JP2011089979A - 円二色性測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】時間分解分光測定装置と組み合わせて、時間分解CD測定装置を構成するために、時間を含まず、かつS/Nが高いCD測定装置を提供する。
【解決手段】クロスニコルに配置した偏光子49と検光子55の間に、位相子51と試料53をこの順に配置し、偏光子で生成した直線偏光をその偏光方向と±45°方向の2つの直線偏光と見做し、それに位相子で小さな位相差を与えて楕円率の大きな楕円偏光にし、今度はそれを左右2つの円偏光の和と見做して、その左/右円偏光がCDを有する試料を透過したときの吸収率の違いによって、再び左右の円偏光を合成してできる楕円偏光の偏光状態が変わることを利用し、位相子の位相差を正と負に変えたときの楕円の偏光状態の差から試料のCDを測定することを特徴とするCD測定装置である。
【選択図】図4

Description

本発明は円二色性(Circular Dichroism、略してCD)測定装置、特にナノ秒からピコ秒の時間分解能を有する実時間CD測定を可能にする測定及び算出手段の改良に関する。
CD測定は、分子の立体構造を直接解析できる分光学的手法として広く用いられており、特に生化学分野においては、たんぱく質など生体高分子の高次構造の解析、その熱的安定性の測定、あるいはストップドフロー法と組み合わせて、構造変化のダイナミックスの研究などに、不可欠の手段となっている。また、薬学・製薬の分野においても、分子不斉と薬効の把握による副作用の低減や、薬剤に配合された酵素などの活性の管理などに、古典的な方法として汎用されているのに加え、最近では実時間測定のような高度な測定が切望されるようになってきていた。
その背景には、新規抗癌剤の開発のような人類にとって重要な課題がある。抗癌剤として、ダウノマイシンやディスタノマイシンのようなグルーブバインディングによって、またシスプラチンのように塩基部への配位もしくはインターカレーションにより、二重らせん核酸(dsDNA)に結合し、高い抗癌活性や生理活性を示す化合物が広く知られている。これらdsDNA結合性薬物の薬効発現機構の解明は、より優れた薬剤開発や発病過程の解明のためにも非常に重要で、現象論的にはその作用機構なども明らかにされてきているが、肝心の初期過程かつ最も基本的な性質であるターゲットdsDNAとの動的な相互作用解析については、現在でも明らかになっていない。
このdsDNA-薬物間の初期的かつ動的な相互作用の解明は、薬物の塩基配列特異的認識・結合挙動解明にとって極めて重要な課題であり、多くの研究者により取り組まれてきている。そして相互作用を検出・解析する手段として実時間CD測定に期待が集まっているが、従来のCD測定法では、この期待に応えることができていなかった。
それは従来のCD測定法の持つ時間分解能が、相互作用を検出・解析するための実時間CD測定に要求される時間分解能のレベルから著しく隔たっていることによる。従来のCD測定法の持つ時間分解能が高々サブミリ秒であるのに対して、実時間CD測定で要求される時間分解能はナノ秒からピコ秒と数桁の違いがある。発明者は、この実時間CD測定の要求を満たすことができるCD測定法を鋭意検討し、本発明に至ったのである。
(従来のCD測定装置の概要)
最初に、従来のCD測定を応用して時間分解測定を行っている例について説明する。従来は、専らストップドフロー−CD法によって、分子、特に生体高分子の構造の時間変化を測定するのに応用されてきた。その概要は図1に示すようなものである。
即ち、CD装置10の試料室35にストップドフロー装置のフローセル16を置き、それに2種以上の試料液12をミキサー14を経由して送り込む。試料液は、ミキサーで混り合ったことを切っ掛けに反応が開始するよう設計される。適当な量の試料液を送液した後、それを瞬時に停止し、その直後からフローセルに入っている試料(混合液)のCDを経時的に測定することにより、試料の反応による構造変化をモニターする。一回の測定ではノイズが大きいために、同じ測定を必要回数だけ繰り返し、平均してノイズの低減を図るのが普通である。また測定は選んだ1つの波長でのモニターとなる。幾つかの波長での結果、いわゆるスペクトル変化を測定したいときには、波長を順次変えながら測定を行い、それらを波長順に並べて“時間変化のスペクトル”をみることが行われている。
このシステムで使われる従来のCD装置の概要は、図2に示すようなものである。
また、その検出原理に関る光学系は図3に示すようなものである。光源ランプ20を出た光は、2個のプリズム21で単色光に分光され、かつ紙面に水平方向の直線偏光となって位相変調子31を通る。この位相変調子は、ピエゾ効果を利用した素子で、その軸が入射する直線偏光に対して45°になるように設置されている。入射する直線偏光は、±45°方向の2つの直線偏光の和と表すことができるが、これらがこの位相変調子31を透過するとき位相差を与えられ、変調周波数(市販の装置では50kHz)で決まる周期で左/右に交替する円偏光となる。但しこの表現は、理解を助けるためのもので、正確でない。正確には、加わる位相差δ=δo・sinωtによって偏光状態が周期的に変わる。その変調の深さは、1次のベッセル関数J1(δo)が最大値となるδo =1.84に設定される。位相差δが、δ=π/2=1.57のとき円偏光になるから、位相差が最大となるδ=±δoのところでは、円偏光を通り越して長短が入れ替わった楕円偏光まで変わることになる。
左右の円偏光がCDのある試料37を透過すると、左と右で異なった大きさの吸収を受け、それ以降の光は、このCDに依存する強度変動を含むことになる。CD装置では検知器(市販の装置では光電子増倍管、略してPMT)39で検出し電気信号に変えているが、これは数式1で表現される。
Figure 2011089979
ここでIl、Irは左と右の円偏光の透過光強度である。この電気信号から、DCアンプで直流成分(DC)、即ち(Il+Ir)/2、ACアンプと変調周波数に同期したロックインアンプによって周波数ωの交流成分(AC)、即ち(Il-Ir)・J)を別々に取得し、ACをDCで割ったものから円二色性ΔAを数式2で算出している。
Figure 2011089979
(従来の円二色測定装置の時間分解能の問題)
前に述べたストップドフロー−CDに当てはめると、この検出原理はストップドフロー測定における時間の分解に限界を与え、位相変調の変調周波数以上には時間分解を上げることができない。変調周波数は市販機では50kHzであり、その周期は0.02μ秒となる。ロックインアンプで1周期で信号を得ることは無理であり、少なくとも10周期程度は必要とされているので、このシステムを利用する限りサブミリ秒が原理的に到達できる最も短い時間分解となる。ところが、本発明を必要としていた分子構造の時間変化はナノ秒からピコ秒に至る極めて早いものであり、従来技術では到底達成できないものであった。
(従来の円二色性装置のS/N比改善の問題)
さらに、一般に円二色性は非常に小さいものであり、大きな分子でもΔA/Aで高々10−2、通常は10−3から10−4である。そうすると、この計測では、非常に大きな直流成分に極僅かに重畳する交流成分を抽出することになり、大きな直流成分に由来する比較的大きな信号ゆらぎが支配的となって、S/Nよく交流成分を抽出することが困難で、信頼できる測定結果を得るためには、同じ測定を繰り返し結果を平均してS/Nを改善したり、あるいは時間分解を犠牲にして、その分時間積算を行ってS/Nを確保する必要があった。これも実質的に時間分解を上げることが難しい大きな要因となっていた。
本発明は、期待される実時間分解測定に従来技術を適用しようとしてできない原因となっていた課題に鑑みなされたものであり、その目的は自身に時間分解に対する限界を有せず、かつノイズ成分の影響が少ない方法で円二色性を測定する装置を提供することにある。
前記課題を解決するために、本発明にかかる円二色性測定装置は、
楕円率が大きくかつ長軸方向が一致する左右の楕円偏光を形成する楕円偏光形成手段と、
被測定試料を透過した前記左右の楕円偏光の短軸成分強度をそれぞれ測定する短軸成分強度測定手段と、
前記左右の短軸成分強度の和と差の比より被測定試料の円二色性を算出する演算手段と、
を備えたことを特徴とする。
また、前記装置において、楕円偏光形成手段は、光源と、第一偏光子と、光軸を中心に迅速かつ正確に軸方位を回転できる位相子と、を含み、第一偏光子によって生成される直線偏光を位相子によって楕円率が大きくかつその楕円の長軸が元の直線偏光の偏光方向の楕円偏光を生成することが好適である。
また、前記装置において、短軸成分強度測定手段は、前記第一偏光子と直交ニコルに設置した検光子と、該検光子を透過した光の強度を検出する検知器と、を含むことが好適である。
また、前記装置において、前記短軸成分強度測定手段は、位相子の軸方位を偏光子の偏光方向を中心に正方向と負方向同じ角度だけ回転した地点で光強度検出を行うことが好適である。
また、前記装置において、位相子は、透明かつ光学的異方性を有し、位相差が測定波長領域の全領域で1/10ラジアン以下となるようにした素子であることが好適である。
また、前記装置において、位相子は、透明かつ光学的に等方的な板状の素材に力学的にヒズミを加えることによって異方性を生じさせた素子であることが好適である。
また、前記装置において、位相子および、その回転角度を、位相子の位相差をδ、位相子の回転角度をθとしたとき、δ・sin2θが0.1ラジアン以下になるように構成することが好適である。
また、前記装置において、光源としてパルス点灯するランプを用いることが好適である。
また、前記装置において、試料に別のパスルレーザー光を照射して変化を与え、そこからの緩和過程に伴う構造の変化を円二色性測定で観察することが好適である。
以下に、本発明の原理について、図4に基づき説明する。
白色光(以下単に光)は偏光子49によって直線偏光にされる。図4では紙面に平行な方向(X方向とする)に偏光した光になる。これを、進相軸をこのX軸からθだけ傾けた位相子51を透過させる。X方向の直線偏光は、この進相軸の方向の直線偏光と遅相軸方向の直線偏光にわけられ、位相子によってこれらの間に位相子固有の位相差(λ/4板を用いたときはπ/2)を生じるが、これは元の直線偏光を、それと±45°の方向の2つの直線偏光に分けたとき、それらの間に位相子固有の位相差に角度θに依存するファクタを掛けて小さくなった位相差を生じることと等価である。この小さな位相差δは0.1以下とするが、0.01が至適である。後で詳しく説明するが、この位相差によって、直線偏光はY方向成分も僅かに持つ直線偏光に近い極めて楕円率の大きい楕円偏光になる。これを試料53を透過させる。試料にCDがあると、楕円率が変化する。この楕円偏光を、先の偏光子49とクロスニコルの位置に設置した検光子55を透過させ、Y軸方向成分だけを取り出し、それを分光器57aを通して単色化し、検知器57bで検出する。これをI+(λ)とする。分光器57aで単一の波長だけを取り出し、それを検知して、その波長だけのデータを取得するほか、分光器57aで波長に分光したあとアレイ検知器で波長ごとのデータ(スペクトル)を取得してもよい。また単一波長だけのデータの取得を望むときは、プローブ光に単色の光を用いて分光器57aを省くことも可能である。
次に、位相子51を逆に回転して角度を−θとし、同じ測定を行う。このときの測定結果をI-(λ)とする。円二色性ΔAは、このI+(λ)、I-(λ)とδから、数式3に従って計算する。
Figure 2011089979
δは位相子の固有の特性であり、既知であればそれを使うが、未知あるいは確認のためには実測する。それには、試料53を省き、位相子51の角度はθまたは−θにしておいて、検光子55を偏光子49に対してパラレルニコルとしたときと、クロスニコルにしたときの光の強度を夫々測定する。この測定は、単一波長のときはその波長で、スペクトル測定のときは、スペクトルとして行う。これを夫々Ip(λ)、Ic(λ)とし、δは数式4で計算する。
Figure 2011089979
(本発明の測定原理の正当性の証明)
次に、本発明のCDの測定原理が適正であることを、ジョーンズベクトル、ジョーンズ行列の手法を用いて説明する。
図4の偏光子49を通過した後のX軸方向の直線偏光をジョーンズベクトルでJは下記数式5ように表される。
Figure 2011089979
これが位相子51を通過した後のジョーンズベクトルJは、位相子51の作用をあらわすジョーンズ行列MPhを用いて、下記数式6のように表すことができる。
(数6)
=MPh×J
ただし、MPhは下記数式7の通りである。
Figure 2011089979
さらにこれが、試料53、検光子55を通った後の状態は、それぞれのジョーンズ行列M、Mを用いて、下記数式8のように表すことができる。

(数8)
=M×J, J=M×J
また、M、Mはそれぞれ下記数式9のように表すことができる。
Figure 2011089979
ここでt、tはそれぞれ左円偏光及び右円偏光が試料を透過するときの振幅透過率である。この演算を行い、Jを求めると下記数式10のようになる。
Figure 2011089979
さらに検出される光の強度はこの絶対値の2乗であるから、下記数式11のように表される。
Figure 2011089979
同様に、位相子の傾き角度を−θとしたときは、数式11のカッコ内の第3項だけ符号が反転し、下記数式12のようになる。
Figure 2011089979
これらの和と差の比をとると、下記数式13のようになる。
Figure 2011089979
透過率(T)と吸光度(A)の関係は、それぞれ下記数式14、数式15のように表される。
Figure 2011089979
Figure 2011089979
ただし、A=(A+A)/2、ΔA=A−Aである。
これを代入すると、下記数式16のようになる。
Figure 2011089979
ここで、ΔA、δが小さいものとするとΔA=0,sinδ=δ,sin(δ/2)=δ/4と近似することができる。
したがって、これらを代入すると下記数式17のようになる。
Figure 2011089979
これを整理すると下記数式18のようになる。
Figure 2011089979
これにより、先に述べた計算方法の正当性が保証された。
なお、前記数18の妥当性は以下のように確認されている。
すなわち、本発明者らは(Bis(porphyrin)) 1×10−6Mトルエン溶液に対し、(1S,2S)−(+)−1,2−diaminocyclohexaneを滴下し、各種濃度のキラル超分子を作成し、本発明の装置により波長438nmでの円二色性を測定した。
この際のsin2θとFの関係をプロットしたのが図5であり、またδ・sin2θとFの関係をプロットしたのが図6である。
同図より明らかなように、本手法で採取される円二色性信号において、1/Fがδ・sin2θに比例しており、前記数18の妥当性が実測定の上からも確認された。
(本発明の時間分解能について)
数式3で明らかなように、この測定の中には時間に従って変化する要素は含まれない。このことは測定の時間分解は、組み合わせる過渡吸収、フラッシュフォトリシスなどの時間分解分光システムだけで決まることを意味する。これらのシステムは、ナノ秒からフェムト秒まで種々のものが実用となっているので、これらの中の適切な手法を組み合わせることにより、ナノ秒からフェムト秒までの時間分解CD測定システムを構築することができる。
(本発明のCDの検出感度について)
続いて本発明による方法が感度の点でも従来法に優れることを説明する。そのために参照する従来法を説明する。この従来法は、本発明の起点となったCDを測定する原理に最も近い方法で、本発明における位相子の位相差をπ/2に限定し、その軸の方向を+45°と-45°に限定し、かつ検光子を設置しないというものである。この位相子には四分の一波長板が使われるが、測定する波長範囲のすべての波長で同じ位相差を示すような波長板は存在しないので、測定には単色光を用い、波長板は、その波長でλ/4の位相差を与えるようなものを選んで用いることになる。この点も、本発明が従来法に優れる点の1つである。
その概要を図7に示す。この方法においては、位相子51で生成される光は完全な左または右円偏光となり、夫々の場合に得られる光の強度は、極めてシンプルに数式19のようになる。
Figure 2011089979
そして円二色性ΔAは数式20で表されるものとなる。
Figure 2011089979
この方法はCDの原理そのものであり、その測定法を考えるときまずここから出発するというものであるが、一方でこの方法では信頼できる値が安定して得られないことも周知である。それは一般に円二色性が小さく、特に大きい試料においてもΔA/Aが高々10−2程度、通常は10−3〜10−4しかないことに原因がある。ΔAが小さいということは、上式でI+とI-に殆ど差がないことを意味している。そうすると2つの似通った大きな量を2つ測定し、必要な情報はその差から得ることになる。ところが測定には不確かさが伴うことは不可避であり、その不確かさは、測られる量が大きいほど大きくなる。即ち、従来法では、大きさのあまり違わない大きな二つの量を測定してその間の僅かな差を求めるために、その差に十分な確からしさが確保できないのである。
これに対し本発明による方法では、CDに直接関係なく、ただ強度をかさ上げしているにすぎない部分の光を、検光子をそれにクロスニコルになるように入れて除くことによって、差の部分を相対的に大きく計測することが出来るようにしている。
これを模擬的に表すと、図8及び図9のようになる。
従来法の場合、図7の偏光子49を透過した後の光の状態は図8の(i)のような直線偏光である。これがπ/2の位相差を持つ図7の位相子(λ/4板)51を透過すると、その軸の方向によって正(θ)の場合図8の(ii)−1のような左円偏光、負(−θ)の場合6の(ii)−2のような右円偏光図となる。それが図7の試料53を透過すると、その吸収によって小さくなるが、円二色性があると小さくなり方に差が生じて、図8の(iii)と図8の(iv)のような大きさの異なる円偏光になる。これらの大きさを検知し、差と和の比から円二色性を算出することになる。
これに対して本発明による方法では、図4の偏光子49を透過した後の図9の(i)のような直線偏光は、小さな位相差の図4の位相子51を透過すると、図9の(ii)−1のような直線偏光に近い楕円率の大きな楕円偏光になる。図4の位相子51の方向を反対(−θ)にすると、図9の(ii)−2のように回転の方向が反対になるだけで、楕円率は同じになる。これが図4の試料53を透過すると、試料の吸収によって全体として小さくなるが、そこに円二色性があると、楕円率も変化し、図4の位相子51の方向によって図9の(iii)−1と図9の(iv)−1のようになる。これをクロスニコルの位置にある図4の検光子55を通すと、楕円偏光の幅の部分だけが抽出されて、図9の(iii)−2と図9の(iv)−2のような水平方向の直線偏光になる。差を評価するとき、図9の(iii)−1と図9の(iv)−1の差を見るより、図9の(iii)−2と図9の(iv)−2の差を見たほうが確からしさに優れることは明白である。
これを、典型的なケースを想定して測定値を計算で見積り、数値で確認した。
典型的なケースとして、A=1.0、ΔA=0.001とし、測定光を完全な円偏光にして測定する場合と、本発明による方法で、δ・sin2θ=0.01の位相差を与えて楕円偏光としたときの、夫々の測定値を式に従って計算した。
即ち、従来法での測定値は、数式21、
Figure 2011089979
本発明による方法では、数式22に依った。
Figure 2011089979
測定の入射光強度を便宜的に10000とすると、表1及び表2のようになる。
Figure 2011089979
Figure 2011089979
この計算結果から、従来法では約1000の大きさの測定値における約2の大きさの違いを検知しなければならないのに対して、本発明では約0.05の測定値における0.01の違い、即ち5における1を検知することになり、約100倍有利であることが明らかになった。
従来のストップドフロー法の説明図である。 従来のCD測定装置の概要図である。 従来のCDの検出原理に係る光学系の概略図である。 本発明のCD測定の説明図である。 キラル超分子について実測定を行った際のFとsin2θの関係図である。 キラル超分子について実測定を行った際のFとδ・sin2θの関係図である。 従来の基本のCD測定の説明図である。 従来法により生じた左・右円偏光の説明図である。 本発明の方法により生じた左・右楕円偏光の説明図である。 本発明を適用実施した時間分解CD測定システムの概要図である。 本発明を適用実施したときに用いた位相子の概略図である。
本発明の目的は、適当な時間分解分光測定装置に組み合わせてナノ秒からピコ秒に至る時間分解CD測定装置を構成することにあり、その実施例を示す。その実施例は、概略を図10に示すようなものである。
パルス光レーザーを用いたポンプ光源145から極短パルス光を試料153に照射し、反応、構造変化をトリガする。このタイミングから遅延機構142によって、所定の時間だけ遅らせてプローブ光源143をパルス点灯し、その光を波長変換素子147によって白色光に変換して、さらにλ/4波長板を位相子151として用い、その軸をプラス方向に1°傾けて小さな位相差(約0.05ラジアン)を与えて楕円偏光にして試料153に照射する。この楕円偏光は、試料を透過したとき試料の分子構造を反映した円二色性の情報を持つ。これを分光・検知システム157によって分光検知し、得られたスペクトルをデータ処理装置159に記憶する。
次に位相子151を反対のマイナス方向に正確に1°だけ回転して、逆の位相差(約−0.05ラジアン)を与えて同じ測定を行い、それを分光・検知し、同じくデータ処理装置に記憶する。こうして記憶した位相差が正と負の2つのスペクトルを、データ処理装置上で数式3に従って演算し、このときの遅延時間に対応するCDスペクトルを得る。このプロセスで得られるCDスペクトルはノイズが大きくてそのままでは信頼性が十分でないことが一般的であり、必要なだけこのプロセスを繰り返し、得られるCDスペクトルを積算平均してノイズを低減する。
さらに、遅延機構142によってプローブ光を遅らせる時間を順次変えて測定を行い、CDスペクトルの時間変化を得る。
(位相子に関する別の実施例)
上記の実施例においては、位相子として市販のλ/4板を用いたが、λ/4板の与える位相差は設置方位±45°でそれぞれ±π/2ラジアンと大きく、本発明を構成するための小さな位相差、例えば±0.01ラジアンを得るためには、回転角度を±0.18°に設定する必要があり、角度設定の確からしさを確保することを優先して、これを±1°とし、その代わり、位相差を至適な値の約5倍で測定を行った。
角度設定をより正確にするには、より大きく回転させることが望ましい。これを可能にするために、別の構成の位相子を考案した。それを図11に示す。
位相子を構成する光学素子には、もともと光学異方性を持たない溶融石英板を用いている。これの一端に押えネジで機械的な圧力を加えると、圧力の方向とそれと垂直の方向に異方性が生起し、位相子となる。こうして構成した位相子を±10°程度に正確に回転できる回転機構を組み合わせ、先のλ/4板で構成した位相子に替えて用いることも行った。このときの光学素子の異方性は、機械的圧力の大きさによってコントロールできるので、実測しながら全体で0.01程度になるようにした。
この別の位相子の実施例は、信頼度の高い測定結果を得るのに効果があるものであり、以下、それについて説明する。
従来は位相子として光吸収端が真空紫外領域にあって透過性が高く、かつ光学的異方性がある結晶石英の波長板を使うのが一般的であった。しかしこの波長板の位相差は、屈折率の差と板の厚さの積で決まってしまうために、それを適切にコントロールすることが難しかった。この「適切にコントロールする」というのには、2つの意味がある。1つは位相差が正確に意図する値になっている波長板を作ることである。他の1つは、測定毎、例えば波長毎に意図する位相差になるよう正確に変更することである。
前者に関し、特に本発明においては位相差を小さくすることがポイントであるが、位相差と板の厚さとの間には数式23の関係があり、
Figure 2011089979
結晶石英ではΔnが概略0.01であることから、δを0.01にコントロールしようとすると、数式24のようになって、
Figure 2011089979
波長の約1/6の厚さの板を、さらにその何分の1〜何十分の1の正確さで厚さをコントロ−ルして製作しなければならず、これはほとんど不可能である。
また、後者に関してはビオサバールの補償板のように位相差を任意に変えることが出来る市販の素子があるが、光の通る位置によって位相差が違うために、その軸方向をθと−θに変えたときに、厳密に同じ位置を光が通るようにすることは困難であった。
これに対して本発明による溶融石英のような、光学的に等方的な透明素材に機械的な圧力をかけて歪ませて異方性を生起させて位相差を生み出す方法は、その圧力を適切に小さくすることによって位相差を小さくするコントロールが容易である。また、圧力の方向を90°変えることにより、位相差を逆にすることが出来る。こうするとθを45°にしておけば、位相子を動かさなくても逆の楕円偏光を作り出すことが出来きる。これは「プラス側」の測定と「マイナス側」の測定で光学系が等価なことを確保するうえで極めて効果的であり、ニセ信号の低減に大変効果的である。
従来、位相子によって円偏光あるいは楕円偏光を作り出す場合には、位相子の軸方位を入射する直線偏光に対して±45°に設定することが極普通であった。これに対して本発明において、δがsinδ=δと近似できる程度に小さければ、その効果がδsinθとなって、δを小さくすることとθを小さくすることが相補的であることを見出した。前記した考案に関らず、位相差δを小さくかつ正確にコントロールすることは容易ではない。例えば等方的と見なしている溶融石英板も、製作時の熱ひずみなどが残留していると、それが誤差を与える。これに対して機械的圧力によって生起させる位相差を目的の値より1桁程度大きいところに設定し、その分sin2θが0.1になるような軸方位を設定すれば、全体で同じ効果が得られる。これは「位相差を非常に小さいところで正確にコントロールする」困難を軽減すると同時に、軸の振り角を小さくして、プラスとマイナス時で光学的な同等性が低下することを軽減し、ニセ信号を低減するのに大変効果的である。
10…円二色性(CD)測定装置
12…試料セル
14…ミキサー
16…フローセル
18…測定光
20…光源
21…プリズム
23…ミラー
25…スリット
27…レンズ
29…フィルタ
31…位相変調子
33…シャッタ
35…試料室
37…試料
39…検知器
49…偏光子
51…位相モジュレータ(位相駆動機構)
53…試料
55…検光子
57a…分光器
57b…検知器
141…光源駆動電源
142…遅延機構
143…プローブ光源
145…ポンプ光源
146…ミラー
147…波長変換素子
159…システム制御装置およびデータ処理装置
なお、図4の具体例に対応する図10の装置については下2桁を対応させて3桁としている。

Claims (9)

  1. 楕円率が大きくかつ長軸方向が一致する左右の楕円偏光を形成する楕円偏光形成手段と、
    被測定試料を透過した前記左右の楕円偏光の短軸成分強度をそれぞれ測定する短軸成分強度測定手段と、
    前記左右の短軸成分強度の和と差の比より被測定試料の円二色性を算出する演算手段と、
    を備えたことを特徴とする円二色性測定装置。
  2. 請求項1記載の測定装置において、楕円偏光形成手段は、光源と、第一偏光子と、光軸を中心に迅速かつ正確に軸方位を回転できる位相子と、を含み、第一偏光子によって生成される直線偏光を位相子によって楕円率が大きくかつその楕円の長軸が元の直線偏光の偏光方向の楕円偏光を生成することを特徴とする円二色性測定装置。
  3. 請求項1または2記載の装置において、短軸成分強度測定手段は、前記第一偏光子と直交ニコルに設置した検光子と、該検光子を透過した光の強度を検出する検知器と、を含むことを特徴とする円二色性測定装置。
  4. 請求項2または3記載の装置において、前記短軸成分強度測定手段は、位相子の軸方位を偏光子の偏光方向を中心に正方向と負方向同じ角度だけ回転した地点で光強度検出を行うことを特徴とする円二色性測定装置。
  5. 請求項2〜4のいずれかに記載の装置において、位相子は、透明かつ光学的異方性を有し、位相差が測定波長領域の全領域で1/10ラジアン以下となるようにした素子であることを特徴とする円二色性測定装置。
  6. 請求項2〜5のいずれかに記載の装置において、位相子は、透明かつ光学的に等方的な板状の素材に力学的にヒズミを加えることによって異方性を生じさせた素子であることを特徴とする円二色性測定装置。
  7. 請求項2〜6のいずれかに記載の装置において、位相子および、その回転角度を、位相子の位相差をδ、位相子の回転角度をθとしたとき、δ・sin2θが0.1ラジアン以下になるように構成することを特徴とする円二色性測定装置。
  8. 請求項2〜8に記載の装置において、光源としてパルス点灯するランプを用いることを特徴とする円二色性測定装置。
  9. 請求項2〜8に記載の装置において、試料に別のパスルレーザー光を照射して変化を与え、そこからの緩和過程に伴う構造の変化を円二色性測定で観察することを特徴とする円二色性測定装置。
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