子分散水の作製
まず、2−メルカプトコハク酸(MSA、和光純薬工業製)0.75g(濃度0.5M)と、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド五水和物(TMAOH・5HO、東京化成工業製)3.6g(濃度2M)とを水10mlに溶解し、処理液を調製した。なお、2−メルカプトコハク酸では、官能基X(COOH)と官能基Y(RSH)との間の炭素数は1ないし2である。
次いで、熱処理後の上記FePt/SiOコアシェル粒子5mgをこの処理液に浸漬させ、得られた反応溶液を70℃のホットプレート上で2日間放置した。これにより、SiOシェルの除去と、表面修飾子の導入とを同一の反応溶液内で同時に行った。なお、粒子は塩析効果によって凝集するため、反応溶液は適宜超音波照射によって分散させた。
反応後、反応溶液に遠心分離処理を施し、上澄み液を除去した。残留したSiOを除去するため1M NaOH水溶液で洗浄した。その後、再び水洗浄を行った後、水を加えると、得られた粒子は水に良好に分散した。その後透析を5回行い、最終的に水に分散させることで2−メルカプトコハク酸修飾FePt合金粒子(溶媒分散性粒子)を水に分散してなる分散水を得た。
<4>溶媒分散性粒子の評価
得られた溶媒分散性粒子について、結晶構造をXRD測定により、粒子の形態をTEM観察により、磁気特性をSQUID測定によりそれぞれ評価した。
図3にはXRD結果を示す。図3中の(1)は熱処理前のFePt/SiOコアシェル粒子のXRDパターン、(2)は熱処理後のFePt/SiOコアシェル粒子のXRDパターン、(3)は水分散処理(SiO除去および表面修飾子導入)後の2−メルカプトコハク酸修飾FePt合金粒子(溶媒分散性粒子)のXRDパターンである。(1)のXRDパターンと(2)のXRDパターンとを比較することにより、熱処理によって結晶構造が規則相に転移したことが確認できた。(2)のXRDパターンには、特徴的なピークが認められ、このピークの配置は、規則構造(fct構造)のFePt合金のカードデータとよく一致した。また、(2)のXRDパターンと(3)のXRDパターンとを比較することにより、水に分散させた粒子の結晶構造は熱処理後の結晶構造から変化がなく、表面修飾子の導入がFePt合金粒子の結晶構造に影響を及ぼさないことが確認できた。
図4にTEM観察結果を示す。図4中の(a)は熱処理後のFePt/SiOコアシェル粒子の観察像であり、(b)は水分散処理後の2−メルカプトコハク酸修飾FePt合金粒子の観察像である。(a)では濃色領域のFePt合金粒子が淡色領域のSiOシェルで被覆されている様子が確認できる。(b)ではFePt合金粒子の周りに淡色領域のシェルが観察されないことから、SiOが除去できたと考えられる。粒子が数珠状に並んでいるのは磁気的相互作用によるものと考えられるが、粒子間に隙間が認められることから、表面修飾子が粒子表面に結合し、粒子同士の凝集を防止しているためと考えられる。
図5にSQUID測定により得られたH−M曲線を示す。図5中の(1)は熱処理後のFePt/SiOコアシェル粒子のH−M曲線であり、(2)は水分散処理後の2−メルカプトコハク酸修飾FePt合金粒子のH−M曲線である。(1)と(2)のH−M曲線はほぼ重なっており、保磁力は(1)が5.6kOe、(2)が5.5kOe、残留磁化は(1)が498emu/cc、(2)が427emu/ccであり、(1)と(2)とで磁気特性はほとんど変わらなかった。以上の結果から、実施例1で得られた溶媒分散性粒子は、強磁性体で構成されていることが確認できた。
また、得られた溶媒分散性粒子を水に分散させ、1日間放置したが、沈殿等の生成は認められず、その後7日間放置したが変化は認められなかった。
(実施例2)
熱処理後のFePt/SiOコアシェル粒子の作製までは実施例1と同様にして行った。
次いで、L−システイン(Cys、東京化成工業製)0.6g(濃度0.5M)と、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド五水和物3.6g(濃度2M)とを水10mlに溶解し、処理液を調製した。なお、L−システインでは、官能基X(RNH)と官能基Y(RSH)との間の炭素数は2である。
次いで、熱処理後の上記FePt/SiOコアシェル粒子5mgをこの処理液に浸漬させ、得られた反応溶液を70℃のホットプレート上で2日間放置した。以下の操作は実施例1と同様の方法によってL−システイン修飾FePt合金粒子(溶媒分散性粒子)を水に分散してなる分散水を得た。
得られた溶媒分散性粒子について、結晶構造をXRD測定により評価したところ、粒子の構造が規則相であり、水分散化処理前後で変化はなかった。SiOシェルが除去されていることはTEM観察によって確認した。磁気特性はSQUID測定によって評価し、保磁力は5.5kOe、残留磁化が431emu/ccであり、水処理前後でほとんど変化がなかった。
また、得られた溶媒分散性粒子を水に分散させ、1日間放置したが、沈殿等の生成は認められず、その後7日間放置したが変化は認められなかった。
(実施例3)
熱処理後のFePt/SiOコアシェル粒子の作製までは実施例1と同様にして行った。
次いで、L−グルタミン酸(東京化成工業製)0.73g(濃度0.5M)と、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド五水和物3.6g(濃度2M)とを水10mlに溶解し、処理液を調製した。なお、L−グルタミン酸では、官能基X(RNH)と官能基Y(COOH)との間の炭素数は1である。
次いで、熱処理後の上記FePt/SiOコアシェル粒子5mgをこの処理液に浸漬させ、得られた反応溶液を75℃のホットプレート上で1日間放置した。以下の操作は実施例1と同様の方法によってL−グルタミン酸修飾FePt合金粒子(溶媒分散性粒子)を水に分散してなる分散水を得た。
得られた溶媒分散性粒子について、結晶構造をXRD測定により評価したところ、粒子の構造が規則相であり、水分散化処理前後で変化はなかった。SiOシェルが除去されていることはTEM観察によって確認した。
また、得られた溶媒分散性粒子を水に分散させ、1日間放置したが、沈殿等の生成は認められず、その後7日間放置したが変化は認められなかった。
(実施例4)
2−メルカプトコハク酸を(S)−4−アミノ−6−メルカプトヘキサン酸に置き換えた以外は、実施例1と同様にして処理液を調製するとともに、(S)−4−アミノ−6−メルカプトヘキサン酸修飾FePt合金粒子(溶媒分散性粒子)を水に分散してなる分散水を得た。なお、(S)−4−アミノ−6−メルカプトヘキサン酸では、官能基X(RNH)と官能基Y(COOH)との間の炭素数は3である。
得られた溶媒分散性粒子について、結晶構造をXRD測定により評価したところ、粒子の構造が規則相であり、水分散化処理前後で変化はなかった。SiOシェルが除去されていることはTEM観察によって確認した。
また、得られた溶媒分散性粒子を水に分散させ、1日間放置したが、沈殿等の生成は認められず、その後3日間放置しても変化は認められなかったが、7日間放置したところ、若干の沈殿が認められた。
(実施例5)
2−メルカプトコハク酸を5−メルカプトサリチル酸に置き換えた以外は、実施例1と同様にして処理液を調製するとともに、5−メルカプトサリチル酸修飾FePt合金粒子(溶媒分散性粒子)を水に分散してなる分散水を得た。なお、5−メルカプトサリチル酸では、官能基X(ROH)と官能基Y(RSH)との間の炭素数は4である。
得られた溶媒分散性粒子について、結晶構造をXRD測定により評価したところ、粒子の構造が規則相であり、水分散化処理前後で変化はなかった。SiOシェルが除去されていることはTEM観察によって確認した。
また、得られた溶媒分散性粒子を水に分散させ、1日間放置したが、沈殿等の生成は認められなかったが、その後3日間放置したところ、若干の沈殿が認められた。
(実施例6)
FePt合金粒子に代えて、CoPd合金粒子を用いるようにした以外は、前記実施例1と同様にして2−メルカプトコハク酸修飾CoPd合金粒子(溶媒分散性粒子)を水に分散してなる分散水を得た。
得られた溶媒分散性粒子について、結晶構造をXRD測定により評価したところ、粒子の構造が規則相であり、水分散化処理前後で変化はなかった。SiOシェルが除去されていることはTEM観察によって確認した。
また、得られた溶媒分散性粒子を水に分散させ、1日間放置したが、沈殿等の生成は認められず、その後7日間放置したが変化は認められなかった。
(比較例1)
熱処理後のFePt/SiOコアシェル粒子の作製までは実施例1と同様にして行った。
次いで、6−アミノヘキサン酸(AHA、和光純薬工業製)5g(濃度3.8M)と、水酸化ナトリウム(NaOH、東京化成工業製)1.6g(濃度4M)とを水10mlに溶解し、処理液を調製した。
次いで、熱処理後の上記FePt/SiOコアシェル粒子5mgをこの処理液に浸漬させ、得られた反応溶液を70℃のホットプレート上で2日間放置した。以下の操作は実施例1と同様の方法によって6−アミノヘキサン酸修飾FePt合金粒子を水に分散してなる分散水を得た。
得られた合金粒子について、結晶構造をXRD測定により評価したところ、粒子の構造が規則相であり、水分散化処理前後で変化はなかった。SiOシェルが除去されていることはTEM観察によって確認した。磁気特性はSQUID測定によって評価し、保磁力および残留磁化は、水処理前後でほとんど変化がなかった。
実施例1で得られた分散液と比較例2で得られた分散液の濃度を測定したところ、実施例1の分散液の濃度は5.6×1010個/μlであったのに対し、比較例1の分散液の濃度は9.6×10個/μlであった。この結果から、実施例1の分散液の方が高濃度であり、さらに言えば、高濃度であっても凝集を生じず、合金粒子の分散性が高いことが明らかとなった。
また、比較例1の分散液を放置したところ、1日程で沈殿の生成が認められた。
以上のような結果は、実施例1で用いた表面修飾子が、Feに結合する官能基X、Ptに結合する官能基Y、および極性溶媒に親和性を有する官能基Zを有しており、FePt合金粒子に対して官能基XとYで強固に結合しているのに対し、比較例1で用いた表面修飾子は、結合の3種類の官能基のうちの2種しか有していないため、1種類の官能基でしか粒子表面と結合を形成しないのでFePt合金粒子に対する結合が弱い、もしくは2種類の官能基で粒子表面と結合を形成しても、溶媒側に溶媒に親和性の高い官能基が存在しないので、FePt合金粒子の溶媒に対する分散性が十分でないことが原因であると考えられる。
(比較例2)
6−アミノヘキサン酸を4−アミノ安息香酸に置き換えた以外は、実施例1と同様にして処理液を調製するとともに、4−アミノ安息香酸修飾FePt合金粒子を水に分散してなる分散水を得た。なお、4−アミノ安息香酸は、官能基としてアミノ基とカルボキシル基とを有している。
得られた合金粒子について、結晶構造をXRD測定により評価したところ、粒子の構造が規則相であり、水分散化処理前後で変化はなかった。SiOシェルが除去されていることはTEM観察によって確認した。
また、得られた合金粒子を水に分散させ、1日間放置したところ、沈殿の生成が認められた。
(まとめ)
以上の結果から、各実施例で得られた溶媒分散性粒子は、水などの極性溶媒に対して高い分散性を示すことが明らかとなった。
一方、各比較例で得られた粒子は短時間に凝集しており、水などの極性溶媒に分散させても、沈殿を生じることが明らかとなった。
1 溶媒分散性粒子
10 規則構造を有する多成分合金粒子
11 不規則構造を有する多成分合金粒子
6 処理液
7 コアシェル粒子
71 多成分合金粒子
72 シェル
a 元素群Aに属する元素
b 元素群Bに属する元素
m 表面修飾子
s 結合
X、Y、Z 官能基

Claims (13)

  1. 2種以上の金属成分で構成された多成分合金粒子に表面修飾子を結合させてなる溶媒分散性粒子であって、
    前記多成分合金粒子は、前記金属成分の原子が規則的に配列し、強磁性を示すものであり、
    前記表面修飾子は、その1分子中に、前記2種以上の金属成分のうちの1種と相互作用する官能基Xと、別の1種と相互作用する官能基Yと、極性溶媒に親和性を有する官能基Zとを、それぞれ1つ以上を有するものであることを特徴とする溶媒分散性粒子。
  2. 前記多成分合金粒子は、前記金属成分として、長周期型周期表の第4周期に属するCu以外の遷移金属元素から選択される少なくとも1種の元素群Aと、白金族および長周期型周期表の第11族に属する遷移金属元素から選択される少なくとも1種の元素群Bとを含む合金粒子である請求項1に記載の溶媒分散性粒子。
  3. 前記元素群Aは、FeまたはCoを含んでおり、前記元素群Bは、PtまたはPdを含んでいる請求項2に記載の溶媒分散性粒子。
  4. 前記官能基Xは、前記元素群Aと相互作用する官能基であり、前記官能基Yは、前記元素群Bと相互作用する官能基である請求項2または3に記載の溶媒分散性粒子。
  5. 前記官能基Xの前記元素群Aに対する相互作用および前記官能基Yの前記元素群Bに対する相互作用は、それぞれ、共有結合、イオン結合および配位結合のいずれかである請求項1ないし4のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
  6. 前記官能基Xは、硬い塩基になり得る官能基であり、前記官能基Yは、軟らかい塩基になり得る官能基である請求項1ないし5のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
  7. 前記官能基Zは、極性を有する官能基である請求項1ないし6のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
  8. 前記表面修飾子の1分子において、前記官能基Xと前記官能基Yとの間の炭素数は1〜4である請求項1ないし7のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
  9. 前記表面修飾子は、その分子の少なくとも一方の端部にカルボキシル基を有するものである請求項1ないし8のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
  10. 前記多成分合金粒子の平均粒径は、1〜30nmである請求項1ないし9のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
  11. 前記多成分合金粒子の保磁力は、1kOe以上である請求項1ないし10のいずれかに記載の溶媒分散性粒子。
  12. 請求項1ないし11のいずれかに記載の溶媒分散性粒子を極性溶媒に分散してなることを特徴とする分散液。
  13. 前記極性溶媒は、水である請求項12に記載の分散液。
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