JP2011082039A - 非水電解質電池及び組電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】一方の電極に設けられた電極取り出し部が他方の電極と接触するようなことがあっても、両電極間の短絡を防止することができる非水電解質電池及びそれを用いた組電池を提供する。
【解決手段】非水電解質電池Sは、正極1、電解質層3、負極2が順に積層された構造である。負極2は、負極活物質層21上に負極集電体層22を形成することで構成され、負極集電体層22に平面方向に突出する電極取り出し部20が一体に形成されている。そして、この電極取り出し部20の表面の一部、具体的には曲げられた際に正極1及び電解質層3と接触する可能性のある両面に、絶縁膜25がコーティングされている。電解質層3はLi2S‐P2S5系固体電解質で形成され、また、電極取り出し部20はCu箔で形成され、絶縁膜25はLi2CO3で形成されている。
【選択図】図1
【解決手段】非水電解質電池Sは、正極1、電解質層3、負極2が順に積層された構造である。負極2は、負極活物質層21上に負極集電体層22を形成することで構成され、負極集電体層22に平面方向に突出する電極取り出し部20が一体に形成されている。そして、この電極取り出し部20の表面の一部、具体的には曲げられた際に正極1及び電解質層3と接触する可能性のある両面に、絶縁膜25がコーティングされている。電解質層3はLi2S‐P2S5系固体電解質で形成され、また、電極取り出し部20はCu箔で形成され、絶縁膜25はLi2CO3で形成されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、正極と負極、及びこれら正負極間に介在される電解質層を有する非水電解質電池及びそれを用いた組電池に関する。特に、一方の電極に設けられた電極取り出し部が他方の電極と接触するようなことがあっても、両電極間の短絡を防止することができる非水電解質電池に関する。
非水電解質電池は、長寿命・高効率・高容量であり、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの電源に利用されている。非水電解質電池の代表例として、リチウムイオン二次電池(以下、単にリチウム二次電池と呼ぶ)が挙げられる。
リチウム二次電池は、正極と負極の間で電解質層を介してリチウムイオンをやり取りすることによって、充放電を行う電池である。このリチウム二次電池の一つの構造として、正極と負極、及びこれら正負極間に介在される電解質層を有するものが知られており、また、この電池を複数積層し、各電池の電極同士を接続した組電池(積層型電池)が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1に記載の積層型電池は、次の構成を備える。平面形状が長方形をした正極板と負極板とを交差させて配置すると共に、正極板と負極板の間に電解質を設けた極群を絶縁基板上に配置する。正極板の両端に備える電極取出部を正極用ストラップ電極を介して絶縁基板に形成した正極端子と接続する。負極板の両端に備える電極取出部を負極用ストラップ電極を介して絶縁基板に形成した負極端子と接続する。そして、極群を包囲するように蓋体を絶縁基板に接合して封止する。
この積層型電池は回路基板上に実装されるもので、電池の全体形状が六面体であり、平面視した場合、正極端子(正極板の電極取出部)と負極端子(負極板の電極取出部)との位置関係が90°ずれている。
また最近では、電解質層に固体電解質を用い、正極、負極及び固体電解質層を気相法により成膜した薄膜タイプの電池が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。このような電池は、固体電解質層を薄膜化することで、電池の容量密度が向上する点で有利である。
特許文献1に記載の積層型電池は、平面視した場合に略正方形状であり、長方形の正極板と負極板とを交差させて配置することで、正極板の電極取出部を負極板に対して正方形の1辺側に突出させ、また負極板の電極取出部を正極板に対して正方形の隣の辺側に突出させている。そのため、正極用ストラップ電極が負極板に接触することがなく、また負極用ストラップ電極が正極板に接触することがない。しかし、この積層型電池では、正方形の同じ1辺側に各電極端子を形成する場合、即ち正極用ストラップ電極と負極用ストラップ電極とを同じ1辺側に配置する場合、突出しない方の電極板に接続したストラップ電極が、突出する方の電極板に接触することがあり、正極板と負極板とが短絡する虞がある。また、正極板に対し負極板の突出する部分は発電要素として直接寄与することが少ないため、この積層型電池はその分無駄なスペースが存在する。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、一方の電極に設けられた電極取り出し部が他方の電極と接触するようなことがあっても、両電極間の短絡を防止することができる非水電解質電池を提供することにある。
(1)本発明の非水電解質電池は、正極と負極、及びこれら正負極間に介在される電解質層を有する。そして、正極又は負極の少なくとも一方には、その平面方向に突出する電極取り出し部が設けられており、電極取り出し部に絶縁膜がコーティングされていることを特徴とする。
この構成によれば、電極取り出し部に外部から力が加わった際、或いは組電池としたときに電極取り出し部同士を接続して一方の電極同士を接続する際など、電極取り出し部が他方の電極と接触するように変形したとしても、絶縁膜を備えることで、正極と負極の短絡を防止することができる。
負極材料(活物質)としては、金属リチウム(Li金属単体)又はリチウム合金(Liと添加元素からなる合金)の他、例えばグラファイトなどの炭素(C)や、シリコン(Si)、インジウム(In)を用いることができる。中でも、リチウムを含む材料、特に金属リチウムは、電池の高容量化、高電圧化の点で優位であり、好適である。前記リチウム合金の添加元素としては、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)及びインジウム(In)などを用いることができる。また、負極活物質が金属リチウムからなる場合、負極の集電体はLiと反応しない材料で構成する必要がある。このような材料としては、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)又はこれらの合金が挙げられる。
他方、正極材料(活物質)としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)及びオリビン型鉄リン酸リチウム(LiFePO4)から選択される一種のリチウム金属酸化物や、酸化マンガン(MnO2)、或いはこれらの混合物を用いることができる。その他、イオウ(S)や、硫化鉄(FeS)、二硫化鉄(FeS2)、硫化リチウム(Li2S)及び硫化チタニウム(TiS2)から選ばれる1種の硫化物や、或いはこれらの混合物を用いてもよい。中でも、リチウム金属酸化物、特にLiCoO2は、電子伝導性に優れており、好適である。また、正極の集電体としては、例えばアルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、金(Au)又はこれらの合金若しくはステンレスが好適である。
電解質層は、例えば固体電解質や有機電解液で構成することができる。電解質層を固体電解質で構成する場合、リチウムイオン伝導性の高い硫化物系固体電解質を用いることが好ましい。このような硫化物系固体電解質としては、Li2S‐P2S5系、Li2S‐SiS2系、Li2S‐B2S3系などが挙げられ、更にP2O5やLi3PO4を添加してもよい。その他、LiPONなどの酸化物系固体電解質を用いてもよい。また、電解質層を有機電解液で構成する場合、有機溶媒にリチウム塩を溶解させた有機電解液を含浸させたセパレータを用いるとよい。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びこれら混合溶媒などを用いることができる。リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)などを用いることができる。
電極取り出し部は、導電性を有する銅、ニッケル、アルミニウムなどの金属材料、例えば集電体と同じ材料を用いることができる。負極の場合、銅で構成することが好ましい。銅は、厚さが5μm程度の箔状のものから板状のものまで様々な厚さのものが市販されており、コストや入手容易性などの面で好ましい。また、電極に電極取り出し部を設ける場合、集電体に電極取り出し部を一体に形成する他、例えば集電体に別途用意した導電性金属箔を貼り付けることで電極取り出し部を形成してもよい。
一方、絶縁膜は、少なくとも電極取り出し部が他方の電極と接触したときに短絡を防止できる程度の絶縁性を有する。例えば、絶縁膜の絶縁性としては、導電率(電子伝導度)が1.0×10-9S/cm以下であることが挙げられる。したがって、絶縁膜の厚さは、膜を形成する材料によって適宜選択すればよい。
薄膜タイプの電池では、固体電解質層の厚さをサブミクロン〜数十μm程度にすることができ、正極及び負極を含めた電池全体の厚さを数μm〜数十μm以下に設定することができる。そのため、電極取り出し部に薄い箔状のものを用いたとしても、絶縁膜が厚ければ、その分体積当たりの容量密度が低下する虞がある。絶縁性のことだけを考えれば、市販の絶縁テープを電極取り出し部の両面に貼り付けて絶縁膜を形成することも可能である。しかし、絶縁テープの厚さは通常20μm〜30μm程度あるので、例え電極取り出し部に厚さ10μmの金属箔を用いたとしても、絶縁テープを両面に貼り付けた電極取り出し部が電池自体よりも厚くなり、嵩高となる。特に、組電池としたときの積層数が多いほど、容量密度の低下が顕著となる。したがって、絶縁膜の厚さは、絶縁性が得られる限りできるだけ薄くすることが望ましく、例えば0.1μm以上5μm以下とすることが挙げられる。絶縁膜の厚さの上限は3μmが好ましく、1μmがより好ましい。また、このような薄い絶縁膜は、気相法により成膜することで実現できる。
(2)本発明において、電解質層が硫化物系固体電解質であり、絶縁膜が硫化物系固体電解質中の硫黄成分と化学的に反応しない材料で形成されていることが好ましい。
電極取り出し部は、他方の電極以外に、電解質層に接触することも考えられる。ここで、電解質層が硫化物系固体電解質である場合、例えば電極取り出し部に銅を用いると、硫化物系固体電解質中の硫黄成分と銅とが化学反応し、電極取り出し部が腐食或いは電解質層が変質する虞がある。上記構成によれば、絶縁膜が硫黄と化学的に反応しない材料で形成されているので、電極取り出し部の腐食及び電解質層の変質を防止することができる。
(3)絶縁性を有し、かつ硫化物系固体電解質中の硫黄成分と化学的に反応しない具体的な材料としては、例えば炭酸リチウム(Li2CO3)、アルミナ(Al2O3)及びジルコニア(ZrO2)が挙げられる。したがって、絶縁膜は、これら材料から選択される少なくとも一種で形成されていることが好ましい。
電極取り出し部にLi2CO3の絶縁膜を形成する方法の一例としては、電極取り出し部となる基材にLiを成膜した後、大気中に放置することが挙げられる。これは、Liを大気中に放置したときの、大気中の二酸化炭素、酸素又は水分との反応を利用したものである(下記の反応式1、2を参照)。また、Liとの反応を促進する方法としては、例えば、(i)反応の温度を上げる(ただしLiの融点を超えない範囲)、(ii)反応雰囲気中の二酸化炭素濃度を上げる、(iii)反応雰囲気圧力を上げる、の少なくとも一つを行うことが考えられる。
反応式1…2Li+CO2+H2O→Li2CO3+H2
反応式2…4Li+O2→2Li2O、2Li2O+2CO2→2Li2CO3
反応式1…2Li+CO2+H2O→Li2CO3+H2
反応式2…4Li+O2→2Li2O、2Li2O+2CO2→2Li2CO3
(4)本発明の組電池は、上記した本発明の非水電解質電池が積層され、電極取り出し部同士が接続され、一方の電極同士が接続されていることを特徴とする。本発明の組電池は、本発明の非水電解質電池を用いていることから、電極取り出し部による短絡を防止することができる。
本発明の非水電解質電池及び組電池の外装材としては、金属ケース(金属缶)や、金属フィルムと樹脂フィルムとを積層したラミネートフィルムを使用することができる。電池の外装材としてラミネートフィルムを使用した場合、電池の薄型化、軽量化を図ることができ好ましい。ラミネートフィルとしては、例えばAlからなる金属フィルムをプラスチックフィルムで挟持した多層フィルム(アルミラミネートフィルム)が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックフィルムを用いることができる。
本発明の非水電解質電池は、一方の電極に設けられた電極取り出し部に絶縁膜がコーティングされていることで、電極取り出し部が他方の電極と接触するようなことがあっても、正極と負極の短絡を防止することができ、耐短絡性に優れる。
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。また、図中において同一部材には同一符号を付している。
本発明に係る非水電解質電池(リチウム二次電池)の基本構造は、図1に示すように、正極1、電解質層3、負極2が順に積層された構造である。ここでは、正極1及び負極2が共に平板状をしており、平面視した場合に負極2が正極1から突出しないように、正極1に対して負極2の面積が小さく形成されている(図1(B)参照)。また、負極2は、負極活物質層21上に負極集電体層22を形成することで構成され、負極集電体層22に平面方向に突出する電極取り出し部20が一体に形成されている。
図2に示す組電池は、図1の電池Sを積層することで構成され、折り曲げた電極取り出し部20同士を接続することで、積層された各電池Sの負極2同士が接続されている。そして、各電池Sの負極2は、電極取り出し部20を介して負極集電タブリード4に接続されている。ここで、電池Sの最も特徴とするところは、負極2に導電性の電極取り出し部20が設けられると共に、この電極取り出し部20の表面の一部、具体的には曲げられた際に正極1及び電解質層3と接触する可能性のある両面に絶縁膜25がコーティングされているところにある。そのため、組電池を組み立てるときに、電極取り出し部20を正極1と接触するように折り曲げて、図2の上下方向に負極集電タブリード4を引き出したとしても、絶縁膜25を備えることで、負極2と正極1とが短絡することを防止できる。この場合、電極取り出し部20及び負極集電タブリード4が図2の左右方向に突出することが少なく、平面視した場合の電池の面積を小さくすることが可能である。また、図2に示す組電池では、ある電池Sの負極2と、この電池と隣り合う別の電池Sの正極1との間の絶縁を図るため、電池間に絶縁性のセパレータ5を介在させている。
なお、ここでは図示していないが、積層された各電池Sの正極1同士も導電性の正極用接続部材により接続され、各電池Sの正極1は、正極用接続部材を介して正極集電タブリードに接続されている。正極用接続部材は、例えばテープ状の部材であり、各電池Sの正極1の端面に沿うように設けられている。また、正極1の外縁が負極2に対して突出しているため、上記した正極用接続部材が負極2と接触することがなく、正極1と負極2とが短絡することを防止できる。
リチウム二次電池Sは、単独でも電池として機能する。リチウム二次電池S及び組電池は、正極集電タブリード(図示せず)及び負極集電タブリード4の端部を露出させアルミラミネートフィルムに封入したラミネート型電池として使用することができる。なお、電極取り出し部のうち、タブリードとの接続箇所或いは電池端子となる箇所は、絶縁膜から通常露出している。
(試験例1)
厚さ10μmのCu箔を用意し、これにLi2CO3膜を形成して、Li2CO3膜の絶縁性について検証した。まず、Cu箔の端部をマスキングした状態で、Cu箔に真空蒸着法を用いてLiを成膜してLi膜を形成した後、大気中に室温で12時間放置した。放置後のLi膜を調べたところ、Li膜がLi2CO3膜に変化していることが確認された。形成したLi膜の厚さは0.7μmであり、Li2CO3膜に変化後も厚さは同じであった。
厚さ10μmのCu箔を用意し、これにLi2CO3膜を形成して、Li2CO3膜の絶縁性について検証した。まず、Cu箔の端部をマスキングした状態で、Cu箔に真空蒸着法を用いてLiを成膜してLi膜を形成した後、大気中に室温で12時間放置した。放置後のLi膜を調べたところ、Li膜がLi2CO3膜に変化していることが確認された。形成したLi膜の厚さは0.7μmであり、Li2CO3膜に変化後も厚さは同じであった。
次に、Li2CO3膜の絶縁性を検証するため、Cu箔端部とLi2CO3膜表面との間の電気抵抗をテスターを用いて測定することにより、Li2CO3膜の電子伝導度を調べた。その結果、Li2CO3膜(厚さ0.7μm)の電子伝導度は1.0×10-9S/cmであり、高い絶縁性を有していることが確認された。同様にして、厚さを0.3μm、0.5μm、2.5μmとしたLi2CO3膜についても絶縁性を評価したが、いずれも十分な絶縁性(電子伝導度が1.0×10-9S/cm以下)を有していることが確認された。また、Li2CO3膜が形成されたCu箔を曲げたてみたところ、Li2CO3膜には剥離又はクラックなどの欠陥が見られず、この程度の厚さ範囲では曲げ性への影響は小さいことが確認された。
さらに、Li2CO3膜に変えてAl2O3膜とした以外は試験例1と同様にして、Al2O3膜の絶縁性について検証した。Al2O3膜は、真空蒸着法を用いてAl2O3を成膜することで形成した。その結果、Al2O3膜は十分な絶縁性を有し、曲げ性への影響も、Li2CO3膜と同様、小さいことが確認された。
これらLi2CO3やAl2O3は化学的に安定しており、本発明における電極取り出し部の絶縁膜に用いた場合に、硫化物系固体電解質中の硫黄成分と化学的に反応することがない。
(実施例1)
図1に示す、正極1、電解質層3、負極2を積層した構造のリチウム二次電池S、及びこの電池Sを積層した組電池の具体例を説明する。本例では、正極1、電解質層3、負極2、絶縁膜25を、それぞれ以下の材料で形成した場合を例に説明する。
図1に示す、正極1、電解質層3、負極2を積層した構造のリチウム二次電池S、及びこの電池Sを積層した組電池の具体例を説明する。本例では、正極1、電解質層3、負極2、絶縁膜25を、それぞれ以下の材料で形成した場合を例に説明する。
正極活物質:LiCoO2
電解質層:Li2S‐P2S5系固体電解質
負極活物質:金属Li
負極集電体:Cu箔(電極取り出し部を含む)
絶縁膜:Li2CO3
電解質層:Li2S‐P2S5系固体電解質
負極活物質:金属Li
負極集電体:Cu箔(電極取り出し部を含む)
絶縁膜:Li2CO3
<リチウム二次電池及び組電池の作製手順>
正極活物質(LiCoO2)の粉末を金型に入れ、圧縮して成形した後、大気中1000℃で加熱して焼結することで、正極焼結体を作製する。次に、この正極焼結体の電解質層3が形成される面とは反対側の面に、真空蒸着法を用いてAu又はNiの金属膜(厚さ1μm)を成膜する。金属膜は正極集電体として機能し、これらを正極1とする。正極焼結体は、縦:11mm×横:11mmの略矩形状とし、厚さを60μmとする。
正極活物質(LiCoO2)の粉末を金型に入れ、圧縮して成形した後、大気中1000℃で加熱して焼結することで、正極焼結体を作製する。次に、この正極焼結体の電解質層3が形成される面とは反対側の面に、真空蒸着法を用いてAu又はNiの金属膜(厚さ1μm)を成膜する。金属膜は正極集電体として機能し、これらを正極1とする。正極焼結体は、縦:11mm×横:11mmの略矩形状とし、厚さを60μmとする。
次に、この正極1の上に、レーザアブレーション法を用いてLi2S‐P2S5系固体電解質を成膜することで、電解質層3を形成する。電解質層3は、正極1と同じ大きさとし、厚さを7μmとする。
次いで、この電解質層3の上に、真空蒸着法を用いて金属Liからなる厚さ0.7μmの負極活物質層21を成膜した後、この負極活物質層21の上に厚さ10μmのCu箔(負極集電体層22)を圧接することで、負極2を形成する。このCu箔(負極集電体層22)には、負極2の平面外方に突出する電極取り出し部20が一体に形成されている。負極2は、縦:10mm×横:10mmの略矩形状(但し、電極取り出し部20を除く)とする。
リチウムを含む材料(金属Li)を負極活物質に用いた場合、負極の容量密度は正極と比較して通常高くなるため、正極1に対して負極2の面積を小さくしても、容量低下の問題は生じない。
また、予めCu箔には、電極取り出し部に対応する部分の両面に、Li2CO3からなる絶縁膜25が形成されている。Li2CO3の絶縁膜25は、電極取り出し部の所定の範囲に、真空蒸着法を用いてLiを成膜してLi膜(厚さ0.7μm)を形成した後、大気中に放置(室温、12時間)してLi膜をLi2CO3膜に変化させることで形成する。
一方、組電池は、このようにして作製したリチウム二次電池Sを積層し、各電池Sの正極1同士及び負極2同士を接続することで作製する。
負極2同士の接続は、電極取り出し部20同士を溶接することで行い、正極1同士の接続は、別途用意したアルミ製の正極用接続部材(図示せず)を各電池Sの正極1(正極集電体)に溶接することで行う。そして、電極取り出し部20に負極集電タブリード4を接合すると共に、正極用接続部材に正極集電タブリード(図示せず)を接合する。また、電池を平面視した場合において、負極集電タブリードと正極集電タブリードとが矩形の同じ一辺側に位置するように、正極用接続部材は電極取り出し部20が突出する矩形の同じ一辺側であって電極取り出し部20と干渉しない位置に設ける。最後に、この積層した電池Sをアルミラミネートフィルムに封入することで組電池が完成する。
(実施例2)
図3は、図1のリチウム二次電池Sを積層した組電池の別の例を示す縦断面図である。図3に示す組電池は、電池Sの積層手順が図2に示す組電池とは異なり、その他の点は上述した実施の形態とほぼ同じである。以下、図2に示す組電池との相違点を中心に説明する。
図3は、図1のリチウム二次電池Sを積層した組電池の別の例を示す縦断面図である。図3に示す組電池は、電池Sの積層手順が図2に示す組電池とは異なり、その他の点は上述した実施の形態とほぼ同じである。以下、図2に示す組電池との相違点を中心に説明する。
図3に示す組電池は、隣り合う電池Sの負極2同士、或いは隣り合う電池Sの正極1同士が対向するように電池Sを積層しており、電池S間に絶縁性のセパレータを配置していない。また、このような積層を実現するため、隣り合う電池Sの電極取り出し部20が同じ位置にくるように、一方の電池と他方の電池の電極取り出し部が図1(B)において左右対称になるように設けている。更に、図3に示す組電池では、負極集電タブリード4が紙面左側へ延びるように配置されている。
(変形例1)
本例では、実施例1で説明した正極の構成を変更した例を説明する。ここでは、正極1を以下の材料で形成する。
本例では、実施例1で説明した正極の構成を変更した例を説明する。ここでは、正極1を以下の材料で形成する。
基材:ステンレス箔(縦:11.4mm×横:11.4mm、厚さ20μm)
正極活物質:LiCoO2
正極活物質:LiCoO2
ステンレス箔上に、アルゴン雰囲気中でパルスレーザデポジション法を用いてLiCoO2からなる正極活物質層を成膜する。ここでは、LiCoO2の粉末を金型に入れ圧縮成形した粉末成形体(ターゲット)に、紫外レーザを照射することで、ステンレス箔に正極活物質層を形成する。ステンレス箔は正極集電体を兼ねており、これらを正極1とする。正極活物質層は、縦:11mm×横:11mmの略矩形状とし、厚さを10μmとする。
以上説明したように、本発明の非水電解質電池(リチウム二次電池)及び組電池は、例えば電極取り出し部20同士を接続して負極2同士を接続する際など、電極取り出し部20が正極1と接触するように変形したとしても、絶縁膜25を備えることで、負極2と正極1とが短絡することを防止できる。また、この絶縁膜25は、絶縁性を有し、かつ硫化物系固体電解質中の硫黄成分と化学的に反応しない材料で形成されているので、電極取り出し部の腐食及び電解質層の変質を防止することができる。さらに、本発明の組電池は、耐短絡性を確保した状態で、図2及び図3に例示するように、各電極の集電タブリードを引き出す方向を自由に設計できる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、正極と負極、及び固体電解質層の厚さや面積、並びに、電極取り出し部及び絶縁膜の形成材料や厚さを適宜変更してもよい。また、図2及び図3に示す組電池において、正極用接続部材は、電極取り出し部20とは反対側(図中右側)に設けてもよく、この場合、電極取り出し部20と正極用接続部材が接触することをより確実に防止できる。
本発明の非水電解質電池及び組電池は、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラの他、電気自動車などの電源に好適に利用することができる。
S リチウム二次電池
1 正極
2 負極 21 負極活物質層 22 負極集電体層
20 電極取り出し部 25 絶縁膜
3 電解質層
4 負極集電タブリード
5 セパレータ
1 正極
2 負極 21 負極活物質層 22 負極集電体層
20 電極取り出し部 25 絶縁膜
3 電解質層
4 負極集電タブリード
5 セパレータ
Claims (4)
- 正極と負極、及びこれら正負極間に介在される電解質層を有する非水電解質電池であって、
前記正極又は前記負極の少なくとも一方には、その平面方向に突出する電極取り出し部が設けられており、
前記電極取り出し部に絶縁膜がコーティングされていることを特徴とする非水電解質電池。 - 前記電解質層が、硫化物系固体電解質であり、
前記絶縁膜が、前記硫化物系固体電解質中の硫黄成分と化学的に反応しない材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質電池。 - 前記絶縁膜が、炭酸リチウム、アルミナ及びジルコニアから選択される少なくとも一種で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水電解質電池。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水電解質電池が積層され、
前記電極取り出し部同士が接続され、一方の電極同士が接続されていることを特徴とする組電池。
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