JP2011087497A - 細胞及び評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】処理排水中の天然毒性物質および有毒環境化学物質を簡便、高感度に検出が可能な細胞及び評価方法を提供する。
【解決手段】本発明の細胞は、HSP90βプロモーターと、当該HSP90βプロモーターの転写制御下にあるレポーター遺伝子とが染色体に導入されている。LPS等の毒性物質の存在下では、HSP90βプロモーターが発現し、レポーター遺伝子からレポータータンパク質が生産される。レポータータンパク質の発現を検出することで被検物質の毒性を評価できる。
【選択図】図1

Description

本発明は毒性物質の検出用細胞、及びそれを用いた毒性の評価方法に関する。
水資源の安全かつ有効な利用に関し、水の安全性評価、特に有効利用の観点から処理排水への人体を含む生物への影響を評価することは重要な課題である。処理排水の安全性を損なう一因として、排水処理の一段階である活性汚泥処理後に残存するリポポリ多糖(LPS)などの微生物残滓に含まれる天然毒性物質があり、実際にLPSの毒性、健康障害が報告されている。このため、簡便、高感度でより直接的に生物への影響を評価する手法の確立が急務となっていた。
このような天然毒性物質の混入を検出・評価する方法としては、HPLC法、GC/MS法、LC/MS法などの物理化学的手法による既知の単一成分の分析法が確立しているが、LPSのように、未同定のものも含む構造の異なる分子が多数存在し、これらが輻輳的に働いて生物学的影響を及ぼす場合には、その影響を適切に評価することに限界があった。
また、生物学的影響の評価法として動物実験、培養細胞の増殖率、生存率を測定する方法が確立されているものの、簡便性と潜在的な生物への影響を評価するための感度の面で問題があった。
上記生物学的影響の評価法の欠点を解決するための方法としては、有害物質の標的となる特定タンパク質の結合を調べるバイオアッセイ法がある。
下記非特許文献1には、HSP90β遺伝子の発現を抗HSP90βタンパク質抗体あるいは同遺伝子に特徴的なプライマーを用いたRT−PCR法による検出法が開示されている。しかし、上記検出法は操作の簡便性が悪く、結果を得られるまでの時間の短縮、多検体処理への対応が劣っていた。
下記特許文献1には、環境化学物質および天然毒性物質による熱ショックタンパク質HSP47遺伝子の発現誘導をレポーター遺伝子活性により評価する方法も開示されているが、LPSなどの天然毒性物質に対する感受性において不十分であった。
特開2003−79365号公報
サチヤ アール(Sathiyaa R)、キャンベル ティー(Campbell T)、ビジャアン エムエム(Vijayan MM)、「コルチゾール モデュレーツ HSP90 mRNA エクスプレッション イン プライマリー カルチャーズ オブ トラウト ヘパトサイト(Cortisol modulates HSP90 mRNA expression in primary cultures of trout hepatocytes)」、コンパラティブ バイオケミストリー アンド フィジオロジー パート B、バイオケミストリー アンド モルキュラー バイオロジー 129、2001年、679−685頁 ナリタ エィチ(Narita H)、タロレテ ティーピー(Talorete TP)、ハン ジェイ(Han J)、イソダ エィチ(Isoda H)、「ヒューマン インテスティナル セルズ インキュベーティッド ウィズ アクチベーテッド スラッジ アンド リポポリサッカライド エクスプレス HSP90b(Human intestinal cells incubated with activated sludge and lipopolysaccharide express Hsp90b)」、エンバイロメンタル サイエンスィーズ14(1)、2007年、35−39頁 ハン ジェイ(Han J)、タケナカ エム(Takenaka M)、タロレテ テーピー(Talorete TP)、フナミズ エヌ(Funamizu N)、イソダ エィチ(Isoda H)、「トキシティ アセスメント オブ ウェストウォーター バイ プロテミクス アナリシス(Toxicity assessment of wastewater by proteomics analysis)」、エンバイロメンタル サイエンスィーズ 14 suppl.、2007年、35−41頁 トリアンタフィロウ エム(Triantafilou M)、トリアンタフィロウ ケー(Triantafilou K)、「ヒートショックプロテイン70 アンド ヒートショックプロテイン90 アソシエート ウィズ トールライク レセプター4 イン レスポンス トゥ バクテリアル リポポリサッカライド(Heat-shock protein 70 and heat-shock protein 90 associate with Toll-like receptor 4 in response to bacterial lipopolysaccharide)」、 バイオケミカル ソサエティ トランスアクションズ 32(4)、2004年、636−639頁
本発明はLPSなど天然毒性物質の刺激により発現が誘導される遺伝子を用いて、その発現誘導を測定する細胞評価系を確立することにより高感度でより信頼性の高い天然毒性物質の生物学的影響の評価法を提供することを主目的とする。
ヒト胎児腎臓上皮細胞由来の培養細胞HEK293株、ヒト腸管上皮由来の培養細胞Caco−2株等、ヒト由来細胞の培養株は、LPS刺激により、HSP90β遺伝子の発現が誘導される(上記非特許文献2〜4)。
本発明は、HSP90β遺伝子をバイオマーカーとして用いることにより天然毒性物質の生物学的影響を評価することを着想し、同遺伝子の転写調節領域の支配下で発現するレポーター遺伝子の活性を測定するための細胞および測定法を確立し、本願発明を完成するに至った。
係る知見に基づいて成された本発明は、HSP90βプロモーターと、当該HSP90βプロモーターの制御下にあるレポーター遺伝子とが染色体に導入された細胞である。
本発明に用いるHSP90βプロモーターは、ヒト染色体由来であることが好ましい。また、本発明は、細胞をヒト細胞から作製することが好ましく、より好ましくはヒトの上皮細胞を用いる。
さらに、本発明は、上記細胞を、被検物質の存在下に置いて、前記レポータータンパク遺伝子が発現するレポータータンパク質の発現量を測定する評価方法である。
本発明の評価方法において、前記レポータータンパク質の発現量に基づいて、被検物質の毒性の程度を評価することもできる。また、本発明の評価方法は、特に、被検物質の毒性がリポポリ多糖に由来する場合の評価に特に適している。
本発明で、「染色体に導入された細胞」とは安定形質転換体のことをいい、トランジェント発現系の細胞と区別する趣旨である。
本発明によれば、処理排水中の天然毒性物質および有毒環境化学物質を簡便、かつ高感度に検出が可能となる。
本発明の細胞を説明する模式図である。 本発明に用いるベクターの一例を説明する模式図である。 本発明に用いるコントロール細胞の一例を説明する模式図である。 本発明に用いる発現ベクターの一例を説明する模式図である。 本発明に用いる薬剤耐性遺伝子保有ベクターの一例を説明する模式図である。 LPS濃度とLacZタンパク質活性の関係を示すグラフである。
HSP90βプロモーターは、分子量が90kDaの熱ショックタンパク質(Heat Shock Protein)プロモーターであり、本発明の細胞は、このHSPβ90プロモーターが染色体に組み込まれている。
図1は本発明の細胞を模式的に示す図であり、染色体にHSP90βプロモーターが導入され、その下流にLacZ遺伝子等のレポーター遺伝子が導入されており、従って、レポーター遺伝子はHSP90βプロモーターの制御下にある。
HSP90βプロモーターは特に限定されず、ヒトHSP90βプロモーター、マウスHSP90βプロモーター、ショウジョウバエHSP90βプロモーターなどを用いることができる。
レポーター遺伝子としては容易かつ迅速に酵素活性が測定できるものが好ましく、例えばβガラクトシダーゼのほかに、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ、グリーンフルオレセントタンパク質およびそれらに由来する改変タンパク質遺伝子などのタンパク質をコードする遺伝子があげられる。
レポーター遺伝子のDNAは、例えば市販のプラスミドDNAを制限酵素消化することにより得ることができる。上記プラスミドは、例えば、サンブルック他著、モレキューラークローニング第二版、コールドスプリングハーバーラボラトリー発行(1989)等に記載されている通常の遺伝子工学的手法に準じて構築することができる。
レポーター遺伝子の発現は、レポーター遺伝子が作るレポータータンパク質(酵素等)を検出することにより確認できる。すなわち、レポータータンパク質と基質との反応の有無を検出する、あるいはレポータータンパク質そのものを検出することで、被検物質にLPS等の毒性物質が含まれるか否かを評価できる。
また、レポータータンパク質と基質との反応物の量、又は、レポータータンパク質の量を測定すれば、被検物質の毒性の程度を評価することができる。
レポータータンパク質と反応する基質は特に限定されないが、一例を述べると、βガラクシダーゼの場合は4−メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニド、ルシフェラーゼの場合はルシフェリン、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼの場合はアセチルCo−A、アルカリフォスファターゼの場合はp−ニトロフェニルリン酸、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸、4−メチルウンベリフェリルリン酸、ジオキセタン発光基質等である。
レポータータンパク質と基質との反応物が蛍光物質の場合、またはレポータータンパク質が蛍光タンパク質の場合は、光度を測定することで対象物質の検出、定量が可能である。
また、本発明の細胞は、レポーター遺伝子の下流にSV40pAシグナル(Mol.Cell.Biol.,(10),4248,1989)を結合させることが好ましい。この場合、SV40pAシグナルの直前にイントロンを導入しないことがより好ましい。SV40pAシグナルの直前にイントロンが存在すると、レポータータンパク質のストレス誘導性が弱くなる。
本発明の細胞は、動物(哺乳類)培養細胞から作製される。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞またはHeLaS3細胞の安定形質転換体であり、好ましくは、上記細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞の安定形質転換体2F1813である。また、ヒト細胞、例えばヒト胎児腎臓上皮細胞由来の培養細胞(HEK293株等)、ヒト腸管上皮由来の培養細胞(Caco−2株等)を用いることもできる。
HSP90β遺伝子と細胞の組み合わせは特に限定されず、ヒトHSP90β遺伝子とヒト培養細胞の組み合わせ、マウスHSP90β遺伝子とマウス培養細胞の組み合わせ等を用いることができる。ただし、ヒト由来の培養細胞を用いることは、他の哺乳類動物の細胞を用いる場合と比較して、毒性物質の人体に与える影響をより実態に即して評価できる点に優位性がある。また、上記HEK293株やCaco−2株等は、いずれも人体において毒性物質が実際に曝露される上皮細胞であり、これらの細胞を用いることによって、実際の人体に対する影響に近い状態で評価できる。
従って、HSP90β遺伝子と細胞の組み合わせとしては、少なくとも細胞がヒト由来、特に、人体において毒性物質が実際に曝露される上皮細胞であることが最も好ましい。
本発明の評価方法は、レポーター遺伝子の発現を検出することであり、その検出方法は特に限定されないが、例えば、本発明の細胞を被検査サンプル含有培地で培養した後に、レポーター遺伝子のタンパク質誘導活性を測定することで、生体恒常性を破壊もしくは混乱させるLPS等の毒性物質を検出する。
本発明の評価方法は、内分泌かく乱物質を含有する被験サンプルを評価する試験方法、環境基準項目物質を含有する環境中より得られた被験サンプルを評価する試験方法、重金属類を含有する被験サンプルを評価する試験方法、未同定物質を含む2つ以上の異なる有害化学物質が混在している被験サンプルを評価する試験方法などに応用することができる。
本発明に最も適した検出対象は、LPS等の微生物残滓に含まれる天然毒性物質である。従来の方法では検出が困難であるLPSについて、本発明の細胞及び評価方法は高感度の検出及び毒性評価を可能にした。
次に、本発明の細胞の作製方法について説明する。図2は、本発明の細胞を作製するのに用いられるプラスミドの一例を示す模式図であり、HSP90β遺伝子転写調節領域は、熱ショック因子(HSF:Heat shock factor)結合DNA配列と、転写調節因子であるSTAT及びNF−IL6結合配列と、TATAボックス配列とを有する。
その転写調節領域の下流に、レポーター遺伝子(ここではβガラクトシダーゼ遺伝子、LacZ)を結合し、さらにその下流にイントロンなしのSV40pAシグナルを結合したプラスミドがあげられる。このプラスミドは染色体に導入された時、ストレス誘導により効率よくレポータータンパク質(βガラクトシダーゼ)を発現可能である。
レポータータンパク質を発現するレポーター遺伝子としては、上述したように、容易かつ迅速に酵素活性が測定できるものであれば特に限定されない。レポーター遺伝子のDNAは、例えば市販のプラスミドDNAを制限酵素消化することにより得ることが出来る。上記プラスミドは、例えば、サンブルック他著、モレキュラークローニング第二版、コールドスプリングハーバーラボラトリー発行(1989)等に記載されている通常の遺伝子工学的手法に準じて構築することができる。
本発明の安定形質転換体の作製に使用する細胞は、例えば、チャイニーズハムスター、ヒト、マウス、ラット等の哺乳類由来細胞があげられる。より具体的にはチャイニーズハムスター卵巣細胞であるCHOK1細胞やHeLaS3細胞などがあり、いずれもAmerican Type Culture Colle
ction(ATCC)より入手可能である。より好適には、上述したように、ヒト細胞、例えばヒト胎児腎臓上皮細胞由来の培養細胞(HEK293株等)、ヒト腸管上皮由来の培養細胞(Caco−2株等)を用いる。
本発明の実施形態の一つとして、上記プラスミドをリン酸カルシウム法、電気導入法、リポフェクチン法、リポフェクトアミン法、ポリフェクト法などの方法で動物細胞、たとえばHEK293株、Caco−2株に形質転換することにより本発明の細胞が取得可能である。形質転換する細胞はHEK293株、Caco−2株以外でも、安定に継代可能な培養動物細胞であればよい。
SV40pAシグナルの直前にイントロンが無い発現プラスミドは、従来用いられてきたSV40pAシグナルの直前にイントロンが存在する発現プラスミドより、約4倍のレポータータンパク質のストレス誘導性を示すことも本発明者らの実験により判明した。
しかし、トランジェント発現の場合、ストレス無処理群でバックグラウンドとしてのレポータータンパク質の発現が多く見られ、ストレッサー刺激が弱い場合はその感度が落ちるため、環境中に含まれる微量の毒性物質測定には不利であることが判明した。上記プラスミドにより動物培養細胞の安定形質転換体を取得することでこの問題が解決できることを見出し、それはHSP90βプロモーターを使用したことだけではなく、SV40pAシグナルやイントロンに関しても実験によって検討することではじめて完結することができた。もちろん、同じプラスミドにより形質転換した動物細胞でも染色体組み込み位置などで安定性や誘導性に大きな相違があり、ヒト細胞、例えばヒト胎児腎臓上皮細胞由来の培養細胞(HEK293株等)、ヒト腸管上皮由来の培養細胞(Caco−2株等)等の上皮細胞は最適な実施形態である。
ストレス応答性と遺伝子安定性等を考慮した何回もの細胞選択により、最も使いやすい細胞を選抜することができる。このとき、形質転換体を取得するため、同時に動物細胞中で有効である薬剤耐性遺伝子、たとえばネオマイシン耐性遺伝子など、を定常的に発現可能な状態で保有するプラスミドの形で同時に形質転換することにより形質転換体の取得を容易にすることができる。また、上記プラスミド中に該当薬剤耐性遺伝子を定常的に発現する形で組み込むこともできる。
上記プラスミドで形質転換した安定形質転換体は非ストレス時のレポータータンパク質発現量が、トランジェント発現の結果と比較し劇的に下がる。非ストレス時とストレス時の発現量を比較すると、トランジェント細胞ではせいぜい非ストレス時の2〜4倍にしかならない誘導率が、安定形質転換体の場合、数十倍以上の誘導率を示した。
中でも、SV40pAシグナルの直前にイントロンを含まない上記プラスミドは約200〜3000倍以上の非常に高いストレス誘導性を示した。
この時、ストレス誘導を起こさないコントロールベクター、例えばSV40プロモーターによるレポータータンパク質の発現が、ストレス時と非ストレス時で有意に変化しないことを確認することは化学物質等によるストレス応答を評価する上で重要である。
HEK293株へ上記プラスミドの一態様であるpHSP90b::lacZベクターを形質転換し、安定形質転換体を選択したところ、ストレス刺激に鋭敏に反応しβガラクトシダーゼタンパク質を発現誘導する細胞株が得られた。
ストレスタンパク質は熱、化学物質、重金属のストレッサーに細胞が反応して誘導産生されることが明らかとなっている。ストレスタンパク質誘導は、熱ショック因子と呼ばれるストレス誘導転写因子がプロモーターDNA配列上の熱ショック因子結合DNA配列に結合することにより、下流のmRNA合成が開始される。その機構を利用して、染色体上に、ストレスに反応するプロモーターと連結されたレポーター遺伝子を導入しタンパク質誘導活性を測定する際は、ストレス以外の刺激に対して反応しにくくすることでさらに有効となる。
使用するベクターとしては大腸菌での遺伝子工学技術に適した、微生物内で機能する複製開始点や薬剤耐性遺伝子、また使いやすい制限酵素部位を多数持つプラスミド等があげられる。
さらに厳密にストレス特異的な誘導のみを検出するためには、コントロールプラスミド、すなわちレポーター遺伝子の上流に熱ショック因子結合DNA配列をもたず、他の誘導因子結合DNA配列を有するプロモーターを結合させ被験物質によるレポータータンパク質の発現誘導を検出する方法を用いる。この目的のために、例えば定常高発現プロモーターであるSV40初期プロモーターを利用することが可能である。
ストレス応答性レポーター遺伝子の形質転換動物細胞で被験物質によりレポータータンパク質が誘導され、SV40初期プロモーターで制御されるレポーター遺伝子の形質転換動物細胞(コントロール細胞、図3)で被験物質によるレポータータンパク質発現に変化がないことを基準に、被験物質のストレス特異的誘導活性を測定し、汚染物質もしくは有害物質を検出することができる。もちろん、両者でレポータータンパク質が誘導された場合は、有害性が無いということではない。
本発明の特徴はこれまでのバイオアッセイ系で検出不可能であった若しくは検出されにくかったLPS等の天然毒性物質を迅速にかつ高感度で検出及び毒性評価できることにある。また、経時的に変化していく環境中の天然毒性物質を遅滞無く検出することも可能である。天然毒性物質の分析のための方法は、実験動物を用いる系が実際の吸収、代謝、集積、排泄系を反映していると考えられるが種特異性や時間がかかる等の問題点もあり、特に環境中に含まれるLPS等の天然毒性物質を、短時間かつ簡便に総合的に分析する手段は未だ確立されていなかった。
本発明の一つの実施態様として、上記プラスミドで形質転換された本発明の細胞の培養液に被検査物質を添加した場合のβガラクトシダーゼの酵素活性を測定することで、被検査物質による細胞へのストレス度を定量的に評価し、その毒性を決定できる。しかし、被験物質が非特異的な毒性を示す場合は細胞死によって細胞数が減少したり、レポータータンパク質の活性が見かけ上で上がる場合もありうる。この場合は、生細胞数を測定したり、細胞のタンパク質濃度測定により相対的に全タンパク量中の活性として比較することで測定および評価が可能である。
その際、上記プラスミドによる安定形質転換体のレポータータンパク質誘導活性を利用して被験物質の作用を測定する方法は、トランジェント発現を調べるよりも形質転換操作自体の影響が除かれるため、特に微量の被験物質評価には適していることはいうまでもない。
HSP90βプロモータを導入した細胞(HEK293、Caco−2等)を用い、レポーター遺伝子の活性を測定することで、水等の被験物質に含まれるLPS等の天然毒性物質、または有害化学物質を検出評価することができる。
評価方法としては、例えば、本発明の細胞を、あらかじめ試験日の1〜2日前に96穴マイクロプレートに播種し、試験日に被験物質含有培地に培地交換して37℃、5%CO条件下で1〜数時間インキュベートし、その後培地を除き、PBSで2回洗浄し細胞溶解液(NP−40等の界面活性剤を含むもの。プロメガ社等のlysis bufferを用いても良い)を50〜100μl/well添加し20〜120分放置する。ピペッティングで細胞を完全に溶解後、その内10〜20μlを新しい96穴プレートに分取し、さらに基質液(0.1mM 4−メチルウンベリフェリルβ−D−ガラクトシド)を100μl/well添加後、アルミ箔で遮光して室温30分間置く。このあと、必要であれば0.5v/vの1M グリシン−NaOH(pH10.3)反応停止液を加えても良い。その後蛍光マイクロプレートリーダーを用い励起波長365nm、測定波長450nmにて蛍光値を測定する。
この方法では、ウェルの数(ここでは96)と同じ数の被験物質の高感度毒性評価が可能である。
このように、本発明の検出系は個々の物質に反応するのはもちろん、複数の化合物が混在している状況でもストレス応答によりレポータータンパク質の発現誘導が見られ、多種多様な有害化学物質が混在する水環境の評価法として有効であると考えられる。天然毒性物質では特にLPS等の存在が疑われる処理排水において、迅速に低濃度汚染を検出することが出来る。さらに、複数の化合物が混在している状況でもストレス応答によりレポータータンパク質の発現誘導は見られ、多種多様な有害化学物質が混在する水環境、特に生体恒常性影響の評価法として有効であると考えられる。また、未同定有害化学物質が含まれる塵芥焼却や水処理の副産物あるいは産業廃棄物埋立地からの浸出水の評価にも使用可能である。
<ベクターおよびベクター導入株の樹立>
ヒト熱ショックタンパク質HSP90β遺伝子転写調節領域を含む同遺伝子(アクセッションナンバー:J04988)の転写開始点上流領域−1056から+37を、ヒト染色体DNAを鋳型にPCR法により増幅し、DNA断片を得た。ヒトHSP90β遺伝子の配列を配列表1に示す。配列表1中の64〜1154塩基が、本実施例で用いた領域であり、453〜469塩基が熱ショック因子、STAT、及びNF−IF6結合配列である。
図4は発現ベクター(米国クロンテック社製のpLacZ−Basic)を模式的に示す図であり、この発現ベクターのlacZ遺伝子の上流に、上記DNA断片をクローン化し、HSP90β遺伝子転写調節領域の支配下にlacZ遺伝子を発現させることが可能なベクター、pHSP90b::lacZを作製した(図2)。
図5はpcDNA3ベクター(米国インビトロジェン社製)を模式的に示す図であり、pcDNA3ベクターと、pHSP90b::lacZをヒト胎児由来の培養細胞HEK293株と、ヒト腸管上皮由来の培養細胞Caco−2株にリポフェクチン法により導入した。
pcDNA3ベクターは、ネオマイシン耐性遺伝子活性を有している。上記2種類のベクターが導入された株をG418倍地で培養することによって、ベクターが染色体に組み込まれている細胞を、pcDAN3ベクターのネオマイシン耐性遺伝子活性を指標に選別し、限界希釈法によりクローン株を得た。
得られたクローン株を42℃で90分静置後、37℃で120分静置して熱ショックストレスを与えた。その後、細胞抽出液を調整し、これにLacZタンパク質の蛍光基質であるMUG(4−メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニド)を添加し、遮光下室温で30分放置した。1Mグリシン溶液で反応を停止した後、蛍光分光光度計を用いて励起波長360nm、蛍光波長460nmの設定で測定した(熱ショック試験)。
熱ショックを与えない場合における蛍光強度と比較し、熱ショックによる発現誘導活性が最も有為に高い細胞株を選別し、その後の試験に用いた。なお、選別した細胞のうち、HEK293株由来の物をHEK293/HSP90β::lacZ株と名づけた。
<生物学的影響の評価>
上記工程で選別した細胞株のうち、Caco−2株由来の2株についてLPSの存在下で、37℃3時間静置培養した後、上記熱ショック試験と同じ方法で、LPSの各濃度におけるLacZタンパク質活性を測定した。
上記2株の測定結果を図6のLine1、Line2にそれぞれ示す。図6の横軸はLPSの濃度を、縦軸は蛍光度を示している。図6から明らかなように、Line1、Line2のいずれも、LPS未添加(Cont)と比較して、LPS濃度が0.1μg/mlで蛍光度が上昇している。以上の結果から、本発明の細胞は、LPSが微量であっても高感度に検出可能なことが証明された。
本発明は、毒性物質に対する細胞の反応を定量化することが可能であるため、実験動物あるいは培養細胞に対する毒性試験の結果と比較、統合することにより、生物学見地にたった有毒環境化学物質の混入に対する環境基準の見積に貢献することが期待される。

Claims (7)

  1. HSP90βプロモーターと、当該HSP90βプロモーターの制御下にあるレポーター遺伝子とが染色体に導入された細胞。
  2. 前記HSP90βプロモーターは、ヒト染色体由来である請求項1記載の細胞。
  3. ヒト細胞から作製される請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の細胞。
  4. 前記ヒト細胞は上皮細胞である請求項3記載の細胞。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の細胞を、被検物質の存在下に置き、前記レポータータンパク遺伝子が発現するレポータータンパク質の発現量に基づき前記被検物質の毒性を評価する評価方法。
  6. 前記レポータータンパク質の発現量に基づき、前記被検物質の前記毒性の程度を評価する請求項5記載の評価方法。
  7. 前記被検物質の前記毒性はリポポリ多糖に由来する請求項5又は請求項6のいずれか1項記載の評価方法。
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